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1  sur  89
エストニアに見る
医療情報システムの未来
2018年2月3日
日本・エストニア EU デジタルソサエティ推進協議会
(JEEADiS:ジェアディス) 理事  牟田学
www.jeeadis.jp 1
www.jeeadis.jp 2
日本・エストニア/EUデジタルソサエティ推進協議会
  
日本・エストニア/EUデジタルソサエティ
推進協議会 (略称:JEEADiS ジェアディス)
http://www.jeeadis.jp/
エストニアをデジタル社会のモデルとし、国民視点
で日本の情報化社会のあり方を考え、世界に貢献で
きる日本を創ることを目指します。
未来型国家エストニアの挑戦 電子政府が
ひらく世界 (ペーパーバック、電子書籍)
インプレスR&Dから発売中
ラウル・アリキヴィ理事と前田陽二代表理事が
執筆。エストニアの医療情報化も紹介。
www.jeeadis.jp 3
「未来型国家エストニアの挑戦」出版記念セミナー
  
出典 http://www.jeeadis.jp/jeeadis-blog/6
前田代表理事、ロイヴァス首相(当時)、アリキヴィ理事
2016年4月
エストニア共和国
のターヴィ・ロイ
ヴァス首相(当時)
から、お祝いのス
ピーチを頂きまし
た。
www.jeeadis.jp 4
ジェアディス 2018年度の活動予定
  
エストニア視察ツアーの実施
・保健、医療、介護システム、デジタル国家、デジタル政府、スタートアップ
研究会・分科会の定期開催
・医療福祉介護支援システム(NPO広域連携医療福祉システム支援機構 医療介
護支援分科会への参加)
日本版 Xロードの普及推進
組織の法人化(非営利型法人の一般社団法人)
「未来型国家エストニアの挑戦  電子政府がひらく世界」改訂版の出版
「エストニア建国100年記念」と関連づけた講演会等のイベント開催 など
www.jeeadis.jp 5
www.jeeadis.jp 6
  
出典:エストニア政府資料等
バルト三国
の一つ
エストニア
九州より
少し大きい
1991年
ロシアから独立
EU加盟
ユーロ導入
人口・経済規模
日本の1/100
www.jeeadis.jp 7
基本情報
エストニア 日本
面積 (km2) 4.5万 37万
人口 131万 1億2,600万
人口密度(/km2) 30 330 (北海道で約68)
広域自治体 県(15) 都道府県(47)
基礎自治体 町村(213) 市区町村(1,742)
GDP(米ドル) 260億 4.6兆
一人当たりGDP 17,000 32,000
医療費GDP比(%)
※OECD平均8.9
6.0 10.2
失業率(%) 7.0 3.5
平均寿命(歳) 77(女82、男72) 84(女87、男80)
出生率 1.7 1.4
www.jeeadis.jp 8
人口ピラミッド 2017
出典:https://populationpyramid.net
日本 126,045,211人エストニア 1,305,754人
www.jeeadis.jp 9
人口ピラミッド 2050
出典:https://populationpyramid.net
日本 107,411,391人エストニア 1,129,047人
www.jeeadis.jp 10
  
出典:Wikipedia、エストニア政府資料等
エストニアの歴史
他国・他民族による支配と回復の歴史
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13世紀以前 エストニアとしての統一はなく、地域共同体として存立
12-13世紀 十字軍が派遣され、キリスト教化が進展
13-19世紀 ドイツ人による支配時代が続く エストニア人の「闇の時代」
16-17世紀 スウェーデンがエストニア北部の支配権を掌握 「良きスウェーデン時代」
1700-1721年 ロシアとスウェーデンの間で大北方戦争 エストニア全土が戦場に
18-19世紀 ロシアの統治下でエストニア人の権利が制限、民族意識が高まり文化活動が活発化
1918年2月24日 1917年にロシア革命が勃発し、翌年にエストニア共和国の独立を宣言
1918-1919年 エストニア独立戦争(ロシア、イギリス等連合国、ドイツ)
1920年 ソ連がエストニアの独立を承認
1940年
1939年に第二次世界大戦が勃発し、ソ連がエストニアを占領
多くのエストニア人が処刑、ロシア収容所・シベリア送りに
1945年以降 第二次世界大戦後にソ連に再併合され、ロシア人の流入が進む
1980年代後半 ゴルバチョフのペレストロイカ政策、ベルリンの壁崩壊等の影響で民主化・独立の機運が高まる
1989年8月23日 タリン、リガ、ヴィリニュスを人間の鎖で結ぶ運動「バルトの道」に100万人が参加
1991年9月6日 ソ連がバルト3国の独立回復を承認し、国連に加盟
2004年 北大西洋条約機構(NATO)と欧州連合(EU)に加盟
  
1944 独ソ・エストニア戦線
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出典:YouTube ムービー https://youtu.be/vqf46t3gXh0
2015年公開 エストニアの戦争映画
1944年のナチス・ドイツ軍とソビエト赤軍の戦い
エストニア兵士は両軍に属し、エストニア人同士で戦うことに
  
バルトの道 Baltic Way
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出典:Wikipedia 写真:The Baltic Way http://www.thebalticway.eu/
1989年8月23日 バルト三国独立運動の一環として行われたデモ活動
約200万人が参加し、約600kmに渡り「人間の鎖」で3共和国を結んだ
当局の認可を得て平和裏に行われ、鎖が切れないよう周到に計画された
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www.jeeadis.jp 20
エストニアの個人番号と国民IDカード
•名前と個人番号は 公共情報
•個人番号には意味がある
(性別や生年月日が含まれる)
•個人番号を患者識別番号として利用
•国民IDカードの取得は義務
•住所は掲載しない
• 電子認証と電子署名の機能
• 国民、企業、公務員が官民サービスで利用
