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  1. 1. カイコ創薬:カイコを実験動物として行う創薬研究 コストと倫理的問題の解決 医薬品開発における実験動物の必要性と問題点 試験管内と動物個体での結果の乖離 薬効評価のための、薬物の体内動態を反映した動物モデルの必要性 実験動物としてのカイコのメリット 安価な飼育方法(人工餌、卵の入手、系統維持) 注射器によるサンプル液の注射が可能 採血が可能 バイオハザード(噛まない逃げない) 薬の効き方におけるヒトとの共通性(薬物の体内動態) カイコ創薬 2
  2. 2. カイコでの成果をヒトに拡大することが 期待できる医薬品・食品研究の例 (1)毒性試験(外来化合物の体内動態) (2)感染症モデル(抗菌治療薬) (3)糖尿病モデル(食後高血糖) (4)免疫活性化(自然免疫活性化) 3
  3. 3. 毒 性 試 験 Hamamoto et al. Comp Biochem Physiol C Toxicol Pharmacol. 2009 1 10 100 1000 10000 100000 1 10 100 1000 10000 100000 LD50 in silkworm (mg/Kg) LD 50 in mammals (mg/Kg) R2=0.72 4
  4. 4. Saline S. aureus S. aureus + Chloramphenicol カイコの細菌感染死と抗生物質の治療効果 5
  5. 5. カイコ幼虫黄色ブドウ球菌感染モデルを用いた 抗生物質の治療効果の評価 カイコを用いて抗生物質の治療効果を評価可能 6
  6. 6. 新 規 抗 生 物 質 ラ イ ソ シ ン E Nature Chemical Biology (2015) Hamamoto et al. 日本経済新聞 2014年11月21日 7
  7. 7. カイコ幼虫の血糖値は 給餌時間および餌の糖含量に依存して上昇する 高グルコース食を与えることによりカイコを高血糖状態にすることができる。 8
  8. 8. ヒトインスリンの投与により 高血糖状態のカイコの血糖値は低下した ヒトインスリンは、カイコの血糖値を低下させる 9
  9. 9. Enterococcus faecalis YM0831株によるショ糖摂取による カイコの血糖値上昇の抑制効果 Matsumoto et al. (2019) Communications Biology 157 10 10
  10. 10. ショ糖溶液 (75 g/50 mL) 0 15 30 45 60 90 120 (min) ヒト臨床試験 Heat-treatment: autoclaving (121˚C, 15 min) Matsumoto et al. (2019) Communications Biology 157 11 11
  11. 11. カイコのサイトカインストームモデル 80% DMSOに懸濁した緑膿菌死菌によるカイコの殺傷 12
  12. 12. カイコの敗血症性DIC(播種性血管内凝固症候群)モデル LPS 血液細胞 異物認識
  13. 13. ヘパリンの治療効果 対照 ヘパリン 2mg/larva 14

