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                 - DISCUSSION NOTE –




就業力強化と大学講義運営

     Competencies at Work
    and Japanese Universities


April 30, 2010     Masato Ono   masaono777@gmail.com
Masato Ono, All rights reserved.




    Agenda
2



     1. 就業力の強化?
     2. 企業で何が変わったか
     3.大学を取り巻く環境
     4.アメリカのケース
     5. 日本の状況
     6. 対策と留意点
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     サマリー
3

    1.低成長の中、企業が新価値創出を強化しており、若手にその期待が高まっている。ま
      た企業では人材を一から社内育成するスタイルよりも個々の業務に最適な人材を適
      宜投入するモジュール化が進んでいる。この中で、新卒者に求められる能力は実際
      的な就業力が中心になっており、とりわけ、「人との接触の中で仕事に取り組める」た
      めのソーシャルスキルが求められている。
    2.就業力の基本は、積極的に疑問を持ち、へこたれず、皆と一緒に働けることであり、こ
      れらは従来から主張されているような、社会で生きるための力である。
    3.しかし、従来の予定調和的な講義中心で一方向的な学部カリキュラムでは、大学生
      が受け身思考のまま社会に出ていく傾向からは容易に脱せられないと思われる。
    4.今後の対応としては、学部講義における実践的科目の導入、就業力強化に向けた集
      中講義、模擬会社・就業体験等の講義外実践プログラム・アウトリーチ(学外奉仕)プ
      ログラムの設置によって、従来の専門知識、基礎学力とは内容が異なる「ソーシャル
      スキル」を学生に習得させることが望ましい。
    5.ただし、多数の大学改革策が実行される中では、単に今回の対策メニユーを増やす
      だけではいたずらに混乱だけが生じる危険性がある。基礎学力充実や他の改善策と
      のシナジーのある対応を冷静に検討すべきと考える。
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    1:就業力の強化

        大学行政の変化
4

    文部科学省は、今年から大学に対し『就業力』を培う体制を整え
    ることを求めている。    就業力とは、下記の青字下線部分で示す能力。

       今年の大学設置基準改正(2010年2月25日改正、2011年4月1日施行)
        ・大学は、当該大学及び学部等の教育上の目的に応じ、学生が卒業後自らの資質を向上さ
         せ、社会的及び職業的自立を図るために必要な能力を、教育課程の実施及び厚生補導を
         通じて培うことができるよう、大学内の組織間の有機的な連携を図り、適切な体制を整える
         ものとする。 (以上の規定を大学設置基準第42条の2として新設)

       文科省の説明(上記大学設置基準改正の留意事項)
        ①就業力教育の大学内外への公開: 授業科目のシラバスや体系的な教育課程の編成を通じて、社会的職
         業的自立に関する指導等の在り方を明らかにすること。
        ②教育実施体制の構築: 大学内各組織の緊密な連携や組織の活用を通じて体制を整えること。
        ③対外説明の義務: 社会的・職業的自立に関する指導等の取組について、広く社会に説明していくこと。
        ④対外連携の必要性: 産業界や地域の各種団体、関係行政機関等との連携・協力に努めること。

        ⇒ 大学で具体的な教育を定めること、企業等との連携、学外公開が義務化。
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    文部科学省の示したこと
5

       大学において、以下を求めている。
        ・具体的な教育内容を、カリキュラム等で定め、
        ・学内の実施体制(組織)を整え、
        ・企業等の学外組織と連携し、
        ・学外に公開して広く社会に説明する。


       文科省の示す「就業力」とは?        (大学設置基準第42条の2新設項目より)

        ①卒業後自らの資質を向上させ、社会的、職業的自立を図るために必要な能力。
        ②大学で、社会的・職業的自立に向けた指導等(キャリアガイダンス)を行うこと。


        ・卒業後に役立つ社会的に必要な能力や実践的な能力とする。
        ・ソーシャルスキル(社会技能)と社会的な体験やノウハウを含めている。
        ・基礎学力や専門知識能力とは、明確には区分していない。
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    審議の経過
6

    ・2009/6以降に、就職支援活動の大学教育における必要性が指摘され、
     2010/2の設置基準改正でその実施体制づくり・組織化等を法令で義務化した。
                      文部科学省の大学政策に関する審議と政策 (実業教育・職業指導に関する事項)
     1998/10大学審議会答申           ・職業人の再学習など生涯学習需要の増大
                              ・専門職業大学院の設置促進
                              ・地域社会や産業界との連携促進
     2000/11大学審議会答申           ・学生の実体験の重視や職業観の涵養
                              ・教員の教育能力や実践的能力の重視
                              ・専門大学院の充実による高度専門職業人の養成
                              ・企業と大学との共同による教育プログラムの開発
                              ・社会人の学習環境の充実
     2004/4                   ・法科大学院制度を創設
                              ・「学生が本気で学び、社会で通用する力を身に付けるよう、きめ細かな指導と厳格な成績評価するこ
     2008/3中教審大学分科会(審議のまとめ)
                              と。」を提言。
     2009/6中教審大学分科会(中長期的な大学教
                             ・学生の履修指導や就職支援を、学生支援体制の検討課題とした。
     育の在り方に関する第一次報告)
                             ・新たな大学の教育活動として、職業指導(キャリアガイダンス)の大学教育への位置づけを学生支援体
     2009/8中教審大学分科会(中長期的な大学教
                             制の検討課題とした。法令上も、キャリアガイダンスの実施を明確にすることにより、大学において組織的かつ
     育の在り方に関する第二次報告)
                             計画的な取組を推進することが重要とした。
                             ・大学設置基準の改正に以下が適当とした。「大学は、学生が卒業後自らの資質を向上させ、社会的及び
     2010/1中教審大学分科会(大学設置基準の改
                             職業的自立を図るために必要な能力を、教育課程の実施及び厚生補導を通じて培うことができるよう、大
     正について諮問)
                             学内の組織間の有機的な連携を図り、適切な体制を整えるものとする。(要約)」
                             ・大学は、当該大学及び学部等の教育上の目的に応じ、学生が卒業後自らの資質を向上させ、社会的及
                             び職業的自立を図るために必要な能力を、教育課程の実施及び厚生補導を通じて培うことができるよう、
     2010/2大学設置基準の改正
                             大学内の組織間の有機的な連携を図り、適切な体制を整えるものとする。(以上の規定を大学設置基準
                             第42条の2として新設)
     (出所)文部科学省発表資料
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    (注記)用語の使い方
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    ・「社会的、職業的自立に向けた指導」をキャリアガイダンスとし、教育課程内外を通
      じて学生に身につけさせることを法令で明文化(2010/2大学設置基準改正)。
    ・なお、「職業指導」の用語は、下記のように誤解が生じやすく、使用を控えることに。

                       大学における正規の教育課程

                                                      大
                           厚生補導                       学
           学生の人間形成を図るために行われる正課外の諸活動における様々な指導,援助等。     教
           課外教育活動,奨学援護,保健指導,職業指導等を含む。                 育
                                                      課
                           職業指導                       程
                                                      の
                                                      外
       ●文科省の位置づけ
       ①「職業指導」は、従来から、正規教育課程外の厚生補導の一つとみなしてきた。
       ②また、「職業指導」の用語は、正規教育課程の中に属する「職業教育」との誤解が生じやすい。
       ③このため、文科省では、「職業指導」ではなく、「社会的・職業的自立に関する指導等」として整理。
       ④2010/2に大学設置基準等を改正し、教育課程内外を通じた「社会的・職業的自立に向けた
        指導等(キャリアガイダンス)」という概念を制度化した。
                          ↓
       学生に対して、教育課程内外を通じて、社会的・職業的自立につながる「就業力」を身につけさせる。
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    今更、なぜ就業力なのか?
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    1. 成熟化により、企業が新しい価値の創出(イノベーション)が重要
      な課題になっている。
    2.上記の価値創出に向けて若年人材が投入される中で、新卒人材
      への期待が変化している。
     ⇒新卒者の採用基準は、コミュニケーション能力、実行力、
      積極性に重点が置かれ、学力よりはるかに重要視。
     ⇒企業は『人との接触の中で取り組める能力』を重要視。
          (ソーシャルスキル or 就業力 or 社会人力)
            (注)このレポートでは、上記の3つの用語は基本的に意味を同じくするものと考え、同様な対象に
               3用語を使っている。



    3.一方、平均的な大学生において、積極性の低下、受け身指向が
      指摘され、企業の期待とのギャップが鮮明になっている。
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    採用ではコミュニケーション能力が必須
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     企業は、学業よりソーシャルスキルを求める
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                     採用選考にあたって特に重視した点(複数回答、n=387社)

                   その他        4.1%
          インターンシップ受講歴    0.0%
                 保有資格    0.5%
             所属ゼミ・研究室     0.8%                             緑色は、「ソーシャル・スキル」に分類できる要素。
      クラブ活動・ボランティア活動歴     0.8%
                   感受性    1.0%
                                                           赤色は、学校教育で習得する要素。
                   語学力      2.6%
                   出身校       3.9%
                   倫理観        4.1%
                 学業成績          5.4%
                 一般常識                 13.5%
                   信頼性                13.7%
                   創造性                 14.5%
                   柔軟性                  15.8%
               リーダーシップ                   16.3%
             職業観・就労意識                    16.6%
                   専門性                      19.2%
                   論理性                        21.2%
               潜在的可能性                             25.6%
                   責任感                                    32.9%
                   誠実性                                            38.9%
               チャレンジ精神                                                      48.4%
                   協調性                                                        50.3%
                   主体性                                                                60.6%
           コミュニケーション能力                                                                                      81.6%


                     0.0%     10.0%    20.0%     30.0%      40.0%         50.0%   60.0%   70.0%     80.0%        90.0%
                                                                   日本経団連「新卒採用に関するアンケート調査」(2010年度)
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      企業採用担当者の生の声
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     ①大手ソフトウェア会社・人事担当A氏(東京都)
     Q:新卒採用に関して、今どんな人材が欲しいですか。またその見分け方は?
     A氏:学生に求めるものは以前と変わりませんね。長い目で見たとき、成長できるポテンシャルが大きい人材が欲しい。
     例えばエンジニアを採用する場合でも、学生が今持っているエンジニアとしてのスキルを見ることはほとんどないし、英語力
     や学校の成績を見ることはまずありません。
     Q:当然、技術力は重要でしょうが、そのほかの要素を重視すると。では何を見るのでしょうか?
     A氏:人としての動き方、行動特性みたいなものですかね。知識でも技術でもない、その人自身がどう行動できるかを
     見ます。キーワードを挙げるとすれば「オープンである」とか「コミュニケーションが取れる」とか「大きなチャレンジが好きだ」と
     か。これらのポイントについて、グループディスカッションや面接での発言や振る舞いから、採用担当者がその場で実際に
     感じたもので評価していく。学校名や所属学部などは事前に記入してもらいますが、これはあくまでも参考程度です。高
     学歴であっても行動特性の観点で評価できなければ採用しません。

     ②電子部品メーカー・総務人事担当B氏、C氏、D氏(長野県)
     B氏:当社の採用は、知識ではなく人物重視ですね。
     C氏:そう、専門知識より人物です。学校で学んだ知識は、入社後一旦ゼロにしてもらうぐらいに思っています。
     D氏:コミュニケーション能力のある人、チャレンジ精神の旺盛な人は大歓迎ですね。柔軟な発想力がある人、ポジティ
     ブ思考で困難な局面にも立ち向かえる人もいいですね。「これじゃできない。」じゃなくて、「こうすればできる!」って考えら
     れる人だね。
     B氏:何といっても「やる気がある人」。そういう人ってピンとこない?。大勢の中でなんかこう輝いて見えない?
     C氏:うん。それと、話を聞きたいという姿勢を見せてくれる学生も印象に残ります。格好良くなくっても、わからないこと、
     聞きたいことを遠慮せずに質問してくる人はいいですね。そういう人は雰囲気でわかります、この人はやる気だなって・・。
                                        (インターネット情報から2009年担当者座談会について抽出。)
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      「就業力」、「社会人力」へ期待が高まる                                (注)


12

     ○企業は、新卒を一括同期採用を行い、複数部署を経験させ
       ながら、当該企業に最適の人材を「作りこみ育成」していた。
     ・その中で、企業が新卒者に求めたのは「潜在能力」、「理解力」、
       「協調性」が主であった。新卒者が足らない能力経験は、社内
       OJT等の能力開発で向上させていた。
     ○現在は、前述の「新しい価値創出」の実現圧力の中、 新卒者
       に求められる能力は、より実際的になっている。
     ○こうした中、新卒者は、コミュニケーション能力、協調性、
       主体性など、 「人との接触の中で仕事に取り組む能力」
       が企業に求められている。
     (注)公式文書で解釈すると、文科省の示す「就業力」は、「大学卒業後に役立つ社会的に必要な能力や実践的な能力」、
        経産省の示す「社会人力」は、「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」である。
        したがって、両者に定義上の区分けが必要なほどの明確な差異はないと思われる。
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     2:企業で何が変わったか

     「新しい価値の創出」が重要な経営課題
13

     ○21世紀において、ビジネス環境について以下の変化が指摘される。
     ・国内市場の成熟化、国内市場全体の停滞、グローバリゼーションの進展
     ・市場ニーズの多様化、商品サイクルの短期化
     ・迅速な製品サービスの開発と市場投入
     ・IT化、ネットワーク化の進展

     ○職場では、「新しい価値の創出」、「グローバル化」が重要な課題に。
                    上場企業における経営課題の優先順位
                          2003年 2009年 2012年の 2015年の
                           の課題   の課題    課題     課題
          新製品・新商品・新事業開発    4位    4位     3位     1位
                   (回答割合) 25.4% 25.3%  34.7%  15.9%
          グローバル化への対応       12位   7位     5位     2位
                   (回答割合) 10.4% 13.8%  22.8%  11.9%
          (回答時期)            (2003年)   (2009年)   (2009年) (2009年)
          (出所)日本能率協会経営研究所「当面する経営課題に関する調査」。
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      企業における製品戦略
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          経営におけるプロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)



     (高)      問題児                   花形
            (wild cat)    拡大戦略     (star)
      成
      長
      性
             負け犬                  金のなる木         維持戦略
             (dog)               (cash cow)

              撤退戦略
     (低)                 市場シェア         (高)
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     若手人材に新価値創出の期待が高い
15

     ○「新価値創出」、「グローバル化」の課題が高まる中、
     ・歴史的に、企業の変革を担うのは「若手人材」。
     ・終身雇用の下、企業は中高年人材には「維持戦略」で対応。


