総合商社における戦略的思考
- 1. 【問題 A】
出題者は、
「各社とも1%でも割り当て量を増やすことにしか興味がない」と明記したことで、
この問題を、
「ゲーム」ではなく、
「プロセス」にしてしまっている。
※問題 B で D 社が問題になっているのもこのため。
そして、その「プロセス」は以下の通り。
①A社の提案=A:B:C:D:E=100%:0%:0%:0%:0%→否決。
(反対多数。
)
↓
②B社の提案=B:C:D:E=100%:0%:0%:0%→否決。
(反対多数。
)
↓
③C社の提案=C:D:E=100%:0%:0%→否決。
(反対多数。
)
↓
④D社の提案=D:E=100%:0%→可決。
(賛否同数。
)
↓
D 社だけが参入し、E 社は提案の機会なく終了。
※このゲームのポイントは、賛否同数でも可決になる点である。
賛否同数のとき否決だとしたら、④D社の提案も否決され、E社が 100%となる。
ゆえに、各社の割当比率は、
A:B:C:D:E=0%:0%:0%:100%:0%
撤退する会社は、
いる。
(A,B,C,E)
ちなみに、他の戦略提出者は、
「他者を意図的に撤退させるなどの戦略はとらない」という仮定を無視していると思う。
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- 3. つぎに、前ページで挙げた一般的な売り上げ増加戦略を、D 社に当てはめてみる。
具体的データがない以上、推定のためには確からしい仮定をいくつかつみあげていく必要がある。
仮定①:D 社の目的は、
「売り上げを増加」することのみである。
→問題を素直に読めば、こう限定して差し支えないだろう。
仮定② :D 社は新規参入の際、完全自社株子会社で参入した。
→新規参入には、合弁、合作、子会社などがあるが、ここでは D 社のみを考慮すべき。
仮定③:D 社α国支社だけで独立採算制。売り上げは、本社の売り上げとは連結されない。
→D 社全体の売り上げ増加で補填、などを考えない。純粋にα国支部の売り上げのみを考慮する。
仮定④:問題で問われている売り上げ増加戦略のタイムスパンは、導入期のみとする。
→ここでは D 社の新規市場参入期の売り上げ増加に適切な経営戦略のみを考える。
仮定⑥:D 社は、
中程度の規模の総合商社であり、
一定程度の製品の幅と規模をもって生産調整できる。
→D 社は日本のシェア4位であることから、
(住友商事や伊藤忠商事)をイメージする。
仮定⑥:D 社は、トレードのみを行い、事業投資は行わない。
→総合商社のビジネスモデルは主にトレードと事業投資だが、ここではトレードのみを考慮する。
これらの仮定に基づくと、上述の一般的な6つの売り上げ増加戦略は、以下のように評価できる。
【売り上げ】=【顧客数】×【購入金額】
【顧客数】=既存顧客数+新規顧客数-流出顧客数
・既存顧客数を維持する。→新規参入なので、既存顧客はそもそもいない。
・新規顧客数を増加させる。→導入期の企業にとって最重要課題である。
・流出顧客数を減少させる。→導入期における重要性はより低い。
ゆえに、顧客数に関しては、新規顧客数を増加させることが適切な戦略である。
【購入金額】=商品単価×商品数×購入頻度
・商品単価を増加させる。→新規顧客数増加と矛盾する可能性。
・商品数を増加させる。→新規顧客が少ない以上、ロット数を上げるしかない。
・購入回数を増加させる。導入期における重要性はより低い。
ゆえに、購入金額に関しては、商品数を増加させることが適切な戦略である。
ゆえに、D 社がどのような戦略をとるべきかというと、
新規顧客数を増加させる戦略と、商品数を増加させる戦略をとるべきである。
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