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患者安全能力を向上する学習デザインの
原理と実践
“What to learn”と“How to learn”
池上敬一
獨協医科大学越谷病院救命救急センター
第17回日本臨床救急医学会・教育講演 3・140531
日本臨床救急医学会
CO I 開示
 
筆頭発表者名:池上 敬一
 演題発表に関連し、開示すべきCO I 関係にある
 企業などはありません。
話題
患者安全能力とは?
What to learn
● 患者安全スキーマ
● ルールによる問題解決
○ 心停止
● 複雑な問題解決
○ エピソード、不安定
● 経験データベース
どうやって獲得するのか?
How to learn
● 研修・シミュレーション
● 職場内学習
● 学習デザイン
● インストラクション
● コーチング
● 新しい職能
ルールに基づいた問題解決:ACLSを例に
ACLS
● 変だな?・突然倒れる
(駆け寄る、声をかける)
● 心停止の認識ができる
● 心停止の分類に応じてアルゴリズ
ムを選択できる
● アルゴリズムを使った問題解決
● チーム蘇生ができる
(情報の共有、お互いの尊重)
ACLS
● 知的技能・識別
(態度)
● 知的技能・定義
● 知的技能・ルール
○ アルゴリズム
● 知的技能・問題解決
● 総合能力
(態度)
ACLSタイプの患者安全能力:学習成果の分類
知的技能
● 識別
● 概念
● ルール
● 問題解決
○ 目の前の個別の患
者の問題解決
言語情報
知的技能
運動技能(手技)
態度
メタ認知能力
ACLSタイプの患者安全能力:学習成果の分類
インストラクションの方法
知的技能
● 識別
● 概念
● ルール
● 問題解決
言語情報
知的技能
運動技能(手技)
態度
メタ認知能力
メンタル・シミュレーションで独習可能
フィジカル・シミュレーション
(従来のシミュレーションコース)
知的技能 vs. 態度技能
心停止状態の人に対して AEDを使うことを選択する
通報を含め、AEDを利用して応急手当を
行うことができる
AEDによる応急手当の例を挙げることが
できる
命が失われた場合の人の周辺への影響
を説明できる
応急手当の種類やAEDの特徴を説明で
きる
心停止状態が緊急を要する理由を説明
できる
AED設置の普及や一般人が他人を救っ
た例を説明できる
態度表明の技能 場面の知識
結末の予測 内容の知識
他者の態度についての知識
態度の課題分析の例:「 AEDの利用を選択する」の課題分析図
現場の問題解決に必要な認知能力
1. 概念化の能力
a. 予測
b. モデル化
c. 実験
d. 評価
2. 分析能力
a. 診断
b. 計画
c. 説明(因果関係)
d. 判断
3. 社会性の能力
a. 影響
b. チームワーク
c. 交渉
d. 記述
いわゆる暗黙知であり、形式知化として
教授の対象になることは少ない
エピソードを用いて具体的に考える
エピソード 1/8
 看護師の山田さんは新卒でA病院に
入職し8年目。外科病棟、救急外来を経
験し、いまは内科病棟勤務です。山田さ
んは患者や同僚から信頼されている「よ
くできる」看護師。通常の仕事はもちろ
ん、予期せぬ状況でも適切に対応でき
ます。新人看護師は「山田さんと一緒の
勤務だと安心だ」と感じています。
エピソード 1/8 分析
 看護師の山田さんは新卒でA病院に
入職し8年目。外科病棟、救急外来を経
験し、いまは内科病棟勤務です。山田さ
んは患者や同僚から信頼されている「よ
くできる」看護師。通常の仕事はもちろ
ん、予期せぬ状況でも適切に対応でき
ます。新人看護師は「山田さんと一緒の
勤務だと安心だ」と感じています。
ハイ・パフォーマー
コンピテンシーモデル
パフォーマンスのレベル
● レベル1(normal)
○ 定型的な繰返し業務
○ ルーチン業務
● レベル2(abnormal)
○ 頻度の高い非定型的な業務・状
況への対応
○ 問題解決
● レベル3(emergency)
○ 稀・危機的状況への対応
○ 高度な問題解決
業務を通してレベル3を育成する
仕組みが必要
エピソード 2/8
 山田さんはこれから準夜勤です。いつ
も申し送りの前に受持ち患者を訪室しま
す。「今日はこれから勤務です。お変わ
りはありませんか?」と声をかけながら
変化の有無をチェックしていきます。最
