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Burnout jsn symposium

  1. 下畑 享良 岐阜大学 神経内科・老年学分野 世界における 燃え尽き症候群の状況 バ ー ン ア ウ ト
  2. 第59回日本神経学会学術大会 シンポジウム開催のきっかけ イントロダクション
  3. • 医師のQOL向上セミナーや,リーダーシップ 講習が学会場のいたる所で行われていた. • 多くの教育講演が聴講無料となった. 学術重視から,医師のQOLやキャリア形成重視に シフトした印象をもった. 例年と違った2017米国神経学会年次総会
  4. Live Well 医師向け QOL向上セミナー Taking care of your patients Starts with taking care of you
  5. Live Well スペース
  6. Leadership University
  7. 学会が変わった原因は何? • AAN会長のTerrence Cascino先生の講演で 理解ができた. ⇨ 本格的に「バーンアウト」対策を開始した!
  8. 会長講演(Terrence Cascino先生)
  9. • 医師はそもそも他の職業と比し,バーンアウトが多く 3人に1人が経験する(JAMA 2009). • しかし他の診療科医と比較し,神経内科医はバーン アウトの頻度,ワーク・ライフバランスの満足感とも 非常に悪い. • 自身のため,患者のため,われわれは立ち上がる 必要がある. 会長講演の主旨
  10. 平均 平均 燃え尽き 58% WLB満足 32% Shanafelt et al. Mayo Clin Proc 90; 1600-1613, 2015
  11. • 米国人神経内科医にて約60%に,少なくとも 1つ以上のバーンアウトの所見を認めた. (Neurology 88;1-12, 2017) • 中国人神経内科医でも53%と高率であった. (Neurology 88:1727-1735, 2017) ➔ 日本の状況を知り,対策を考える必要がある. 相次いだ神経内科医のバーンアウトの報告
  12. バーンアウト とは? 神経内科と バーンアウト いかに 予防するか 概 略
  13. 1.バーンアウトとは?
  14. • アメリカの心理学者Freudenbergerが提唱. • 対人的サービスを提供する職種(医師・看護師・ ケースワーカー・教師など)において,元来は 活発に仕事をしていた人が「燃え尽きたように」 意欲を失う状態. バーンアウトの提唱(1974)
  15. 人を相手に働く過程において心的エネルギーを使い切って しまい,相手に与えるものはもう何もないという情緒的な 疲弊が生じ,クライエントに対して否定的で冷淡な態度を とるようになる,またクライエントに対する自己の仕事ぶりに 否定的評価を下すようになる現象. バーンアウトの定義(Maslachら1981)
  16. ① 情緒的消耗感(Emotional Exhaustion) 仕事を通じて情緒的に力を出し尽くし,消耗して しまった状態 ② 脱人格化(Depersonalization) 患者さんに対する無情で非人間的な対応で, 防衛反応の一つ ③ 個人的達成感(Personal accomplishment)の低下 バーンアウトの3要素 久保真人.バーンアウトの心理学(サイエンス社)
  17. 個人的達成感の低下 情緒的消耗感 脱人格化 過大な情緒的資源が要求 される職務 自己評価の低下 情緒的資源の 節約(防衛反応) 患者の人格を無視 思いやりのない 紋切り型対応 成果の急激な 落ち込み 3要素の関係
  18. • 対人的サービスへの要求の増大 • 高齢化による対人的サービスの質・量増加 • 少ない人的資源 → 過重な負担に耐えきれない バーンアウトの背景
  19. 評価法 Maslach Burnout Inventory(BMI) 情緒的消耗感 (5項目) • こんな仕事,もうやめたいと 思うことがある. • 仕事のために心にゆとりがなく なったと感じることがある.等 脱人格化 (6項目) • 同僚や患者の顔を見るのも 嫌になることがある. • こまごまと気配りすることが 面倒に感じることがある.等 個人的達成感 (6項目) • われを忘れるほど仕事に熱中 することがある • 今の仕事に,心から喜びを感じ ることがある.等
  20. バーンアウトのもたらすもの バーンアウト 診療過誤・質の低下 患者に対する共感欠如 患者予後↓ ワーク・ライフバランス↓ うつ・不安 専門性・成長の断念 早期退職 アルコール・薬物依存 自殺 患者への影響 自身への影響 医師としてのプロフェッショナリズムや医学教育に関与
  21. 現代医療とバーンアウト
  22. 神経内科医を取り巻く環境は 大きく変化しており,倫理観や プロフェッショナリズムといった 医師としての根幹を脅かしか ねない状況となっている. ➔ 6つの状況 James Bernat教授(AAN 2014) Dartmouth Geisel School of Medicine Neurology 83:1285-1293, 2014
  23. • 医学・医療のビジネスとしての側面が無視できなく なった. • ビジネスでは,患者さんは単にお金儲けの対象に すぎない. ①医学・医療のビジネス化
  24. • メディケアの支払いシステムが悪影響を及ぼす. 保険点数を大きくする方向に医療の舵が切られ ている. • 今やカルテの目的は,患者さんの状態や診療を 詳細に記載するためより,診療報酬を算出する ための記録になりつつある. ②保険医療制度の影響
  25. • 売上げ等による医師の評価が進んでいる. • 医師は否が応でも意識せざるを得ない. ③病院の被雇用者としての医師
  26. • 電子カルテは記述の簡素化や,退院総括などに おける安直なコピーペーストをもたらした. • 回診も様変わりし,患者さんを直接診察するより 電子カルテでデータを見ながら行っている (indirect patient careの日常化). ④医療の電子記録の弊害
  27. • 患者自身によるオートノミーが尊重され,医師の 役割・貢献が減った. • 患者のケアは,看護師や理学療法士等が行い, 医師の役割は減った. (医師のdeprofessionalization). ⑤医師の権威の失墜・信頼喪失
  28. 安定した研究,教育,経営が困難な状況になり つつある. ⑥医科大学の困難
  29. 小括1 • 現代医療はバーンアウトにつながる様々な 要因に囲まれている. • バーンアウトは医師のプロフェッショナリズム, 診療の質,医学教育に悪影響を与える.
