SlideShare une entreprise Scribd logo
1  sur  55
Télécharger pour lire hors ligne
医療者学習へのISDの応用

  東京慈恵会医科大学 麻酔科
           松本尚浩
 takahiro_matsumoto@jikei.ac.jp
本日の内容
• 医療における指導者養成
 – ADDIEモデル応用
• 症例検討会へのPDS応用
 – PDS: performance development system
• ISDを応用した医療学生授業
 – KellerのARCSモデル応用




   25 December 2011   ISD for learning of health professionals   2
私の体験:麻酔科医の社会貢献とは
• 2001年頃:
 – 麻酔科医として14年、このままでいいのか?
 – 麻酔科医は手術室に居ることが多い
• 病院組織・社会に別の貢献はないか?
 – 患者急変対応システムが必要
 – 心肺蘇生術訓練を定期開催(2002年から)
• 心肺蘇生術訓練には指導者養成が重要


   25 December 2011   ISD for learning of health professionals   3
ICLSインストラクターへの道
(ICLS: 二次救命処置、Immediate Cardiopulmonary Life Support)
• インストラクター資格
  – 1) ICLSコース終了→アシスタントで指導経験5回
  – 2) ICLSコース終了→アシスタントで指導経験2回+指
    導者養成ワークショップ
• 特徴
  – 1) コース終了でアシスタントインストラクター
     • インストラクターの様々な役目のなかから,出来るもので参
       加(正統的周辺参加の例?)
  – 2)指導者養成ワークショップは必須ではない
     • 指導経験だけでもインストラクターになれる


     25 December 2011   ISD for learning of health professionals   4
AHA インストラクターへの道
• AHA コアインストラクターコース
 – 受講資格:AHA BLS/ACLS/PALS コース終了証
 – 教材:AHA コアインストラクターコーステキスト
• AHA インストラクターコース
 – 受講資格:AHA コアインストラクターコース終了証
 – 教材:AHA BLS/ACLS/PALS インストラクターキット
• 特徴
 – 全てのインストラクターはコアインストラクターコースで
   学ぶ

       25 December 2011   ISD for learning of health professionals   5
AHAコアインストラクターコース
(AHA: American Heart Association アメリカ心臓協会)

          • AHA 心肺蘇生術インストラクター
            コース受講前のコース
             – 自習用DVDソフトウエア
             – オンライン双方向性プログラム
          • 素晴らしい教材,プログラム
             – これは教育学プロの仕業に違いない
          • テキスト裏表紙:
             – “このコースは,「ibstpiインストラクターコ
               ンピテンシー」に準拠している“

             ISD for learning of health professionals   6
ibstpi インストラクターコンピテンシー
             • ibstpi:The International Board of
               Standards for Training,
               Performance and Instruction
                    – 研修・職能・教育に関する国際標準
                      委員会
                    – 教授システム学専門家が含まれる
             • 18項目のコンピテンシー
    ibstpi
                    – 5つの領域に分類
                    – コンピテンシー毎に具体的記述
                            • 合計98記述

             ISD for learning of health professionals   7
ibstpi インストラクターコンピテンシー
専門的基礎
   コンピテンシー 1:効果的なコミュニケーション
   コンピテンシー 2:自身の専門的知識とスキルの更新と改善
   コンピテンシー 3:確立された倫理的/法的な標準への準拠
   コンピテンシー 4:専門家としての信用の確立と維持
計画と準備
   コンピテンシー 5:指導方法と教材の計画
   コンピテンシー 6:指導のための準備。
指導方法と方略
   コンピテンシー 7:学習者の動機付けと係り合い刺激の維持
   コンピテンシー 8:効果的なプレゼンテーションスキルの実演
   コンピテンシー 9:効果的な進行スキルの実演
   コンピテンシー 10:効果的な質問スキルの実演
   コンピテンシー 11:釈明とフィードバックの提供
   コンピテンシー 12:知識とスキルの保持の促進
   コンピテンシー 13:知識とスキルの伝達の促進
   コンピテンシー 14:メディアとテクノロジーを活用した学習とパフォーマンスの促進
アセスメントと評価
   コンピテンシー 15:学習とパフォーマンスのアセスメント
   コンピテンシー 16:指導効果の評価
管理
   コンピテンシー 17:学習と実践を促進する環境の管理
   コンピテンシー 18:テクノロジーを適切に使用して教授過程を管理する




                     ISD for learning of health professionals   8
日本語でお読みになりたい方へ
      • 論文「インストラクターコンピ
        テンシーの医療者教育への
        応用」
             – ibstpi インストラクターコンピテ
               ンシーの解説と応用提案
      • 資料「ibstpi インストラクター
        コンピテンシー 第4章」
             – 18項目の粗訳

    ISD for learning of health professionals   9
ibstpi インストラクターコンピテンシー
             • ibstpi:The International Board of
               Standards for Training,
               Performance and Instruction
                    – 研修・職能・教育に関する国際標準
                      委員会
                    – 教授システム学専門家が含まれる
             • 18項目のコンピテンシー
    ibstpi
                    – 5つの領域に分類
                    – コンピテンシー毎に具体的記述
                            • 合計98項目

             ISD for learning of health professionals   10
ADDIEモデル
                     A        D            D             I          E
                     分析 → 設計 → 開発 → 実施 → 評価

• ID過程の5つの段階を頭文字で示したもの
 – Analyze :学習者の特性,教育内容を分析する
 – Design :目標を設定し,教授手段を決める
 – Develop:教材を作成する
 – Implement:実際に教授を行う
 – Evaluate:教材が目標達成を果たしたか評価する


  25 December 2011       ISD for learning of health professionals       11
インストラクターコンピテンシーとID
                                                         A            D     D    I    E
        専門的基礎                            分析 → 設計 →
                                             I                              開発 → 実施 → 評価
           コンピテンシー 1:効果的なコミュニケーション
           コンピテンシー 2:自身の専門的知識とスキルの更新と改善
           コンピテンシー 3:確立された倫理的/法的な標準への準拠
           コンピテンシー 4:専門家としての信用の確立と維持
        計画と準備
           コンピテンシー 5:指導方法と教材の計画
           コンピテンシー 6:指導のための準備。
                                         D        インストラクターコ
                                                  D

                                                  ンピテンシーで
        指導方法と方略
           コンピテンシー 7:学習者の動機付けと係り合い刺激の維持
    I      コンピテンシー 8:効果的なプレゼンテーションスキルの実演
           コンピテンシー 9:効果的な進行スキルの実演
           コンピテンシー 10:効果的な質問スキルの実演               A
           コンピテンシー 11:釈明とフィードバックの提供
           コンピテンシー 12:知識とスキルの保持の促進
           コンピテンシー 13:知識とスキルの伝達の促進
                                                  IDを実践
           コンピテンシー 14:メディアとテクノロジーを活用した学習とパフォーマンスの促進
        アセスメントと評価
           コンピテンシー 15:学習とパフォーマンスのアセスメント
E          コンピテンシー 16:指導効果の評価
        管理
           コンピテンシー 17:学習と実践を促進する環境の管理
           コンピテンシー 18:テクノロジーを適切に使用して教授過程を管理する

              25 December 2011   ISD for learning of health professionals                  12
教授法は芸であり科学でないのか
   医療の科学⇒ 看護学,医科学、基礎医学
 医療行為の標準⇒ ガイドライン
                      医療での芸を科学へ


                      教授法の芸を科学へ
インストラクタの標準⇒ インストラクターコンピテンシー
インストラクタの科学⇒ 教授システム学
            (インストラクショナルデザイン)
   25 December 2011    ISD for learning of health professionals   13
指導者の教育根拠は?
                            指導者の最大のよりどころは
                              自分の学習者経験
                                 例:習った先生の真似
                            次のよりどころは
                              自分が教えた経験からの知識
                                 「教えたことがある」が,いつ
                              しか,「教え方を知っている」に
                            (47 章フィードバック363頁より)
  医療者の教育に学習科学の応用が
     強く求められている。
25 December 2011   ISD for learning of health professionals   14
ID+ICに基づく医療人教育
               適格(一人前)な医療人


