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[18-A-1] ハッカー中心の企業文化を日本で根付かせる
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[18-A-1] ハッカー中心の企業文化を日本で根付かせる
1.
ハッカー中心の企業文化 を日本に根づかせる
楽天株式会社 技術理事 よしおかひろたか 1
2.
アジェンダ •
民族誌的な自己紹介 • ハッカー中心の企業文化とは • なぜ、それが必要か • 日本で根付かせるためには 2
3.
今日のゴール • 自分が素晴らしいと思っている事
(企業文化とか)を紹介する • それを実現するためにどうしたらよ いのかみなさんと考えるきっかけを つくる。 • 技術者がゆたかで活き活きとした社 会を作るにはどうしたらいいのだろ うか? 3
4.
本日のハッシュタグ • #hccjp –
Hacker Centric Culture Japan • #devsumi • @hyoshiok http://twitter.com/#!/hyoshiok/status/36707387737903104 4
5.
自己紹介 •
よしおかひろたか • 楽天株式会社、技術理事 • http://d.hatena.ne.jp/hyoshiok • コミュニティ活動 – カーネル読書会主宰者 – 勉強会勉強会 • DEBUG HACKS (共著)、 ISBN9784873114040 5
6.
自己紹介 • 1984年、慶応義塾大学大学院修了 • 1984年、日本ディジタルイクイップ
メント研究開発センタ株式会社入社 – 昔DECという会社があった。 – ソフトウェア・エンジニアとして入社 した。 6
7.
DECのエンジニアリング文化 • わたしのエンジニアリング人生に影
響を与えたDECの文化を紹介する。 – ミッドナイトプロジェクト (スカンク ワークス) – 社内コンピュータネットワーク – 情報共有 7
8.
自己紹介 • 民族誌的な… • 民族誌
(ethnography) 特定の民族や 集団の文化・社会に関する、フィー ルドワークに基づいた具体的な記述 (広辞苑) 8
9.
民族誌 ethnography • 未開の文明ではなく、コンピュータ業界
のソフトウェア開発現場のフィールド ワーク – 組織文化を理解するために – 組織文化を記述するために – そしてよりよい組織文化を作るために – 組織文化は通常外部からは伺いしれない (転職などで緩やかに知られていく) 9
10.
Digital Equipment Corp
- DEC 1957 – 1998 The second largest computer vendor in 1980’s 新卒で入社(1984)して、約10年所属した。 1998年にCOMPAQが買収して、今はHP Ken Olsen, the founder Digital Equipment Corporation, 1926-2011 10
11.
DECのエンジニアリング文化 • DECのエンジニアリング文化の特徴。 –
ミッドナイトプロジェクト (スカンク ワークス) – 社内コンピュータネットワーク – 情報共有 11
12.
DECのエンジニアリング文化 • ミッドナイトプロジェクト (スカンクワークス) •
業務とは別に、予算人員などを確保せずに独自 に行うプロジェクトのこと。 • 業務時間の10%~20%位(目安)を業務外の作 業にあてることが黙認されていた。(むしろ奨 励されていた) • Googleの20%ルール 12
13.
DECのエンジニアリング文化 • 社内コンピュータネットワーク (E-
net) • すべてのコンピュータが一つのネッ トワークで結合していた。(スタン ドアロンでは使わない)。80年代で は特殊。 • 私企業が持つ世界最大のコンピュー タネットワーク。(数万台) 13
14.
DECのエンジニアリング文化 • 情報共有 • VAX
Notes/社内コンピュータネットワーク 掲示板 • ありとあらゆることが議論されていた – 開発中の製品情報、バグ情報、サポート情報 – 業務に関係あることないことなんでもかんでも。 開発日誌とかも。 14
15.
DECのエンジニアリング文化 • 暗黙的にも明示的にも価値観を共有 –
管理よりも自由、自主性の尊重 – なんでもやってみる – 情報の共有 – エンジニアリングの会社 15
16.
統制の手法 • 功利的統制 –
給料やボーナス、地位など • 強制的統制 – あからさまな権力、力関係 • 規範的統制 – 組織の価値観、イデオロギー 16
17.
すぐれた民族誌 • 超マシン誕生
– ISBN9784822284329 • 闘うプログラマ – ISBN9784822247577 • iモード事件 – ISBN9784048836333 フィールドワークは冒険だ。 帰還したエスノグラファーは 英雄だ。「洗脳するマネジメ ント」 ISBN9784822244675 17
18.