     ○企業では、「新しい価値の創出」、「グローバル化」に
      適した若手人材を期待。


     ○企業採用においても、学生に上記に適合した能力・知識
      に関する期待が高まるのは必然的。
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     人事戦略が新規価値創出力にシフト
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                企業人材ポートフォリオ・マネジメント(PPMの類型化)

                                          (赤マル領域の人材に、会社の期待と負荷が
          (高)                             かかる傾向。)


     新卒             期待若手                     幹部社員
     社員            (wild cat)      育成戦略       (star)

           新
           規
           開                        引き上げ努力                維持戦略
           発        問題視                       停滞層         出向転籍
           力    (question mark)           (nothing new)   

                
          (低)                     社員の年齢          (高)
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      かつては、「人材を作りこんだ」日本企業
17
                1980年代までの日本の大企業の人事マネジメント
            (新卒一括採用→社内育成。均質な人材を「作りこみ」、業務を効率化・統合。)
                        【作りこみ型】アーキテクチャー

                                                     (高)
                         経営層 
            緑色の領域は
            業務                                            責
                         中間管理層                            任
                         (部課長)                            度
                                                          合
                    年功+実力の昇進

                     業務執行層(係長・一般社員)
     新卒一括採用    同期入社、一斉スタート                           (低)

                       下請会社・協力会社
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     現在は、企業が人材投入を「モジュール化」
18
                         現在の日本の大企業の人事マネジメント
                     (業務モジュールごとに最適の人材を投入+アウトソーシング)
                            【組み合わせ型】アーキテクチャー



                                  経営層 
                                                         (高)
                   緑色の領域が
                   業務モジュール       中間管理層         外部専門集団
                                 (部課長)         (コンサル等)
          中途採用                                              責
                                                            任
                                 業務執行層                      度
       アウトソーシング        (外注化)                               合


                    (派遣・パート)    事務・サポート業務
      派遣社員投入                                             (低)

                                下請会社・協力会社

                        新卒採用 → 事業モジュールへの直接投入
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     企業構造改革は、若手に大きな負担
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                          企業内就業の変化
            高度成長期~1980年代                  現在
         採用社員を「作りこむ」(インテグラル)      採用社員を「組み合わせる」(モジュール)
     構造 一括採用、同期入社              中途採用の導入、派遣社員・パートの拡大
        職場内教育(OJT)重視           「専門人材」の育成重視
        徒弟的な経験蓄積、社内経験優先        若手への権限委譲の積極化
        社内研修                   専門業者への社員教育委託
        複数部門の経験を蓄積させるジェネラリスト   新規事業への若手投入し、早期にスペシャリスト化
        昇進試験、資格試験              職務の社内公募制度
        業務は同質な社員が執行            業務は社員、派遣パート、外注で分担
        稟議制度と根回し               決定権限の集約化、下位委譲

             社会人より「会社人」                若手社員への負担と「孤立」
     問題 硬直的な年功序列               社内競争激化
                               責任も若手に委譲→若手の負担増
        (Wet)外部市場より社内人間関係を優先   (Dry?)新卒社員が1~2年で退職
        「金太郎飴」の同質性と大いなる安定性     新規事業参入→撤退→参入の繰り返し(不安定性)
        中高年「窓際族」               開拓・改革の実務担当者(若手)に過剰な負担
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      (参考)経済産業省の示す社会人力
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     ・経産省研究会は、「社会人基礎力」は以下の内容と示している。
       ①組織や地域社会で仕事をするための基礎的な力。
       ②基礎学力と専門知識を実践に活かす力。
       ③多様な人々とともに仕事を行う上での基礎的能力。
     ・この上で、社会人基礎力を以下の12の要素と解釈しており、成人者の人間的な能力・スキルを
      対象とし、学力や専門性は除外したものとなっている。
                      社会人基礎力に必要な「3つの力」、「12の要素」
             3つの力     12の要素               定  義
                   主体性         物事に進んで取り組む力
           前に踏み出す力 働きかけ力       他人に働きかけ巻き込む力
                   実行力         目的を設定し確実に行動する力
                   課題発見力       現状を分析し目的や課題を明らかにする力
            考え抜く力  計画力         課題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力
                   創造力         新しい価値を生み出す力
                   発信力         自分の意見をわかりやすく伝える力
                   傾聴力         相手の意見を丁寧に聴く力
                   柔軟性         意見の違いや立場の違いを理解する力
           チームで働く力
                   情況把握力       自分と周囲の人々や物事との関係性を理解する力
                   規律性         社会のルールや人との約束を守る力
                   ストレスコントロール力 ストレスの発生源に対応する力
          (出所)経済産業省「社会人基礎力に関する研究会」。
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      (参考)OECDでは成人の総合能力を見る
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     ・知識社会へと向かう先進諸国において、仕事の中で要求されるスキルの変化は情報通信技術
      の進展に応じて速まってきており、スキルの陳腐化が労働市場に及ぼす影響は大きい。
     ・OECDは、このような問題意識から、PIAAC (国際成人技能調査)という各国成人の技能状況
      調査を行っている。この調査の対象は学力、身体能力を含めた能力(competency)である。

                   OECD のPIAAC (国際成人技能調査)の中で測定される職務要件
       認知的スキル
         読み書き            仕事で読む(書く)書類の種別。
         計算              仕事で計算や数学を用いる機会の有無。
         科学的知識           仕事で科学的知識を用いる機会の有無。
         問題解決            問題の発見、説明、解決、複雑な問題の分析。
         ICT・コンピュータ利用    コンピュータやインターネットの利用やスキルの程度。コンピュータ機器の利用状況。
       人間関係・社会的スキル
         影響力             指導、スピーチ、説得、他者の行動プランの作成,複雑な問題の分析。
         管理スキル           部下のキャリア開発やモチベーションを高める機会の有無。
         自律性             自己の行動計画作成、自分の時間管理、事前計画を考える機会の有無。
         職場での人間関係        チームワーク、傾聴、交渉、他者の世話をする機会の有無。
         クライアントとの関係      顧客への販売、助言、交渉機会の有無。
       身体的スキル
         体力              仕事上で長時間におよぶ身体行動の有無、重い荷物を運ぶような身体行動の有無。
         手先の器用さ          手先の正確さを要する仕事の有無、コンピュータ以外の道具を運転する機会の有無。
       仕事・職場関連スキル
         職業知識            現職の就業に必要な学歴や資格、経験年数。
         継続学習            新しい物事を学ぶ機会、同僚の学習を支援する機会、最新情報や動向を追う機会の頻度。
         仕事の自律性          課業の中身を変更できる割合、仕事の速さを変更できる割合等。
         仕事の質の管理状況
         ICTスキルを学習した方法
         過去1年間に受けた訓練状況
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      3:大学を取りまく環境

      実利主義に距離を置いてきた大学
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     ○大学教育界は、「大学は善き人間を作るもの」との理念から、社会の実利的要求に
      は反対し、常に「学問、学習の自由」の下にいた(フンボルト理念) (注1) 。
      ・ドイツ、フンボルト教授(1767-1835、ベルリン大学創立者)
      「高等教育施設(大学)は、学問をつねにいまだ完全に解決されていない「問題」として扱うところにその
       特色をもつものである。すなわち、大学では、教師は学生のためにそこにいるのではなくて、教師も学生
       も、学問のためにそこにいるのである。」
       (Wilhelm von Humboldt、「ベルリン高等学問施設の内的ならびに外的組織の理念」(1810年)より一部を抽出。)


     ○戦後、日本ではタテマエとしての真理の探求という理念と、現実における学生数の
      拡大との乖離が広まり、その矛盾を埋め合わせるためのイデオロギーとして、フンボ
      ルトの「学習の自由」が使われた(注1) 。
     ○その結果、「教育しない大学、勉強しない学生」が日本の大学の特徴になったが、
      高度成長期の日本には卒業しさえすれば就職できるという一定の経済社会構造が
      あったために、このような大学と学生が存続し得たといえる(注2)。
     ○低成長、財政難の中、国費の大学投入に厳しい目が注がれるようになり、大学は質
      の問題のみならず、その過去のあり方に対する強烈な批判を受けている(注1)。
                    (注1)東京大学教育学部金子元久教授『大学の教育力』ちくま新書。(注2)矢野眞和『大学改革の海図』玉川大学出版部。
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     高等教育の場と就業力のギャップ
23

     ○大学は、学力と教養を学生に付不する存在という前提であり、
      それ以外のスキルや適応能力の育成には無関心であった。
                      大学                   実社会
     位置づけ    高等教育の場としての大学         ビジネス性(収益、成長性)を追求
      目的     真理と社会正義の追求           経営目標(利益追求)
               研究者、教育者として教員が存在      経営目標達成の資源としての従業員
      重要視    学問知                  経験知、ノウハウ、処世術
      学生に     (基礎学力)               (協調性、主体性、指導力が重要)
     求めるもの    (考える力)               (前に踏み出す意欲)
                                   (粘れる、へこたれない気力)
               本来、大学講義では主          (チームで働ける力)
               目的としないという前提。        (人の見分け方、だまされない方法)
                                   (礼儀、挨拶、義理と人情)
                                   (付き合い、根回し、かわいがられ方)
             予定調和的な講義(カレンダーの継続)   混沌とした外部環境(変化への適応)
      環境
             机上                   現場
     評価軸     研究成果、学習成果            収益
     立脚点     外部に対する批判的態度(外を変える)   経営環境への順応的態度(自分を変える)
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      皮肉なパラドックス
24

     ・大学は、高等教育機関として学生に専門知識・技能を付不しようとしているのもかかわ
      らず、企業は卒業者に対して「基礎学力+社会人基礎力」を求めるようになっている。
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      一段と大衆化した大学の抱える問題
25
     ・1960~70年代に大学進学率が20%を超える大学の大衆化が進んだが、この20年は大学進学率
      20%代から2010年には50%へと「さらなる大学の大衆化」が起こった。
     ・この中で、専門高等教育を柱とする大学教育の在り方が見直されるのは自然な動きである。
     ・また、基礎学力習得を中等教育で積み残したまま大学進学し、大学で基礎学力を教育せざるを
      えない固定構造となっている。
     ・基礎学力要履修層が多い学部では、履修内容・教育方法の更なる改善が求められている。

                                    18才人口に占める大学入学者の比率の推移
            100%
                    8%
                           17%
                                   26%     24%
            80%                                    40%
                   39%                                     50%

            60%
                           55%
                                                                    高校卒業後、大学に入学
                                   63%     64%
            40%                                                     高校卒業後、大学入学以外を選択
                                                   48%
                                                           37%      高校卒業者以外
                   54%
            20%
                           28%
                                   11%     12%     12%     12%
             0%                                                    (出所)文部科学省「学校基本調査」等。

                   1960年   1970年   1980年   1990年   2000年   2010年
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      コア労働者として期待される大卒社員
26
     ・現在、大企業・中堅企業では、25~29歳若手従業員の54%が大卒・院卒社員。
     ・大卒社員が、その専門知識・技能を活かして企業の頭脳を担う役割というよりも、むしろ大多数
      の社員が所属するさまざまな現場実務に配属されて働いている状況。
     ・企業が大学新卒者に期待するものが、高度な専門性よりも現場で円滑に業務を遂行できる
      実践的な能力・素養となるのは至極当然。

                     従業員の学歴別年齢構成(従業員1000名以上の民間企業)
        55~59歳                              26%
                                                      大学院・院卒以外
        50~54歳                              39%       大卒・院卒
        45~49歳                              44%
        40~44歳                              47%
        35~39歳                              42%
        30~34歳                              47%
        25~29歳                              54%
        20~24歳                              42%                  (出所)賃金構造基本統計調査(H21年度)

                 0    20,000   40,000   60,000    80,000   100,000
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     大学で、学力以外の実践能力を習得する必要
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     ○大学卒業後、
      ・早期退職者、転職者の増加
      ・不採用者、若年失業者の増加
      ・フリーター、派遣社員、パラサイトの増加
      ・院卒失業者、院卒非正規労働者の増加
      ・新しい就業スタイル(非営利活動グループ、地域共同コミュニティ、NPO等)
     など、新しい卒業者構造の変化が出現し、
     これらへの対応が、社会から大学側に求められている。


     ○大学においては、学生に学問を習得させると共に、近い将来
      に向けての就業力、社会人力というような実践的スキルを習
      得させ、学力を含んだ『生きる力』を確立させることの重要
      性が増している。
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     4:アメリカのケース

      アメリカの経営学部における実践教育
28

           Babson College Business Administration学部    (米マサチューセッツ州ウェルズリー市)
     組織 1学部、MBAコース(大学院)、エグゼクティブ教育コース(大学院)。他に5つの研究所・機関。
     学生数学部1学年の新入生は500名弱。4年制学部はBusiness Administration学部の1学部のみ。
        全米の4年制経営学部評価ランキングでは第7位(Business Weekによる)。女子比率43%。海外からの学生22%
    特徴
        (66ケ国)。83%の学生がキャンパス内で生活。80%の学生がクラブ・組織活動。
   教員数  学部担当の教員数235名(大学院教員の兼任を含む)。
        会計(Accounting)、経済学(Economics)、起業論(Entrepreneurship)、経営管理(Management)、マーケティ
  コース編成 ング(Marketing)、数理(Math/Science)、技術経営・情報管理(Tech. Operation) 、人文科学(Arts &
        Humanities)、歴史・社会(History & Society)、学際論(Interdiciplinary)の10コース。
 学部各コース ①論理力、説得力(レトリック)、②計量分析力・情報分析力、③起業的で創造的な思考力、④国際的・多文化的思
   の目標  考、⑤倫理性と社会的責任の力、⑥リーダーシップとチームワークの力、⑦批判的で統合的な思考力
        リベラルアーツ4科目(人文科学、理学、修辞学、統計確率論、微積分論)、経営基礎4科目(ビジネス法、経営起業
  必須科目 論A・B、財務会計)、経営中級6科目(管理会計、経営管理、組織行動論、マクロ経済学、金融、マーケティング)、
        経営上級科目1科目(経営戦略分析)
 実践的講義 リーダーシップ、経営におけるコミュニケーション、経営者の倫理、コーチングと指導、交渉術(Negotiation)、ビジネス・スキ
   (例)  ル、起業家体験談、社会的起業、最高の起業チャレンジとは、アジアでの起業
 講義外の実 ①リーダーシップとチームワーク養成プログラム(The Coaching for Leadership & Teamwork Program, CLTP)
 践プログラム ②外部コンサルティング(The Management Consulting Field Experience,MCFE):学生の外部コンサル実践。
           ③起業経営財団(Foundations of Management & Entrepreneurship,FME):学生による会社経営実践。
           ④バブソン・カレッジ運用ファンド(Babson College Fund):学生による学校資産の一部運用。
           ⑤女子学生指導力プログラム(The Women's Leadership Program):女子学生のリーダーシップ養成。
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     リーダーシップとチームワークの重視
29
     ・Babson Collegeでは、通常の講義のほかに、リーダーシップ、チーム
      ワークを育成する独自プログラムを持つ。
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     Babsonにおける問題解決指向の授業①
30
     ・Babson College経営学部では、「コミュニケーション」、「リーダーシップ」、「交渉」
      のような問題解決指向の実践的授業が多数行われている。
       Negotiations
       This course explores the many ways that individuals think about and practice conflict resolution. Students
       will have a chance to learn more about their own negotiating preferences and the consequences of the
       choices they make. The course requires both intensive involvement in negotiation and mediation
       simulations/exercises and thoughtful application of theory through class discussion and written analysis.
       Class materials will reflect a variety of contexts from the workplace, including interpersonal, global, and
       cross-cultural interactions.
       Leadership
       Characteristics of effective leadership and the dilemmas of leadership, organizational structure and
       leadership, power and influence strategies, theories of leadership and leader's personality. Students will
       gain practice in leadership situations.

