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LRGライブラリー・リソース・ガイド 第7号/2014年 春号
発行/アカデミック・リソース・ガイド株式会社
Library Resource Guide
ISSN 2187-4115
特別座談会 内沼晋太郎 × 河村奨 × 高橋征義 × 吉本龍司
未来の図書館をつくる
特集 猪谷千香
コモンズとしての図書館
司書名鑑 No.3 谷一文子(海老名市立中央図書館・株式会社図書館流通センター)
LRG Library Resource Guide
ライブラリー・リソース・ガイド 
第7号/2014年 春号
発行/アカデミック・リソース・ガイド株式会社
特別座談会
内沼晋太郎×河村奨×高橋征義×吉本龍司
未来の図書館をつくる
特集 猪谷千香
コモンズとしての図書館
司書名鑑 No.3 谷一文子
(海老名市立中央図書館・株式会社図書館流通センター)
2 巻頭言  ライブラリー・リソー ス ・ ガ イ ド 2 0 1 4 年 春 号
『ライブラリー・リソース・ガイド』第 7 号を発刊することができました。本誌
をお読みいただいているみなさまに、改ためて感謝申し上げます。
創刊から 2 年目も半ばとなった今号から大きな変化があります。それは今回か
ら書き手に猪谷千香さんを迎えたことです。猪谷さんのお名前は弊誌をお読みに
なる方々であれば、よくご存知のことでしょう。本年初頭に刊行した『つながる
図書館』(ちくま新書)は図書館の枠を超えて読まれるベストセラーとなってい
ます。猪谷さんとは震災関係の取材で初めてお目にかかり、それ以降、様々な機
会でご一緒してきましたが、今回この『ライブラリー・リソース・ガイド』を生
み出すプロセスにご参画いただけることになりました。申し出を快く受けてくだ
さった猪谷さんにも御礼申し上げます。
さて、今回は、
●特別座談会
 「未来の図書館をつくる座談会」 内沼晋太郎×河村奨×高橋征義×吉本龍司
●特集
 「コモンズとしての図書館」 猪谷千香
●司書名鑑No.3
 谷一文子(海老名市立中央図書館・株式会社図書館流通センター)
●羊の図書館めぐり
 第1回  大阪府立中之島図書館
という構成です。
巻頭言
図書館の新しいあり方へ
3巻 頭 言     ラ イ ブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春 号
「未来の図書館をつくる」座談会は、内沼晋太郎さん(B&B)、高橋征義さん(達
人出版会)、河村奨さん(リブライズ)、吉本龍司さん(カーリル)という豪華な顔
ぶれによる座談会を再録したものです。この座談会はウェブサイト「マガジン航」
< http://www.dotbook.jp/magazine-k/ > が行ったもので、同サイトに 3 回に渡っ
て連載されたものです。ただし、本誌に再録したものはさらに編集を加え、読み
やすさが増しているのではないかと思います。ぜひ、ウェブ版との違いも含めて
お読みください。
特集「コモンズとしての図書館」は、猪谷千香さんの幅広い取材の成果です。場
としての図書館を巡る議論が盛んですが、「場」を一歩進めて、「コモンズ」として
の図書館のあり方に注目した力作ではないでしょうか。
3 回目の掲載となる司書名鑑では、図書館業界のリーディングカンパニーであ
る図書館流通センター(TRC)を率い、また CCC との協業で注目を集める海老名
市立中央図書館の館長も務める谷一文子さんにご登場いただきました。谷一さん
の語る言葉にこれからの図書館を考えるヒントがあるのではないでしょうか。
 
最後に、恒例のお願いとなりますが、本誌を取り巻く経済環境は決して明るい
ものではありません。本誌を刊行するアカデミック・リソース・ガイド株式会社
としては、本誌で大きな利益を出すことは考えていませんが、適度なバランスは
維持しなくてはなりません。ぜひ、本誌の定期購読や最寄りの図書館への購入リ
クエスト、知人友人への推薦を引き続きお願いします。
※なお、本号より、利益の一部を公益財団法人シャンティ国際ボランティア会に
 寄付することといたしました。
編集兼発行人:岡本真
巻 頭 言 図書館の新しいあり方へ[岡本真] ………………………………………………… 2
特別座談会 未来の図書館をつくる[内沼晋太郎×河村奨×高橋征義×吉本龍司] ………… 5
特   集 コモンズとしての図書館[猪谷千香] ………………………………………………… 65
LRG CONTENTS
Library Resource Guide
ライブラリー・リソース・ガイド 第7号/2014年 春号
学び、集い、生み出す──これからの図書館へ
同志社大学ラーニング・コモンズ
奈良県立図書情報館
江戸川区立篠崎子ども図書館
船橋まるごと図書館プロジェクト
不忍ブックストリートの「一箱古本市」
武蔵野プレイス
紫波町図書館
オープンソースカフェ
ゲンロンカフェ
さくらWORKS<関内>
BBC長湯と「林の中の小さな図書館」
司書名鑑 No.3 谷一文子(海老名市立中央図書館・株式会社図書館流通センター)
羊の図書館めぐり 第1回 大阪府立中之島図書館
アカデミック・リソース・ガイド株式会社 業務実績 定期報告
定期購読・バックナンバーのご案内
次号予告
…………… 138
……………………………………………… 146
…………………………………… 148
………………………………………………………………… 152
……………………………………………………………………………………………… 155
………………………………………… 66
………………………………………………………… 68
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………………………………………………………… 102
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…………………………………………………………………… 128
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………………………………………………………………… 132
………………………………………………… 134
特別座談会
内沼晋太郎×河村奨×高橋征義×吉本龍司
未来の図書館をつくる
6 特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号
前・国立国会図書館長の長尾真さんの論考「未来の図書館を作るとは」が、「LRG」
創刊号(2012 年秋号)で掲載されてから約1年。館長在任中に、大胆かつ画期的
な「未来の図書館」像を提案した「長尾ビジョン」を引き継ぐ本テキストは、どの
ように読まれたのだろうか。
2013 年秋、「図書館」や「本」のあり方を革新する、思考の実践者 4 名が集まり、
長尾さんの論考を手がかりに、さまざまな角度から「未来の本と図書館」につい
て語り合った。
左から内沼晋太郎さん、高橋征義さん、河村奨さん、吉本龍司さん。下北沢オープンソースカフェにて。 撮影=二ッ屋絢子
内沼晋太郎×河村奨×高橋征義×吉本龍司 李明喜(司会)
未来の図書館をつくる
*本座談会は、ウェブマガジン「マガジン航」が、2013 年 6月に「達人出版会」から「未来の図書館を作る
とは」が電子書籍(無償)として刊行されたのを機に行い、「未来の図書館をつくる座談会 Part 1 ∼ 3」
〈http://www.dotbook.jp/magazine-k/future_library_talk_01/〉として、同ウェブマガジンで発表され
たものです。
*本稿は、「マガジン航」編集人・仲俣暁生さんから許諾をうけ、本誌用に編集を加えて、転載したものです。
7特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号
内沼晋太郎(うちぬま・しんたろう) 
1980 年生まれ。numabooks 代表。ブック・コーディネーターとして、異業
種の書籍売り場やライブラリーのプロデュース、書店・取次・出版社のコ
ンサルティング、電子書籍関連のプロデュースをはじめ、本にまつわるプ
ロジェクトの企画やディレクションを行う。2012 年、下北沢に「これから
の街の本屋」をコンセプトにした「B&B」を博報堂ケトルと恊業で開業。近
著に『本の逆襲』(朝日新聞出版、2013)。
「B&B」ホームページ http://bookandbeer.com/
河村奨(かわむら・つとむ)
千葉大学在学中にソフトウェア開発とデザインを専門として起業。オープ
ンソース活動に関わる中で、コワーキングとの親和性に気づき「下北沢オー
プンソースカフェ」を 2011 年オープン。2012 年、カフェやコワーキングス
ペースなど、街なかにある本棚をウェブで管理し、本を貸し借りできるよ
うにするサービス「リブライズ」を発表。
「リブライズ」ホームページ http://librize.com/ja/
吉本龍司(よしもと・りゅうじ)
1982 年生まれ。小学生の頃からプログラミングを始め、高校時代に有限会
社アール・ワイ・システムを設立。2012 年、全国 6000 以上の図書館から書
籍とその貸し出し状況を簡単に横断検索できるサービス「カーリル」を発表
し、株式会社カーリルの代表取締役に就任。
「カーリル」ホームページ http://calil.jp/
高橋征義(たかはし・まさよし) 
1972 年生まれ。勤務していた会社を辞め、2010 年、IT 系技術書の電子書籍
の制作・販売を行う電子書籍専門の出版社「達人出版会」を一人で設立。ソ
フトウェア技術者でもあり、特に国産のスクリプト言語として名高い Ruby
について精力的に活動を展開している。2004 年 8 月に「日本 Ruby の会」を
設立、会長を務める。
「達人出版会」ホームページ http://tatsu-zine.com/
司会:李明喜(り・みょんひ) 
1966 年生まれ。デザインチーム・マット代表/デザインディレクター/空間デザイナー。カフェや銀行など、
様々な形の本のある空間をデザイン。環境としての図書館のデザインに取り組む。
8 特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号
どのように本と関わってきたか
――司会・李明喜:前・国立国会図書館長の長尾真さんが2012年にお書きになっ
た「未来の図書館を作るとは」というテキストがあります。これは本誌「LRG(ラ
イブラリー・リソース・ガイド)」の創刊号(2012年秋号)に掲載されたのですが、
このテキストに「LRG」編集発行人の岡本真さんと長尾さんの対談を付録として
加えたものを、2014 年 6 月に「達人出版会」から電子書籍として出版されること
になっています(座談会当時。2014 年 6 月に出版)。今回の座談会はその刊行にあ
わせて、本や図書館に関わるユニークな活動をしている人たちの活動や考えをま
とめたら面白いのではないか、というところで生まれた企画です。
最初に、みなさんの活動と図書館とのつながりを、自己紹介をかねて伺います。
まずは図書館の世界にいちばん近いと思われる「カーリル」の吉本さんからお願
いできますか。
吉本龍司:「カーリル」というサービスを、4 年近く運営しています。「カーリル」
を始めるまでは図書館業界にいたわけではなく、始めてから図書館のことを知る
につれて、その奥深さを知りました(笑)。ただ、自分自身が図書館のユーザーか
といわれると、公共図書館のサービス自体に、現時点では魅力を感じないという
のが正直なところです。逆に現時点で満足していたら、「カーリル」のサービスは
やめてもいい。「カーリル」が勝手にクラウドで動いて、維持管理の他は何もしな
くてもいいのなら、僕じゃなくてもできる。そういうことも考えると、満足して
ないからこそ続けられているように思います。
「カーリル」を始めて数ケ月目にできたコンセプトは、「ウェブから図書館へ」
でも「図書館からウェブへ」でもいいから、「図書館という場所とウェブをつない
でいきたい」ということでした。 実際のサービスとしては、自宅の他、社会人な
ら会社、学生なら大学といった生活圏にある複数の図書館の蔵書をまとめて検索
できる便利なもので、まずは使ってもらうことが重要です。
「カーリル」のサービスを続けることの先に僕がやっていきたいのは、情報社会
における図書館運営の大きな変化の中で、公共図書館と一緒にウェブサービスを
やっていくことで、「図書館の人たちは次にどうするのか?」というところにいち
ばん興味があります。
はじめに
9特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号
――次は「リブライズ」の河村さん、お願いします。
河村奨:私は「リブライズ」というサービスを運営しています。僕たちは全ての本
棚が「図書館」だと思っているんです。ふつう図書館といったとき、公共図書館と
か学校の図書館を思い浮かべると思うのですが、僕らはそれこそ 10 冊でもいい
から本の入った棚があれば、そこは「図書館」だと言っています。英語で「Library」
という場合、図書室でもいいし、もっと小さなスペースでもライブラリーなわけ
です。
「リブライズ」でやっているのは、その「本棚」に入っている本を目録としてウェ
ブに上げて、どんな本が置いてあるのかが、その場に行かなくてもすぐ分かるよ
うにすることです。今、私たちがいる「下北沢オープンソースカフェ」(P126 参
照)は 2 つのスペースがあって、隣の部屋の本棚に、オープンソース関連を中心に、
デザインや図書館関係の本が 700 冊ほど置いてあります。その目録をウェブで知
り、気になって借りに来てくれる人がいたりします。
「リブライズ」のミッションは「すべての本棚を図書館に」ですが、自分たちの
活動を「図書館」と名乗りたいわけじゃなくて、他にいい言葉がないという部分
もあります。本を読みたいユーザーの側からすると、本は買ってもいいし、借り
てもいいし、その場に行って読むのでもいい。その違いは、あまり気にしていな
いように思います。でも、それらの行為をする場をまとめるような言葉がないん
です。 サービスの利用者の方向けには「ブックスポット」という言い方をしてい
ますが、一般の方向けには分かりやすく「図書館」という言葉を使っていて、そう
した場所が全国 300 ケ所くらいに増えてきています。
「本棚がある場所」というだけなら、国内でも何十万という単位で存在するはず
なので、最終的にはそこまで、あるいは世界中にもひろげられるなら、いたると
ころを「図書館」にしたいということで活動しています。いちおう合同会社です
けど、実体は「秘密結社」みたいな感じです(笑)。
―― 続きまして「達人出版会」の高橋さん、お願いします。
高橋征義:「達人出版会」代表取締役の高橋と申します。この中で図書館といちば
ん関係がなさそうな感じですが(笑)。もともとプログラマーをやっていたのです
10 特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号
が、思い立って電子書籍の出版社を立ち上げました。基本的には IT エンジニア向
けの電子書籍を取り扱っているので技術書がほとんどですが、多少は読み物もあ
ります。自分のところで本をつくって販売しています。紙の書籍でいうところの
「出版社」と「書店」を兼ねるというスタイルですね。
図書館との関わりでいうと、うちでつくっている本は図書館には置いてないん
です。「リブライズ」のように「図書館」的なものをつくりたいと思っても、うち
は EPUB と PDF がベースで、しかも DRM(デジタル著作権管理 、Digital Rights
Management のこと)もかけない方針でやっているので、基本的にいくらでも
コピーができてしまうんです。「コピーも印刷も全て好きにしてください。ただ
し、個人利用を徹底してください」としているので、仕組み的に図書館にならない。
むしろ「自分で買ったものだから、この電子書籍を図書館にしたいです」とか、「こ
れで図書館を始めました」とか言われると、すごく困るんです(笑)。
そもそも電子書籍に携わる者としては、「電子書籍の図書館 」に関してあまり
ピンとこないというか、理想的な未来が全く見えてこないのが正直なところです。
――このあとの議論の中で、そのヒントが得られたらいいですね。では最後に内
沼さん。内沼さんは「B&B」という本屋を経営しておられますが、その他にもいろ
いろな活動をされているので、それも含めてお話ください。
内沼晋太郎:僕は numabooks という屋号で、ずっとフリーランスで本に関わる
仕事をしています。最初に主な仕事として始めたのは、洋服屋さんとか飲食店と
いった異業種における本の売り場をプロデュースすることや、企業の受付とか病
院の待合室、集合住宅の共有部分といったところに、本を閲覧できる場所をつく
ることでした。そういう場所が「ライブラリー」と呼ばれるときもあって、それは
「図書館」でもあるのかもしれませんね。その過程で派生した仕事として、出版社
や書店のコンサルティング、電子書籍のプラットフォームのプロモーションやプ
ロデュースなど、幅広く本に関わる仕事をしてきました。
2012 年 7 月に、「博報堂ケトル」の代表・嶋浩一郎さんと、下北沢で「B&B」と
いう書店を共同で始めました。「B&B」は基本的に新刊書店ですが、大きく特徴が
3 つあります。まず、有料のトークイベントを毎晩やること。基本的に著者や編集
11特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号
者の方をお呼びしています。
2 つ目に、ビールを中心としたドリンクの販売です。「B&B」という店名は「ブッ
ク&ビア」の略です。昼間から店内でビールを飲みながら本を選べる新刊書店な
んです。3 つ目は、家具の販売です。本棚、平台に使っているテーブル、お客さん
が座る椅子や照明といった店内の什器は、目黒区にある KONTRAST(コントラス
ト)というヴィンテージの北欧家具屋さんと提携して販売しています。
「B&B」のコンセプトは「これからの街の本屋」なんですが、なぜこういうこと
をやっているかというと、書店経営と相乗効果のある ビジネスをすることで、健
全な経営の状態をつくっているわけです。新刊書店は今や成り立ちにくいビジネ
スなんですね。新規参入も僕たちが数年ぶりといわれるくらいですから、ほとん
ど終わったビジネスだといっていいんです。
新刊書店は他の小売と違って、簡単にいうと経営努力がしにくい。飲食店であ
れば、安い食材を使って価格を下げるとか、逆に クオリティを上げて価格を上げ
るとか、近隣にない業態に転換するとか、経営努力のしようがたくさんある。と
ころが新刊書店は本の価格も均一だし、商品も同じです。
「良い棚をつくれば、お客さんが来る」というのは理想ですが、2 倍の時間をか
けて棚づくりをしたら 2 倍売れるかというと、現実はそういかない。人件費を
カットして、むしろ棚をつくることから遠ざかる方向にいってしまう。ニワトリ
と卵の関係みたいな話なんですけど、「棚をつくる」ことに力をいれるには売上が
必要で、それはすごく長期的な話で基本的には難しい。
でも僕は、きちんとセレクトされた本屋さんが街にあるべきだと思うし、「街
の本屋」が大好きなので、それが成り立つ方法を現場で実践しているわけです
(「LRG」5 号/ 2013 年秋号 特別寄稿所収「本をめぐる冒険」参照)。
「未来の図書館を作るとは」を読んで
――ひととおり話を伺っただけでも、みなさんのスタンスが違っていて面白いと
思います。では、長尾真さんの「未来の図書館を作るとは」を読んだ感想を伺えま
すか。
吉本:図書館の世界から見たときのことを、すごく網羅的にまとめられているな、
というのが率直な感想です。長尾さんは当時、国立国会図書館長でしたから、も
12 特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号
のすごく突飛な話でもないし、極論でもない。ただ、もともと僕自身がプログラ
マーという立場で図書館に出会ってきたので、「図書館」というよりも、どちらか
というと「情報」という背景をもっている。だから長尾さんがここで仰られてい
る「分類」の難しさという話などは、実は最初、あまりしっくりこなかったんです。
なぜ図書館がこういうところにこだわるのかと。読み込んでいくと、分かるとこ
ろもあるのですが。
河村:私も網羅的な印象を受けました 。図書館の「中の人」としてはありえない
ぐらい、広く見ている人だなと。全般としては、すごくバランスを感じるのです
が、ところどころ「そうだね」と思うところと、どうしてもあまり肯定的になれな
い部分とがありました。
実は、あまり肯定的になれない部分というのが、どちらかというと情報工学の
部分なんです。ご自身の専門分野であるところが、20 年前の幻想を引きずってい
るような気配をちょっと感じてしまって。例えば「分類」の部分などは、長尾さん
自身、すでに機能しないことを認めつつも、その方法論の中で次の回答を探して
いる感じが気になるんです。
その他の部分だと、「図書館」という言葉を長尾さん自身、あまり固定的に使っ
ていない。出てくる文脈ごとに、全然意味が違うんですよ。でもそれはすごく面
白くて。「図書館」と「書店」もあまり区別をしていないし、後半の方で、例えば「書
店はもっとカフェのようになるべきだ」とか、まさに「B&B」がされているような
話が出てくる(笑)。
私も、ここ「下北沢オープンソースカフェ」というコワーキングスペースを運
営しているのですが、これも長尾さんの文脈に何度も出てくることを、「公共図書
館ではない場所」でやっている事例かもしれない。彼が「公共図書館でやるべき
だ」と言ったり、「街の書店でやるべきだ」と言っていることを、期せずしてここ
でやっているっていう。
今、コワーキングスペースは民間の公民館みたいな機能をもちつつある。長尾
さんのいう intellectual commons(「LRG」創刊号/ 2012 年秋号「未来の図書館を
作るとは」P27 参照)が、たぶん街の中のコワーキングスペースだったり、「B&B」
みたいな本屋さんのかたちで生まれてきているんですね。そういった機能が公共
図書館の中に生まれるべきなのかどうかは、まだよく分からないんですが、社会
13特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号
の要請として、いま、そういう場所がどんどん生まれている気がして、そこの文
脈はすごくしっくりきます。
――分かりました。では高橋さん、いかがですか。
高橋:言葉をどう選ぼうかと考えていたんですが、どちらかというと不満が残る
というか、もの足りないところがありました。というのも長尾館長といえば、「長
尾ビジョン」じゃないですか。「長尾ビジョン」が出たとき、みんながびっくりし
たわけです。「えっ、図書館の中でも、国立国会図書館がこれをやるの?」と。し
かも古典や著作権の保護期間が切れたものだけじゃなく、あらゆる本のデータを
売ってもいいみたいな感じで。それに比べると、これまでの集大成としてはこう
いうかたちになるのかなと思いつつも、さきほど内沼さんが仰った「これからの
街の本屋」ではないですが、「これからの図書館」という意味では、あまり「これ
から」感がない、というのが正直な感想でした。
――「長尾ビジョン」が出たときにくらべて、網羅的にまとめられている今回の
テキストでは、その勢いがダウンしてしまったという感じですか。
高橋:トーンダウンというよりは、それと同じ話にとどまっていて、「その先」に
あまり行ってない印象ですね。もっと 100 年後とか、1000 年後の未来……そこま
でいかなくてもいいですけど(笑)。とにかく、人間の図書館と「知」は長期的にど
うなるのかといった話を、最後だから少し期待したんですが、あまりそういう感
じではなく、普通にまとまっていたという印象です。
内沼:鵜呑みにするのはよくないですけれど、「これからの図書館」についての一
つの見方を、ひとりの人間が網羅的に考えたことがまとまっているテキストです
よね。現場の図書館員や書店員は、こんなことまで考えが及んでいないと思うの
で、読んでおくとよいものの一つだと思いました。
ただ、いろんなかたちで本の仕事をしてきて、その中で培ってきた僕にとって
の「本」の捉え方と、長尾さんにとっての「本」の捉え方が、そもそもかなり違う
んだろうなと感じた。簡単に言うと、長尾さんにとってはその「中身」、つまりそ
14 特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号
「B&B」 店内奥スペースはレイアウトを変更し、イベント会場にもなる  撮影=岡本真
「B&B」 Tシャツやバックなどオリジナルアイテムも用意している  撮影=岡本真
15特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号
「B&B」 店内のインテリアにはすべてタグがつけられて、商品として販売される  撮影=岡本真
「B&B」 店内ではビールを片手に、本棚の本を手にすることができる  写真提供=B&B
16 特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号
「下北沢オープンソースカフェ」 図書室としても作業ができるスペース      写真提供(見開きとも)=リブライズ
「下北沢オープンソースカフェ」 カフェ機能の他、プレゼンや雑談などを通して、人と交流ができる多目的スペース
17特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号
「リブライズ」は、本棚から始まるコミュニケーションを身軽に実現する
「下北沢オープンソースカフェ」 本棚にはウェブ、IT系の本を中心にした専門書が、小分類されて置かれている
18 特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号
こに「書かれていること」が「本」なんだと思うんです。大前提として「本はこれ
から電子化する、デジタルの方がいいよね」というのがありますよね?
