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利益の源泉であるロイヤルティとCRM
埼⽟⼤学 経済経営系⼤学院
加藤拓⺒
マーケティング #03
今回の位置付け
顧客管理と効果測定
戦略と実⾏
価値づくりの考え⽅
調査による客観的な状況把握
#01 マーケティング
#02 ブランドマネジメント
#04 市場調査
#08 ランダム化⽐較試験
#09 感性⼯学
#05 消費者⾏動
#06 回帰分析
#03 ロイヤルティとCRM
#10 クチコミ
#11 戦略と組織能⼒
仮説⽴案 具現化 検証
#07 知覚品質
#12 まとめ
対象のプロセス
コンセプト
検証
ラインナップ戦略 コンセプト
策定
知覚品質検証
価値づくり
市場反応
想定される社会変化・消費者の⽣活変化
を踏まえ,解決すべき問題は何か︖
どんな困っている⼈(実⽤+⼼理)に
どんな価値を提供するのか︖
そのコンセプトは
購⼊意向・⽀払意思額
を⾼めるか︖
コンセプトを⼀貫して,
かつ⾼い知覚品質で具現化できているか︖
消費者はコンセプトを感じ取り,
購⼊⾏動を起こしているか︖
ブランド評価
消費者のロイヤルティ
は⾼まっているか︖
価値づくりの活動全体を通じて,考え⽅と対応する科学的アプローチを議論する
アジェンダ
1. ロイヤルティは利益の源泉
2. CRMの⽬的
3. ロイヤルティの測定⽅法
4. ロイヤルティの要因
5. まとめ
アジェンダ
1. ロイヤルティは利益の源泉
2. CRMの⽬的
3. ロイヤルティの測定⽅法
4. ロイヤルティの要因
5. まとめ
ロイヤルティとは何か︖
「ロイヤルティの⾼い顧客」=「購⼊意向・⽀払意思額・再購⼊意向が⾼い顧客」
1: 恩蔵直⼈. (1995). 競争優位のブランド戦略―多次元化する成⻑⼒の源泉. ⽇本経済新聞社, 51-58.
ある特定のブランドを経験することによる満⾜から⽣じる
好ましい態度(コミットメント)かつ反復的な購⼊⾏動1
• 前から知ってて,好きだけど,買うほどではない
• お店が近いから毎週⾏くけど,引っ越したら⾏かない
• 安いから買っているけど,他の商品の⽅が安くなったら買わない
• すごい興味があるけど,1回写真を撮れば⼗分
購⼊意向・⽀払意思額・再購⼊意向が⾼い顧客を指す.
ロイヤルティが低い状態は,
ロイヤルティは,利益を効率的に上げる源泉である1
ロイヤルティは利益の源泉
ロイヤルティを⾼めることは,効率的かつ持続的に⾼い利益率に貢献する経営⼿段
1︓Rigby, D. K., Reichheld, F. F., & Schefter, P. (2002). ⼋年間の調査が明かす四つの落とし⽳ CRM 「失敗の本質」(顧客戦略の本質). Diamond ハーバード・ビジネス・レビュー, 27(7), 76-87.
2︓Pfeifer, P. E. (2005). The optimal ratio of acquisition and retention costs. Journal of Targeting, Measurement and Analysis for Marketing, 13(2), 179-188.
3: Fisher, A. (2001). Winning the battle for customers. Journal of Financial Services Marketing, 6(1), 77-83.
4: Aaker, D.A. and Joachimsthaler, E.: Brand Leader-ship, The Free Press, New York (2000) (阿久津聡(訳)︓「ブランドリーダーシップ」,ダイヤモンド社,pp. 294-335 (2000))
5︓Reichheld, F. (2006). The ultimate question. Harvard Business School Press, Boston.
6︓Oliver, R. L. (1999). Whence consumer loyalty?. Journal of marketing, 63, 33-44.
• 新規顧客を開拓するより,既存顧客をリピーターとして確保する⽅が
効率が良く利益率が⾼くなる2,3
• ロイヤルティの⾼い顧客は,ブランドに対して情熱を持っており,
ブランドの伝道師・営業要員としての役割を果たす4,5
• 市場環境や企業のマーケティング活動が変化する可能性があっても,
⼀貫して商品・サービスの継続購⼊の意思を⽰す6
ロイヤルティと価格
⾼いブランドロイヤルティを獲得した企業は,価格設定の⾃由度を得る
1:伊藤良⼆. (2001). 戦略顧客を定義し, そのロイヤルティを最⼤化する ブランドと価格戦略の好循環. Diamond ハーバード・ビジネス・レビュー, 26(4), 72-83.
