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研究デザイン
EBMミニレクチャーシリーズ
研究デザイン
• 臨床研究には,様々な方法がある
• どのような疑問か(=どのようなPICOか)
によって,その疑問を解決するために行
われる臨床研究として,最適な方法は異
なる
• 疑問を解決する際には,研究デザインの
理解が必要
研究デザインの種類
症例報告
症例集積研究
コホート研究(CS)
症例対照研究(CCS)
介入前後比較試験
準ランダム化比較試験
ランダム化比較試験(RCT)
横断研究
研究デザインの3分類
①研究者の関与
観察研究 Observation study
介入研究 Intervention study
②時間軸
縦断研究 Longitudinal study
横断研究 Cross-sectional study
③時間軸の向き
前向き Prospective
後ろ向き Retrospective
分類①:研究者の関与
• 観察研究
– 研究者が対象者に介入を加えず,経過を追って,
起こっていることを観察,記述する研究
• 介入研究
– 研究者が対象者に介入を加え,経過を追って
その介入による結果を測定する研究
分類①:研究者の関与
• 観察研究
– コホート研究
• 前向きコホート研究
• 後ろ向きコホート研究
– 症例対照研究
• コホート内症例対照研究
– 症例集積研究
– 症例報告
• 介入研究
– ランダム化比較試験
– 準ランダム化比較試験
– 介入前後比較試験
(One arm trial)
分類②:時間軸
• 縦断研究
– 現在を起点に,時間軸に沿って前向き,または後
ろ向きに経過を追ってその結果や因子について
測定する研究
– 観察研究と介入研究の両方
• 横断研究
– 時間軸を横断して,ある1時点でのみ観察,測定
する研究
– 観察研究のみ
分類③:時間軸の向き
• 縦断研究のみ
• 前向きprospective
– 現在を起点に,時間軸に沿って前向きに経過を
追ってその結果について測定する
• 後ろ向きretrospective
– 現在を起点に,時間軸に沿って後ろ向きに経過
を手繰ってその因子について測定する
• 違いは,研究開始時点で既にoutcomeの発
症の有無が明らかになっているか否か
過去 現在 未来
(前向き)
(後ろ向き)
ランダム化比較試験
コホート研究
症例対照研究
横断研究
後ろ向きコホート研究
コホート内症例対照研究
ランダム化比較試験
-
+
-
+治療群
対照群
イベント
あり
イベント
なし
イベント
あり
イベント
なし
ランダム割り付け
(現在) (未来)
前向き!
コホート研究(前向き)
対象患者
+
-
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-
(現在) (未来)
前向き!
危険因子
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後ろ向きコホート研究と症例対照研究
• 後ろ向きコホート研究
– 既に存在するコホートを利用する
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→発症率が求まる
• 症例対照研究
– 新たにデータを集める
– 症例を集めて,それに対して対照を選ぶ
– 症例と対照の割合は研究者が決められる
→発症率を求めることができない
3種類のバイアス
• 選択バイアス
– 患者の選び方に偏りを生じる
• 情報バイアス
– 暴露因子やアウトカムの測定を行うときに,情報が
あることで測定結果に手心が入る
• 交絡因子
– 暴露因子とアウトカムの両方に関連がある別の因
子の介在で,幻の関連性が生まれる
バイアスに対する対処法
研究方法 RCT コホート研究 症例対照研究
選択バイアス △
◎
ランダム抽出
△
マッチングなど
情報バイアス
○
マスキング
○
マスキング
○
マスキング
交絡因子
◎
ランダム割
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△
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多変量解析
疑問のカテゴリーと研究デザイン
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