   インストラクターコンピテンシー(IC)の
    習得/実践(研修中~指導者)

     インストラクションデザイン(ID)の
        理解/実践(卒業前)
プリセプティー/研修医            悩めるプリセプタ/指導医                               困った私道医
    25 December 2011   ISD for learning of health professionals            15
医療者学習ファシリテータ基本コースでの
ibspti インストラクターコンピテンシー項目
  プロフェッショナルとしての基礎
    1. 効果的なコミュニケーションを行う。
    2. 専門分野の知識やスキルを常に磨いておく。
    3. 規定の倫理や法を順守する。
    4. プロフェッショナルとしての信用を確立する。
  企画と準備
    5. インストラクションと方法と教材を企画準備する。
    6. インストラクションに必要な具体的な準備をする。
  方法と戦略
    7. 受講者が意欲的に、集中して学べるように働きかける。
    8. プレゼンテーションを効果的に行う。
    9. ファシリテ-ションを効果的に行う。
    10. タイミングよく的確に質問をする。
    11. 明確な説明とフィードバックを与える。
    12. 学んだ知識やスキルが持続するように働きかける。
    13. 学んだ知識やスキルが実際に使えるように働きかける。
    14. メディアやテクノロジーを使って学習効果を高める。
  評価
    15. 学習成果とその実用性を評価する。
    16. インストラクションの効果を評価する。
  マネジメント
    17.学習効率と学んだことの実践を促進する環境を維持する。
    18.適切なテクノロジーを使って、インストラクションのプロセスを管理する。
  25 December 2011   ISD for learning of health professionals   16
医療者学習ファシリテータ応用コースでの
ibstpi インストラクターコンピテンシー項目
  プロフェッショナルとしての基礎
    1. 効果的なコミュニケーションを行う。
    2. 専門分野の知識やスキルを常に磨いておく。
    3. 規定の倫理や法を順守する。
    4. プロフェッショナルとしての信用を確立する。
  企画と準備
    5. インストラクションと方法と教材を企画準備する。
    6. インストラクションに必要な具体的な準備をする。
  方法と戦略
    7. 受講者が意欲的に、集中して学べるように働きかける。
    8. プレゼンテーションを効果的に行う。
    9. ファシリテ-ションを効果的に行う。
    10. タイミングよく的確に質問をする。
    11. 明確な説明とフィードバックを与える。
    12. 学んだ知識やスキルが持続するように働きかける。
    13. 学んだ知識やスキルが実際に使えるように働きかける。
    14. メディアやテクノロジーを使って学習効果を高める。
  評価
    15. 学習成果とその実用性を評価する。
    16. インストラクションの効果を評価する。
  マネジメント
    17.学習効率と学んだことの実践を促進する環境を維持する。
    18.適切なテクノロジーを使って、インストラクションのプロセスを管理する。
  25 December 2011   ISD for learning of health professionals   17
医療者学習ファシリテータ コース案
• 医療者学習ファシリテータ基本コース
 – 目標:インストラクタ/院内研修指導者養成
 – 中心内容:
  • ibstpiインストラクターコンピテンシー1,7,11など
• 医療者学習ファシリテータ応用コース
 – 目標:ファシリテータ/院内学習管理者養成
 – 中心内容
  • ibstpiインストラクターコンピテンシー1,9,10など


  25 December 2011   ISD for learning of health professionals   18
医療者学習ファシリテータ養成コース
       実施例
• 対象:国家公務員共済組合連合会病院
• コース試行版呈示
 – 2010年10月1日、共済医学会(札幌市)
• グループ病院でのコース実施
 – 2011年1月20-21日、呉共済病院
 – 2011年7月28-29日、札幌共済病院




   25 December 2011   ISD for learning of health professionals   19
小まとめ1
• ibstpi インストラクターコンピテンシーとの遭遇
 – 心肺蘇生術指導者養成の根拠探求中に
• ISDを基盤にした医療学習支援者養成
 – ibstpiインストラクターコンピテンシー応用




   25 December 2011   ISD for learning of health professionals   20
症例検討会へのPDS応用
(PDS: PERFORMANCE DEVELOPMENT SYSTEM)


  25 December 2011   ISD for learning of health professionals   21
【背景】症例検討会が機能不全
• 症例検討会とは、
 – 体験した患者・症例を振り返り、改善を図る
• 症例検討会のモンダイ
 – 通常、「失敗を反省」→辛い雰囲気(低い魅力)
 – 当事者、職種間の責めに至ることも
  • その場を去る者が発生する可能性もあり
 – 結論は、ほとんど「より高い知識・技術を訓練!」



  25 December 2011   ISD for learning of health professionals   22
症例検討会にパラダイムシフトを
• 改善すべき理由)現在の症例検討会では、
 – 辛い学びは効果が低い
 – 医療チーム作り逆効果
 – 訓練だけでは、パフォーマンスは改善しない
• 症例検討会→効果的・効率的・魅力的学習の場
  に変えたい
• 症例検討会にISDを応用
 – 特に、PDS (keller)は有効では?
 – 「HOW TO LINK ISD and HRD TO ORGANIZATIONAL
   NEEDS」
 –   http://isd-resource-space.wikispaces.com/file/view/How+to+Link+HRD+to+Organizational+Needs.pdf




       25 December 2011          ISD for learning of health professionals                             23
PDS概略
 組織の
使命、目標                                                       解決策




                                           原因分析

   ギャップ

                      実践分析
                    (理想と現実の差)
 組織の
実際、問題
 25 December 2011    ISD for learning of health professionals
                                                                評価改善   24
従来の症例検討会の例
• 患者名、年齢、性別
• 疾患名、経過(軽快、死亡など)
• 経過中の問題点抽出
 – 診断、治療、経過観察などでの出来事列挙
 – 過ち、無知、失敗の対策検討
• 「次は、気をつけて」で終了
 – 時には、◎◎訓練・講義を企画


  25 December 2011   ISD for learning of health professionals   25
PDS応用した症例検討会1
• 症例の呈示
• この症例に関わる、国際標準、組織内規定の
  医療水準を抽出
 – ◎◎の治療ガイドライン
 – 「理想状態」が明文化されていなことも
• 実際の医療実践と上記水準とのギャップを明
  確にする
 – 入院期間が標準よりも1週間長かった

  25 December 2011   ISD for learning of health professionals   26
PDS応用した症例検討会1
• 症例の呈示
• この症例に関わる、国際標準、組織内規定の
  医療水準を抽出
 – 例)◎◎の治療ガイドライン
 – 「理想状態」が明文化されていなことも
• 実際の医療実践と上記水準とのギャップを明
  確にする
 – 例)入院期間が標準よりも1週間長かった
 – 良く出来ている点も抽出

  25 December 2011   ISD for learning of health professionals   27
PDS応用した症例検討会2
• 原因分析(何が足りない?)
 – 技能・知識:例)体液不足を検知する技能
 – 報酬:
 – 動機付け:パフォーマンス改善効果を認識させる
 – 環境:例)外部で学んだ知識を活かせない環境
• 原因分類毎に解決策を検討



  25 December 2011   ISD for learning of health professionals   28
PDS:原因別解決策
原因                                          解決策
• 知識・技能不足                                   • 訓練、業務支援、学習シス
                                              テム
• 環境の問題                                     • 業務の再構築、職場改善


• 適切な報酬                                     • 卓越を認める、実践に応じ
                                              た昇進、報償の仕組み
• 動機                                        • 自律や責任感の増強、自
                                              信をつけさせる(認める)



   25 December 2011   ISD for learning of health professionals   29
小まとめ2
• 医療現場での「症例検討会」が機能不全
 – 辛い反省会
 – 個人・職種攻撃
 – チームワーク形成への悪影響、離職増加
• 症例検討会にPDSを応用
 – 訓練だけで改善しない問題へ対応




  25 December 2011   ISD for learning of health professionals   30
ISDを応用した医療学生授業


 25 December 2011   ISD for learning of health professionals   31
【背景1】医学部学生の目標設定での
       理想と現実
• 【理想】
 – 科学的根拠に基づく臨床実践者になる
 – 患者安全な医療実践者になる
 – 医科学の研究者になる
 – 医療行政者になる
• 【現実】
 – 医師国家試験合格
   • 試験合格率が減少し、古典授業へ変更した大学あり
   • 国家試験合格が減少すると大学補助金削減もあり

