2018年12月発行 ■特集 絵本で挑む、こどもへのがん教育　キャンサーペアレンツ 絵本『ママのバレッタ』 ■体験談 社会復帰できるんだ～無職だったがん患者が就職活動をして～（肺がんサバイバー）

1. 絵本で挑む、こどもへのがん教育
キャンサーペアレンツ 絵本
『ママのバレッタ』
「 社会復帰出来るんだ
〜無職だったがん患者が
就職活動をして〜」
０４vol.
２０１８/１２
●肺がんサバイバー体験談
●セミナー情報
ご 自 由 に お 持 ち 帰り下 さい 。が んに関わる全ての方への情報ペーパー

2. にも及びます。
キャンサーペアレンツ会員
で構成されるえほんプロジェ
クトは 、「 が ん サ バ イバ ーで
ある親の気持ちを子供に伝え
たい、がん患者と家族の支え
が ほしい 」という、自分 達 が
抱 える ニ ー ズ に より発 足 。
「こどもをもつがん患者だか
らこそつくれる絵 本 がある」
と 制 作 に 取り掛 か かり、そ
の 第 一 弾 が『 マ マ の バレッ
タ』となります。
一 方、2 0 1 6 年 に成 立した
がん対策基本法改正法に基
づ き 作 成 さ れ た 、が ん 対 策
推進基本計画（第3期）では、
が ん 教 育・が ん に 対 する 知
識 の 普 及 啓 発 があ げられて
います。
本計画では、こどもの頃か
ら教 育 を 受 ける事 が 重 要 で
あり、こどもが がん に 対 する
正し い 知 識 、が ん 患 者 へ の
理解及び命の大切さに対する
認識を深める事が重要と記載
され、小児期からのがん教育
が課題になっています。
そこで、キャンサーペアレ
ンツ は『 マ マ の バレッタ』が
がん 教 育 の 場 に お いても効
果的な教材になり得るかを、
実 際 に小 学 校 にて読 み 聞 か
せ を 行 い 、そ の 前 後 の 児 童
の が ん に 対 するイメージ を
比較しました。
こどもへの読み聞かせ
がん教育に寄与
こどもをもつ が ん 患 者 の
SNSコミニティであるキャン
サ ー ペアレンツ は 2 0 1 6 年 4
月に 胆 道 が ん サ バ イバ ーで
ある 西 口 洋 平 氏 によって 設
立され、現在、会員は2,500名
一 般 社 団 法 人 キャン サ ー
ペアレンツ が 制 作した 絵 本
『 マ マ の バレッタ』とそ れ に
関 する研 究 が 、1 0月1 8日か
ら20日に開催された第56回
癌 治 療 学 会 学 術 集 会 の P A L
（ ペ イシェント・アド ボ ケイ
ト・リーダーシップ・プログラ
ム ）に て 最 優 秀 賞 に 選 出 さ
れました。
特 集
こどもへのがん教育に
絵本で挑む
キャンサーペアレンツ 絵本
「 マ マ の バ レ ッ タ 」