       Global Management Communications
       Effective communications are at the core of all international business relationships. So this course
       combines theory with practice in order for students to discover best practices in cross-cultural
       communication and then to apply them to the challenges of the global business leader. To become
       successful in this role, students will study the relationship between issues of culture, gender, and ethnicity
       and successful business communications. This course will be taught using lecture/discussion sessions,
       short case analyses, simulations, self-assessments, and the development of coaching skills that build
       collaboration across cultures and identities. Students will also have the opportunity to enhance their oral
       and written communication competencies established within multi-cultural contexts.
                                                              Babson College, Course Descriptions, Undergraduate
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     Babsonにおける問題解決指向の授業②
31
     ・”Giving Voice to Values” Program
      Babson Collegeの研究者による、対話重視型の自己価値向上教育プログラム。
      米国内外の100以上の大学でプログラムが試行されている。
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     学生にビジネスの感動を伝える講義
32
     米スタンフォード大学Technology Venture Programの集中講義では、起業に
     よる人生の感動を伝える授業を行い、学生から人気を集めている。




                                 (2010年3月には日本語訳が刊行されている。)
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     アメリカの実践教育は導入の余地あり
33


     ○アメリカの大学で盛んな「コミュニケーション」、「コーチング」、
      「リーダーシップ」、「チームワーク」等の実践的な授業は、
      日本の学部運営においても、『社会で生きるための力』を高め
      る上でかなりの効果があるのではないか。
     ○新制度を設計するにあたり、このBabson College、Stanford
      Universityの例にあるような米大学の実践的講義テーマの
      導入を検討すべきではないか。
      ●有効と思われる講義テーマ:「チームワーク」、「コミュニケーション」、
       「コーチング」、「説得力」、「クリティカル・シンキング」
      ●有効と思われるプログラム:
       「模擬会社プロジェクト」、「チームワーク養成プロジェクト」、
       「女性のリーダーシップ養成プログラム」
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      5:日本の状況

      日本の大学でのソーシャルスキル教育①
34
     ・全体として、働くことへの関心・意欲を高める教育として、「キャリアデザイン」、「コミュニケーショ
      ン」に関する科目が導入されつつあり、また資格取得講座とインターンシップの導入が多いことも
      特徴の一つ。ただし、米国に比べると、カリキュラムの深さ・幅広さに欠ける傾向がある。




                                    (出所)京都光華女子大学ホームページ
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      日本の大学でのソーシャルスキル教育②
35
     ・2003年設置された法政大学キャリアデザイン学部は、学部目標課題を『生き方・働き方・学び方
      の設計について考え、自分が育ち、人を育てる能力をつけること』としている。
     ・上記学部では、社会人基礎力(問題解決能力、思考力、チームで協働する力など)を育成するた
      めに、演習、基礎ゼミ、キャリア相談実習などの科目を設置している。




                                     (出所)法政大学ホームページ
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     日本の大学でのソーシャルスキル教育③
36
 ・電気通信大学のキャリア教育は、学部1~3年生の各学年にそれぞれ「キャリアデザインA~C」
  の講義(半期2単位)を行うとともに、インターンシップ、ベンチャービジネス論のプログラムを実
  施している。
 ・産業界のOB人材を中心に教育ボランティアを非常勤補佐員と
  して採用し、20名以上が学生と共に講義を受講した上で、学生
  を丁寧に支援する体制を構築している点が注目される。
 ・また、独自の「キャリア教育情報システム」を導入し、ウェブに学
  生ごとのマイページを設け、ここに書き込まれた学生の質問や
  講義の感想に、教育ボランティアがアドバイスするシステムを採
  用している。




     (出所)電気通信大学ホームページ
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     積極的に取り組んでいる状況も伺えるが
37
                           「社会人基礎力育成グランプリ2010」(経済産業省) 出場大学とプロジェクト
               創立120周年の会社に新しい風を吹き込め!!  産学連携弁当開発を通じた社会
 流通科学大学                                                           大賞     東京富士大学     街づくりを通した現場主義とチーム力による社会人基礎力の育成
               人基礎力の学び
 山形大学          学生の学生による学生のための就活支援出版社「プロステップ」                      準大賞    東洋大学       グローバルアニメーション文化応援ゼミ
               新今宮観光インフォメーションセンターの運営と国際ゲストハウス地域づくりに向けた社
 阪南大学                                                    準大賞             明治大学       フリーペーパーの企画・制作と配布 ―千代田区商業振興を支援する
               会的実践
               【凛とした仕事の出来る素敵な女性の育成】~ゼミにおける年間プロジェクト活動を通
 跡見学園女子大学                                               特別奨励賞            多摩美術大学     桐で新しい家具をデザインする
               した「社会人基礎力」の養成~
               管理栄養士に必要なコンピテンシーは、社会人基礎力を発揮して「健康弁当開発」
 愛知学泉大学                                              特別奨励賞               新潟工科大学     お年寄り・子どもも楽しめる「運動あそび」を考え出す
               から学べ。
 石川県立看護大学      看護大生が行う健康づくりを通じた地域の仲間づくりの再生           特別奨励賞               新潟産業大学     柏崎市での「米本位制地域通貨」の導入のための学内通貨流通実験の取り組み
 関西学院大学        宝塚「明日に架ける橋」PROJECT                                特別奨励賞   長岡大学       ユニバーサル社会をめざして―バリアフリーのまちづくり―
 東海大学          学内の仮想機械設計会社における技術者教育                              決勝進出    金沢工業大学     学部教育における集大成としての産学連携による卒業研究
               社会人基礎力育成プログラムBrandnew Yamanashi ’09。フィールド・リサーチ+
 山梨学院大学                                                          決勝進出    名古屋産業大学    ICカード型乗車券の導入効果予測
               アクション・ラーニング。
 豊橋技術科学大学      大学と地域が協働した実践型まちづくり・里づくり                           決勝進出    京都光華女子大学   キャリアデザインとその実現へのアプローチ
 中京大学          産学連携課題解決型プロジェクトの実践と成果検証                           決勝進出    京都産業大学     万葉集による山城地域の観光振興(観光案内リーフレットの作成など)
 名古屋商科大学       チームワークから学ぶ社会人基礎力~地域活性化の理論と実践~                     決勝進出    仁愛大学       コミュニケーション能力の向上をめざす学内や地域での学生活動
                                                                                    社会貢献を実現する継続的な研究発表会の運営と学生の企画・運営による社会人
 関西大学          ブランド・マーケティング研究を通じてめざす“THINK × ACT”                決勝進出    摂南大学
                                                                                    基礎力の養成
 相愛大学          脱メタボをサポートする「食のコンセルジュ」育成プロジェクト                     決勝進出    大阪工業大学     歩行支援ロボット開発プロジェクトを通した社会人基礎力の育成
 大阪大学          「最新技術を伝工芸に活かす」                                    決勝進出    大阪産業大学     大阪産業大学学生フォーミュラ参戦プロジェクト
 奈良教育大学        なんと(南都)飛びだせ!はじめの一歩。仕事で輝く社会人に直接インタビュー。             決勝進出    大阪女学院大学    「エリアスタディ大阪」で学びの世界へ -AO入試で気づきのプログラム-
 高知大学          「人間ボウリング」で土曜夜市を盛り上げたい!                            決勝進出    大阪商業大学     フィールドワークを活用した社会的問題解決能力の養成
 北海道大学         北大映画館プロジェクト実行委員会2009 「クラークシアター2009」                       羽衣国際大学     産業社会学部キャリアデザイン学科・夏期集中合宿講義「キャリアと社会」
                                                                                    尾道市商店街“パリゴ”に、尾道大学生等若年層がもっと買い物に行くようになるかにつ
 宮城大学          段階的な社会人基礎力育成を通じた専門性を活かした教育の実践                             尾道大学
                                                                                    いての方策
 共愛学園前橋国際大学    学生社長「繭美蚕」による地域との共創                                        広島経済大学     広島経済大学興動館 中高生の夢・笑顔実現!!プロジェクト
 前橋国際大学        社会人基礎力でまちづくりの現場へ踏み出し、そしてまた成長                              広島国際大学     自作電子遊具を用いた高齢者のコミュニケーション能力向上と認知機能維持
 千葉工業大学        新入生オリエンテーション―遠山メンターグループ―                                  山口大学       地元企業と共に山口の価値向上を目指すビジネスプランの作成
 城西大学          I T を活用した地域活性化プロジェクト「さかどのめ」。                              香川大学       パターの表面パターンのデザイン最適化
                                                                                    「チャレンジポイント制度による社会人基礎力の育成」。学生が挑戦したいテーマを企画
 慶應義塾大学        POM2~ステッカーで地雷除去キャンペーン~09年度の活動を通して                         高知工科大学     し自身の力で遂行し達成したと認定されると、難易度に応じて授業成績に関するポイン
                                                                                    トが付与される仕組み。
 デジタルハリウッド大学   小倉ゼミ『ショートムービー制作』におけるコミュニケーション能力の育成                        松山大学       学生向けフリーペーパーの企画・営業・制作
                                                                                    まちなか活性化プロジェクト~こころに響く商業施設コラボレーションイベントをプロデュー
 電気通信大学        キャリアデザインC (PBL)「キャンパスライフ改善プロジェクト」                         日本文理大学
                                                                                    ス~
 東京家政学院大学      うこっけいハムを用いた新商品開発プロジェクト
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      一部のトップ大学では・・・
38
     ・実践的なカリキュラム導入が一部大学で積極化しているとはいえ、学生の自己価値向上にむけ
      た教育が学部内では実施されていない大学もみられる。
     ・例えば、現在の東京大学経済学部では、金融工学等で新科目が導入されているものの、全体と
      しては10年前と変わらないカリキュラム編成であり、ファカルティ側の学生ソーシャルスキル向上
      に対する関心は感じられない。
                          東京大学経済学部(学部3-4年生) 2010年度夏学期・講義時間割
                     1限            2限            3限                  4限                   5限
           国際経済           農業経済              経営管理            国際金融特論                確率モデルと統計手法演習
           経営戦略           金融                財政              金融政策特論
           企業財務           上級日本経済            数理統計            グローバル化の中の金融
           経済学方法論         ファイナンスのための数値計算    上級国際経済          政治経済学
         月
           商法(2)          商法(1)             企業金融特論          エネルギー政策
                          基礎数学演習                            確率モデルと統計手法
                                                            民法(1)
                                                            各ゼミナール
             日本政治史        近代日本経済史           現代資本主義論         数学Ⅱ
                          労使関係              経営史             日本政治
                          経済学のための数学         国際貿易            各ゼミナール
         火
                          財務会計              経営戦略特論
                          数理統計演習            上級ミクロ経済学
                                            行政法
           アジア経済史         経営管理特論            金融システム論         為替政策                オルタナティブ・インベストメント
         水 民法(2)          金融機関のリスク管理        ツールとしての計算機      金融システムの諸問題と行政
                          商法(1)                             商法(2)
           経営管理           国際経済              農業経済            実証ファイナンスと金融エコノメトリクス 上級日本経済史Ⅰ
           財政             証券投資、理論と実践        金融経済学           ファイナンスのための確率解析入門
           上級マクロ経済学       金融政策              金融              各ゼミナール
         木 行政法            経営戦略              コンピューターと情報処理
                          障害学Ⅰ              上級経済原論
                          応用統計
                          マクロ経済学における統計物理学
             数理統計         現代資本主義論           近代日本経済史         経営科学                  経営科学
                          経営史               労使関係            上級国際貿易論               証券化と企業金融
                          国際金融              経営組織            日本政治史
         金
                          上級西洋経済史           ゲーム理論           マーケティングリサーチ
                          日本政治              財務会計            各ゼミナール
                                            数学Ⅰ
                                                                               (出所)東京大学ホームページ
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     慶應義塾大学の模擬会社プロジェクト
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     ○Junior Venture Program(JVP)
     ・慶應理工学部と慶應ビジネススクールの2つの大学院で、1年間のベンチャー論講義を行い
      つつ、講義の約60%の時間を使って、模擬会社を設立し運営する講義内実践プロジェクト。

     ・慶應理工学部大学院:起業論受講のM1院生が模擬会社を設立(1社当たり数名で7~10社
      を設立)、学園祭の模擬店に向けて、販売計画・販売戦略を策定。
     ・慶應ビジネススクール(KBS):M2院生が疑似ベンチャーキャピタルファンドを設立。理工学部
      の模擬会社プロジェクトを審査し、出資可否を選別し決定。投資を実行。
     ・KBS院生が投資家となり、会社経営陣(理工院生)の指導にあたる。学園祭前に仕入計画、
      販売実行の具体的プラン、宣伝プラン等を策定する。
     ・11月上旬の学園祭(理工学部・矢上祭、2日間)で、出店販売と計画修正を行う。
     ・学園祭終了後に、代金回収・計算・簿記帳簿・決算書作成を行い、株主(KBS院生と理工院生
      の経営陣)に株主総会で事業を報告。報告後に株主に配当を実施し、会社を解散する。
     ・会社設立から解散まで(約100日)を振り返り、問題点、成功失敗を評価分析し、レポートを
      とりまとめる。

       ・当プログラムの全体進行は、㈱日本テクノロジーベンチャーパートナーズ(小野所属)が
        策定し、上記2つの大学院での授業と、JVPプログラム進行を采配している。
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     慶應義塾大学の模擬会社プロジェクト
40
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     学生の社外奉仕活動(アウトリーチ)
41

     ○東京大学アウトリーチ・イニシアティブ(UtoI)
     ・2007年に3人の学生の企画が、学内コンテスト優秀賞に選出され、公式活動として業務を
      開始。現在のUtoIは、主に高校生や地域コミュニティに対する東大の広報活動・科学技術
      教育の普及活動をサポートする役割を担い、学生メンバーによって運営されている。
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     6:対策と留意点