ロイヤルティが⾼い顧客は,他社より⾼額でも⾃社を選び続けてもらえる
という確信のもと,ブランドロイヤルティの醸成・維持を何よりも優先1
ロイヤルティは,⾼い価格プレミアムの獲得に貢献し,
価格競争の波から脱することができる強⼒な⼿段
Mercedes-Benz
成果の⼤部分は,全体を構成する⼀部の要素が⽣み出している
パレートの法則に学ぶ優良顧客の重要性
ロイヤルティの⾼い顧客がもたらす利益率は,その他の顧客がもたらす利益率と異なる
20%
80%
上位20%の顧客が 80%の収益を⽣む
20対80対30の法則
ロイヤルティの低い顧客を「⼿放せ」ば,企業の収益を押し上げることができる
上位20%の顧客が 80%の収益を⽣み
20%
40%
40%
30%
下位30%の顧客への
対応で半分を失う
Kotler, P. (2015). Marketing Management. Pearson.
ロイヤルティの⾼い顧客の価値
優良顧客は,持続コストが低く,⾼額な⽀払い意向があり,ファン拡⼤に貢献する
優良顧客の存在は,その顧客の購⼊総額よりも価値がある.
GMの優良顧客は,⽣涯に27万6,000ドル分の価値がある.
つまり,11台以上の⾞の購⼊に相当する.1
1︓Woolf, B. P. (1996). Customer specific marketing: the new power in retailing. Teal Books.
2︓Brown, S.A. and Coopers, P.W. (1999) Customer Relation- ship Management: A Strategic Imperative in the World of e-business, John Wiley & Sons, New York.
すべての顧客を平等にするのではなく,
利益をもたらすロイヤルティの⾼い顧客を⼤事にすべき
GM
ブランドと特別な繋がりを持てるなら,顧客も努⼒を惜しまない2
(例)航空会社のロイヤルティプログラム
• 優先搭乗している顧客を⾒て「⼆度と利⽤しない」と考える顧客は稀
• ステータスを獲得するために”修⾏”する顧客が⽣まれる効果の⽅が⼤きい
“平等”とは何か︖
ロイヤルティを⾼めるには,労⼒を割いてくれた消費者に報いる平等が求められる
どれだけ⾼いロイヤルティを有し,
どれだけ企業に利益をもたらしても,
全ての消費者を同等に扱う
資本主義的な”平等”
社会主義的な”平等”
ブランドに払った労⼒(⾦額・時間)を
適切に評価し,各消費者の対価に⾒合う
ように異なる内容で扱う
⽬先の販売を追い続け,優良顧客をないがしろにしながら顧客に売りつけてはいけない
ロイヤルティを重視しているか︖
⾼い利益率の企業
顧客のロイヤルティ向上が命題
顧客におのずと選ばれる
優良顧客を⼤切にする
優良顧客に販売してもらう
指標はロイヤルティ
低い利益率の企業
⽬先の販売が命題
顧客に売る
顧客はみんな平等
営業スタッフが販売する
指標が乱⽴ (好意, イメージ等)
効率的かつ持続的な成⻑ 常に全速⼒だが低い成⻑
ロイヤルティを向上することで,顧客基盤は競合からの攻撃に強くなり,経営を⽀える
ロイヤルティの⽔準
コミット
好意
満⾜
不満ではない
ロイヤルティ
低
⾼
ブランドの利⽤者であることを誇り,
他⼈に勧める確信を有する
ブランドとの付き合いが⻑く,
愛着があり,友好関係を築いている
これまでのブランドに対する投資から
スイッチングコストがかかる
習慣的に購⼊していても,競合他社
の訴求になびきやすい
Aaker, D. A. (1991). Managing brand equity. Free Press. (陶⼭計介ら訳. (1994). ブランド・エクイティ戦略. ダイヤモンド社)
スイッチングコスト(バリア)
顧客を実⽤的・⼼理的に囲い込み,ロイヤルティを⾼める (不快な囲み⽅は逆効果に)
