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学習者の英語ライティング方略使用傾向の操作化
―ポーズの位置に着目した予備的検討―
川口 勇作 (愛知学院大学)
ykawa@dpc.agu.ac.jp
第 43 回全国英語教育学会島根研究大会 口頭発表 補助資料
於:島根大学 2017/8/19
従来の英語ライティング研究では、学習者のライティング方略の使用傾向は、思考発話法や刺激再生法などの口頭産
出法や、質問紙調査などの手法で操作化されてきた。ただしこれらの手法で得られるのは、いずれも学習者の自己申告デ
ータであり、実際のライティング方略の使用傾向を示す客観的データとは言い難い。そこで本研究では、客観的なライティ
ング方略使用傾向のデータを得るための手段として、ライティングプロセスのデータからポーズが起こった位置を検索し、
その位置によって実際に使用されたライティング方略(包括的計画方略、局所的計画方略)を操作化するという手法を提
案する。この手法で収集したデータと、従来の研究で用いられてきたライティング方略に関する質問紙調査の結果とを比
較した結果を踏まえながら、この手法を用いた今後のライティング方略研究の展望と、研究・実務に与える示唆について
考察する。
1.問題と目的 7 行目
(誤)実際に、英語熟達度が中級の学習者においては、自身が使用していると認識しているライティング方略を、実際の
ライティングプロセスに反映さ傾向が観察されている。(川口, 2015)
(正)実際に、英語熟達度が中級の学習者においては、自身が使用していると認識しているライティング方略が、実際の
ライティングプロセスに反映されない傾向が観察されている。(川口, 2015)
ライティング方略尺度(Yamanishi, 2009)
包括的計画方略 局所的計画方略
 はじめに大まかに書いて、後で細かな修正をしながら
書く
 内容がまとまるように文の順番を考えながら書く
 内容をまとめるための表現を考えながら書く
 表現に一貫性があるようにして書く
 物語調で書こうとする
 日本語で考えを整理してから、英語で書く
 課題で何が要求されているかを考えながら書く
 課題の趣旨を読者に伝えるように書く
 課題内容をよく理解してから書く
 結び(文章のオチ)の表現に気を遣って書く
 冠詞や単数形や複数形に注意しながら書く
 語と語の組み合わせ(イディオムなど)を考えながら書
く
 思いついた英語の表現が日本語の意味にあっている
か考えながら書く
 思いついた複数の表現から、最もふさわしい表現を選
びながら書く
 次にどのような内容を書こうか考えながら書く
 書きやすい表現を使えるように、書く内容を調整した
 定型的な表現(決まった言い回し)を気にしながら書く
※網掛けされた項目は、信頼性を下げていたため分析から除外した
概要
予稿の訂正
2
1. 2 秒以上のポーズのあった位置を検索
➢ 2 秒以上の「文字入力がない状態」をポーズと定義
➢ カーソル移動など、文字入力ではないキー入力を行っている時間は、ポーズとして扱う
2. ポーズが発生した直後の入力内容の変化を観察する
➢ 以下のような変化が発生した場合、包括的計画方略とコーディングする
 既に書き上げた文の後ろに、新しい文(等位接続詞から始まる文を含む)を書き始めた
 既に書き上げた文と文の間に、新しい文(等位接続詞から始まる文を含む)を書き始めた
 段落の入れ替えなど、段落単位の編集を行った
 既に書き上げた文を削除して、異なる内容の文を書いた(構成レベルの包括的計画)
 本文の構成に関する記述を修正した
(e.g., There are three reasons… → There are two reasons…)
 従属節を伴う主節を書き始めた
 既に書き上げた節(主節)前後の従位接続詞に続く、従属節を書き始めた
 既に書き上げた談話標識の後ろに、新しい文を書き始めた
➢ 以下のような変化が発生した場合、局所的計画方略とコーディングする
 書いている途中の文中に、新しい単語を書き始めた(単語レベルでの局所的計画)
 既に書き上げたフレーズ・文を削除して、同様の内容のフレーズ・文を書いた
(フレーズ・文レベルでの局所的計画)
 既に書き上げた節(主節)の中に、従位接続詞から始まる新しい従属節を、従位接続詞から書き始め
た
M SD 最小値 中央値 最大値 尖度 歪度 SE α
TOEIC (n = 20) 756.25 178.18 485.00 812.50 990.00 -0.33 -1.48 756.25
語数 258.33 116.77 88.00 244.00 561.00 0.76 -0.05 25.48
ポーズによる
方略使用傾向
データ
ポーズ回数 95.71 24.77 48.00 95.00 134.00 -0.33 -0.96 5.40
GP 回数 18.57 7.56 7.00 19.00 35.00 0.26 -0.89 1.65
LP 回数 77.14 21.37 34.00 78.00 120.00 -0.25 -0.43 4.66