     今後、学部教育で導入すべきテーマ①
42

                     テーマ                      概要とキーワード                            単位化
             「自己分析」           自己に積極的価値を見出す。                                          可
             「コミュニケーション」      自他の認識、積極的傾聴、異文化・ダイバーシティ対応、感動を伝える。                      可
            「チームワーク」                                                                 可
     ①講義
            「達成力」             モチベーション、忍耐力。                                           可
      中心
            「指導力、コーチング」       企業組織や、スポーツ団体、サークル・コミュニティ等での人を統率・指導する実際の力。              可

             「交渉力」            ネゴシエーション、説得力。                                          可
             「キャリアデザイン論」                                                             可

             「生き方をめぐる思想」                                                             可
             「企業の中でどう生きるか」                                                           可
             「異文化コミュニケーション」   他地域、他人種、他民族との交流・付き合い方・自己表現。                            可
             「現代経済社会と雇用」                                                             可

             「自己表現論」                                                                 可
             「社会人から聞く」        近郊企業の幹部社員・若手社員から、働く知恵と苦労を聞く(シリーズ講義)。                   可

             「さいたまの会社シリーズ」    近郊の中堅中小企業の第一線社員の方から、生の企業像を聞く(シリーズ講義)。                  可
             「先輩体験談」          大学の若手OBOGから、入社後の体験談を聞く(シリーズ講義)。                        可
     ②プログ    「特別プログラム」        ソーシャルスキル向上の希望者、課題がある学生等への授業外の特別プログラム。
      ラム     「キャリアカウンセリング」    受講者とカウンセラー(役)の双方向授業、面接、トレーニング。
             「国際体験と自分探し」      海外研修やホームステイを通じて自分を見つめなおす、社会との関わりを考えさせる。
             「就業力測定テスト」       学生の「就業力」を定量的に測定するテスト。学生を評価し課題をみつめさせる。
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     今後、学部教育で導入すべきテーマ②
43

                    テーマ                            概要とキーワード                         単位化
                                消防署・自衛隊・水道局・警備会社などの社会を支える職場の短期体験。体験を通じ               講義と
              ・学外体験研修
                                ての自己評価。                                               Mix
              ・模擬会社             大学学園祭、地域祭を活用した、学生による模擬ベンチャー経営プロジェクト。                 講義と
              ・就業体験(インターンシップ)   型どおりの形式的研修に流されない手法の工夫。本気度とインボルブメントの高いイン               Mix
                                                                                     講義と
                                ターンシップを目指す。                                           Mix
     ③プロジェ
             ・「ふるさと」と自分を考える     これまでの自分の歩みと、故郷の職場・仕事・家族・先輩を結びつけ、自分の置かれた              講義と
      クト
                                立場を再認識させるとともに、今後の方向を考えさせる。                            Mix
              ・社会奉仕活動(アウトリーチ)   自分達は大学外の社会で何ができるか、自分達や学内のリソースを使って社会に貢献               講義と
                                できる事業を企画検討し実践する。大学の金銭支援。(長期プロジェクト)                    Mix
                                老人福祉施設やデイケアセンターへの1週間就労体験コース。ケアサービスの技術や苦              講義と
              ・福祉体験プログラム
                                労を実体験させ、自分を考えさせる。(短期就業)                               Mix
                                学生に部活・サークル活動を通じた自己形成、自己価値向上の姿を分析させ、より意               講義と
              ・部・サークルからみた自分の力
                                義ある生き方を考えさせる。(長期プロジェクト)                               Mix
                                長期プロジェクトへの従事学生には、プロジェクト授業単位と卒論単位の取得を可能とす
              ・プロジェクト卒論                                                                可
                                る。大学講義とは異なる社会的テーマも可とする。
                                授業での参加度・積極性・主体性に優れた学生、授業外で社会的に意義のあるアク
              ・ベスト・プラクティス表彰                                                            -
                                ションをした学生を表彰。年間10~20人の学部長表彰など。
     ④その他
                                学内にわかりやすいキーワード・運動用語作り。標語の学内掲示・宣伝。
              ・学内での広宣                                                                  -
                                (例)「働くチカラ、生きるチカラ」。



     ○就業力教育カリキュラムについては、別稿ファイルを参照されたい。
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      疑問1:低学力のまま働けるか?
44

     ・大学生のソーシャルスキル強化論において、以下の疑問があるのは自然。
      ①経験知からして、社会人としてしっかりやれそうな学生は、「普通は基礎
       学力がある」のではないか?
      ②基礎学力と一般常識なくして、はたしてスキルだけで一流の社会人とし
       てやっていけるか?
      ③従来は「学力」を測定すれば社会人としての力がわかるという考え方で
       あったものが、「学力」と「社会人基礎力」それぞれ個別に評価する時代
       になっているのでは?
      ④基礎学力と、(ソーシャルスキルとして重要である)問題意識の相関性
       は高いのではないか?
      ⑤こうした点からも、基礎学力の充実あっての就業力強化、ではないか?

     ・学生の知識、能力、人間性等の総合性を踏まえて、バランスの取れた議論
      をすべきである。
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      疑問2:学生は「引出し」が小さいのでは?
45
     ・社会人や年長者と話せないのは、大学生の「知識の引出し」が小さすぎるのでは?
      コミュニケートする気持ちがあるが、会話するもの(知識、情報)がないのでは?
     ・結局は、従来の定見である『より知識を持ち、より深く考える者が、他より良い結果
      を得る』という構図になる可能性が高いのでは?
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        根は深い、取り組みは長期的
46
     ・大学授業運営の問題では、「学生の基礎学力がない」点が突出している。
     ・こうした基礎学力、学習意欲の向上策は、時限処理ではなく、長期的課題。

            授業で直面している問題点(学生に関して)                           授業で直面している問題点(教員に関して)

                その他         13.0%                                    その他                9.6%


     コミュニケーションをしようとし
                            13.0%                      授業設計、授業技術の工夫が必要                                 30.2%
           ない


          学習意欲がない                    37.2%                 関連教科との連携が難しい                               28.4%



          基礎学力がない                            56.3%      学生とのコミュニケーションが難しい                  15.2%


     教員の言葉を理解できな                                             授業改善に関心がない
                            13.0%                                                0.6%
            い

                                                     動機付け・学習意欲を高める工夫が難し
         授業に出席しない           12.6%                                                                                 47.6%
                                                             い


                       0%   20%     40%      60%                            0%     10%     20%     30%     40%     50%

        (出所)私立大学情報教育協会「平成19年度 私立大学教員の授業改善白書」。上記の数値は各項目を指摘した教員の比率%。
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      就業力も基礎学力も、強化が必要
47

                        92%
                                センター利用私立大学における合格水準得点率
     ・私立大学のセンター試験利用入    90%          (代々木ゼミナール調査、2009年度入試)
      試結果では、対象2~3科目のセ   88%   (関東1都6県の法・経済・経営・商・社会科学の私大・各学部を対象。)

      ンター試験得点率が60%に満た   86%
                        84%
      ない水準の入学者が多数存在し
                        82%
      ており、大学生の基礎学力は依    80%
                                                   (大学グループ)
                                                              :早慶
      然として課題である。        78%
                                                              :MARCH
                        76%
     ・また、推薦・AO入試での入学者   74%
                                                              :日東駒専

      が50%を超える中(全国私立大   72%
                                                              :関東上流江戸桜


      学平均)、一般入試入学者との    70%

      学力格差が顕在化している。     68%
                        66%
     ・基礎学力向上をなおざりにして    64%

      は、大学教育にとって大きな課    62%
                        60%
      題を積み残すことになる。
                        58%
                        56%
                        54%
                        52%
                        50%                (注)ただし、センター利用入試は、大学・学部により、 試験
                        48%                科目数が2~6科目と異なっている。一般的に、科目数が増
                                           えれば、合格水準得点率は低下することに注意する必要が
                        46%
                                           ある。
                        44%
                        42%
                        40%
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      ただし、あれもこれもではいけないのでは?
48
     ・入学者減尐の経営プレッシャーから、広宣指向に走るあまり、公開内容の信頼性が
      問題となったり、実際の教育内容や指導体制に課題が深まる危険性はないか?。
                     新聞広告に掲載された各大学のキャッチフレーズ(例)
       「あなたの個性値を伸ばす大学」                              亜細亜大学
       「多様な入試制度であなたの努力にこたえます」                       神奈川大学
       「渋谷に都市型キャンパス誕生!」                             國學院大学
       「“サクラサク” チャンスを3回用意しました」                      文教大学
       「学ぶ楽しさ、知るよろこび」                               埼玉学園大学
       「一般入試Ⅰ期でスカラシップ入試実施」                          川村学園女子大学
       「2010年4月、4学部体制の文系総合大学に!」                     大正大学
       「自分のスタイルに合った入試を選ぼう!」                         拓殖大学
       「歯学部・文学部はセンター試験利用入試を2回実施します」                 鶴見大学
       「4年間で高める『卒業成長値』 。育てたいのは生活者視点のプロフェッショナル」      東京家政学院大学
       「親孝行の受験-入試成績による特待生総数276名」                    東京経済大学
       「3学科16コースから選べます」                             東洋学園大学
       「伝統に未来に125。 2012年、東洋大学は125周年を迎えます」           東洋大学
       「全入試オールマークシート! 出願まだ間に合います」                   武蔵大学
       「全学部が同日に入試を行う全学部日程と個別学部日程を実施します」             立教大学
       「センター利用入試と一般入試の両方式を併願できます」                   早稲田大学
      (出所)2010年1月中旬(大学入試センター試験前後)の全国紙の掲載広告から抽出した。
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      学部のメニユーリストは増えるばかり
49
     ・平成以降における基礎学力充実の流れから、
      大学でカリキュラム改革が進展。その中で、
      学部の講義科目は、現在、相当膨大な数に
      のぼっている。
     ・就業力強化に向けての運営改革は急務であ
      るが、「多種多彩なメニユー、乏しい中身」、
      「羊頭狗肉」の弊害はないか?。
           私立大学・各学部の講義科目総数(推定)
                             講義科目
                   学部   学科               注記
                              総数
      M大学         経済    経済      417
      J大学         経営          1,247
      S大学         経営            286
      D大学         経営    経営      311
      T大学         経営    経営      425
      W大学         商           1,231
      R大学         経営          1,433
      K大学         経営            745
      KG大学        経済            702
      (注)各学部の講義シラバスシステムより、1年の開催講義数を検索して算出した。ただし、
      少人数クラス編成から同一テーマで多数の科目がある例などがあり、上記の科目数は異なる
      科目の合計ではない。                                   (出所)関東地区の私立A大学国際経営学部のホームページ
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      カリキュラム全体や運営の見直しも必要
50
     ・10年来の多様な要請に対応する中で、学部カリキュラムは増加、複雑化している。
     ・今後、就業力強化のために新たなカリキュラム導入が進展する動きであるが、学内リソースが
      限られる中、既存のカリキュラム全体の見直しも必要ではないか。
     ・また、相当数の大学において、一部科目の教育内容が時代の変化や社会の関心・ニーズに対応
      しきれずに陳腐化しているケースも見られる。研究者・教育者的視点にとどまらず、広い社会
      ニーズに応えた教育内容に変えるべく丌断の努力を要するのではないか。

                                      大学講義へ寄せられる批判・疑問の例
            (テーマ)                                     (批判、疑問)
      講義の迫力、面白さ          テレビのクイズ番組を見なれた大学生には、ビジュアル性、エンターテイメント性のない講義には関心がない。チャレンジングな講義内容ではない。
      現代実社会と講義のつながり      講義内容と実社会がどうつながるのかについて、教員から説明がないからつまらない。
                         教科書を読んで黒板に書くだけの授業では、高校の社会の授業と同じと思われて、学生から無関心な対応となる。高齢教員が学生と話題が違い
      一方的授業
                         すぎて、面白い話ができない。
      プレゼンテーション技術        教員にパワーポイントやプロジェクターを活用したマルチメディア・プレゼンテーション技術がない。
      ネットの活用             教員にホームページ、メーリングリスト、携帯メール等の活用がなされていない。
      講義にニーズが汲めていない      教員が学生のニーズ、関心を把握できていないために、双方向の議論・会話とならない。
      過去の理論、古典重視の講義      就職のために実学を習得する学生にとっては価値が低く、関心も薄い。
      消極学生への対応           学生の関心を授業で引き出す工夫に課題が多い。学生の興味や授業参加を引き出すアクティブ・ラーニングができていない。
      非常勤講師の多さ           外から来た非常勤講師が学生の関心も把握できないまま、自分の専門のテーマだけ教えている。
      経済理論               講義が資本主義体制批判を中心にやっているが、これらは経済学史で教えるものではないか?。
      国際経済学              講義が19-20世紀の比較優位論や産業発展論の講義にとどまり、現在のグローバル化や同時連関化した国際金融メカニズムの説明がない。
      財政学概論              ドイツ財政論が中心に講義をしているが、今後の社会生活を考えれば日本の仕組み、課題、財政の国際比較を中心にしてほしい。
                         企業についての基礎知識や歴史知識が乏しい学生には、19世紀以降の経営学理論を説明しても興味がわかない。学生は、日本の大企業の
      経営学
                         最近にしか関心がないために、経済や企業がどう発展してきたのかについて、面白く関心を持たせるような講義の工夫が必要。
                         高度成長から1980年代の自動車産業や電機産業の分析ばかりで、学生は生まれていない頃の話なので関心が薄い。教員は現代のインターネッ
      日本産業論
                         ト産業には精通しておらず、講義がない。
      (出所)インターネットから検索。
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      導入は、大学・学部の学生特性による
51
     ・いうまでもなく、744校存在する大学は、教育内容、学生、校風それぞれが多様。
     ・就業力強化に向けた実践的プログラム導入は、専門指向の強い大学・学部ではなく、
      学生の実業指向が強く、かつ民間企業就職希望者の比率が高い大学で導入するニー
      ズが高いと考えられる。
                     大学学部における学生の専門指向の分布(イメージ)
                                  (高)
             学生の専門指向/実業指向は、各
             大学・各学部により異なるが、総じて
             いえば、学部教育の専門性水準と               医・生化学系
             相関するものと推定する。                (医・歯・薬・獣医)
                                  学
                                  部
                                  性
                                  教
                        経済・経営系    育
                                  の
                                  専
                                  門
                                  性


                                        (なお、ここで示す専門性の高低が学力
                      福祉・保育・家政系
                                        水準と直接連関するとは考えていない。)