  30. 2.神経内科とバーンアウト
  31. 神経内科医に対する4つの調査研究
  32. • 神経内科医4127名に対する調査 回答率40.5%,平均年齢51歳,男性65.3% • 60.1%に少なくとも1つ以上のバーンアウト所見 – 情緒的消耗感 53.4% – 脱人格化 41.4% – 個人的達成感の低下 21.2% ① 米国における調査(AAN. 2016) Busis et al. Neurology 88;798-808, 2017
  33. • 勤務時間/週 • 夜間のオンコール回数/週 • 外来患者数/週 • 事務仕事の量 • 一般病院>大学病院 リスク因子
  34. • 医療スタッフによる効果的なサポート • 仕事に対する自己決定権 • 仕事に意義を見出すこと • 年齢が高いこと • てんかん診療医 リスク低下因子
  35. • China Neurologist Associationが全国の神経内科 医に対し,MBI等によりバーンアウトの頻度と 関連する要因を調べた横断研究(2014-2015). • 693名の指導医と,6111名の神経内科医が参加. ② 中国における調査(2017) Zhou et al. Neurology 88; 1-9, 2017
  36. • バーンアウト率(1因子以上) 53.2% – 情緒的消耗感 37.4% – 脱人格化 36.3% – 個人的達成感の低下 55.2% • 医師になったことを後悔 58.1% Zhou et al. Neurology 88; 1-9, 2017 ② 中国における調査(2017)
  37. • 勤務時間/週 • 夜間のオンコール回数/週 • 低収入 • 公的病院での勤務 • 精神的な不健全 • 強い仕事のストレス • 低い仕事への満足度 • 医師・患者関係不良 リスク因子
  38. 因果関係に関する考察 バーンアウト 自身への影響 精神的疾患 仕事のストレス 低い満足度 患者への影響 医師・患者関係不良 神経内科選択の後悔
  39. • 米国頭痛学会 749名中127名が回答 • バーンアウト率 57.4% 今後の1-3年で, • 診療時間短縮 21.3% • 診療患者数を減らす 14.2% • 早期退職を検討 33.9% ➔ 頭痛の専門医療へのアクセス困難化 ③ 米国頭痛専門医に対する調査(2015) Evans RW et al. Headache 55;1448-1457, 2015
  40. ④ バーンアウトに関する要因(自由記載) Miyasaki JM et al. Neurology 89;41730-8, 2017 サイズはコメント数を反映 赤はnegative,緑はpositive
  41. なぜ神経内科医にバーンアウトが 多いのか?
