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PMと並走してプロダクトに

つなげるUXリサーチ
©️2012-2022BASE,Inc.
自己紹介、組織紹介
野村惇

UI/UXデザイナー


大学で工業デザインを学んだのち、10数年ほど受託系のUIデザイン業務
に従事する。受託時代はデザインとエンジニアリングの境界部で活動す
ることが多かった。

2019年4月にBASE株式会社に入社。2021年以降は業務領域をUIデザイ
ンからUXリサーチへとシフトさせていて、現在ではUXリサーチを主務
としている。
BASE株式会社ProductDesignGroup


BASEをご利用中のショップオーナーが日々の業務で使っている「管理画
面」と、購入者が商品を購入するための「ネットショップ」のUX検討と
UIデザインを行う。→ チーム紹介記事
©️2012-2022BASE,Inc.
BASEサービスの紹介
©️2012-2022BASE,Inc.
今日のトピック
前置き・2021年末までのリサーチ試行錯
2022年から始めた、企画・開発PJから依頼を受けてのリサー
PMとの並走にまつわる、いろい
結論(PMと並走することでリサーチがどう良くなるか
質疑応
おまけ:ユーザインタビューTIPSいろいろ

©️2012-2022BASE,Inc.
最初に結論(というか、今日述べたいこと)
UXリサーチはForthemからWiththemの時代へ
UXリサーチとはすなわちおもてなしである。
©️2012-2022BASE,Inc.
For them から With them へ は

カンファレンスなどで盛んに言われていることですが、

今回お話しするのはその実践例の一つ、のように

解釈していただけたら幸い。
前置き・2021年末までのリサーチ試行錯誤
©️2012-2022BASE,Inc.
BASE社内でのUXリサーチの始まり
もともと行ってはいた。が、組織的ではなかった
そしてデザイナーはリサーチ的なことには関せず
デザイナーがユーザと対話してないってダメでしょ、というシンプルな想い。


→デザイナー有志での野良プロジェクト的な形でインタビューリサーチを始める。
©️2012-2022BASE,Inc.
https://devblog.thebase.in/entry/2021/12/14/110000
https://devblog.thebase.in/entry/2021/02/10/110000
具体的な仮説はなく、


「ユーザの解像度を上げる」

「リサーチ文化を社内に定着させる」


ということを目的に掲げる
2021年のトライ&つまづき
とにかくいろいろ試して、社内報告会したり、他所属のメンバー巻き込んだり
「リサーチやってるよ」の社内認知はできた。共感も得られた。







→しかし目に見える(数字が出たり、プロダクト内で形が残るような)成果は無し
©️2012-2022BASE,Inc.
どうする2022?
具体的な成果につながらないと、他メンバーを巻き込めない。社内にリサーチ文化を定
着させられない。継続できない。


→「ユーザの解像度を上げる」

「リサーチ文化を社内に定着させる」

の姿勢では抽象的すぎた。

もっと具体的な、直接的にプロダクト改善につながるリサーチを模索。
©️2012-2022BASE,Inc.
そして本題へ
本題・2022年の、PJからの依頼起点のリサーチ
©️2012-2022BASE,Inc.
前年に出た課題への対策案
2022年序盤に行った2つの
企画のために定量リサーチを行っているPJに、

定性的な情報を提供する

→しかしこれはちょっと足並み揃わず
企画スタート手前段階にあるPJに(Mgrが)声をかけ、

ゼロの状態から議論に加わる

→良い感じにまわったので、こちらを紹介します。
©️2012-2022BASE,Inc.
Forthem
な感じ
Withthem
な感じ
何をしたか
開発ロードマップ作りをするためのユーザリサーチをしました
ほぼ白紙の、仮説策定段階でアンケートやインタビューを始める
インタビュー前半戦では広く浅く聞いて、仮説を立ててから後半戦で
深掘りをする、という2段階構成
PMと一緒に情報を整理し、開発PJが行うべきことの筋道を描く。

©️2012-2022BASE,Inc.
リサーチャーの姿勢
「PJの依頼を受けて動く」と言っても、受動的になるわけではない。

そのPJの体験設計パートを主導しよう(というか、仕事奪ってやろう)
くらいの意気込みで臨む。


リサーチャー(UXer)マインドをPJの

根っこに埋め込むのだ!という意気込み

©️2012-2022BASE,Inc.
が、これはちょっと
違った。

(後のページで説明し
ます)
リサーチャーがPMと並走することのメリット
©️2012-2022BASE,Inc.
リサーチはリサーチャーだけではできない
実際のところ、PMの尽力によってリサーチの意義が跳ね上がった
深いドメイン理解により、インタビューでより深掘りできる。

インサイトをより深められる。


→ リサーチャーだけでインタビューしてた時より、圧倒的に具体的。

施策につながる情報が多い。
©️2012-2022BASE,Inc.
得られた成果と効果
リサーチ結果がロードマップの根拠づけという位置付
→その後の開発における体験設計の土台となる
自分ごととして深く関わる人が増えた
PM間でユーザ実態情報の共有がされ、社内でのリサーチチームの存
在感が増した
→社の誰かがユーザにアンケートなりインタビューなりしたい場
合は、リサーチチームに一声かかるようになる。