            ←学生の                                 学生の専門知識      →
             実業指向                 (低)            専門技能指向
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      本腰を据え、冷静に方向整理する必要
52
     ・本来、大学における学術と実践には、容易に連携が取れない要素も含まれる。
     ・また、社会的自立、職業的自立に向けて「学生を踏み出させる」のは学生自らの意思
      と行動であり、大学といえども外から学生を変えるのは容易ではない。
     ・就業力強化は、ともすれば短期的対策になりがちであるが、大学運営を広範囲に視野
      に入れつつ、長期的で地道な取り組みが必要である。
     ・また、現状の多様な改善策のシナジーをじっくりと冷静に検討し、学内各層の合意形
      成を図った上で運動を盛り上げていくとともに、推進するグループへの支援と配慮が
      必須と考える。




       Academic   Pragmatic
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       学術指向       実践指向

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Competencies at Work and Japanese Universities

  • 1. 1 - DISCUSSION NOTE – 就業力強化と大学講義運営 Competencies at Work and Japanese Universities April 30, 2010 Masato Ono masaono777@gmail.com
  • 2. Masato Ono, All rights reserved. Agenda 2 1. 就業力の強化? 2. 企業で何が変わったか 3.大学を取り巻く環境 4.アメリカのケース 5. 日本の状況 6. 対策と留意点
  • 3. Masato Ono, All rights reserved. サマリー 3 1.低成長の中、企業が新価値創出を強化しており、若手にその期待が高まっている。ま た企業では人材を一から社内育成するスタイルよりも個々の業務に最適な人材を適 宜投入するモジュール化が進んでいる。この中で、新卒者に求められる能力は実際 的な就業力が中心になっており、とりわけ、「人との接触の中で仕事に取り組める」た めのソーシャルスキルが求められている。 2.就業力の基本は、積極的に疑問を持ち、へこたれず、皆と一緒に働けることであり、こ れらは従来から主張されているような、社会で生きるための力である。 3.しかし、従来の予定調和的な講義中心で一方向的な学部カリキュラムでは、大学生 が受け身思考のまま社会に出ていく傾向からは容易に脱せられないと思われる。 4.今後の対応としては、学部講義における実践的科目の導入、就業力強化に向けた集 中講義、模擬会社・就業体験等の講義外実践プログラム・アウトリーチ(学外奉仕)プ ログラムの設置によって、従来の専門知識、基礎学力とは内容が異なる「ソーシャル スキル」を学生に習得させることが望ましい。 5.ただし、多数の大学改革策が実行される中では、単に今回の対策メニユーを増やす だけではいたずらに混乱だけが生じる危険性がある。基礎学力充実や他の改善策と のシナジーのある対応を冷静に検討すべきと考える。
  • 4. Masato Ono, All rights reserved. 1:就業力の強化 大学行政の変化 4 文部科学省は、今年から大学に対し『就業力』を培う体制を整え ることを求めている。 就業力とは、下記の青字下線部分で示す能力。  今年の大学設置基準改正(2010年2月25日改正、2011年4月1日施行) ・大学は、当該大学及び学部等の教育上の目的に応じ、学生が卒業後自らの資質を向上さ せ、社会的及び職業的自立を図るために必要な能力を、教育課程の実施及び厚生補導を 通じて培うことができるよう、大学内の組織間の有機的な連携を図り、適切な体制を整える ものとする。 (以上の規定を大学設置基準第42条の2として新設)  文科省の説明(上記大学設置基準改正の留意事項) ①就業力教育の大学内外への公開: 授業科目のシラバスや体系的な教育課程の編成を通じて、社会的職 業的自立に関する指導等の在り方を明らかにすること。 ②教育実施体制の構築: 大学内各組織の緊密な連携や組織の活用を通じて体制を整えること。 ③対外説明の義務: 社会的・職業的自立に関する指導等の取組について、広く社会に説明していくこと。 ④対外連携の必要性: 産業界や地域の各種団体、関係行政機関等との連携・協力に努めること。 ⇒ 大学で具体的な教育を定めること、企業等との連携、学外公開が義務化。
  • 5. Masato Ono, All rights reserved. 文部科学省の示したこと 5  大学において、以下を求めている。 ・具体的な教育内容を、カリキュラム等で定め、 ・学内の実施体制(組織)を整え、 ・企業等の学外組織と連携し、 ・学外に公開して広く社会に説明する。  文科省の示す「就業力」とは? (大学設置基準第42条の2新設項目より) ①卒業後自らの資質を向上させ、社会的、職業的自立を図るために必要な能力。 ②大学で、社会的・職業的自立に向けた指導等(キャリアガイダンス)を行うこと。 ・卒業後に役立つ社会的に必要な能力や実践的な能力とする。 ・ソーシャルスキル(社会技能)と社会的な体験やノウハウを含めている。 ・基礎学力や専門知識能力とは、明確には区分していない。
  • 6. Masato Ono, All rights reserved. 審議の経過 6 ・2009/6以降に、就職支援活動の大学教育における必要性が指摘され、 2010/2の設置基準改正でその実施体制づくり・組織化等を法令で義務化した。 文部科学省の大学政策に関する審議と政策 (実業教育・職業指導に関する事項) 1998/10大学審議会答申 ・職業人の再学習など生涯学習需要の増大 ・専門職業大学院の設置促進 ・地域社会や産業界との連携促進 2000/11大学審議会答申 ・学生の実体験の重視や職業観の涵養 ・教員の教育能力や実践的能力の重視 ・専門大学院の充実による高度専門職業人の養成 ・企業と大学との共同による教育プログラムの開発 ・社会人の学習環境の充実 2004/4 ・法科大学院制度を創設 ・「学生が本気で学び、社会で通用する力を身に付けるよう、きめ細かな指導と厳格な成績評価するこ 2008/3中教審大学分科会(審議のまとめ) と。」を提言。 2009/6中教審大学分科会(中長期的な大学教 ・学生の履修指導や就職支援を、学生支援体制の検討課題とした。 育の在り方に関する第一次報告) ・新たな大学の教育活動として、職業指導(キャリアガイダンス)の大学教育への位置づけを学生支援体 2009/8中教審大学分科会(中長期的な大学教 制の検討課題とした。法令上も、キャリアガイダンスの実施を明確にすることにより、大学において組織的かつ 育の在り方に関する第二次報告) 計画的な取組を推進することが重要とした。 ・大学設置基準の改正に以下が適当とした。「大学は、学生が卒業後自らの資質を向上させ、社会的及び 2010/1中教審大学分科会(大学設置基準の改 職業的自立を図るために必要な能力を、教育課程の実施及び厚生補導を通じて培うことができるよう、大 正について諮問) 学内の組織間の有機的な連携を図り、適切な体制を整えるものとする。(要約)」 ・大学は、当該大学及び学部等の教育上の目的に応じ、学生が卒業後自らの資質を向上させ、社会的及 び職業的自立を図るために必要な能力を、教育課程の実施及び厚生補導を通じて培うことができるよう、 2010/2大学設置基準の改正 大学内の組織間の有機的な連携を図り、適切な体制を整えるものとする。(以上の規定を大学設置基準 第42条の2として新設) (出所)文部科学省発表資料
  • 7. Masato Ono, All rights reserved. (注記)用語の使い方 7 ・「社会的、職業的自立に向けた指導」をキャリアガイダンスとし、教育課程内外を通 じて学生に身につけさせることを法令で明文化(2010/2大学設置基準改正)。 ・なお、「職業指導」の用語は、下記のように誤解が生じやすく、使用を控えることに。 大学における正規の教育課程 大 厚生補導 学 学生の人間形成を図るために行われる正課外の諸活動における様々な指導,援助等。 教 課外教育活動,奨学援護,保健指導,職業指導等を含む。 育 課 職業指導 程 の 外 ●文科省の位置づけ ①「職業指導」は、従来から、正規教育課程外の厚生補導の一つとみなしてきた。 ②また、「職業指導」の用語は、正規教育課程の中に属する「職業教育」との誤解が生じやすい。 ③このため、文科省では、「職業指導」ではなく、「社会的・職業的自立に関する指導等」として整理。 ④2010/2に大学設置基準等を改正し、教育課程内外を通じた「社会的・職業的自立に向けた  指導等(キャリアガイダンス)」という概念を制度化した。 ↓ 学生に対して、教育課程内外を通じて、社会的・職業的自立につながる「就業力」を身につけさせる。
  • 8. Masato Ono, All rights reserved. 今更、なぜ就業力なのか? 8 1. 成熟化により、企業が新しい価値の創出(イノベーション)が重要 な課題になっている。 2.上記の価値創出に向けて若年人材が投入される中で、新卒人材 への期待が変化している。 ⇒新卒者の採用基準は、コミュニケーション能力、実行力、 積極性に重点が置かれ、学力よりはるかに重要視。 ⇒企業は『人との接触の中で取り組める能力』を重要視。 (ソーシャルスキル or 就業力 or 社会人力) (注)このレポートでは、上記の3つの用語は基本的に意味を同じくするものと考え、同様な対象に 3用語を使っている。 3.一方、平均的な大学生において、積極性の低下、受け身指向が 指摘され、企業の期待とのギャップが鮮明になっている。
  • 9. Masato Ono, All rights reserved. 採用ではコミュニケーション能力が必須 9
  • 10. Masato Ono, All rights reserved. 企業は、学業よりソーシャルスキルを求める 10 採用選考にあたって特に重視した点(複数回答、n=387社) その他 4.1% インターンシップ受講歴 0.0% 保有資格 0.5% 所属ゼミ・研究室 0.8% 緑色は、「ソーシャル・スキル」に分類できる要素。 クラブ活動・ボランティア活動歴 0.8% 感受性 1.0% 赤色は、学校教育で習得する要素。 語学力 2.6% 出身校 3.9% 倫理観 4.1% 学業成績 5.4% 一般常識 13.5% 信頼性 13.7% 創造性 14.5% 柔軟性 15.8% リーダーシップ 16.3% 職業観・就労意識 16.6% 専門性 19.2% 論理性 21.2% 潜在的可能性 25.6% 責任感 32.9% 誠実性 38.9% チャレンジ精神 48.4% 協調性 50.3% 主体性 60.6% コミュニケーション能力 81.6% 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 60.0% 70.0% 80.0% 90.0% 日本経団連「新卒採用に関するアンケート調査」(2010年度)
  • 11. Masato Ono, All rights reserved. 企業採用担当者の生の声 11 ①大手ソフトウェア会社・人事担当A氏(東京都) Q:新卒採用に関して、今どんな人材が欲しいですか。またその見分け方は? A氏:学生に求めるものは以前と変わりませんね。長い目で見たとき、成長できるポテンシャルが大きい人材が欲しい。 例えばエンジニアを採用する場合でも、学生が今持っているエンジニアとしてのスキルを見ることはほとんどないし、英語力 や学校の成績を見ることはまずありません。 Q:当然、技術力は重要でしょうが、そのほかの要素を重視すると。では何を見るのでしょうか? A氏:人としての動き方、行動特性みたいなものですかね。知識でも技術でもない、その人自身がどう行動できるかを 見ます。キーワードを挙げるとすれば「オープンである」とか「コミュニケーションが取れる」とか「大きなチャレンジが好きだ」と か。これらのポイントについて、グループディスカッションや面接での発言や振る舞いから、採用担当者がその場で実際に 感じたもので評価していく。学校名や所属学部などは事前に記入してもらいますが、これはあくまでも参考程度です。高 学歴であっても行動特性の観点で評価できなければ採用しません。 ②電子部品メーカー・総務人事担当B氏、C氏、D氏(長野県) B氏:当社の採用は、知識ではなく人物重視ですね。 C氏:そう、専門知識より人物です。学校で学んだ知識は、入社後一旦ゼロにしてもらうぐらいに思っています。 D氏:コミュニケーション能力のある人、チャレンジ精神の旺盛な人は大歓迎ですね。柔軟な発想力がある人、ポジティ ブ思考で困難な局面にも立ち向かえる人もいいですね。「これじゃできない。」じゃなくて、「こうすればできる!」って考えら れる人だね。 B氏:何といっても「やる気がある人」。そういう人ってピンとこない?。大勢の中でなんかこう輝いて見えない? C氏:うん。それと、話を聞きたいという姿勢を見せてくれる学生も印象に残ります。格好良くなくっても、わからないこと、 聞きたいことを遠慮せずに質問してくる人はいいですね。そういう人は雰囲気でわかります、この人はやる気だなって・・。 (インターネット情報から2009年担当者座談会について抽出。)
  • 12. Masato Ono, All rights reserved. 「就業力」、「社会人力」へ期待が高まる (注) 12 ○企業は、新卒を一括同期採用を行い、複数部署を経験させ ながら、当該企業に最適の人材を「作りこみ育成」していた。 ・その中で、企業が新卒者に求めたのは「潜在能力」、「理解力」、 「協調性」が主であった。新卒者が足らない能力経験は、社内 OJT等の能力開発で向上させていた。 ○現在は、前述の「新しい価値創出」の実現圧力の中、 新卒者 に求められる能力は、より実際的になっている。 ○こうした中、新卒者は、コミュニケーション能力、協調性、 主体性など、 「人との接触の中で仕事に取り組む能力」 が企業に求められている。 (注)公式文書で解釈すると、文科省の示す「就業力」は、「大学卒業後に役立つ社会的に必要な能力や実践的な能力」、 経産省の示す「社会人力」は、「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」である。 したがって、両者に定義上の区分けが必要なほどの明確な差異はないと思われる。
  • 13. Masato Ono, All rights reserved. 2:企業で何が変わったか 「新しい価値の創出」が重要な経営課題 13 ○21世紀において、ビジネス環境について以下の変化が指摘される。 ・国内市場の成熟化、国内市場全体の停滞、グローバリゼーションの進展 ・市場ニーズの多様化、商品サイクルの短期化 ・迅速な製品サービスの開発と市場投入 ・IT化、ネットワーク化の進展 ○職場では、「新しい価値の創出」、「グローバル化」が重要な課題に。 上場企業における経営課題の優先順位 2003年 2009年 2012年の 2015年の の課題 の課題 課題 課題 新製品・新商品・新事業開発 4位 4位 3位 1位 (回答割合) 25.4% 25.3% 34.7% 15.9% グローバル化への対応 12位 7位 5位 2位 (回答割合) 10.4% 13.8% 22.8% 11.9% (回答時期) (2003年) (2009年) (2009年) (2009年) (出所)日本能率協会経営研究所「当面する経営課題に関する調査」。