後に、今日の午後、緊急入院になった
鈴木さん(46歳男性)訪室します。メモに
は以下のような記載があります。
エピソード 2/8 分析
 山田さんはこれから準夜勤です。いつ
も申し送りの前に受持ち患者を訪室しま
す。「今日はこれから勤務です。お変わ
りはありませんか?」と声をかけながら
変化の有無をチェックしていきます。最
後に、今日の午後、緊急入院になった
鈴木さん(46歳男性)訪室します。メモに
は以下のような記載があります。
態度技能
・習慣になっている
・そうすることに価値がある
記述力
・重要な項目を選択
評価・判断
・人に分かるように記録
説明・伝達・連絡
知的技能・運動技能
・問題発見法(BLSサーベイ、一次評価)
・概念とルールを使っている
エピソード 3/8
 工事中、痛みで仕事ができなくなり整
形外科受診。左下腿から足背に発赤・
腫脹あり。骨折ないため救急外来に紹
介。全身状態は問題ない。血圧
160/110 mmHg、脈拍数110/分、呼吸
は問題なし、体温38℃、WBC
12000/cmm、CRP 8 mg/dl、血糖220
mg/dl。下腿蜂窩織炎の診断で入院。身
長165㎝、体重95㎏、単身生活。
エピソード 3/8 分析
 工事中、痛みで仕事ができなくなり整
形外科受診。左下腿から足背に発赤・
腫脹あり。骨折ないため救急外来に紹
介。全身状態は問題ない。血圧
160/110 mmHg、脈拍数110/分、呼吸
は問題なし、体温38℃、WBC
12000/cmm、CRP 8 mg/dl、血糖220
mg/dl。下腿蜂窩織炎の診断で入院。身
長165㎝、体重95㎏、単身生活。
過去の事例の検索と引用
問題解決法の再利用・修正
・「蜂窩織炎」言語情報
・炎症反応(WBC, CRP):知的技能
・抗生剤療法:知的技能
・入院の適応:知的技能
評価・判断
・データを自分自身解釈
・自分の結論(仮説)を生成
・臨床推論開始
エピソード 4/8
「看護師の山田です」。鈴木さんは布団
にくるまっている。視線は合うが表情は
辛そう。顔色はよい。呼吸は大きく速い
が、異常な音は聞こえない。「痛みはど
うですか?」「まだ痛い」。橈骨動脈をす
ぐに触知。脈拍はやや速く、皮膚は暖か
く乾燥している。「鈴木さん、あとでまた
きますからね」と部屋を出る。
エピソード 4/8 分析
「看護師の山田です」。鈴木さんは布団
にくるまっている。視線は合うが表情は
辛そう。顔色はよい。呼吸は大きく速い
が、異常な音は聞こえない。「痛みはど
うですか?」「まだ痛い」。橈骨動脈をす
ぐに触知。脈拍はやや速く、皮膚は暖か
く乾燥している。「鈴木さん、あとでまた
きますからね」と部屋を出る。
解釈を総括し、次に起こりそ
うなイベントを予測、そのさい
のプランA/Bを立案
フィジカルアセスメント
・知的技能
・手技(運動技能)
知的技能・運動技能
・問題発見法(BLSサーベイ、一次評価)
・概念とルールを使っている
・もし 表情=苦悶 なら不安定
エピソード 5/8
「今夜の要注意は鈴木さんね。呼吸も脈
も速いし、敗血症になりかけかもしれな
い・・・」。
次の訪室、点滴が終わること、では、い
まの状態がさらに悪化しているかどうか
を判断しよう。
悪化していれば・・・
エピソード 5/8 分析
「今夜の要注意は鈴木さんね。呼吸も脈
も速いし、敗血症になりかけかもしれな
い・・・」。
次の訪室、点滴が終わること、では、い
まの状態がさらに悪化しているかどうか
を判断しよう。
悪化していれば・・・
評価と判断、
さらに将来を予測し、その対
応策(プラン)を策定
予測→評価→判断→決定→実行→効果の評価
認知 知的技能 高度な 手技 習慣・認知能力
能力      認知能力
山田さんの
パフォーマンス能力
山田さんの仕事スキーマ(習慣)、態度:暗黙知
知的技能
・問題の特定
・問題解決法の創出(ルール、以前に
 行なった問題解決の再利用・改変)
エピソード 6/8
 抗生剤が終了する頃、鈴木さんの部
屋を訪室。鈴木さんの目線はうつろで、
さっきに比べるとぐったりした感じ。表情
はさらに苦しそう。近づくと「ハァー
ハァー」、呼吸は速い。呼びかけても返
事はない。顔色はやや紅潮し、脈をみる
と弱く速い。皮膚は暖かく乾燥している。
エピソード 6/8 分析
 抗生剤が終了する頃、鈴木さんの部
屋を訪室。鈴木さんの目線はうつろで、
さっきに比べるとぐったりした感じ。表情
