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ゲーム理論で読む「バブル経済」

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日本経済新聞(2009/7/14~24 付朝刊)「やさしい経済学」に掲載された記事の草稿です。ゲーム理論や社会的学習、行動経済学などの新しい知見を引用しながら、バブルの経済学分析について紹介しています。

【参考文献】などは、↓のブログ記事をご参照ください:
http://blog.livedoor.jp/yagena/archives/50546409.html

Publié dans : Économie & finance
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ゲーム理論で読む「バブル経済」

  1. 1. ゲーム理論で読む「バブル経済」∗ 安田 洋祐† 初出:2009 年 7 月 第 1 回 — 繰り返すバブル サブプライムショックに端を発する世界的な金融危機により,市場メカニズムに 対する信頼が揺らぎ始めている.信頼低下の大きな要因のひとつとして,資産市 場の異常なまでの不安定さをあげることができよう.株式や債券などの金融資産 に始まり,昨今ではありとあらゆる資産市場が乱高下を繰り返しているかのよう だ.資産市場が高騰,あるいは暴落した例は数多く知られている.この 20 年ほど を振り返っても,日本が 1980 年代から 90 年代初頭にかけて経験した土地・資産バ ブル,90 年代後半にアジア各国を襲った通貨危機,2000 年前後に世界的な広がり を見せた IT バブル,今回のサブプライムショック以前のアメリカ経済を席巻した “根拠なき熱狂” など,枚挙にいとまがない. もちろん,資産価格の急激な変動そのものが問題かどうかについては慎重な議 論が必要だ.実体経済の動きや需給を反映して,適切に価格調整が行われている のであれば,乱高下はやむを得ないという見方もできる.その一方,一部メディ アや識者が指摘するように,経済活動からかけ離れたあくなきマネーゲームが市 場の調整機能を損なっているとすれば急いで問題解決を図る必要がある.真に問 題視されるべきなのは後者に代表されるバブル,実体 (「ファンダメンタルズ」と 呼ばれる) を反映していない価格の乱高下である. 過去に幾度となく生じたバブルとその崩壊が現実経済に及ばした影響の大きさ を振り返れば明らかなように,現実のどの市場でバブルが発生している (いた) の かどうか,発生している (いた) とすればなぜ発生したのか,バブルを生み出さな いためにどのような政策が有効なのか,といったバブルを巡る分析は,現代経済 の安定性や市場の機能を理解する上で必要不可欠な研究といえるだろう. では,今まで研究はどの程度の成果をあげてきたのだろうか.実は,バブル現 象が古くから知られていたのとは対照的に,バブルに関する経済学的な理解や洞 ∗ 本稿は日本経済新聞 (2009/7/14∼24 付朝刊)「やさしい経済学」に掲載された記事を転載した ものです. † やすだ・ようすけ — 80 年生まれ.東京大経卒,プリンストン大博士.専門はゲーム理論.政 策研究大学院大学助教授. 1
  2. 2. 察は近年までほとんど得られていなかった.この閉塞 (へいそく) 的な状況を打ち 破り,バブル研究に新しい息吹をもたらしたのが,本連載で紹介するゲーム理論 に基づくアプローチである. 第 2 回 — 説明の難しさの原因 バブル問題に限らず,経済学の研究は主に実証研究と理論研究に大きく分かれ る.前者が観測されたデータをもとに仮説の検証や未知の数値の推定,将来の帰 納的な予測等を行う一方,後者はいくつかの仮定に立脚した数理モデルを用いて 演繹 (えんえき) 的に結論を導きだし,現実の説明や望ましい行動規範の解明を試 みる. バブル分析の文脈でいうと,過去の市場データをもとにバブルの有無やその大 きさなどを検証するのが実証研究,なぜバブルが発生するのかを理論的に解明す るのが理論研究となる.