   25 December 2011   ISD for learning of health professionals   32
【背景2】医学部授業の問題点
• 授業が機能していない
 – シラバスは無い。有っても機能せず。
 – 出席して学習が成立する学生が少ない
  • 出席が少ない
  • 出席しても居眠り、私語
  • 「国試合格に授業は不要」と、感じる学生多数
 – 講師のモンダイも多要素あり
  • 古典的講義
  • PBL (Problem Based)
• 医学部授業に改革が必要
  25 December 2011   ISD for learning of health professionals   33
医学部授業をISDで改善
• ADDIEモデル応用
 – A: 授業内容の工夫
 – D & D: Classroom response systemと携帯端末集
   計システムを応用。
 – I: 授業で講義を避ける
 – E: 授業後、携帯端末集計システムで知識習得確
   認と授業評価
• カークパトリックレベル3を確認
 – 自律的参加形式の学習会開設

   25 December 2011   ISD for learning of health professionals   34
授業前約2週間
• 主任教授より、麻酔科系統講義の第1回目を担
  当するよう指示
• この授業の機能を考察
 – 麻酔科関連医療・医学の導入
 – 卒業(初期研修)までの学生(研修医)の在り方への
   影響
• 授業準備
 – 授業での話題を学生に呈示(電子メール)
 – 学生の興味・関心項目を投票(携帯集計システム)

   25 December 2011    ISD for learning of health professionals   35
麻酔科関連
           医学生の卒業前ゴール
• 【試験合格】
 – OSCE、卒業試験、医師国家試験
• 【医療者の基本を身につける】
 – 病態生理の理解
 – 基本技術習得
 – 患者安全
 – 科学とはなにか
 – 医療者学習、継続学習、卒前卒後教育連携

   25 December 2011   ISD for learning of health professionals   36
【試験合格】の話題例
• 国家試験既出問題を抽出
• 麻酔科関連問題を解説




  25 December 2011   ISD for learning of health professionals   37
【病態生理】の話題例
•   血圧の意味は?どこまで下がって良い?
•   脈拍数、少ない、多い場合の病態と対応
•   酸素はどれほど必要か?
•   血液ガスデータは何から読むか?
•   輸液選択の基本
•   疼痛管理の基本
•   赤血球輸血はいつ始めるか?

     25 December 2011   ISD for learning of health professionals   38
携帯集計システム
• 開発元:木村情報技術社
 – http://www.k-
   idea.jp/company/syuukeitai.
   html
• アクセスサイトとQRコード
  呈示
 – http://mana.3esys.jp/tju/1/




      25 December 2011   ISD for learning of health professionals   39
集計結果1
                learning

                 science
  issues




           patient safety

             physiology

            examination

                            0                    20                        40   60
                                                              vote
• 生理学、試験対策が上位だった

  25 December 2011              ISD for learning of health professionals             40
集計結果2
                 pain management
      red blood cell transfusion
                             infusion
 issues




                blood gas analysis
                      oxygen needs
     bradycardia & tachycardia
                     blood pressure

                                        0          10           20           30   40   50
                                                                     vote
• 病態・生理学の話題では「徐脈・頻脈の病態と対応」
  と「疼痛管理の基本」が上位だった。
 – 疼痛管理は別時限に授業があるので今回は触れず

          25 December 2011        ISD for learning of health professionals                  41
集計結果に基づく授業計画
• 主な内容
 – 徐脈・頻脈の病態と対応
 – 国家試験既出問題
 – 学ぶ意義
• 学習方法
 – 少人数グループディスカッション
   • なるべく、講義はしない
 – Classroom response system応用

   25 December 2011   ISD for learning of health professionals   42
授業当日の躓き
• 例年からの予想よりも、出席者数が多かった
 – 自前の3e-analyzerは20組しかなく、使用できず
  • http://www.k-idea.jp/3e/analyzer/index.html
• 教室で携帯端末電波が弱かった
 – シュウケイタイ利用出来ず
• 居眠りが1名



  25 December 2011    ISD for learning of health professionals   43
授業後アンケート
• 目的
 – 授業での学習内容理解
   • 国家試験既出問題を出題
 – 授業の印象を得る
• 回答数:約30名
 – アクセス途中で切断例があり、正確な数字不明




   25 December 2011   ISD for learning of health professionals   44
授業後アンケート回答1
• 問)今回の授業で印象に残ったのはなにか?
 – 一方的でない授業-----8.51%
 – 考える授業-----40.43%
 – 生理学の重要性-----23.40%
 – 患者安全の重要性-----7.45%
 – 日本の医師国家試験のみを目指すことの危うさ--
   ---20.21%



  25 December 2011   ISD for learning of health professionals   45
授業後アンケート回答2
• 問)今回の授業で改善すべき点は?
 – 得られた知識量が少ない-----12.50%
 – 授業の資料が不適切----- 10.71%
 – よく理解できなかった----- 3.57%
 – 時間が長く感じられた----- 1.79%
 – 特に改善点は思いつかない----- 71.43%




  25 December 2011   ISD for learning of health professionals   46
授業後アンケート回答3
• 問)今回の授業後、あなたの気持ち・態度は?
 – つまらなかった-----1.72%
 – 何も変わらない----- 17.24%
 – 学習に意欲が出た----- 60.34%
 – このような授業を、他の先生にもやって欲しい-----
   20.69%




   25 December 2011   ISD for learning of health professionals   47
まとめ:授業のデザイン
• 授業の準備
 – メールでの授業内容通知
 – 携帯集計システムでの授業内容希望投票
• 授業
 – 授業内容選択投票結果に基づく授業
 – 少人数グループディスカッション主体の授業
• 授業後
 – 携帯集計システムでの授業内容知識獲得確認
 – 携帯集計システムでの授業後意識調査
   25 December 2011   ISD for learning of health professionals   48
授業後、自発学習の場を提供
• 「臨床につながる生理学」学習会の開設
• 要領
 –   週1回、19時頃から90分間程度
 –   曜日不定期
 –   開催予定はメーリングリストで通知
 –   テキスト: “principles of physiology for anaesthetists,
     2nd ed”
• 第1, 2回学習会 開催
 – 12月1, 12日 19時から20時過ぎまで
 – 参加者 約20名(ほとんど4年生)
      25 December 2011   ISD for learning of health professionals   49
「臨床につながる生理学」
  学習会後、学生からのメール
• 私は暗に暗記が推奨されている医学部の勉
  強に途中嫌気がさしてしまい・・・
• 講義もろくに出ていませんでしたし。
• しかし来年4年生で臨床医学を学ぶことを考
  えたとき、生理学からきちんと結び付けられ
  ればどんなに楽しいことだろう、と考えており
  ました。
• 先生の学習会で暗記ではなく活きた医学を学
  ぶ姿勢を身につけたいと考えております。
  25 December 2011   ISD for learning of health professionals   50
考察1:携帯集計システムの効果
• この授業での知見
 – 学生の動機づけ
  • 授業前、授業内容選択に学生の約70%が投票
 – 学習効果の確認
  • 授業中、理解度確認の投票
  • 授業後、クイズ(試験問題)に投票
• 今後の発展性
 – ユビキタス授業の可能性
  • 教室に来なくても、授業に参加可能

  25 December 2011   ISD for learning of health professionals   51
考察2:対面型授業の機能
• この授業で確認できた機能
 – 授業で情報・知識を得る機能は低下
  • 求められるのは、授業でしか得られない情報
 – 学びの意欲を起こす機能が重要では?
  • 今回は、課外学習会に学生が参加
• 今後の展開
  • 協同作業志向型授業
        – Team-based Learning, ワークショップ



  25 December 2011   ISD for learning of health professionals   52
今後の課題
• 携帯端末でインターネットアクセスが出来な
  い学生への配慮が必要
 – 電子メールでの連絡、資料郵送