――「デジタルの方がいいよね」とまでは仰っていませんが、電子化が進むとい
うのは、前提としてありますね。
内沼:そうですよね。かなりの「本」が電子になることを前提に書かれています。
しかもそのときの「本」は、「そこに書かれている中身」のことで、だからこそ検索
対象になったり、情報工学的に整理されていたり、図書館だから当たり前ですが、
それらは学問や研究のための資料になる。
でも僕が扱ってきた本は、「中身」であると同時に「物」あるいは「プロダクト」
でもあるんです。多くの人にとって本というのは、「かわいいから欲しい」とか、
「本棚に置きたいから欲しい」とか、そういうものでもあるんですよね。その現場
に僕はずっと立ち会ってきたので、そういう本の捉え方とはだいぶ違う印象です。
研究者だけではなく、一般の人も図書館に行くわけですが、そこでどんな本を、
どのように手に取るかということを考えるにあたって、本の装丁とか、紙の出触
りとか、物としての存在感みたいなものは無視できません。そういうところを含
めて、「本」の捉え方が限定的なテキストだとは感じました。
例えば、このあいだツイッターで、ある図書館員の人が「今日は暑いですね。図
書館は涼しいです。だから図書館に行こう」みたいなことをつぶやいていたんで
す(笑)。「涼しいから図書館に行こう」というのは、長尾さんの仰る図書館とは
けっこう違いますね。
『ブックビジネス 2.0̶̶ウェブ時代の新しい本の生態系』(実業之日本社、
2010 年)でも橋本大也さんが「図書館=教会」論、つまり「図書館は現代の教会だ」
と言っています。街で行く場所がない人とか、時間を持て余している人たちが自
由に時間を過ごせる場所が今は図書館ぐらいしかない、という話だったと思い
ます。この「図書館は教会である」という前提のもとで言うと、「涼しいからおい
で」っていうような図書館のあり方もあるんじゃないか。
そこからしても、長尾さんのテキストはどうしても、本あるいは図書館の特定
のあり方に即して書かれている感じがしてしまうんです。
――司会という立場を離れて、少しだけ言わせてください。僕は長尾さんのテキ
19特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号
ストは、必ずしも網羅的ではないと思っているんです。むしろテーマが限定され
たテキストで、読む方が補完して読む必要があると思いました。つまりこのテキ
ストは、長尾さんの研究者としてのキャリアの中では「総論」ですが、「図書館」や
「本屋」の未来、あるいは「知」の世界の未来についての総論ではなく、読者がその
部分は補完して読むことを期待されたテキストだと思うんです。
例えば「図書館」と「研究」との関係も、固定的なものではないわけです。『知は
いかにして「再発明」されたか――アレキサンドリア図書館からインターネット
まで』(日経 BP 社、2010 年)という、何が「知」の制度として機能してきたかを
人類史の時代ごとに綴った本があります。これによると、古代アレキサンドリア
の図書館から始まって、中世の修道院、大学、「文字の共和国」、専門分野、実験室
……というふうに「知」を支える制度は、時代ごとに変わっていく。ちなみに実験
室が機能していたのは 1970 年くらいまでで、それ以降がこの本では「インター
ネットへ」とされている。
この「研究室からインターネットへ」へのシフトは、これまでとはスケールが
桁違いだと僕は思うんです。「知識」を扱う情報と、知識とは関係のない大衆レベ
ルでの情報は、インターネット以前はあきらかに別のものとされていた。でもイ
ンターネット以降、「知識」と「情報」のあいだに差をつけることに意味がなくなっ
てきている。もちろん厳密にいえば「知識」というものは体系化されていなけれ
ばならないわけですが、長尾さんが研究をなさってきた時期が、まさにその「過
渡期」の時代であることに考慮して読む必要があるのではないかと思いました。
本とは「生むときに苦しんだもの」のこと
――ところで、みなさんは「本」というものを、ご自身の活動の中でどのようにと
らえていますか? 「電子書籍」も含めてけっこうですが。
河村:「一定量の知識が集まっているもの」でしょうか。文脈によって自分自身
でも使い分けているから、あまり明確な定義はないですね。モノとしての実体が
なくてはいけないということもないし、ホームページを「これは本なんだ」と言
本の定義を考える
20 特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号
いたい人がいたら、それにも納得感があるし。さすがにツイッターの 140 文字を、
「これは本です」と言われたら、「んん∼」っていう感覚はありますが(笑)。でも、
そこにある程度の蘊蓄などが詰まっていたら、「本」だと言われてもしょうがない
かなと。
「リブライズ」はリアルな本を対象にしているけれど、私自身は電子書籍を発行
するウェブサービスも別にやっているので、そのあたりは両方にこだわりがある
ような、両方ともこだわりがないような(笑)。
吉本:「カーリル」の中では、本をどう扱っているかははっきりしています。まず、
「図書館がそれを本として扱っている」という条件がある。例えば図書館の分類か
らいえば、「雑誌」と「本」は違うわけです。個人的には正直、そこのあたりはあま
り理解していないんですが。自分自身としては、図書館でいう「本」よりは、たぶ
んもうちょっと広いところでとらえてはいるのですが、「カーリル」というサービ
スは、どうしてもそこにひきずられてしまう。
――「カーリル」を抜きにしていうと?
吉本:「本というのは、生むときに苦しんだもの」のことなんじゃないかと。
一同:おお∼!
吉本:締切とかがあって、書き手が苦しんで生んだものが「本」じゃないかと。ツ
イッターでもブログでも、「本にしよう」と言った瞬間、生みの苦しみが出るんで
すよ(笑)。ちゃんと編集しなきゃいけない、みたいな。だから、たとえブログで
も「どうしよう、毎週出さなきゃ」というストレスを感じながら書いていたら、そ
れは「本」みたいな感じもする。それが僕の個人的な感覚ですね。
河村:私も一つ追加していいですか? 「リブライズ」をやっている中で、だんだ
んはっきりしてきたんですが、「本」だったり「本棚」が、誰かの知識の座標になっ
ていることが多いんですよ。それは文学書でも、大衆小説でも、学術書でもそう
ですが、何かの話をするとき本や本棚が、その知識にポイントをおけるアンカー
21特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号
(錨)になっているケースが多いんです。たぶん、生みの苦しみを経たものは、そ
うなる確率が高いと思うんですね。例えば長尾さんのこの文章も、私は PDF で読
みましたが、これはアンカーだと思うんですよ。
高橋:本にも一般の書店で売っている本と、同人誌みたいなものがあるでしょ
う。自分の中では、両者はだいぶ違うものだという区別があって、同人誌はあま
り「本」とは言わないんです。でも、電子になるとあまりその区別がなくなるんで
すよ(笑)。
――なるほど。それはなぜですか?
高橋:なぜなんですかね。その違いがどこからくるのか、自分でもあまり分かっ
てないのですが。結果論として、たまたまできているものが違うだけかもしれま
せんが……。
――「達人出版会」は、電子書籍専門ですよね。今の話からすると、紙だとそうい
う差が出てしまうけれど、電子では出ないというあたりを意識したりしません
か?
高橋:ええ、だからうちで出しているものが「同人誌」なのか「同人誌じゃない書
籍」なのか、あまりよく分からない(笑)。それはどこかで区切れるものではなくて、
「同人誌っぽいもの」と「同人誌っぽくないもの」が、「本」の中でなめらかに混ざっ
ているみたいな感じがします。
内沼:「社会を変えたい」とか「誰かに強い影響を与えたい」という使命感で書か
れたものが、例えば「同人誌じゃないもの」で、そんなに生みの苦しみを経てな
い、自分が書きたいものを書いたものが「同人誌」というニュアンスなのですか
ね。ひょっとしたら「苦しんでない」感じが「同人誌っぽさ」なのかもしれませんね。
もちろん「苦しんでいる同人誌」もあると思いますが(笑)。
吉本:生みの苦しみの原点が何かというと、「固定化」みたいなところにあるので
しょうか。ようするに、あとで直せるというのは、苦しみに対するかなりの緩和
22 特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号
剤になっているのかもしれない。印刷するとなると、うっかり間違ったことを書
いたら直せない。そのせいで世の中が変わっちゃうって(笑)。もうちょっとライ
トに考えても、ここで間違えると、直すためにはさらにお金が飛んでいく、とい
うプレッシャーもあります。そこが生みの苦しみのもとですよね。
―― 電子だと「生みの苦しみ」はないですか?
