More Related Content Similar to コミュニケーションスキルを重視したソフトウェア技術者教育手法の研究 (20) More from Yuichiro Saito (15) コミュニケーションスキルを重視したソフトウェア技術者教育手法の研究3. はじめに
ソフトウェア開発とコミュニケーション
現状
• c が苦手なソフトウェア開発の技術者
(以下、技術者) の存在。
• c が不得手な新人技術者。
c が出来ている人とそうでない人の差はどこ?
• どのような方法で c を学べばいいのだろうか。
• 新入社員として 働く前に解決 できないのか?
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4. はじめに
ソフトウェア開発とコミュニケーション
私の経験した できごと
• できるものが違う
— 「そう言われたんでこう作りました。 」
• チームワークの意識が希薄
— 「それとこれ、結合できるよう調整したの?」
• 自身の知識に固執する
— 「なんだ聞いてくれれば良いのに。」
• 他者の境遇を理解しない
— 「はぁ?そんな事も知らないんですか。 」
斎藤・久野 (筑波大学) 2013/1/13 4 / 38
7. はじめに
本研究について
大切な事なので二回言います
ソフトウェア開発に必要な
「コミュニケーション」は
成果物をもとにインタラクション を行うこと
• ≠とっても分かりやすく聞こえる話
• ≠リア充 (合コン・笑いを引き出せる話)
• ≠ゴマすり (ええこと言っちゃう!)
斎藤・久野 (筑波大学) 2013/1/13 7 / 38
10. 教育カリキュラム作成の基本方針
教育方法
教育方法の検討
• 「ケースメソッド」を
採用。
• 仮想の開発プロジェクト
を作成。
• ロールプレイングの要素
も取り入れる。
• 役割分担 を設定。メン
バー間の c が期待で
きる。
Figure: 検討した教育方法と
分布
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12. 実験実施計画
被験者及び実験工程の選定
被験者及び実験工程の選定
• 被験者 — 2 大学 合計 6 名の学生が参加
• ケースメソッドの実施期間 — 1 週間
• 事前指導の有無で c スキル獲得状況が変わるか?
日程 所要時間 第1回 第2回 作業内容
開始前 30 分 × ○ 事前指導
1 日目 1∼2 時間 ○ ○ コンセプト作成・外部設計
2 日目 1∼2 時間 ○ ○ 外部設計
3 日目 1∼2 時間 ○ ○ 内部設計
4 日目 1∼2 時間 ○ ○ 内部設計・画面設計
5 日目 1∼2 時間 ○ ○ テスト計画・リソース制作
6 日目 1∼2 時間 ○ ○ ・テストプログラム試作
7 日目 6 時間 ○ ○ プログラム開発・テスト実施
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13. 実験実施計画
ケースの作成
ケースの作成
— 「Twitter の mash-up サイトを作ろう」
• mention の流れを見やすくするツールを開発。
• ケース作成時に留意した事項は次の 5 点。
1. 普段慣れ親しんだものを利用する
2. 7 日間で形に出来る
3. 役割分担を作る
4. 工程を設定する
5. 能動的に楽しめる
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14. 実験実施計画
成果物の定義
成果物の定義
• 成果物とその提出日を次の通りに定義した。
日程 成果物
第1回 選択したプラットフォームの情報
(2 日目) コンセプトのメモ
作業分担リスト
外部設計の図面
第2回 機能設計書
(4 日目) 画面遷移図
画面設計図
第3回 テスト計画書
(6 日目)
最終回 完成品のプレゼンテーション
(7 日目) ソースコード
テスト結果が記入されたテスト計画書
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15. 実験実施計画
評価のための準備
評価のための準備
• 3 つの方法を準備。
(a) アンケート
(b) SYMLOG
(c) ビデオ撮影 — 分析中
• SYMLOG は、集団構造分析を行う。3 つの軸「友
好度」 「冷静さ」そして「リーダーシップ」の水
準を定量化する。
• SYMLOG の採点は、今回は筆者が実施している。
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16. 第 1 回実験
第 1 回実験 概要
• 被験者
国立α大学 情報系学科所属 大学 4 年生 3 名
• 日時
2012/09/16∼2012/09/22 (7 日間)
• 場所
1∼6 日目は被験者の大学・自宅
7 日目は筑波大学 東京キャンパス
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17. 第 1 回実験
被験者 プロフィール
被験者 プロフィール
• 事前アンケートから得た情報をもとにまとめる。
• A — プログラム担当
個人的にもコードを書く経験をしている。
• B — デザイン担当
チームをリラックスした雰囲気にしたい。
• C — リーダー・テスト担当
当初よりリーダーを希望していた。
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18. 第 1 回実験
実験中の状況
実験中の状況
• 1∼6 日目 — 課題は滞りなく提出を受けた。
• 7 日目 — 次のスケジュールで作業が進む。
時刻 作業内容
10:30∼10:45 本日の作業の流れの整理
10:45∼12:30 各自 担当作業
12:30∼13:30 昼食
13:30∼15:00 各自 担当作業
15:00∼15:50 プログラム・画面 結合作業
15:50∼16:00 問題点の整理
16:00∼16:40 プログラム・画面 結合作業
16:40∼17:00 問題点の整理
17:00∼19:50 プログラム・画面 結合作業
19:50∼20:00 作業結果確認 ソフトウェアの内容のプレゼンテーション
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19. 第 1 回実験
完成品のスクリーンショット
完成品のスクリーンショット
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20. 第 1 回実験
7 日目の状況
7 日目の状況
前半
• 全員、冷静。静かに続く作業。
• ほぼ出来上がっているけど、会話がなくて大
丈夫?
