【食品関連企業で働く女性の会・葵会で「ハラルの食事規定と国内における対応 」（2020年オリンピックにむけた食品事情の一環として）講演をしました20161018】

1. ハラルの食事規定
と国内における対応
（2020年オリンピックにむけた食品事情の一環として）
アラブ・コンサルティングサービス東京
岩口 昇龍
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2. 自己紹介
岩口昇龍（いわぐち しょうりゅう）
アラブ・イスラーム学院卒業、
スーダン国アフリカ国際大学アラビア語研究所修了。
日系メディア企業（マレーシア）、日系プラント企業（サウジアラビア）
勤務を経て、2013年にA.CS東京（アラブ・コンサルティングサービ
ス東京）を設立。
イスラーム文化やアラブでの商文化に精通し、各方面にコンサル
ティングを行う。
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3. 本日の流れ
 ハラールに関する解説
 ハラールの前提になるイスラーム解説
 ハラールにまつわる日本国内における対応
 食品業界として留意すべきこと
 材料表示の具体例
 2020オリンピックに向けて必要と思われる取
り組み
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4. ハラールとは（岩口による雑記）
食事に関するルールだけではない。
ハラール認証とイコール（＝）ではない。
何がハラールかは、ムスリム自身が判断する。
ハラールはシンプルです。
認証は不要です。
（残念ながら）認証を勧めるモスク＆団体がある。
中東には必要なかったハラール認証
マレーシアやインドネシアなど、イスラーム圏各国で「ハラール・ハブ覇権
争い」が激しさを増している。
→それはイスラーム本来の教義から外れた、単なる「ライセンスビジネ
ス」の「デファクトスタンダード」の争いに堕している
参考：デロイトトーマツ グローバルで拡大を続ける巨大市場“イスラームマーケット”の攻略を急げ 第1回:http://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/strategy/articles/cbs/halal-market.html
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5. 改めて「ハラール」とは？
ハラールとはゆるされたこと。
食べ物に限らず、行動や言動等生活全てに
おいてかかることです。
「食べて良いものか？食べてはいけないもの
か？」は個々の知識と信仰において個々が
判断します。
出典：札幌市経済観光局観光・MICE推進部観光・MICE推進課ウェブサイト
一般知識集よりhttp://www.sapporo-muslim.info/information/
（監修：日本ムスリム協会 札幌事務所長・タウフィーク須見氏） 5

6. ハラールの食事規定
食べたいものは、食べていいです。
《わたし（アッラー：神）は、自らの啓示の中に、食べる
者にとって禁じられたものを見出さない…》（家畜
章145節）
但し下記以外は、
《…ただ死肉、流れ出る血、豚肉そしてアッラー以外
の名が唱えられた邪なものを除いては》（同じく家
畜章145節）
出典：
慶応大学教授 奥田敦氏ウェブサイト「第2回 ハラールについて知ろう」より
http://assalam-jp.com/hospitality_02.html 6

7. ハラールと
ハラーム（禁じられた）の関係
作成者：中小企業診断士 齊藤光介氏（元キングサウード大学日本語ﾌﾟﾛｸﾞﾗﾑ講師)
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8. 禁じられているものは
「豚肉」と「飲酒」
「豚肉」が禁じられている
：禁じられている（ハラーム）
＊「豚」「豚由来」はハラーム？？
「飲酒」が禁じられている
＊病院のアルコール消毒
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9. 豚が禁止された理由 衛生面
様々な病原菌を保有しており、感染症（伝染病）の原因となる（人類の
知恵）
⇒日本でも生の豚肉を避けている。
 ユダヤ教で禁止していたから
レヴィ記 １１章【食べて良いもの、悪いもの】
11:7 それに、豚。これは、ひづめが分かれており、ひづめが完全に割
れたものであるが、反芻しないので、あなたがたには汚れたもので
ある。
11:8 あなたがたは、それらの肉を食べてはならない。またそれらの死
体に触れてもいけない。それらは、あなたがたには汚れたものであ
る
 （出典：http://spgh-leviticus.blogspot.jp/2008/01/blog-post_4999.html）
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10. 豚が禁止された理由
コーラン（クルアーン）では？
「クルアーン第２章１７３節」
かれがあなたがたに、（食べることを）禁じられる
ものは、死肉、血、豚肉、およびアッラー以外
（の名）で供えられたものである。だが故意に違
反せず、また法を越えず必要に迫られた場合は
罪にはならない。アッラーは寛容にして慈悲深
い方であられる。
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11. 「多くの人が誤解しているように、
豚の骨や脂肪に由来する『酵素』の全てが禁じられていると
確定しているわけではない。
ゼラチンのような豚に由来する多くのものは既に変質してお
り、別の表現をとるなら、科学的に変化しており、不浄とは
見なされない。」
しかし、
マレーシア認証基準に影響を受けている方は
ゼラチン、化粧品もダメ（⇦こだわり）
豚が禁止された理由
 （出典：アル=カラダーウィー著｢ムスリムマイノリティ法学」） 11