  25 December 2011   ISD for learning of health professionals   53
小まとめ3
• Classroom Response Systemが授業を変える
  可能性あり
  – 授業前:授業内容の希望調査、予習問題提示
  – 授業中:学生の反応・理解度把握(今回出来ず)
  – 授業後:学習発生確認、意欲変化把握
• 効果的・効率的・魅力的な学習の場の追求を
  – 授業の機能は、学びの魅力、意欲、協同作業を
    起こす場
    • 情報伝達の役目は少ない


   25 December 2011   ISD for learning of health professionals   54
Take Home Messages
• 医療者の学習にISDを応用
 – 学生の授業:動機づけモデル
 – 現場での医療事例の振り返り:PDS
 – 医療者学習支援者の養成:ADDIEモデル
• 医療には目標と評価の応用促進が重要
 – 目標不明確な教育が多い
 – 評価方略を持たない訓練・改善が多い


  25 December 2011   ISD for learning of health professionals   55

Contenu connexe

Similaire à 教授システム学の大学授業への応用 (Application of Instructional Systems Design in classrooms)

酔科医の社会貢献と uploadd by ruby193
酔科医の社会貢献と uploadd by ruby193酔科医の社会貢献と uploadd by ruby193
酔科医の社会貢献と uploadd by ruby193Atul Purohit
 
医療者学習へのISDの応用 東京慈恵会医 asdasdasdad
医療者学習へのISDの応用 東京慈恵会医 asdasdasdad医療者学習へのISDの応用 東京慈恵会医 asdasdasdad
医療者学習へのISDの応用 東京慈恵会医 asdasdasdadAtul Purohit
 
ID説明資料20130107ver1.0
ID説明資料20130107ver1.0ID説明資料20130107ver1.0
ID説明資料20130107ver1.0Norihiro Oku
 
Id説明資料20130107Ver1.1
Id説明資料20130107Ver1.1Id説明資料20130107Ver1.1
Id説明資料20130107Ver1.1Norihiro Oku
 
成果を確認しながら、患者安全活動を
成果を確認しながら、患者安全活動を成果を確認しながら、患者安全活動を
成果を確認しながら、患者安全活動をTakahiro Matsumoto
 
研究者総覧作成の現場から見たOrcid
研究者総覧作成の現場から見たOrcid研究者総覧作成の現場から見たOrcid
研究者総覧作成の現場から見たOrcidTatsuya Suzuki
 
140719 第46回医学教育学会 口頭発表
140719 第46回医学教育学会 口頭発表140719 第46回医学教育学会 口頭発表
140719 第46回医学教育学会 口頭発表Yoshikazu Asada
 
120502助産学会・講演1.8
120502助産学会・講演1.8120502助産学会・講演1.8
120502助産学会・講演1.8Ikegami Keiichi
 
120616 rrsデザイン as of 0604
120616 rrsデザイン as of 0604120616 rrsデザイン as of 0604
120616 rrsデザイン as of 0604Ikegami Keiichi
 
121113救急医学会・学習経験をデザインする
121113救急医学会・学習経験をデザインする121113救急医学会・学習経験をデザインする
121113救急医学会・学習経験をデザインするIkegami Keiichi
 
2014年・臨床研修ws・genericバージョン
2014年・臨床研修ws・genericバージョン2014年・臨床研修ws・genericバージョン
2014年・臨床研修ws・genericバージョンIkegami Keiichi
 
121005 jsish中四国プレゼン
121005 jsish中四国プレゼン121005 jsish中四国プレゼン
121005 jsish中四国プレゼンIkegami Keiichi
 
鷲崎 愛媛大学講演-プロジェクト型演習2014年12月15日
鷲崎 愛媛大学講演-プロジェクト型演習2014年12月15日鷲崎 愛媛大学講演-プロジェクト型演習2014年12月15日
鷲崎 愛媛大学講演-プロジェクト型演習2014年12月15日Hironori Washizaki
 
コーチングの基本 〜人を導く方程式〜
コーチングの基本 〜人を導く方程式〜コーチングの基本 〜人を導く方程式〜
コーチングの基本 〜人を導く方程式〜Yuda Miyamoto
 

Similaire à 教授システム学の大学授業への応用 (Application of Instructional Systems Design in classrooms) (20)

酔科医の社会貢献と uploadd by ruby193
酔科医の社会貢献と uploadd by ruby193酔科医の社会貢献と uploadd by ruby193
酔科医の社会貢献と uploadd by ruby193
 
医療者学習へのISDの応用 東京慈恵会医 asdasdasdad
医療者学習へのISDの応用 東京慈恵会医 asdasdasdad医療者学習へのISDの応用 東京慈恵会医 asdasdasdad
医療者学習へのISDの応用 東京慈恵会医 asdasdasdad
 
ID説明資料20130107ver1.0
ID説明資料20130107ver1.0ID説明資料20130107ver1.0
ID説明資料20130107ver1.0
 
Id説明資料20130107Ver1.1
Id説明資料20130107Ver1.1Id説明資料20130107Ver1.1
Id説明資料20130107Ver1.1
 
成果を確認しながら、患者安全活動を
成果を確認しながら、患者安全活動を成果を確認しながら、患者安全活動を
成果を確認しながら、患者安全活動を
 
研究者総覧作成の現場から見たOrcid
研究者総覧作成の現場から見たOrcid研究者総覧作成の現場から見たOrcid
研究者総覧作成の現場から見たOrcid
 
140719 第46回医学教育学会 口頭発表
140719 第46回医学教育学会 口頭発表140719 第46回医学教育学会 口頭発表
140719 第46回医学教育学会 口頭発表
 
120502助産学会・講演1.8
120502助産学会・講演1.8120502助産学会・講演1.8
120502助産学会・講演1.8
 
NCPR
NCPRNCPR
NCPR
 
120616 rrsデザイン as of 0604
120616 rrsデザイン as of 0604120616 rrsデザイン as of 0604
120616 rrsデザイン as of 0604
 
121113救急医学会・学習経験をデザインする
121113救急医学会・学習経験をデザインする121113救急医学会・学習経験をデザインする
121113救急医学会・学習経験をデザインする
 
プロジェクト型教育プログラムの意義と課題
プロジェクト型教育プログラムの意義と課題プロジェクト型教育プログラムの意義と課題
プロジェクト型教育プログラムの意義と課題
 
2014年・臨床研修ws・genericバージョン
2014年・臨床研修ws・genericバージョン2014年・臨床研修ws・genericバージョン
2014年・臨床研修ws・genericバージョン
 
121005 jsish中四国プレゼン
121005 jsish中四国プレゼン121005 jsish中四国プレゼン
121005 jsish中四国プレゼン
 
鷲崎 愛媛大学講演-プロジェクト型演習2014年12月15日
鷲崎 愛媛大学講演-プロジェクト型演習2014年12月15日鷲崎 愛媛大学講演-プロジェクト型演習2014年12月15日
鷲崎 愛媛大学講演-プロジェクト型演習2014年12月15日
 
121013指導医養成ws
121013指導医養成ws121013指導医養成ws
121013指導医養成ws
 
JSISH ID/ISD matrix
JSISH ID/ISD matrixJSISH ID/ISD matrix
JSISH ID/ISD matrix
 
コーチングの基本 〜人を導く方程式〜
コーチングの基本 〜人を導く方程式〜コーチングの基本 〜人を導く方程式〜
コーチングの基本 〜人を導く方程式〜
 
TC2010
TC2010TC2010
TC2010
 
120616 rrsデザイン
120616 rrsデザイン120616 rrsデザイン
120616 rrsデザイン
 

Plus de Takahiro Matsumoto

医療安全・患者安全教育訓練と評価
医療安全・患者安全教育訓練と評価医療安全・患者安全教育訓練と評価
医療安全・患者安全教育訓練と評価Takahiro Matsumoto
 
心肺蘇生術コースの先にある蘇生率改善へ
心肺蘇生術コースの先にある蘇生率改善へ心肺蘇生術コースの先にある蘇生率改善へ
心肺蘇生術コースの先にある蘇生率改善へTakahiro Matsumoto
 
学習者中心教育体験のための読書会
学習者中心教育体験のための読書会学習者中心教育体験のための読書会
学習者中心教育体験のための読書会Takahiro Matsumoto
 
