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ICTリテラシー教育を埋め込んだ 社会人基礎力プログラムの設計と実践
- 5. 横浜商科大学における初年次教育の特徴
2014年度より新機軸スタート
アクティブラーニングの徹底
PBL(課題解決型の学び)を中心とする
講師陣によるチームティーチングの導入
コミュニケーションの徹底 - 学生同士の関係構築、学生と教員の関係構築
SA(StudentAssistant、学生アシスタント)の導入
成果物指向
「楽しい学び」であること
ICTの充実
ノートPC必携化、Google Appsコラボレーション環境の活用、LINE活用等
2015年度新カリキュラム「社会人基礎力プログラム」導入
ジェネリックスキルの育成
5
- 6. 2014以前カリキュラムのICTリテラシ教育と課題
必修科目 コンピュータ活用演習1/2、が実質的に唯一の科目
2つの「これ、必要なの?」状態
入口側の必要性 – もうやらなくても良くない?
中学・高校での情報科目必修化 → 「ふつうのPCの使い方」はわかってる
学生のデジタルネイティブ化 → 諸々「教えるまでもない」領域
出口側の有効性 – 教えてるはずなのになんで使えない/使ってないの?
教えてるはずのICTリテラシが正課内外で活用されていない
上位学年で講義でICTを全然使えていない、就活時もおぼつかない
PC教室のデスクトップしか使えない状況、環境
2015新カリキュラムでは必修廃止
6
- 8. 2015年度新カリキュラム 社会人基礎力プログラム
小クラス(30〜40人台編成)での必修科目、1〜3年で基礎力の徹底
全体に「コミュニケーション力」を要素分解して伝える
1年次半期2科目、合計4科目
社会力基礎演習1/2 「聴き、語る」ための基礎力
PBL、コラボレーションワークを通じた「説明力」の向上
ジェネリックスキルの認識と向上
グループワーク、プレゼンテーション
大学での人間関係構築
キャリア形成1/2 「読み、書く」ための基礎力
ビジネス現場と大学生活で行われている「仕事の仕方」の理解
自己分析に根ざしたキャリア意識の形成
文書ライティング・ノートテイキング
データ思考力
8
これら
全体に
ICTリテラシー
を埋め込む
- 9. 前期:社会力基礎演習1 後期:社会力基礎演習2
入学時ガイダンス〜関係構築支援
対人コミュニケーション演習
傾聴・チームビルディング
期末プロジェクト
「横浜エリアミニツアー」の企画を
立てプレゼンを行う
フィールドワーク
地域研究
論理構築
プレゼン入門、PowerPoint基礎
企業分析プレゼンテーション
新しい時代の「商」のモデル
Uber、AirB&B、メルカリ等
プロモーションをテーマにした
ポスター制作
「横浜の何かを紹介する」
ポスターの作成
マーケティング
デザイン入門、PowerPoint応用
社会力基礎演習1/2 - 聴き・語る
9
- 11. 前期: キャリア形成1 後期: キャリア形成2
大学用の環境初期設定
毎週のタイピング練習
「読む相手を想定した」
大人メールの書き方
レポート・ライティング入門
PREP法による論旨構成
商大ミニレポート形式
参考文献の書き方
Google Calendarによる
スケジュール・タスク管理、PDCA
二年ゼミエントリーシートの作成
「就活ごっこ」の徹底
PREP法による論旨構成
自己分析・企業(ゼミ)分析
自分のキャリア意識の文章化
データ思考力入門
Excelの基本的操作 x プロジェクト
「50%アンケート」仮説検証入門
「GPA時間割表」GPAを上げるには?
「タイピングスコア分析」実データの
グラフによる可視化と分析レポート
最低限のセキュリティ対策
キャリア形成1/2 - 読み・書き
- 13. 就職活動をモデルにした
「ゼミ選択のためのワーク」
方針
ゼミを選ぶための「エントリーシート」を準備する
エントリーシート:
参加を希望する人が、希望の意思などをアピールし、
主催者に提出する応募用紙のこと
就職活動、ゼミ選択などで提出する
ゼミ活動=「大学生時代に取り組む中心的な活動」
志望するゼミに、自分のことをアピールする文書を書こう!
自分が大学生活で
取り組みたいこと
についてまとめる
昔の
自分を
振り返る
自分の好きなも
の・したいことに
ついて考える
「なぜその
ゼミに入りたいか」
の
エントリーシートへ
結びつける
(2015年度 キャリア形成II
授業資料より)
- 14. 前提: 新カリキュラムを支える環境の構築
出口側の必要性 - 教えたものが使われるようにすること、のためには
× PC教室+デスクトップPC+独自環境
そこでしか使わないバッドノウハウ、「行かないとできない」意識の醸成
環境の陳腐化
○ BYOD (Bring Your Own Device) + クラウドを前提とした環境
自分のノートPC、スマホを持ち歩いて、いつでも、どこでも学習・研究
アクティブラーニング教室の整備
ノートPC必携化、斡旋販売
学内WiFi強化
Google Apps, Office 365 など「普通によく使われている」クラウドサービス
による大学環境の提供 (Gmail, Google Classroom が重要)
14
- 21. 図1 PCの利用が得意か苦手か,4段階で選択
4→12月でほとんど変わらないが、若干改善?