おまけ:自己紹介、年表 •
1984、日本DEC入社 • 1988、結婚 • 1989、ベルリンの壁崩壊 • 1989~1990、米国DEC出向 • 1990、娘誕生 • 1994、日本オラクル入社 • 1995、阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件 • 1995~1998、米国Oracle出向 • 1998、Netscapeソースコード公開、DECがCompaqに買収される • 1999、第一回カーネル読書会 • 2000、Miracle Linux創業 • 2002、未踏ソフトウェア創造事業 • 2008、楽天テクノロジーアワード受賞 • 2009、楽天入社 • 2009、第100回カーネル読書会 18
19.
アジェンダ •
民族誌的な自己紹介 • ハッカー中心の企業文化とは • なぜ、それが必要か • 日本で根付かせるためには 19
20.
ハッカー中心の企業文化 • ハッカーって
– コンピュータ技術に精通した人(辞書 的な定義) – ちょっとした技巧(ハック)を操る人 – 社会を変えた人 – (なんでもかんでもハッカー?) 20
21.
ハッカー • 共通の価値観 • 企業文化 •
どう根付かせるか 21
22.
ハッカー倫理 • スティーブン・レビー「 ハッカーズ
」で次のように記している。 ISBN978-4875931003 • コンピュータへのアクセス、加えて、何であれ、世界の機能の仕 方について教えてくれるものへのアクセスは無制限かつ全面的で なければならない。実地体験の要求を決して拒んではならない。 • すべての情報は自由に利用できなければならない。 • 権威を信用するな--反中央集権を進めよう。 • ハッカーは、学歴、年齢、人種、地位のような、まやかしの基準 ではなく、そのハッキングによって判断されなければならない。 • 芸術や美をコンピュータで作り出すことは可能である。 • コンピュータは人生をよいほうに変えうる。 • 60年代~70年代の民族誌 22
23.
共通の価値観 • コンピュータによって社会をよくす
る • 管理より自由、反権威的 • ラフなコンセンサスと動くコード • 許可を求めるな、謝罪せよ 23
24.
事例:Yahooに起きてしまったこと • ポールグレアム、Yahooに起きてしまっ
たこと http://d.hatena.ne.jp/lionfan/20100815#1281830975 • (Yahooの問題は)簡単に儲かりすぎて しまったことと、ハイテク企業になろう という強い意志がなかったことだ。 – Yahooには最初から「ハイテク企業になろ う」という強い意志が欠けていた。 24
25.
• どんな企業にはハッカー中心の文化
が必要となるのだろう? • 「良いソフトウェアを必要とするす べての企業」 – Yahooが発見したように、このルールが 適用される領域は、ほとんどの人々が 思っているより広い。 25
26.
ハッカー中心の文化 • インターネット時代のソフトウェア
開発 – 最高のプログラマを雇う – 少数精鋭 – 最高のプログラマは最高のプログラマ と働きたがる 26
27.
なぜ必要か • 共通善(社会をよくする) • 企業の競争力 •
ベストプラクティス 27
28.
なぜ必要か • ハッカー中心の企業文化の 方が、自分には
心地良いから(利己的な理由) • その他の理由は、偉い人に説明するための 理屈。 – 共通善(社会をよくするという価値観の共有) – 企業の競争力(会社がつぶれたら元も子もな い) – ベストプラクティス(ソフトウェアを楽しく作 る。デスマーチ知らず) 28
29.
どう企業文化を作るのか • 企業文化は、暗黙的、明示的につく
られる。 • 外から知られることはない。(民族 誌が必要) 29
30.
どうハッカー中心文化を作るか • 暗黙知の継承 –
材料:パッション、仲間 – 方法:勉強会、ランチ、飲み会、合宿 • 形式知の継承 – 戦略、ガイドライン、ルール 30
31.
文化の衝突 •
商用ソフトとオープンソース • レガシーとWeb2.0 • ウォーターフォールとアジャイル • 高い稼働率とスケーラビリティ 31
32.
組織の限界 • 組織が肥大化すると –
蛸壺(他の事業部なにする人ぞ) – 横串(クロスファンクション)は言う ほど簡単ではない • 文化の融合が必要、対立ではなく • そこで、社内コミュニティ 32
33.
社内コミュニティ •
コミュニティ・オブ・プラクティス • 組織:縦割り • プロジェクト:横串 • 社内コミュニティ:縦でも横でもな い – 志を共有するメンバーによってドライ ブ – コミュニティは組織を活性化するビタ ミン • そこで勉強会 33
34.