• 資格の確認はオンラインで参照
• 自己情報の閲覧やオンライン申請ができる
(医療情報閲覧、病院予約などを含む)
• モバイルIDで携帯電話等に対応
電子投票
電子閣議
政府への発議
受験願書提出
運転免許証
パスポート
健康保険証
公的メール
アドレス
オンライン
バンキング
eチケット
電子政府
ポータル
電子認証
電子署名
firstname.lastname_NNNN@eesti.ee
出典:エストニア 警察と国境警備隊
www.jeeadis.jp 21
www.jeeadis.jp 22
eレジデンシー(電子居住)カード
•名前と個人番号は 公共情報
•個人番号には意味がある
(性別や生年月日が含まれる)
•世界中からカードを取得できる
•身分証明書法に基づいて発行
•大使館等で対面の本人確認が必要
•顔写真と指紋をデータベースに登録
• 電子認証と電子署名の機能
• 自己情報の閲覧やオンライン申請ができる
公的メール
アドレス
オンライン
バンキング
電子政府
ポータル
電子認証
電子署名
firstname.lastname@eesti.ee
31234567890@eesti.ee
www.jeeadis.jp 23
エストニアのマイポータルと自己情報コントロール
自己情報の閲覧:基礎情報、住所・不動産、運転免許、パスポート、健康保険など
誰が自己情報を閲覧したか:日時、組織、処理番号、個人番号など
エストニアのデータ交換レイヤー Xロード
出典:エストニア社会省の資料より www.jeeadis.jp 24
データベース:246
参加組織:975
サービス:1789
年間照会:5.7億件
節約:820年労働時間
エストニアの情報連携基盤 Xロード
出典:エストニア政府資料より www.jeeadis.jp 25
アダプタサーバ
データ変換(DBクエリー言語 → XML → DBクエリー言語)の機能を提供。標準化
されておらず、使用プラットフォームに応じて接続側で用意しセンターに登録。
Xロードのデータ変換とセキュリティ
www.jeeadis.jp
26
Xロード(データ交換レイヤー)
アダプタ
サーバ
医療従事者
医療機関登録
データベース
セキュリティ
サーバ
セキュリティ
サーバ
アダプタ
サーバ
住民登録
データベース
セキュリティ
サーバ
セキュリティサーバ
データの暗号化、電子署名、ログ保存・改ざん防止、ファイヤーウォール等の機能
を提供。標準化されており、ソースコードをGithub上で公開。
Xロード
センター
法令に基づくポリ
シーを実施
・参加登録の審査
・参加者リストの
提供
・サーバ証明書の
発行
・監視、侵害検知
民間企業等の
電子サービス
Data Exchange Layer X-Road
https://www.ria.ee/en/x-road.html
データ提供者(RIHAに登録)
トラストサービス
プロバイダー
タイムスタンプ
認証サービス等
データ消費者
データリクエスト(テンプレート)の例
2015年9月15日 13時47分12.85秒に
ビジネス登録事業者番号12345678の代理として
個人番号37412029381という人が
「ペット登録データベース」に対して
「ペット所有者の検索(WSDL)」を
リクエストしました → アクセス制御リストに合えば回答
www.jeeadis.jp 27
日本でXロードを構築すると (1)
www.jeeadis.jp 28
・Xロードは米国の資金提供により200万ドルで構築
・必要なのは、インターネット、サーバ、ソフトウェア
・接続するデータベースや情報システムはマルチ対応
・技術情報、ソースコード等は公開
・2001年の開始から、4回のバージョンアップ
・フィンランド等の諸外国へ拡大中
出典:X-Road Factsheet https://www.ria.ee/x-tee/fact/#eng
上位属性「instance names」の追加:“XTEE.EE” and “PALVELUVAYLA.FI”
日本でXロードを構築すると (2)
www.jeeadis.jp 29
ジェアディスのラウル理事と石田理事が取締役として参加
Xロードを応用した IoTプラットフォーム「avenue」を提供
1. 15年間におよぶ電子政府国家エストニアの
政府インフラを民間応用
2. セキュリティを担保したData Exchange
3. 分散型による大規模なデータベースネット
ワークの構築
4. マルチプロトコル対応したプラットフォー
ムによる無限のスケーラビリティ
5. Beyond API
エストニアのブロックチェーン利用(1)
エストニアの電子政府で採用されているブロックチェーンは、広義のブロック
チェーンである「プライベートチェーン」
電子政府が構築された2000年代初めから、データ交換やログ記録などの用途で、
電子署名やハッシュツリーといったブロックチェーンで使われる技術を採用
2007年に起きたエストニアに対する大規模なサイバー攻撃からの教訓
政府の公的データベースについて、その可用性を損なうことなく、格納された
データの完全性を保証し、かつ内部の脅威からもデータを保護するために、拡
張性の高い技術を開発
「キーレス署名(KSI)」や「KSIブロックチェーン」と呼んでいる
KSIブロックチェーンは、ハッシュ値を連鎖させるタイムスタンプを改良した
分散型システム
www.jeeadis.jp 30
参考:KSI Blockchain https://e-estonia.com/solutions/security-and-safety/ksi-blockchain/
https://guardtime.com/
エストニアのブロックチェーン利用(2)
「キーレス署名(KSI)」の特徴は、暗号鍵を使わずにデータの真正性を検証
できること
主な用途は、
1 電子文書の長期保存
2 取引やシステムのログデータ等の真正性の証明
3 クラウド上のデータやプログラムが正しく運用されていることの証明
Xロードで流通するデータの真正性を保証している
医療データ(電子カルテ、電子処方箋)や、そのアクセスログ(利用履歴)に
ついても、キーレス署名(KSI)を採用している
2017年8月、エストニア政府が、ICO(Initial Coin Offering)による資金
調達を検討していると発表 「エストコイン」と命名
www.jeeadis.jp 31
エストニアのオンライン出生届
市民
(夫婦)
病院
(出産)
住民
登録
保育園
健康保険
登録
電子
出生証明書
子育て関連