現在利⽤している商品・サービスから,別に乗り換える際に,
消費者(買い⼿)が負担する⾦銭的・⼼理的な負担の⼤きさ
• これまでのブランドへの投資(⾦額・時間)が⼤きい場合
Ø 航空業界のように,貯めたマイルを捨てたくない
Ø IT設備のように,従業員の教育投資をやりなおしたくない
• 変更のリスクが⼤きい場合
Ø 美容室のように,⾃分の好みを知ってる⼈から変えたくない
Ø インフラ業界のように,変更による障害発⽣を嫌う
優良顧客より新規顧客を重視してしまう企業
顧客全体のうち,⾼いロイヤルティの顧客の⽐率を向上することが重要
企業が⼤事にすべきはロイヤルティの⾼い優良顧客にもかかわらず,
多くの企業が新規顧客の獲得の⽅を重視してしまう
例︓
• 携帯電話業界は,乗り換えによる割引キャンペーンを積極的に訴求
するが,⻑い期間利⽤している顧客に対する訴求は乏しい
• ⾃動⾞業界は,販売台数に着⽬しがちで,利⽤者数の公表は稀であ
り,かつロイヤルティの⾼い顧客へのサービスが乏しい
⽬指す姿は「3つの喜び」
価値を創る前から,「どう販売するか︖」「いくら稼げるか︖」ばかり考えていないか︖
本⽥技研⼯業. ホンダ7年史 3つの喜び. https://www.honda.co.jp/sou50/Yume/7year/s2610_02.html
• 消費者が喜ぶ価値をつくり,
• 販売スタッフが⾃信を持って販売でき,
• 顧客は「買ってよかった」と喜ぶ
顧客
販売店メーカー
創る喜び 売る喜び
買う喜び
消費者
メーカー 販売店
アジェンダ
1. ロイヤルティは利益の源泉
2. CRMの⽬的
3. ロイヤルティの測定⽅法
4. ロイヤルティの要因
5. まとめ
CRM(Customer Relationship Management)の⽬的
成熟産業において,⻑期的に顧客のロイヤリティを⾼め,効率的に利益を上げる経営⼿段
CRMシステムの導⼊が⽬的に置き換わる
ポイント付与や値引きが横⾏している
eメールやダイレクトメールの開封率・応答率の向上に執着する
CRMの⽬的
⻑期的に顧客ロイヤリティを築き上げ,利益の改善を図ること1.
⾼いロイヤルティの顧客の数が企業の業績を⽀える基盤である.
• 再購⼊率が⾼く,販売・プロモーションのコストが低い
• ⽀払意思額が⾼く,価格の引き上げに貢献する
• 営業要員として,クチコミを広げ,新たな顧客を誘引する
散⾒されるCRMのプロジェクト
思想なきCRMシステム導⼊の末路
システムという⼿段が⽬的のプロジェクトでは,顧客のロイヤルティが考慮されていない
失敗する企業の傾向
• ⽬的︓有名企業が導⼊した最先端CRMシステムの導⼊
• 課題︓バラバラなデータの統合・可視化
パーソナライズしたプロモーション など
• 体制︓販売部⾨が要件定義,IT部⾨が開発・運⽤
成功する企業の傾向
• ⽬的︓⻑期的に顧客ロイヤリティを築き上げ,利益の改善を図る
• 課題︓顧客のロイヤルティを下げる要因の改善
顧客のロイヤルティを向上する施策の実施
• 体制︓研究開発・マーケティング・販売部⾨を横断し,
商品・サービスを常に改善するプロセス(指標・体制・報酬)を整備
価値づくりにおける測定すべき消費者の知覚
「ロイヤルティが⾼く,その理由がコンセプトである」という状態があるべき姿
認知 消費者が知らないと何も始まらない
「買いたいほどではない」では価値ではない
「安いなら買う」では価値が低い
「1回で⼗分」では利益率が低い
(再購⼊意向・推奨意向)
コンセプトが理由で
なければ再現性が低い
購⼊意向
⽀払意思額
ロイヤルティ
コンセプト
想起率
値下げするべからず
ロイヤリティプログラムとは,安易な値下げやポイントプログラムではない
1: Nunes, J. C., & Drèze, X. (2006). Your loyalty program is betraying you. Harvard Business Review, 84(4), 124-131.