12. アルコール
 サウジでは食事の後に、アルコールで手を消毒する。
 病院のアルコール消毒
「クルアーン第５章９０節」
あなたがた信仰する者よ、誠に酒と賭矢、偶像と占い矢は、
忌み嫌われる悪魔の業である。これを避けなさい。恐らく
あなたがたは成功するであろう。
「４章43節」
「酔った場合、礼拝に近づいてはならない」
⇒酩酊してはいけないということ。 12

13. 酒の原料は葡萄のようにシャリーア上許されたものである
が、それが酔わせる物に変質した時に、それが酒である
と判断し、それを禁じ、またそれが酢に変れば、それを清
浄であり許されている、と判断するからである。＊シャリー
ア：イスラーム法のこと
アル=カラダーウィー著｢ムスリムマイノリティ法学」
しかし、
マレーシア認証基準に影響を受けている方は、
酢も化粧品もダメ（⇦こだわり）
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14. 『飲酒』が禁止された理由
(テイルミズィーの真性ハディース)より
「酔うものは全てハラームである。１ファルク（１６ポンド）飲ん
で酔うものは、掌一杯でも（異伝では口一杯haswah）でも
ハラームである」
＊ハディース（預言者ムハンマドの言行録）
＊＊酩酊しない程度であれば、良いと判断するムスリムもい
ます。
元々、イスラームが誕生する以前の時代（無明時代）に飲酒を
したメッカの人々があらゆる犯罪をしたという歴史的経緯が
あります。
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15. ハラール・ハラームの誤解
味の素事件＠インドネシアも
食品製造ラインのアルコール消毒も
⇨ハラール（ハラームではない）
＊聖典クルアーン（コーラン）に書かれていな
いことは、民族・地域による単なる
⇨「こだわり」
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16. 関心と問題
16出典：http://www.asahi.com/articles/ASJ8K55H6J8KULOB016.html

17. 厳密な日本の食品品質管理
ISO9001 国際標準化機構による品質マネジメントシステムで、品質
保証を含む顧客満足向上を目指すための規格。
ISO22000 HACCPの食品衛生管理手法をもとに、消費者に安全な
食品を提供することを可能にする食品安全マネジメントシステム
（FSMS）の国際規格です。
ISO14001 企業活動、製品及びサービスの環境負荷の低減といっ
た環境パフォーマンスの改善を継続的に実施するシステム[環境
マネジメントシステム(EMS:Environmental Management
System)]を構築するために要求される規格。
HACCP 最終製品の検査のみでは保証しきれない食品の安全性を
製造・加工などの工程で確実なものとし、その保証を可能にするシ
ステム。
FSSC22000 食品安全システム認証規格。食品安全規格である
ISO22000：2005と食品製造のための食品安全上の前提条件プ
ログラムに関する基準であるPAS220：2008との統合に基づいて
作成された食品製造業者のための新規の認証スキーム。
出典：Copyright(c) 2012 Hokuriku Coca-Cola Bottling Co.,Ltd. All Rights Reserved.
https://www.hokuriku.ccbc.co.jp/?page_id=257
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18. 厳密な日本の食品品質管理
出典：Copyright(c) 2012 Hokuriku Coca-Cola Bottling Co.,Ltd. All Rights Reserved.
https://www.hokuriku.ccbc.co.jp/?page_id=257 18

19. インドネシア味の素事件（2001年）
2001年1月、インドネシア味の素のうま味調味料“AJI-NO-
MOTO”がハラール認証を受けながら、認証後に発酵菌の栄
養源を作る過程で使用する触媒に豚から抽出した酵素が使
われていたことが判明し、現地日本人社長を含む数名が逮
捕された事件。 現地の味の素は東部ジャワ州モジョクルトの
工場の一時的操業停止と商品の回収を実施。一部のイス
ラーム教は「味の素はイスラーム社会をだました」と工場前
で訴える騒動も起きた。 味の素は「ハラールの基準を満たし
ていない商品に、認証マークを添付してはならない」とする消
費者保護法違反に問われた。 事件の背景にはインドネシア
内で反政府の動きもあったのではないかとも言われたが、認
証を受けた直後の原料変更で、その成分を把握していな
かったことや、その変更を認証機関に報告せず認証マークを
付け続けていた味の素のイスラーム教戒律に対する認識の
甘さに課題があったと思われる。
出典：Cilsien – ASEAN Info Clips 19

20. 日本人が「味の素事件」で
学ぶべきだったこと
 ハラール認証を受けながら
 触媒に豚から抽出した酵素
 現地日本人社長を含む数名が逮捕
 味の素はイスラーム社会をだました
 ハラールの基準
 認証マーク
 認証を受けた直後の原料変更で、その成分を把握していな
かった
 味の素のイスラーム教戒律に対する認識の甘さ 20