前回触れたように,バブルの存在は実証的にも理論的に も明らかにするのが難しい問題であることが知られている.以下ではそれぞれの 研究アプローチで何がバブルの説明を難しくしているのかを簡単に紹介したい. 実証研究における最大の困難は,ファンダメンタルズを直接観測することがで きない,というデータ上の制約である.ある資産価格がバブルであるかどうかは, 市場価格がその資産のファンダメンタルズから乖離 (かいり) しているかどうかで 判定される.しかし,実際に観測できるのは市場価格だけで,ファンダメンタル ズについては推定しなければならない.これは,推定値によってはいかなる水準 の資産価格もバブルでない (である) と結論付けることが可能なことを意味する. 市場価格とファンダメンタルズの乖離を直接調べるのではなく,現実の価格変 動の大きさから間接的にバブルの存在を検証するような研究も行われている.市 場価格のブレが大きすぎる場合には,動きが比較的安定しているファンダメンタ ルズに基づいた価格調整とはいえないため,バブルと判定できるという理屈であ る.しかし,ファンダメンタルズのブレが本当に安定しているかどうかについて も検証が不可能な場合が多い,表面的な問題のやさしさとは異なり,データから バブルの存在を議論するのは極めて難しい. 理論研究も,実証研究と同様にバブルの扱いには手をこまぬいてきた.ファン ダメンタルズは,たとえ転売が出来ずに長期保有したとしても平均的には損得が 生じない価格水準と解釈することができる.もしバブルが発生しているとすると, 市場価格がこの長期的なアンカーから外れて割高になっていることを意味するが, どうしてそうした割高な価格が維持されるのかを説明するのは,簡単そうだが実 は以外に難しい.投資家が合理的であれば,割高な資産を買おうとはしなかいか らだ. 2
  3. 3. 第 3 回 — 説明できない安定性 バブルの存在を理論的に導くには,割高な資産価格が市場でなぜ維持されるの かをきちんと解き明かさなければならない.このためには,投資家が割高な資産 を買おうとする特殊な状況に注目する (合理的バブルの理論),割高かどうかの見 方が投資家の間で異なる (情報の非対称性),そもそも非合理な投資家が多数存在 する (行動経済学) — などのやや込み入った説明が必要となってくる. バブルの理論としても歴史が古い合理的バブル理論は,時間を通じて裁定条件 を満たす (さや取りでもうけることができない) ように資産価格が推移するならば, 必ずしも価格水準がファンダメンタルズに一致するとは限らないことを明らかに した.これは,非合理的な投資家や投資家の持つ情報の違いといった複雑な要素 を取り入れることなく,バブルの存在を議論できる便利な理論である一方,長期 的に維持不可能なバブルがなぜ存在し続けるのかを,きちんと投資家のミクロ的 な視点から説明できていないという致命的な弱点を抱えている.バブル現象をよ り深く理解するには,他の理論による補完的な説明が欠かせない. それでは,心理学や脳科学で得られる知見をいかして,非合理な経済を明示的 に分析する行動経済学のアプローチはどうだろうか.なるほど,与えられた情報 をもとに将来の期待利回りを計算して,最適にポートフォリオを組む合理的な投 資家とは異なり,非合理な投資を仮定すれば,割高な資産を買い続けるバブル現 象をうまく説明できるかもしれない.しかし,この行動経済学のアプローチも次 のような深刻な問題を抱えている. 非合理な投資家が存在する場合に,合理的な投資家は何を考えるだろうか.割 高な資産を買ってくれる非合理な投資家がいるとすれば,彼らに割高な資産を売 ることによって,合理的な投資家はもうけることができる.結果として,価格は ファンダメンタルズに戻るように調整されるだろう.行動経済学のアプローチで は,合理的な投資家によるこうした売買に何らかの制約がない限り,バブルが安 定して存在することを説明できない. 結局,行動経済学を用いて現実的な投資家像を想定しても,合理的な投資家の 行動に対する十分な理解なくしては,バブルをきちんと説明することはできない ことが分かった.次回はこの合理的な投資家の行動を理解する上で重要な役割を 担う,情報の非対称性について詳しく取り上げる. 第 4 回 — 鍵握る情報の非対称性 「情報の非対称性」の考え方は,2001 年にアカロフ,スペンス,スティグリッツ の 3 氏がノーベル経済学賞を受賞したことで一般にも広まったため,ご存知の方 も多いだろう.経済主体の間で情報が偏在している場合には,アドバースセレク ション (逆選択) やモラルハザードなど,伝統的な経済学で扱うことのできなかっ た様々な「市場の失敗」が発生することが知られている.資産市場においても,一 3