サービス案内 オンライン
出生届
(名前登録)
子供の
健康保険
自動登録
出典:Registration of childbirth and choosing a name などエストニア政府資料を参考に作成
https://www.eesti.ee/eng/perekond/rasedus_ja_lapse_sund/sunni_registreerimine_ja_nime_valik
個人番号
生成
オンライン
利用申込み
①
④
⑤
③
②
③
www.jeeadis.jp 32
www.jeeadis.jp 33
エストニア政府の予算構成(2016年度)
社会保障税
出典:Meieraha (私たちのお金)
http://meieraha.ee/view/10
付加価値税
社会保障
医療
(健康保険、
救急医療等
行政サービス
教育
経済
国内消費税
(タバコ、酒、
ガソリン等)
歳出 89.2億ユーロ歳入 88.3億ユーロ
経済収入
譲渡収入
所得税
その他
文化
治安
環境保護
国防
www.jeeadis.jp 34
医療制度
エストニア 日本
医療保険 国民皆保険制度
(人口の約95%をカバー)
国民皆保険制度
保険者 エストニア健康保険基金 国、自治体、民間
医療サービス主体 国、自治体、民間 国、自治体、民間
財源 社会税(雇用主負担) 保険料等
初期医療 家庭医(登録制) 家庭医(かかりつけ医)を推
奨?
エストニアでは、初期医療を強化し、第一次接触ヘルスケア計画(First contact
health care development plan)が重要な役割を担っており、家庭医、在宅看
護・介護、理学療法、歯科ケア、薬局サービスなどが連携しながら、総合的に予防・
治療を行う。
www.jeeadis.jp 35
エストニアの年齢別医療コスト
出典:エストニア社会省 https://www.haigekassa.ee/en/ulevaade-eriarsti-kuludest
www.jeeadis.jp 36
医療従事者・医療施設
エストニア 2013年 日本 2014-2015年
医師 4,395(69%が病院勤務) 311,205
歯科医 1,190 103,972
看護師 7,428(75%が病院勤務) 1,537,813(看護職員)
歯科助手 825 116,299(歯科衛生士)
家庭医(family physician) 800(70%が個人事業主) 100,801 (診療所)
家庭医1人あたりの患者 1200-2000(登録制)
病院(hospital)
外来センター
65
30の介護・リハビリ病院を含む
広域3、中央4、一般11、地方
8,492
www.jeeadis.jp 37
ヘルスケア分類:緊急医療、一般医療、専門医療、看護・介護
エストニアの医療情報システム関連法令
法令 概要
医療サービス組織法
Health Services
Organisation Act
エストニアにおける医療サービス全般を規定する法律。患
者の権利、患者データの取扱いや健康情報システム
(Health Information System)についても規定する。
医療情報システム法
Statute of Health
Information System
医療情報システムとデータベースについて規定する法律。
医療文書とデータの収集・管理・保存、医療従事者のデー
タ提出義務や本人のアクセス拒否権などを規定。セキュリ
ティ等の技術的要件についても規定する。
個人データ保護法
Personal Data Protection
Act
エストニアの個人情報保護法。EU指令等に準拠し、医療
データの取扱いについても規定。
ゲノム法
Human Genes Research Act
遺伝子ドナーの権利やゲノムバンクについて規定する。
その他 公共情報法(Public Information Act)、住民登録法
(Population Register Act)、身分証明書法
(Identity Documents Act)、公文書管理法
(Archives Act)など。www.jeeadis.jp 38
エストニアのデータ保護法(個人情報保護法)
エストニア 日本
基本法 個人データ保護法 個人情報保護法
・行政機関個人情報保護法
・独立行政法人等個人情報保護法
・条例
保護対象 自然人の基本的権利と自由 個人の権利利益
個人情報の範囲 特定または識別できる自然人に
関する全てのデータ(形式は不
問)
特定の個人を識別することができ
るもの(他の情報と容易に照合す
ることができ、それにより特定の
個人を識別することができること
となるものを含む。)
医療情報の取扱い 機微データ(登録制)
・健康または身体障害の状態に関する
データ
・遺伝情報に関するデータ
・バイオメトリックデータ(とりわけ、
指紋、手のひらプリント、目の虹彩画
像および遺伝子データ)
要配慮個人情報
・身体障害、知的障害、精神障害等
・健康診断等の結果
・心身状態の改善の指導・診療・調剤
www.jeeadis.jp 39
エストニアのゲノム法
エストニア 日本
法制度 ゲノム法(ヒト遺伝子研究法:2001年
施行)
人を対象とする医学系研究に関する倫
理指針(2014年告示)
目的 ・遺伝子バンクの設立と維持の規制
・必要な遺伝子研究の編成
・遺伝子提供が自発的なものであること
の明確化
・遺伝子提供者情報の機密性の確保
・遺伝データの誤用・悪用の防止
・DNAの構造および遺伝的リスクの解釈
に基づく差別の防止
人間の尊厳及び人権が守られ、研究の
適正な推進が図られるようにすること
構成 第1章 一般条項
第2章 遺伝子ドナーの権利
第3章 遺伝子バンクの処理
第4章 データ保護
第5章 差別の禁止
第5.1章 遺伝子バンク責任者の資金調達
第6章 行政監督と紛争処理
第7章 法律の施行(附則)
第1章 総則
第2章 研究者等の責務等
第3章 研究計画書
第4章 倫理審査委員会
第5章 インフォームド・コンセント等
第6章 個人情報等
第7章 重篤な有害事象への対応
第8章 研究の信頼性確保
第9章 その他
www.jeeadis.jp 40
エストニア ゲノムセンター(タルト大学 バイオバンク)
•本人の同意に基づくデータ
収集
•エストニア人口の年齢、性
別、地理的分布を反映した
データ
•18歳以上の51,515人が
遺伝子提供者
•データは暗号化・匿名化
•国内外の研究者がデータを
利用可能(有償)
•本人のメリットは個別化医
療の提供