21.  ハラール認証を受けながら
当初から認証を疑うムスリムがいたということ
←現在、日本のムスリムの一部は認証に懐疑的
 触媒に豚から抽出した酵素
豚由来の極論（触媒は成分か？酵素は「豚肉」か？）
←「ハラーム」ではない。「変質」という考え方（＊この後解説）
 現地日本人社長を含む数名が逮捕
犯罪か？ハラールに関して罪が問えるか？
インドネシア政府は、「味の素製品には豚肉成分は一切含まれていない。製造過程の検
査でも、問題になる成分は検出されなかった」との調査結果を発表。釈放。
←この時点でハラール認証、豚由来、日本の食品会社のスタンスを世界に示すべきだっ
た。
日本人が「味の素事件」で
学ぶべきだったこと①
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22. 参考：「変質」という考え方
豚肉が禁止された背景：
様々な病原菌を保有しており、感染症（伝染
病）の原因となる
ブドウ⇨ワイン（酔わせるものに「変質した）
豚肉⇨ゼラチン（「変質した」）
出典：アル=カラダーウィー著 ｢ムスリムマイノリティ法学」
さっぽろ地域雇用創造協議会ウェブサイトよりhttp://www.sapporo-muslim.info/information/
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23.  ハラールの基準
ハラールには「基準」はない。聖典クルアーン（コーラン）のみ。神（アッラー）のみ。
 認証マーク
現在世界中で問題になっている「ハラール認証とマーク」
 認証を受けた直後の原料変更で、その成分を把握していなかった
味の素のミス。変更と酵素、触媒であるという提示。
 味の素のイスラーム教戒律に対する認識の甘さ
日本人のハラール知識不足、認識不足
学者による分析不足
日本企業の国際部門、食品管理部門の認識不足
日本人が「味の素事件」で
学ぶべきだったこと②
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24. 日本国内における対応❷
 「認証」以前： ムスリムは「何も食べれなかったか？」
アラブ系大使館関係者、ムスリム肉体労働者など。
 「ハラール認証」の誕生：
マレーシア政府による自国商業政策の一環として１９６０年代に始まった。⇨各国に
拡散。
 インドネシア味の素による事件（2001年）
 日本国内でのハラール「認証」ブーム(2014年以前）
NHK「クローズアップ現代」『イスラム圏に商機あり ～“ハラル”市場を狙う日本企
業～』http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3554/1.html
認証団体の乱立：東洋経済「そのハラル､大丈夫？マーク発行団体が乱立 一歩間
違えば国際問題に発展しかねない」http://toyokeizai.net/articles/-
/42051?page=3
 「日本イスラーム学術会議」発足 24

25. 東洋経済
「そのハラル､大
丈夫？マーク発
行団体が乱立
一歩間違えば国
際問題に発展し
かねない」
http://www.asahi.com/articles/ASJ1P658KJ
1PUTIL04Y.html
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26. 朝日新聞デジタル
『広がる「脱ハラル認証」
統一規格なく、費用に開きも』
出典：
http://www.asahi.com/articles/ASJ1P
658KJ1PUTIL04Y.html
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27. 「第２回ムスリムミーティング」
ハラールに関する宣言が発表
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28. 共同声明文の一部抜粋
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29. 「ハラール認証は原則不要」
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30. 食品業界として留意すべきこと
 多言語表示（アラビア語、最低限「英語」で）
 全ての食習慣と宗教の人を取り込むような取り組み
 食品表示の原材料名に「豚肉」「アルコール」の記載
 「豚肉」「アルコール」をピクトグラムで有無を表示
 肉の原産地表示（特にキリスト教国）
 外国人向けなら食文化を考慮（まずマーケティング）
 可能ならムスリム雇用（Web,SNSで顔写真、口コミによる
販促。特に東南アジア圏）
 ハラール肉を使用している（こだわる方向け、文化の違い）
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31. 「すべての加工食品に原産地表
示を 検討会に素案」
31出典：http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161005/k10010718471000.html

32. 2020のオリンピックに向けて必
要と思われる取り組み
 多言語表記
（まずは「英語表記」、可能なら「アラビア語」）
 ピクトグラムの活用
東京都のウェブサイトに使用無料なものが掲載
http://www.menu-tokyo.jp/menu/pictogram/
 宗教上の食習慣に関する知識
豚肉と飲酒（イスラーム）、豚肉や魚介類の幾つか（ユダヤ教）、牛
肉など（ヒンドゥー教）など
 「ぐるなび」などで「ハラール」等のカテゴリー（飲食店向け）
 間違った情報に、踊らされないように！
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33. 最後に
ご清聴ありがとう
ございました
アラブ・イスラームに関するビジネスで
多角的なコンサルティングを
提案させて頂きます。
A.CS東京 岩口昇龍
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