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小樽市における人口減少の要因分析
及び
有効な施策に関する研究
報道機関向け説明資料
江頭進(小樽商科大学)
1.調査結果の概略
小樽市×小樽商科大学
• 移動による人口減少の原因は、小樽市の環境に対する市民の満
足度と関係する
• 移動したいと考える人の満足度が低く、定住したいと考える人の
満足度は高い
• 若い世代ほど移動指向が強く、年齢が上がるにつれ、移動指向
が低くなる。
• 人口減少対策に限れば、若い世代の生活満足度を上げるこ
とが効率的である
• 産業構造の問題による所得水準の低さは、移動減、自然減の両
方に影響を与えている。
政策提言の概略
1. 小樽市の人口減少は、
1. 所得の絶対的な低さ
2. 小樽市の生活環境に対する不満
2. 有効と思われる政策は、
短・中期
1. 公園の整備、子育てネットワークの充実による環境の整備
2. 中学校、高校の教育力向上
長期
産業構造改革による所得の向上
ターゲットは20ー40歳の子育て世代
2.提言の概略
小樽市×小樽商科大学
[報告書7頁]
• 小樽市内では、若い世代ほど移動志
向が強く、高齢者ほど定住志向が高
い
• 札幌市でも若い世代の方が、移動志
向が高い
• 小樽の20代は札幌の20代よりも定住
志向が低い
人口減少の最大ボリューム層が20-
30代であることも含め、20-30代に
働きかける方が人口減少抑制の効
果が大きい
3.ターゲットを選択した理由
小樽市×小樽商科大学
小樽市人口減少問題共同研究会
小樽市×小樽商科大学
人口減少対策のターゲットとすべき課題
行政機関 議会各会派
経済団体
[報告書50-54頁]
「子育て-環境」にはある程度の
共通性がある
4.定住促進には満足度の向上が必須
小樽市×小樽商科大学
生活に対する満足度と定住指向には明確な関係がある
[報告書8頁]
移動する市民は、小樽市への満足度が低い傾向がある
5.小樽市民の重視する項目とその満足度
小樽市×小樽商科大学
改善の余地
が大きい
満足度の改善
6.満足度の世代間ギャップ
小樽市×小樽商科大学
小樽市人口減少問題共同研究会
小樽市×小樽商科大学
7.子育て世代の志向
小樽市×小樽商科大学
• 塾や学校の教育環境を重視する人々は、転出志向が高い
• 人間関係や自然環境を重視する人々は、定住志向が高い
[報告書29頁]
8.子育てインフラの整備の必要性
小樽市×小樽商科大学
[報告書32頁]
全体的に低い+転出
志向の方が低い
子育て世
代の不満
遊び場・公園は、子育てネットワークの形成にも影響を及ぼす可能性
9.教育に関する満足度
小樽市×小樽商科大学
[報告書33頁]
学年が高くなると低くなる 幼児教育に関する満足度は高い
10.子育て世代を定住させるためには
小樽市×小樽商科大学
• 子育てインフラの整備は、子育て世代の満足度は上げ
るが、定住志向に結びつくかどうかは不明
• 学校教育水準の向上は、定住志向に結びつく
• 子育てネットワーク(「教育や子育てについて気軽に
話ができる人がいる」、「同世代の知り合いが近所に
いる」、「長い時間子供を預けることができる場所が
ある」)は、移住志向を抑制し、定住志向を強めるこ
とが期待される
[報告書36-38頁]
11.人口戦略を自治体が考える上で必要な条件①
小樽市×小樽商科大学
1. 住民のニーズを組織的に理解し、共有する(市場指
向)自治体は、適切な人口戦略を着実に実行する能力
が高い
2. 新たな行政サービスを開発する能力の高い自治体は、
住民ニーズを確実にくみ取り、他に先駆けて新しい戦
略を生み出す。
[報告書60-62頁]
12.人口戦略を自治体が考える上で必要な条件①
小樽市×小樽商科大学
• 住民ニーズに関する組織的な理解・共有が高まるほど、そのニーズ
に対応すべく、職位を超えたアイディア出しやその共有。職場の異
動があっても知識を共有できうる、知識の移転・統合のための高い
能力があると、人口戦略の着実な遂行につながる
[報告書62頁]
13.地域ブランド化と住民獲得
小樽市×小樽商科大学
• 地域ブランド化が進む
ほど観光客や住民の獲
得につながるが、観光
で訪れたときに公共交
通の充実している場合、
定住へとつながる可能
性が大きい。
小樽は公共交通の便に対する住民満足度はあまり高くない
[報告書9-10頁]
[報告書62頁]
14.所得分布
小樽市×小樽商科大学
• 小樽は平均所得が、全国や札幌と比べて低い。
• 低所得層が流出している可能性
[報告書62頁]
15.小樽と札幌の比較(所得)
小樽市×小樽商科大学
[報告書2-4頁]
小樽が強い産業は相対的に賃金が低い
高所得の産業は札幌の方が強い
16.相対的低所得の問題点
小樽市×小樽商科大学
[報告書62頁]
• 小樽市の所得の低さは、既存の産業が札幌より低いわ
けではなく、高所得が得られる産業が小樽に不足して
いるため
→就職支援や既存の業種での企業誘致では、人口減少抑制の効果が薄い可能性
• 平均所得以下では、所得が低いほど合計特殊出生率が
低くなる傾向がある→小樽市の出生率の低さも説明可
• 産業構造転換が必要だが、環境整備には時間がかかる
17.小樽と札幌の比較(公共サービス)
小樽市×小樽商科大学
[報告書62頁]
• 出産、小児医療の公的支援はほとんど差が無い
• 病院施設は札幌とあまり差が無い
• 保育園の待機児童はゼロ、幼稚園も不足していない
• 公園面積も札幌、小樽で顕著な違いは無い。ただし、子
育てに適した公園面積は狭くなる
• 市内バス路線は、比較的充実している
18.札幌近郊住民の小樽に対するイメージ①
小樽市×小樽商科大学
まちのイメージは良い
19.札幌近郊住民の小樽に対するイメージ②
小樽市×小樽商科大学
クラスことにはマイナスイメージが強い
[報告書19-23頁]
若い世代の方
が比較的良い
20.札幌近郊住民が居住地決定で重視する要素
小樽市×小樽商科大学
21.まとめ
小樽市×小樽商科大学
• 小樽市の人口減少には明確な理由がある
• 相対的な所得の低さ、住民の満足度の低さ
• 若い子育て世代の満足度の向上が必要
• 子育て支援ネットワーク形成は、行政と市民の双方
の努力が必要
• 所得の増加は、長期的な産業構造の改革と、そのた
めの環境整備が必要
• 行政機関の市場志向的な政策策定能力の向上
• 公共交通機関をどうするか?

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