あなたがチェンジ・エージェントになり患者安全を目指そう
あなたがチェンジ・エージェントになり患者安全を目指そうあなたがチェンジ・エージェントになり患者安全を目指そう
あなたがチェンジ・エージェントになり患者安全を目指そうTakahiro Matsumoto
 
生涯を生き抜くための医療者教育・訓練
生涯を生き抜くための医療者教育・訓練生涯を生き抜くための医療者教育・訓練
生涯を生き抜くための医療者教育・訓練Takahiro Matsumoto
 
心肺蘇生術インストラクターの発展が患者安全に寄与
心肺蘇生術インストラクターの発展が患者安全に寄与心肺蘇生術インストラクターの発展が患者安全に寄与
心肺蘇生術インストラクターの発展が患者安全に寄与Takahiro Matsumoto
 
患者安全のための教育・訓練
患者安全のための教育・訓練患者安全のための教育・訓練
患者安全のための教育・訓練Takahiro Matsumoto
 
患者さん家族に効果的な心肺蘇生術教育と医療安全教育改善
患者さん家族に効果的な心肺蘇生術教育と医療安全教育改善患者さん家族に効果的な心肺蘇生術教育と医療安全教育改善
患者さん家族に効果的な心肺蘇生術教育と医療安全教育改善Takahiro Matsumoto
 
蘇生率向上へ変えられることを変えよう
蘇生率向上へ変えられることを変えよう蘇生率向上へ変えられることを変えよう
蘇生率向上へ変えられることを変えようTakahiro Matsumoto
 
アメリカ心臓協会提言を読み解きより多くの人々が救われる社会を創るには
アメリカ心臓協会提言を読み解きより多くの人々が救われる社会を創るにはアメリカ心臓協会提言を読み解きより多くの人々が救われる社会を創るには
アメリカ心臓協会提言を読み解きより多くの人々が救われる社会を創るにはTakahiro Matsumoto
 
プリセプター制度を活かして学ぶための処方箋
プリセプター制度を活かして学ぶための処方箋プリセプター制度を活かして学ぶための処方箋
プリセプター制度を活かして学ぶための処方箋Takahiro Matsumoto
 
学ぶチカラを身につけるために
学ぶチカラを身につけるために学ぶチカラを身につけるために
学ぶチカラを身につけるためにTakahiro Matsumoto
 
患者安全な組織を創る教育・訓練
患者安全な組織を創る教育・訓練患者安全な組織を創る教育・訓練
患者安全な組織を創る教育・訓練Takahiro Matsumoto
 
医療学生向け自己主導型学習者への発展学習会
医療学生向け自己主導型学習者への発展学習会医療学生向け自己主導型学習者への発展学習会
医療学生向け自己主導型学習者への発展学習会Takahiro Matsumoto
 
『学習設計マニュアル』応用自己主導型学習者への発展学習会
『学習設計マニュアル』応用自己主導型学習者への発展学習会『学習設計マニュアル』応用自己主導型学習者への発展学習会
『学習設計マニュアル』応用自己主導型学習者への発展学習会Takahiro Matsumoto
 
蘇生教育を改善して蘇生率向上へ
蘇生教育を改善して蘇生率向上へ蘇生教育を改善して蘇生率向上へ
蘇生教育を改善して蘇生率向上へTakahiro Matsumoto
 
新しい安全理論に基づく現場パフォーマンス改善へのインストラクション
新しい安全理論に基づく現場パフォーマンス改善へのインストラクション新しい安全理論に基づく現場パフォーマンス改善へのインストラクション
新しい安全理論に基づく現場パフォーマンス改善へのインストラクションTakahiro Matsumoto
 
実験と組み合わせる振り返り会話
実験と組み合わせる振り返り会話実験と組み合わせる振り返り会話
実験と組み合わせる振り返り会話Takahiro Matsumoto
 
残念なシミュレーション教育を改善しよう
残念なシミュレーション教育を改善しよう残念なシミュレーション教育を改善しよう
残念なシミュレーション教育を改善しようTakahiro Matsumoto
 
より多くの人々が救われるために
より多くの人々が救われるためにより多くの人々が救われるために
より多くの人々が救われるためにTakahiro Matsumoto
 

Plus de Takahiro Matsumoto (20)

医療安全・患者安全教育訓練と評価
医療安全・患者安全教育訓練と評価医療安全・患者安全教育訓練と評価
医療安全・患者安全教育訓練と評価
 
心肺蘇生術コースの先にある蘇生率改善へ
心肺蘇生術コースの先にある蘇生率改善へ心肺蘇生術コースの先にある蘇生率改善へ
心肺蘇生術コースの先にある蘇生率改善へ
 
学習者中心教育体験のための読書会
学習者中心教育体験のための読書会学習者中心教育体験のための読書会
学習者中心教育体験のための読書会
 
あなたがチェンジ・エージェントになり患者安全を目指そう
あなたがチェンジ・エージェントになり患者安全を目指そうあなたがチェンジ・エージェントになり患者安全を目指そう
あなたがチェンジ・エージェントになり患者安全を目指そう
 
生涯を生き抜くための医療者教育・訓練
生涯を生き抜くための医療者教育・訓練生涯を生き抜くための医療者教育・訓練
生涯を生き抜くための医療者教育・訓練
 
心肺蘇生術インストラクターの発展が患者安全に寄与
心肺蘇生術インストラクターの発展が患者安全に寄与心肺蘇生術インストラクターの発展が患者安全に寄与
心肺蘇生術インストラクターの発展が患者安全に寄与
 
患者安全のための教育・訓練
患者安全のための教育・訓練患者安全のための教育・訓練
患者安全のための教育・訓練
 
患者さん家族に効果的な心肺蘇生術教育と医療安全教育改善
患者さん家族に効果的な心肺蘇生術教育と医療安全教育改善患者さん家族に効果的な心肺蘇生術教育と医療安全教育改善
患者さん家族に効果的な心肺蘇生術教育と医療安全教育改善
 
蘇生率向上へ変えられることを変えよう
蘇生率向上へ変えられることを変えよう蘇生率向上へ変えられることを変えよう
蘇生率向上へ変えられることを変えよう
 
アメリカ心臓協会提言を読み解きより多くの人々が救われる社会を創るには
アメリカ心臓協会提言を読み解きより多くの人々が救われる社会を創るにはアメリカ心臓協会提言を読み解きより多くの人々が救われる社会を創るには
アメリカ心臓協会提言を読み解きより多くの人々が救われる社会を創るには
 
プリセプター制度を活かして学ぶための処方箋
プリセプター制度を活かして学ぶための処方箋プリセプター制度を活かして学ぶための処方箋
プリセプター制度を活かして学ぶための処方箋
 
学ぶチカラを身につけるために
学ぶチカラを身につけるために学ぶチカラを身につけるために
学ぶチカラを身につけるために
 
患者安全な組織を創る教育・訓練
患者安全な組織を創る教育・訓練患者安全な組織を創る教育・訓練
患者安全な組織を創る教育・訓練
 
医療学生向け自己主導型学習者への発展学習会
医療学生向け自己主導型学習者への発展学習会医療学生向け自己主導型学習者への発展学習会
医療学生向け自己主導型学習者への発展学習会
 
『学習設計マニュアル』応用自己主導型学習者への発展学習会
『学習設計マニュアル』応用自己主導型学習者への発展学習会『学習設計マニュアル』応用自己主導型学習者への発展学習会
『学習設計マニュアル』応用自己主導型学習者への発展学習会
 
蘇生教育を改善して蘇生率向上へ
蘇生教育を改善して蘇生率向上へ蘇生教育を改善して蘇生率向上へ
蘇生教育を改善して蘇生率向上へ
 
新しい安全理論に基づく現場パフォーマンス改善へのインストラクション
新しい安全理論に基づく現場パフォーマンス改善へのインストラクション新しい安全理論に基づく現場パフォーマンス改善へのインストラクション
新しい安全理論に基づく現場パフォーマンス改善へのインストラクション
 