後半
• 結合がうまく行かない事がわかってきた。
• プログラマに負荷が集中。他の人、手を出せず。
• プログラマ、テンパる。髪の毛ぼさぼさ、参っ
た感。
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21. 第 1 回実験
アンケート結果
実験前後のアンケート結果比較
• 実験前
• c : 周りの邪魔をしない。
• 開発: UI を作ってから機能は後から盛り込む。
• 実験後
• c : 技術部分の理解を共有できなかった。
• 開発: 自分が考えている事と相手が考えている事に
相違があるとプログラムは結合できない。
実験後 c の重要性に気づいている
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22. 第 1 回実験
SYMLOG
SYMLOG
• 後半、被験者 A の冷静さが失われていく点に注目。
Figure: 7 日目 前半 Figure: 7 日目 後半
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23. 第 1 回実験
結果の評価
結果の評価
• ヒューマンスキル
• 理解度合いの齟齬 — c を通じ実装をすりあわせる必
要があった
• 合意形成の機会が少ない — 進捗確認の遅れ
• テクニカルスキル
• 企画・デバッグ力の向上
• コンセプチュアルスキル
• 能動的な情報収集力の向上
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24. 第 2 回実験
第 2 回実験 概要
• 被験者
国立β大学 情報系学科所属 大学 4 年生 3 名
• 日時
2012/10/14∼2012/10/20 (7 日間)
• 場所
1∼6 日目は被験者の大学・自宅
7 日目は筑波大学 東京キャンパス
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25. 第 2 回実験
事前指導の追加
事前指導の追加
• 1 回目の実験を踏まえて —
問題の理解度合いの齟齬を埋める
• 課題は —
「インターネットブラウザに必要な機能を挙げる」
• 自分と人との「必要」の認識は 違う 事を知り、
c の重要性を知る。
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26. 第 2 回実験
事前指導の状況
事前指導の状況
• オリエンテーション時 時間 作業内容
に実施。 19:00∼19:20 (全体像説明)
19:20∼10:35 必要な機能を各個人で列
• 「必要」の理解が人そ 挙
19:35∼19:40 全員の情報を集めて共通
れぞれであり、かつ 部分とそうではない部分
c を通じて仲間の考え 19:40∼19:47
を分類
共通しなかった部分から
を理解する。その上 1 つを選び選択理由を考
える
で、結論を導く。 19:47∼19:50 選択した項目についてプ
レゼンテーションを行う
19:50∼21:00 (実験に関する説明)
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27. 第 2 回実験
被験者 プロフィール
被験者 プロフィール
• 事前アンケートから得た情報をもとにまとめる。
• X — プログラム担当
チーム内で最もプログラミングスキルがある
• Y — デザイン担当
研究でも UI について取り組んでいる
• Z — リーダー・テスト担当
当初よりメンバー集めに積極的 技術の知見もメン
バー随一
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28. 第 2 回実験
実験中の状況
実験中の状況
• 1∼6 日目 — 課題は滞りなく提出を受けた。
• 7 日目 — 1 回目に比べて c が積極的に行われた。
時刻 作業内容
11:10∼12:30 技術調査
12:20∼12:30 調査状況 共有
12:30∼13:30 技術調査・プログラミング
13:00∼13:10 作業進捗 共有
(13:20∼13:40) 昼食・技術調査・プログラミング
13:40∼13:50 調査状況 共有
13:50∼15:00 技術調査・プログラミング
15:00∼15:15 作業進捗 共有
15:15∼16:30 技術調査・プログラミング
16:30∼16:55 作業進捗 共有
16:55∼17:00 問題点の整理
17:00∼18:20 本日の作業を踏まえ設計資料の更新
18:20∼18:30 作業結果確認 ソフトウェアの内容のプレゼンテーション
斎藤・久野 (筑波大学) 2013/1/13 28 / 38
29. 第 2 回実験
完成品のスクリーンショット
完成品のスクリーンショット
斎藤・久野 (筑波大学) 2013/1/13 29 / 38
30. 第 2 回実験
7 日目の状況
7 日目の状況
前半
• わからない事、知りたい事、積極的に会話。
• 段取りも初めに計画して予定通り進行。
後半
• .oO ○「やっぱり技術を学ぶ事は大切だね…」
• 問題を一つずつ潰さず、別の方にそれてしまい結
局進まない。
• モティベーションは最後まで持続。
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31. 第 2 回実験
アンケート結果
実験前後のアンケート結果比較
• 実験前
• c : 進捗を常に把握、質問しやすい状態にする、一緒
に考える、積極的に声がけする。
• 開発: ひな形を作り、動きを考えながら機能を追加。
• 実験後
• c : 声がけすることで互いの状況を把握できた。
• 開発: 設計の段階で話し合っておく事で、作業の流れ
がはっきりし、マンネリ化しづらくなる。緊張感も高
まる。
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32. 第 2 回実験
SYMLOG
SYMLOG
• 全被験者、チームワークを維持。
Figure: 7 日目 前半 Figure: 7 日目 後半
斎藤・久野 (筑波大学) 2013/1/13 32 / 38
33. 第 2 回実験
結果の評価
結果の評価
• ヒューマンスキル
• 頻繁な状況確認 — 事前指導の効果を確認
• テクニカルスキル
• 技術調査が不充分
• 実装時の 基礎知識が不足
• コンセプチュアルスキル
• Z の積極性が際立つ
• 一方 後半の問題解決方法に問題
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34. まとめ
まとめ
• 成果物を基にした c が欠かせない。
• c スキルは後天的に育成可能。
• プログラミングを学んだ上での教育が効果的。
• 今後、工程毎に必要な c を分析するなど、より教
育効果を高めるための実験が必要。
斎藤・久野 (筑波大学) 2013/1/13 34 / 38