3. できな い」というネガティブ
な イメージ の 回 答 も多 かっ
たが、読み聞かせ後はいずれ
の回答も大幅に減少し「少し
できる」という回答が増加し
ました。
前後いずれかで「わからな
い 」と回 答した 例 を 除 いて、
が ん に なった 後 の イメー ジ
が改 善し ま し た 。
また、「自由記載」を解析し
た 結 果 、読 み 聞 か せ 前 後 で
「悲しい / 悲しく」「心 配」の 2
単語は出現数の減少が認め
られました。
以 上 の 結 果 に て、キャン
サ ー ペ アレ ン ツ は『 マ マ の
バ レッタ 』を 小 学 校 で 読 み
聞かせする事が、がんになっ
た後の生活のイメージ改善
勿 論 、一 つ の 小 学 校とい
う限定的なコミュニティであ
る 事 や 前 後 比 較という手 法
など、研究としては脆弱な点
はあります が、このように 研
究として学 会 報 告し、ペイシ
ェント・アドボケイト・リーダ
ーシップ・プログラムの最優
秀賞を 受 賞した 同 団 体 に 称
賛を送りたいと思います。
『マ マ の バレッタ』は 11月
27日に発売されました。
キャンサーペアレンツ代表
の西口氏は『ママのバレッタ』
発売に際し、次のように語っ
ています。
生きるチカラにつながる
プロジェクトを社会へ
に 寄 与 する 事 を 示し 、家 庭
内に留まらず、学校などの教
育 の 場 に お いても情 報 共 有
ツ ー ルとしての 絵 本 が 効 果
的 で ある可 能 性 を 示してい
る。」という結 論 を 出しまし
た。
今回の受賞について、えほ
んプロジェクトの一人である
前田美智子氏は「まだ研究と
いう意味ではスタートライン
にも関わらず、発表の機会を
頂 い た 事 が 有り難く、更 にこ
の 様 に評 価 頂 い た 事 に感 謝
し か ありま せ ん 。」と述 べら
れています。
絵 本 を 制 作 するだ けで は
なく、研究として学校現場にて
読 み 聞 か せ 前 後を比 較 検 討
したキャンサーペアレンツ。
キャンサーペアレンツは、
岐阜県中津川市立落合小学校
5、6年生63名に対して『ママ
の バレッタ』を 読 み 聞 か せ、
前 後 に お けるがん の 認 識 の
変化を比較検討しました。
設 問 は「 が ん に なっ た 後
も同じ生活ができると思う？」
という選択質問と「自由記載」
になります。
結 果、「がん に なった 後も
同じ生 活 が で きると思う？」
という問 い に対して、読 み 聞
か せ 前 は「あまりで きな い 」
と い う 回 答 が 大 半 で あり、
「わからない」や「ぜんぜん
『ママのバレッタ』を
教育現場へ
（p<0.0001）
癌治療学会学術集会 発表ポスターより
「がんになった後も同じ生活ができると思う？」
の読み聞かせ前後比較
読み聞かせ前 読み聞かせ後

4. る、下絵を描く、色をつける、
そ れ を 最 後 のライフワーク
にしたプロジェクトメンバー
もいましたが、そこにはイキ
イキとした 姿 がありました 。
キャン サ ー ペ アレ ン ツと
してはこれ からも、絵 本 はも
ちろん 、そ れ に 限らず、会 員
の 皆 さん の 生 きるチカラに
つながるプロジェクトを立ち
上 げ 、社 会 に つ な げ て い き
たいと考えています。」
キャン サ ー ペ アレン ツ の
『マ マ の バレッタ』を是 非 一
度、お読み下さい。
『ママのバレッタ』は、全国
書店・Amazonでもご注文
頂けます。
(文/可知 健太)
遺 伝 は 親 が もつ 特 徴 の 情 報
を 子 孫 に 伝えます。これ を 伝え
る主 役 が 遺 伝 子となります。遺
伝 子 は 生 命 の 性 質 に 関 わる 情
報を示します。
最近の研究で、がんは遺伝子
病と言えることが 分 かってきま
した 。しかし殆どの が ん は 親 か
ら子 に は 遺 伝しませ ん 。これ は
年 齢と共 に D N A が 傷 つ いてが
ん化するためです。
遺 伝 病とは 先 天 的（生まれ な
がら）に 遺 伝 子 に 変 異 があり親
から遺伝したものに限って遺伝
病とい えま す。が ん 分 野 で は 、
H B O C（遺 伝 性 乳 がん卵 巣 がん
症 候 群）と呼 ば れる疾 患もその
一つとなります。
遺伝子と遺伝
オンコロ用語
「 が ん に なっ た お 父 さ ん
や お 母 さん が 、何 の 経 験 も
な い 中で 制 作 を 進 めてきま
した。様々な 困 難 がありまし
たが、多くの方の支えによっ
て 出 版 まで たどり着く事 が
できました。本 当 にありがと
うございます。
『親子でがんの理解を』『が
ん教 育 へ の 活 用』など、絵 本
の 利 用 によるアウトカ ム は
可能性に満ちています。
しかし、それ以上に可能性
を感じたのは、想いをもって
モノづくりに関わるプロセス
そ の も の が 、が ん 当 事 者 に
大 き な チ カラを も たらすと
いう事です。
絵 本 のストーリーを 考え
キャンサーペアレンツ・
ホームページ
https://cancer-
parents.org/