  42. • 高齢化による認知症,脳卒中,パーキンソン病 等患者が増加. • これに伴い,電子カルテや保険などの事務的 業務(時間がかかる非生産的な仕事)が急増. 指定難病・身障・主治医意見書・訪問看護 指示書・生命保険・国民保健等 ① 事務的業務の増加
  43. ② 神経内科医のキャラクター John Hopkins大学 神経内科医100人に対するパーソナリティ調査 「高度に分析的で,考えが系統的で,いくらか 内向的な知識人」 Griffin JW. Nat Clin Pract Neuro 2;726-345, 2006
  44. • 病歴聴取や神経診察をじっくり行うことを重視. • 無意味と思えることに時間を費やすことが苦痛. • 現状は神経内科医によって大きなストレスを与える. Bernat JL. Neurology 88;726-727, 2017 ② 神経内科医のキャラクター
  45. その他のリスク因子の報告
  46. • 米国465名の医師に対する調査 • 最も重視する仕事 – 臨床 68%,研究 19%,教育 9%,管理 3% • 最も重視する仕事が全体の20%未満の場合, そうでない医師と比較してバーンアウト率は高い (53.8%対29.9%:P<0.001). 重視する仕事にかける時間が短い Stephanie M et al. BMC Health Services Research 17;409, 2017
  47. 重視する仕事にかける時間が短いほど多い
  48. 上司のリーダーシップ不良 • 医師,研究者を対象に,上司のリーダーシップ について,60ポイントからなる評価を行ない, バーンアウトと満足度への影響を検討. • リーダーのスコアが1ポイント上がると, バーンアウトが3.3%減少,満足度が9%上昇 (いずれも P<0.001). Shanafelt et al. Mayo Clin Proc 90; 432-440, 2015
  49. 一般病院と大学病院のリスク因子 • 一般病院 – 臨床に関する要求が多い – 市場原理により晒されている • 大学病院 – 研究費獲得 – 論文発表 – 講演 – 教育アワード – 低賃金
  50. • 938名(2/3レジデント,1/3フェロー),回答率 37.7% 平均年齢 32歳,女性51.1% • 少なくとも1つ以上のバーンアウト因子 レジデントの73%,フェローの55% • リスク低下因子 ワークライフバランスが良好 仕事に意義を見出す 神内レジデントもバーンアウトは多い Levin KH et al. Neurology 89;1-10, 2017
  51. • 2006年の米国・カナダの調査で,医学生では 他の学部と比較して,バーンアウト・うつが多い • 皮肉的な態度が増強する一方,患者への共感が 減少する. Acad Med. 2006;81:354-373. 医学生もバーンアウトは多い
  52. • 女性医師(臨床の負荷,賃金) • 遠隔診療 • 大量のEメール • 地方や過疎地域 NEJM 2018;378:309-311 BMC Health Services Research 17;409, 2017 Neurology 89; 1648, 2017 Neurology Clin Practice 7;512-7, 2017 その他,関与が推測される要因
  53. 小括2 • 神経内科医におけるバーンアウトは多い. • 原因として,高齢化に伴う患者数の増加や, 神経内科医特有のキャラクターが関与. • その他の要因として,重視する仕事にかける 時間の短縮,上司のリーダーシップ等がある.
  54. 3.いかにバーンアウトを防ぐか? (世界の状況)
  55. • まず,バーンアウトの頻度を明らかにする. • その上で,以下の対策を行う. 1. 個人 (レジリエンスを高める) 2. 病院や診療科単位の改善 3. 国家的戦略 3つの対策レベル
  56. A) 個人
  57. • 仕事の意義を見出す • リーダーシップ養成 • 教養教育(リベラルアーツ) • ワーク・ライフバランス • 仕事量を減らす工夫(例:Eメール) レジリエンスの向上
  58. • CBDの臨床診断基準(Armstrong基準)のArmstrong先生による • 大量のEメール • 仕事の時間の28%をメール処理に要するとした報告あり – 職場,大学 – オープンアクセス雑誌や学会への勧誘 – 製薬企業等からの宣伝メール – 学会からのアップデート – 学会誌目次 例:Eメールによるストレスの緩和 Armstrong M et al. Neurology Clin Practice 7;512-7, 2017
  59. Eメールによるストレスを減らすコツ • メール・チェックは勤務時間のみにする • フィルターを使用し,不要メールを減らす • 受信ボックスを to do list 代わりに使用しない • cc での送信や,「全員に返信」を減らす • オープンクエスチョンを減らす • 短く,意味の明快なメールを心がける • 意味の乏しい返信をしない • 返信不要など記載する
  60. バーン・アウトしてしまった医師への支援 • 個人・グループでのカウンセリング • メンター制度 重要なはずだが,渉猟した範囲ではあまり 文献が見つからず.今後の重要課題!
  61. B) 病院・診療科
  62. • 病院ワークフローの見直し 事務的作業に対するサポートスタッフ 患者診察後のカルテ入力の方法の改善 • 研究・教育の機会均等化,達成感を認識できる仕組み • 仕事への自己決定権 • キャリアアップ(メンタリング,カウンセリング) • 若手医師の教育 バーン・アウト防止のための支援
  63. C) 国 家
  64. • 保険医療のしくみの是正 • 医師偏在の是正(専門医制度の適正化) • 医師支援政策 • 地方や過疎地域で勤務する医師へのリソースの提供 Stephanie M et al. BMC Health Searcices Research 17;409, 2017 バーン・アウト防止のための支援
  65. 我々は立ち上がり,正々堂々と 意見を述べ,自分自身のため, 患者さんに質の高い医療を届け るために戦わねばならない. Cascino会長のことば
  66. 小括3 • 本邦の神経内科医のパーンアウトの状況を 明らかにする必要がある. • 神経内科医でも年齢,性別,重視する仕事, 勤務先などの状況により異なる可能性がある. • 対策は,個人,病院・診療科,国家レベルで 考えていく必要がある
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