高橋:紙に比べると、ほとんどないですね。紙の本は、書き手としてしか関わっ
たことがありませんが、書く方のプレッシャーは紙の方がぜんぜん大変です(笑)。
吉本:紙の新聞とウェブニュースの関係に近いのかもしれない……。
内沼:「本」をどう定義するかというのは、今はかなり個人の考え方によって違っ
てきていると思うんです。その中でも「本」とは「生みの苦しみである」という定
義は、個人的にはかなりいい線をいってる。今まで聞いた中でも、相当しっくり
きたんですよ。
吉本:ほんとですか?(笑)。
内沼:ただ、それさえも 100%の定義かというと、きっとそうではない。例えば、
誰かが居酒屋で、何も苦しむことなく適当にしゃべったことを文字に起こして出
版されたような本が、世の中には存在するでしょう? これは「本じゃない」の
かというと、違うという人もいるかもしれないけど、全員が「本じゃない」とはい
わないと思うんですよね。生むときに全く苦しんでないものも、それが印刷され
て紙に綴じられて 、本屋さんが売ったり、図書館が所蔵したりするという側面で
は「本」なんだと思う。
今ちょうど、『本の逆襲』(座談会当時。2013 年 12 月に刊行)というタイトルの
本を書いているんです。たぶん僕も、何かを「網羅しよう」と思って書いているん
ですね。「本」というものがいま、どういう状況にあって、これから本の仕事をす
る人たちは、どういう仕事をすることになるのかということを書いている。この
本の中でも、やっぱり本の定義について話をするんですよ。でも最後は自分の中
23特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号
でも、定義ができないんですね。
ツイッターの 140 文字を「本」だと言う人がいてもいいし、今こうやって喋っ
ている時点で、もうこれが「本」なんだよね、みたいなことを言うのもありだと思
うんです。リアルタイムで取られている音声データが .mp3 の音声形式になって、
その音声を誰かが書き起こして .txt のファイルになったり、それをレイアウトし
た .pdf のファイルになった瞬間に、「これは本だ」って言う人がかなりいるわけ
でしょう? でも、その中身が「本」ならば、同じようなファイルとして並ぶわけ
だから、.mp3 の時点で「本」だということにしてもいいじゃないか、というよう
なことをその本で書いているんです。
「本の定義」はわりとどうでもよくて、それぞれ本に関わる人が自分なりに
「本ってこういうものだよね」と思って行動すればいいと思っています。「カーリ
ル」「リブライズ」「達人出版会」、それぞれにとっての「本」があるように、長尾さ
んにとっても「本」はこういうものだ、という話の流れでここまで来たのかなと
いう気がしています。
河村:今の話をふまえて、もういちど長尾さんのテキストを読み直してみると、
長尾さんは、「映画は本だ」と思っているんですよ。全ての情報体は本だと思って
いるわけですから、彼の中では「本」の概念が「情報」と、ほぼ一致しているんじゃ
ないのかと思います。
――そうですね。だから定義づけというよりは、どちらの側から考えるか、とい
う問題なんだと思います。長尾さんは、「知識」とか「情報」から本を考えている。
それらのアウトプットとして「本」というかたちがあるわけです。でも本を書く
人たちからすると、「生みの苦しみ」の方が先なわけです(笑)。
内沼:そうだと思いますね。「生みの苦しみ」という定義がかなりいいなと思った
のは、ふわっとした定義ではあるけれど、一本の数直線上に「苦しい」と「苦しく
ない」があって、「この線より苦しんだものが本」だと、それぞれが決められると
ころがいいと思うんです。例えばウィキペディアで「本とは何か」を調べると、す
でに「冊子」という形態の話をしているんですよね。でもそうすると、企業広告の
パンフレットみたいなのも「本」だということになるし、実際そう思う人もいる
わけです。だけどそこで切っちゃうと、0 か1か、これは本だけどこれは本じゃな
24 特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号
い、みたいな話になる。それが「苦しい」「苦しくない」という線だと、どこでどう
切るかは個人のさじ加減になる。だからいいなあって(笑)。
あと『WIRED』の創刊編集長のケヴィン・ケリーが、「『本』は物体のことではない。
それは持続して展開される論点やナラティヴだ」と言っていますが、これも悪く
ない定義だと思います。
――ケヴィン・ケリーの著作選集が、「達人出版会」からフリーで出ています。こ
の本は技術書ではなくて、一種のマニフェストですよね。長尾さんのテキストは、
「工学者が書いたマニフェスト」だと思うので、同じように「達人出版会」から出
ることが感慨深いです。
デジタルならではの「生みの苦しみ」
内沼:さきほどのケヴィン・ケリーの「本とは持続して展開される論点やナラティ
ヴである」という定義は、ウィキペディアの「本とは冊子である」という定義とは
別の話で、「本とは生みの苦しみである」という定義に似ている気がします。そも
そも生むのが苦しくなかったら、論点とかナラティヴが持続しないと思うんです
よ。
――ただケヴィン・ケリーの言葉だと、紙の本かどうかという話は抜きになるん
ですよね。紙だからこそ「生みの苦しみ」があるとしたら……ああ、こっちも紙か
電子かは関係ないのか(笑)。
吉本:紙の方が「生みの苦しみ」がより強制的に……。
内沼:そう。比較的に起こりやすい、というだけの話で(笑)。
河村:それに、紙の方が手触りやレイアウトによって、行間に込められた「苦しみ」
が分かりやすいんですよ。デジタルの場合は全てがバイトの情報になってしまう
から、コンテンツの中身ぐらいでしか勝負ができない。でも、それだと素人目に
は、どう苦しんでいるのかが分からないんです。
高橋:紙の本という「モノ」をつくること自体、けっこう大変ですよね。物質を組
25特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号
み上げる作業は、電子の場合のように自動化してパーッとつくるかたちには絶対
ならない。だからこそ、誰かの意思やコストがそこにかかってくるわけです。
内沼:吉本さんが仰る「紙の方が、苦しみが強制的」という話は、たぶんシンプル
に締切の話ですよね(笑)。つまり、そこでコンテンツが「固定される」か「固定さ
れない」かの違いでしかない。「固定される」というのはやり直しが利かないので、
やり直しが利かないから、本気を出さなきゃいけない。本気を出さなきゃいけな
いから苦しい、という話かなのかと思います。
吉本:そういう意味では、電子書籍はまだいろんな点で統合されていないから、
紙の本を出すのと同じようなことが起きます。
内沼:そう、電子書籍もまあまあ苦しいんです(笑)。ただ、苦しさに違いがある。
――「達人出版会」で電子出版された「未来の図書館を作るとは」の付録に収録さ
れた岡本さんとの対談の中で長尾さんは、紙の本が粛々と電子化されている現在
の電子書籍や電子図書館は「第一ステップ」にすぎないと仰っています。「第二ス
テップ」では、それらがフラットなネットワーク構造になる。「第三ステップ」で
はさらに進んで、ある視点をもって「第二ステップ」でできたネットワークの中
に立ったとき、自分の関心の文脈に特化された部分的なネットワークが浮かび上
がってくる。そこまでをシステム側で実現できないだろうか、と仰っていました
ね。
今はまだ「第一ステップ」なので、電子書籍の「生みの苦しみ」は紙の本に比べ
ると楽ですが、これからはデジタルならではの、新しい「生みの苦しみ」が生まれ
てくるのではないでしょうか。
吉本:新しい「生みの苦しみ」ってなんでしょうね。人は楽な方に行きたいです
から、なくてもいいなら締め切りがない方を選ぶ(笑)。生きている限り、苦しみ
のない方に行くのは否定できないわけです。実はプログラマーが抱えている問題
も、物書きの人と一緒なんですよ。今まで僕が関わってきたファームウェアや製
品のプログラムは、いったん出してしまったら回収できない。するなら全部回収
するしかないわけです。そういう点では本と一緒だったのが、ウェブサービスに
26 特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号
なった瞬間、全く違ってきた。
河村:そういう意味では、僕らはすでに新しい「生みの苦しみ」を味わっている
のかもしれません。誰からも強制されてないのに毎日「リブライズ」を開発して
いて、締切状態がずっと続いている。紙の本だと、締切が終わったときに解放さ
れる爽快感があるんですが、開発にはそれもない(笑)。
吉本:インターネットによる創造行為が、本だけじゃなくてソフトウェアやサー
ビスといった業界において、そのビジネスを変化させましたよね。今までのビジ
ネスは、「箱」をつくってそこに商品を並べて、こういう店舗をつくれば売れる
……という発想でやってきたけれど、それでは済まなくなってきた。
河村:イベントのあり方も、完全に変わってきました。先日、駅前でファッショ
ンショーがあったんです。100 人くらいの女の子が、下北沢の地元のお店の服を
着て歩くんですが、その観客は基本的に、みんなファッションショーに出る女の
子たちの友だちなんです。今までは「イベント」だけのパッケージをつくってい
ましたが、今はもうそこが崩れている。インターネット上だけじゃなく現実のイ
ベントでも、全般的にそういう揺り戻しが来ているのではないでしょうか。
固定化とコストの関係
――イベントの話は、「場所」の話でもありますね。ここまでは紙の本や電子書籍
をめぐる話でしたが、図書館という「場所」の方に広げていきましょうか。河村さ
んと内沼さんは、それぞれ自分たちの場所(お店)を構えていらっしゃいます。
吉本さんと高橋さんは、特に場所を構えておられない。本や電子書籍、電子図書
館がもっている意味は、場所性と何か関係があるのでしょうか。
河村:長尾さんのテキストの最初の方に、「思想の形成」というくだりがあります
よね。そこで「新しい創造のための議論は言葉の世界だけでなく、それを発信す
る人の全人格が相手に伝わることが大切」だと仰られています。それは設定され
「場所」のもつ意味
27特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号
た会議のような場だけでなく、むしろ普通のコミュニケーションにおいて、最も
よく機能する。だからこそ、そうした場所に人が集まるんだと長尾さんは書いて
おられる。ここにはすごく賛成なんです。
僕は日々の仕事の中で、雑談のようなところから生れてくる新しいものが好き
なんです。「下北沢オープンソースカフェ」も、そのためにやっている。会議も新
しい創造がうまれる一つのきっかけにはなりますが、そこで会うだけだと、お互
いの関係がまだキレイすぎる。もっと「普段着の状態」になったところから、面白
いものが出てくるんですよ。
――つまり、ここは「一時的なイベントをするための場所」というより、「持続性
をもった場所」という考えなんですね。
河村:そうです。むしろイベントは副次効果というか、サービスなんです。人が
集まると、なぜかみんなイベントをやりたがる(笑)。だからイベントもやります
が、それが目的ではない。むしろ人が集まる循環をつくり出すためのキーとして、
イベントをやっているんです。
内沼:「B&B」の場合も、かなり似ていますね。毎日しているイベントは「本」の編
集と同じで、誰と誰をどういうふうにしゃべらせたら、面白いコミュニケーショ
ンや新しい「知」が生まれるのか、それをつねに考えています。僕たちが「街の本
屋」というときにイメージしているのは、街の中で「知的好奇心の渦の中心」にな
るような場所なんです。
この話をあえて図書館の話につなげると、長尾さんもお書きになっているとお
り、特に国立国会図書館では「すべての知を集める」ことを理想とされています
よね? でも、現在において「すべての知」と言ったとき、どこまでを指すんで
しょうか。ウェブサイトや電子書籍の知も集めようとしていますが、それはきり
がないから、僕はやめた方がいいと思っているんです。例えば、たまたま出会っ
た人同士の会話に「知」があったら、理屈上、それも収集しないといけないわけで
す。
「本」の価値は「書かれたこと」が全てではなくて、それを読者がどう受け取って、
頭の中でどう理解し、どう考えるかによって違ってくるし、そういうことが生ま
れてくるのが、本の良さでもある。でも「どう読むか」は人によって違うし、他者
28 特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号
と読み方がぶつかったときに、そこから新しい方向に発展したりする。こうした
ことを含めた全てが「本」だとすると、「知」はいろんなところに渦巻いている。い
ま、話しているこの座談会も、突き詰めれば図書館の収集対象になってしまう。
――高橋さんは電子書籍を販売する立場からみて、場所性についてはどう考えま
すか? 例えば米光一成(1964 年∼。電子書籍にも積極的に取り組むゲームデザ
イナー、インターフェイスデザイナー)さんが、以前「電書フリマ」という「実際
の場所で電子書籍だけを売る」というイベントをなさっていますよね。
高橋:場所ってコストが高いじゃないですか(笑)。電子書籍の場合、紙の本より
儲からないというか、あまり利益をとらないでやっていきましょうという方向な
んです。しかもうちの方針としては、紙だと出せないようなものを、電子で出そ
うという発想をしています。
なぜ紙で出せないかというと、ようするに売れないからです。紙の本だと、
2,000 ∼ 3,000 部ぐらい刷らないと採算がたちませんが、電子なら 100 ∼ 200 部
売って利益を出すといったモデルがつくれるわけです。それをするには、とにか
くコストを削らないといけない……という話になったとき、コスト的に場所をも
つのは難しい部分があります。場所が嫌いというのではなくて、「リアルなもの」
というのはとにかく高い(笑)。
河村:それに、あえて「場所」でやることの意味が、電子書籍という文脈の中では
よく分からないですよね。
高橋:そうですね。やってみたら面白そうな感じではあるんですが。
河村:「達人出版会」の本を限定部数でオンデマンド印刷して、「下北沢オープン
ソースカフェ」に置かせてもらうことができたら、買ってくれる人はけっこうい
るはずです。でも、普通の本屋で売ってもダメだと思うんです(笑)。ここは少し
特殊な人たちが集まる場所なので、そういう特定のターゲットには響く。ただ、
そういう人たちが集まるリアルな場所をつくるにはコストがかかるので、半端な
気持ちではできない。
29特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号
内沼:いまの話はすごく面白い。つまり「家賃は高い」という話と、「印刷代は高い」
という話が一緒だということですよね(笑)。「電子書籍は、印刷するほどのもの
でないもの」という話は、ある場所を維持してそこで語られてたこと、つまり「知
として収集する必要があるかどうか分からないものまで、全て記録しておくべき
なのか」という話と似ている。記録しておきたくなるけれど、実際は、全てを記録
することはできない。ましてや記録した瞬間に、国立国会図書館の収集対象にな
るとしたら……。
河村:固定化には、つねにコストがかかるんですよ。そういう意味では、電子書
籍はまだコストが低い方にある。でも、今しゃべっているこの座談会を全て文字
に起こすかどうかは、内容によりますよね(笑)。つまり、その部分にどのくらい
コストをかけるかという話が、固定化するかどうかの判断にかかってくる。「生み
の苦しみ」とは別に、コストをどうするかという問題がある。
内沼:そうです。だから全部は収集できない。紙に印刷されたものだって、実際、
全部は収集できていないわけです。でも、それを分かったうえでも、理想として
は「全部」と言わなければならない。でも、それだと図書館の人は辛いんじゃない
かな。
図書館はどこまでを集めるべきか
河村:国立国会図書館の場合は、「全部を収集する」という理想を掲げて行ける
ところまで行くのは分かるんです。でも、街の図書館にまで、その理想は求めら
れない。蔵書にある程度の網羅性が求められる半面、置ける冊数が限られる中で、
司書さんは選書をしなければならないわけです。
内沼:長尾さんが書かれているような未来として、リアルな現場で起こってい
る「知」をすべて収録するとしたら、その尖兵としての役割を、地域の図書館が担
うしかない。世田谷区の図書館の人が「B&B」とかに来て、イベントでの会話とか、
誰かがしゃべっていたら、「いまちょっといいことを話していましたね。録音させ
てください」と言って、会話を録音して帰る(笑)。さらにそれを文字に起こして、
とりあえず電子書籍にする……というのはファンタジーですが、ありうる気はし
ますね。
30 特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号
吉本:新聞社の地方支社は、まさにそういうことをやっているわけですよね。
内沼:「下北沢経済新聞」のような、「みんなの経済新聞ネットワーク」(地域密着
型のインターネット新聞。渋谷で誕生し、国内外に次々とネットワークを広げて
いる)も、今までは新聞記事にならなかったような地域の話題、例えば近所に新
しいお店ができましたといったちょっとしたことを新聞記事ふうに書いてニュー
スにしているわけです。
河村:そうだとすると、図書館自身が「知」を固定化する義務を負うかどうかが
ポイントかもしれないですね。「みん経」は、今まで固定化されてこなかったもの
をニュースとして固定化している。それはとても面白いと思いますが、街の図書
館がそれをやるべきかというと、私にはとてもそうは思えないんですよね。
――「固定化」というのは、電子であれ紙であれ、なんらかの記録に残すってこと
ですか?
河村:今までは「記録に残す」という作業が一段階しかなかったはずなのに、今
は二段階になっているんですよ。「みん経」が街の中で起きていることを記事に
するような作業が、最初の固定。次にそれだけだと散逸するので、例えば国立国
会図書館に一つのアーカイブとして遺すといった二段階目の固定化がある。でも、
「みん経」の記事はすでにインターネットに上がってるわけだから、インターネッ
ト自体を「ライブラリー」だと言えばいいんですよね。
内沼:実際、国立国会図書館が世の中にあるすべての「知」を集めるよりも、本を
はじめ全てをインターネットに上げてしまって、「インターネットが世界の図書
館です」と言ってそれで終わりの方が楽かもしれない(笑)。
――アメリカではインターネット・アーカイブ(インターネット上に公開された
Web ページを保存し、サーバー上から削除されたコンテンツも閲覧できるサー
ビスの名称)が、ウェブページだけでなく、映像・音声・ソフトウェア・テレビ・
紙の本などの収集を、本気で始めていますね。国立国会図書館もどこまでできる
か分からないですが、インターネットの資料も収集し始めている。さらに文化庁
31特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号
との間で、映像やゲームといった、いわゆるメディア芸術までも収集の対象をひ
ろげるという話も決まっています。
ところで、「カーリル」はリアルな図書館に足りない部分のサービスを、図書館
をネットワークでつなぐことで埋めるところから生まれたわけです。また新事業
として、「カーリルタッチ」という図書館の「書棚」を支援するサービスを始めら
れていますが、吉本さんは「場所」と本や情報の関係を、どう考えておられます
か?
吉本:図書館との仕事をしていると、正直、図書館がもっているのは「場所」しか
ないんだということがよく分かります。本に対する力なんてもっていないし、「本
のデータ」すら、今は自分の力ではなんともならない。図書館がいちばん自由に
できることは、実はシステムとはあまり関係ないことなんです。例えば、本棚に
本をどう並べるかは、図書館の側で自由にできる。でも、本を置く場所を変える
こと自体が、今は相当に大変なことになっている。なぜかというと、最初に図書
館を建てたときの並べ方で固定化してしまうんですよ。おかしな話だと思うんで
すが、「背」を見せて並べていた本を「面見せ」にするだけでも一大事なんです。
「カーリルタッチ」という新しいサービスを始めたのは、僕たちが現場に行ける
ことが大きかった。図書館のことをさらに知るには、図書館ともっと絡まないと
ならない。でも正直、その先に何があるかはよく分かっていなかったんです。た
だ、「カーリル」の最初のコンセプトである「ウェブと図書館をつなぐ」のうち、「図
書館からウェブにつなぐ」方はやっていなかった。それをつくれたら、図書館の
人ともっといろいろなことが一緒にできるんじゃないかと思いました。
これまで図書館と「カーリル」は役割分担がはっきりしていて、なかなか何か
を一緒にやることがなかった。 最近、図書館の人には「カーリルは図書館に人を
送客するサービスです」と説明しています。 立ち位置としては「ぐるなび」と一
緒なんですよ(笑)。
河村:先日、「カーリル」で本を探して図書館に借りに行こうとして感じたことが
あるんです。今、ここから最寄りの代田図書館が改築工事で閉館しているので(座
談会当時。2014 年 4 月にリニューアルオープン)、しばらく電車を使わないと図
書館に行けないんです。それで「カーリル」で検索したら図書館がずらっと出て
きて、どこに行くかすごく迷ってしまった。図書館ごとの個性がないからなんで
32 特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号
すね。今までは距離でしか選んでこなかったんですが、それはなんだかもったい
ないなと。
図書館の設置場所は、区内における配置の網羅性を維持するためにすごく苦労し
て選ばれている。でも同じ区内に十何館も図書館があって、配置の網羅性は満た
されているのですから、各館が個性的な選書をして、区全体で網羅性が保たれれ
ばいいんじゃないか。さらにいえば、選書の網羅性は東京都全体で保たれていれ
ばいい。「カーリル」ができたおかげで、そういうことが言えるようになった気が
するんです。
内沼:さきほどの話とつなげると、それぞれの館で生まれた「読み」みたいなも
のが、それぞれの館で記録されていたら面白いですよね。長尾さんが仰るように
「知」とか「データ」がインターネット上ですべて共有されるとしたら、地域にあ
るリアルな図書館の財産は、突き詰めればそこにある情報ではなくて、むしろ周
りにある「環境」や周辺に住んでいる「人」だということになります。
完全に未来の話になってしまうけれど、例えば、ある本を読んでこう考えた人
がいる。その人はどうやら世田谷区にある図書館の近くに住んでいて、そこでそ
の本を読んだらしい。だったら自分も図書館に行って、その人とちょっと話をし
てみたい、ということで出会った二人が話したことが、またインターネット上で
共有される……みたいな。
河村:「下北沢オープンソースカフェ」は、実際にそういう場を目指してるところ
があります。基本的に、どんな人でもウェルカムなんですが、プログラムやオー
プンソースに関連するテーマの本を本棚に置くことで、来る人を特定の知識層に
固定化しているんです。本棚にはそういう使い方もあるのかな、ということが一
つ。それからもう一つ、いまの話を聞いていて思ったのは、図書館には住民から
のリクエストというものが反映されますよね。街の図書館には、周辺住民を代表
するような知識があるといい。
吉本:いま、まさにそれを図書館の人と話していて、「カーリル」でやりたいこと
のリストに入っています。図書館の側も、住民が何に興味をもっているのかに注
目し始めていますが、正直な話、そういうマーケティング的なことが図書館にい
33特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号
るとよく分からないんです。
河村:いままでは、その部分で住民に迎合しすぎると、図書館に置かれる本の網
羅性が失われてしまって、あまりよくないかたちだったかもしれない。でも逆に、
司書の人が「網羅性がある」と信じて選んでくれた本が、いつの間にか偏ったも
のになっていないとも限らない。そこの部分の担保はとりようがない以上、どこ
の館も同じような平均値を求めるのではなくて、それぞれが選書すればいいと思
います。最終的に、それがインターネット経由で 網羅性やバランスがとれていれ
ば、その方が自然な感じがするんです。
本屋も図書館もない地域
――ここまでの話は、東京のような、国立国会図書館があり、都立中央図書館も
あり、公共図書館もたくさんもあって、「立川まんがぱーく」もできて、そして「リ
ブライズ」がやっている「下北沢オープンソースカフェ」もあり、「B&B」をはじめ
とするユニークな本屋さんもたくさんある環境だから成り立つ部分もありました
よね。
けれども地方となると状況は全然違ってきます。今、離島の本屋さんの本(『離
島の本屋∼ 22 の島で「本屋」の灯りをともす人々』朴順梨、ころから 、2013 年)
が出ていますけれど、離島では図書館さえまともになくて、本屋さんが図書館の
役割をしていることも多々ある。もっと厳しいところだと、本屋さえもありませ
ん。そういう状況の中で、図書館のこと、あるいはもう少し広く「パブリック」と
いうことを考えてみたいんです。
地方でも、東北では震災というたいへん不幸なことがあったために、現地の人
たちが他の地方から集まってきた人と一緒に動き始めて、新しいコミュニティが
生まれているところもありますが、おそらく、そうした動きが起きていない、ま
た起きていても可視化されない、といったところがたくさんあると思うんです。
電子書籍とか電子図書館がもっている可能性は、そういったリアルな本で埋めき
れない場所に対しても本来は有効なはずなんですが、みなさん、そのあたりはい
図書館にとってパブリックとは
34 特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号
かがでしょう?
