4. 研究背景~SMが企業に与えるインパクト~
SM利用者の増加に伴い、企業にとっても無視できないメディアと化してい
る
SM活用強化 SM満足度
プロモーショ
ン(70%) GAP
広報 認知向上
(72%) (53%) 84%
20%
図2:企業のSM活用目的 図3:企業の抱えるGAP
マス“メディア”とは異なる点を認識し、
ソーシャル“メディア”専用の仕掛けの必要性
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5. 研究背景~SMマーケティングの仕掛け~
SMを活用したマーケティングは黎明期であり、様々な試みが成されている
• クローズドなSMコミュニティを活用した“MROC”
Ex. • SMのリスクに着眼した“ニューメディアリスク協会”の設
立(2012)
• 従来の消費者行動モデルと異なるSMに特化した“SIPS”の
提唱
企業と個人、個人と個人間での情報伝播を扱う
“バイラルマーケティング”に注目
認知
拡散
購買
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6. 先行研究紹介~SNSの紐帯関係~
石井(2011):『「強いつながり」と「弱いつながり」のSNS』
• 各SNSの特徴をユーザ間の紐帯の強弱によって分類
特徴
• 紐帯の強弱により、異なる効用をユーザに与える
強いつながりのSNS 弱いつながりのSNS
重要な情報が受信 意外な情報を受信
着眼点
SNSごとの紐帯を考慮しているが、
SNS内での紐帯関係までは考慮されていない
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7. 先行研究紹介~ネット上のクチコミの有用性~
杉谷(2009):『インターネット上の口コミの有効性』
• “クチコミ”をリアル・ネット空間の両空間で議論
特徴
• 情報を言語・非言語で分類
言語情報(文字) 非言語情報(画像)
“事実”を伝えるには重要 “感情”を伝えるには重要
Ex. Ex.
・商品の機能性 ・商品のデザイン性
・日本製の商品です ・感性に訴える表現
ネット上でのクチコミ効果が高い リアルでのクチコミ効果が高い
着眼点
言語・非言語情報によって与える影響の違いは示されているが、
その後の情報拡散までは議論されていない
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8. 研究目的
先行研究から得た仮説
紐帯の強弱はSM上でのバイラルに有意な影響を与える
言語・非言語情報はSM上でのバイラルに有意な影響を与える
研究目的
ソーシャルメディアによる情報の双方向性における
情報拡散モデルの提案
有用性・狙い
SMマーケティング戦略を立てる上での有効な知見となる指標作成を目指
す
• バイラルに影響を与える要因の明確化
• 自然発生的なバイラル構造の記述
• 企業担当者への指標
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9. 研究手順
重要語の定義
主要SMの分類化(対応分析)
研究範囲の絞り込み
情報自体の持つ特徴
ユーザが起こす行動
行動の起因となる心的要因
予想アウトプット作成プロセス
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10. 重要語の定義~SMとSNS~
SM(ソーシャルメディア)
1. コミュニケーションを主とするWebサービス
2. 基本的なサービスは無料
3. 自由・招待制で参加、自由な情報発信が可能
4. 個人間の繋がりを可視化できる関係図を保持
SNS(ソーシャルネットワーキングサービ
ス)
上記の定義に該当しないSM全体を指す
図4:SNSとSMの区別
• ツイート • いいね!
• リツイート • シェアする
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11. 重要語の定義~バイラル~
バイラル(拡散)
SMを経由して情報が伝わっていくことを指す
また、情報を受け取った人がその情報を紹介・推奨することで広まる現象
事例
『震災時のデマの拡散』 『フリスクキャンペーン』
政府対応にまで影響 SM上での発言数20倍
『ビンラディン死亡記事』
・1時間で1500万人がツイート
・440万人がいいね!を押す
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12. 主要SMの利用目的調査~対応分析~
分析目的
SM利用目的の比較により、各SMの位置付けの傾向把握
分析対象・手
各SM(Facebook,mixi,Twitter,Blog,mobage,GREE)ユーザへのWebアンケー
法
ト
データ内容(全14項目)
A. リアルでの友人・知人とのコミュニケーションのため
B. リアルでの友人・知人の近況を知るため
C. ネット上での知り合いとコミュニケーションのため
D. ニュースを見るため
…
M. 暇つぶしのため
N. その他
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13. 対応分析~結果~
第2固有値までで累積寄与率95%
・好きな企業やブランドの情報収集
Type 3 ・自分の個人的な雑感を発信
・芸能人や著名人の情報収集
・暇つぶし
・その他
Type 2
・リアルでのコミュニケーションや近況情報の収集
・ネットでのコミュニケーションや近況情報の収集
Type 1
図5:SNSの利用目的
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14. 対応分析~考察~
Type 1 (Facebook & mixi)
リアル・ネット空間での双方向なコミュニケーションタイプ
(相互認証制で、初期から適当なエンゲージメントが担保)
Type 2 (GREE & mobage)
暇つぶしタイプ
(バイラルと乖離しているので研究対象として焦点は当てない)