出典:Estonian Genome Center, University of Tartu
http://www.geenivaramu.ee/en
www.jeeadis.jp 41
エストニアの患者ポータル
•自分や家族の医療データを
閲覧できる
•誰がどのような権限で自分
の医療データにアクセスし
たのか確認できる
•誰が自分のデータにアクセ
スできるか指定できる
•臓器提供等の意思表示がで
きる
代理人を指定できる(代理
人としてアクセスできる)
•IDカードによる本人確認
•欧州委員会からの財政援助
出典:https://www.digilugu.ee/
www.jeeadis.jp 42
www.jeeadis.jp 43
EUのeヘルス(デジタル・ヘルスケア)とは
出典:European Commission eHealth : Digital health and care
https://ec.europa.eu/health/ehealth/overview_en
www.jeeadis.jp 44
健康・生活習慣の予防、診断、治療、モニタリング、管理を改
善するICTを活用したツールやサービス
1 市民の健康を改善する
2 医療の質とアクセスを向上する
3 国境を越えた医療提供を確立する
・健康情報ネットワークとデータ共有
・電子健康記録(EHR/PHR)
・遠隔医療サービス
・ポータブル患者監視デバイス
・手術室スケジューリングソフトウェア
・ロボット手術
EUのeヘルス利用ランキング2012
出典:European Hospital Survey: Benchmarking Deployment of e-Health Services (2012-2013)
www.jeeadis.jp 45
医療情報化
エストニア 日本
患者識別番号 あり なし (医療等IDを導入予定)
eヘルス戦略 あり なし(健康・医療戦略)
電子カルテの普及 90-100% 20-70%
電子カルテの共有 全国 系列病院、地域
データ標準化 国主導で実施済み ATC
コード、HL7、ICD10 等
国が推奨する標準?
病院ネットワーク化 2015年に全国完了 各地域でネットワーク化?
電子処方箋 あり(利用率98%) なし (実現に向けてガイドライ
ン公表)
患者ポータル
(自己医療情報の閲覧)
あり なし (一部地域で実証等)
医療データ提供 医師に義務付け データ提供を依頼
(がん登録は義務化)
エストニアはEUやOECDにおけるeヘルスのリーダー国
www.jeeadis.jp 46
エストニアの医療情報交換基盤 (HIE)
Estonian National Health Information Exchange
全国規模で医療データを交換する基盤として2008年に整備
Electronic Patient Record (EHR)
電子患者記録システム
構築費用:約2億円
患者情報、医療記録、来院記録、病歴等が
作成・登録・データベース化される。
Digital Image
電子画像管理システム
構築費用:約2500万円
X線やCT画像等のデータが作成・登録・
データベース化される。
Digital Registration
電子予約登録システム
構築費用:約2500万円
患者が医療機関をオンライン予約できる。
予約情報は各医療機関のシステムと連動。
Digital Prescription
電子処方箋(2010年から)
構築費用:約3000万円
年間約800万枚の処方箋を電子化し、利用
率98%を超える。
eヘルス財団が構築・運営(電子処方箋のみエストニア健康保険基金)
www.jeeadis.jp 47
ガバナンス:eヘルス財団を中心として
エストニア政府の医療システムを開発・管理するため2005年に設立
社会省
家庭医
タルトゥ大学
東タリン中央病院
北部広域病院
救急医療連合
全国病院協会
eヘルス財団
役員部会
eヘルス財団
マネジメント部会
医療情報システム
基盤の運用
標準化と
サービス開発
マーケティングと
コミュニケーション
利用者
利用機関
www.jeeadis.jp 48
2000
エストニアのeヘルスと医療情報交換基盤 (HIE)の歴史
201020082006200420022000
立案
計画の準備
2003-2005
eヘルス財団
設立 2005
eヘルス計画の実施
2005-2008
HIEの完成
2008.12
電子処方箋
2010
経済省による
予算措置
電子患者記録 電子画像管理 電子予約登録 電子処方箋
www.jeeadis.jp 49
最初に決めるべき設計上の重要事項
クロスボーダー医療を意識とした国際標準の採用が原則
1. 主要な医療情報を中央に統合する(オプトアウト方式)
2. データ交換の標準(HL7 v3)
3. XML形式(HL7 CDA)による文書保存
4. 全ての構造化されたデータ項目が識別子(OID-s)を持つ
5. 診療文書の最終版のみをデータ交換する
異なる情報システム間でデータ交換することが前提
www.jeeadis.jp 50
エストニア eヘルスの標準
1. HL7とDICOM(画像アーカイブ)
2. 国際分類:ICD-10、LOINC、NCSP、ATC
3. エストニアeヘルスのOID(識別子)レジストリ
4. 国内ローカルの分類:
・分類情報を公開
・分類ルールについて法令で規定
•高い透明性、公開性、専門性の下で合理的に意思決定する
•医療関係者、関係省庁、保険者、システム開発者、関係分野
(医療標準、標準化、用語等)の専門家が参加
①データセットの作成 → ②形式化・マージ → ③承認・公開
www.jeeadis.jp 51
医療情報システム標準・分類公開センター
www.jeeadis.jp 52
出典:Standardite ja klassifikaatorite publitseerimiskeskus http://pub.e-tervis.ee/
エストニアeヘルスの全体構成
出典:エストニア社会省の資料より
(HIE)
① ② ③
⑥⑤④
データベース層:① ② ③ ⑥
セキュアデータ交換層:X-Road
アプリケーション・サービス層:④ ⑤
www.jeeadis.jp 53
エストニア全国医療情報交換基盤 (HIE)の仕組み
標準化された
バーチャルデータベース
EHRの中央DB
患者主要情報
(連絡先情報、保険情
報、アレルギー、重要
な薬物情報等)
EHR
全住民の誕生から
死亡までの医療記録
他の情報源への
リンク情報