吉本:僕が住んでいる岐阜県の中津川市は、過疎でもないですが、都市でもない。
まさに平均的な田舎です。こういうところが、世の中で実はいちばん広大なエリ
アだったりするんですが、本当にどこに行っても同じ店があって……という感じ
なんですよ。
僕が生まれたころから、家の周辺には書店というものがなかった。もちろん図
書館もない。では、どうやって本を手に入れたかといえば、親が年に何度か名古
屋に買い物に行くときに、頼むんです。でも、親が行く本屋にどの本があるかは、
前もっては分からない。親からすれば、コンピューターのことが書かれている本
ならなんでもいいと思って、全然、欲しい本と違うのを買ってこられて、「これで
いいだろ」って言われるという……(笑)。
つまり、本に対するディスカヴァリーが全くない状態だったんです。本と出会
うためのインデックスが何一つなかった状態からすると、いまは完全に変わって
いて、なんら不自由もストレスもない。そこに関しては圧倒的な変化だと思って
います。
僕が紀伊國屋とかジュンク堂のような書店に出会ったのは大学に入ってからで、
それは公共図書館に行くのと体験としては非常に近い。つまり自分の知りたいと
思ったことが、そこに行けばなんとなく見つけることができた。でも、「本が網羅
されている空間はいいよね」「書店や図書館はそうあるべきだよね」と言われても、
それらと出会う前に、アマゾンが存在する世界に行ってしまった。原体験がない
ので、いい空間だということは分かるけれど、それがなくなったときに困るかと
言われると、率直に言ってよく分からないんです。
内沼:今の話は、さっきのコストの話とも関係があるし、当然、問題にすべきこ
とだと思います。さらにいえば、これは「本はタダで読めるべきか、それともお
金をとるべきか」という話ともつながってくる。仮に図書館ですべての「知」が完
全に解放されたとすると、極論すればアマゾンさえも要らなくなる。もちろん長
尾さんは、完全にそういう状態になることを目指しているわけではないでしょう。
ただ、図書館の歴史の方が、本屋の歴史よりもはるかに長い。だからこそ、「知識」
の公共性とは何かという話になると、どうしても図書館というものにつながって
いくわけです。
35特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号
「本」は紙に印刷して全国の本屋に撒くという、複製と流通の部分に多大なコス
トがかかる。だからこそ、本を「商品」として売るわけですよね。でももっと昔は、
手元に欲しい本は書き写して所蔵していた。書き写す手間という意味ではコスト
がかかりますが、大量生産される「商品」ではなかった時代があるわけです。 誰
でも本が買えるものになってからの歴史はまだ短いし、今ではまた「売れない商
品」になってきている。
そうであれば、極論すれば、もう本を売るのをやめればいいという話もありう
る。そこで僕からみなさんにお尋ねしたいんですが、「そもそも本からお金をとる
方が間違っている」という考え方についてどう思いますか? つまり、本は今だ
にお金を払って買うものなのか否か、という。
高橋:どうなんでしょうかね。電子書籍の場合、ウェブと違うのは読むのにお金
がかかるというところですよね。無料ならウェブでもいいという話も、「電子書籍
元年」と騒がれた2010年ぐらいから延々とやってきているわけです。
ただ、内沼さんが仰った「昔は、本は商品ではなかった」という話と同時に、「昔
は誰もが知識にアクセスできるわけではなかった」という面もある。ビジネスや
商品になることによって本はパッと広まった。つまり、お金さえ払えば誰もがア
クセスできるようになった面もあるわけです。さらに、今ではウェブを使えば無
料で知識にアクセスできるようになった。いったいどうしましょうと、正直困っ
ているところではありますね(笑)。
吉本:本が売られるようになると、売れる本を書いて流通させれば儲かるから、
投機的な意味で出版社がそのための資本を出すというビジネスの流れが出てきま
すよね。そこにあらたに電子書籍が登場して、ある意味、その部分を中抜きしま
す、みたいな話になってきた。さらに最近ではクラウドファンディングをつかっ
て、「こういう本を書きたいのでお金を集めたい」という流れも出てきている。あ
れも書く人に対して「生みの苦しみ」というか、ものすごくプレッシャーになり
ますよね。
河村:「READYFOR?」(日本で最大のクラウドファンディングサービス)でお金を
集めて図書館をつくろうという動きもありましたね。ただ、クラウドファンディ
ングというのは、実はお金の問題よりも責任の方が強い。得たお金で私腹を肥や
36 特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号
すわけにはいかないから、自分自身の分は手弁当でやるわけじゃないですか。よ
うするに、投機的にやるのか、先に後押ししてもらうのかぐらいの違いでしかな
い。でもこの差がけっこう本質的なのかもしれないですね。
吉本:本が売れなくなったということに関していえば、投機的なメリットがなく
なってきたというのが決定的なんでしょうね。
「知」の体系と「物語」
――もともと売られる対象ではなかった「本」や「知」の大衆化とビジネス化は、
実は同時に相互関係のもとで進んできた。さきほどのクラウドファンディングの
話もそうですが、電子書籍 、あるいはそれ以前にインターネット自体が、「知」の
大衆化や民主化を生み出したと総じていわれます。今後に起きる変化は、その大
衆化あるいはビジネス化がさらに広がるという、スケーラビリティだけの話なの
か、それともより本質的な変化が起きるんでしょうか?
河村:こういう話をするときにいつも疑問に思うのは、学術書や技術書のように、
知識の体系のどこかに埋め込まれることを想定されて書かれている本と、物語性
やエンターテインメントの方に向かっていく本を、同列に扱っていいのかどうか
ということなんです。
私自身は技術書しか書いたことはないんですが、時間給で考えると 200 円とか
300 円の仕事なんです(笑)。本を出すことの経済的なメリットは自分自身には全
然なくて、むしろ身を削るだけなんですが、ここ 10 年間に関しては、インター
ネットに出すよりも本として出した方がひろがるし、読んでもらえるという場面
があったんです。
内沼:しかも、知識の体系の中に正しく配置されますよね。
河村:そう、それが最初に私が言った「アンカー」ということです。そのことにメ
リットを感じてするのが「本を書く」という行為だったと思うんですよね。だか
ら逆に、「物語を書く」というかたちで本に関わってる人たちのマインドが、私に
はよく分からないんですよ。
37特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号
内沼:そこは同じような気もします。「物語」という言葉を抽象的に使いすぎてい
るかもしれないですが、物語を書く人は「まだ足りてない物語」を書こうとして
いるんだと思うんですよね。どこかで書かれた物語ならもう必要ないけれど、プ
ロとして責任をもって書こうとしている人は、社会に足りていない物語を埋めよ
うとしている。自分自身の癒しのために書いている人と、プロの作家の違いはそ
こだと思います。
――ただ、そういう意味では同人の作家も「足りてないところを埋める」ことへ
の欲望はすごく強いですよね。
内沼:そういう人もいますよね。「同人」というときにイメージしているものが、
もしかしたらお互いにずいぶん違うのかもしれないですが。
吉本:同人作家の場合、社会の中での「足りない物語」を埋めるというよりも、自
分の中の欠落を埋めるところが強いのかな。
内沼:僕もそういうイメージで話をしていました。
――たぶんお二人と同じイメージで話をしていると思いますが、同人の場合も、
歴史の中に物語を埋めたいという欲望をもっているように感じます。ある種の
「歴史」ではあるけれど、それが複数ありうるところが同人カルチャーの動力だっ
たりする。「複数の歴史を埋めていく」というのは、学術書のような意味で「体系
を埋める」のとは違うかもしれませんが。
内沼:ただそのときにも、自分の「そうあったかもしれない物語」を書きたい、「自
分がいちばん気持ちいいものが書きたい」という欲望の強いものが、同人の場合
はどうしても多くなってしまうと思います。それが自分だけでなく、誰か他の人
の癒しになると思って書くという意識の有無が、プロかそうでないかの線引きか
なと思うんです。これは「仕事」か「趣味」かという話でもある。「お金をもらうこ
と」イコール「仕事」という定義もありうるけど、そうではない定義もありうるわ
けです。簡単に言ってしまうと、社会を向いていれば「仕事」で、自分の方を向い
ていれば「趣味」といった。
38 特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号
たとえ時給 200 円でも 300 円でも、あるいは 1 円も貰えなくても、この体系を
「埋める」ためと思って書く人は、「仕事」をしているとも言えると僕は思ってい
て、そういう本は図書館が収集すべきものかもしれない。逆に、例えば最も分か
りやすく言うと、自分がいちばん性的に興奮できる絵を描きたいというようなの
が「自分に向かっている」ということで、それと他人のために書くこととの差は、
やっぱりあるのではないでしょうか。
――両者の間で明確に線が引けるものでしょうか?
内沼:明確には引けないでしょうね。グラデーションはあると思います。
河村:「本」を書くのが自分のためなのか、社会の中に足りてないと思うからやる
のか、ということの間には、やはり微妙なラインがあるような気がします。こう
いうコワーキングスペースをやっていると、社会との距離感をどのくらいでとれ
ばいいのか、ということへの考えがガラッと変わってきたんです。
同人作家の人も、少なくとも 10 ∼ 20 人には認められるから活動をしているわ
けでしょう。こういう場所でも、10 ∼ 20 人がわらわらと集まってきて、自然発
生的にイベントなどが生れる。そしてそれは、たんなるプライベートでもないし、
かといってパブリックでもない。集合させていくといつかはパブリックになる、
セミパブリックな集まりという感じのものができてくるんです。だから単純に人
の数だけで、社会的かどうかという線引きができないなという感があります。
これを図書館の話に強引につなげていくと、図書館が「社会」と「個人」のどち
らの側につけばいいのかが、実はよく分からなくなってきたんです。長尾さんの
テキストの中でも、図書館という場所は「コモンズになるべきだ」という部分と、
「知を体系的・網羅的に集めるべきだ」という両方が出てきて、両者は一致すると
ころがない感じがする。そこに図書館のジレンマが見える気がして、どちらに行
くべきのかなと思います。
「サードプレイス」と「教会」
――今の話から、オルデンバーグの「サードプレイス」を思い浮かべました。第一
の場所が家、第二の場所は職場や学校、そして家や職場での役割から離れてくつ
ろげる場所としての第三の場所がサードプレイスです。図書館や公園などの公共
39特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号
の場がサードプレイスとして機能することもあれば、カフェや居酒屋などの飲食
店がサードプレイスとなることもあります。例えば、スターバックスコーヒーは
サードプレイスをコンセプトとして掲げて店舗展開してきました。
サードプレイスは必ずしも公共の場所ということではありませんが、その中立
性は部分的な公共性を持っているともいえます。スターバックスなどのカフェも
商業空間でありながら、ある種の公共性を含むサードプレイスとして機能してき
ました。
河村:ただ、サードプレイスという言い方は、従来の働き方の上にのっていると
思うんです。今はもう、それは崩れているんですよ。プレイスは一つしかなくて、
プライベートもなくパブリックもないんです。
吉本:うちの事務所も、人が勝手に来て仕事をしていて、「オープンスペース」と
はいってないけれど、空間としてはもうオープンなんでね。生活空間がパブリッ
クに近づいていて、ここから先は入られちゃ嫌というところはないんです(笑)。
――それにあえて反論をすると、「コミュニティ」と「パブリック」が混同され
ていることがあって、すごく気になるんです。例えば先日の「マイクロライブラ
リー・サミット」で言われていた「オープン」で「パブリック」な空間も、「コミュ
ニティ」の場合がすごく多かったんですね。
河村:そこにもう一回反論をするとすれば、私は「パブリック」は幻想だと思っ
ているんですよ。人が関わるうえで、パブリックをどう実現できるかということ
に対して、図書館は答えが出せないし、僕らも答えを知らないんですね。だから
幻想かもしれない「パブリック」に近づく階段としては、今のところ「コミュニ
ティ」以外の手段がないような気がするんです。
高橋:パブリックは「大きいコミュニティ」みたいなものでしかないと……。
――この「マイクロライブラリー・サミット」には、河村さんも登壇されていま
した。吉本さんと私は客席で見ていましたが、これについては、河村さんから説
明していただいた方が分かりやすいかもしれません。
40 特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号
河村:2013 年 8 月 24 日に大阪の「まちライブラリー @ 大阪府立大学」で、世界初
の「マイクロライブラリー・サミット」という催しがありました。小規模な図書
館(マイクロライブラリー)を、全国から 17 個集めて、朝 10 時から夕方 6 時ぐら
いまで、30分ずつ話をしてもらいました。
いま僕らが把握しているだけで、全国でマイクロライブラリーが 300 とか 400
ぐらいある。まだ把握してないところも含めると無数にありそうな気配がします。
その基準は、大きくいうと「本が集まる場所」なんですが、たいていは「人も集ま
る場所」でもある。基本フォーマットは「本」、つまり本とか本棚、図書館なんで
すが、うちみたいなコワーキングスペースもあれば、公共図書館の中に市民が集
まる場所を別につくって、市民が自由に本を持ち寄っている本棚があったり、聞
いてみるとけっこうみんないろいろ違うことやっている。
例えば長野県の小布施町では、街中のお店の店主が自分の好きな本を店内に並
べていて、それらのことも「図書館」と呼んでいる。小布施の町全体が「図書館」で、
その中心に町立の図書館(まちとしょテラソ)がある。他にも個人の趣味で少女
マンガを集めだしたら全国からどんどん集まってきて、今 5 ∼ 6 万冊の蔵書があ
る「少女まんが館」という私設図書館もありました。そんな人たちが集まるサミッ
トでした。
――大阪や京都にも、カフェにライブラリーがあったり、そこでイベントをして
いるお店がたくさんあって、一つ一つの事例は面白かったんです。このサミットに
「B&B」や「カーリル」や「達人出版会」が出ていても、全くおかしくない感じでした。
河村:本屋さんでは、「放浪書房」(旅をしながら、旅の本を売り歩く人力移動式
の旅本専門店)がきていましたね。
――そう、書店も来ていたし、「リブライズ」のように、本に関するシステム的な
ことをやっているところも出ているのが面白かった。さきほど河村さんが「パブ
リックは幻想だ、でもそれを分かってやっているんだ」という話を聞いて、すご
く納得がいったんです。
というのも、このイベントはまだ 1 回目なので話が総論的になるのは仕方ない
んですが、参加した人たちの全部とは言わないまでも、その多くが「強いコミュ
ニティ」を志向する場であるように感じられた。中にいる人たちは気づかないか
41特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号
もしれないですが、そういう「強いコミュニティ」は、外から見ている人に対して
は、「閉鎖性」として立ちあがる。コミュニティがあることも、コミュニティの多
様性も自然なことですが、その中で「リブライズ」のやろうとしていることだけが、
ちょっと違ったんですね。自分たちの場所も持っているけれど、パブリックが一
種の幻想だと分かっているがゆえに、コミュニティ同士をつなぐことで、その限
界にチャレンジしようとしているように見えました。
河村:コミュニティは、地の縁があると絶対に閉鎖的になるんですよ。でも、い
まのコワーキングスペースや、もう少し緩やかにインターネット上で起きている
コミュニティは、オーガナイザーのやり方次第なんですが、そういう意味での閉
鎖性はあまり強くない。
「リブライズ」がコワーキングスペースを拠点にすることで、他の利用者の活動
も見られるようにしているのは、コミュニティにどっぷり浸かって、自分の平均
値の中で固定化されていくのが、すごく嫌だからなんです。その中で流動性をど
ういうふうに確保するかというときに、「コミュニティ同士をつなぐ」という話に
なっていった。
ただ、「コミュニティ同士をつなぐ」というのはけっこう抽象的な話であって、
実体があるわけではないんです。本質的にやりたいところは、その中にいるプレ
イヤーを自由に行き来させることなんですよ。そうやって流動性が高い状態を維
持しないと、コミュニティが腐るんです。
――「実体がない」というのは、多様なものがあって、リブライズはその「間」を
やっている、ということだと思うんです。齋藤純一さんが『公共性』(岩波文庫、
2010)という本で、公共性は人びとの「間」に形成される空間であると書いていま
す。
河村:「リブライズ」は地藏真作さんというプログラマーと二人でやっているん
ですが、僕らには共通見解があって、その「間」はシステム、もう少し具体的にい
うとプログラムだと思っているんです。
――今回のサミット参加者の中では、システムをつくっているのは「リブライズ」
42 特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号
「第1回マイクロライブラリー・サミット」会場展示風景 撮影(見開きとも)=嶋田綾子
「第1回マイクロライブラリー・サミット」での「リブライズ」ブースは、サービスのデモンストレーションができる体験型の展示
43特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号
「第1回マイクロライブラリー・サミット」での「放浪書房」ブース風景
「第1回マイクロライブラリー・サミット」での「少女まんが館」ブース風景
44 特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号
だけでした。
高橋:今は理想像としてあるのが「リブライズ」ぐらいだとしても、「それ以外の
システム」もありうるわけですよね。複数のシステムがあって、それらの「AND
集合」か「OR集合」の中に、公共みたいなものができるのかもしれない。
河村:ただ、それだと「人」からすごく遠く離れている感じがしてしまうんです。
「パブリック」を議論するとき、それがいったい何を指しているのか、という疑問
がいつもつきまとうんですよ。
高橋:「公共性」というのは、「人」ではないんじゃないですか?
河村:なんというか、公共性が「程度の問題」だったり、たんに形容詞として使わ
れるだけなら、コミュニティも公共の一つだという気がするんです。
内沼:「公共性が高い」とか「低い」と言うとしたら、それは「程度の話」ですよね。
そもそも大前提として、なぜパブリックということが必要なんでしょうか?