実験と組み合わせる振り返り会話
実験と組み合わせる振り返り会話実験と組み合わせる振り返り会話
実験と組み合わせる振り返り会話
 
残念なシミュレーション教育を改善しよう
残念なシミュレーション教育を改善しよう残念なシミュレーション教育を改善しよう
残念なシミュレーション教育を改善しよう
 
より多くの人々が救われるために
より多くの人々が救われるためにより多くの人々が救われるために
より多くの人々が救われるために
 

教授システム学の大学授業への応用 (Application of Instructional Systems Design in classrooms)

  • 1. 医療者学習へのISDの応用 東京慈恵会医科大学 麻酔科 松本尚浩 takahiro_matsumoto@jikei.ac.jp
  • 2. 本日の内容 • 医療における指導者養成 – ADDIEモデル応用 • 症例検討会へのPDS応用 – PDS: performance development system • ISDを応用した医療学生授業 – KellerのARCSモデル応用 25 December 2011 ISD for learning of health professionals 2
  • 3. 私の体験:麻酔科医の社会貢献とは • 2001年頃: – 麻酔科医として14年、このままでいいのか? – 麻酔科医は手術室に居ることが多い • 病院組織・社会に別の貢献はないか? – 患者急変対応システムが必要 – 心肺蘇生術訓練を定期開催(2002年から) • 心肺蘇生術訓練には指導者養成が重要 25 December 2011 ISD for learning of health professionals 3
  • 4. ICLSインストラクターへの道 (ICLS: 二次救命処置、Immediate Cardiopulmonary Life Support) • インストラクター資格 – 1) ICLSコース終了→アシスタントで指導経験5回 – 2) ICLSコース終了→アシスタントで指導経験2回+指 導者養成ワークショップ • 特徴 – 1) コース終了でアシスタントインストラクター • インストラクターの様々な役目のなかから,出来るもので参 加(正統的周辺参加の例?) – 2)指導者養成ワークショップは必須ではない • 指導経験だけでもインストラクターになれる 25 December 2011 ISD for learning of health professionals 4
  • 5. AHA インストラクターへの道 • AHA コアインストラクターコース – 受講資格:AHA BLS/ACLS/PALS コース終了証 – 教材:AHA コアインストラクターコーステキスト • AHA インストラクターコース – 受講資格:AHA コアインストラクターコース終了証 – 教材:AHA BLS/ACLS/PALS インストラクターキット • 特徴 – 全てのインストラクターはコアインストラクターコースで 学ぶ 25 December 2011 ISD for learning of health professionals 5
  • 6. AHAコアインストラクターコース (AHA: American Heart Association アメリカ心臓協会) • AHA 心肺蘇生術インストラクター コース受講前のコース – 自習用DVDソフトウエア – オンライン双方向性プログラム • 素晴らしい教材,プログラム – これは教育学プロの仕業に違いない • テキスト裏表紙: – “このコースは,「ibstpiインストラクターコ ンピテンシー」に準拠している“ ISD for learning of health professionals 6
  • 7. ibstpi インストラクターコンピテンシー • ibstpi:The International Board of Standards for Training, Performance and Instruction – 研修・職能・教育に関する国際標準 委員会 – 教授システム学専門家が含まれる • 18項目のコンピテンシー ibstpi – 5つの領域に分類 – コンピテンシー毎に具体的記述 • 合計98記述 ISD for learning of health professionals 7
  • 8. ibstpi インストラクターコンピテンシー 専門的基礎 コンピテンシー 1:効果的なコミュニケーション コンピテンシー 2:自身の専門的知識とスキルの更新と改善 コンピテンシー 3:確立された倫理的/法的な標準への準拠 コンピテンシー 4:専門家としての信用の確立と維持 計画と準備 コンピテンシー 5:指導方法と教材の計画 コンピテンシー 6:指導のための準備。 指導方法と方略 コンピテンシー 7:学習者の動機付けと係り合い刺激の維持 コンピテンシー 8:効果的なプレゼンテーションスキルの実演 コンピテンシー 9:効果的な進行スキルの実演 コンピテンシー 10:効果的な質問スキルの実演 コンピテンシー 11:釈明とフィードバックの提供 コンピテンシー 12:知識とスキルの保持の促進 コンピテンシー 13:知識とスキルの伝達の促進 コンピテンシー 14:メディアとテクノロジーを活用した学習とパフォーマンスの促進 アセスメントと評価 コンピテンシー 15:学習とパフォーマンスのアセスメント コンピテンシー 16:指導効果の評価 管理 コンピテンシー 17:学習と実践を促進する環境の管理 コンピテンシー 18:テクノロジーを適切に使用して教授過程を管理する ISD for learning of health professionals 8
  • 9. 日本語でお読みになりたい方へ • 論文「インストラクターコンピ テンシーの医療者教育への 応用」 – ibstpi インストラクターコンピテ ンシーの解説と応用提案 • 資料「ibstpi インストラクター コンピテンシー 第4章」 – 18項目の粗訳 ISD for learning of health professionals 9
  • 10. ibstpi インストラクターコンピテンシー • ibstpi:The International Board of Standards for Training, Performance and Instruction – 研修・職能・教育に関する国際標準 委員会 – 教授システム学専門家が含まれる • 18項目のコンピテンシー ibstpi – 5つの領域に分類 – コンピテンシー毎に具体的記述 • 合計98項目 ISD for learning of health professionals 10
  • 11. ADDIEモデル A D D I E 分析 → 設計 → 開発 → 実施 → 評価 • ID過程の5つの段階を頭文字で示したもの – Analyze :学習者の特性,教育内容を分析する – Design :目標を設定し,教授手段を決める – Develop:教材を作成する – Implement:実際に教授を行う – Evaluate:教材が目標達成を果たしたか評価する 25 December 2011 ISD for learning of health professionals 11
  • 12. インストラクターコンピテンシーとID A D D I E 専門的基礎 分析 → 設計 → I 開発 → 実施 → 評価 コンピテンシー 1:効果的なコミュニケーション コンピテンシー 2:自身の専門的知識とスキルの更新と改善 コンピテンシー 3:確立された倫理的/法的な標準への準拠 コンピテンシー 4:専門家としての信用の確立と維持 計画と準備 コンピテンシー 5:指導方法と教材の計画 コンピテンシー 6:指導のための準備。 D インストラクターコ D ンピテンシーで 指導方法と方略 コンピテンシー 7:学習者の動機付けと係り合い刺激の維持 I コンピテンシー 8:効果的なプレゼンテーションスキルの実演 コンピテンシー 9:効果的な進行スキルの実演 コンピテンシー 10:効果的な質問スキルの実演 A コンピテンシー 11:釈明とフィードバックの提供 コンピテンシー 12:知識とスキルの保持の促進 コンピテンシー 13:知識とスキルの伝達の促進 IDを実践 コンピテンシー 14:メディアとテクノロジーを活用した学習とパフォーマンスの促進 アセスメントと評価 コンピテンシー 15:学習とパフォーマンスのアセスメント E コンピテンシー 16:指導効果の評価 管理 コンピテンシー 17:学習と実践を促進する環境の管理 コンピテンシー 18:テクノロジーを適切に使用して教授過程を管理する 25 December 2011 ISD for learning of health professionals 12
  • 13. 教授法は芸であり科学でないのか 医療の科学⇒ 看護学,医科学、基礎医学 医療行為の標準⇒ ガイドライン 医療での芸を科学へ 教授法の芸を科学へ インストラクタの標準⇒ インストラクターコンピテンシー インストラクタの科学⇒ 教授システム学 (インストラクショナルデザイン) 25 December 2011 ISD for learning of health professionals 13
  • 14. 指導者の教育根拠は? 指導者の最大のよりどころは 自分の学習者経験 例:習った先生の真似 次のよりどころは 自分が教えた経験からの知識 「教えたことがある」が,いつ しか,「教え方を知っている」に (47 章フィードバック363頁より) 医療者の教育に学習科学の応用が 強く求められている。 25 December 2011 ISD for learning of health professionals 14
  • 15. ID+ICに基づく医療人教育 適格(一人前)な医療人 インストラクターコンピテンシー(IC)の 習得/実践(研修中~指導者) インストラクションデザイン(ID)の 理解/実践(卒業前) プリセプティー/研修医 悩めるプリセプタ/指導医 困った私道医 25 December 2011 ISD for learning of health professionals 15