©️2012-2022BASE,Inc.
PMどうしの横の繋がり
PMから別PMへリサーチを勧めてもらえ
リサーチャーが「リサーチしたかったら相談してね」とPMに言って
もあまり響かない。身構えられる感もある
PM間で「その件はリサーチした方がいいね」のような会話が起きる
状態になると、すんなり事が運ぶ。
©️2012-2022BASE,Inc.
得られた成果と効果
リサーチ結果がロードマップの根拠づけという位置付
共感をベースにした、強い根拠づけができ
その後の開発における体験設計の土台とな
PM間でユーザ実態情報の共有がされ、社内でのリサーチチームの存
在感が増し
社の誰かがユーザにアンケートなりインタビューなりしたい場合
は、リサーチチームに一声かかるようになる

©️2012-2022BASE,Inc.
リサーチャーだけでは文化は浸透しない
PMの振る舞いによってリサーチ結果と

リサーチマインドが社内メンバーへ浸
PMが開発メンバーを対象に、インタビュー録画を見る会を企画して
くれる、など。


→ PJへのメンバーのオンボーディングやチームビルティングに

リサーチ成果を活用してくれる。

リサーチから離れたところにいたメンバーたちに、リサーチの

結果だけでなく意義も(体感ともなって)伝わる。
©️2012-2022BASE,Inc.
そしてリサーチャー側も意識が変化
当初、「リサーチを(UX設計を)ガンガン主導するぞ」の

意気込みを持っていたリサーチャーだったが、

途中から「インタビューお膳立て」と「PMのバイアス除去」を

行う人へとスライド。


爆進するPMをサポートするスタンスを

とることが非常に有効だった。
©️2012-2022BASE,Inc.
コスト(人的リソース)面でのメリット
リサーチャーから他メンバー(PM)へアウトプットするコストが大
幅
PM側のリサーチ工数はプラスだが、どっちみちPMからリサーチャー
にインプットする工数、リサーチャーからのアウトプットを理解する
工数がかかることを考えると、(得られる情報の量・質的に)コスパ
は悪くない。
©️2012-2022BASE,Inc.
PMと並走する場合のインタビュー体制
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PMと並走する時の体制 - インタビュー3人体制
メインインタビュワーとサブインタビュワーと議事録役、という形
メインインタビュワーが進行役
サブインタビュワーは書記役とし
て同席するが、実際はあまり書記
しないで、インタビュー深堀りに
尽力する
同席しない議事録役がひたすら内
容を記録。
©️2012-2022 BASE, Inc.
議事録役

(本当の書記)
PMと並走する時の体制-ユーザの前に立つのは2人
SlackHuddleミーティングで傍聴席を用意。議事録役は傍聴席へ
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議事録役はココ
傍聴席は議事録役のためだけでなく、
社内へのインタビューリアルタイム配
信所としても使用している。


社内のリサーチ文化浸透を意図して、
原則としてインタビューは社内向けに
リアルタイム配信しています。
PMと並走する時の体制-3人はリソース多くない?
一般的に推奨されるのは2人体制。熟練したら1人でもできる。これを3人体制で
続けるのはコスパ的にどうなのか
十分な人員が居ないと、あとから「しまったアレ聞くべきだった」の連発。
結局再インタビューや追加インタビューをすることになる。または、十分な
情報を得られないままリサーチが終わる。→これをだいぶ防げる
インタビュー慣れしないメンバーでも一定のクオリティのインタビューがで
きる体制と言える。組織全体のリサーチスキルが上がる。


大局的にみて、コスパは良い。
©️2012-2022BASE,Inc.
結論
©️2012-2022BASE,Inc.
プロダクトの改善にリサーチ結果を活かすには
リサーチャーとPMの並走、という形がよ
より広く深い情報が得られ
プロダクトへの反映がスムー
PMの共感を得られれば、他職種メンバーへのリサーチ文化浸透が期待でき
リサーチャーは、PMがなるべくリサーチに深く関われるよう、かつ、PMの
負荷が上がりすぎないよう、体制作りや資料作りに尽力する。

→ すなわち、PMに対する”おもてなし”精神が超大事

©️2012-2022BASE,Inc.
今回特に言いたいところ
インタビュイーに対してのみならず、

PMに対してもおもてなし精神を強くもつこと。

PMが心地よく、苦労なくリサーチに参入できる状況作りがとても大事。
©️2012-2022BASE,Inc.
専任リサーチャがいない場合は
とにかくオープンマインドで、知見をシェアしながら仲間を増やしていく
(そして並走してくれる人を見つける)のが吉かと
チームビルディングの一環に位置付ける、とか良いかも知れません
なんにせよ、1人で抱えず誰かと並走する形に持っていくのが吉。

withthemとおもてなしの心。
©️2012-2022BASE,Inc.
リサーチうんぬん
というより、あら
ゆる仕事に対して
言えそうなことで
はありますが。
さらには
もっとアウトプットを具体化したい、直接的にプロダクト開発に寄与するものに
したい、という想いもあります
ソリューション提
ジャーニーマップからの、ユーザストーリーマッピン
プロダクトバックログ


©️2012-2022BASE,Inc.
We’re hireing !
リサーチに興味あるPM、デザイナーの方、どうぞ弊社採用にご応募ください。
©️2012-2022 BASE, Inc.
お聞きいただきありがとうございました
©️2012-2022BASE,Inc.
おまけ:インタビューTIPSいろいろ
©️2012-2022BASE,Inc.
TIPSまとめて公開してます
©️2012-2022BASE,Inc.
https://note.com/gimmickdock/n/
naa26b1f4dd39

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