――パブリックがなぜ必要か、というのはすごく難しい話ですね。これまでの話
の流れをまとめると、「マイクロライブラリー・サミット」のような動きの中で、
「僕らはパブリックに対して開いていますよ」と言葉を聞くことが多くなってき
た。例えば公共図書館というのは、まさにパブリックの場なのですが、河村さん
が仰ったように、実はそれは幻想でしかなくて、図書館がパブリックを体現して
いるわけでもないという話だったと思います。
内沼:幻想なら、幻想でもいいじゃないかというのが、今聞いていて思ったこと
です。そういう意味では、僕も公共性というのは「程度の話」かなという気がして
います。
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『ライブラリー・リソース・ガイド(LRG)』第7号(2014年7月)

  • 1. LRGライブラリー・リソース・ガイド 第7号/2014年 春号 発行/アカデミック・リソース・ガイド株式会社 Library Resource Guide ISSN 2187-4115 特別座談会 内沼晋太郎 × 河村奨 × 高橋征義 × 吉本龍司 未来の図書館をつくる 特集 猪谷千香 コモンズとしての図書館 司書名鑑 No.3 谷一文子(海老名市立中央図書館・株式会社図書館流通センター)
  • 2. LRG Library Resource Guide ライブラリー・リソース・ガイド  第7号/2014年 春号 発行/アカデミック・リソース・ガイド株式会社 特別座談会 内沼晋太郎×河村奨×高橋征義×吉本龍司 未来の図書館をつくる 特集 猪谷千香 コモンズとしての図書館 司書名鑑 No.3 谷一文子 (海老名市立中央図書館・株式会社図書館流通センター)
  • 3. 2 巻頭言  ライブラリー・リソー ス ・ ガ イ ド 2 0 1 4 年 春 号 『ライブラリー・リソース・ガイド』第 7 号を発刊することができました。本誌 をお読みいただいているみなさまに、改ためて感謝申し上げます。 創刊から 2 年目も半ばとなった今号から大きな変化があります。それは今回か ら書き手に猪谷千香さんを迎えたことです。猪谷さんのお名前は弊誌をお読みに なる方々であれば、よくご存知のことでしょう。本年初頭に刊行した『つながる 図書館』(ちくま新書)は図書館の枠を超えて読まれるベストセラーとなってい ます。猪谷さんとは震災関係の取材で初めてお目にかかり、それ以降、様々な機 会でご一緒してきましたが、今回この『ライブラリー・リソース・ガイド』を生 み出すプロセスにご参画いただけることになりました。申し出を快く受けてくだ さった猪谷さんにも御礼申し上げます。 さて、今回は、 ●特別座談会  「未来の図書館をつくる座談会」 内沼晋太郎×河村奨×高橋征義×吉本龍司 ●特集  「コモンズとしての図書館」 猪谷千香 ●司書名鑑No.3  谷一文子(海老名市立中央図書館・株式会社図書館流通センター) ●羊の図書館めぐり  第1回  大阪府立中之島図書館 という構成です。 巻頭言 図書館の新しいあり方へ
  • 4. 3巻 頭 言     ラ イ ブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春 号 「未来の図書館をつくる」座談会は、内沼晋太郎さん(B&B)、高橋征義さん(達 人出版会)、河村奨さん(リブライズ)、吉本龍司さん(カーリル)という豪華な顔 ぶれによる座談会を再録したものです。この座談会はウェブサイト「マガジン航」 < http://www.dotbook.jp/magazine-k/ > が行ったもので、同サイトに 3 回に渡っ て連載されたものです。ただし、本誌に再録したものはさらに編集を加え、読み やすさが増しているのではないかと思います。ぜひ、ウェブ版との違いも含めて お読みください。 特集「コモンズとしての図書館」は、猪谷千香さんの幅広い取材の成果です。場 としての図書館を巡る議論が盛んですが、「場」を一歩進めて、「コモンズ」として の図書館のあり方に注目した力作ではないでしょうか。 3 回目の掲載となる司書名鑑では、図書館業界のリーディングカンパニーであ る図書館流通センター(TRC)を率い、また CCC との協業で注目を集める海老名 市立中央図書館の館長も務める谷一文子さんにご登場いただきました。谷一さん の語る言葉にこれからの図書館を考えるヒントがあるのではないでしょうか。   最後に、恒例のお願いとなりますが、本誌を取り巻く経済環境は決して明るい ものではありません。本誌を刊行するアカデミック・リソース・ガイド株式会社 としては、本誌で大きな利益を出すことは考えていませんが、適度なバランスは 維持しなくてはなりません。ぜひ、本誌の定期購読や最寄りの図書館への購入リ クエスト、知人友人への推薦を引き続きお願いします。 ※なお、本号より、利益の一部を公益財団法人シャンティ国際ボランティア会に  寄付することといたしました。 編集兼発行人:岡本真
  • 5. 巻 頭 言 図書館の新しいあり方へ[岡本真] ………………………………………………… 2 特別座談会 未来の図書館をつくる[内沼晋太郎×河村奨×高橋征義×吉本龍司] ………… 5 特   集 コモンズとしての図書館[猪谷千香] ………………………………………………… 65 LRG CONTENTS Library Resource Guide ライブラリー・リソース・ガイド 第7号/2014年 春号 学び、集い、生み出す──これからの図書館へ 同志社大学ラーニング・コモンズ 奈良県立図書情報館 江戸川区立篠崎子ども図書館 船橋まるごと図書館プロジェクト 不忍ブックストリートの「一箱古本市」 武蔵野プレイス 紫波町図書館 オープンソースカフェ ゲンロンカフェ さくらWORKS<関内> BBC長湯と「林の中の小さな図書館」 司書名鑑 No.3 谷一文子(海老名市立中央図書館・株式会社図書館流通センター) 羊の図書館めぐり 第1回 大阪府立中之島図書館 アカデミック・リソース・ガイド株式会社 業務実績 定期報告 定期購読・バックナンバーのご案内 次号予告 …………… 138 ……………………………………………… 146 …………………………………… 148 ………………………………………………………………… 152 ……………………………………………………………………………………………… 155 ………………………………………… 66 ………………………………………………………… 68 ……………………………………………………………………… 80 …………………………………………………………… 92 ………………………………………………………… 102 …………………………………………………… 112 …………………………………………………………………………… 122 ……………………………………………………………………………… 126 …………………………………………………………………… 128 …………………………………………………………………………… 130 ………………………………………………………………… 132 ………………………………………………… 134
  • 7. 6 特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号 前・国立国会図書館長の長尾真さんの論考「未来の図書館を作るとは」が、「LRG」 創刊号(2012 年秋号)で掲載されてから約1年。館長在任中に、大胆かつ画期的 な「未来の図書館」像を提案した「長尾ビジョン」を引き継ぐ本テキストは、どの ように読まれたのだろうか。 2013 年秋、「図書館」や「本」のあり方を革新する、思考の実践者 4 名が集まり、 長尾さんの論考を手がかりに、さまざまな角度から「未来の本と図書館」につい て語り合った。 左から内沼晋太郎さん、高橋征義さん、河村奨さん、吉本龍司さん。下北沢オープンソースカフェにて。 撮影=二ッ屋絢子 内沼晋太郎×河村奨×高橋征義×吉本龍司 李明喜(司会) 未来の図書館をつくる *本座談会は、ウェブマガジン「マガジン航」が、2013 年 6月に「達人出版会」から「未来の図書館を作る とは」が電子書籍(無償)として刊行されたのを機に行い、「未来の図書館をつくる座談会 Part 1 ∼ 3」 〈http://www.dotbook.jp/magazine-k/future_library_talk_01/〉として、同ウェブマガジンで発表され たものです。 *本稿は、「マガジン航」編集人・仲俣暁生さんから許諾をうけ、本誌用に編集を加えて、転載したものです。
  • 8. 7特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号 内沼晋太郎(うちぬま・しんたろう)  1980 年生まれ。numabooks 代表。ブック・コーディネーターとして、異業 種の書籍売り場やライブラリーのプロデュース、書店・取次・出版社のコ ンサルティング、電子書籍関連のプロデュースをはじめ、本にまつわるプ ロジェクトの企画やディレクションを行う。2012 年、下北沢に「これから の街の本屋」をコンセプトにした「B&B」を博報堂ケトルと恊業で開業。近 著に『本の逆襲』(朝日新聞出版、2013)。 「B&B」ホームページ http://bookandbeer.com/ 河村奨(かわむら・つとむ) 千葉大学在学中にソフトウェア開発とデザインを専門として起業。オープ ンソース活動に関わる中で、コワーキングとの親和性に気づき「下北沢オー プンソースカフェ」を 2011 年オープン。2012 年、カフェやコワーキングス ペースなど、街なかにある本棚をウェブで管理し、本を貸し借りできるよ うにするサービス「リブライズ」を発表。 「リブライズ」ホームページ http://librize.com/ja/ 吉本龍司(よしもと・りゅうじ) 1982 年生まれ。小学生の頃からプログラミングを始め、高校時代に有限会 社アール・ワイ・システムを設立。2012 年、全国 6000 以上の図書館から書 籍とその貸し出し状況を簡単に横断検索できるサービス「カーリル」を発表 し、株式会社カーリルの代表取締役に就任。 「カーリル」ホームページ http://calil.jp/ 高橋征義(たかはし・まさよし)  1972 年生まれ。勤務していた会社を辞め、2010 年、IT 系技術書の電子書籍 の制作・販売を行う電子書籍専門の出版社「達人出版会」を一人で設立。ソ フトウェア技術者でもあり、特に国産のスクリプト言語として名高い Ruby について精力的に活動を展開している。2004 年 8 月に「日本 Ruby の会」を 設立、会長を務める。 「達人出版会」ホームページ http://tatsu-zine.com/ 司会:李明喜(り・みょんひ)  1966 年生まれ。デザインチーム・マット代表/デザインディレクター/空間デザイナー。カフェや銀行など、 様々な形の本のある空間をデザイン。環境としての図書館のデザインに取り組む。
  • 9. 8 特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号 どのように本と関わってきたか ――司会・李明喜:前・国立国会図書館長の長尾真さんが2012年にお書きになっ た「未来の図書館を作るとは」というテキストがあります。これは本誌「LRG(ラ イブラリー・リソース・ガイド)」の創刊号(2012年秋号)に掲載されたのですが、 このテキストに「LRG」編集発行人の岡本真さんと長尾さんの対談を付録として 加えたものを、2014 年 6 月に「達人出版会」から電子書籍として出版されること になっています(座談会当時。2014 年 6 月に出版)。今回の座談会はその刊行にあ わせて、本や図書館に関わるユニークな活動をしている人たちの活動や考えをま とめたら面白いのではないか、というところで生まれた企画です。 最初に、みなさんの活動と図書館とのつながりを、自己紹介をかねて伺います。 まずは図書館の世界にいちばん近いと思われる「カーリル」の吉本さんからお願 いできますか。 吉本龍司:「カーリル」というサービスを、4 年近く運営しています。「カーリル」 を始めるまでは図書館業界にいたわけではなく、始めてから図書館のことを知る につれて、その奥深さを知りました(笑)。ただ、自分自身が図書館のユーザーか といわれると、公共図書館のサービス自体に、現時点では魅力を感じないという のが正直なところです。逆に現時点で満足していたら、「カーリル」のサービスは やめてもいい。「カーリル」が勝手にクラウドで動いて、維持管理の他は何もしな くてもいいのなら、僕じゃなくてもできる。そういうことも考えると、満足して ないからこそ続けられているように思います。 「カーリル」を始めて数ケ月目にできたコンセプトは、「ウェブから図書館へ」 でも「図書館からウェブへ」でもいいから、「図書館という場所とウェブをつない でいきたい」ということでした。 実際のサービスとしては、自宅の他、社会人な ら会社、学生なら大学といった生活圏にある複数の図書館の蔵書をまとめて検索 できる便利なもので、まずは使ってもらうことが重要です。 「カーリル」のサービスを続けることの先に僕がやっていきたいのは、情報社会 における図書館運営の大きな変化の中で、公共図書館と一緒にウェブサービスを やっていくことで、「図書館の人たちは次にどうするのか?」というところにいち ばん興味があります。 はじめに
  • 10. 9特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号 ――次は「リブライズ」の河村さん、お願いします。 河村奨:私は「リブライズ」というサービスを運営しています。僕たちは全ての本 棚が「図書館」だと思っているんです。ふつう図書館といったとき、公共図書館と か学校の図書館を思い浮かべると思うのですが、僕らはそれこそ 10 冊でもいい から本の入った棚があれば、そこは「図書館」だと言っています。英語で「Library」 という場合、図書室でもいいし、もっと小さなスペースでもライブラリーなわけ です。 「リブライズ」でやっているのは、その「本棚」に入っている本を目録としてウェ ブに上げて、どんな本が置いてあるのかが、その場に行かなくてもすぐ分かるよ うにすることです。今、私たちがいる「下北沢オープンソースカフェ」(P126 参 照)は 2 つのスペースがあって、隣の部屋の本棚に、オープンソース関連を中心に、 デザインや図書館関係の本が 700 冊ほど置いてあります。その目録をウェブで知 り、気になって借りに来てくれる人がいたりします。 「リブライズ」のミッションは「すべての本棚を図書館に」ですが、自分たちの 活動を「図書館」と名乗りたいわけじゃなくて、他にいい言葉がないという部分 もあります。本を読みたいユーザーの側からすると、本は買ってもいいし、借り てもいいし、その場に行って読むのでもいい。その違いは、あまり気にしていな いように思います。でも、それらの行為をする場をまとめるような言葉がないん です。 サービスの利用者の方向けには「ブックスポット」という言い方をしてい ますが、一般の方向けには分かりやすく「図書館」という言葉を使っていて、そう した場所が全国 300 ケ所くらいに増えてきています。 「本棚がある場所」というだけなら、国内でも何十万という単位で存在するはず なので、最終的にはそこまで、あるいは世界中にもひろげられるなら、いたると ころを「図書館」にしたいということで活動しています。いちおう合同会社です けど、実体は「秘密結社」みたいな感じです(笑)。 ―― 続きまして「達人出版会」の高橋さん、お願いします。 高橋征義:「達人出版会」代表取締役の高橋と申します。この中で図書館といちば ん関係がなさそうな感じですが(笑)。もともとプログラマーをやっていたのです
  • 11. 10 特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号 が、思い立って電子書籍の出版社を立ち上げました。基本的には IT エンジニア向 けの電子書籍を取り扱っているので技術書がほとんどですが、多少は読み物もあ ります。自分のところで本をつくって販売しています。紙の書籍でいうところの 「出版社」と「書店」を兼ねるというスタイルですね。 図書館との関わりでいうと、うちでつくっている本は図書館には置いてないん です。「リブライズ」のように「図書館」的なものをつくりたいと思っても、うち は EPUB と PDF がベースで、しかも DRM(デジタル著作権管理 、Digital Rights Management のこと)もかけない方針でやっているので、基本的にいくらでも コピーができてしまうんです。「コピーも印刷も全て好きにしてください。ただ し、個人利用を徹底してください」としているので、仕組み的に図書館にならない。 むしろ「自分で買ったものだから、この電子書籍を図書館にしたいです」とか、「こ れで図書館を始めました」とか言われると、すごく困るんです(笑)。 そもそも電子書籍に携わる者としては、「電子書籍の図書館 」に関してあまり ピンとこないというか、理想的な未来が全く見えてこないのが正直なところです。 ――このあとの議論の中で、そのヒントが得られたらいいですね。では最後に内 沼さん。内沼さんは「B&B」という本屋を経営しておられますが、その他にもいろ いろな活動をされているので、それも含めてお話ください。 内沼晋太郎:僕は numabooks という屋号で、ずっとフリーランスで本に関わる 仕事をしています。最初に主な仕事として始めたのは、洋服屋さんとか飲食店と いった異業種における本の売り場をプロデュースすることや、企業の受付とか病 院の待合室、集合住宅の共有部分といったところに、本を閲覧できる場所をつく ることでした。そういう場所が「ライブラリー」と呼ばれるときもあって、それは 「図書館」でもあるのかもしれませんね。その過程で派生した仕事として、出版社 や書店のコンサルティング、電子書籍のプラットフォームのプロモーションやプ ロデュースなど、幅広く本に関わる仕事をしてきました。 2012 年 7 月に、「博報堂ケトル」の代表・嶋浩一郎さんと、下北沢で「B&B」と いう書店を共同で始めました。「B&B」は基本的に新刊書店ですが、大きく特徴が 3 つあります。まず、有料のトークイベントを毎晩やること。基本的に著者や編集
  • 12. 11特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号 者の方をお呼びしています。 2 つ目に、ビールを中心としたドリンクの販売です。「B&B」という店名は「ブッ ク&ビア」の略です。昼間から店内でビールを飲みながら本を選べる新刊書店な んです。3 つ目は、家具の販売です。本棚、平台に使っているテーブル、お客さん が座る椅子や照明といった店内の什器は、目黒区にある KONTRAST(コントラス ト)というヴィンテージの北欧家具屋さんと提携して販売しています。 「B&B」のコンセプトは「これからの街の本屋」なんですが、なぜこういうこと をやっているかというと、書店経営と相乗効果のある ビジネスをすることで、健 全な経営の状態をつくっているわけです。新刊書店は今や成り立ちにくいビジネ スなんですね。新規参入も僕たちが数年ぶりといわれるくらいですから、ほとん ど終わったビジネスだといっていいんです。 新刊書店は他の小売と違って、簡単にいうと経営努力がしにくい。飲食店であ れば、安い食材を使って価格を下げるとか、逆に クオリティを上げて価格を上げ るとか、近隣にない業態に転換するとか、経営努力のしようがたくさんある。と ころが新刊書店は本の価格も均一だし、商品も同じです。 「良い棚をつくれば、お客さんが来る」というのは理想ですが、2 倍の時間をか けて棚づくりをしたら 2 倍売れるかというと、現実はそういかない。人件費を カットして、むしろ棚をつくることから遠ざかる方向にいってしまう。ニワトリ と卵の関係みたいな話なんですけど、「棚をつくる」ことに力をいれるには売上が 必要で、それはすごく長期的な話で基本的には難しい。 でも僕は、きちんとセレクトされた本屋さんが街にあるべきだと思うし、「街 の本屋」が大好きなので、それが成り立つ方法を現場で実践しているわけです (「LRG」5 号/ 2013 年秋号 特別寄稿所収「本をめぐる冒険」参照)。 「未来の図書館を作るとは」を読んで ――ひととおり話を伺っただけでも、みなさんのスタンスが違っていて面白いと 思います。では、長尾真さんの「未来の図書館を作るとは」を読んだ感想を伺えま すか。 吉本:図書館の世界から見たときのことを、すごく網羅的にまとめられているな、 というのが率直な感想です。長尾さんは当時、国立国会図書館長でしたから、も