  • 14. Masato Ono, All rights reserved. 企業における製品戦略 14 経営におけるプロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM) (高) 問題児 花形 (wild cat)  拡大戦略 (star) 成 長 性 負け犬 金のなる木   維持戦略 (dog) (cash cow)       撤退戦略 (低)      市場シェア (高)
  • 15. Masato Ono, All rights reserved. 若手人材に新価値創出の期待が高い 15 ○「新価値創出」、「グローバル化」の課題が高まる中、 ・歴史的に、企業の変革を担うのは「若手人材」。 ・終身雇用の下、企業は中高年人材には「維持戦略」で対応。 ○企業では、「新しい価値の創出」、「グローバル化」に 適した若手人材を期待。 ○企業採用においても、学生に上記に適合した能力・知識 に関する期待が高まるのは必然的。
  • 16. Masato Ono, All rights reserved. 人事戦略が新規価値創出力にシフト 16 企業人材ポートフォリオ・マネジメント(PPMの類型化) (赤マル領域の人材に、会社の期待と負荷が (高) かかる傾向。) 新卒     期待若手 幹部社員 社員    (wild cat)  育成戦略 (star) 新 規 開   引き上げ努力   維持戦略 発 問題視 停滞層   出向転籍 力 (question mark) (nothing new)        (低)      社員の年齢 (高)
  • 17. Masato Ono, All rights reserved. かつては、「人材を作りこんだ」日本企業 17 1980年代までの日本の大企業の人事マネジメント (新卒一括採用→社内育成。均質な人材を「作りこみ」、業務を効率化・統合。) 【作りこみ型】アーキテクチャー   (高) 経営層  緑色の領域は 業務 責 中間管理層 任 (部課長) 度 合    年功+実力の昇進 業務執行層(係長・一般社員) 新卒一括採用    同期入社、一斉スタート   (低) 下請会社・協力会社
  • 18. Masato Ono, All rights reserved. 現在は、企業が人材投入を「モジュール化」 18 現在の日本の大企業の人事マネジメント (業務モジュールごとに最適の人材を投入+アウトソーシング) 【組み合わせ型】アーキテクチャー 経営層  (高) 緑色の領域が 業務モジュール 中間管理層 外部専門集団 (部課長) (コンサル等) 中途採用 責 任 業務執行層 度  アウトソーシング (外注化) 合 (派遣・パート) 事務・サポート業務 派遣社員投入 (低) 下請会社・協力会社 新卒採用 → 事業モジュールへの直接投入
  • 19. Masato Ono, All rights reserved. 企業構造改革は、若手に大きな負担 19 企業内就業の変化 高度成長期~1980年代 現在 採用社員を「作りこむ」(インテグラル) 採用社員を「組み合わせる」(モジュール) 構造 一括採用、同期入社 中途採用の導入、派遣社員・パートの拡大 職場内教育(OJT)重視 「専門人材」の育成重視 徒弟的な経験蓄積、社内経験優先 若手への権限委譲の積極化 社内研修 専門業者への社員教育委託 複数部門の経験を蓄積させるジェネラリスト 新規事業への若手投入し、早期にスペシャリスト化 昇進試験、資格試験 職務の社内公募制度 業務は同質な社員が執行 業務は社員、派遣パート、外注で分担 稟議制度と根回し 決定権限の集約化、下位委譲 社会人より「会社人」 若手社員への負担と「孤立」 問題 硬直的な年功序列 社内競争激化 責任も若手に委譲→若手の負担増 (Wet)外部市場より社内人間関係を優先 (Dry?)新卒社員が1~2年で退職 「金太郎飴」の同質性と大いなる安定性 新規事業参入→撤退→参入の繰り返し(不安定性) 中高年「窓際族」 開拓・改革の実務担当者(若手)に過剰な負担
  • 20. Masato Ono, All rights reserved. (参考)経済産業省の示す社会人力 20 ・経産省研究会は、「社会人基礎力」は以下の内容と示している。 ①組織や地域社会で仕事をするための基礎的な力。 ②基礎学力と専門知識を実践に活かす力。 ③多様な人々とともに仕事を行う上での基礎的能力。 ・この上で、社会人基礎力を以下の12の要素と解釈しており、成人者の人間的な能力・スキルを 対象とし、学力や専門性は除外したものとなっている。 社会人基礎力に必要な「3つの力」、「12の要素」 3つの力 12の要素 定  義 主体性 物事に進んで取り組む力 前に踏み出す力 働きかけ力 他人に働きかけ巻き込む力 実行力 目的を設定し確実に行動する力 課題発見力 現状を分析し目的や課題を明らかにする力 考え抜く力 計画力 課題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力 創造力 新しい価値を生み出す力 発信力 自分の意見をわかりやすく伝える力 傾聴力 相手の意見を丁寧に聴く力 柔軟性 意見の違いや立場の違いを理解する力 チームで働く力 情況把握力 自分と周囲の人々や物事との関係性を理解する力 規律性 社会のルールや人との約束を守る力 ストレスコントロール力 ストレスの発生源に対応する力 (出所)経済産業省「社会人基礎力に関する研究会」。
  • 21. Masato Ono, All rights reserved. (参考)OECDでは成人の総合能力を見る 21 ・知識社会へと向かう先進諸国において、仕事の中で要求されるスキルの変化は情報通信技術 の進展に応じて速まってきており、スキルの陳腐化が労働市場に及ぼす影響は大きい。 ・OECDは、このような問題意識から、PIAAC (国際成人技能調査)という各国成人の技能状況 調査を行っている。この調査の対象は学力、身体能力を含めた能力(competency)である。 OECD のPIAAC (国際成人技能調査)の中で測定される職務要件 認知的スキル 読み書き 仕事で読む(書く)書類の種別。 計算 仕事で計算や数学を用いる機会の有無。 科学的知識 仕事で科学的知識を用いる機会の有無。 問題解決 問題の発見、説明、解決、複雑な問題の分析。 ICT・コンピュータ利用 コンピュータやインターネットの利用やスキルの程度。コンピュータ機器の利用状況。 人間関係・社会的スキル 影響力 指導、スピーチ、説得、他者の行動プランの作成,複雑な問題の分析。 管理スキル 部下のキャリア開発やモチベーションを高める機会の有無。 自律性 自己の行動計画作成、自分の時間管理、事前計画を考える機会の有無。 職場での人間関係 チームワーク、傾聴、交渉、他者の世話をする機会の有無。 クライアントとの関係 顧客への販売、助言、交渉機会の有無。 身体的スキル 体力 仕事上で長時間におよぶ身体行動の有無、重い荷物を運ぶような身体行動の有無。 手先の器用さ 手先の正確さを要する仕事の有無、コンピュータ以外の道具を運転する機会の有無。 仕事・職場関連スキル 職業知識 現職の就業に必要な学歴や資格、経験年数。 継続学習 新しい物事を学ぶ機会、同僚の学習を支援する機会、最新情報や動向を追う機会の頻度。 仕事の自律性 課業の中身を変更できる割合、仕事の速さを変更できる割合等。 仕事の質の管理状況 ICTスキルを学習した方法 過去1年間に受けた訓練状況
  • 22. Masato Ono, All rights reserved. 3:大学を取りまく環境 実利主義に距離を置いてきた大学 22 ○大学教育界は、「大学は善き人間を作るもの」との理念から、社会の実利的要求に は反対し、常に「学問、学習の自由」の下にいた(フンボルト理念) (注1) 。 ・ドイツ、フンボルト教授(1767-1835、ベルリン大学創立者) 「高等教育施設(大学)は、学問をつねにいまだ完全に解決されていない「問題」として扱うところにその 特色をもつものである。すなわち、大学では、教師は学生のためにそこにいるのではなくて、教師も学生 も、学問のためにそこにいるのである。」 (Wilhelm von Humboldt、「ベルリン高等学問施設の内的ならびに外的組織の理念」(1810年)より一部を抽出。) ○戦後、日本ではタテマエとしての真理の探求という理念と、現実における学生数の 拡大との乖離が広まり、その矛盾を埋め合わせるためのイデオロギーとして、フンボ ルトの「学習の自由」が使われた(注1) 。 ○その結果、「教育しない大学、勉強しない学生」が日本の大学の特徴になったが、 高度成長期の日本には卒業しさえすれば就職できるという一定の経済社会構造が あったために、このような大学と学生が存続し得たといえる(注2)。 ○低成長、財政難の中、国費の大学投入に厳しい目が注がれるようになり、大学は質 の問題のみならず、その過去のあり方に対する強烈な批判を受けている(注1)。 (注1)東京大学教育学部金子元久教授『大学の教育力』ちくま新書。(注2)矢野眞和『大学改革の海図』玉川大学出版部。
  • 23. Masato Ono, All rights reserved. 高等教育の場と就業力のギャップ 23 ○大学は、学力と教養を学生に付不する存在という前提であり、 それ以外のスキルや適応能力の育成には無関心であった。 大学 実社会 位置づけ 高等教育の場としての大学 ビジネス性(収益、成長性)を追求 目的 真理と社会正義の追求 経営目標(利益追求)   研究者、教育者として教員が存在   経営目標達成の資源としての従業員 重要視 学問知 経験知、ノウハウ、処世術 学生に  (基礎学力)  (協調性、主体性、指導力が重要) 求めるもの  (考える力)  (前に踏み出す意欲)  (粘れる、へこたれない気力) 本来、大学講義では主  (チームで働ける力) 目的としないという前提。  (人の見分け方、だまされない方法)  (礼儀、挨拶、義理と人情)  (付き合い、根回し、かわいがられ方) 予定調和的な講義(カレンダーの継続) 混沌とした外部環境(変化への適応) 環境 机上 現場 評価軸 研究成果、学習成果 収益 立脚点 外部に対する批判的態度(外を変える) 経営環境への順応的態度(自分を変える)
  • 24. Masato Ono, All rights reserved. 皮肉なパラドックス 24 ・大学は、高等教育機関として学生に専門知識・技能を付不しようとしているのもかかわ らず、企業は卒業者に対して「基礎学力+社会人基礎力」を求めるようになっている。
  • 25. Masato Ono, All rights reserved. 一段と大衆化した大学の抱える問題 25 ・1960~70年代に大学進学率が20%を超える大学の大衆化が進んだが、この20年は大学進学率 20%代から2010年には50%へと「さらなる大学の大衆化」が起こった。 ・この中で、専門高等教育を柱とする大学教育の在り方が見直されるのは自然な動きである。 ・また、基礎学力習得を中等教育で積み残したまま大学進学し、大学で基礎学力を教育せざるを えない固定構造となっている。 ・基礎学力要履修層が多い学部では、履修内容・教育方法の更なる改善が求められている。 18才人口に占める大学入学者の比率の推移 100% 8% 17% 26% 24% 80% 40% 39% 50% 60% 55% 高校卒業後、大学に入学 63% 64% 40% 高校卒業後、大学入学以外を選択 48% 37% 高校卒業者以外 54% 20% 28% 11% 12% 12% 12% 0% (出所)文部科学省「学校基本調査」等。 1960年 1970年 1980年 1990年 2000年 2010年
  • 26. Masato Ono, All rights reserved. コア労働者として期待される大卒社員 26 ・現在、大企業・中堅企業では、25~29歳若手従業員の54%が大卒・院卒社員。 ・大卒社員が、その専門知識・技能を活かして企業の頭脳を担う役割というよりも、むしろ大多数 の社員が所属するさまざまな現場実務に配属されて働いている状況。 ・企業が大学新卒者に期待するものが、高度な専門性よりも現場で円滑に業務を遂行できる 実践的な能力・素養となるのは至極当然。 従業員の学歴別年齢構成(従業員1000名以上の民間企業) 55~59歳 26% 大学院・院卒以外 50~54歳 39% 大卒・院卒 45~49歳 44% 40~44歳 47% 35~39歳 42% 30~34歳 47% 25~29歳 54% 20~24歳 42% (出所)賃金構造基本統計調査(H21年度) 0 20,000 40,000 60,000 80,000 100,000
  • 27. Masato Ono, All rights reserved. 大学で、学力以外の実践能力を習得する必要 27 ○大学卒業後、 ・早期退職者、転職者の増加 ・不採用者、若年失業者の増加 ・フリーター、派遣社員、パラサイトの増加 ・院卒失業者、院卒非正規労働者の増加 ・新しい就業スタイル(非営利活動グループ、地域共同コミュニティ、NPO等) など、新しい卒業者構造の変化が出現し、 これらへの対応が、社会から大学側に求められている。 ○大学においては、学生に学問を習得させると共に、近い将来 に向けての就業力、社会人力というような実践的スキルを習 得させ、学力を含んだ『生きる力』を確立させることの重要 性が増している。
  • 28. Masato Ono, All rights reserved. 4:アメリカのケース アメリカの経営学部における実践教育 28 Babson College Business Administration学部    (米マサチューセッツ州ウェルズリー市) 組織 1学部、MBAコース(大学院)、エグゼクティブ教育コース(大学院)。他に5つの研究所・機関。 学生数学部1学年の新入生は500名弱。4年制学部はBusiness Administration学部の1学部のみ。 全米の4年制経営学部評価ランキングでは第7位(Business Weekによる)。女子比率43%。海外からの学生22% 特徴 (66ケ国)。83%の学生がキャンパス内で生活。80%の学生がクラブ・組織活動。 教員数 学部担当の教員数235名(大学院教員の兼任を含む)。 会計(Accounting)、経済学(Economics)、起業論(Entrepreneurship)、経営管理(Management)、マーケティ コース編成 ング(Marketing)、数理(Math/Science)、技術経営・情報管理(Tech. Operation) 、人文科学(Arts & Humanities)、歴史・社会(History & Society)、学際論(Interdiciplinary)の10コース。 学部各コース ①論理力、説得力(レトリック)、②計量分析力・情報分析力、③起業的で創造的な思考力、④国際的・多文化的思 の目標 考、⑤倫理性と社会的責任の力、⑥リーダーシップとチームワークの力、⑦批判的で統合的な思考力 リベラルアーツ4科目(人文科学、理学、修辞学、統計確率論、微積分論)、経営基礎4科目(ビジネス法、経営起業 必須科目 論A・B、財務会計)、経営中級6科目(管理会計、経営管理、組織行動論、マクロ経済学、金融、マーケティング)、 経営上級科目1科目(経営戦略分析) 実践的講義 リーダーシップ、経営におけるコミュニケーション、経営者の倫理、コーチングと指導、交渉術(Negotiation)、ビジネス・スキ (例) ル、起業家体験談、社会的起業、最高の起業チャレンジとは、アジアでの起業 講義外の実 ①リーダーシップとチームワーク養成プログラム(The Coaching for Leadership & Teamwork Program, CLTP) 践プログラム ②外部コンサルティング(The Management Consulting Field Experience,MCFE):学生の外部コンサル実践。 ③起業経営財団(Foundations of Management & Entrepreneurship,FME):学生による会社経営実践。 ④バブソン・カレッジ運用ファンド(Babson College Fund):学生による学校資産の一部運用。 ⑤女子学生指導力プログラム(The Women's Leadership Program):女子学生のリーダーシップ養成。
