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天文分野の公募への
応募について
島袋隼士(パリ天文台→清華大学→云南大学)
2020年10月10日
はじめに
• 富谷さんが素粒子論の公募についてまとめているのを見つけて
(http://www2.yukawa.kyoto-u.ac.jp/ akio.tomiya/filebox/
post_application.pdf)、じゃあ、天文分野のも作ってみようと思っ
たのがきっかけ。
• 私自身の専門は天文学の分野でも観測的宇宙論(理論)
• 学振以外は海外の公募にしか出したことありませんので、海外公募の
みの体験談となります。
• 私の経験談ですので、一つの意見として参考にしてもらえれば。
• 質問等あれば、bukuro_AT_nagoya-u.jpへお願いします。
年間スケジュール
• D3の四月:理研公募締め切り、国内学振PDの発行、海外学振だと締
め切りの機関も。
• 5月:国内学振PD締切
• 9月:海外研究機関の公募が始まる。私が主に利用したのはAAS
(後述)。Jrec-in、 cosmo-coffee、tennetが公募情報収集にはよ
く使われる。あと、意外にもtwitterで公募情報が流れてくることも
あるし、facebookのjob for astronomyグループにも公募情報があ
る。
• 11月:この時期あたりから、国内の公募も活発になり、1月あたり
にピークを迎え2月くらいに公募が終わり始める。
公募体験(D3前)
• D2時の1月からAAS(American astronomical society)を用いて海外の公募情報を調べ
始める。
• ただし、この時期の公募はD3時の9月着任のものなので、学位取得後(4月)からの着任
は可能かを予め、担当者に尋ねた。
• D3になる前に応募した公募は全部で3つ(UCL、KASI、コロラド大学)。KASIに関して
は、自分の専門からずれているけどとりあえず応募。
• UCL、KASIはskype interviewまで進むもオファーはもらえず。
• オファーがもらえない場合、いわゆるお祈りメールを送ってくるところもあれば送ってこ
ないところもある。
• 当時の業績は筆頭著者論文2本、共著者論文1本。国際会議発表2本。
• 上記業績で国内、海外両方の学振に応募するも、国内が不合格B、海外が不合格C。いずれ
も業績点が2点台と、大敗であった。
• D3の9月に先輩の紹介でパリ天文台へ応募。ありがたいこと
にオファーを頂く。
• 実はパリ天文台の公募はAASに掲載される前に先輩が紹介し
てくれたので、(おそらく)競争は無かった。私がオファー
を蹴れば、AASに公募が掲載されたとのこと。
• 雇用側は公募を出す前に知り合いに「誰か良い人はいる
か?」と聞く場合があるので、人脈は重要。
• この時の業績は筆頭著者論文が3本、共著論文1本、国際会
議発表3本。
公募体験(D3時)
公募体験(PD時)
• PD一年目が終わる12月に公募書類を作り始めて、1月
に応募し始めた。
• 4箇所(MIT、ICL、メルボルン大学、清華大学)に応
募。👉1月下旬に清華大学からオファーをもらう。ICLは
インタビューまで進むもオファーをもらえず。他は書類段
階で落ちた。
• この時の業績は、主著論文4本、共著論文5本、国際会議
発表10本。
公募に必要な書類
• CV : 履歴書。「CV, researcher, tex」で検索をすればテンプレート
がたくさん落ちている。私のWEBにも例があります
• Research interest : これまでの研究と応募先での研究計画書。大体
2 3ページ。私の例に興味がある人はご連絡ください。
• 研究業績 : 発表論文、国際研究会、国内研究会での発表。海外への公
募の場合は、国内研究会は省略した。
• 推薦書 : 普通は3通必要。場所によっては2通のところも。推薦書の
依頼はお早めに。
• (場合によっては)カバーレター : 応募先への挨拶と自己紹介。
インタビュー内容
• 基本はSkypeによって行われる。
• 自分の研究紹介を10分程度で。その後、研究内容についての質
疑応答。
• 応募先でどのような研究をしたいのかの質問。
• 応募先によっては、自分の長所や短所、今後のキャリアプランに
ついて聞かれることも。
• こちら側からも何か質問はあるか?と尋ねられる。着任時期につ
いての確認などを質問した。
オファーの決め手?