  4. 4. 般に投資家の受け取る情報は均一ではないため,情報の非対称性が市場に重大な 影響を及ぼす可能性があるといえる. 一見すると,投資家が異なる情報に基づき売買を行えば,将来に対する予想の 違いから,投機的な投資を生み,それがバブルをもたらすことを簡単に説明でき るように思われる.しかし,以下で述べるように,単に情報の非対称性が存在す るだけでは,バブルはもちろん投機的な投資がなぜ起こるのかでさえ,実は説明 することが難しい. 投機的な投資を拒む第一の要因は,効率市場仮説と呼ばれる市場に対する見方 である.この仮説は,市場は平均的には正しい予想を形成しており,仮にファン ダメンタルズからの乖離 (かいり) を示唆する情報を特定の投資家が得たとしても, 取引を通じてすぐに市場価格に織り込まれてしまうため,投機的な投資が持続す ることはない,と主張する.市場価格がファンダメンタルズから離れるのは一時 的ないしは限定的な状況というわけだ. 効率市場仮説よりもさらに厳密なミクロ的な立場から,合理的な投資家の間で は投機的な取引自体が一切起こり得ないと主張するドラスチックな定理 (不可能性 定理 = No Trade Theorem と呼ばれる) も知られている.この定理は,私的情報 を入手した投資家が売買によって儲 (もう) けようとしても,その行動を通じて情 報が取引相手に間接的に伝わってしまい,結局は儲けの生じない水準にまで価格 が調整されるため取引自体が生じない,と主張する.現実には,文字通り不可能 性定理が当てはまるような状況は限定されているが,“うまい儲け話はない” と投 資家が慎重に構えることにより取引が行われない,といった状況は,この定理の 世界に近いといえるかもしれない. このように,情報の非対称性を導入しただけでは,残念ながら簡単にはバブル を説明することができない.投機の可能性やバブルの存在を導くためには,次回 以降で紹介するさらなる説明が必要となってくるのである. 第 5 回 — 自分の情報を無視 ここまではバブル分析を謳 (うた) いながら,実際はいかにそれが難しいかを解 説するにとどまっていた.後半では前回注目した情報の非対称性を足掛かりに,バ ブル分析のための理論をいよいよ見ていくことにしよう.今回と次回は合理的な投 資家が他人の行動から情報をアップデート (新しいものへ更新) することによって, あたかも非合理に見える群衆行動をもたらしてしまう,合理的群衆行動 (Rational Herding) について取り上げたい.まずは,資産市場のことは少し忘れて以下の簡 単な例を考えてみよう. 今,通りに2軒のレストラン A,B が軒を連ねて並んでいるとする.この通りに 順番に客が訪れ,どちらかを選んで入っていくとしよう.客はそれぞれどちらの店 の方がおいしいかについて独自に情報を得ており,自分の得た情報と他の客の得 4
  5. 5. た情報を総合して店を決定する.具体的には,A の方がおいしいという情報の数 が B の方がおいしいという情報の数を上回っていれば A を,逆であれば B を選び, 同数の場合には自分の得た情報に従うことにする.この時,k 番目に通りへとやっ てきた客 (客 k と呼ぼう) はどのようなレストランを選ぶことになるだろうか. まず,k = 1 の場合は簡単だ.自分が最初の客で,観察できる他人の情報は何も ないため,自分の受け取った情報が A であれば A,B であれば B を選ぶのが最適 となる.つまり,受け取った情報がそのままレストラン選択の行動として表れる のである.それでは k = 2 についてはどうだろう.