  • 29. Masato Ono, All rights reserved. リーダーシップとチームワークの重視 29 ・Babson Collegeでは、通常の講義のほかに、リーダーシップ、チーム ワークを育成する独自プログラムを持つ。
  • 30. Masato Ono, All rights reserved. Babsonにおける問題解決指向の授業① 30 ・Babson College経営学部では、「コミュニケーション」、「リーダーシップ」、「交渉」 のような問題解決指向の実践的授業が多数行われている。 Negotiations This course explores the many ways that individuals think about and practice conflict resolution. Students will have a chance to learn more about their own negotiating preferences and the consequences of the choices they make. The course requires both intensive involvement in negotiation and mediation simulations/exercises and thoughtful application of theory through class discussion and written analysis. Class materials will reflect a variety of contexts from the workplace, including interpersonal, global, and cross-cultural interactions. Leadership Characteristics of effective leadership and the dilemmas of leadership, organizational structure and leadership, power and influence strategies, theories of leadership and leader's personality. Students will gain practice in leadership situations. Global Management Communications Effective communications are at the core of all international business relationships. So this course combines theory with practice in order for students to discover best practices in cross-cultural communication and then to apply them to the challenges of the global business leader. To become successful in this role, students will study the relationship between issues of culture, gender, and ethnicity and successful business communications. This course will be taught using lecture/discussion sessions, short case analyses, simulations, self-assessments, and the development of coaching skills that build collaboration across cultures and identities. Students will also have the opportunity to enhance their oral and written communication competencies established within multi-cultural contexts. Babson College, Course Descriptions, Undergraduate
  • 31. Masato Ono, All rights reserved. Babsonにおける問題解決指向の授業② 31 ・”Giving Voice to Values” Program Babson Collegeの研究者による、対話重視型の自己価値向上教育プログラム。 米国内外の100以上の大学でプログラムが試行されている。
  • 32. Masato Ono, All rights reserved. 学生にビジネスの感動を伝える講義 32 米スタンフォード大学Technology Venture Programの集中講義では、起業に よる人生の感動を伝える授業を行い、学生から人気を集めている。 (2010年3月には日本語訳が刊行されている。)
  • 33. Masato Ono, All rights reserved. アメリカの実践教育は導入の余地あり 33 ○アメリカの大学で盛んな「コミュニケーション」、「コーチング」、 「リーダーシップ」、「チームワーク」等の実践的な授業は、 日本の学部運営においても、『社会で生きるための力』を高め る上でかなりの効果があるのではないか。 ○新制度を設計するにあたり、このBabson College、Stanford Universityの例にあるような米大学の実践的講義テーマの 導入を検討すべきではないか。 ●有効と思われる講義テーマ:「チームワーク」、「コミュニケーション」、 「コーチング」、「説得力」、「クリティカル・シンキング」 ●有効と思われるプログラム: 「模擬会社プロジェクト」、「チームワーク養成プロジェクト」、 「女性のリーダーシップ養成プログラム」
  • 34. Masato Ono, All rights reserved. 5:日本の状況 日本の大学でのソーシャルスキル教育① 34 ・全体として、働くことへの関心・意欲を高める教育として、「キャリアデザイン」、「コミュニケーショ ン」に関する科目が導入されつつあり、また資格取得講座とインターンシップの導入が多いことも 特徴の一つ。ただし、米国に比べると、カリキュラムの深さ・幅広さに欠ける傾向がある。 (出所)京都光華女子大学ホームページ
  • 35. Masato Ono, All rights reserved. 日本の大学でのソーシャルスキル教育② 35 ・2003年設置された法政大学キャリアデザイン学部は、学部目標課題を『生き方・働き方・学び方 の設計について考え、自分が育ち、人を育てる能力をつけること』としている。 ・上記学部では、社会人基礎力(問題解決能力、思考力、チームで協働する力など)を育成するた めに、演習、基礎ゼミ、キャリア相談実習などの科目を設置している。 (出所)法政大学ホームページ
  • 36. Masato Ono, All rights reserved. 日本の大学でのソーシャルスキル教育③ 36 ・電気通信大学のキャリア教育は、学部1~3年生の各学年にそれぞれ「キャリアデザインA~C」 の講義(半期2単位)を行うとともに、インターンシップ、ベンチャービジネス論のプログラムを実 施している。 ・産業界のOB人材を中心に教育ボランティアを非常勤補佐員と して採用し、20名以上が学生と共に講義を受講した上で、学生 を丁寧に支援する体制を構築している点が注目される。 ・また、独自の「キャリア教育情報システム」を導入し、ウェブに学 生ごとのマイページを設け、ここに書き込まれた学生の質問や 講義の感想に、教育ボランティアがアドバイスするシステムを採 用している。 (出所)電気通信大学ホームページ
  • 37. Masato Ono, All rights reserved. 積極的に取り組んでいる状況も伺えるが 37 「社会人基礎力育成グランプリ2010」(経済産業省) 出場大学とプロジェクト 創立120周年の会社に新しい風を吹き込め!!  産学連携弁当開発を通じた社会 流通科学大学 大賞 東京富士大学 街づくりを通した現場主義とチーム力による社会人基礎力の育成 人基礎力の学び 山形大学 学生の学生による学生のための就活支援出版社「プロステップ」 準大賞 東洋大学 グローバルアニメーション文化応援ゼミ 新今宮観光インフォメーションセンターの運営と国際ゲストハウス地域づくりに向けた社 阪南大学 準大賞 明治大学 フリーペーパーの企画・制作と配布 ―千代田区商業振興を支援する 会的実践 【凛とした仕事の出来る素敵な女性の育成】~ゼミにおける年間プロジェクト活動を通 跡見学園女子大学 特別奨励賞 多摩美術大学 桐で新しい家具をデザインする した「社会人基礎力」の養成~ 管理栄養士に必要なコンピテンシーは、社会人基礎力を発揮して「健康弁当開発」 愛知学泉大学 特別奨励賞 新潟工科大学 お年寄り・子どもも楽しめる「運動あそび」を考え出す から学べ。 石川県立看護大学 看護大生が行う健康づくりを通じた地域の仲間づくりの再生 特別奨励賞 新潟産業大学 柏崎市での「米本位制地域通貨」の導入のための学内通貨流通実験の取り組み 関西学院大学 宝塚「明日に架ける橋」PROJECT 特別奨励賞 長岡大学 ユニバーサル社会をめざして―バリアフリーのまちづくり― 東海大学 学内の仮想機械設計会社における技術者教育 決勝進出 金沢工業大学 学部教育における集大成としての産学連携による卒業研究 社会人基礎力育成プログラムBrandnew Yamanashi ’09。フィールド・リサーチ+ 山梨学院大学 決勝進出 名古屋産業大学 ICカード型乗車券の導入効果予測 アクション・ラーニング。 豊橋技術科学大学 大学と地域が協働した実践型まちづくり・里づくり 決勝進出 京都光華女子大学 キャリアデザインとその実現へのアプローチ 中京大学 産学連携課題解決型プロジェクトの実践と成果検証 決勝進出 京都産業大学 万葉集による山城地域の観光振興(観光案内リーフレットの作成など) 名古屋商科大学 チームワークから学ぶ社会人基礎力~地域活性化の理論と実践~ 決勝進出 仁愛大学 コミュニケーション能力の向上をめざす学内や地域での学生活動 社会貢献を実現する継続的な研究発表会の運営と学生の企画・運営による社会人 関西大学 ブランド・マーケティング研究を通じてめざす“THINK × ACT” 決勝進出 摂南大学 基礎力の養成 相愛大学 脱メタボをサポートする「食のコンセルジュ」育成プロジェクト 決勝進出 大阪工業大学 歩行支援ロボット開発プロジェクトを通した社会人基礎力の育成 大阪大学 「最新技術を伝工芸に活かす」 決勝進出 大阪産業大学 大阪産業大学学生フォーミュラ参戦プロジェクト 奈良教育大学 なんと(南都)飛びだせ!はじめの一歩。仕事で輝く社会人に直接インタビュー。 決勝進出 大阪女学院大学 「エリアスタディ大阪」で学びの世界へ -AO入試で気づきのプログラム- 高知大学 「人間ボウリング」で土曜夜市を盛り上げたい! 決勝進出 大阪商業大学 フィールドワークを活用した社会的問題解決能力の養成 北海道大学 北大映画館プロジェクト実行委員会2009 「クラークシアター2009」 羽衣国際大学 産業社会学部キャリアデザイン学科・夏期集中合宿講義「キャリアと社会」 尾道市商店街“パリゴ”に、尾道大学生等若年層がもっと買い物に行くようになるかにつ 宮城大学 段階的な社会人基礎力育成を通じた専門性を活かした教育の実践 尾道大学 いての方策 共愛学園前橋国際大学 学生社長「繭美蚕」による地域との共創 広島経済大学 広島経済大学興動館 中高生の夢・笑顔実現!!プロジェクト 前橋国際大学 社会人基礎力でまちづくりの現場へ踏み出し、そしてまた成長 広島国際大学 自作電子遊具を用いた高齢者のコミュニケーション能力向上と認知機能維持 千葉工業大学 新入生オリエンテーション―遠山メンターグループ― 山口大学 地元企業と共に山口の価値向上を目指すビジネスプランの作成 城西大学 I T を活用した地域活性化プロジェクト「さかどのめ」。 香川大学 パターの表面パターンのデザイン最適化 「チャレンジポイント制度による社会人基礎力の育成」。学生が挑戦したいテーマを企画 慶應義塾大学 POM2~ステッカーで地雷除去キャンペーン~09年度の活動を通して 高知工科大学 し自身の力で遂行し達成したと認定されると、難易度に応じて授業成績に関するポイン トが付与される仕組み。 デジタルハリウッド大学 小倉ゼミ『ショートムービー制作』におけるコミュニケーション能力の育成 松山大学 学生向けフリーペーパーの企画・営業・制作 まちなか活性化プロジェクト~こころに響く商業施設コラボレーションイベントをプロデュー 電気通信大学 キャリアデザインC (PBL)「キャンパスライフ改善プロジェクト」 日本文理大学 ス~ 東京家政学院大学 うこっけいハムを用いた新商品開発プロジェクト
  • 38. Masato Ono, All rights reserved. 一部のトップ大学では・・・ 38 ・実践的なカリキュラム導入が一部大学で積極化しているとはいえ、学生の自己価値向上にむけ た教育が学部内では実施されていない大学もみられる。 ・例えば、現在の東京大学経済学部では、金融工学等で新科目が導入されているものの、全体と しては10年前と変わらないカリキュラム編成であり、ファカルティ側の学生ソーシャルスキル向上 に対する関心は感じられない。 東京大学経済学部(学部3-4年生) 2010年度夏学期・講義時間割 1限 2限 3限 4限 5限 国際経済 農業経済 経営管理 国際金融特論 確率モデルと統計手法演習 経営戦略 金融 財政 金融政策特論 企業財務 上級日本経済 数理統計 グローバル化の中の金融 経済学方法論 ファイナンスのための数値計算 上級国際経済 政治経済学 月 商法(2) 商法(1) 企業金融特論 エネルギー政策 基礎数学演習 確率モデルと統計手法 民法(1) 各ゼミナール 日本政治史 近代日本経済史 現代資本主義論 数学Ⅱ 労使関係 経営史 日本政治 経済学のための数学 国際貿易 各ゼミナール 火 財務会計 経営戦略特論 数理統計演習 上級ミクロ経済学 行政法 アジア経済史 経営管理特論 金融システム論 為替政策 オルタナティブ・インベストメント 水 民法(2) 金融機関のリスク管理 ツールとしての計算機 金融システムの諸問題と行政 商法(1) 商法(2) 経営管理 国際経済 農業経済 実証ファイナンスと金融エコノメトリクス 上級日本経済史Ⅰ 財政 証券投資、理論と実践 金融経済学 ファイナンスのための確率解析入門 上級マクロ経済学 金融政策 金融 各ゼミナール 木 行政法 経営戦略 コンピューターと情報処理 障害学Ⅰ 上級経済原論 応用統計 マクロ経済学における統計物理学 数理統計 現代資本主義論 近代日本経済史 経営科学 経営科学 経営史 労使関係 上級国際貿易論 証券化と企業金融 国際金融 経営組織 日本政治史 金 上級西洋経済史 ゲーム理論 マーケティングリサーチ 日本政治 財務会計 各ゼミナール 数学Ⅰ (出所)東京大学ホームページ
  • 39. Masato Ono, All rights reserved. 慶應義塾大学の模擬会社プロジェクト 39 ○Junior Venture Program(JVP) ・慶應理工学部と慶應ビジネススクールの2つの大学院で、1年間のベンチャー論講義を行い つつ、講義の約60%の時間を使って、模擬会社を設立し運営する講義内実践プロジェクト。 ・慶應理工学部大学院:起業論受講のM1院生が模擬会社を設立(1社当たり数名で7~10社 を設立)、学園祭の模擬店に向けて、販売計画・販売戦略を策定。 ・慶應ビジネススクール(KBS):M2院生が疑似ベンチャーキャピタルファンドを設立。理工学部 の模擬会社プロジェクトを審査し、出資可否を選別し決定。投資を実行。 ・KBS院生が投資家となり、会社経営陣(理工院生)の指導にあたる。学園祭前に仕入計画、 販売実行の具体的プラン、宣伝プラン等を策定する。 ・11月上旬の学園祭(理工学部・矢上祭、2日間)で、出店販売と計画修正を行う。 ・学園祭終了後に、代金回収・計算・簿記帳簿・決算書作成を行い、株主(KBS院生と理工院生 の経営陣)に株主総会で事業を報告。報告後に株主に配当を実施し、会社を解散する。 ・会社設立から解散まで(約100日)を振り返り、問題点、成功失敗を評価分析し、レポートを とりまとめる。 ・当プログラムの全体進行は、㈱日本テクノロジーベンチャーパートナーズ(小野所属)が 策定し、上記2つの大学院での授業と、JVPプログラム進行を采配している。