ロイヤルティは,安易なポイント付与や値引きで獲得できるものではない1
散⾒される安易な施策
• 乱発される特別オファーという名の値引き
• 貯める動機の乏しいポイント
• 名ばかりで価値を伴わない”プレミアム”
• 個⼈情報を濫⽤した過剰なパーソナライズ
顧客がそれを望み,「もうそれなしでは困る」と感じるサービスを提供すべき
Burberryの在庫焼却処分問題
「創造する」だけでなく,「処分する」⽅法を検討することも重要な取り組みである
1: BBC. (2018). Burberry burns bags, clothes and perfume worth millions. July 19, https://www.bbc.com/news/business-44885983
2: Hanbury, M. (2018).もう燃やさない…… バーバリー、消費者の批判を受け、売れ残り商品の焼却処分を取り⽌め. Business Insider, September 12, https://www.businessinsider.jp/post-
174734
• Burberryは,値下げによってブランドを毀損しないために,⾐料品や
⾹⽔等約40億円相当の売れ残り商品を破壊・処分していたことが判明
• ソーシャルメディア上で⾮倫理的かつ環境に悪いと激しく批判された
• その後同社は,今後⼀切,売れ残り商品を燃やさないと発表した1,2
値下げせずに,売れ残りを処分する⽅法の検討も,
マーケティングでは重要である
アパレル業界の在庫処分問題を解決するRename
アパレル企業のブランドを守り,消費者は安価に購⼊でき,環境問題を解決する
1: Fine. https://c-fine.jp/rename/
“ブランド価値を守りながら,アパレル廃棄を減らす”1
国内の年間供給数量約29億点に対し,消費数量は約14億点と⼤量の廃棄が発⽣.
しかし,⼤幅な値下げ販売はブランド価値を低下させてしまう問題がある.
そこで,ブランドタグの付け替え加⼯を⾏い,ブランド名を変更して再販する.
Image from Fine
値引きに頼らないロイヤリティプログラムの例
1: レクサス⾼岳. https://lexus.jp/lexus-dealer/dc/info/24756
2: ANA.ステイタス別プレミアムメンバーサービス⼀覧. https://www.ana.co.jp/ja/jp/amc/reference/premium/service-comparison/
3: Hyatt. https://world.hyatt.com/content/gp/ja/member-benefits/globalist.html?icamp=woh_hometier_globalist_en
4: Uber. Introducing Uber Rewards. https://www.uber.com/ca/en/u/rewards/
5: 川津のり. (2016). 注⽬⾼まるロイヤリティマーケティング. Financial Information Focus, 8, 10-11.
特別感
招待された顧客のみが資格を持てるセンチュリオン会員.
発⾏数は限定されている.
販売店での待ち時間にくつろぐことができる,オーナー専⽤
ラウンジCLUB LEXUS.1
時間の節約
優先チェックインカウンター, ⼿荷物受け取りの優先,
専⽤保安検査場, 優先搭乗などのステータスサービス.2
グローバリスト会員になると,専⽤カウンターでの⼿続き,
アーリーチェックイン・レイトチェックアウト等が可能に.3
実⽤的な
特典サービス
柔軟なキャンセル,空港での優先ピックアップなど,
ステータスに応じた特典を利⽤可能.4
ロイヤルカスタマー認定を受けると,数回の事故であれば
特別に保険料が据え置かれるサービスが受けられる.5
American
Express
Lexus
ANA
Hyatt
Uber
Progressive
Pampers Parenting Institute
⼀⽅的なDM・安易なキャンペーン・嫌悪感を抱くパーソナライズは,企業の⾃⼰満⾜
1: Neff, J. (2001). Pampers. Advertising Age. August 16.
Image from P&G
• ⼦供の教育や健康について,世界中の専⾨家によるアドバイスを提供
• ⽉間100万⼈がWebサイトに来訪し,アクセスした⼈は,そうでない
⼈より30%以上⾼い確率でパンパースを購⼊1
ロイヤリティプログラムの注意点
⼀⽅的なDM・安易なキャンペーン・嫌悪感を抱くパーソナライズは,企業の⾃⼰満⾜
• サービスの基本的な質,特に安全性⾯での差はつけてはならない1
• ⼀部の顧客を歓迎しない,排他的プログラムと受け取られない配慮が必要1
• 名ばかりのプレミアム会員はロイヤリティを引き下げるため廃⽌すべき2
• プライバシーを尊重し,望まないパーソナライズメールを送らない2
• 安易な値引きやキャンペーンは控える2
1: Nunes, P. F., Johnson, B. A. (2001). Are some customers more equal than others?. Harvard Business Review, 79(10), 37-40.
2︓Mick, D., Fournier, G. S., Dobscha, S. (1998). Preventing the premature death of relationship marketing. Harvard Business Review, 76(1), 42-43.
CRMの成功企業と失敗企業の差
失敗する企業は,指標が不透明・個別部⾨で実⾏・経営層が無関⼼・低価格を追求
1: Thompson, R. G. (2015). 新しい価値の創造:「顧客中⼼主義」 の成功がいかに業績向上の原動⼒となるか. The best practice of customer relationship management, 32-40.