Type 3 (Blog & Twitter)
有名人等の情報収集・発信などの単方向なコミュニケーションタイ
プ
(認証条件がなく匿名性が高く、自由なやり取りが行われる傾向)
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16. 情報自体の持つ特徴
情報にも様々な種類があるため、
それらを本研究では“情報の品質”と定義し整理
ソースの信頼性 企業などの公式アカウント
インフルエンサ
親友、SM上での知人、有名人などの紐帯
(キュレータ)
(ただし、紐帯の強弱は設計困
難)
情報の重要性 商品、サービス、雑感
(流布する情報は設計可
能)
表1:企業発信の多次元情報
情報の種類 新商品 視覚的な判断を要する 社内の雑感
多種多様
重要な発信内容 スペッ などの商品情報
ク 非言語情報
(
社史、口調など)
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17. 情報受容者の行動調査
調査目的
バイラル情報が、情報受容者の“行動”に与える影響の分類化
手法・サンプル数
対面インタビュー・Webアンケート・文献調査
(インタビュー:10件 / Webアンケート:26件)
有用な行動を抽出するために、SM感度の高い若年層と
SMをマーケティングに利用している企業ユーザから回答を取
得
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18. 調査結果
本研究で焦点を当てたSM
・Facebook → 85%
・Twitter → 77%
先行リサーチと同様高い数値だが、
mixiは低い数値となった
友達からシェアされたアプリを取得した 図6:使用中のSM(n=36)
友達のコメントを見て、詳しく情報を調べた
就職活動に関するセミナーを、Twitterで参加予約
ANAページは観光地の写真が綺麗でシェアする
飲食店情報を友人のページから得ている
面白い写真を見て、シェアした ユーザの行動として
コンビニクーポンを活用した “156行動”を抽出
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19. 結果考察~行動の分類~
調査結果で得た156種の行動の類型化を行い、
大きく以下の2タイプに分類
バイラル型行動(計11種)
ユーザがバイラル・情報提供を意図して起こす行動
Ex. いいね!を押す、RTを行う、シェアを行う、非言語情報の投稿
自己完結型行動(計8種)
バイラルに無関係で、情報受容者が起こす行動
Ex. 購買行動、イベント参加、サービス使用
無意識化におけるバイラル行動
表出する行動はバイラルに繋がる可能性
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20. 結果考察~行動の階層構造~
分類結果から、行動はフラットでなく“階層構造”を保持していると仮定
(企業の効果測定でも評価値を区別する傾向)
5/156=3%が行動 リアル上で購
自己完結型行動
買
23/156=15%が行動 シェア行動
心的障壁の高いバイラル型行動
「いいね」を押す
心的障壁の低いバイラル型行
図7:行動の階層構造 動
今後も調査を続行し、より詳細なパターン整理を行い階層構造を構築
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21. 行動の起因となる心的要因
同じ情報であっても全員が一律に受容するわけでなく、
個々が感じる心的要因が閾値を超えると行動を起こすと仮定
行動を促す心的要因の変数化が課題
Ex.
共感し 面白そう!
た!
シェア行動 購買行動
抽象度の高い潜在的な変数
(量的判断が困難)
共感
キャラクタの有
紐帯の強弱
無
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22. 予想アウトプット~構造方程式分析~
バイラルのメカニズムをSEM分析を用いてモデル化
SM上での知人
リアルでの知人 いいね!行動
紐帯の強弱 バイラル型
行動
言語情報のみ
シェア行動
言語・非言語
情報 順番
非言語情報のみ
自己完結型
購買行動
行動
トレンド情報 情報の重要性
RT率
モデルのリアルティ追求の為、階層的回帰分析の手法を導入予定
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23. 今後の研究方針・課題
① 情報受容者の“行動”の階層構造の妥当性
• 意味的な前後関係
• 時間的な前後関係 を考慮して研究を進める
• 行動重要度の重み付け
② 行動に影響を与える心的要因の変数化
• バイラル型行動
に有意な影響を与える観測変数の明確化
• 自己完結型行動
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24. 参考文献
A) 佐藤(2011):東日本大震災を契機にソーシャルメディアが拓いたコミュニケーション
新地平
B) 川上(2010):21世紀のメディア環境と消費者行動の変化
C) 石井(2011):「強いつながり」と「弱いつながり」のSNS
D) 杉谷(2009):インターネット上の口コミの有効性
E) 山岸(2011):ノード属性を考慮した情報拡散影響度の推定
F) Tribal Media House, Inc. & Cross Marketing Inc.:ソーシャルメディア白書2012, 翔泳社
G) 株式会社電通:http://www.dentsu.co.jp/sips/index.html
H) 株式会社ニールセン:http://blogs.itmedia.co.jp/saito/2011/08/mixi-twitter-fa-8f02.html
I) 株式会社宣伝会議:宣伝会議(2012年号No.837)
J) アンケートツクール:http://enq-maker.com/
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