  • 40. Masato Ono, All rights reserved. 慶應義塾大学の模擬会社プロジェクト 40
  • 41. Masato Ono, All rights reserved. 学生の社外奉仕活動(アウトリーチ) 41 ○東京大学アウトリーチ・イニシアティブ(UtoI) ・2007年に3人の学生の企画が、学内コンテスト優秀賞に選出され、公式活動として業務を 開始。現在のUtoIは、主に高校生や地域コミュニティに対する東大の広報活動・科学技術 教育の普及活動をサポートする役割を担い、学生メンバーによって運営されている。
  • 42. Masato Ono, All rights reserved. 6:対策と留意点 今後、学部教育で導入すべきテーマ① 42 テーマ 概要とキーワード 単位化    「自己分析」 自己に積極的価値を見出す。 可    「コミュニケーション」 自他の認識、積極的傾聴、異文化・ダイバーシティ対応、感動を伝える。 可    「チームワーク」 可 ①講義    「達成力」 モチベーション、忍耐力。 可 中心    「指導力、コーチング」 企業組織や、スポーツ団体、サークル・コミュニティ等での人を統率・指導する実際の力。 可    「交渉力」 ネゴシエーション、説得力。 可    「キャリアデザイン論」 可    「生き方をめぐる思想」 可    「企業の中でどう生きるか」 可    「異文化コミュニケーション」 他地域、他人種、他民族との交流・付き合い方・自己表現。 可    「現代経済社会と雇用」 可    「自己表現論」 可    「社会人から聞く」 近郊企業の幹部社員・若手社員から、働く知恵と苦労を聞く(シリーズ講義)。 可    「さいたまの会社シリーズ」 近郊の中堅中小企業の第一線社員の方から、生の企業像を聞く(シリーズ講義)。 可    「先輩体験談」 大学の若手OBOGから、入社後の体験談を聞く(シリーズ講義)。 可 ②プログ    「特別プログラム」 ソーシャルスキル向上の希望者、課題がある学生等への授業外の特別プログラム。 ラム    「キャリアカウンセリング」 受講者とカウンセラー(役)の双方向授業、面接、トレーニング。    「国際体験と自分探し」 海外研修やホームステイを通じて自分を見つめなおす、社会との関わりを考えさせる。    「就業力測定テスト」 学生の「就業力」を定量的に測定するテスト。学生を評価し課題をみつめさせる。
  • 43. Masato Ono, All rights reserved. 今後、学部教育で導入すべきテーマ② 43 テーマ 概要とキーワード 単位化 消防署・自衛隊・水道局・警備会社などの社会を支える職場の短期体験。体験を通じ 講義と   ・学外体験研修 ての自己評価。 Mix   ・模擬会社 大学学園祭、地域祭を活用した、学生による模擬ベンチャー経営プロジェクト。 講義と   ・就業体験(インターンシップ) 型どおりの形式的研修に流されない手法の工夫。本気度とインボルブメントの高いイン Mix 講義と ターンシップを目指す。 Mix ③プロジェ   ・「ふるさと」と自分を考える これまでの自分の歩みと、故郷の職場・仕事・家族・先輩を結びつけ、自分の置かれた 講義と クト 立場を再認識させるとともに、今後の方向を考えさせる。 Mix   ・社会奉仕活動(アウトリーチ) 自分達は大学外の社会で何ができるか、自分達や学内のリソースを使って社会に貢献 講義と できる事業を企画検討し実践する。大学の金銭支援。(長期プロジェクト) Mix 老人福祉施設やデイケアセンターへの1週間就労体験コース。ケアサービスの技術や苦 講義と   ・福祉体験プログラム 労を実体験させ、自分を考えさせる。(短期就業) Mix 学生に部活・サークル活動を通じた自己形成、自己価値向上の姿を分析させ、より意 講義と   ・部・サークルからみた自分の力 義ある生き方を考えさせる。(長期プロジェクト) Mix 長期プロジェクトへの従事学生には、プロジェクト授業単位と卒論単位の取得を可能とす   ・プロジェクト卒論 可 る。大学講義とは異なる社会的テーマも可とする。 授業での参加度・積極性・主体性に優れた学生、授業外で社会的に意義のあるアク   ・ベスト・プラクティス表彰 - ションをした学生を表彰。年間10~20人の学部長表彰など。 ④その他 学内にわかりやすいキーワード・運動用語作り。標語の学内掲示・宣伝。   ・学内での広宣 - (例)「働くチカラ、生きるチカラ」。 ○就業力教育カリキュラムについては、別稿ファイルを参照されたい。
  • 44. Masato Ono, All rights reserved. 疑問1:低学力のまま働けるか? 44 ・大学生のソーシャルスキル強化論において、以下の疑問があるのは自然。 ①経験知からして、社会人としてしっかりやれそうな学生は、「普通は基礎 学力がある」のではないか? ②基礎学力と一般常識なくして、はたしてスキルだけで一流の社会人とし てやっていけるか? ③従来は「学力」を測定すれば社会人としての力がわかるという考え方で あったものが、「学力」と「社会人基礎力」それぞれ個別に評価する時代 になっているのでは? ④基礎学力と、(ソーシャルスキルとして重要である)問題意識の相関性 は高いのではないか? ⑤こうした点からも、基礎学力の充実あっての就業力強化、ではないか? ・学生の知識、能力、人間性等の総合性を踏まえて、バランスの取れた議論 をすべきである。
  • 45. Masato Ono, All rights reserved. 疑問2:学生は「引出し」が小さいのでは? 45 ・社会人や年長者と話せないのは、大学生の「知識の引出し」が小さすぎるのでは? コミュニケートする気持ちがあるが、会話するもの(知識、情報)がないのでは? ・結局は、従来の定見である『より知識を持ち、より深く考える者が、他より良い結果 を得る』という構図になる可能性が高いのでは?
  • 46. Masato Ono, All rights reserved. 根は深い、取り組みは長期的 46 ・大学授業運営の問題では、「学生の基礎学力がない」点が突出している。 ・こうした基礎学力、学習意欲の向上策は、時限処理ではなく、長期的課題。 授業で直面している問題点(学生に関して) 授業で直面している問題点(教員に関して) その他 13.0% その他 9.6% コミュニケーションをしようとし 13.0% 授業設計、授業技術の工夫が必要 30.2% ない 学習意欲がない 37.2% 関連教科との連携が難しい 28.4% 基礎学力がない 56.3% 学生とのコミュニケーションが難しい 15.2% 教員の言葉を理解できな 授業改善に関心がない 13.0% 0.6% い 動機付け・学習意欲を高める工夫が難し 授業に出席しない 12.6% 47.6% い 0% 20% 40% 60% 0% 10% 20% 30% 40% 50% (出所)私立大学情報教育協会「平成19年度 私立大学教員の授業改善白書」。上記の数値は各項目を指摘した教員の比率%。
  • 47. Masato Ono, All rights reserved. 就業力も基礎学力も、強化が必要 47 92% センター利用私立大学における合格水準得点率 ・私立大学のセンター試験利用入 90% (代々木ゼミナール調査、2009年度入試) 試結果では、対象2~3科目のセ 88% (関東1都6県の法・経済・経営・商・社会科学の私大・各学部を対象。) ンター試験得点率が60%に満た 86% 84% ない水準の入学者が多数存在し 82% ており、大学生の基礎学力は依 80% (大学グループ) :早慶 然として課題である。 78% :MARCH 76% ・また、推薦・AO入試での入学者 74% :日東駒専 が50%を超える中(全国私立大 72% :関東上流江戸桜 学平均)、一般入試入学者との 70% 学力格差が顕在化している。 68% 66% ・基礎学力向上をなおざりにして 64% は、大学教育にとって大きな課 62% 60% 題を積み残すことになる。 58% 56% 54% 52% 50% (注)ただし、センター利用入試は、大学・学部により、 試験 48% 科目数が2~6科目と異なっている。一般的に、科目数が増 えれば、合格水準得点率は低下することに注意する必要が 46% ある。 44% 42% 40%
  • 48. Masato Ono, All rights reserved. ただし、あれもこれもではいけないのでは? 48 ・入学者減尐の経営プレッシャーから、広宣指向に走るあまり、公開内容の信頼性が 問題となったり、実際の教育内容や指導体制に課題が深まる危険性はないか?。 新聞広告に掲載された各大学のキャッチフレーズ(例)  「あなたの個性値を伸ばす大学」 亜細亜大学  「多様な入試制度であなたの努力にこたえます」 神奈川大学  「渋谷に都市型キャンパス誕生!」 國學院大学  「“サクラサク” チャンスを3回用意しました」 文教大学  「学ぶ楽しさ、知るよろこび」 埼玉学園大学  「一般入試Ⅰ期でスカラシップ入試実施」 川村学園女子大学  「2010年4月、4学部体制の文系総合大学に!」 大正大学  「自分のスタイルに合った入試を選ぼう!」 拓殖大学  「歯学部・文学部はセンター試験利用入試を2回実施します」 鶴見大学  「4年間で高める『卒業成長値』 。育てたいのは生活者視点のプロフェッショナル」 東京家政学院大学  「親孝行の受験-入試成績による特待生総数276名」 東京経済大学  「3学科16コースから選べます」 東洋学園大学  「伝統に未来に125。 2012年、東洋大学は125周年を迎えます」 東洋大学  「全入試オールマークシート! 出願まだ間に合います」 武蔵大学  「全学部が同日に入試を行う全学部日程と個別学部日程を実施します」 立教大学  「センター利用入試と一般入試の両方式を併願できます」 早稲田大学 (出所)2010年1月中旬(大学入試センター試験前後)の全国紙の掲載広告から抽出した。
  • 49. Masato Ono, All rights reserved. 学部のメニユーリストは増えるばかり 49 ・平成以降における基礎学力充実の流れから、 大学でカリキュラム改革が進展。その中で、 学部の講義科目は、現在、相当膨大な数に のぼっている。 ・就業力強化に向けての運営改革は急務であ るが、「多種多彩なメニユー、乏しい中身」、 「羊頭狗肉」の弊害はないか?。 私立大学・各学部の講義科目総数(推定) 講義科目 学部 学科 注記 総数 M大学 経済 経済 417 J大学 経営 1,247 S大学 経営 286 D大学 経営 経営 311 T大学 経営 経営 425 W大学 商 1,231 R大学 経営 1,433 K大学 経営 745 KG大学 経済 702 (注)各学部の講義シラバスシステムより、1年の開催講義数を検索して算出した。ただし、 少人数クラス編成から同一テーマで多数の科目がある例などがあり、上記の科目数は異なる 科目の合計ではない。 (出所)関東地区の私立A大学国際経営学部のホームページ
  • 50. Masato Ono, All rights reserved. カリキュラム全体や運営の見直しも必要 50 ・10年来の多様な要請に対応する中で、学部カリキュラムは増加、複雑化している。 ・今後、就業力強化のために新たなカリキュラム導入が進展する動きであるが、学内リソースが 限られる中、既存のカリキュラム全体の見直しも必要ではないか。 ・また、相当数の大学において、一部科目の教育内容が時代の変化や社会の関心・ニーズに対応 しきれずに陳腐化しているケースも見られる。研究者・教育者的視点にとどまらず、広い社会 ニーズに応えた教育内容に変えるべく丌断の努力を要するのではないか。 大学講義へ寄せられる批判・疑問の例 (テーマ) (批判、疑問) 講義の迫力、面白さ テレビのクイズ番組を見なれた大学生には、ビジュアル性、エンターテイメント性のない講義には関心がない。チャレンジングな講義内容ではない。 現代実社会と講義のつながり 講義内容と実社会がどうつながるのかについて、教員から説明がないからつまらない。 教科書を読んで黒板に書くだけの授業では、高校の社会の授業と同じと思われて、学生から無関心な対応となる。高齢教員が学生と話題が違い 一方的授業 すぎて、面白い話ができない。 プレゼンテーション技術 教員にパワーポイントやプロジェクターを活用したマルチメディア・プレゼンテーション技術がない。 ネットの活用 教員にホームページ、メーリングリスト、携帯メール等の活用がなされていない。 講義にニーズが汲めていない 教員が学生のニーズ、関心を把握できていないために、双方向の議論・会話とならない。 過去の理論、古典重視の講義 就職のために実学を習得する学生にとっては価値が低く、関心も薄い。 消極学生への対応 学生の関心を授業で引き出す工夫に課題が多い。学生の興味や授業参加を引き出すアクティブ・ラーニングができていない。 非常勤講師の多さ 外から来た非常勤講師が学生の関心も把握できないまま、自分の専門のテーマだけ教えている。 経済理論 講義が資本主義体制批判を中心にやっているが、これらは経済学史で教えるものではないか?。 国際経済学 講義が19-20世紀の比較優位論や産業発展論の講義にとどまり、現在のグローバル化や同時連関化した国際金融メカニズムの説明がない。 財政学概論 ドイツ財政論が中心に講義をしているが、今後の社会生活を考えれば日本の仕組み、課題、財政の国際比較を中心にしてほしい。 企業についての基礎知識や歴史知識が乏しい学生には、19世紀以降の経営学理論を説明しても興味がわかない。学生は、日本の大企業の 経営学 最近にしか関心がないために、経済や企業がどう発展してきたのかについて、面白く関心を持たせるような講義の工夫が必要。 高度成長から1980年代の自動車産業や電機産業の分析ばかりで、学生は生まれていない頃の話なので関心が薄い。教員は現代のインターネッ 日本産業論 ト産業には精通しておらず、講義がない。 (出所)インターネットから検索。
  • 51. Masato Ono, All rights reserved. 導入は、大学・学部の学生特性による 51 ・いうまでもなく、744校存在する大学は、教育内容、学生、校風それぞれが多様。 ・就業力強化に向けた実践的プログラム導入は、専門指向の強い大学・学部ではなく、 学生の実業指向が強く、かつ民間企業就職希望者の比率が高い大学で導入するニー ズが高いと考えられる。 大学学部における学生の専門指向の分布(イメージ) (高) 学生の専門指向/実業指向は、各 大学・各学部により異なるが、総じて いえば、学部教育の専門性水準と 医・生化学系 相関するものと推定する。 (医・歯・薬・獣医) 学 部 性 教 経済・経営系 育 の 専 門 性 (なお、ここで示す専門性の高低が学力 福祉・保育・家政系 水準と直接連関するとは考えていない。) ←学生の 学生の専門知識 → 実業指向 (低) 専門技能指向
  • 52. Masato Ono, All rights reserved. 本腰を据え、冷静に方向整理する必要 52 ・本来、大学における学術と実践には、容易に連携が取れない要素も含まれる。 ・また、社会的自立、職業的自立に向けて「学生を踏み出させる」のは学生自らの意思 と行動であり、大学といえども外から学生を変えるのは容易ではない。 ・就業力強化は、ともすれば短期的対策になりがちであるが、大学運営を広範囲に視野 に入れつつ、長期的で地道な取り組みが必要である。 ・また、現状の多様な改善策のシナジーをじっくりと冷静に検討し、学内各層の合意形 成を図った上で運動を盛り上げていくとともに、推進するグループへの支援と配慮が 必須と考える。 Academic Pragmatic Mode Mode 学術指向 実践指向