CRMの成功企業にある共通点1
• 研究開発/マーケティング/セールス部⾨を横断して,顧客に提供する
商品・サービスを常に改善するプロセス(指標・体制・報酬)がある
• 顧客にフィードバックを求め,経営課題として経営層に定期報告している
• イノベーティブな経験を重要視し,提供価格には重きを置かない
(成功企業への調査では,価格を優先順位の1-2位にした担当者は16%のみ)
過度なパーソナライズは価値か︖
セグメントのニーズを理解して価値提供する,マーケティング戦略の基本
マーケティングの基本となるSTP
Segmentation PositioningTargeting
• デモグラフィック・サイコグラ
フィックの消費者データに
よって,市場を細分化
(ニーズの理解)
• 消費者の知覚における
競合商品・サービスとの
相対的位置の獲得
• 各セグメントの市場規模
や競合の動向を調査し,
狙うセグメントを決定
STP1
市場の構造(セグメントのニーズ)を理解し,ターゲットを定め,
消費者の知覚において優位なポジションを獲得する
1: Kotler, P. (2015). Marketing Management. Pearson.
One-to-Oneマーケティングへ
収集したデータから嗜好を理解し,「適切な⼈に・適切な時に・適切な内容を」(パーソナライズ)
マスマーケティング One to Oneマーケティング
すべての消費者に同じアプローチ 異質性を踏まえて個別のアプローチ
近年は,個のデータを取得できるようになったことから,
セグメント別ではなく個別のマーケティングへ
One-to-Oneマーケティングの問題点
「キャンペーンの反応率向上≠ロイヤルティの向上」であり,望まれない努⼒をするべからず
商品の種類を増やすほど,ブランド低下・コスト増加してしまう.
テレビ広告でも,種類を増やすほど⼀貫性が崩れ,コストも⼤きい.
パーソナライズするほど
種類を増やせない
消費者は,多すぎる選択肢だと,負担が⼤きく,満⾜度が低下.
選択肢をやみくもに増やすことは,消費者の購⼊⾏動を妨げる.
多すぎる選択肢は
満⾜度を下げる
個⼈の属性・位置情報・Web閲覧等を収集されるだけで抵抗感
があり,パーソナライズが当たりすぎると気持ち悪い印象を抱く.
過度なパーソナライズは
消費者に嫌悪感
キャンペーンやDMの反応率を上げることが⽬的となってしまい,
「販売を不要にする価値づくり」から逸脱していく.
価値づくりの
思考が停⽌する
Steve Jobsのラインナップ改⾰
消費者のことを考えず,安易に選択肢を増やすことは,価値づくりの怠慢である
1: 松井博. (2012).僕がアップルで学んだこと 環境を整えれば⼈が変わる、組織が変わる.アスキー・メディアワークス.
Steve JobsはApple復帰後に,乱⽴していたPCのラインナップ
を対象者×形状の4種類のみに絞り,ブランドを⾼めた1
iMac Power Mac
iBook PowerBook
DesktopLaptop
ProfessionalConsumer
Image from Apple
「プライバシーを守る」という差別化
圧倒的な価値につながらない限り,個⼈情報を収集されることには抵抗がある
1: Apple.プライバシー. https://www.apple.com/jp/privacy/
2: 瀧⼝範⼦. (2016) Apple対FBIの「ロック解除論争」. ⽇経ビジネス. 2/29, https://business.nikkei.com/atcl/report/15/061700004/022600085/
プライバシーは基本的⼈権であり,Appleの中⼼にある⼤切な理念の⼀つ.
⾃分の情報を⾃分でコントロールできるようにApple製品を設計している.