はさらに苦しそう。近づくと「ハァー
ハァー」、呼吸は速い。呼びかけても返
事はない。顔色はやや紅潮し、脈をみる
と弱く速い。皮膚は暖かく乾燥している。
時間経過、変化の大きさ、
変化率の評価、判断
過去の事例の検索と引用
問題解決法の再利用・修正
事例のデータベースを作る・長期記
憶に紐付け収納する・再利用する、こ
のプロセスが学習
フィジカルアセスメント
・知的技能
・手技(運動技能)
エピソード 7/8
 山田さんは呼吸・循環の状態が悪化し
ていると判断する。予想通り敗血症に進
展した。「患者急変時の対応」ルールに
従い迅速対応を開始。
準夜勤のチームで手分けして、一人が
主治医及び今日の救急対応チームの
リーダー医師への連絡を行い、山田さ
んが鈴木さんの状況把握と安定化の
リーダーとなる。
 山田さんは呼吸・循環の状態が悪化し
ていると判断する。予想通り敗血症に進
展した。「患者急変時の対応」ルールに
従い迅速対応を開始。
準夜勤のチームで手分けして、一人が
主治医及び今日の救急対応チームの
リーダー医師への連絡を行い、山田さ
んが鈴木さんの状況把握と安定化の
リーダーとなる。
予測→評価→判断→決定→実行→効果の評価
認知 知的技能 高度な 手技 習慣・認知能力
能力      認知能力
エピソード 7/8 分析
判断に基づくルールの選
択、ルールの実行を決定
チームワーク、コミュニケー
ション
エピソード 8/8
山田さんは酸素投与の準備と救急カー
トを持ってくるよう指示。持ってきても
らった動脈血酸素飽和時計でSpO2を
測定。90%を示したとき酸素投与の準
備ができたので、フェイスマスクで酸素
10L/分でスタート。血圧を測定しながら
SpO2が92、94%に上昇するのを確認
する。
エピソード 8/8
山田さんは酸素投与の準備と救急カー
トを持ってくるよう指示。持ってきても
らった動脈血酸素飽和時計でSpO2を
測定。90%を示したとき酸素投与の準
備ができたので、フェイスマスクで酸素
10L/分でスタート。血圧を測定しながら
SpO2が92、94%に上昇するのを確認
する。 状況に応じてACLS
最悪の場合BLS/ICLS
知的技能
・測定、評価、判断、治療手
技
・ME機器の迅速な使用
評価、判断、決定、実行、手
続き、問題解決、チームワー
ク・・・
山田さんは患者にとって安全・安心な看護師でしょうか?
具体的にはどのような点が?
アウトカム基盤型教育
コンピテンシー達成
● ハイパフォーマーの能力
を分析
● その能力を獲得する学習
環境をデザインする
● 学習を支援する
● 形成的評価
山田さんの患者安全能力の内訳
● 事前情報からリスク予測
● リスクへの対応プラン
● 安定・不安定の判断力
● 判断に基づく決定力
● 決定に基づく実行力
● 定義と判断
IF(反応なし)&(呼吸なし)&(脈触れ
ず)THEN(心停止)
● ルールと決定
IF(心停止)THEN(心停止の初動を開
始する)
● 決定→実行(認知技能)
● 振返り・長期記憶化
患者急変と対応
時間軸
安定軸
生理的な
安定度
心停止
患者の急な変化とは? 患者安全能力とは?
変化率
患者安全能力
● 小さい変化率を察知できる
● 変化に対応できる
時間
前状態
現状態
変化の大きさ
時間
変化の大きさ
もっとも基本的な急変対応能力とはなにか?
変化率
基本的な患者安全能力
● 小さい変化率を察知できる
● 変化に対応できる
変化を察知できる
● 変化率大きい・・・心停止
● 変化率小さい・・・気づき
宣言(報告・相談)できる
● If 変化がある then 宣言する
● 言えない、言わない、聞かない
行動できる
● If 変化がある then 行動する
● Can’t・できない/Won’t・しない
時間
前状態
現状態
変化の大きさ
ちいさなまとめ1:患者安全能力 what to learn
パフォーマンス能力
● レベル1
○ 定型的な業務
○ 患者安全スキーマ
● レベル2
○ 頻度の高い非定型的な業務
○ 患者安全スキーマ
● レベル3
○ 危機的状況への対応
○ 患者安全スキーマ
患者安全スキーマ
● 認知プロセス
○ 予測
○ 評価(不安定・安定)
○ 判断
○ 決定
○ 実行
○ 実行の結果の評価
● 経験・知識のデータベース
患者急変の模式図
時間軸
安定軸
生理的な
安定度
心停止
患者急変はどれか?