  • 13. 12 特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号 のすごく突飛な話でもないし、極論でもない。ただ、もともと僕自身がプログラ マーという立場で図書館に出会ってきたので、「図書館」というよりも、どちらか というと「情報」という背景をもっている。だから長尾さんがここで仰られてい る「分類」の難しさという話などは、実は最初、あまりしっくりこなかったんです。 なぜ図書館がこういうところにこだわるのかと。読み込んでいくと、分かるとこ ろもあるのですが。 河村:私も網羅的な印象を受けました 。図書館の「中の人」としてはありえない ぐらい、広く見ている人だなと。全般としては、すごくバランスを感じるのです が、ところどころ「そうだね」と思うところと、どうしてもあまり肯定的になれな い部分とがありました。 実は、あまり肯定的になれない部分というのが、どちらかというと情報工学の 部分なんです。ご自身の専門分野であるところが、20 年前の幻想を引きずってい るような気配をちょっと感じてしまって。例えば「分類」の部分などは、長尾さん 自身、すでに機能しないことを認めつつも、その方法論の中で次の回答を探して いる感じが気になるんです。 その他の部分だと、「図書館」という言葉を長尾さん自身、あまり固定的に使っ ていない。出てくる文脈ごとに、全然意味が違うんですよ。でもそれはすごく面 白くて。「図書館」と「書店」もあまり区別をしていないし、後半の方で、例えば「書 店はもっとカフェのようになるべきだ」とか、まさに「B&B」がされているような 話が出てくる(笑)。 私も、ここ「下北沢オープンソースカフェ」というコワーキングスペースを運 営しているのですが、これも長尾さんの文脈に何度も出てくることを、「公共図書 館ではない場所」でやっている事例かもしれない。彼が「公共図書館でやるべき だ」と言ったり、「街の書店でやるべきだ」と言っていることを、期せずしてここ でやっているっていう。 今、コワーキングスペースは民間の公民館みたいな機能をもちつつある。長尾 さんのいう intellectual commons(「LRG」創刊号/ 2012 年秋号「未来の図書館を 作るとは」P27 参照)が、たぶん街の中のコワーキングスペースだったり、「B&B」 みたいな本屋さんのかたちで生まれてきているんですね。そういった機能が公共 図書館の中に生まれるべきなのかどうかは、まだよく分からないんですが、社会
  • 14. 13特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号 の要請として、いま、そういう場所がどんどん生まれている気がして、そこの文 脈はすごくしっくりきます。 ――分かりました。では高橋さん、いかがですか。 高橋:言葉をどう選ぼうかと考えていたんですが、どちらかというと不満が残る というか、もの足りないところがありました。というのも長尾館長といえば、「長 尾ビジョン」じゃないですか。「長尾ビジョン」が出たとき、みんながびっくりし たわけです。「えっ、図書館の中でも、国立国会図書館がこれをやるの?」と。し かも古典や著作権の保護期間が切れたものだけじゃなく、あらゆる本のデータを 売ってもいいみたいな感じで。それに比べると、これまでの集大成としてはこう いうかたちになるのかなと思いつつも、さきほど内沼さんが仰った「これからの 街の本屋」ではないですが、「これからの図書館」という意味では、あまり「これ から」感がない、というのが正直な感想でした。 ――「長尾ビジョン」が出たときにくらべて、網羅的にまとめられている今回の テキストでは、その勢いがダウンしてしまったという感じですか。 高橋:トーンダウンというよりは、それと同じ話にとどまっていて、「その先」に あまり行ってない印象ですね。もっと 100 年後とか、1000 年後の未来……そこま でいかなくてもいいですけど(笑)。とにかく、人間の図書館と「知」は長期的にど うなるのかといった話を、最後だから少し期待したんですが、あまりそういう感 じではなく、普通にまとまっていたという印象です。 内沼:鵜呑みにするのはよくないですけれど、「これからの図書館」についての一 つの見方を、ひとりの人間が網羅的に考えたことがまとまっているテキストです よね。現場の図書館員や書店員は、こんなことまで考えが及んでいないと思うの で、読んでおくとよいものの一つだと思いました。 ただ、いろんなかたちで本の仕事をしてきて、その中で培ってきた僕にとって の「本」の捉え方と、長尾さんにとっての「本」の捉え方が、そもそもかなり違う んだろうなと感じた。簡単に言うと、長尾さんにとってはその「中身」、つまりそ
  • 15. 14 特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号 「B&B」 店内奥スペースはレイアウトを変更し、イベント会場にもなる  撮影=岡本真 「B&B」 Tシャツやバックなどオリジナルアイテムも用意している  撮影=岡本真
  • 16. 15特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号 「B&B」 店内のインテリアにはすべてタグがつけられて、商品として販売される  撮影=岡本真 「B&B」 店内ではビールを片手に、本棚の本を手にすることができる  写真提供=B&B
  • 17. 16 特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号 「下北沢オープンソースカフェ」 図書室としても作業ができるスペース      写真提供(見開きとも)=リブライズ 「下北沢オープンソースカフェ」 カフェ機能の他、プレゼンや雑談などを通して、人と交流ができる多目的スペース
  • 18. 17特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号 「リブライズ」は、本棚から始まるコミュニケーションを身軽に実現する 「下北沢オープンソースカフェ」 本棚にはウェブ、IT系の本を中心にした専門書が、小分類されて置かれている
  • 19. 18 特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号 こに「書かれていること」が「本」なんだと思うんです。大前提として「本はこれ から電子化する、デジタルの方がいいよね」というのがありますよね? ――「デジタルの方がいいよね」とまでは仰っていませんが、電子化が進むとい うのは、前提としてありますね。 内沼:そうですよね。かなりの「本」が電子になることを前提に書かれています。 しかもそのときの「本」は、「そこに書かれている中身」のことで、だからこそ検索 対象になったり、情報工学的に整理されていたり、図書館だから当たり前ですが、 それらは学問や研究のための資料になる。 でも僕が扱ってきた本は、「中身」であると同時に「物」あるいは「プロダクト」 でもあるんです。多くの人にとって本というのは、「かわいいから欲しい」とか、 「本棚に置きたいから欲しい」とか、そういうものでもあるんですよね。その現場 に僕はずっと立ち会ってきたので、そういう本の捉え方とはだいぶ違う印象です。 研究者だけではなく、一般の人も図書館に行くわけですが、そこでどんな本を、 どのように手に取るかということを考えるにあたって、本の装丁とか、紙の出触 りとか、物としての存在感みたいなものは無視できません。そういうところを含 めて、「本」の捉え方が限定的なテキストだとは感じました。 例えば、このあいだツイッターで、ある図書館員の人が「今日は暑いですね。図 書館は涼しいです。だから図書館に行こう」みたいなことをつぶやいていたんで す(笑)。「涼しいから図書館に行こう」というのは、長尾さんの仰る図書館とは けっこう違いますね。 『ブックビジネス 2.0̶̶ウェブ時代の新しい本の生態系』(実業之日本社、 2010 年)でも橋本大也さんが「図書館=教会」論、つまり「図書館は現代の教会だ」 と言っています。街で行く場所がない人とか、時間を持て余している人たちが自 由に時間を過ごせる場所が今は図書館ぐらいしかない、という話だったと思い ます。この「図書館は教会である」という前提のもとで言うと、「涼しいからおい で」っていうような図書館のあり方もあるんじゃないか。 そこからしても、長尾さんのテキストはどうしても、本あるいは図書館の特定 のあり方に即して書かれている感じがしてしまうんです。 ――司会という立場を離れて、少しだけ言わせてください。僕は長尾さんのテキ
  • 20. 19特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号 ストは、必ずしも網羅的ではないと思っているんです。むしろテーマが限定され たテキストで、読む方が補完して読む必要があると思いました。つまりこのテキ ストは、長尾さんの研究者としてのキャリアの中では「総論」ですが、「図書館」や 「本屋」の未来、あるいは「知」の世界の未来についての総論ではなく、読者がその 部分は補完して読むことを期待されたテキストだと思うんです。 例えば「図書館」と「研究」との関係も、固定的なものではないわけです。『知は いかにして「再発明」されたか――アレキサンドリア図書館からインターネット まで』(日経 BP 社、2010 年)という、何が「知」の制度として機能してきたかを 人類史の時代ごとに綴った本があります。これによると、古代アレキサンドリア の図書館から始まって、中世の修道院、大学、「文字の共和国」、専門分野、実験室 ……というふうに「知」を支える制度は、時代ごとに変わっていく。ちなみに実験 室が機能していたのは 1970 年くらいまでで、それ以降がこの本では「インター ネットへ」とされている。 この「研究室からインターネットへ」へのシフトは、これまでとはスケールが 桁違いだと僕は思うんです。「知識」を扱う情報と、知識とは関係のない大衆レベ ルでの情報は、インターネット以前はあきらかに別のものとされていた。でもイ ンターネット以降、「知識」と「情報」のあいだに差をつけることに意味がなくなっ てきている。もちろん厳密にいえば「知識」というものは体系化されていなけれ ばならないわけですが、長尾さんが研究をなさってきた時期が、まさにその「過 渡期」の時代であることに考慮して読む必要があるのではないかと思いました。 本とは「生むときに苦しんだもの」のこと ――ところで、みなさんは「本」というものを、ご自身の活動の中でどのようにと らえていますか? 「電子書籍」も含めてけっこうですが。 河村:「一定量の知識が集まっているもの」でしょうか。文脈によって自分自身 でも使い分けているから、あまり明確な定義はないですね。モノとしての実体が なくてはいけないということもないし、ホームページを「これは本なんだ」と言 本の定義を考える
  • 21. 20 特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号 いたい人がいたら、それにも納得感があるし。さすがにツイッターの 140 文字を、 「これは本です」と言われたら、「んん∼」っていう感覚はありますが(笑)。でも、 そこにある程度の蘊蓄などが詰まっていたら、「本」だと言われてもしょうがない かなと。 「リブライズ」はリアルな本を対象にしているけれど、私自身は電子書籍を発行 するウェブサービスも別にやっているので、そのあたりは両方にこだわりがある ような、両方ともこだわりがないような(笑)。 吉本:「カーリル」の中では、本をどう扱っているかははっきりしています。まず、 「図書館がそれを本として扱っている」という条件がある。例えば図書館の分類か らいえば、「雑誌」と「本」は違うわけです。個人的には正直、そこのあたりはあま り理解していないんですが。自分自身としては、図書館でいう「本」よりは、たぶ んもうちょっと広いところでとらえてはいるのですが、「カーリル」というサービ スは、どうしてもそこにひきずられてしまう。 ――「カーリル」を抜きにしていうと? 吉本:「本というのは、生むときに苦しんだもの」のことなんじゃないかと。 一同:おお∼! 吉本:締切とかがあって、書き手が苦しんで生んだものが「本」じゃないかと。ツ イッターでもブログでも、「本にしよう」と言った瞬間、生みの苦しみが出るんで すよ(笑)。ちゃんと編集しなきゃいけない、みたいな。だから、たとえブログで も「どうしよう、毎週出さなきゃ」というストレスを感じながら書いていたら、そ れは「本」みたいな感じもする。それが僕の個人的な感覚ですね。 河村:私も一つ追加していいですか? 「リブライズ」をやっている中で、だんだ んはっきりしてきたんですが、「本」だったり「本棚」が、誰かの知識の座標になっ ていることが多いんですよ。それは文学書でも、大衆小説でも、学術書でもそう ですが、何かの話をするとき本や本棚が、その知識にポイントをおけるアンカー
  • 22. 21特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号 (錨)になっているケースが多いんです。たぶん、生みの苦しみを経たものは、そ うなる確率が高いと思うんですね。例えば長尾さんのこの文章も、私は PDF で読 みましたが、これはアンカーだと思うんですよ。 高橋:本にも一般の書店で売っている本と、同人誌みたいなものがあるでしょ う。自分の中では、両者はだいぶ違うものだという区別があって、同人誌はあま り「本」とは言わないんです。でも、電子になるとあまりその区別がなくなるんで すよ(笑)。 ――なるほど。それはなぜですか? 高橋:なぜなんですかね。その違いがどこからくるのか、自分でもあまり分かっ てないのですが。結果論として、たまたまできているものが違うだけかもしれま せんが……。 ――「達人出版会」は、電子書籍専門ですよね。今の話からすると、紙だとそうい う差が出てしまうけれど、電子では出ないというあたりを意識したりしません か? 高橋:ええ、だからうちで出しているものが「同人誌」なのか「同人誌じゃない書 籍」なのか、あまりよく分からない(笑)。それはどこかで区切れるものではなくて、 「同人誌っぽいもの」と「同人誌っぽくないもの」が、「本」の中でなめらかに混ざっ ているみたいな感じがします。 内沼:「社会を変えたい」とか「誰かに強い影響を与えたい」という使命感で書か れたものが、例えば「同人誌じゃないもの」で、そんなに生みの苦しみを経てな い、自分が書きたいものを書いたものが「同人誌」というニュアンスなのですか ね。ひょっとしたら「苦しんでない」感じが「同人誌っぽさ」なのかもしれませんね。 もちろん「苦しんでいる同人誌」もあると思いますが(笑)。 吉本:生みの苦しみの原点が何かというと、「固定化」みたいなところにあるので しょうか。ようするに、あとで直せるというのは、苦しみに対するかなりの緩和
  • 23. 22 特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号 剤になっているのかもしれない。印刷するとなると、うっかり間違ったことを書 いたら直せない。そのせいで世の中が変わっちゃうって(笑)。もうちょっとライ トに考えても、ここで間違えると、直すためにはさらにお金が飛んでいく、とい うプレッシャーもあります。そこが生みの苦しみのもとですよね。 ―― 電子だと「生みの苦しみ」はないですか? 高橋:紙に比べると、ほとんどないですね。紙の本は、書き手としてしか関わっ たことがありませんが、書く方のプレッシャーは紙の方がぜんぜん大変です(笑)。 吉本:紙の新聞とウェブニュースの関係に近いのかもしれない……。 内沼:「本」をどう定義するかというのは、今はかなり個人の考え方によって違っ てきていると思うんです。その中でも「本」とは「生みの苦しみである」という定 義は、個人的にはかなりいい線をいってる。今まで聞いた中でも、相当しっくり きたんですよ。 吉本:ほんとですか?(笑)。 内沼:ただ、それさえも 100%の定義かというと、きっとそうではない。例えば、 誰かが居酒屋で、何も苦しむことなく適当にしゃべったことを文字に起こして出 版されたような本が、世の中には存在するでしょう? これは「本じゃない」の かというと、違うという人もいるかもしれないけど、全員が「本じゃない」とはい わないと思うんですよね。生むときに全く苦しんでないものも、それが印刷され て紙に綴じられて 、本屋さんが売ったり、図書館が所蔵したりするという側面で は「本」なんだと思う。 今ちょうど、『本の逆襲』(座談会当時。2013 年 12 月に刊行)というタイトルの 本を書いているんです。たぶん僕も、何かを「網羅しよう」と思って書いているん ですね。「本」というものがいま、どういう状況にあって、これから本の仕事をす る人たちは、どういう仕事をすることになるのかということを書いている。この 本の中でも、やっぱり本の定義について話をするんですよ。でも最後は自分の中
  • 24. 23特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号 でも、定義ができないんですね。 ツイッターの 140 文字を「本」だと言う人がいてもいいし、今こうやって喋っ ている時点で、もうこれが「本」なんだよね、みたいなことを言うのもありだと思 うんです。リアルタイムで取られている音声データが .mp3 の音声形式になって、 その音声を誰かが書き起こして .txt のファイルになったり、それをレイアウトし た .pdf のファイルになった瞬間に、「これは本だ」って言う人がかなりいるわけ でしょう? でも、その中身が「本」ならば、同じようなファイルとして並ぶわけ だから、.mp3 の時点で「本」だということにしてもいいじゃないか、というよう なことをその本で書いているんです。 「本の定義」はわりとどうでもよくて、それぞれ本に関わる人が自分なりに 「本ってこういうものだよね」と思って行動すればいいと思っています。「カーリ ル」「リブライズ」「達人出版会」、それぞれにとっての「本」があるように、長尾さ んにとっても「本」はこういうものだ、という話の流れでここまで来たのかなと いう気がしています。 河村:今の話をふまえて、もういちど長尾さんのテキストを読み直してみると、 長尾さんは、「映画は本だ」と思っているんですよ。全ての情報体は本だと思って いるわけですから、彼の中では「本」の概念が「情報」と、ほぼ一致しているんじゃ ないのかと思います。 ――そうですね。だから定義づけというよりは、どちらの側から考えるか、とい う問題なんだと思います。長尾さんは、「知識」とか「情報」から本を考えている。 それらのアウトプットとして「本」というかたちがあるわけです。でも本を書く 人たちからすると、「生みの苦しみ」の方が先なわけです(笑)。 内沼:そうだと思いますね。「生みの苦しみ」という定義がかなりいいなと思った のは、ふわっとした定義ではあるけれど、一本の数直線上に「苦しい」と「苦しく ない」があって、「この線より苦しんだものが本」だと、それぞれが決められると ころがいいと思うんです。例えばウィキペディアで「本とは何か」を調べると、す でに「冊子」という形態の話をしているんですよね。でもそうすると、企業広告の パンフレットみたいなのも「本」だということになるし、実際そう思う人もいる わけです。だけどそこで切っちゃうと、0 か1か、これは本だけどこれは本じゃな
  • 25. 24 特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号 い、みたいな話になる。それが「苦しい」「苦しくない」という線だと、どこでどう 切るかは個人のさじ加減になる。だからいいなあって(笑)。 あと『WIRED』の創刊編集長のケヴィン・ケリーが、「『本』は物体のことではない。 それは持続して展開される論点やナラティヴだ」と言っていますが、これも悪く ない定義だと思います。 ――ケヴィン・ケリーの著作選集が、「達人出版会」からフリーで出ています。こ の本は技術書ではなくて、一種のマニフェストですよね。長尾さんのテキストは、 「工学者が書いたマニフェスト」だと思うので、同じように「達人出版会」から出 ることが感慨深いです。 デジタルならではの「生みの苦しみ」 内沼:さきほどのケヴィン・ケリーの「本とは持続して展開される論点やナラティ ヴである」という定義は、ウィキペディアの「本とは冊子である」という定義とは 別の話で、「本とは生みの苦しみである」という定義に似ている気がします。そも そも生むのが苦しくなかったら、論点とかナラティヴが持続しないと思うんです よ。 ――ただケヴィン・ケリーの言葉だと、紙の本かどうかという話は抜きになるん ですよね。紙だからこそ「生みの苦しみ」があるとしたら……ああ、こっちも紙か 電子かは関係ないのか(笑)。 吉本:紙の方が「生みの苦しみ」がより強制的に……。 内沼:そう。比較的に起こりやすい、というだけの話で(笑)。 河村:それに、紙の方が手触りやレイアウトによって、行間に込められた「苦しみ」 が分かりやすいんですよ。デジタルの場合は全てがバイトの情報になってしまう から、コンテンツの中身ぐらいでしか勝負ができない。でも、それだと素人目に は、どう苦しんでいるのかが分からないんです。 高橋:紙の本という「モノ」をつくること自体、けっこう大変ですよね。物質を組
