More Related Content
Similar to ネットワークでなぜ遅延が生じるのか (20)
ネットワークでなぜ遅延が生じるのか
- 2. Who am I ?
• ネットワークエンジニア
• 某外資系メーカ勤務
Twitter: @jkatojp
Jun Kato / 加藤 淳
- 6. キューイング遅延 (Queueing Delay)
• 通信機器の出⼒インターフェイスキューに⼊ってから
出⼒処理を⾏なうまでにかかる時間
出⼒キュー
• 出⼒処理より速いペースでパケットが届くとキュー待ちが増える
• 広帯域回線から狭帯域回線への転送、⼀時的な輻輳 (バーストト
ラフィック) などへの対応
優先制御
キューイング
スケジューリング
- 7. シリアル化遅延 (Serialization Delay)
• 通信機器の出⼒インターフェイスからパケットを電気信号や
光信号に変換して送信完了するまでにかかる時間
出⼒キュー
広帯域回線では短い
狭帯域回線では⻑い
パケット パケット
信号変換
1500バイトのパケットの送出にかかる時間は
• 10GEでは1.2マイクロ秒
• ISDN(64Kbps)では187.5ミリ秒 (187,500マイクロ秒)
- 8. 伝搬遅延 (Propagation Delay)
• パケットが通信経路上を伝わるのにかかる時間
• 光ファイバの伝搬速度はおよそ 2.0*108 m/s
• 媒体により速度固定。光速より遅い (屈折率, 波⻑短縮率)
パケット パケット
伝搬遅延の理論値
• 東京〜⼤阪間 500km 往復 5ミリ秒
• ⽇本〜アメリカ⻄海岸 海底ケーブル 9,000km 往復 90ミリ秒
• ⼈⼯衛星 静⽌軌道 上空36,000km 2往復 500ミリ秒
※ 実際には他の遅延も含めもっと⻑くなる
- 9. 半⼆重通信 (Half Duplex)
• データの送信と受信を共通の伝送路上で⾏う
• 伝送路上に3台以上の装置が存在可能
• 送信が可能なのは同時に1台のみ (帯域を共有)
• Wi-Fi (CSMA/CA⽅式) や初期の Ethernet (CSMA/CD⽅式)
ßà全⼆重通信: データの送信と受信が独⽴な伝送路
• 他の装置が送信している時、⾃分は送信できない
• 伝送路を共有する装置やトラフィックが多いと
待ちの確率が⾼まる
• 送信に失敗した場合は⼀定時間を待って再送する
Wi-Fi Access Point
送信中
- 10. 広帯域回線 ≠ ⾼速回線
• 広帯域回線はキャパシティは⼤きいが
「速い」のはシリアル化遅延のみ
• 伝搬速度は物理法則(光速)を超えられない
広帯域回線 狭帯域回線
通称 ⾼速回線 低速回線
例 100G Ethernet ISDN 64K
プロセス遅延 トラフィック量と処理により変動
キューイング遅延 出⼒側回線帯域使⽤状況により変動
シリアル化遅延 短い ⻑い
伝搬遅延 物理媒体ごとに⼀定
- 12. RTT (Round Trip Time)
• RTT とは宛先にリクエストを送って応答を受け取るまでの
エンドツーエンドの往復所要時間
• 往復ではなく⽚道のみの所要時間を計測するのは難しい
リクエスト
応答 (Ack)
RTT = ① 往路のネットワーク遅延 + ② 宛先ノードの処理時間
+ ③ 復路のネットワーク遅延 + ④ 発信元ノードの処理時間
① ②
③
④
- 14. TCPフロー制御
• TCP は送信パケット(セグメント)に対する応答 (Ack) を常
に要求する
• 仮に1セグメントずつ応答を要求すると、最低でも
「セグメント数 x RTT」の時間を要し⾮効率となる
• TCP では⼀度に送受信可能なデータ量 (TCPウィンドウサ
イズ) をネゴシエーションしまとめて送信することで、
ネットワーク遅延の影響を⼤きく軽減している
• TCPウィンドウサイズは動的に変更される
データ
応答 (Ack)
データデータ
TCPウィンドウサイズ
- 19. 使⽤率の増加、輻輳 (Congestion)
• M/M/1待ち⾏列モデル
• Tw =
!
"#!
×Ts
Tw: 平均待ち時間
Ts: 平均サービス時間
ρ: 利⽤率
利⽤率が100%に近づくにつれ
待ち時間が急激に伸びる
利⽤率
平均待ち時間
• 回線帯域使⽤率の他、
サーバの処理性能にも
同様のことが⾔える
• 遅延や輻輳の観点からは、
リソースを処理性能の限
界まで使い倒さないこと!