勉強会の隆盛 300件/月以上開催
IT勉強会カレンダー id:hanazukinと愉快な仲 間達による人力作業に よって編集公開されてい る。 34
35.
勉強会のイメージ • 主催者が個人的興味の延長で開催 • ボランティアによって運営 •
無償ないしは廉価 – 商用セミナー、教育コースとの違い • 技術者の人的ネットワーク、知 識獲 得のプラットフォーム、キャリア形 成のツール 35
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事例:カーネル読書会 • Linuxおよびオープンソース技術に
関する勉強会 – 1999年4月から。10年続いている。 • 第100回開催した。Linusも参加してくれた。 – 中学生から50代まで、素人からカーネ ルハッカーまで、毎回数十人参加 – よしおかが主宰。横浜Linux Users Group (YLUG)有志と運営 http://ylug.jp 36
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社外勉強会を社内で開催 • 楽天でカーネル読書会を開催した –
大変だったこと • 申請書類がいっぱい。(空調、ゲストカード、イベ ント申請、エレベータ、会場、開錠…) • 社内ワークフロー、誰に何を頼めばいいかわからな い – うれしかったこと • ボランティアがいっぱい立候補してくれた(多分10 人以上) 楽天カーネル隊を結成♪ • 社内ワークフローとか、教えてくれる人がいた • エライ人が理解を示してくれた(社内ス ポンサー) • ビアバッシュ(ピザとビールのパーティ)ができた 37
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カーネル読書会@楽天 • 社外勉強会を社内でやると… • メリット(社員にとって、会社にとって)
– 自社での開催なので、参加の敷居が低い。最新技術動 向の入手。議論の場の提供。外部からの刺激による開 発者の活性化。モチベーションアップ。外部人材との 交流。企業イメージ向上。 • リスク、コスト – 情報流出⇒会場以外には入れない – 会場提供⇒直接的な費用はほとんど発生しない – 勤務時間外⇒コストはほとんどかからない • メリット>コスト 38
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楽天社内コミュニティ • ジャングル –
LT大会 – 開発合宿 • 勉強会(社内、 社外) • 楽天テクノロジーカンファレンス実行委員会 • クリーンナップ大作戦 • ランチ~(カフェテリアを 利用したカジュアルな ミーティング) • 勉強会同好会 39
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勉強会 楽天TechTalk 毎月第3水曜日 勉強会 40~50人参加
資料 動画 100views レポート 80views 40
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技術者として • オープンイノベーションの時代 –
社外に価値の源泉を求めざるをえない – 会社に閉じこもっていてはいけない – コミュニティ的なノリ • 技術は会社のものではない、社会の ものだ – 社会をよくしていくという価値観 – コミュニティという道具 41
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大規模社外カンファレンス
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勉強会 2010年4月 丸山先生レクチャーシリーズ第3回@楽天 来場者数、約500名 Ustreamの視聴者数=544名
事務局運営スタッフ(ボランティアで運営) 43
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Innovation Sprint 2011 2011年1月13日(木) 基調講演 Roots
of Scrum 一橋大学 名誉教授 野中 郁次郎 氏 Chairman, the Scrum Training Institute ジェフ・サザーランド 氏 参加者360名ほど。ボランティアによる実行委員会 コミュニティによる価値の創造 44
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勉強会:事例
勉強会の法則 「開催のメリット > 開催のコスト」 (よしおかの勉強会第一の法則) 45
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勉強会をテコに • モチベーションアップ • 暗黙知の流通 •
人との出会い(同じ会社であっても) • 組織の壁の破壊 • 新しい技術知識などを得ることはむし ろ副次的な効果 • 勉強会を通じて「技術の横串」をとお すコミュニティをつくる 46
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もうひとつの方法 • 勉強会は極めて属人的 –
情熱と仲間が必須 – 暗黙知の共有 • 戦略、ガイドライン、ルール – 理事の立場を利用して、 – OSS戦略の策定 – コミュニティアライアンスプラン策定 – 社内ルール作り – 形式知を共有 47
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日本で根付かせるために • ハッカー中心の企業文化の理解
– 民族誌的なアプローチ • 価値観の共有 – コミュニティ • 方法論 – 勉強会、ランチ、飲み会、…、(暗黙知) – 戦略、ガイドライン、ルール、(形式知) 48
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• エンジニアとして、社会をよりよく
していきたい。 • そのために、ハッカー中心の企業文 化を日本に根付かせたい 49
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