  • 26. 25特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号 み上げる作業は、電子の場合のように自動化してパーッとつくるかたちには絶対 ならない。だからこそ、誰かの意思やコストがそこにかかってくるわけです。 内沼:吉本さんが仰る「紙の方が、苦しみが強制的」という話は、たぶんシンプル に締切の話ですよね(笑)。つまり、そこでコンテンツが「固定される」か「固定さ れない」かの違いでしかない。「固定される」というのはやり直しが利かないので、 やり直しが利かないから、本気を出さなきゃいけない。本気を出さなきゃいけな いから苦しい、という話かなのかと思います。 吉本:そういう意味では、電子書籍はまだいろんな点で統合されていないから、 紙の本を出すのと同じようなことが起きます。 内沼:そう、電子書籍もまあまあ苦しいんです(笑)。ただ、苦しさに違いがある。 ――「達人出版会」で電子出版された「未来の図書館を作るとは」の付録に収録さ れた岡本さんとの対談の中で長尾さんは、紙の本が粛々と電子化されている現在 の電子書籍や電子図書館は「第一ステップ」にすぎないと仰っています。「第二ス テップ」では、それらがフラットなネットワーク構造になる。「第三ステップ」で はさらに進んで、ある視点をもって「第二ステップ」でできたネットワークの中 に立ったとき、自分の関心の文脈に特化された部分的なネットワークが浮かび上 がってくる。そこまでをシステム側で実現できないだろうか、と仰っていました ね。 今はまだ「第一ステップ」なので、電子書籍の「生みの苦しみ」は紙の本に比べ ると楽ですが、これからはデジタルならではの、新しい「生みの苦しみ」が生まれ てくるのではないでしょうか。 吉本:新しい「生みの苦しみ」ってなんでしょうね。人は楽な方に行きたいです から、なくてもいいなら締め切りがない方を選ぶ(笑)。生きている限り、苦しみ のない方に行くのは否定できないわけです。実はプログラマーが抱えている問題 も、物書きの人と一緒なんですよ。今まで僕が関わってきたファームウェアや製 品のプログラムは、いったん出してしまったら回収できない。するなら全部回収 するしかないわけです。そういう点では本と一緒だったのが、ウェブサービスに
  • 27. 26 特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号 なった瞬間、全く違ってきた。 河村:そういう意味では、僕らはすでに新しい「生みの苦しみ」を味わっている のかもしれません。誰からも強制されてないのに毎日「リブライズ」を開発して いて、締切状態がずっと続いている。紙の本だと、締切が終わったときに解放さ れる爽快感があるんですが、開発にはそれもない(笑)。 吉本:インターネットによる創造行為が、本だけじゃなくてソフトウェアやサー ビスといった業界において、そのビジネスを変化させましたよね。今までのビジ ネスは、「箱」をつくってそこに商品を並べて、こういう店舗をつくれば売れる ……という発想でやってきたけれど、それでは済まなくなってきた。 河村:イベントのあり方も、完全に変わってきました。先日、駅前でファッショ ンショーがあったんです。100 人くらいの女の子が、下北沢の地元のお店の服を 着て歩くんですが、その観客は基本的に、みんなファッションショーに出る女の 子たちの友だちなんです。今までは「イベント」だけのパッケージをつくってい ましたが、今はもうそこが崩れている。インターネット上だけじゃなく現実のイ ベントでも、全般的にそういう揺り戻しが来ているのではないでしょうか。 固定化とコストの関係 ――イベントの話は、「場所」の話でもありますね。ここまでは紙の本や電子書籍 をめぐる話でしたが、図書館という「場所」の方に広げていきましょうか。河村さ んと内沼さんは、それぞれ自分たちの場所(お店)を構えていらっしゃいます。 吉本さんと高橋さんは、特に場所を構えておられない。本や電子書籍、電子図書 館がもっている意味は、場所性と何か関係があるのでしょうか。 河村:長尾さんのテキストの最初の方に、「思想の形成」というくだりがあります よね。そこで「新しい創造のための議論は言葉の世界だけでなく、それを発信す る人の全人格が相手に伝わることが大切」だと仰られています。それは設定され 「場所」のもつ意味
  • 28. 27特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号 た会議のような場だけでなく、むしろ普通のコミュニケーションにおいて、最も よく機能する。だからこそ、そうした場所に人が集まるんだと長尾さんは書いて おられる。ここにはすごく賛成なんです。 僕は日々の仕事の中で、雑談のようなところから生れてくる新しいものが好き なんです。「下北沢オープンソースカフェ」も、そのためにやっている。会議も新 しい創造がうまれる一つのきっかけにはなりますが、そこで会うだけだと、お互 いの関係がまだキレイすぎる。もっと「普段着の状態」になったところから、面白 いものが出てくるんですよ。 ――つまり、ここは「一時的なイベントをするための場所」というより、「持続性 をもった場所」という考えなんですね。 河村:そうです。むしろイベントは副次効果というか、サービスなんです。人が 集まると、なぜかみんなイベントをやりたがる(笑)。だからイベントもやります が、それが目的ではない。むしろ人が集まる循環をつくり出すためのキーとして、 イベントをやっているんです。 内沼:「B&B」の場合も、かなり似ていますね。毎日しているイベントは「本」の編 集と同じで、誰と誰をどういうふうにしゃべらせたら、面白いコミュニケーショ ンや新しい「知」が生まれるのか、それをつねに考えています。僕たちが「街の本 屋」というときにイメージしているのは、街の中で「知的好奇心の渦の中心」にな るような場所なんです。 この話をあえて図書館の話につなげると、長尾さんもお書きになっているとお り、特に国立国会図書館では「すべての知を集める」ことを理想とされています よね? でも、現在において「すべての知」と言ったとき、どこまでを指すんで しょうか。ウェブサイトや電子書籍の知も集めようとしていますが、それはきり がないから、僕はやめた方がいいと思っているんです。例えば、たまたま出会っ た人同士の会話に「知」があったら、理屈上、それも収集しないといけないわけで す。 「本」の価値は「書かれたこと」が全てではなくて、それを読者がどう受け取って、 頭の中でどう理解し、どう考えるかによって違ってくるし、そういうことが生ま れてくるのが、本の良さでもある。でも「どう読むか」は人によって違うし、他者
  • 29. 28 特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号 と読み方がぶつかったときに、そこから新しい方向に発展したりする。こうした ことを含めた全てが「本」だとすると、「知」はいろんなところに渦巻いている。い ま、話しているこの座談会も、突き詰めれば図書館の収集対象になってしまう。 ――高橋さんは電子書籍を販売する立場からみて、場所性についてはどう考えま すか? 例えば米光一成(1964 年∼。電子書籍にも積極的に取り組むゲームデザ イナー、インターフェイスデザイナー)さんが、以前「電書フリマ」という「実際 の場所で電子書籍だけを売る」というイベントをなさっていますよね。 高橋:場所ってコストが高いじゃないですか(笑)。電子書籍の場合、紙の本より 儲からないというか、あまり利益をとらないでやっていきましょうという方向な んです。しかもうちの方針としては、紙だと出せないようなものを、電子で出そ うという発想をしています。 なぜ紙で出せないかというと、ようするに売れないからです。紙の本だと、 2,000 ∼ 3,000 部ぐらい刷らないと採算がたちませんが、電子なら 100 ∼ 200 部 売って利益を出すといったモデルがつくれるわけです。それをするには、とにか くコストを削らないといけない……という話になったとき、コスト的に場所をも つのは難しい部分があります。場所が嫌いというのではなくて、「リアルなもの」 というのはとにかく高い(笑)。 河村:それに、あえて「場所」でやることの意味が、電子書籍という文脈の中では よく分からないですよね。 高橋:そうですね。やってみたら面白そうな感じではあるんですが。 河村:「達人出版会」の本を限定部数でオンデマンド印刷して、「下北沢オープン ソースカフェ」に置かせてもらうことができたら、買ってくれる人はけっこうい るはずです。でも、普通の本屋で売ってもダメだと思うんです(笑)。ここは少し 特殊な人たちが集まる場所なので、そういう特定のターゲットには響く。ただ、 そういう人たちが集まるリアルな場所をつくるにはコストがかかるので、半端な 気持ちではできない。
  • 30. 29特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号 内沼:いまの話はすごく面白い。つまり「家賃は高い」という話と、「印刷代は高い」 という話が一緒だということですよね(笑)。「電子書籍は、印刷するほどのもの でないもの」という話は、ある場所を維持してそこで語られてたこと、つまり「知 として収集する必要があるかどうか分からないものまで、全て記録しておくべき なのか」という話と似ている。記録しておきたくなるけれど、実際は、全てを記録 することはできない。ましてや記録した瞬間に、国立国会図書館の収集対象にな るとしたら……。 河村:固定化には、つねにコストがかかるんですよ。そういう意味では、電子書 籍はまだコストが低い方にある。でも、今しゃべっているこの座談会を全て文字 に起こすかどうかは、内容によりますよね(笑)。つまり、その部分にどのくらい コストをかけるかという話が、固定化するかどうかの判断にかかってくる。「生み の苦しみ」とは別に、コストをどうするかという問題がある。 内沼:そうです。だから全部は収集できない。紙に印刷されたものだって、実際、 全部は収集できていないわけです。でも、それを分かったうえでも、理想として は「全部」と言わなければならない。でも、それだと図書館の人は辛いんじゃない かな。 図書館はどこまでを集めるべきか 河村:国立国会図書館の場合は、「全部を収集する」という理想を掲げて行ける ところまで行くのは分かるんです。でも、街の図書館にまで、その理想は求めら れない。蔵書にある程度の網羅性が求められる半面、置ける冊数が限られる中で、 司書さんは選書をしなければならないわけです。 内沼:長尾さんが書かれているような未来として、リアルな現場で起こってい る「知」をすべて収録するとしたら、その尖兵としての役割を、地域の図書館が担 うしかない。世田谷区の図書館の人が「B&B」とかに来て、イベントでの会話とか、 誰かがしゃべっていたら、「いまちょっといいことを話していましたね。録音させ てください」と言って、会話を録音して帰る(笑)。さらにそれを文字に起こして、 とりあえず電子書籍にする……というのはファンタジーですが、ありうる気はし ますね。
  • 31. 30 特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号 吉本:新聞社の地方支社は、まさにそういうことをやっているわけですよね。 内沼:「下北沢経済新聞」のような、「みんなの経済新聞ネットワーク」(地域密着 型のインターネット新聞。渋谷で誕生し、国内外に次々とネットワークを広げて いる)も、今までは新聞記事にならなかったような地域の話題、例えば近所に新 しいお店ができましたといったちょっとしたことを新聞記事ふうに書いてニュー スにしているわけです。 河村:そうだとすると、図書館自身が「知」を固定化する義務を負うかどうかが ポイントかもしれないですね。「みん経」は、今まで固定化されてこなかったもの をニュースとして固定化している。それはとても面白いと思いますが、街の図書 館がそれをやるべきかというと、私にはとてもそうは思えないんですよね。 ――「固定化」というのは、電子であれ紙であれ、なんらかの記録に残すってこと ですか? 河村:今までは「記録に残す」という作業が一段階しかなかったはずなのに、今 は二段階になっているんですよ。「みん経」が街の中で起きていることを記事に するような作業が、最初の固定。次にそれだけだと散逸するので、例えば国立国 会図書館に一つのアーカイブとして遺すといった二段階目の固定化がある。でも、 「みん経」の記事はすでにインターネットに上がってるわけだから、インターネッ ト自体を「ライブラリー」だと言えばいいんですよね。 内沼:実際、国立国会図書館が世の中にあるすべての「知」を集めるよりも、本を はじめ全てをインターネットに上げてしまって、「インターネットが世界の図書 館です」と言ってそれで終わりの方が楽かもしれない(笑)。 ――アメリカではインターネット・アーカイブ(インターネット上に公開された Web ページを保存し、サーバー上から削除されたコンテンツも閲覧できるサー ビスの名称)が、ウェブページだけでなく、映像・音声・ソフトウェア・テレビ・ 紙の本などの収集を、本気で始めていますね。国立国会図書館もどこまでできる か分からないですが、インターネットの資料も収集し始めている。さらに文化庁
  • 32. 31特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号 との間で、映像やゲームといった、いわゆるメディア芸術までも収集の対象をひ ろげるという話も決まっています。 ところで、「カーリル」はリアルな図書館に足りない部分のサービスを、図書館 をネットワークでつなぐことで埋めるところから生まれたわけです。また新事業 として、「カーリルタッチ」という図書館の「書棚」を支援するサービスを始めら れていますが、吉本さんは「場所」と本や情報の関係を、どう考えておられます か? 吉本:図書館との仕事をしていると、正直、図書館がもっているのは「場所」しか ないんだということがよく分かります。本に対する力なんてもっていないし、「本 のデータ」すら、今は自分の力ではなんともならない。図書館がいちばん自由に できることは、実はシステムとはあまり関係ないことなんです。例えば、本棚に 本をどう並べるかは、図書館の側で自由にできる。でも、本を置く場所を変える こと自体が、今は相当に大変なことになっている。なぜかというと、最初に図書 館を建てたときの並べ方で固定化してしまうんですよ。おかしな話だと思うんで すが、「背」を見せて並べていた本を「面見せ」にするだけでも一大事なんです。 「カーリルタッチ」という新しいサービスを始めたのは、僕たちが現場に行ける ことが大きかった。図書館のことをさらに知るには、図書館ともっと絡まないと ならない。でも正直、その先に何があるかはよく分かっていなかったんです。た だ、「カーリル」の最初のコンセプトである「ウェブと図書館をつなぐ」のうち、「図 書館からウェブにつなぐ」方はやっていなかった。それをつくれたら、図書館の 人ともっといろいろなことが一緒にできるんじゃないかと思いました。 これまで図書館と「カーリル」は役割分担がはっきりしていて、なかなか何か を一緒にやることがなかった。 最近、図書館の人には「カーリルは図書館に人を 送客するサービスです」と説明しています。 立ち位置としては「ぐるなび」と一 緒なんですよ(笑)。 河村:先日、「カーリル」で本を探して図書館に借りに行こうとして感じたことが あるんです。今、ここから最寄りの代田図書館が改築工事で閉館しているので(座 談会当時。2014 年 4 月にリニューアルオープン)、しばらく電車を使わないと図 書館に行けないんです。それで「カーリル」で検索したら図書館がずらっと出て きて、どこに行くかすごく迷ってしまった。図書館ごとの個性がないからなんで
  • 33. 32 特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号 すね。今までは距離でしか選んでこなかったんですが、それはなんだかもったい ないなと。 図書館の設置場所は、区内における配置の網羅性を維持するためにすごく苦労し て選ばれている。でも同じ区内に十何館も図書館があって、配置の網羅性は満た されているのですから、各館が個性的な選書をして、区全体で網羅性が保たれれ ばいいんじゃないか。さらにいえば、選書の網羅性は東京都全体で保たれていれ ばいい。「カーリル」ができたおかげで、そういうことが言えるようになった気が するんです。 内沼:さきほどの話とつなげると、それぞれの館で生まれた「読み」みたいなも のが、それぞれの館で記録されていたら面白いですよね。長尾さんが仰るように 「知」とか「データ」がインターネット上ですべて共有されるとしたら、地域にあ るリアルな図書館の財産は、突き詰めればそこにある情報ではなくて、むしろ周 りにある「環境」や周辺に住んでいる「人」だということになります。 完全に未来の話になってしまうけれど、例えば、ある本を読んでこう考えた人 がいる。その人はどうやら世田谷区にある図書館の近くに住んでいて、そこでそ の本を読んだらしい。だったら自分も図書館に行って、その人とちょっと話をし てみたい、ということで出会った二人が話したことが、またインターネット上で 共有される……みたいな。 河村:「下北沢オープンソースカフェ」は、実際にそういう場を目指してるところ があります。基本的に、どんな人でもウェルカムなんですが、プログラムやオー プンソースに関連するテーマの本を本棚に置くことで、来る人を特定の知識層に 固定化しているんです。本棚にはそういう使い方もあるのかな、ということが一 つ。それからもう一つ、いまの話を聞いていて思ったのは、図書館には住民から のリクエストというものが反映されますよね。街の図書館には、周辺住民を代表 するような知識があるといい。 吉本:いま、まさにそれを図書館の人と話していて、「カーリル」でやりたいこと のリストに入っています。図書館の側も、住民が何に興味をもっているのかに注 目し始めていますが、正直な話、そういうマーケティング的なことが図書館にい
  • 34. 33特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号 るとよく分からないんです。 河村:いままでは、その部分で住民に迎合しすぎると、図書館に置かれる本の網 羅性が失われてしまって、あまりよくないかたちだったかもしれない。でも逆に、 司書の人が「網羅性がある」と信じて選んでくれた本が、いつの間にか偏ったも のになっていないとも限らない。そこの部分の担保はとりようがない以上、どこ の館も同じような平均値を求めるのではなくて、それぞれが選書すればいいと思 います。最終的に、それがインターネット経由で 網羅性やバランスがとれていれ ば、その方が自然な感じがするんです。 本屋も図書館もない地域 ――ここまでの話は、東京のような、国立国会図書館があり、都立中央図書館も あり、公共図書館もたくさんもあって、「立川まんがぱーく」もできて、そして「リ ブライズ」がやっている「下北沢オープンソースカフェ」もあり、「B&B」をはじめ とするユニークな本屋さんもたくさんある環境だから成り立つ部分もありました よね。 けれども地方となると状況は全然違ってきます。今、離島の本屋さんの本(『離 島の本屋∼ 22 の島で「本屋」の灯りをともす人々』朴順梨、ころから 、2013 年) が出ていますけれど、離島では図書館さえまともになくて、本屋さんが図書館の 役割をしていることも多々ある。もっと厳しいところだと、本屋さえもありませ ん。そういう状況の中で、図書館のこと、あるいはもう少し広く「パブリック」と いうことを考えてみたいんです。 地方でも、東北では震災というたいへん不幸なことがあったために、現地の人 たちが他の地方から集まってきた人と一緒に動き始めて、新しいコミュニティが 生まれているところもありますが、おそらく、そうした動きが起きていない、ま た起きていても可視化されない、といったところがたくさんあると思うんです。 電子書籍とか電子図書館がもっている可能性は、そういったリアルな本で埋めき れない場所に対しても本来は有効なはずなんですが、みなさん、そのあたりはい 図書館にとってパブリックとは