• 一番は相手側が求めている研究分野であることが重要。
• 相手がこちらの論文を読んでくれていた。→論文を書いて、
研究内容を国際会議で発表し、名前を売ることが重要。
• 推薦書。ポスドク時に応募してオファーをもらった清華大学
のPI曰く、「(私のボスが)彼を強く推薦すると書いてい
た」とのこと。→論文を出して結果を出すこと、普段からボ
スと雑談したりしてコミュニケーションを図ることが大事。
オファーをもらったら
• 着任時期や、給与、住居、研究費などについて尋ねた方が良
い。私の場合は、年に二回程、国際研究会に派遣できる+PC
支給、とのことだった。
• オファーを受諾したら原則、断ることはダメ、絶対。
• しかし、オファーを受諾する前だったら、条件の良いポストに
行くのはO.K.
• ビザ取得は早めに動き出す必要あり。ビザ申請に相手の機関か
ら書類を送ってもらう必要がある場合、速やかに連絡を取る。
感想
• 情報収集は重要。出したいと思った公募があったら応募し
た方が良い。
• 応募しても落ちて当然、諦めずに何箇所に応募するのが大
事。
• 重要なのは研究して、論文を書いて、名前を知ってもらう
こと。そのためには研究会に参加するのも大事。
2020年10月追加分
ファカルティー公募編①
• ファカルティー公募も基本的にはポスドク公募と一緒。
• ただし、CV、研究業績、推薦書に加えて教育抱負も求め
られる。
• とはいえ、教育経験が無い人も多い。私の場合は教育理
念、これまで後輩との共同研究でどういう議論をしたの
か、そして、どういう科目を教えたいかなどを書いた。
ファカルティー公募編②
• ファカルティー公募は書類審査に通ると、現地に呼ばれてしばらくインタ
ビュー+コロキウムのために滞在することになる。
• 私の場合は1週間滞在し、コロキウム、全ファカルティーメンバーと面談
(一人一時間)、学生やポスドクとのランチがセッティングされた。
• ファカルティー公募でのインタビューでは絶対に聞かれる内容があるので予
め予習しておくのが重要。
• また、発表練習は何度もやった方が良い。
• スライドでは「小学生でも分かるくらい丁寧なイントロ」を行う事が大事。
• 私のジョブインタビュー体験記はこちら
情報収集に役立つサイト
AAS
• American Astronomical Society (AAS)
• https://jobregister.aas.org
• 天文業界最大の公募情報サイト。ポスドクだけではな
く、ファカルティーやPh.D student、技術スタッフなど
世界中の公募情報が載っている。
• 毎月1日に情報が更新される。
Cosmo-coffee
• 宇宙論分野の公募情報が載っている。
• http://cosmocoffee.info→「job vacancies」をクリッ
ク。
• AASに比べると情報は少なめ。
INSPIRE
• https://inspirehep.net/collection/Jobs
• 主に宇宙論や高エネルギー天文学についての公募情報が
載っている。
• Rankで「Postdoc」をFieldで「astro-ph」を指定して検
索すれば天文分野の情報を見ることができる。
Tennet
• 日本天文学会のメーリス。公募情報だけではなく、研究会
の情報など様々な情報を見ることができる。
• 天文学会員ならばメールが送られてくるが、非会員ならば
(http://www.asj.or.jp/tennet/archives/)でアーカイ
ブを見ることができる。
Jrec-in
• https://jrecin.jst.go.jp/seek/SeekTop?fn=1
• 研究職だけではなく、企業の求人や専門学校、高専などの
求人情報について見ることができる。(国内求人)
• 天文分野に限らず、自然科学全般や人文系の情報も見るこ
とができる。
Astro Rumor-mill
• http://www.astrobetter.com/wiki/Rumor+Mill
• 毎年の公募情報と、公募結果について知ることができるサ
イト。
• 自分がオファーをもらえなかった公募の採用者を知ること
ができるかも?
おまけ
海外研究会情報
• 業績をアピールするには研究会が重要。国内の研究会の情
報はtennetで見ることができる。
• 海外の研究会の情報は(http://www1.cadc-ccda.hia-
iha.nrc-cnrc.gc.ca/en/meetings/)や(http://
www.conference-service.com/conferences/
gravitation-and-cosmology.html)で調べることができ
る。
ポスドクの給料や任期
• ポスドクの平均的な月給は30万前後。国内学振PDだと、
月36万で海外学振PDだと国によりますが40万前後らしい
です。
• ヨーロッパでは大体、年額20000 30000ユーロくらいで
す。物価を考慮してイギリスやスイスはもっと高いみたい
ですが。
• 任期は2年あるいは3年の場合が多いです。
ポスドクの給料や任期②
twitterでアンケートを取ってみたところ、以下の結果
が得られた。(*海外でPDをやっている人からの結果
も含む。)

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