平均ポーズ時間 7.42 1.58 5.27 6.91 11.23 0.88 -0.29 0.35
平均 GP 時間 9.59 3.59 4.83 8.96 18.68 1.24 0.68 0.78
平均 LP 時間 6.78 1.73 4.82 6.42 11.61 1.07 0.59 0.38
方略質問紙
データ
包括的計画方略 2.88 0.44 2.00 2.90 3.50 -0.57 -0.73 0.10 .71
局所的計画方略 2.86 0.48 1.83 2.83 3.67 -0.39 -0.72 0.10 .53
コーディングスキーマ
記述統計(N = 21)
3
注. Words:語数、NP:ポーズ回数、NGP:包括的計画方略の回数、NLP:局所的計画方略の回数、MDP:ポーズの平均
時間、MDGP:包括的計画方略の平均時間、MDLP:局所的計画方略の平均時間、GP:質問紙の包括的計画方略、LP:
質問紙の局所的計画方略
TOEIC
100 400
0.82 -0.01
10 20 30
0.08 0.00
6 8 10
0.08 0.21
5 7 9 11
0.00 0.56
2.0 3.0
500800
0.59
100400
Words
0.08 0.30 0.00 -0.08 0.07 -0.13 0.41 0.55
NP
0.60 0.95 -0.48 -0.04 -0.36 -0.28
60100
-0.29
1025
NGP
0.41 -0.34 -0.16 -0.46 0.00 0.13
NLP
-0.47 0.00 -0.30 -0.29
4080120
-0.38
6810
MDP
0.22 0.88 -0.21 0.08
MDGP
-0.04 0.00
61218
-0.14
579
MDLP
-0.30 -0.11
GP
2.03.0
0.59
500 800
2.03.0
60 100 40 80 120 6 10 16 2.0 3.0
LP
散布図・相関行列(N = 21)
4
参考文献
川口勇作 (2015). 「学習者のライティング方略は現実のライティングプロセスに反映されるか」『外国語教育メディア学
会 第 55 回全国研究大会発表要項集』92–93.
川口勇作・草薙邦広 (2014). 「WritingMaetriX によるライティングプロセス研究の手引き―データの収集・表計算ソフ
トを援用した分析・今後の展望―」『外国語教育メディア学会中部支部外国語教育基礎研究部会 2013 年度報告
論集』 43–52.
川口勇作・室田大介・後藤亜希・草薙邦広 (2016).「エッセイライティングにおける増加語数の時系列推移傾向とエッセ
イ評価の関係―モデルフィッティングを用いた検討」Language Education & Technology, 52, 319–343.
草薙邦広・阿部大輔・福田純也・川口勇作 (2015). 「学習者のライティングプロセスを記録・可視化・分析する多機能型
ソフトウェアの開発:WritingMaetriX」『外国語教育メディア学会中部支部研究紀要』26, 23–34.
Sasaki, M. (2002). Building an empirically-based model of EFL learners’ writing processes. In S. Ransdell &
M-L. Barbier (Eds.), New directions for research in L2 writing (pp. 49–80). Amsterdam: Kluwer
Academic.
Spelman Miller, K. (2005). Second language writing research and pedagogy: A role for computer logging?
Computers & Composition, 22, 297–317.
Spelman Miller, K., Lindgren, E., & Sullivan, K. P. H. (2008). The psycholinguistic dimension in second
language writing: Opportunities for research and pedagogy using computer keystroke logging. TESOL
Quarterly, 42, 433–454.
Xu, C., & Ding, Y. (2014). An exploratory study of pauses in computer-assisted EFL writing. Language
Learning & Technology, 18, 80–96.
Yamanishi, H. (2009). Japanese EFL learners’ use of writing strategies: A questionnaire survey. The Bulletin
of the Writing Research Group, JACET Kansai Chapter, 8, 53–64.