  • 16. 医療者学習ファシリテータ基本コースでの ibspti インストラクターコンピテンシー項目 プロフェッショナルとしての基礎 1. 効果的なコミュニケーションを行う。 2. 専門分野の知識やスキルを常に磨いておく。 3. 規定の倫理や法を順守する。 4. プロフェッショナルとしての信用を確立する。 企画と準備 5. インストラクションと方法と教材を企画準備する。 6. インストラクションに必要な具体的な準備をする。 方法と戦略 7. 受講者が意欲的に、集中して学べるように働きかける。 8. プレゼンテーションを効果的に行う。 9. ファシリテ-ションを効果的に行う。 10. タイミングよく的確に質問をする。 11. 明確な説明とフィードバックを与える。 12. 学んだ知識やスキルが持続するように働きかける。 13. 学んだ知識やスキルが実際に使えるように働きかける。 14. メディアやテクノロジーを使って学習効果を高める。 評価 15. 学習成果とその実用性を評価する。 16. インストラクションの効果を評価する。 マネジメント 17.学習効率と学んだことの実践を促進する環境を維持する。 18.適切なテクノロジーを使って、インストラクションのプロセスを管理する。 25 December 2011 ISD for learning of health professionals 16
  • 17. 医療者学習ファシリテータ応用コースでの ibstpi インストラクターコンピテンシー項目 プロフェッショナルとしての基礎 1. 効果的なコミュニケーションを行う。 2. 専門分野の知識やスキルを常に磨いておく。 3. 規定の倫理や法を順守する。 4. プロフェッショナルとしての信用を確立する。 企画と準備 5. インストラクションと方法と教材を企画準備する。 6. インストラクションに必要な具体的な準備をする。 方法と戦略 7. 受講者が意欲的に、集中して学べるように働きかける。 8. プレゼンテーションを効果的に行う。 9. ファシリテ-ションを効果的に行う。 10. タイミングよく的確に質問をする。 11. 明確な説明とフィードバックを与える。 12. 学んだ知識やスキルが持続するように働きかける。 13. 学んだ知識やスキルが実際に使えるように働きかける。 14. メディアやテクノロジーを使って学習効果を高める。 評価 15. 学習成果とその実用性を評価する。 16. インストラクションの効果を評価する。 マネジメント 17.学習効率と学んだことの実践を促進する環境を維持する。 18.適切なテクノロジーを使って、インストラクションのプロセスを管理する。 25 December 2011 ISD for learning of health professionals 17
  • 18. 医療者学習ファシリテータ コース案 • 医療者学習ファシリテータ基本コース – 目標:インストラクタ/院内研修指導者養成 – 中心内容: • ibstpiインストラクターコンピテンシー1,7,11など • 医療者学習ファシリテータ応用コース – 目標:ファシリテータ/院内学習管理者養成 – 中心内容 • ibstpiインストラクターコンピテンシー1,9,10など 25 December 2011 ISD for learning of health professionals 18
  • 19. 医療者学習ファシリテータ養成コース 実施例 • 対象:国家公務員共済組合連合会病院 • コース試行版呈示 – 2010年10月1日、共済医学会(札幌市) • グループ病院でのコース実施 – 2011年1月20-21日、呉共済病院 – 2011年7月28-29日、札幌共済病院 25 December 2011 ISD for learning of health professionals 19
  • 20. 小まとめ1 • ibstpi インストラクターコンピテンシーとの遭遇 – 心肺蘇生術指導者養成の根拠探求中に • ISDを基盤にした医療学習支援者養成 – ibstpiインストラクターコンピテンシー応用 25 December 2011 ISD for learning of health professionals 20
  • 21. 症例検討会へのPDS応用 (PDS: PERFORMANCE DEVELOPMENT SYSTEM) 25 December 2011 ISD for learning of health professionals 21
  • 22. 【背景】症例検討会が機能不全 • 症例検討会とは、 – 体験した患者・症例を振り返り、改善を図る • 症例検討会のモンダイ – 通常、「失敗を反省」→辛い雰囲気(低い魅力) – 当事者、職種間の責めに至ることも • その場を去る者が発生する可能性もあり – 結論は、ほとんど「より高い知識・技術を訓練!」 25 December 2011 ISD for learning of health professionals 22
  • 23. 症例検討会にパラダイムシフトを • 改善すべき理由)現在の症例検討会では、 – 辛い学びは効果が低い – 医療チーム作り逆効果 – 訓練だけでは、パフォーマンスは改善しない • 症例検討会→効果的・効率的・魅力的学習の場 に変えたい • 症例検討会にISDを応用 – 特に、PDS (keller)は有効では? – 「HOW TO LINK ISD and HRD TO ORGANIZATIONAL NEEDS」 – http://isd-resource-space.wikispaces.com/file/view/How+to+Link+HRD+to+Organizational+Needs.pdf 25 December 2011 ISD for learning of health professionals 23
  • 24. PDS概略 組織の 使命、目標 解決策 原因分析 ギャップ 実践分析 (理想と現実の差) 組織の 実際、問題 25 December 2011 ISD for learning of health professionals 評価改善 24
  • 25. 従来の症例検討会の例 • 患者名、年齢、性別 • 疾患名、経過(軽快、死亡など) • 経過中の問題点抽出 – 診断、治療、経過観察などでの出来事列挙 – 過ち、無知、失敗の対策検討 • 「次は、気をつけて」で終了 – 時には、◎◎訓練・講義を企画 25 December 2011 ISD for learning of health professionals 25
  • 26. PDS応用した症例検討会1 • 症例の呈示 • この症例に関わる、国際標準、組織内規定の 医療水準を抽出 – ◎◎の治療ガイドライン – 「理想状態」が明文化されていなことも • 実際の医療実践と上記水準とのギャップを明 確にする – 入院期間が標準よりも1週間長かった 25 December 2011 ISD for learning of health professionals 26
  • 27. PDS応用した症例検討会1 • 症例の呈示 • この症例に関わる、国際標準、組織内規定の 医療水準を抽出 – 例)◎◎の治療ガイドライン – 「理想状態」が明文化されていなことも • 実際の医療実践と上記水準とのギャップを明 確にする – 例)入院期間が標準よりも1週間長かった – 良く出来ている点も抽出 25 December 2011 ISD for learning of health professionals 27
  • 28. PDS応用した症例検討会2 • 原因分析(何が足りない?) – 技能・知識:例)体液不足を検知する技能 – 報酬: – 動機付け:パフォーマンス改善効果を認識させる – 環境:例)外部で学んだ知識を活かせない環境 • 原因分類毎に解決策を検討 25 December 2011 ISD for learning of health professionals 28
  • 29. PDS:原因別解決策 原因 解決策 • 知識・技能不足 • 訓練、業務支援、学習シス テム • 環境の問題 • 業務の再構築、職場改善 • 適切な報酬 • 卓越を認める、実践に応じ た昇進、報償の仕組み • 動機 • 自律や責任感の増強、自 信をつけさせる(認める) 25 December 2011 ISD for learning of health professionals 29
  • 30. 小まとめ2 • 医療現場での「症例検討会」が機能不全 – 辛い反省会 – 個人・職種攻撃 – チームワーク形成への悪影響、離職増加 • 症例検討会にPDSを応用 – 訓練だけで改善しない問題へ対応 25 December 2011 ISD for learning of health professionals 30
  • 31. ISDを応用した医療学生授業 25 December 2011 ISD for learning of health professionals 31
  • 32. 【背景1】医学部学生の目標設定での 理想と現実 • 【理想】 – 科学的根拠に基づく臨床実践者になる – 患者安全な医療実践者になる – 医科学の研究者になる – 医療行政者になる • 【現実】 – 医師国家試験合格 • 試験合格率が減少し、古典授業へ変更した大学あり • 国家試験合格が減少すると大学補助金削減もあり 25 December 2011 ISD for learning of health professionals 32
  • 33. 【背景2】医学部授業の問題点 • 授業が機能していない – シラバスは無い。有っても機能せず。 – 出席して学習が成立する学生が少ない • 出席が少ない • 出席しても居眠り、私語 • 「国試合格に授業は不要」と、感じる学生多数 – 講師のモンダイも多要素あり • 古典的講義 • PBL (Problem Based) • 医学部授業に改革が必要 25 December 2011 ISD for learning of health professionals 33