Notes de l'éditeur

  • 本稿は本年1月に帝京大学薬学部にて行った関水和久の講演をもとに執筆したものである。
  •  これまで薬学分野では、マウスやラットなどの哺乳動物が実験動物として使われてきた。カイコ創薬においては、カイコを実験動物として用いる。これにより、哺乳動物を使うことによるコストや動物愛護の観点からの倫理的問題を解決することが可能となる。カイコ創薬は、カイコをリコンビナントタンパク質の生産工場として使う方法とは異なることを強調しておきたい。
     医薬品開発において実験動物が必要な理由は、探索に使われる試験管内での生化学的評価あるいは細胞を使った評価と、動物試験の結果が乖離するためである。探索された抗生物質の99.9%は感染動物に対して治療効果を示さない。これは、抗生物質の毒性並びに体内動態の問題のためである。前者は理解しやすいが、後者についてはともすると忘れられてしまう。カイコを実験動物として用いることにより、薬物の体内動態を反映した評価を行うことがカイコ創薬の重要な狙いである。
     無脊椎動物の実験モデルとして、ショウジョウバエや線虫が提案されている。これらの動物に比べたカイコの利点は次のようである。すなわち、カイコは我が国の養蚕業の歴史に立脚した、安価な飼育方法が確立されている。いつでも卵が入手可能であり、カイコの純系統が保存されている。我が国においてはカイコの飼育に関して国政的にも最先端の技術が確立されている。
     カイコは大型昆虫であるので、注射器による菌液や薬液を注射することができる。これは実験動物としてのカイコの大きな特長である。また、カイコの血液を採取することが可能である。この技術は、後に述べる高血糖カイコの作出において重要である。また、カイコは人に対して危害をあたえることはなく、容器から逃げることをしないので、バイオハザードの問題がない。このようなカイコの実験動物としての利点を生かして創薬をおこなう。
     問題は、カイコを使った薬効の評価系で、ヒトと共通した結果が得られるか否かである。これまでの私たちの研究は、それが可能であることを示している。以下にその実例を示してゆきたい。
  •  これまでのカイコを使った我々の研究がヒトへの適用が可能であると考えられる例をここに示した。
     最初の毒性試験は、化粧品メーカーからの注目を集めている。また、感染症モデルは抗生物質の治療効果を果たす上で重要である。カイコが糖尿病になる、ということに驚かれる方もおられると思うが、カイコの餌に糖を加えると、カイコの血糖値が上昇する。これに対して、ヒトのインスリンが効果を果たす。最後の免疫活性化について、カイコを含めた無脊椎動物には抗体をコードする遺伝子が存在しない。したがって獲得免疫系は存在しない。カイコは自然免疫だけによって感染防御を果たしている。カイコでは獲得免疫の研究はできないが、自然免疫の研究が可能である。最近の研究により、ヒトにおいて自然免疫は感染防御などに重要な役割を果たしていることが分かってきた。したがって、自然免疫系をターゲットとした免疫活性化物質の評価をカイコを使って行うことができる。
  • このスライドは、カイコと哺乳動物の様々な化合物に対するLD50値が相関していることを示している。したがってカイコを用いて、医薬品候補化合物の毒性を知ることができる。これは、薬物の体内動態がカイコと哺乳動物で共通していることに起因している。
  • 今から20年前には、ヒトに病気を引き起こす病原性細菌や真菌が昆虫を殺傷するか、という疑問について明確な回答はなかった。我々の研究は、ヒトに対する病原菌は例外なくカイコを殺傷することを示している。写真中央は、黄色ブドウ球菌を注射したカイコである。体全体が黒色化し、動かなくなり死亡する。この系の特長は抗生物質による治療が果たされることである。
  • ヒト臨床で使われている様々な抗菌治療薬について、治療効果の指標であるED50値は、カイコと哺乳動物の間でよく一致している。したがって、哺乳動物を使わなくとも抗菌薬の治療効果を評価することが可能である。
  • 我々は日本全土の土壌から細菌を採集し、培養液から抗生物質を調製し、その治療効果をカイコを用いて判定した。約20の治療効果を示したサンプルの中から、新規抗生物質ライソシンEを同定することができた。ライソシンEについては、現在AMEDの支援を得て、ヒトの臨床試験に向けた開発研究が進行している。
  • カイコの餌にブドウ糖やショ糖を添加するとカイコの血糖値は30分で上昇し、高血糖となる。高血糖となったカイコの成長は抑制される。
  • この高血糖となったカイコに対して、ヒトのリコンビナントインスリンが血糖値を低下させ、治療効果を示すのである。これはカイコとヒトの血糖値調節機構に共通した点があることによっている。
  •  我々は、カイコの高血糖を抑制する食品中の物質を検索している。その中で我々は、カイコの血糖値を下げる作用を示す乳酸菌を発見した。
  • この乳酸菌は、ヒトに対しても食後血糖値を下げる作用を示した。この図は、14名の健常人に対するショ糖負荷試験の結果を示している。カイコを使ったスクリーニングにより、効率よく,ヒトで血糖値降下作用を示す乳酸菌を得ることができた。
  • このムービーは、サイトカインストームになったカイコを示している。有機溶媒のDMSOに緑膿菌死菌を懸濁してカイコに注射すると、カイコは麻痺を起こし、前部が黒色化し、2時間以内にカイコは死亡する。
  • 我々はこの現象の解明を目指している。このカイコのショック死においては、麻痺ペプチドと呼ばれるカイコのサイトカインが中心的な役割を果たしている。麻痺ペプチドの働きによりカイコの腸や脂肪体と呼ばれる臓器が損傷し、多臓器不全という状態になりカイコは死に至る。細菌や真菌の外壁成分によるカイコのショック死は、ヒトの敗血症性DIC(播種性血管内凝固症候群)と共通した点があり、治療薬の評価に役立つと期待される。
  • このカイコのショック死に対して、ヒトのDICの治療薬として使われる血液凝固阻害剤であるヘパリンやプロテアーゼインヒビターであるナファモスタットは、治療効果を示す。この系は、治療が難しいヒトの敗血症性DICに対する新薬の発見に役立つと我々は期待している。

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