それが私たちの信じるイノベーションである.1
個⼈情報に対するAppleの考え⽅
• Safariのトラッキング防⽌によって,インターネット広告から追いかけられない
• マップアプリは,⾏き先の履歴を保存せず,ID紐づけもしない
• Siriは,Apple IDと結びつけず,個⼈情報を収集しない
• FBIから犯罪捜査のための依頼でも,パスコードを開封することはしない2
GoogleのCookie廃⽌の決断
プライバシー保護に対する声や規制が世界的に広がり,アドテク企業は戦略⾒直しへ
• ChromeのサードパーティCookie*のサポートを段階的な廃⽌を発表1
*第三者の広告主や広告サーバー等から送られるもので,Web上の⾏動を追跡し,
リターゲティング広告に利⽤される
• Chromeのプライバシーに対する配慮を強化する戦略へ1
• ユーザーが知らないうちに,Webの⾏動を把握されることから,プラ
イバシー問題が指摘されていたため,AppleのSafariはサードパーティ
Cookieを受け付けないようにしている2
1: Lardinois, F. (2020). Google wants to phase out support for third-party cookies in Chrome within two years. TechCrunch, January 15,
https://techcrunch.com/2020/01/14/google-wants-to-phase-out-support-for-third-party-cookies-in-chrome-within-two-years/
2: ⽇経Xtrend. (2020). 「広告主」もがっかりグーグルのクッキー離脱 代替技術加速か. 1/23, https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00109/00068/
顧客情報を提供するモチベーション
顧客を置き去りにしたデータ収集・パーソナライズはCRMではない
顧客データの収集・活⽤が顧客価値につながっているか︖
情報提供のモチベーション高い
情報提供のモチベーション低い
顧客価値志向 ⽬先の売上志向
顧客データを⽤いた商品・
サービス価値向上が主⽬的
(例)Google mapのGPS
Youtubeの閲覧履歴
顧客データ分析に基づく
販売向上が主⽬的
(例)望まないレコメンド
販促キャンペーン
アジェンダ
1. ロイヤルティは利益の源泉
2. CRMの⽬的
3. ロイヤルティの測定⽅法
4. ロイヤルティの要因
5. まとめ
単純な反復購⼊ ≠ ロイヤルティの⾼さから⽣まれる反復購⼊
• ブランドにこだわりはなく,価格が安いから継続している
• 会社から⾃宅の帰り途中にあるから継続している
• 特に理由はないが,なんとなく継続している
⾒せかけのロイヤルティ
⾏動指標のみ扱うことは危険であり,⾏動・態度の両⾯でロイヤルティを測定すべき
Dick, A. S., & Basu, K. (1994). Customer loyalty: toward an integrated conceptual framework. Journal of the academy of marketing science, 22(2), 99-113.
⾒せかけの
ロイヤルティ
真の
ロイヤルティ
多
­ 潜在的ロイヤルティ少
反
復
購
⼊
低 ⾼
好意的態度
反復購⼊ができない
制約の理解が重要
⾏動・態度の指標
商品・サービスの性質を考慮し,適切な指標を採⽤する
⾏動指標
• 再購⼊率
次回の購⼊率
• 購⼊⽐率
商品カテゴリ内の購⼊シェア
• 連続購⼊
商品カテゴリ内の連続回数の平均値
• 財布内シェア (Share of Wallet)
商品カテゴリ内の⽀払⾦額のシェア
態度指標
• 好意度
ブランドに対する好意
• 満⾜度
ブランドに対する満⾜
• 推奨意向
家族や友⼈へのブランドの推奨意向
• 再購⼊意向
次回の購⼊意向
消費財と耐久消費財の特徴
再購⼊⾏動を評価するのは,耐久消費財では難しい場合がある
特徴
利⽤⾏動データ
購⼊⾏動
業界
購⼊検討期間
購⼊⾏動データ
(⾮耐久)消費財
短期間使⽤・低価格
(想定耐⽤年数が1年未満)
データ量が少ない
(アンケート調査)
回数多い・買い替えサイクル短い
飲料・⾷品・洗剤・化粧品
短い
(衝動買い・試し買いもあり)
データ量が多い
(POSデータ・オンライン販売)
耐久消費財
⻑期間使⽤・⾼価格
(想定耐⽤年数が1年以上)
データ量が多い
(操作履歴・移動履歴)
回数少ない・買い替えサイクル⻑い
⾃動⾞・家電・家具・家
⻑い
(事前にWebサイト・⼝コミを検索)
データ量が少ない
(⾃社店舗の有無でも差があり)
「わからない」の回答率
購⼊後の経過年
⾃動⾞業界における再購⼊意向を聴取した時の「わからない」の割合
耐久消費財における「再購⼊⾏動・意向」の難しさ
10年スパンの耐久消費財では,再購⼊意向をすべての⼈に聴取することは難しい
Kato, T. (2019). Loyalty management in durable consumer goods: trends in the influence of recommendation intention on repurchase intention by time after purchase.
Journal of Marketing Analytics, 7(2), 76-83.
全体 購⼊経過年別
わからない
26.5%
ロイヤルティを測定する”究極の質問”︓推奨意向
他⼈に推奨したいと思うほどの強い⽀持である推奨意向は,ロイヤルティの測定に有効
1: Aaker, D. A. (1991). Managing brand equity. Free Press. (陶⼭計介ら訳. (1994). ブランド・エクイティ戦略. ダイヤモンド社)
2: Reichheld, F.F. (2006). The Ultimate Question. Harvard Business School Press.