(Link Directory)
(病院や家庭医のITシス
テム、各種DBと接続)
患者ID
(個人番号)
各情報ID
患者ポータル
医師ポータル
薬剤師・家庭医
業務アプリ
パソコン
スマホ、タブレット
各病院
ITシステム
各薬局・家庭医
ITシステム
スマホ、タブレット
電子処方箋
センター
診断記録
サマリーDB
(epicrisis)
予防接種
DB
診断画像
DB
検査
DB
医薬品
コードDB
医療機関
医療従事者
登録DB
医療標準
分類DB
医療統計
ポータル
匿名化
データ
等
々
医療研究
開発
符号化
データ
救急医療
モバイルアプリ
ゲノムDB
(バイオバンク)
出典:Digitaalse terviseloo meditsiinidokumentide IT standardid ja publitseerimispohimotted Haigusloo epikriisなどから作成
www.jeeadis.jp 54
新たに10万人のゲノムデータを収集
•社会問題省、国立健康開発研究所、ゲノムセンターの共同開発
プロジェクト
•予算は500万ユーロ(約6.7億円)で2018年度に実施
•個人の遺伝的リスクを本人にフィードバック
•日常的な医療行為に統合することを目指す
→ 国民健康情報システム(EHR)と遺伝データの関連付け
•エストニアの個別化医療の発展を促進
•Illumina Global Screening Arrayを使用
出典:https://www.geenivaramu.ee/en/news/100-000-estonians-will-be-offered-information-about-their-genetic-risks
www.jeeadis.jp 55
eヘルスの参加・利用者
20のサービス(アプリ・ソフトウェア)を提供
患者 医師 家庭医 歯科医
看護師 救急隊 介護事業者 保険者
住民登録 法人登録 医療登録 軍隊
ゲノム
センター
血液
センター
医療統計 その他
www.jeeadis.jp 56
電子画像管理システム Nationwide PACS in Estonia (1)
出典:Nationwide PACS in Estonia 等から作成
https://vimeo.com/114324564
2001 スウェーデン政府の財政支援によるBITNET計画
・タルトゥ大学クリニックにAgfa impax 3.5を整備
・DICOMアーカイブとWebビューワーが
・エストニアの医療機関で無料利用できるように
2004 タルトゥ大学がPACSシステムを拡張(3.5 -> 5.0)
・アーカイブ費用は 1ユーロ/1事例
2005 タリン大学が調達コンソーシアムを設立
・タルトゥ大学のPACSに代わる新たなシステムを
2005 政府がEヘルス財団を設立
・全国版のデジタル画像システムの構築へ
2006 エストニアPACS財団(Pildipank)の設立
・タルトゥ大学と北エストニア医療センターが共同
・全国共通の医療画像環境(伝送、保管、使用)の実現へ
2008 全国共通の電子画像管理システムを構築
・2009年から画像アーカイブを開始(強制ではない)
www.jeeadis.jp 57
電子画像管理システム Nationwide PACS in Estonia (2)
出典:Nation-wide PACS system in Estonia
http://mug.ee/ehealth/presentations/Andrus_Paats.pdf
www.jeeadis.jp 58
•様々な電子画像機器からの画像データ
•既存の情報システムと連携・統合
•全国どこからでも画像データを閲覧
CR,CT,MR,XA,US,ES,NM, etc
電子画像管理システム Nationwide PACS in Estonia (3)
出典:Nation-wide PACS system in Estonia
http://mug.ee/ehealth/presentations/Andrus_Paats.pdf
www.jeeadis.jp 59
家庭医(GP)ポータル Impax client
電子画像管理システム Nationwide PACS in Estonia (4)
出典:Nationwide PACS in Estonia 等から作成
https://vimeo.com/114324564
2008-
2013
全国電子画像管理システムの拡張と改善を続ける中で
5つの医療機関が独自の画像管理システムを採用
・約10%の画像が中央システムに記録されず
・他の医療機関が、その画像を閲覧できない
2014 エストニアPACS財団に全国の医療画像を記録する権限を付与
全てのDICOMデータは中央システムに記録される(法律で強制)
・医療機関側からの反対意見もある
現在 全国電子画像管理システムは24時間/365日体制で稼働中
・病院、家庭医、救急医療、医療補助員などが利用
・過去の画像データはフィルムをスキャンしてデジタル化
・電子画像機器(modalities)との通信はVPNで暗号化
・データの完全性や災害時の復旧などにも配慮
・ウェブ閲覧が可能(OSやブラウザに依存しない)
・家庭医(GP)用のポータルサイトを提供
・全国医療情報交換基盤 と連携・統合
・DICOMワークステーション等から操作
www.jeeadis.jp 60
電子画像管理システム Nationwide PACS in Estonia (5)
出典:Nation-wide PACS system in Estonia
http://mug.ee/ehealth/presentations/Andrus_Paats.pdf
www.jeeadis.jp 61
電子画像管理システム Nationwide PACS in Estonia (6)
出典:Nationwide PACS in Estonia 等から作成
https://vimeo.com/114324564
2013年度 開発・拡張・維持費の合計:869,000ユーロ(約1億500万円)
・ハードウェア:5200万円
・ソフトウェア:4000万円
・維持費:1300万円
2012年末 全国電子画像記録の運用状況
・累計600万超の事例
・データ容量は480TB
www.jeeadis.jp 62
e-prescription 電子処方箋サービス
出典:Estonian digital prescription system - how does it work?