連絡先
川口 勇作 (愛知学院大学)
メール: ykawa@dpc.agu.ac.jp
サイト: http://site.y-kawaguchi.com
← Slideshare: https://www.slideshare.net/kawasaku
※今回の資料等は、上記のサイト等にて公開予定です

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学習者の英語ライティング方略 使用傾向の操作化―ポーズの位置に着目した予備的検討― 配布資料

  • 1. 1 学習者の英語ライティング方略使用傾向の操作化 ―ポーズの位置に着目した予備的検討― 川口 勇作 (愛知学院大学) ykawa@dpc.agu.ac.jp 第 43 回全国英語教育学会島根研究大会 口頭発表 補助資料 於:島根大学 2017/8/19 従来の英語ライティング研究では、学習者のライティング方略の使用傾向は、思考発話法や刺激再生法などの口頭産 出法や、質問紙調査などの手法で操作化されてきた。ただしこれらの手法で得られるのは、いずれも学習者の自己申告デ ータであり、実際のライティング方略の使用傾向を示す客観的データとは言い難い。そこで本研究では、客観的なライティ ング方略使用傾向のデータを得るための手段として、ライティングプロセスのデータからポーズが起こった位置を検索し、 その位置によって実際に使用されたライティング方略(包括的計画方略、局所的計画方略)を操作化するという手法を提 案する。この手法で収集したデータと、従来の研究で用いられてきたライティング方略に関する質問紙調査の結果とを比 較した結果を踏まえながら、この手法を用いた今後のライティング方略研究の展望と、研究・実務に与える示唆について 考察する。 1.問題と目的 7 行目 (誤)実際に、英語熟達度が中級の学習者においては、自身が使用していると認識しているライティング方略を、実際の ライティングプロセスに反映さ傾向が観察されている。(川口, 2015) (正)実際に、英語熟達度が中級の学習者においては、自身が使用していると認識しているライティング方略が、実際の ライティングプロセスに反映されない傾向が観察されている。(川口, 2015) ライティング方略尺度(Yamanishi, 2009) 包括的計画方略 局所的計画方略  はじめに大まかに書いて、後で細かな修正をしながら 書く  内容がまとまるように文の順番を考えながら書く  内容をまとめるための表現を考えながら書く  表現に一貫性があるようにして書く  物語調で書こうとする  日本語で考えを整理してから、英語で書く  課題で何が要求されているかを考えながら書く  課題の趣旨を読者に伝えるように書く  課題内容をよく理解してから書く  結び(文章のオチ)の表現に気を遣って書く  冠詞や単数形や複数形に注意しながら書く  語と語の組み合わせ(イディオムなど)を考えながら書 く  思いついた英語の表現が日本語の意味にあっている か考えながら書く  思いついた複数の表現から、最もふさわしい表現を選 びながら書く  次にどのような内容を書こうか考えながら書く  書きやすい表現を使えるように、書く内容を調整した  定型的な表現(決まった言い回し)を気にしながら書く ※網掛けされた項目は、信頼性を下げていたため分析から除外した 概要 予稿の訂正
  • 2. 2 1. 2 秒以上のポーズのあった位置を検索 ➢ 2 秒以上の「文字入力がない状態」をポーズと定義 ➢ カーソル移動など、文字入力ではないキー入力を行っている時間は、ポーズとして扱う 2. ポーズが発生した直後の入力内容の変化を観察する ➢ 以下のような変化が発生した場合、包括的計画方略とコーディングする  既に書き上げた文の後ろに、新しい文(等位接続詞から始まる文を含む)を書き始めた  既に書き上げた文と文の間に、新しい文(等位接続詞から始まる文を含む)を書き始めた  段落の入れ替えなど、段落単位の編集を行った  既に書き上げた文を削除して、異なる内容の文を書いた(構成レベルの包括的計画)  本文の構成に関する記述を修正した (e.g., There are three reasons… → There are two reasons…)  従属節を伴う主節を書き始めた  既に書き上げた節(主節)前後の従位接続詞に続く、従属節を書き始めた  既に書き上げた談話標識の後ろに、新しい文を書き始めた ➢ 以下のような変化が発生した場合、局所的計画方略とコーディングする  書いている途中の文中に、新しい単語を書き始めた(単語レベルでの局所的計画)  既に書き上げたフレーズ・文を削除して、同様の内容のフレーズ・文を書いた (フレーズ・文レベルでの局所的計画)  既に書き上げた節(主節)の中に、従位接続詞から始まる新しい従属節を、従位接続詞から書き始め た M SD 最小値 中央値 最大値 尖度 歪度 SE α TOEIC (n = 20) 756.25 178.18 485.00 812.50 990.00 -0.33 -1.48 756.25 語数 258.33 116.77 88.00 244.00 561.00 0.76 -0.05 25.48 ポーズによる 方略使用傾向 データ ポーズ回数 95.71 24.77 48.00 95.00 134.00 -0.33 -0.96 5.40 GP 回数 18.57 7.56 7.00 19.00 35.00 0.26 -0.89 1.65 LP 回数 77.14 21.37 34.00 78.00 120.00 -0.25 -0.43 4.66 平均ポーズ時間 7.42 1.58 5.27 6.91 11.23 0.88 -0.29 0.35 平均 GP 時間 9.59 3.59 4.83 8.96 18.68 1.24 0.68 0.78 平均 LP 時間 6.78 1.73 4.82 6.42 11.61 1.07 0.59 0.38 方略質問紙 データ 包括的計画方略 2.88 0.44 2.00 2.90 3.50 -0.57 -0.73 0.10 .71 局所的計画方略 2.86 0.48 1.83 2.83 3.67 -0.39 -0.72 0.10 .53 コーディングスキーマ 記述統計(N = 21)