「このブランドを友⼈や同僚に紹介したいと思いますか︖」2
• 「ロイヤルティ」等の抽象的単語を使わず,実感を持って回答できる
• 被験者の負荷を上げてしまう⼤量の質問をせずに,回答品質を保てる
• ⾼度な技術が不要で,時期を問わず,タイムリーに聴取できる
他⼈に推奨するほどの確信はブランドへの強いコミットメントの表れ1
推奨意向の指標化
中⽴者を加算しないことで指標の無意味な増加を避け,厳しい評価を⾏う
推奨者の正味⽐率 = 推奨者の割合 - 批判者の割合1
(Net Promoter Score, NPS)
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
まったく
紹介したくない
ぜひ
紹介したい
どちら
でもない
批判者
Detractors
中⽴者
Passives
推奨者
Promoters
Axa, BBC, General Motors, Microsoft, Facebook, Lego, P&G等が
報道機関や財務⽂書でNPSをロイヤルティ指標として採⽤していることを公表2
1: Reichheld, F.F. (2006). The Ultimate Question. Harvard Business School Press.
2: BAIN & COMPANY.Companies That Use Net Promoter, http://www.netpromotersystem.com/about/companies-using-nps.aspx (last accessed March 15, 2020)
推奨者の正味⽐率と利益成⻑率の関係
推奨者の正味⽐率と利益成⻑率の相関関係は, 程度の差はあれど多様な業界で適合
Reichheld, F. F. (2003). The one number you need to grow. Harvard business review, 81(12), 46-55.
「満⾜」で満⾜してしまう企業が多いが,それではロイヤルティを獲得できていない懸念
Jones, T. O., Sasser, W. E. (1995). Why satisfied customers defect. Harvard business review, 73(6), 88-99.
“満⾜”ではなく“完全な満⾜”
どちらともいえない 不満⾜ 完全に不満⾜完全に満⾜ 満⾜
両者には決定的な差がある
ゼロックスの⾒解
完全に満⾜している顧客は,満⾜している顧客よりも,
1年半の間に再購⼊する確率が6倍も⾼くなる
競争が激しい⾃動⾞等の業界では,完全な満⾜とある程度の満⾜には
⼤きな乖離があり,わずかな満⾜度低下が顧客の離反を招く
ロイヤルティを獲得するには,ある程度の満⾜ではなく,”完全な満⾜”が必要
Jones, T. O., Sasser, W. E. (1995). Why satisfied customers defect. Harvard business review, 73(6), 88-99.
⾼いロイヤルティがあるのは“完全な満⾜”の顧客
再購⼊意向
競争が
激しい分野
競争が少ない分野
(規制・代替品が少)
⾮財務指標の導⼊にあたっての注意
⾮財務指標の影響は,業界や企業はもちろん,時代でも変化するため定期的な検証が必要
Mauboussin, M. J. (2012). The true measures of success. Harvard Business Review, 90(10), 46-56.
• ロイヤルティや従業員満⾜等の⾮財務指標を経営指標にしている企業は多い.
しかし,これらの指標は財務指標に対して緩やかな繋がりしかなく,それら
の改善がいくらの利益に貢献するかも把握していないことが多い.
• しかし,⾮財務指標に意味がないわけではない.問題は,財務指標に対する
効果が不透明な中,漠然と計測・改善に取り組んでいることである.
• 実際,⼿間をかけて,⾮財務指標の効果を明らかにした企業は,そのような
取り組みをしなかった企業に⽐べて,経営業績が⾼いことが明らかになった.
アジェンダ
1. ロイヤルティは利益の源泉
2. CRMの⽬的
3. ロイヤルティの測定⽅法
4. ロイヤルティの要因
5. まとめ
ロイヤルティの要因
満⾜や好意等の指標以外に,ユーザビリティ等の具体的な要因が明らかに
商品
サービス
• 最寄品は価格,買回品は信頼感,専⾨品は商品の独⾃性が貢献する1
• Eコマースでは,ブランドへの好意・信頼に加えてユーザビリティが寄与2
ロイヤルティ
プログラム
• 航空会社のマイレージ等のロイヤルティプログラムによるスイッチングコストが
乗り換えの制約となる3
• ポイントカードの携帯が店舗の利⽤に影響を与えるわけではない4
⼝コミ
• オペレーションを公開した⽅が価値を感じやすく,ロイヤルティを⾼める5
• ⺠泊サービスでは,⼝コミから知覚した価値は再購⼊意向に寄与する6
1: 三川健太, 増井忠幸, 後藤正幸. (2008). 顧客ロイヤルティ構造図に基づく重要要因の定量化⼿法に関する研究. ⽇本経営⼯学会論⽂誌, 59(5), 365-375.
