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京大サマーデザイン
スクール2013
京大サマーデザインスクール2013
 
 
(c)2013 西尾泰和(サイボウズ・ラボ)
西尾泰和
KJ法の背景
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
 
 
 
KJ法の作者
川喜田二郎は
文化人類学者
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
 
 
 
フィールドワークで
大量の情報を収集
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
 
 
 
フィールドワークで
集めた大量のデータを
まとめる必要性
→KJ法の発明
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
 
 
 
「まとめる」
って何?
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
まとめるって何?
 
 
データの背後にある
関連・構造を見出し
仮説を発想する
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
まとめるって何?
 
 
一組のデータからいかにして
意味のある結合を発見できるか
新しい発想を打ち上げられるか
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
まとめるって何?
川喜田二郎(1967)『発想法 : 創造性開発のために』p.54
 
たとえば、
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
まとめるって何?
 
 
トライサイクル=三輪車
↓
三(トライ)
輪(サイクル)
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
まとめるって何?
 
 
ケラチン=角質
↓
ケラト(ツノ)
-イン(たんぱく質)
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
まとめるって何?
 
 
この二つのデータと
恐竜の知識から
「ハッ!」と気づく
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
まとめるって何?
 
 
もしかして
トリケラトプスって名前
三つのツノがあるから?
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
まとめるって何?
思いついた時点では仮説
 
関係の発見=仮説の発想
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
まとめるって何?
 
 
関係を発見する力は
みんな昔から持っていた
「ツバメが低く飛んだら雨」
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
まとめるって何?
これも仮説
 
フィールドワークで集めた
情報から仮説を形成する
これを野外科学と呼ぶ
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
実験科学との違い
 
 
野外科学 実験科学
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
実験科学との違い
 
 
実験科学は
仮説を検証する
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
実験科学との違い
 
 
仮説の検証
その仮説はどうやって
導かれたの?
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
実験科学との違い
 
 
どうやって仮説を立てる?
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
実験科学との違い
 
 
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
実験科学との違い
『発想法』p.22
 
それが野外科学
野外科学が仮説を作り
実験科学が仮説を検証する
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
実験科学との違い
 
 
仮説を立てないと
実験はできない
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
実験科学との違い
 
 
よくわからないと
行動を起こせない
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
進むためには問題の明確化が必要
川喜田二郎(1977)『「知」の探検学 : 取材から創造へ』p7
 
我々の今回の目的
改善計画づくり
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
進むためには問題の明確化が必要
 
 
改善=問題を解決すること
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
進むためには問題の明確化が必要
 
 
何が解決すべき問題か?
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
進むためには問題の明確化が必要
 
 
問題はかならずしも
明確に言語化できていない
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
進むためには問題の明確化が必要
「問題は暗黙のうちにしか認識されない」『創造的想像力』p143
マイケル・ポラニー(2007)『創造的想像力 増補版』 慶伊富長 編訳, ハーベスト社
問題はまず
「なにか問題を感じる」
当惑という状態から始まる 
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
進むためには問題の明確化が必要
『発想法』p29
 
問題は言語化できていない
↓
関係ありそうなことを
全部書きだしてみよう
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
進むためには問題の明確化が必要
『発想法』p29
 
全部書き出し
組み立ててみて
はじめて問題の
構造がわかる
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
進むためには問題の明確化が必要
『発想法』p29
 
たとえば
1つだと思い込んでいた問題が
実は2つの問題の重なりだったり
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
進むためには問題の明確化が必要
『発想法』p30
 
問題の明確化とは何か
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
進むためには問題の明確化が必要
 
 
これが問題だろう
これを解決すれば
もっと良くなるだろう
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
進むためには問題の明確化が必要
これも仮説
 
問題の明確化=仮説の発想
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
進むためには問題の明確化が必要
 
 
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
進むためには問題の明確化が必要
 
 
問題の明確化(=仮説)が正しいかどうかは、
その理解に基づいて行動(=実験)することで検証される
チームでの問題解決について
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
チームで
 
 
チームで問題の解決に
あたる場合はどうする?
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
チームで
 
 
チームで問題解決するには
問題意識の共有が必須
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
チームで
 
 
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
チームワークのための問題の明確化
川喜田二郎(1970)『続・発想法 : KJ法の展開と応用』p27
A氏B氏とD氏では問題意識に違いがあり、喧嘩になる。C氏は両方の立場がわかるが…
問題意識が共通でないと
チームが一丸となって
進むことはできない
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
チームワークのための問題の明確化
 
 
どうやって共通化する?
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
チームワークのための問題の明確化
 
 
メンバー全員の視点から
書き出して
組み立ててみて
初めて構造がわかる
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
チームワークのための問題の明確化
 
 
個人がデータを組み立てるのと
チームが個人の能力を組み立てるの
水準が違うだけで性質は同じ
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
チームワークのための問題の明確化
『発想法』p56
 
まとめ
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
演習
 
 
情報の構造化 = まとめる
= 関係の発見 = 仮説の発想
= 問題の明確化 = 改善の第一歩
個人でもチームでも
まずは書き出して組み立てよう
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
演習
 
 
オリエンテーション
参考文献
 
 
•川喜田二郎(1967)『発想法 : 創造性開発のため
に』中央公論社
•川喜田二郎(1970)『続・発想法 : KJ法の展開
と応用』中央公論社
•川喜田二郎(1977)『「知」の探検学 : 取材から
創造へ』講談社
•マイケル・ポラニー(2007)『創造的想像力 増補
版』 慶伊富長 編訳, ハーベスト社
オリエンテーション
付録
 
 
反復可能性について
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
反復可能性
 
 
実験科学は
明確な仮説を
反復可能な状況設定で
繰り返し実験して検証する
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
反復可能性
 
 
仮説の検証
その仮説はどうやって
導かれたの?
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
反復可能性
 
 
現実世界って
反復可能な状況設定が
あるとは限らないよね
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
反復可能性
 
 
実験科学は
文明の発展の過程で
重視されるようになった
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
反復可能性
 
 
しかし、万能ではない
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
反復可能性
 
 
反復実験できない
1回だけの事例などから
どうやって仮説を立てる?
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
反復可能性
 
 
川喜田二郎が
「離れザルを捨てるな」
と言う理由はこれだ
断片的情報の構造化 - KJ法の背景
反復可能性
 
 
このスライドは、サイボウズ・ラボの西尾泰和
と竹迫良範が、 京都大学サマーデザインスクー
ル 2013で行った「チームワークのデザイン」の
講義資料の一部です。
他のスライドは http://nhiro.org/kuds2013/ で見つ
けることができます。
 
このスライドについて
 
 

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