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AI導入を行う際に
押さえておくべき
AIの開発プロセス
保存版
この資料で次のようなことがわかります
• AIベンダーとどのようなコミュニケー
ションを取るとよいか
• 要件定義をどのようにすべきか
• 複数のAIベンダーからの提案書をどのよ
うに読み解くか
AI人材開発サービス
AI開発の豊富な実績から生まれた
製造業
特化
実践形式
すぐ
現場導入に
活かせる
この資料は「製造業のための実践的AI人材開発サービス」からの抜粋です。
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講義の流れ
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項目 所要時間(目安)
1. イントロダクション 30分
2. AI概要 50分
休憩 10分
3. AIの開発プロセス 第一部(概要、要件定義、提案書のレビュー) 60分
お昼休憩 60分
第二部(報告書のレビュー) 40分
休憩 10分
第三部(システム化、運用・保守) 30分
4. AIの適用ユースケース 40分
休憩 10分
5. 課題出し 60分
6. 振り返り・まとめ 10分
このサンプルでは、第3章「AIの開発プロセス」の内容を一部公開します。
(演習で使用する要件定義書・提案書は掲載しておりません)
3. AIの開発プロセス
4
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最初に大事なこと:発注者とベンダーの相互理解
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• AIを開発するためには、発注側とベンダー側の両方の協力が大切である。
• 特に、発注側は現状の業務プロセスがどのようなものかを伝え、ベンダー
側はそれをよく理解すると同時に、AIでできる部分はどこまでなのかを丁
寧に説明する必要がある。
発注側 ベンダー側
現状の業務プロセスや
システムの要件
AIでできること、
検証結果の説明
3.1 開発プロセス概要
6
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まず最初に:既存サービスが使えるか検討する。
7
• 世の中には既に、そのまま使えるシステム・サービスがSaaS(Software as
a Service)等の形態で提供されていることが多い。
• 要件と照らし合わせて、それらが既に使えるのであれば使うべきである。
そうでない場合にのみ、AI〜システムの開発が必要となる。
フルカスタム
Ready-to-use セミカスタム
• カスタマイズ不要でそのま
ま使えるもの。
• 例えば人のカウントをする
AIサービスなどは、汎用
的なAIモデルを使ってい
るためそのまま使える。
• AIモデルにはカスタマイ
ズが必要となるが、それ以
外の機能(GUIなど)につい
てはカスタマイズ不要でそ
のまま使えるもの。
• モデルの学習機能も含んで
いる場合が多い。
• AIモデルと、その周辺の
ソフトウェアモジュールの
両方をフルカスタマイズで
構築する。
• 業務プロセスがその会社特
有、AIの活用方法の新規
性が高い場合が多い。
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開発プロセス
8
PoC
(AI開発)
システム化
要件定義
要件定義
システム
開発
導入・運
用・保守
PoC
(AI開発)
システム
導入
要件定義
システム
導入
要件定義
Ready-
to-use
セミ
カスタム
フル
カスタム
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開発プロセス
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PoC
(AI開発)
システム化
要件定義
要件定義
システム
開発
導入・運
用・保守
PoC
(AI開発)
システム
導入
要件定義
システム
導入
要件定義
Ready-
to-use
セミ
カスタム
フル
カスタム
今日はこちらをメインで話を進めます
3.2 要件定義
10
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11
PoC
システム化
要件定義
要件定義
システム
開発
運用・保守
現在地
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要件定義とは何か?
12
• いまから導入しようとしているシステムが、どのような機能・非機能要件
を満たすべきかを明確化すること。これを文書化したものを、一般的に要
件定義書と呼ぶ。
• AI開発では、非機能要件の部分が重要になる場合が多い。
機能の例 非機能の例
• AIの入出力
• GUIがある場合はGUIのレイア
ウト
• 外部連携がある場合は、外部シ
ステムとのインターフェース
• など
• AIの精度
• AIの推論処理の実行にかかる
時間・スループット
• メンテナンス性
• AI開発に必要なデータ量
• など
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要件定義の進め方
13
• 多くのプロジェクトでは、既存の業務フローの一部をAIによって代替する
ことが多い。
• そこで、このようなプロジェクトでは、まず現状を把握することが重要と
なる。
• 現状を理解した上で、ではAIで代替しようとしたときに、その作業を完全
に代替できるのか、それよりも性能が向上する部分・劣化する部分がある
かが分かるようになる。
• 性能が劣化する場合には、それが許容可能かを考える必要がある。
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例:ワッシャー検査システムの導入
14
• 背景
• 吾妻橋工業では、自動車向けの特注品ワッシャーの製造を行っている。
• これまでは、熟練の検査員が目視での検査を行っていたが、ベテラン検
査員の退職や、検査効率の向上が課題となっていた。
• そこで、目視検査をAIによる検査に代替するためのPJを立ち上げること
とした。
画像の出典:https://job-con.jp/guide/navi218
吾妻橋工業 本社ビル 特注品のワッシャー
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【演習】事前に調査・検討すべきことは?