2: 久保⿇⼦. (2020). EC サイト/アプリにおける UX がブランド態度に与える影響. マーケティングジャーナル, 39(3), 32-51.
3: ⽔野誠. (2014). マーケティングは進化する: クリエイティブな Market+ingの発想. 同⽂舘出版.
4:庄司真⼈. (2007). ロイヤルティ・プログラムにおけるカードの保有に関する⼀考察. ⽇本経営診断学会論集, 7, 185-194.
5: Buell, R. W. (2019). Operational transparency. 97(4), 102–113.
6: Liang, L. J., Choi, H. C., Joppe, M. (2018). Understanding repurchase intention of Airbnb consumers: perceived authenticity, electronic word-of-mouth, and price
sensitivity. Journal of Travel & Tourism Marketing, 35(1), 73-89.
オペレーションの透明性
裏で進⾏中の作業を⽬にすることで,⼿間がかけられていると価値を感じる
Buell, R. W. (2019). Operational transparency. 97(4), 102–113.
企業のオペレーションを覆い隠すと,顧客は⽣み出されている価値を⼗分
に理解できず,満⾜度や信頼,さらには企業へのロイヤルティが低下する
• 顧客がATMを多⽤し,窓⼝と接することがなくなると,銀⾏に対する総合的な
満⾜度が低下する
• 航空会社のWebサイトで航空券の検索中に「これまで133件該当しています」
と顧客のために⾏っている業務を表⽰した⽅が評価が⾼くなる
• 財布の原料費・製造費・関税・輸送費というオペレーションコストを開⽰した
場合,コストを開⽰していない財布よりも売上が増加する
※⾼級ブランドの魔法を解いてしまう,オペレーションが他社より劣っていることが露呈する等の該当しないケースもある
競争が激しい⾃動⾞等の業界では,完全な満⾜とある程度の満⾜には
⼤きな乖離があり,わずかな満⾜度低下が顧客の離反を招く
ロイヤルティを獲得するには,ある程度の満⾜ではなく,”完全な満⾜”が必要
Jones, T. O., Sasser, W. E. (1995). Why satisfied customers defect. Harvard business review, 73(6), 88-99.
⾼いロイヤルティがあるのは“完全な満⾜”の顧客
再購⼊意向
競争が
激しい分野
競争が少ない分野
(規制・代替品が少)
競争が少ない業界は,規制・特許切れ・技術⾰新による環境変化に影響を受ける
1: ⽇本経済新聞. (2014). 電⼒⼩売りを完全⾃由化 改正電気事業法が成⽴. 6/11, https://www.nikkei.com/article/DGXNASFS1003X_R10C14A6MM0000/
2: 中央社会保険医療協議会. (2010). 新薬の研究開発環境と製薬業界の課題について. 6/23, https://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/06/dl/s0623-2f.pdf
3: 篠原匡ら. (2019). 潜在利⽤者24億⼈、フェイスブックのリブラが国家に突きつけた挑戦状, 9/27, https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/special/00221/
競争が少ない分野のリスク要因
電⼒業界 製薬業界 ⾦融業界
規制の撤廃 特許保護の喪失 新技術の出現
電⼒の⼩売⾃由化
による他業界の参⼊1
多くの⼤型商品が特許
切れとなる2010年問題2
ブロックチェーンによる
中央銀⾏の地位低下懸念3
アジェンダ
1. ロイヤルティは利益の源泉
2. CRMの⽬的
3. ロイヤルティの測定⽅法
4. ロイヤルティの要因
5. まとめ
まとめ
• ロイヤルティとは,ある特定のブランドを経験することによる満⾜
から⽣じる好ましい態度(コミットメント)かつ反復的購⼊⾏動である
• 新規顧客を開拓するより,既存顧客をリピーターとして確保する⽅が
効率が良く,ロイヤルティは,利益を効率的に上げる源泉である
• 「単純な反復購⼊ ≠ ロイヤルティの⾼さから⽣まれる反復購⼊」で
あり,⾒せかけのロイヤルティと真のロイヤルティは区別すべき
• ロイヤルティは,安易なポイントや値引きで獲得できるものではない
• CRMの⽬的は,⻑期的に顧客ロイヤリティを築き上げ,利益の改善を
図ることであり,システムを導⼊・運⽤することではない
END
https://researchmap.jp/hm_tk

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