1年近く講義で使っても苦手意識は残る
苦手意識を持つ学生が過半数 (12月、1+2で62%)
「非常に苦手」の25%は、教員からの主観での1:下位層率に近い
22
65
86
97
117
86
99
15
15
0% 20% 40% 60% 80% 100%
12月
4月
1:非常に苦手 2:苦手 3:得意 4:非常に得意
1:非常
に苦手
25%
2:苦手
37%
3:得意
32%
4:非常
に得意
6%
- 23. 図3 文章を入力する時の最速入力方法
4月→12月、「両者同じぐらい」は増え、スマホは減る
平均的な学生のタイピングスコアは問題なく、苦手ではないはず
もし練習がなかったら更にキーボードは苦手?
キーボード入力の優位性を平均層が感じていない
PCベースのデジタルネイティブ前期世代との意識差
24
126
166
73
73
53
36
8
12
3
30
0% 20% 40% 60% 80% 100%
12月
4月
スマートフォン キーボード 両者が同じぐらい ガラケーテンキー わからない・その他
- 24. 「PCに対する苦手意識」問題 まとめ
教員側主観との一致
全体的な苦手意識が高い
特に下位層の強い苦手意識は強い
1年講義をやった結果、全体のリテラシーが改善しても
問題1: 「本当に苦手な25%」の改善が難しい
このレベルに合わせて必修授業はしにくく、取り残され気味
多少改善しても、苦手意識は消えない
問題2:「学生平均の対スマホPC意識」は変わりにくい
対スマホでは、スマホの優位感がむしろ増加する?
実質的なリテラシーの指標としてのタイピングスコアは向上し、
多少キーボードに対する苦手意識が薄れても、スマホ入力の方が好き
25
- 30. PC苦手意識の分析と対策
実際のリテラシーと苦手意識は直接関係しない?
苦手と言っているだけの部分もある?
「私は英語が出来ません」と必ず言う日本人現象に近いのかも
実際のリテラシーの測定指標が必要 – PISA,PIAAC の一部?
今後の課題:「PCが苦手だから避ける」ことを克服させる教育?
「楽しさ」がもう少し必要?
「授業」で<教える>ほど苦手意識が強まる可能性?
PCによる情報生産の楽しさを経験する必要
「自信」を植え付ける方法は?
高校で使っていた人ほど自信があるなら、大学でも同様か?
使う時間を増やす - 必修以外の授業での取り組みが必要
スマホの情報生産的活用も平行して探る必要性
31
- 34. 基礎演習科目の結果概要
35
学期 科目 成績 修得単位 GPA
PROG
リテラ
シー
PROG
コンピテ
ンシー
2014前
期
基礎演習Ⅰ
79.00
19.71
15.50
4.51
2.00
0.93
ー ー
2014後
期
基礎演習Ⅱ
76.60
22.18
15.35
4.51
1.86
1.00
2.64
1.69
3.56
1.47
2015前
期
社会力基礎
演習1
82.30
15.75
17.67
5.29
1.99
0.92
3.54
1.62
3.25
1.61
(上段=mean、下段=sd)
- 36. 60.0
65.0
70.0
75.0
80.0
85.0
90.0
1 7 2 9 4 8 3 5 10 6
基礎演習クラス別 成績
37
60.0
65.0
70.0
75.0
80.0
85.0
90.0
野球部 資格 CL 他3 他4 他1 他2 他5
60.0
65.0
70.0
75.0
80.0
85.0
90.0
野球部 資格 他4 CL 他5 他2 他1 他3
基礎演習Ⅰ
sd: 7.23
基礎演習Ⅱ
sd: 4.60
社会力基礎
演習1
sd: 3.48
- 39. PROGテスト
PROG(Progress Report on Generic Skills)
ジェネリックスキル
汎用的技能
あらゆる職業を超えて活用できるTransferable Skills
キー・コンピテンシー(OECD)
学校法人河合塾と株式会社リアセックが共同開発
「選考・専門にかかわらず大卒者として社会で求められる汎用的
な能力・態度・志向」の育成と測定(成田 2014)
40
- 40. 相関分析 2015前期1年生
科目成績とPROGリ
テラシー、PROGコ
ンピテンシーは5%
有意で相関
コンピテンシーはマ
イナス
授業内容は社会人基
礎力養成を計ったも
のだった…
成績 GPA 単位 PROGリテ PROGコン 欠
成績 1.000
GPA .681 ** 1.000
単位 .717 ** .818 ** 1.000
PROGリテ .145 *
.438 **
.204 **
1.000
PROGコン -.119 * -.195 ** -.107 + -.221 ** 1.000
欠席 -.429 ** -.368 ** -.246 ** -.039 .054
意欲 .106 .004 -.007 -.041 .215 **
シラバス -.016 -.013 .019 -.052 .162 *
学習時間 .186 ** .261 ** .186 ** .025 -.063
**