5. 「 社会復帰できるんだ」
～無職だったがん患者が就職活動をして～
求職中に肺がん
発覚！
タクシーで
ハローワーク通い
当時私は前職を辞め、雇
用保険の受給期間中＝求職
中。求 職 者 支 援 訓 練で パソ
コン関連の資格取得を目指
す講座を受講中でした。
1 月 中 旬 に 、持 病 で 通っ
ているかかりつけの病院で
たまたま肺 のレントゲンを
撮っ た の で す が 、「 肺 に 陰
があるように見える。肺がん
か もしれ な い から、大 きな
病院で検査する方がいい。」
と告げられました。思いがけ
な い 肺 が んという言 葉 は 、
まさに青天の霹靂でした。
講 座を運 営しているスク
ールに相談すると、派遣会社
に登録して貰いました。問題
は、治 療を始 めるとしたら、
雇用保険受給要件の求職活
動 が 出 来 なくなる可 能 性 が
高 い 事 。P E T 検 査 で 肺 が ん
は ほ ぼ 間 違 い な いという所
見 が 出 た 時 点 で 、そ の 旨 を
ハ ロ ーワークに も相 談しま
した。
早 期 就 職 支 援コーナーも
紹介して頂き、カウンセラー
による完 全 予 約 制 の マンツ
ー マ ン 相 談 で 、ここで 相 談
する事自体 が 求 職 活 動 にな
るという、大変有難い制度に
少し安心しました。
2月に入り、気管支鏡での
生検で遂に肺がんの確定診
断が下りました。資格も取得
し、就活に励もうという時に
余りに理不尽な、という絶望
感 でした が 、先 ず は 治 療 に
専 念し、就 活 は 退 院 後 から
再開することとなりました。
3月11日に入院、13日に開
胸 手 術 、2 3 日 に 退 院して、
2 5日が 認 定日でした 。退 院
後 は ハ ローワークまで 姑 が
一緒に行ってくれました。
姑 は 運 転 免 許 証を持って
おらず、私 も 退 院 直 後 で 体
調 が 悪く運 転で きる状 態で
は な かった 為、タクシーを利
用しました。
幸い支援コーナーのカウン
セラーがとても優しい方で、
抗がん剤治療を受けながら
名 前：森田 裕子
住 所：富山市
職 業：パートタイマー（製造業）
がん種：肺がん（肺腺がん）ステージⅣ
肺がん体験談

6. の求職活動をする大変さに
理解を示してくれました。
最後の認定日、「これから
は抗がん剤治療が終わるま
で、ゆっくり療養してね。」と
温かい言葉をかけてくれま
した。
は接客（咳き込む為マスクが
欠 か せ な い）、力 仕 事、神 経
を使う様な細かい作業、遠距
離通勤…と、事務職にはこだ
わらず 軽 作 業も選 択 肢 に入
れました。
週 3日∼ 4日の 一日6 時 間
勤 務 、出 来 れ ば 雇 用 保 険 被
保険者になれる、車で通勤時
間20分以内…と、採用条件で
就職先を探しました。センタ
ーは紹介や求職の申し込み
は出来ないので、再びハロー
ワーク通いが始まりました。
みを相 談 出 来ると聞 い た の
で、抗がん剤治療終了後の7
月中 旬 に センター を 訪 問し
まし た 。そこで 、「 副 作 用 が
抜ける10月には働き始めた
い 、職 種 は 出 来 れ ば 事 務 が
良いがこだわらない」と訴え
ました。
相談員の方は、「まずは身
体 に 無 理 が な い 様 に 、短 時
間 の 勤 務 から始 める方 が 良
い の で は な い か 。出 来る 事
と出 来 な い 事を明 確 に する
方が良い」とのアドバイスを
頂きました。
自分 に出 来る事 は 資 格を
持っているパソコンスキルを
使った事務処理、出来ない事
障 が い 者 雇 用 枠 の 様 な 、
がん患者枠は無いので一般
求 人 から条 件 に合う企 業を
探さないといけません。
また、定期的な通院をする
ので、職 員 数 が 少 な い 会 社
では休みにくいと思い、求人
理由が「増員」を探しました。
そんな 感じで 求 職 活 動を
していましたが、中々条件に
合 いそうな 企 業 は 見 つ かり
ません。
9月に入り、総合病院の薬
剤部での補助の仕事がヒッ
トしました。薬剤の勉強にな
るのではないかと思い、紹介
してもらいました。
がん総合相談
支援センターへ
なかなか見つからない
目標の１０月に
ところが 採 用 の 通 知 が 届
いたのです！採用してくれた
からには、精一杯努めようと
心に決めました。
勤務初日、「社会復帰でき
るんだ」という喜びで胸が一
杯になりました。自分の出来
る範 囲 の 仕 事 が 見 つ かった
のは幸運でした。
そ の 職 場 は 、残 念 な がら
2 0 1 6 年 に 再 発 転 移 が 判り
結局退職しましたが、その時
の 就 活 体 験 の お 陰 で 、今 は
また 新しい 職 場で 働 いてい
ます。
同じ様 に 求 職 活 動 をされ
て いる 方 へ 、私 の 体 験 が 少
しで もお 役 に 立 てば 幸 いで
す。
そして面 接。「現 在 は 治 療
も終 わった ので 普 通 に 働 け
るし、病 気 になった 事 により
薬 剤 の 重 要 性を改 めて感じ
た ので、今 後も勉 強した い」
と必 死で 話しました。や はり
病 気 は 大 きな ハンデ だ なと
落ち込み、あまり期待は持て
ませんでした。
一番不安だった、「履歴書
に 病 気 の 事 を 書く方 が 良 い
か？」と云う疑問には、「敢え
て書く必 要 は 無 い ので は。」
との答えでしたので、履歴書
には 特 段 病 気 の 事 は 書きま
せんでした。
雇用保険の受給も終わり、
とうとう自 分 の 収 入 は 一 切
無くなりました。
丁度その年の4月、富山県
がん 総 合 相 談 支 援 センター
が新設され、がん当事者の悩