この場合は,客 1 の得た情報 と自分の情報を合わせて考えなければならないが,先ほどの仮定よりも,もしも 2 人の得た情報が一致していればその店を選び,食い違っている場合には自分の情 報に従うことになる.結果として,客 1 の行動とは関係なく,自分の情報に従う のが客2にとっては最適となることが分かる. さて,次に k = 3 を考えてみよう.もしも客 1 と 2 が異なる店を選んでいたと すると,それは 2 人の得た情報が異なることを意味するため,客 3 は自分の情報 のみに従うのが最適となる.逆に客 1 と 2 が同じ店を選んでいたとすると,2 人の 情報は同じになるため,客 3 は自分の情報が A と B のどちらであっても,前の 2 人の選んだレストランを選ぶ.つまり,自分の情報を無視 (これを情報カスケード, Information Cascade と呼ぶ) して前の客たちの真似 (まね) をするようになる.こ れが k = 4 以降も延々と続く続くことになる. 第 6 回 — 間違い誘う “群集行動” 前回はレストランの例をもとに,合理的群衆行動がいかにして発生するかを見 た.最初の 2 人がたまたま A の方が美味 (おい) しいという情報を得た場合には,3 人目以降は自分の情報を一切参考にせず (= 情報カスケード) A を選ぶのが最適と なる.仮に 10 人の客がいたとして,最初の 2 人を除いて残り 8 人がすべて B の方 が美味しいという情報を得ていたとしても,情報カスケードが起こることにより すべての客が A を選んでしまうのだ.これは一体何を意味するのだろう. 10 人中 8 人が B という情報を得ているのであれば,実際には A ではなく B の店 の方が美味しい可能性が高い.つまり,客の持つすべての情報を総合した,全体 としての最適な予想は B となる.しかし,それにもかかわらず客は B ではなく A を選び続けるという,一見すると “非合理な” 群衆行動が発生してしまうのである. これは,参加者全体の予想と彼らの行動が食い違っていることを意味する.その 結果,美味しくない方のレストランに行列ができてしまうというわけだ. このストーリーを資産市場に当てはめると次のようにいえるだろう.A を “買 い”,B を “売り” と解釈すると,市場全体では売り情報を得ている投資家が多い にもかかわらず,いったん買いの流れが生じると,残りの投資家が買いに殺到す るという群集行動が生じる.この結果,市場価格がファンダメンタルズから離れ 5
  6. 6. てバブルが発生する.個々の投資家は他の投資家がどのような情報を得ているの かを直接観察することができないため,お互いの売買行動や市場価格から間接的 に情報を推測するしかないというのがポイントだ.このように,情報のやりとり に現実的な制約が課された状況では,投資家が合理的であるにもかかわらず,否 個々の投資家が合理的であるからこそ,全体として市場は間違えるのである.こ れは市場が常に正しい予想を形成すると唱える,効率市場仮説とは極めて対象的 である. 以上,合理的群集行動の理論を用いて,いかにして市場が投資家の持つ情報を 織り込むことに失敗し,バブルが発生するのかを説明してきた.群集行動を個々 の合理的な投資家の学習行動からミクロ的に説明するこのアプローチは,バブル の理論分析を代表する新しい研究の一つであり,バブル現象の重要な側面をとら える成果をあげた.次回は合理的な投資家と非合理的な投資家が混在する状況を 扱った,最新の研究について見ていきたい. 第 7 回 — バブルに乗る投資家 合理的群衆行動の理論では,投資収益の最大化を行わない非合理な投資家が一 切存在しないにもかかわらず,個々の投資家の持つ情報が市場に織り込まれずに バブルが発生する様子をうまく描写することができた.しかし,その一方で,こ の理論の下ではどの投資家もバブルの存在に気が付くことがないため,現実のバ ブルで観察される,投資家に関するいくつかの重要な行動を説明できないといっ た問題も抱えている.その一つが,いわゆる「バブルに乗る」(Riding Bubble) と 呼ばれる投資行動である. 合理的な投資家が,バブルの発生を知りながらも高値で売り抜けようとして買 いポジションを張り続けるバブルに乗る投資行動は,古今東西のバブルに共通する 現象だ.