15
• これからAIベンダーに、AIを用いた検査システムのRFP(Request for
Proposal:提案依頼書)を出そうとしています。そのために、まず何を調
査・検討しておけばよいでしょうか。
• 分からない点、もう少し情報が欲しい点については、質問して頂いて構い
ません。
• 検討すべきことについて、最低5つ書いてみて下さい。
• 例:コスト、現状のプロセス、スケジュール感など
演 習
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検討すべき項目(例)
16
# 項目 説明
1 費用対効果 このPJには、どの程度のコストが許容されそうでしょうか?例
えば、既存の社員を教育するのと、どのくらいコストの差が発
生しそうでしょうか。
2 目標とする効率 検査効率の向上とありますが、具体的にどのくらいの向上が必
要でしょうか。(例:1秒間に1枚など)また、いまは、何人の検
査員で、それぞれどのくらい時間がかかっているのでしょうか。
3 ワッシャーの種類 検査対象の部品にはどのくらい種類があるのでしょうか。また、
その種類は将来的に増える可能性はあるのでしょうか。
4 欠陥の種類と頻度 検査すべき欠陥にはどのくらいの種類があるでしょうか。また、
どの程度の比率で発生しているでしょうか。
欠陥の種類は今後増える可能性はあるのでしょうか。
5 欠陥がある際の対応 欠陥があると判断した場合には、どのようなアクションをとっ
ているのでしょうか。
6 他システムとの連携 欠陥の数や種類は他のシステム(不具合管理システム)に入力し
ているのでしょうか。
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検討すべき項目(例)
17
# 項目 説明
7 現状の検査方法 検査員はどのように検査をしているのでしょうか。1方向から
の視認による検査だけでしょうか。それとも複数の方向からの
見た目をもって判断しているのでしょうか。
8 現状の見逃し率 現状の見逃し率はどの程度でしょうか。またそれによるコスト
インパクトはあるのでしょうか。
9 規制の有無 検査に関する規制の有無はありますでしょうか。(例えば業界
団体が定めたガイドラインに従う必要があるなど)
10 スケジュール このシステムはいつまでに必要となる予定でしょうか。
11 導入箇所 このシステムは1つの工場にだけ導入すればよいでしょうか。
それとも複数の工場への展開が必要でしょうか。
12 データの有無 AIの学習に使えそうなデータは既に社内に存在していますで
しょうか。
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各検討項目に対する結果
18
# 項目 調査結果
1 費用対効果 2,000万円の初期導入コストまで許容可能となった。ベテラン
検査員の人件費(1,000万円/年)を鑑みると、2年で回収できる
と計算したため。また将来的には効率向上によるタクトタイム
短縮も効果として想定されるが、すぐには試算ができなかった
ためまずは人件費のみからコストを算出した。
2 目標とする効率 今は1枚のワッシャーの検査に約2秒かかっており(30枚/分)、
少なくともこれより短い時間で実施する必要がある。また、検
査員は現状1工場あたり1人である。
3 ワッシャーの種類 ワッシャーの種類は現状1種類。将来的に製品ラインアップが
増える可能性はあるが、いつ増えるかは未定。
4 欠陥の種類と頻度 検索すべき欠陥の種類は4種類。欠陥は、これまでの経験から、
4種類に分類できることが分かった。今後増える可能性は基本
的にはないと思われる。
5 欠陥がある際の対応 欠陥がある場合には、それをラインから取り除いている。
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各検討項目に対する結果
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# 項目 調査説明
6 他システムとの連携 品質のモニタリングと、納入先へのレポートのため、欠陥発生
数と欠陥の種類を別システムにて記録している。このシステム
は、懇意にあるITベンダーにお願いして作ってもらったもので
ある。
7 現状の検査方法 現状、検査員は1方向(真上)からの見た目だけで判断を行なっ
ている。
8 現状の見逃し率 現状の見逃し率は1%である。見逃しをしてしまった場合のペ
ナルティとしては、これを超える状態が続く場合には、取引を
止められてしまう可能性がある。
9 規制の有無 規制は特にない。
10 スケジュール ベテランの大量退職が2年後に迫っており、それまでに導入し
たい。
11 導入箇所 まずは1工場に導入するが、その後は他の工場にも展開したい。
12 データの有無 AIの学習に使えるデータは今のところ存在しない。
3.3 提案書のレビュー
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21
PoC
システム化
要件定義
要件定義
システム
開発
運用・保守
現在地
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【演習】ベンダーの提案書をレビューする
22
• 吾妻橋工業に勤めるあなたは、2つの会社から提案を受け取りました。
• 提案書の中身を比較して、どちらの会社に発注すべきかを決めてなければ
いけません。
• そこで、
• まずは各提案書の良い/悪いと思う点をリストアップして下さい。
• その上で、最終的に判断をして下さい。その際、なぜそちらの会社を選
んだのか、という理由を説明できるようにして下さい。
AI を⽤いた⽬視検査⾃動化の
ご提案
株式会社 NKKデータ
吾妻橋⼯業様
検査⾃動化AI のご提案
株式会社 AI design Lab.