時間軸
安定軸
生理的な
安定度
心停止
7
6
5
4
321
従来の患者急変対応トレーニング
時間軸
安定軸
生理的な
安定度
心停止
ICLSコース
ACLSコース
mitigation
被害緩和
resilience
現状回復
prevention
防止
患者急変と対応
時間軸
安定軸
生理的な
安定度
心停止
mitigation
被害緩和
resilience
現状回復
prevention
防止
患者急変の3つの時期と必要な学習・トレーニング
時間軸
安定軸
生理的な
安定度
心停止
心停止を見越した対応
チームワーク
リソースマネジメント
不安定後期(心停止カウントダウン)の気づき
現場での蘇生
アドバンストな蘇生処置・ ICU転送
不安定・安定の区別 不安定初期の気づき
現場での蘇生
ちいさなまとめ2:患者安全能力 what to learn
安定・不安定の識別
● 定義・ルールの使い方
● 変化率識別の感度
● ジョブエイドを使って習慣化
ABCDEの異常に気づく(不安
定初期)
● 事例ベース(事例のデータベースを
構築する)
● 対応の方法・手技
進行したABCDEの異常に気
づく(不安定後期)
● SBAR報告
● チームワーク、家族のケア、記録、
振り返り
二次救命処置
● 二次救命処置
● リソースマネジメント
How To Learn
研修の評価
院内研修、勉強会、シミュレーションコース
レベル1
レベル2
レベル3
レベル4
“カークパトリックの
4つのレベル”
1. 楽しい、集中できる
満足度
2. 研修の目標を達成する
ACLSで筆記試験合格、実技テスト
合格
3. 行動変容
症状のある不整脈に対応できる
4. 患者のアウトカム改善
ACLSの成果で患者の予後改善
研修の評価
院内研修、勉強会、シミュレーションコース
レベル1から4は連鎖反応
鎖がバラバラだと効果を発揮しない
1. 楽しい、集中できる
満足度
2. 研修の目標を達成する
ACLSで筆記試験合格、実技テスト
合格
3. 行動変容
症状のある不整脈に対応できる
4. 患者のアウトカム改善
ACLSの成果で患者の予後改善
レベル1
レベル2
レベル3
レベル4
患者安全を実現するには「学習の連鎖」が必要
1. 楽しい、集中できる
満足度
2. 研修の目標を達成する
ACLSで筆記試験合格、実技テスト
合格
3. 行動変容
症状のある不整脈に対応できる
4. 患者のアウトカム改善
ACLSの成果で患者の予後改善
インプリメンテーション・トランスファー
学んだことが、どれだけ現場で活用されるのか
レベル2
学習成果
レベル3
行動変容
100 15% 15
シュミレーションコースの位置づけ
従来のやり方
● 院内・院外のコース受講
● 仮説
○ 教えたからできるだろう
● 職場
○ 学習成果を発揮できない
➢ 機会がない
○ 学習成果を発揮しない
➢ 発揮したくない
➢ インセンティブがない
● 結果:レベル3につながらない
レベル3を達成するには
● 職場にコーチング体制を構築
○ 学習成果を使う機会を与え、
レベル3達成を支援
○ ジョブエイド、ツール
● コーチがインストラクションを行なう
○ 院外コース:学習成果をコーチ
に伝達
● 職場の承認、インセンティブ
インプリメンテーション・トランスファーをデザインする
レベル2
学習成果
レベル3
行動変容
100 75% 75
コーチング
ジョブエイド
サポートシステム
振り返り
研修・シミュレーション教育の問題
現場の状況
● 時間がない
● 人がいない
● 予算がない
卒前教育の方法
● 教えるのが仕事
現場の人材育成は現場で行
なうのがもっとも効率的
● 現場でレベル3を達成
他にも方法はたくさんある
 初心者
 ・知らない
 ・できない
 なんとかできる
 ・基本
 ・標準
 任せられる
 ・経験豊富
 ・レベル2
 エキスパート
 ・リーダー
 ・指導者
研修・シミュレーション
パフォーマンスサポート
ソーシャルメディア
コーチング、メンタリング
フィジカルなシミュレーションコースの主な対象
学習の連鎖:患者安全能力の学習デザイン
課題分析
● 現場でできなくて困ってい
ることは何か?
