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(1)オープンデータ・ビッグデータの活用の推進
行政が保有する地理空間情報(G 空間情報)、防災・減災情報、調達情報、統計
情報等の公共データや、企業が保有する顧客情報、個人のライフログ情報等、社
会や市場に存在する多種多量の情報、いわゆる「ビッグデータ」を相互に結び付
け、活用することにより、例えば、環境、教育、交通等の多様なデータを集約・
整理してその地域の状況を分かりやすく示す不動産情報提供、多種大量のデータ
から顧客のニーズに応じたデータを自動的に抽出するプログラム開発などの新ビ
ジネスや官民協働の新サービスが創出され、企業活動、消費者行動や社会生活に
もイノベーションが創出される社会を実現する。
このため、公共データの民間開放(オープンデータ)を推進するとともに、ビッ
グデータを活用した新事業・新サービスの創出を促進する上で利用価値が高いと
期待されている「パーソナルデータ」の利用を促進するための環境整備等を図る。
① 公共データの民間開放(オープンデータ)の推進
2014/4/22オープンデータの経済効果を考える:何を期待し、どう推進するか?(Innovation Nipponシンポジウム 2014年度第1回) 3
5. オープンデータ政策の経済効果推計の概念的意義
基本的視点は「効率性」
経済学は希少資源を用いて最大の厚
生を生み出す方法に関する学問
効率性と公平性の視点
利用できる情報量が多くなれば、意
思決定の精度が改善される。
データ提供コストと、経済効率性改
善メリットの比較から、最適な
「オープンデータ提供量」が決定
もし当該水準がなんらかの制度的理
由によって実現できていないのであ
れば、政策介入が要求される
政策介入によってどのくらいメリッ
トが回復できるのか?
2014/4/22オープンデータの経済効果を考える:何を期待し、どう推進するか?(Innovation Nipponシンポジウム 2014年度第1回) 5
0% オープンデータの提供量
データ提供の
限界費用
経済効率改善に
よる限界効果
最適な提供量
100%
ポイントは政策介入コストとの比較
9. 経済効果推定に何を期待すべきか?
厳密に数値を確定することは人智を超える。
あくまでも市場プレイヤーの努力を結集すべき目標
そもそも、やる価値があるか否かという問題
個別の「手堅い」領域でデータのオープン化がどの程度の効果をもたらすかについての精度の高
い情報群よりも、大まかな目安としてどの程度の経済効果を意識するべきかが、積極的なオープ
ンデータ政策を進める上では重要
政策プライオリティの順位付けに役立てばとりあえず十分?
どの分野に対して、どのようなデータについてオープン化を実施した場合に、どの程度の経済効
果を得ることができるかがわかれば、それに見合った形で政府がどの程度オープンデータに注力
するべきか、コストのかかる作業(データのフォーマット変換やメタデータ付与、正確なドキュ
メンテーション資料の作成・提供)などにどの程度力を入れることが望ましいかが見えてくる。
2014/4/22オープンデータの経済効果を考える:何を期待し、どう推進するか?(Innovation Nipponシンポジウム 2014年度第1回) 9
オープンデータは一方では、政策決定に際してデータ主導、あるいはエビデンスに基づいた決
定を可能にするという期待を集める形にもなっているが、確固とした経済効果データのみに
よってオープンデータ化を推進することは難しい。 データ主導の政策決定を可能にするはずの
当のオープンデータ政策が必ずしもデータ主導で決まらないというのは若干皮肉な事態
10. 経済効果推定の限界
経済効果全体に占めるオープンデータ貢献分の推計は難しい
オープンデータへの取り組みは極めて最近の事象であり必要なデータ蓄積が欠如
個別効果の積上げに基づく推計という代替案
理論的正当性は必ずしも保証できないが、現実的。ただし、さまざまな誤差はつきもの。
将来予測については様々なファクターにより推計値が大きく異なる。
マクロ経済の状況
産業構造変化をどの程度見込むか
補完的経営施策導入やビジネスプラン変更、制度対応の状況
データサイエンティストが十分に用意され、利用者のICTリテラシーも向上し、ネットワーク環境や端末
も普及し、既得権益者の抵抗が失敗におわり、といった理想的な条件を考えるならば…
経済推計の前提条件の確定自体が大問題
効率性改善は生産量増加と必ずしもイコールではない。
間接的な経済効果をどの程度精密に考慮するのかによって結果は大きく異なりうる。
間接的な経済波及効果を含めて経済効果を考えることは、「全産業の成長」といった現政権の目
標に照らしても適切