吾妻橋工業様
演 習
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2つの提案書を比較する
23
観点 NKKデータ AI design Lab.
PJの目的理解 目線が合っていると思われる。 書いていないため不明。
PJ全体像の理解 システム化まで見据えた上での提案であ
ることが分かる。
PoC以降のプロセスについて不明。
開発プロセスの理解 丁寧に記載されており、透明性が高い。
ただしアルゴリズムに関する記述は最低
限に留まっている。
全体のプロセスに関する説明はないが、アル
ゴリズムについては丁寧な説明がある。ただ、
専門用語が多く理解しづらい部分もある。
アルゴリズム 異常画像をそれぞれの種類について100
枚も必要になるのは、データの準備が大
変そうである。
正常画像のみ、または少量の異常画像のみで
学習できると書かれており、吾妻橋工業側の
準備量は少なくて済みそう。
吾妻橋工業側に求めら
れる作業
丁寧に書かれている。 記載されておらず不明。
コミュニケーション
計画
キックオフMTG、データ確認MTG、最終
報告会があることが分かる。
特に書かれていない。
スケジュール 大丈夫そう。ただ、システム化までを含
めた期間は記載されていない。
大丈夫そう。ただ、システム化までを含めた
期間は記載されていない。
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2つの提案書を比較する
24
観点 NKKデータ AI design Lab.
納品物 レポートのみ。もしシステム化までNKK
データにお願いするのであれば問題ない
が、システム化以降別のベンダーにお願
いする、あるいは失敗した場合にそれを
もって他社に追加でお願いすることを考
えると、プログラムも欲しい。
プログラムと説明書が含まれており、問題な
いと思われる。
費用 高い。
システム化までの費用は不明。
安い。
システム化までの費用は不明。
実績 関連する実績を持っているように見える。 不明。創業まもないためあまり多くないと推
察される。
体制 PMがいる、責任者が明確であるため、
よいマネジメントが期待できる。
一方、どのような場合に協力会社に依頼
されるかは不透明であり不安が残る。
不明。
ただ、冒頭の文言や、技術よりの提案書をみ
るに、技術力の高いエンジニアは多くいるよ
うに見える。
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多クラス分類 vs 1クラス分類
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• 提案書では、NKKデータが多クラス分類(正常+不良複数種類)での検知を提
案したが、AI design Lab.は、1クラス分類(正常画像のみ)を提案した。
多クラス分類 1クラス分類
正常 不良1
不良2
正常
識別境界
?
?
正常データからの
距離が遠いものを
不良と判定
• データをもとに、複数クラス間の境界を
引く手法。不良のデータ数が少ない場合
には境界をうまく引けないという問題有。
• 正常データを一箇所に集約し、そこからの距離
で正常/不良を判断する。不良データが不要な
のがメリット。一方、不良をさらに分類するこ
とはできない。
アラヤが提供する「製造業のための実践的AI人材
開発サービス」は、企業がAI導入を行う際に、最
初に押さえておくべき進め方のポイントをまとめ
た研修プログラムです。
このサービスには、以下のような特長があります。
ご案内 この資料は「製造業のための実践的AI人材開発サービス」からの抜粋です。
https://www.araya.org/
https://www.araya.org/contact/ (お問い合わせ)

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