7. INFORMATION
免疫療法について解説したマンガ
「免疫のシゴト」公開中
がん情報究極のセミナー＠大阪
ここでしか聞けないセミナー＠日本橋
がん治療における、第4の治療法として注目を集めている、免疫療法の働きについてまとめた
マンガを公開しています。このマンガが免疫療法の正しい理解の一助となれば幸いです。
こちらからご覧頂けます。
https://oncolo.jp/news/20170215t-2
「ONCOLO Meets Cancer Experts」は、様々ながん専門医(オンコロジスト)をお招きし、サバイバーや
ご家族を対象に一歩踏み込んだがんの情報を発信するオンコロ主催のクローズドセミナーです！
■開催スケジュール■
2019年１月30日（金）「第37回 がんに対する免疫療法」
本庶佑先生のノーベル賞受賞で広く知られることになったがんに対する免疫療法。
その実際と将来について学びます。
・講 師：北野 滋久 先生
（国立がん研究センター中央病院 先端医療科 先端医療開発センター）
・会 場：東京都中央区日本橋室町1-5-5
日本橋ライフサイエンスハブ 8F D会議室
・時 間：開場/18：30 講演/19：00 20：30
・参加費：一般・患者: 1,000円
ヘルスケア・製薬企業関係者・医療機関関係者 : 5,000円
https://oncolo.jp/news/20170215t-2
がん情報サイト
「オンコロ」特設ページ
の申し込みフォームを
ご利用ください。
認定特定非営利活動法人 西日本がん研究機構・がん情報サイト「オンコロ」・7大学連携個別化がん医療
実践者養成プラン・特定非営利活動法人 近畿がん診療推進ネットワークが連携しお届けする共催がん医
療セミナーです。
■開催スケジュール■
2019年1月11日（金）「第13回 原発不明がん」
・講 師：谷崎潤子 先生（市立岸和田記念病院）
・会 場：大阪府大阪市浪速区本町１丁目５番地７号 ナンバプラザビル４階
・時 間：開場/18：00 講演/18：30 20：00
・参加費：無料
がん情報サイト
「オンコロ」特設ページ
の申し込みフォームを
ご利用ください。
全 ペ ー ジ P D F で
公 開 中 ！
https://oncolo.jp/event/oos2019
https://oncolo.jp/event/omce2019

8. 本冊子に掲載されている内容を許可無く複製、転用の二次利用することを固く禁じます。
オンコロ「治験お問合せ窓口」ご案内
オンコ ロで は が ん の 臨 床 試 験（ 治 験 ）情 報 を 必 要として いる 患 者 さん や そ のご 家 族 、主 治 医 に 対してオンコロ の
知りうる範 囲 で 情 報 を 提 供しております。お 問 合 わ せ 頂 いても、参 加 を 強 制 する事 はご ざ いませ ん 。
お 気 軽 にご 連 絡くだ さい 。
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（ 平 日：1 0 : 0 0 ∼ 1 8 : 3 0 ）