https://youtu.be/m9rTZM2kj78
www.jeeadis.jp 63
医師がパソコンを操作して発行
データは電子処方箋センターに登録
薬局でIDカードによる本人確認
薬剤師はセンターにアクセス
本人は患者ポータルで閲覧可能
エストニアの電子処方箋サービス
http://www.e-tervis.ee/
患者ポータル等から
処方内容や医療情報
を閲覧
約99%が
電子処方箋
人とコンピュータの
チームプレーによる
業務の自動処理化
住民登録 医師資格情報
医薬品情報 病院勤務情報
①処方箋作成
の指示
②自動参照②自動処理
②同時処理
③処方内容の
確認・決済
医師
②瞬時に完了
処方箋
センター
④処方箋の登録
個人情報は
移動しない
(原本の参照)
⑤
参照
⑤
参照
薬剤師
www.jeeadis.jp 64
www.jeeadis.jp 65
エストニアと日本のマイナンバー業務比較
人とコンピュータの
チームプレーによる
業務の自動処理化
紙の情報連携を電子化
伝言ゲーム?
住民登録 金融情報
資格情報 不動産情報
①命令
②自動参照②自動処理
②同時処理
②瞬時に完了
エストニアでは
N機構
B県
K省 A市
①情報提供を依頼
③自動
提供
②依頼
日本では
仲介システム
②依頼
②依頼 ②依頼
⑤手動
提供
③自動
提供
④手動提供
③確認・決済
個人情報は
移動しない
個人情報が
移動する
手動で提供
するケースも
原本ではない
副本データ
組織ごとに
情報散乱
分野ごとに
情報整理
www.jeeadis.jp 66
デジタルパートナーシップのすすめ
人とコンピュータの新しい関係
1. コンピュータは人の役に立ちたい
2. コンピュータが働きやすい環境を整える
3. コンピュータが期待に応えると人は嬉しい
人々を幸せにするデジタル社会は誰が作るのか
www.jeeadis.jp 67
エストニアのeヘルス戦略2020
「eヘルスビジョン2025」および「eヘルス戦略的開発計画2020」
1. 利用者中心で科学的根拠に基づく適切なサービス
2. 全体的なケース管理と統合されたサービスネットワーク
3. サービスのパフォーマンスと品質の改善(測定・評価・予測)
4. 遠隔医療等によるサービスアクセスと人的資源利用の最適化
出典:e-tervise strateegia 2020 より
https://www.sm.ee/et/strateegia
www.jeeadis.jp 68
Healthcare 4.0
Healthcare 1.0 (1990-2009年)
・旧ソ連制度からデジタル社会への移行
・紙への記録からコンピュータ上への記録へ
Healthcare 2.0(2007-2017年)
・異なるヘルスケアシステムの統合・標準化
・病院や診療所のワークフローの変化
・患者情報の共有と本人アクセス手段の提供
Healthcare 3.0(2017-20XX年)
・患者の全データの収集・統合と本人アクセス権の強化
・医師収集のデータ + 本人追加のデータ(遺伝子情報等)
Healthcare 4.0(20XX-20XX年)
・患者本人のエンパワーメント(自身の健康要因を知る)
・患者自身が使用する医療用具(point-of-care device)
・グローバルな健康保険と人工知能に基づく健康方法
出典:e-Estonia より
https://e-estonia.com/healthcare-4-0-is-finally-going-
to-fix-healthcare/
www.jeeadis.jp 69
個別化医療における
デジタル意思決定支援システム(DDSS)
出典:Feasibility study for the development of digital decision
support systems for personalised medicine (2015年6月)
•エストニア社会省とタリン工
科大学による共同研究
•個別化医療の原則に従い、臨
床的意思決定をサポートする
(デジタル意思決定支援ソ
リューション)
•使用可能な健康データのマッ
ピングと標準・データ形式の
特定
•現実的な健康データと病歴を
有する仮想個人の寿命をカ
バーする3つの臨床状態(心血
管疾患、糖尿病、癌)のモデ
ルシナリオの開発
•人生の段階における予防、治
療、フォローアップ/モニタリ
ングを含む
www.jeeadis.jp 70
DDSSは、健康成果を改善し、不要な検査を減らし、薬物
と薬物の相互作用を排除し、不要な入院を避けることを目
的とする。