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12. 経済効果推定の方法
2014/4/22オープンデータの経済効果を考える:何を期待し、どう推進するか?(Innovation Nipponシンポジウム 2014年度第1回)
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生産要素としてのデー
タの定義
• 範囲の確定
• 量の定義
データ活用による直接
効果の推定
• 生産関数の推計
• 成長会計の利用
• 積上げ計算
データ活用による間接
効果推定
• 産業連関分析
• 応用一般均衡分析
• 推計対象となるデータを明確に定
義しなければ、その利用を可能に
するための必要資源の量の確定も
ままならない
• 推計期間において利用されるデー
タの種類とその活用方法を事前に
予見する必要がある
• 生産関数の推計や成長会計による
推計は経済理論と整合的な結果を
もたらすが、推計を支えるだけの
データを得ることが困難
• 与件の変化をどの程度読み込むか
によって推計値は異なる
• 生産効率上昇を生産拡大と同視す
るケースが通常
• 伝統的な産業連関分析では産業構
造の変化を見込まないのでオープ
ンデータによる新産業創造などは
考慮できない
• 応用一般均衡分析は産業構造変化
を考慮できるものの、数多くの仮
定に依存
• 産業統計で把握されない効果は推
定できない
データ活用の経済効果
オープンデータ環境の有無により複数シナリオを設定
することで、オープンデータ政策の経済効果を推定
15. 経済効果推定を利用する際の留意点
時間軸の考慮
いつの時点で実現される効果か?
どういった経路で実現される効果か?
コストとベネフィットの考慮
その効果を実現するためにはどの程度の初期投資&運営費用が必要となるか?
「勝ち組」と「負け組」の存在への配慮
負け組に対して十分なケアがないと政治的には実現できない
環境整備の視点
想定された効果を得るためにはどういった環境整備が必要か
ACIL Tasman(2008)では十分な環境整備がなければ6.3~7.5%ロスが生じると予測
政府介入の必要性の再検討
その効果は市場メカニズムだけでは達成できないのか?
政府介入が必須であるとしてもその形態は?
政府の失敗の可能性は常に考慮すべき
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16. 結果の解釈にあたって。
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「オープンデータ政策の推進によって公共データが利用しやすくなれば、1800~3500億円
程度(総効果の7.5%に相当)の経済効果が得られる。」という一見して小さな推計結果は
オープンデータ政策の総効果を示すものではない!!
CGEは比較静学分析なので時間軸が考慮されていない
7.5%は長期均衡が達成した後の効果
移行経路における議論は別物
勝ち組産業と負け組産業の利害調整
労働力移動、ビジネスプラクティス、業界慣行の変更の円滑化
そもそも望ましいとされる均衡に経済全体として移行するか否か、移行するにし
ても最適なスピードで移行するか否かは別問題
全く別の均衡が実現される可能性もありうる
ファシリテーターとして、あるいは、コーディネーターとしてのオープンデータ政策の
経済価値は別に検討すべき
17. 参考文献
ACIL Tasman (2008) “The value of spatial information: The impact of modern
spatial information technologies on the Australian economy,” report prepared for the
CRC for Spatial Information and ANZLIC, Australia, the Spatial Information Council.
Available at: http://www.crcsi.com.au/Documents/ACILTasmanReport_full.aspx
Vickery, G. (2011) “Review of recent studies on PSI re-use and related market
developments.” Available at:
http://ec.europa.eu/information_society/newsroom/cf//document.cfm?doc_id=1093
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