  • 3. 3 注. Words:語数、NP:ポーズ回数、NGP:包括的計画方略の回数、NLP:局所的計画方略の回数、MDP:ポーズの平均 時間、MDGP:包括的計画方略の平均時間、MDLP:局所的計画方略の平均時間、GP:質問紙の包括的計画方略、LP: 質問紙の局所的計画方略 TOEIC 100 400 0.82 -0.01 10 20 30 0.08 0.00 6 8 10 0.08 0.21 5 7 9 11 0.00 0.56 2.0 3.0 500800 0.59 100400 Words 0.08 0.30 0.00 -0.08 0.07 -0.13 0.41 0.55 NP 0.60 0.95 -0.48 -0.04 -0.36 -0.28 60100 -0.29 1025 NGP 0.41 -0.34 -0.16 -0.46 0.00 0.13 NLP -0.47 0.00 -0.30 -0.29 4080120 -0.38 6810 MDP 0.22 0.88 -0.21 0.08 MDGP -0.04 0.00 61218 -0.14 579 MDLP -0.30 -0.11 GP 2.03.0 0.59 500 800 2.03.0 60 100 40 80 120 6 10 16 2.0 3.0 LP 散布図・相関行列(N = 21)
  • 4. 4 参考文献 川口勇作 (2015). 「学習者のライティング方略は現実のライティングプロセスに反映されるか」『外国語教育メディア学 会 第 55 回全国研究大会発表要項集』92–93. 川口勇作・草薙邦広 (2014). 「WritingMaetriX によるライティングプロセス研究の手引き―データの収集・表計算ソフ トを援用した分析・今後の展望―」『外国語教育メディア学会中部支部外国語教育基礎研究部会 2013 年度報告 論集』 43–52. 川口勇作・室田大介・後藤亜希・草薙邦広 (2016).「エッセイライティングにおける増加語数の時系列推移傾向とエッセ イ評価の関係―モデルフィッティングを用いた検討」Language Education & Technology, 52, 319–343. 草薙邦広・阿部大輔・福田純也・川口勇作 (2015). 「学習者のライティングプロセスを記録・可視化・分析する多機能型 ソフトウェアの開発:WritingMaetriX」『外国語教育メディア学会中部支部研究紀要』26, 23–34. Sasaki, M. (2002). Building an empirically-based model of EFL learners’ writing processes. In S. Ransdell & M-L. Barbier (Eds.), New directions for research in L2 writing (pp. 49–80). Amsterdam: Kluwer Academic. Spelman Miller, K. (2005). Second language writing research and pedagogy: A role for computer logging? Computers & Composition, 22, 297–317. Spelman Miller, K., Lindgren, E., & Sullivan, K. P. H. (2008). The psycholinguistic dimension in second language writing: Opportunities for research and pedagogy using computer keystroke logging. TESOL Quarterly, 42, 433–454. Xu, C., & Ding, Y. (2014). An exploratory study of pauses in computer-assisted EFL writing. Language Learning & Technology, 18, 80–96. Yamanishi, H. (2009). Japanese EFL learners’ use of writing strategies: A questionnaire survey. The Bulletin of the Writing Research Group, JACET Kansai Chapter, 8, 53–64. 連絡先 川口 勇作 (愛知学院大学) メール: ykawa@dpc.agu.ac.jp サイト: http://site.y-kawaguchi.com ← Slideshare: https://www.slideshare.net/kawasaku ※今回の資料等は、上記のサイト等にて公開予定です