個別化医療における
デジタル意思決定支援システム(DDSS)(2)
出典:Feasibility study for the development of digital decision
support systems for personalised medicine (2015年6月)
•表現型(行動データ、環境
データを含む)および遺伝子
型データ
•どのポイントでどのような
データが必要か
•必要なデータが、どこに存
在しているか
•どのような形式で格納・保
存されているか
•データの収集と分析に必要
な技術的手段を決定
•DDSSの実現が技術的に可
能となる
•シナリオに基づくプロトタ
イプの作成 → 拡張可能
www.jeeadis.jp 71
個別化医療における
デジタル意思決定支援システム(DDSS)(3)
DDSSを実現するための戦略計画の提案
- ユーザーまたは品質目標に応じて、「全ゲノム、健康・医療データ」を、
異なるDDSSを使用して処理するために、各種データをリンクするための
組織と情報技術の枠組みを確立する。
- DDSSアルゴリズムに必要なさまざまなデータのソースについて、既存
の組織・機関の医療・公衆衛生データベースを監査・分析する。
- 個別化医療で使用するためDDSSアルゴリズムを入手(市販、または新
たに開発)するための調達計画を策定する。
- DDSSにおけるオープン・ユースのために、収集されたゲノム、健康・
医療データの正規化を担当する組織を設立する。
- DDSSの「機能性」と「データ二次利用の重要性」と「保健医療分野に
おける新しいe-サービスの実装」を念頭に置いて、医療関係者が使いやす
いソフトウェアとアプリケーションの要件を開発・公開する。
www.jeeadis.jp 72
EHRのテキストマイニング
www.jeeadis.jp 73
診断記録
サマリーDB
(epicrisis)
健康保険
DB
ゲノムDB
(バイオバンク)
・非構造化データが大量にある
・非構造化データの分析が必要
・個人識別情報の除去 → 医療研究
参照:Text-mining the Estonian National Electronic Health Record
https://courses.cs.ut.ee/MTAT.03.242/2015_fall/uploads/Main/PersonalisedMeds.pdf
エストニアeヘルスの3大ビッグデータ
エストニアの成功要因
徹底した透明性と実績に基づく社会的な信頼と合意
効率的でシンプルな医療制度、使いやすい番号制度
多種多様な関係者の参加を前提とした迅速で合理的な意思決定
義務化やオプトアウトを活用したわかりやすい法制度の整備
Xロードを基礎とした安心・安全・迅速な情報連携の仕組み
取得が義務化された国民IDカードによる厳格な本人確認と認証
www.jeeadis.jp 74
日本が変わるきっかけは
財政破綻などのハードランディング、地方での医療崩壊の顕在化
人々が健康であることの根拠となる基本的人権の確立
医療・介護における働き方の多様化、人材の多様性の高まり
リソースの有効活用:
マッチングエコノミー、マッチングプラットフォーム
AIの普及による「迅速で合理的な意思決定」の一般化
一人ひとりの「気づき」 自分の健康は自分だけのものではない
www.jeeadis.jp 75
健康とは
日本国憲法第25条
すべて国民は、健康で
文化的な最低限度の生
活を営む権利を有する。
健康増進法第2条
国民は、健康な生活習
慣の重要性に対する関
心と理解を深め、生涯
にわたって、自らの健
康状態を自覚するとと
もに、健康の増進に努
めなければならない。
健康・医療戦略推進法
国民が健康な生活及び
長寿を享受することの
できる社会
「健康長寿社会」
心身がすこやかな状態であること
(広辞苑)
健康とは身体的・精神的・霊的・社会的に完全に良好な動的状
態であり、たんに病気あるいは虚弱でないことではない。
(WHO 定義提案)
出典:Wikipedia 、法令データ提供システムなど
www.jeeadis.jp 76
健康と幸せ
健康づくりのためのオタワ憲章(前提条件)
平和 住居 教育 食糧 収入
安定した環境 持続可能な資源
社会的公正と公平
国連 世界幸福度報告(6つの説明変数)
人口あたりGDP 社会的支援
健康寿命 人生の選択の自由度
寛容さ 腐敗の認識
www.jeeadis.jp 77
慈悲の瞑想
私は幸せでありますように
私の親しい生命が幸せでありますように
生きとし生けるものが幸せでありますように
人工知能は?