● 業務のフローの問題?
● 職場環境・文化の問題?
● パフォーマンスの問題?
How to learn
● 行動変容を目的にする
○ コーチング
○ ジョブエイド
● シミュレーション学習
○ ジョブエイド
○ インストラクション
学習の連鎖:患者安全能力の学習デザイン
課題分析
● 現場でできなくて困ってい
ることは何か?
● 業務のフローの問題?
● 職場環境・文化の問題?
● パフォーマンスの問題?
How to learn
● 行動変容を目的にする
○ コーチング
○ ジョブエイド
● シミュレーション学習
○ ジョブエイド
○ インストラクション
パフォーマンス・テクノロジー インストラクショナル・デザイン
もっとも基本的な急変対応能力の学習法
Deliberate Practice: DP
● 日常、反復練習(DP)
○ 予測→評価・判断→結末→振
返り
○ CAPDシート(ジョブエイド)を
使用
● シミュレーションで演習
○ 予測→評価・判断→結末→振
返り
● 習慣になるまで継続
● 現場で承認
日常業務
シミュレーション
患者安全基本技能:CAPDカード
目的:急変を早期発見・見逃さない
使用法:患者を観察するときは常に
ルール:
1. 不安定を予測(原因も)
2. 観察で「不安定の徴候は?」
3. 不安定の徴候あり→アクション
4. 不安定の徴候なし→プラン
5. 安定ならプラン通り治療・ケア
6. 効果の再評価
Aの異常
● 気道から異音が聞こえる、など
Bの異常
● 肩で息をしている、など
Cの異常
● 顔面蒼白、皮膚の冷感がある、など
Dの異常
● 目を開けるのに刺激が必要、など
Eの異常
● 体温・皮膚・創部の異常や外出血
70−20−10
10%
講義・研修
Formal Learning
70%
職場内学習・業務を通した学習
Informal Learning
20%
ソーシャルな学習(SNS、職場外コミュニティ、学会など)
Social Learning
70−20−10と医療者の能力発達
10%
講義・研修
Formal Learning
70%
職場内学習・業務を通した学習
Informal Learning
20%
ソーシャルな学習(SNS、職場外コミュニティ、学会など)
Social Learning
遂行できない業務
講義やシミュレーションで業
務遂行の前提条件をクリア
機会
応用
コーチング
遂行能力獲得→行動変容→習慣化
パフォーマンス・サポート
ナレッジ・マネジメント
学習システム(学習の実践)
● フォーマルな学習
○ 10%
○ Need-to-knowに集中
○ シミュレーション
➢ メンタル
➢ フィジカル
○ インストラクター
● インフォーマルな学習
○ 70%
○ 業務プロセスを学習プロセス
とみなす
○ 業務を学習としてリデザインす
る
○ コーチ
○ サポートシステム、ツール
(ICT、ジョブエイドなど)
まとめ・患者安全能力
組織・職場の能力
● ミッション・価値
● ロールモデル・コーチ
● 同僚
● 学習文化
● 承認の文化
チームの能力
● リーダーシップ
● コラボレーションを引き出す
● リソースマネジメント
個人の能力
● 患者安全スキーマ(認知能力)
○ 予測→評価→判断→決定→
実行→結果の評価
● 経験のライブラリー
○ 実際の経験、模擬経験のデー
タベース化
○ 検索・引用のスキル
● 問題解決能力
○ 単純→→→複雑
まとめ・患者安全学習システムの原理
学習科学・学習心理学
● 構成主義
○ 「教える」→「組立てる」
● 正統的周辺参加
● 認知的徒弟制
パフォーマンス・テクノロジー
● 業務フロー、職場環境
● ワーカーのパフォーマンス
インストラクショナル・テクノロ
ジー
● ゴールベースシナリオ
● 精緻化理論
● インストラクショナル・トランザクショ
ン・セオリー
● ID第一原理
● ID美学第一原理
まとめ・患者安全学習システム:運営チーム
組織診断・学習システム管理
者(Chief Learning Officer:CLO)
● レベル4を達成するためのパフォー
マンス診断
● 診断に基づいた処方箋作成
● 企画・実施・評価
デザイナー・インストラクター
● 組織・職場に必要な教材設計
● 既存教材の最適化
● よくデザインされた教材を使ったイ
ンストラクション
● 職場でのコーチングも担当
● レベル3を担保する
結語
患者安全を担保するために
● 組織・部署の能力、チームの能力、そして医療
者の能力を向上する
● パフォーマンス改善グループの存在がコア
● 新しいサイエンス・テクノロジーを活用

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