  • 35. 34 特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号 かがでしょう? 吉本:僕が住んでいる岐阜県の中津川市は、過疎でもないですが、都市でもない。 まさに平均的な田舎です。こういうところが、世の中で実はいちばん広大なエリ アだったりするんですが、本当にどこに行っても同じ店があって……という感じ なんですよ。 僕が生まれたころから、家の周辺には書店というものがなかった。もちろん図 書館もない。では、どうやって本を手に入れたかといえば、親が年に何度か名古 屋に買い物に行くときに、頼むんです。でも、親が行く本屋にどの本があるかは、 前もっては分からない。親からすれば、コンピューターのことが書かれている本 ならなんでもいいと思って、全然、欲しい本と違うのを買ってこられて、「これで いいだろ」って言われるという……(笑)。 つまり、本に対するディスカヴァリーが全くない状態だったんです。本と出会 うためのインデックスが何一つなかった状態からすると、いまは完全に変わって いて、なんら不自由もストレスもない。そこに関しては圧倒的な変化だと思って います。 僕が紀伊國屋とかジュンク堂のような書店に出会ったのは大学に入ってからで、 それは公共図書館に行くのと体験としては非常に近い。つまり自分の知りたいと 思ったことが、そこに行けばなんとなく見つけることができた。でも、「本が網羅 されている空間はいいよね」「書店や図書館はそうあるべきだよね」と言われても、 それらと出会う前に、アマゾンが存在する世界に行ってしまった。原体験がない ので、いい空間だということは分かるけれど、それがなくなったときに困るかと 言われると、率直に言ってよく分からないんです。 内沼:今の話は、さっきのコストの話とも関係があるし、当然、問題にすべきこ とだと思います。さらにいえば、これは「本はタダで読めるべきか、それともお 金をとるべきか」という話ともつながってくる。仮に図書館ですべての「知」が完 全に解放されたとすると、極論すればアマゾンさえも要らなくなる。もちろん長 尾さんは、完全にそういう状態になることを目指しているわけではないでしょう。 ただ、図書館の歴史の方が、本屋の歴史よりもはるかに長い。だからこそ、「知識」 の公共性とは何かという話になると、どうしても図書館というものにつながって いくわけです。
  • 36. 35特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号 「本」は紙に印刷して全国の本屋に撒くという、複製と流通の部分に多大なコス トがかかる。だからこそ、本を「商品」として売るわけですよね。でももっと昔は、 手元に欲しい本は書き写して所蔵していた。書き写す手間という意味ではコスト がかかりますが、大量生産される「商品」ではなかった時代があるわけです。 誰 でも本が買えるものになってからの歴史はまだ短いし、今ではまた「売れない商 品」になってきている。 そうであれば、極論すれば、もう本を売るのをやめればいいという話もありう る。そこで僕からみなさんにお尋ねしたいんですが、「そもそも本からお金をとる 方が間違っている」という考え方についてどう思いますか? つまり、本は今だ にお金を払って買うものなのか否か、という。 高橋:どうなんでしょうかね。電子書籍の場合、ウェブと違うのは読むのにお金 がかかるというところですよね。無料ならウェブでもいいという話も、「電子書籍 元年」と騒がれた2010年ぐらいから延々とやってきているわけです。 ただ、内沼さんが仰った「昔は、本は商品ではなかった」という話と同時に、「昔 は誰もが知識にアクセスできるわけではなかった」という面もある。ビジネスや 商品になることによって本はパッと広まった。つまり、お金さえ払えば誰もがア クセスできるようになった面もあるわけです。さらに、今ではウェブを使えば無 料で知識にアクセスできるようになった。いったいどうしましょうと、正直困っ ているところではありますね(笑)。 吉本:本が売られるようになると、売れる本を書いて流通させれば儲かるから、 投機的な意味で出版社がそのための資本を出すというビジネスの流れが出てきま すよね。そこにあらたに電子書籍が登場して、ある意味、その部分を中抜きしま す、みたいな話になってきた。さらに最近ではクラウドファンディングをつかっ て、「こういう本を書きたいのでお金を集めたい」という流れも出てきている。あ れも書く人に対して「生みの苦しみ」というか、ものすごくプレッシャーになり ますよね。 河村:「READYFOR?」(日本で最大のクラウドファンディングサービス)でお金を 集めて図書館をつくろうという動きもありましたね。ただ、クラウドファンディ ングというのは、実はお金の問題よりも責任の方が強い。得たお金で私腹を肥や
  • 37. 36 特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号 すわけにはいかないから、自分自身の分は手弁当でやるわけじゃないですか。よ うするに、投機的にやるのか、先に後押ししてもらうのかぐらいの違いでしかな い。でもこの差がけっこう本質的なのかもしれないですね。 吉本:本が売れなくなったということに関していえば、投機的なメリットがなく なってきたというのが決定的なんでしょうね。 「知」の体系と「物語」 ――もともと売られる対象ではなかった「本」や「知」の大衆化とビジネス化は、 実は同時に相互関係のもとで進んできた。さきほどのクラウドファンディングの 話もそうですが、電子書籍 、あるいはそれ以前にインターネット自体が、「知」の 大衆化や民主化を生み出したと総じていわれます。今後に起きる変化は、その大 衆化あるいはビジネス化がさらに広がるという、スケーラビリティだけの話なの か、それともより本質的な変化が起きるんでしょうか? 河村:こういう話をするときにいつも疑問に思うのは、学術書や技術書のように、 知識の体系のどこかに埋め込まれることを想定されて書かれている本と、物語性 やエンターテインメントの方に向かっていく本を、同列に扱っていいのかどうか ということなんです。 私自身は技術書しか書いたことはないんですが、時間給で考えると 200 円とか 300 円の仕事なんです(笑)。本を出すことの経済的なメリットは自分自身には全 然なくて、むしろ身を削るだけなんですが、ここ 10 年間に関しては、インター ネットに出すよりも本として出した方がひろがるし、読んでもらえるという場面 があったんです。 内沼:しかも、知識の体系の中に正しく配置されますよね。 河村:そう、それが最初に私が言った「アンカー」ということです。そのことにメ リットを感じてするのが「本を書く」という行為だったと思うんですよね。だか ら逆に、「物語を書く」というかたちで本に関わってる人たちのマインドが、私に はよく分からないんですよ。
  • 38. 37特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号 内沼:そこは同じような気もします。「物語」という言葉を抽象的に使いすぎてい るかもしれないですが、物語を書く人は「まだ足りてない物語」を書こうとして いるんだと思うんですよね。どこかで書かれた物語ならもう必要ないけれど、プ ロとして責任をもって書こうとしている人は、社会に足りていない物語を埋めよ うとしている。自分自身の癒しのために書いている人と、プロの作家の違いはそ こだと思います。 ――ただ、そういう意味では同人の作家も「足りてないところを埋める」ことへ の欲望はすごく強いですよね。 内沼:そういう人もいますよね。「同人」というときにイメージしているものが、 もしかしたらお互いにずいぶん違うのかもしれないですが。 吉本:同人作家の場合、社会の中での「足りない物語」を埋めるというよりも、自 分の中の欠落を埋めるところが強いのかな。 内沼:僕もそういうイメージで話をしていました。 ――たぶんお二人と同じイメージで話をしていると思いますが、同人の場合も、 歴史の中に物語を埋めたいという欲望をもっているように感じます。ある種の 「歴史」ではあるけれど、それが複数ありうるところが同人カルチャーの動力だっ たりする。「複数の歴史を埋めていく」というのは、学術書のような意味で「体系 を埋める」のとは違うかもしれませんが。 内沼:ただそのときにも、自分の「そうあったかもしれない物語」を書きたい、「自 分がいちばん気持ちいいものが書きたい」という欲望の強いものが、同人の場合 はどうしても多くなってしまうと思います。それが自分だけでなく、誰か他の人 の癒しになると思って書くという意識の有無が、プロかそうでないかの線引きか なと思うんです。これは「仕事」か「趣味」かという話でもある。「お金をもらうこ と」イコール「仕事」という定義もありうるけど、そうではない定義もありうるわ けです。簡単に言ってしまうと、社会を向いていれば「仕事」で、自分の方を向い ていれば「趣味」といった。
  • 39. 38 特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号 たとえ時給 200 円でも 300 円でも、あるいは 1 円も貰えなくても、この体系を 「埋める」ためと思って書く人は、「仕事」をしているとも言えると僕は思ってい て、そういう本は図書館が収集すべきものかもしれない。逆に、例えば最も分か りやすく言うと、自分がいちばん性的に興奮できる絵を描きたいというようなの が「自分に向かっている」ということで、それと他人のために書くこととの差は、 やっぱりあるのではないでしょうか。 ――両者の間で明確に線が引けるものでしょうか? 内沼:明確には引けないでしょうね。グラデーションはあると思います。 河村:「本」を書くのが自分のためなのか、社会の中に足りてないと思うからやる のか、ということの間には、やはり微妙なラインがあるような気がします。こう いうコワーキングスペースをやっていると、社会との距離感をどのくらいでとれ ばいいのか、ということへの考えがガラッと変わってきたんです。 同人作家の人も、少なくとも 10 ∼ 20 人には認められるから活動をしているわ けでしょう。こういう場所でも、10 ∼ 20 人がわらわらと集まってきて、自然発 生的にイベントなどが生れる。そしてそれは、たんなるプライベートでもないし、 かといってパブリックでもない。集合させていくといつかはパブリックになる、 セミパブリックな集まりという感じのものができてくるんです。だから単純に人 の数だけで、社会的かどうかという線引きができないなという感があります。 これを図書館の話に強引につなげていくと、図書館が「社会」と「個人」のどち らの側につけばいいのかが、実はよく分からなくなってきたんです。長尾さんの テキストの中でも、図書館という場所は「コモンズになるべきだ」という部分と、 「知を体系的・網羅的に集めるべきだ」という両方が出てきて、両者は一致すると ころがない感じがする。そこに図書館のジレンマが見える気がして、どちらに行 くべきのかなと思います。 「サードプレイス」と「教会」 ――今の話から、オルデンバーグの「サードプレイス」を思い浮かべました。第一 の場所が家、第二の場所は職場や学校、そして家や職場での役割から離れてくつ ろげる場所としての第三の場所がサードプレイスです。図書館や公園などの公共
  • 40. 39特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号 の場がサードプレイスとして機能することもあれば、カフェや居酒屋などの飲食 店がサードプレイスとなることもあります。例えば、スターバックスコーヒーは サードプレイスをコンセプトとして掲げて店舗展開してきました。 サードプレイスは必ずしも公共の場所ということではありませんが、その中立 性は部分的な公共性を持っているともいえます。スターバックスなどのカフェも 商業空間でありながら、ある種の公共性を含むサードプレイスとして機能してき ました。 河村:ただ、サードプレイスという言い方は、従来の働き方の上にのっていると 思うんです。今はもう、それは崩れているんですよ。プレイスは一つしかなくて、 プライベートもなくパブリックもないんです。 吉本:うちの事務所も、人が勝手に来て仕事をしていて、「オープンスペース」と はいってないけれど、空間としてはもうオープンなんでね。生活空間がパブリッ クに近づいていて、ここから先は入られちゃ嫌というところはないんです(笑)。 ――それにあえて反論をすると、「コミュニティ」と「パブリック」が混同され ていることがあって、すごく気になるんです。例えば先日の「マイクロライブラ リー・サミット」で言われていた「オープン」で「パブリック」な空間も、「コミュ ニティ」の場合がすごく多かったんですね。 河村:そこにもう一回反論をするとすれば、私は「パブリック」は幻想だと思っ ているんですよ。人が関わるうえで、パブリックをどう実現できるかということ に対して、図書館は答えが出せないし、僕らも答えを知らないんですね。だから 幻想かもしれない「パブリック」に近づく階段としては、今のところ「コミュニ ティ」以外の手段がないような気がするんです。 高橋:パブリックは「大きいコミュニティ」みたいなものでしかないと……。 ――この「マイクロライブラリー・サミット」には、河村さんも登壇されていま した。吉本さんと私は客席で見ていましたが、これについては、河村さんから説 明していただいた方が分かりやすいかもしれません。
  • 41. 40 特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号 河村:2013 年 8 月 24 日に大阪の「まちライブラリー @ 大阪府立大学」で、世界初 の「マイクロライブラリー・サミット」という催しがありました。小規模な図書 館(マイクロライブラリー)を、全国から 17 個集めて、朝 10 時から夕方 6 時ぐら いまで、30分ずつ話をしてもらいました。 いま僕らが把握しているだけで、全国でマイクロライブラリーが 300 とか 400 ぐらいある。まだ把握してないところも含めると無数にありそうな気配がします。 その基準は、大きくいうと「本が集まる場所」なんですが、たいていは「人も集ま る場所」でもある。基本フォーマットは「本」、つまり本とか本棚、図書館なんで すが、うちみたいなコワーキングスペースもあれば、公共図書館の中に市民が集 まる場所を別につくって、市民が自由に本を持ち寄っている本棚があったり、聞 いてみるとけっこうみんないろいろ違うことやっている。 例えば長野県の小布施町では、街中のお店の店主が自分の好きな本を店内に並 べていて、それらのことも「図書館」と呼んでいる。小布施の町全体が「図書館」で、 その中心に町立の図書館(まちとしょテラソ)がある。他にも個人の趣味で少女 マンガを集めだしたら全国からどんどん集まってきて、今 5 ∼ 6 万冊の蔵書があ る「少女まんが館」という私設図書館もありました。そんな人たちが集まるサミッ トでした。 ――大阪や京都にも、カフェにライブラリーがあったり、そこでイベントをして いるお店がたくさんあって、一つ一つの事例は面白かったんです。このサミットに 「B&B」や「カーリル」や「達人出版会」が出ていても、全くおかしくない感じでした。 河村:本屋さんでは、「放浪書房」(旅をしながら、旅の本を売り歩く人力移動式 の旅本専門店)がきていましたね。 ――そう、書店も来ていたし、「リブライズ」のように、本に関するシステム的な ことをやっているところも出ているのが面白かった。さきほど河村さんが「パブ リックは幻想だ、でもそれを分かってやっているんだ」という話を聞いて、すご く納得がいったんです。 というのも、このイベントはまだ 1 回目なので話が総論的になるのは仕方ない んですが、参加した人たちの全部とは言わないまでも、その多くが「強いコミュ ニティ」を志向する場であるように感じられた。中にいる人たちは気づかないか
  • 42. 41特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号 もしれないですが、そういう「強いコミュニティ」は、外から見ている人に対して は、「閉鎖性」として立ちあがる。コミュニティがあることも、コミュニティの多 様性も自然なことですが、その中で「リブライズ」のやろうとしていることだけが、 ちょっと違ったんですね。自分たちの場所も持っているけれど、パブリックが一 種の幻想だと分かっているがゆえに、コミュニティ同士をつなぐことで、その限 界にチャレンジしようとしているように見えました。 河村:コミュニティは、地の縁があると絶対に閉鎖的になるんですよ。でも、い まのコワーキングスペースや、もう少し緩やかにインターネット上で起きている コミュニティは、オーガナイザーのやり方次第なんですが、そういう意味での閉 鎖性はあまり強くない。 「リブライズ」がコワーキングスペースを拠点にすることで、他の利用者の活動 も見られるようにしているのは、コミュニティにどっぷり浸かって、自分の平均 値の中で固定化されていくのが、すごく嫌だからなんです。その中で流動性をど ういうふうに確保するかというときに、「コミュニティ同士をつなぐ」という話に なっていった。 ただ、「コミュニティ同士をつなぐ」というのはけっこう抽象的な話であって、 実体があるわけではないんです。本質的にやりたいところは、その中にいるプレ イヤーを自由に行き来させることなんですよ。そうやって流動性が高い状態を維 持しないと、コミュニティが腐るんです。 ――「実体がない」というのは、多様なものがあって、リブライズはその「間」を やっている、ということだと思うんです。齋藤純一さんが『公共性』(岩波文庫、 2010)という本で、公共性は人びとの「間」に形成される空間であると書いていま す。 河村:「リブライズ」は地藏真作さんというプログラマーと二人でやっているん ですが、僕らには共通見解があって、その「間」はシステム、もう少し具体的にい うとプログラムだと思っているんです。 ――今回のサミット参加者の中では、システムをつくっているのは「リブライズ」
  • 43. 42 特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号 「第1回マイクロライブラリー・サミット」会場展示風景 撮影(見開きとも)=嶋田綾子 「第1回マイクロライブラリー・サミット」での「リブライズ」ブースは、サービスのデモンストレーションができる体験型の展示
  • 44. 43特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号 「第1回マイクロライブラリー・サミット」での「放浪書房」ブース風景 「第1回マイクロライブラリー・サミット」での「少女まんが館」ブース風景
  • 45. 44 特別座談会 未来の図書館をつくる  ライブラリー・リソース・ガイド 2014 年 春号 だけでした。 高橋:今は理想像としてあるのが「リブライズ」ぐらいだとしても、「それ以外の システム」もありうるわけですよね。複数のシステムがあって、それらの「AND 集合」か「OR集合」の中に、公共みたいなものができるのかもしれない。 河村:ただ、それだと「人」からすごく遠く離れている感じがしてしまうんです。 「パブリック」を議論するとき、それがいったい何を指しているのか、という疑問 がいつもつきまとうんですよ。 高橋:「公共性」というのは、「人」ではないんじゃないですか? 河村:なんというか、公共性が「程度の問題」だったり、たんに形容詞として使わ れるだけなら、コミュニティも公共の一つだという気がするんです。 内沼:「公共性が高い」とか「低い」と言うとしたら、それは「程度の話」ですよね。 そもそも大前提として、なぜパブリックということが必要なんでしょうか? ――パブリックがなぜ必要か、というのはすごく難しい話ですね。これまでの話 の流れをまとめると、「マイクロライブラリー・サミット」のような動きの中で、 「僕らはパブリックに対して開いていますよ」と言葉を聞くことが多くなってき た。例えば公共図書館というのは、まさにパブリックの場なのですが、河村さん が仰ったように、実はそれは幻想でしかなくて、図書館がパブリックを体現して いるわけでもないという話だったと思います。 内沼:幻想なら、幻想でもいいじゃないかというのが、今聞いていて思ったこと です。そういう意味では、僕も公共性というのは「程度の話」かなという気がして います。