  • 34. 医学部授業をISDで改善 • ADDIEモデル応用 – A: 授業内容の工夫 – D & D: Classroom response systemと携帯端末集 計システムを応用。 – I: 授業で講義を避ける – E: 授業後、携帯端末集計システムで知識習得確 認と授業評価 • カークパトリックレベル3を確認 – 自律的参加形式の学習会開設 25 December 2011 ISD for learning of health professionals 34
  • 35. 授業前約2週間 • 主任教授より、麻酔科系統講義の第1回目を担 当するよう指示 • この授業の機能を考察 – 麻酔科関連医療・医学の導入 – 卒業(初期研修)までの学生(研修医)の在り方への 影響 • 授業準備 – 授業での話題を学生に呈示(電子メール) – 学生の興味・関心項目を投票(携帯集計システム) 25 December 2011 ISD for learning of health professionals 35
  • 36. 麻酔科関連 医学生の卒業前ゴール • 【試験合格】 – OSCE、卒業試験、医師国家試験 • 【医療者の基本を身につける】 – 病態生理の理解 – 基本技術習得 – 患者安全 – 科学とはなにか – 医療者学習、継続学習、卒前卒後教育連携 25 December 2011 ISD for learning of health professionals 36
  • 38. 【病態生理】の話題例 • 血圧の意味は?どこまで下がって良い? • 脈拍数、少ない、多い場合の病態と対応 • 酸素はどれほど必要か? • 血液ガスデータは何から読むか? • 輸液選択の基本 • 疼痛管理の基本 • 赤血球輸血はいつ始めるか? 25 December 2011 ISD for learning of health professionals 38
  • 39. 携帯集計システム • 開発元:木村情報技術社 – http://www.k- idea.jp/company/syuukeitai. html • アクセスサイトとQRコード 呈示 – http://mana.3esys.jp/tju/1/ 25 December 2011 ISD for learning of health professionals 39
  • 40. 集計結果1 learning science issues patient safety physiology examination 0 20 40 60 vote • 生理学、試験対策が上位だった 25 December 2011 ISD for learning of health professionals 40
  • 41. 集計結果2 pain management red blood cell transfusion infusion issues blood gas analysis oxygen needs bradycardia & tachycardia blood pressure 0 10 20 30 40 50 vote • 病態・生理学の話題では「徐脈・頻脈の病態と対応」 と「疼痛管理の基本」が上位だった。 – 疼痛管理は別時限に授業があるので今回は触れず 25 December 2011 ISD for learning of health professionals 41
  • 42. 集計結果に基づく授業計画 • 主な内容 – 徐脈・頻脈の病態と対応 – 国家試験既出問題 – 学ぶ意義 • 学習方法 – 少人数グループディスカッション • なるべく、講義はしない – Classroom response system応用 25 December 2011 ISD for learning of health professionals 42
  • 43. 授業当日の躓き • 例年からの予想よりも、出席者数が多かった – 自前の3e-analyzerは20組しかなく、使用できず • http://www.k-idea.jp/3e/analyzer/index.html • 教室で携帯端末電波が弱かった – シュウケイタイ利用出来ず • 居眠りが1名 25 December 2011 ISD for learning of health professionals 43
  • 44. 授業後アンケート • 目的 – 授業での学習内容理解 • 国家試験既出問題を出題 – 授業の印象を得る • 回答数:約30名 – アクセス途中で切断例があり、正確な数字不明 25 December 2011 ISD for learning of health professionals 44
  • 45. 授業後アンケート回答1 • 問)今回の授業で印象に残ったのはなにか? – 一方的でない授業-----8.51% – 考える授業-----40.43% – 生理学の重要性-----23.40% – 患者安全の重要性-----7.45% – 日本の医師国家試験のみを目指すことの危うさ-- ---20.21% 25 December 2011 ISD for learning of health professionals 45
  • 46. 授業後アンケート回答2 • 問)今回の授業で改善すべき点は? – 得られた知識量が少ない-----12.50% – 授業の資料が不適切----- 10.71% – よく理解できなかった----- 3.57% – 時間が長く感じられた----- 1.79% – 特に改善点は思いつかない----- 71.43% 25 December 2011 ISD for learning of health professionals 46
  • 47. 授業後アンケート回答3 • 問)今回の授業後、あなたの気持ち・態度は? – つまらなかった-----1.72% – 何も変わらない----- 17.24% – 学習に意欲が出た----- 60.34% – このような授業を、他の先生にもやって欲しい----- 20.69% 25 December 2011 ISD for learning of health professionals 47
  • 48. まとめ:授業のデザイン • 授業の準備 – メールでの授業内容通知 – 携帯集計システムでの授業内容希望投票 • 授業 – 授業内容選択投票結果に基づく授業 – 少人数グループディスカッション主体の授業 • 授業後 – 携帯集計システムでの授業内容知識獲得確認 – 携帯集計システムでの授業後意識調査 25 December 2011 ISD for learning of health professionals 48
  • 49. 授業後、自発学習の場を提供 • 「臨床につながる生理学」学習会の開設 • 要領 – 週1回、19時頃から90分間程度 – 曜日不定期 – 開催予定はメーリングリストで通知 – テキスト: “principles of physiology for anaesthetists, 2nd ed” • 第1, 2回学習会 開催 – 12月1, 12日 19時から20時過ぎまで – 参加者 約20名(ほとんど4年生) 25 December 2011 ISD for learning of health professionals 49
  • 50. 「臨床につながる生理学」 学習会後、学生からのメール • 私は暗に暗記が推奨されている医学部の勉 強に途中嫌気がさしてしまい・・・ • 講義もろくに出ていませんでしたし。 • しかし来年4年生で臨床医学を学ぶことを考 えたとき、生理学からきちんと結び付けられ ればどんなに楽しいことだろう、と考えており ました。 • 先生の学習会で暗記ではなく活きた医学を学 ぶ姿勢を身につけたいと考えております。 25 December 2011 ISD for learning of health professionals 50
  • 51. 考察1:携帯集計システムの効果 • この授業での知見 – 学生の動機づけ • 授業前、授業内容選択に学生の約70%が投票 – 学習効果の確認 • 授業中、理解度確認の投票 • 授業後、クイズ(試験問題)に投票 • 今後の発展性 – ユビキタス授業の可能性 • 教室に来なくても、授業に参加可能 25 December 2011 ISD for learning of health professionals 51
  • 52. 考察2:対面型授業の機能 • この授業で確認できた機能 – 授業で情報・知識を得る機能は低下 • 求められるのは、授業でしか得られない情報 – 学びの意欲を起こす機能が重要では? • 今回は、課外学習会に学生が参加 • 今後の展開 • 協同作業志向型授業 – Team-based Learning, ワークショップ 25 December 2011 ISD for learning of health professionals 52
  • 53. 今後の課題 • 携帯端末でインターネットアクセスが出来な い学生への配慮が必要 – 電子メールでの連絡、資料郵送 25 December 2011 ISD for learning of health professionals 53
  • 54. 小まとめ3 • Classroom Response Systemが授業を変える 可能性あり – 授業前:授業内容の希望調査、予習問題提示 – 授業中:学生の反応・理解度把握(今回出来ず) – 授業後:学習発生確認、意欲変化把握 • 効果的・効率的・魅力的な学習の場の追求を – 授業の機能は、学びの魅力、意欲、協同作業を 起こす場 • 情報伝達の役目は少ない 25 December 2011 ISD for learning of health professionals 54
  • 55. Take Home Messages • 医療者の学習にISDを応用 – 学生の授業:動機づけモデル – 現場での医療事例の振り返り:PDS – 医療者学習支援者の養成:ADDIEモデル • 医療には目標と評価の応用促進が重要 – 目標不明確な教育が多い – 評価方略を持たない訓練・改善が多い 25 December 2011 ISD for learning of health professionals 55