出典:日本テーラワーダ仏教協会 より
www.jeeadis.jp 78
全てのものは
他のものとの関係性において
存在する
www.jeeadis.jp 79
www.jeeadis.jp 80
www.jeeadis.jp 81
一人ひとりの「気づき」
医療費の膨張 → 医療の高度化・効率化による対応の限界
一人ひとりの意識を変える → 既存のマーケティング広告の限界
北欧型の高福祉社会 → 世界経済成長への依存、持続可能性の低下
米国型のNGO寄付社会 → 格差の拡大、巨大IT企業への警戒
衣食足りて礼節を知る → 一人ひとりが社会全体の幸せを考えること
は可能か
心(脳)への直接的なアプローチは、どこまで許されるのか
www.jeeadis.jp 82
脳科学とAIへの期待
国際電気通信基礎技術研究所 脳情報通信総合研究所
所長・ATRフェロー 脳情報研究所の川人光男氏へのインタビュー
脳科学の研究にディープラーニングを応用する環境の進展
脳の中の情報を読み出す技術「デコーディング」
デコーディッド ニューロフィードバック(DecNef)
人の感覚や行動、感情を、無意識のうちにはっきりと変えることができる
科学的データに基づく治療ができなかった精神疾患の医療への応用に期待
www.jeeadis.jp 83
出典:心や意識の謎、脳科学はここまで近づいた 日経BizGate
http://bizgate.nikkei.co.jp/article/145861718_2.html
経済財政運営と改革の基本方針2017(骨太方針)
出典:内閣府 http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2017/decision0609.html
「生涯現役社会」の実現に向けて、国民一人ひとりが生活の質(QOL)を高め健康
寿命を延ばせるよう、ICTやデータを活用した健康・予防サービスへの更なる需要
拡大を図る。
国民全体の健康・予防への意識を高めるため、データヘルス等を活用し、企業の質の
高い健康経営を促進する。加えて、自治体や企業・保険者における重症化予防等の先
進的な取組の全国展開を図る。
質の高い健康・医療・介護サービスに対するニーズに応えるため、AIやゲノム情報
の活用等による革新的な医薬品、治療法、診断技術や介護ロボット等の開発等を促進
する。
全ての団塊の世代が後期高齢者となる2025 年度を見据え、データヘルスや予防等を
通じて、国民の生活の質(QOL)を向上させるとともに、世界に冠たる国民皆保
険・皆年金を維持し、これを次世代に引き渡すことを目指す。
個人・患者本位で最適な健康管理・診療・ケアを提供する基盤として、健康・医療・
介護のビッグデータを連結し、医療機関や保険者、研究者、民間等が活用できるよう
にする。
がんのゲノム情報や臨床情報等を集約し、質の高いゲノム医療を提供する体制(がん
ゲノム医療推進コンソーシアム)の構築を進め、がんの免疫療法等の革新的治療法や
診断技術等の開発を行う。
www.jeeadis.jp 84
日本のPeOPLe(ピープル)構想
出典:保健医療分野におけるICT活用推進懇談会提言書より
個人の健康なときから疾病・介護段階までの基本的な保健医療データを、その人中心
に統合する。保健医療専門職に共有され、個人自らも健康管理に役立てるものとして、
すべての患者・国民が参加できる。 2020-2025年頃に完成予定。
www.jeeadis.jp 85
情報基盤の整備と活用の推進 現状と課題
出典:第2回 次世代医療ICT基盤協議会 厚生労働省資料より
課題 現状
既存の医療保健データ
ベースの連結
医療・健康分野の既存のデータベースについては、現在、
十分な連結がなされていない。
生涯を通じた健康・疾病
管理
がん登録制度におけるコホート研究や、予防接種データ、
検診データ、治療データ、介護関係データ等を一連のもの
とした、縦断的な蓄積・分析は現状では進んでいない。
臨床専門領域のデータ
ベースの整備
各専門領域で構築されるデータベース等について、十分な
整備が進んでいない。
情報基盤の整備について
の課題
医療情報の収集・利活用の前提となる電子カルテの標準化
がすすんでいないこと、匿名化した個人情報取得のための
患者同意の取り方、セキュリティ面での課題がある。
地域の医療機関や介護事業者がICTを利用して患者情報を共有するネットワー
クが各地で構築されている。(2015年5月現在で約200)
www.jeeadis.jp 86
eヘルスのセキュリティ
1 すべての利用者の安全・確実な認証(本人確認)
2 アカウンタビリティ・透明性・トレーサビリティの最大化
3 個人データと医療データの分離(個人データの符号化)
4 技術管理者からも機密情報を守る暗号化データベース
5 すべてのアクションの効果的な監視ツールと組織的・技術的な対策
出典:The Estonian eHealth experience ‐ strategy and results より
http://www.kith.no/upload/6407/HelsIT-2011_T2-5_Piret_Simmo.pdf
www.jeeadis.jp 87
セキュリティ:日本の安全基準を満たすか?
6.11 外部と個人情報を含む医療情報を交換する場合の安全管理
B-2.選択すべきネットワークのセキュリティの考え方
Ⅱ.オープンなネットワークで接続されている場合
出典:第30回 医療情報ネットワーク基盤検討会(平成28年12月21日)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000146688.html
「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」第4.4版 案
通信経路上では、「盗聴」、「侵入」、「改ざん」、「妨害」等の
様々な脅威が存在するため、十分なセキュリティ対策を実施するこ
とが必須である。また、医療情報そのものの暗号化の対策を行わ取
らなければならない。
ネットワーク経路上のセキュリティの考え方は、どこの階層でセ
キュリティを担保するかによって異なってくる。
CRYPTRECの「SSL/TLS 暗号設定ガイドライン」に従い、最も安
全性水準の高い「高セキュリティ型」の設定として、利用可能なプ
ロトコルバージョンを TLS1.2 に限定する必要がある。
www.jeeadis.jp 88
OSI(Open Systems Interconnection)階層参照モデル
出典:エストニア各種資料、国家情報システム局への問合せ等で確認
https://www.ria.ee/en/
国際標準化機構(ISO)によって策定された、異機種間の相互接続を実現するための
ネットワーク構造の設計方針。通信機能を7階層(レイヤ)に分割し、各層ごとのプ
ロトコルやサービスを例示している。
エストニアのデータ連携を実現するXロードは、
•盗聴、侵入、改ざん、妨害等の脅威に対応
•15年以上の利用実績
•大規模なデータ漏洩は未発生
•権限の濫用者は解雇・資格剥奪
•個人データの符号化、データベースの暗号化
•トランスポート階層?で暗号化と認証を実施
• 2017年4月現在、TLS1.2 に完全移行済み
第7層 アプリケーション層
第6層 プレゼンテーション層
第5層 セッション層
第4層 トランスポート層
第3層 ネットワーク層
第2層 データリンク層
第1層 物理層
インターネットを利用しているが、
日本の安全基準は満たしている
www.jeeadis.jp 89

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エストニアのeヘルスと医療情報システムの未来