古くは 18 世紀に英国で起きた南海バブルにおいて,かの科学者,ニュー トンもバブルに乗ったことから大きな打撃を受け,「天体の動きなら計算できるが, 人々の狂気までは計算できなかった」と述懐している.米国における IT バブル崩 壊の際にも,最も合理的な投資家と考えられるヘッジファンドの多くが被害を受け ており,ある経営者は売り抜けに失敗した理由を尋ねられた際に (野球に例えて) 「我々はまだ 8 回かと思っていたが,すでに 9 回だった」と返答している. このようなバブルに乗る行動を説明する上で鍵を握るのが,非合理な投資家の 存在である.合理的な投資家はバブルの発生に気が付いた際に,非合理な投資家 へ資産を売ることにより収益を上げることができる.しかし,もしも自分が資産 を売った後に,バブルが弾けずにさらに膨らみ続けた場合には,追加的な収益を 上げる機会を失ってしまうことになる.先ほどの経営者がいい残しているように, ゲーム終了ギリギリの 9 回まで粘って売り抜けるのが一番儲 (もう) かるのだ. 近年になって,このバブルに乗る行動がもたらす,バブルが弾 (はじ) けなかっ 6
  7. 7. た場合のリターンの上昇と弾けるリスクの上昇のトレードオフをうまく表現する 理論研究がいくつか登場している. 合理的な投資家がバブルの存在について独立に情報を受け取るため,売買行動 を同調させてうまくバブルの火消しを行うことができない,という投資家のシン クロナイゼーションリスクに注目した研究や,非合理な投資家が少数いる時に,合 理的な投資家が非合理な投資家のフリをしてバブルに乗ろうとすることを示した 研究などが知られている. 第 8 回 — 自信過剰が原因に 最終回は,収益最大化を目指すという意味では合理的である一方,心理的なバ イアスに染まっているという点では非合理な投資家に焦点を当てた最新の研究を 紹介したい.投資家の心理的なバイアスに関しては様々な仮説が考えられるが,こ こでは「自信過剰(overconfidence)」を取り上げる.具体的には,各投資家はそ れぞれ独立にファンダメンタルズに関する情報を受け取るが,常に自分の情報の 方が他人の情報よりも精度が高いと一貫して勘違いすると仮定しよう. このような心理的なバイアスが存在する状況では,ファンダメンタルズに関す る情報が投資家の間ですべて共有されたとしても,依然として将来に対する予想 が食い違うことがあるため,投機的な取引が発生する.第 4 回で触れた不可能性 定理(No Trade Theorem)が成り立たないのである.もちろん投機的な売買が行 われたからといって,直ちにバブルが発生するとは限らない.楽観的な投資家と 悲観的な投資家が同じだけ市場に存在すれば,自信過剰によって生じたお互いの ズレが消しあってバブルは発生しないからだ. それでは,自信過剰はバブルを生み出すことはないのであろうか.ここで鍵を 握るのが,現実の多くの市場で観察される売りと買いの非対称性である.例えば, 先物市場が存在しない,空売りが禁止または制限されているような場合には,売 りは資産の所有者しか行うことができない一方で,買いはどの参加者にも許され ている.このような状況では,将来の値上がりを期待する楽観的な買いが値下が りを期待する売りによって適切にバランスされないため,価格が上ブレしてバブ ルが発生する.自信過剰な投資家と売買に関する非対称性を組み合わせることに よって,初めてバブルを説明することができるのである. 以上,経済におけるバブル分析の動向を追ってきた.バブル現象の解明は,ゲー ム理論アプローチの進展によってこの 10∼20 年で急速に進んでいる.そこでは, 投資家の学習行動や心理的なバイアス,売りと買いの非対称性といった現実的な 要因を,いかに理論とうまく融合させるかが重要であった.今後の研究としては, これらの要素の中でも特に今回紹介した投資家心理に注目する研究が増えていく ことが予想される.バブル分析のさらなる発展に期待したい. 7

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