AO脊椎フェローレポート田中
- 1. AO Spine Fellowship (from 1 Jan 2011 to 25 Feb 2011)
岡山大学 整形外科 田中雅人
Okayama University Masato Tanaka
今回,オーストラリア(アデレード)のロイヤルアデレード病院で,4週間の研修を行
ったので報告いたします。アデレードは南オーストラリア州の州都で、人口は約120万人
の都市です。この都市は整然とした美しい町であり、気候も温暖で日本と同じような四季が
あります。私が訪れた1-2月は夏でしたが、日本の夏に比較すると暑すぎもせず、非常に
過ごしやすい印象でした。
写真は脊椎ユニットのチーフの Freeman 教授と筆者です。
ロイヤルアデレード病院は南オーストラリア州のナンバーワンでかつ最大の病院です。
脊椎ユニットの主なティーチングスタッフは Frazer 名誉教授、Freeman 教授、Hall 先生お
よび Yau 先生で、さらにフェローが2名、レジデントが1名で治療を行っています。優れた
ICU を備えており、広範囲から脊損患者が搬送されていました。回診は写真のようにリハビ
リ医師や PT と一緒にスーツ姿で行われていました。
- 3. 次に印象に残った手術や症例について述べたいと思います。
1.Frazer 教授の腰椎前方固定術
Frazer 教授はキモパパインの研究や数々の論文でご存じの方は多いと思います。現在も
Spine の編集委員で、学術的にも技術的にも優れた脊椎外科医であり、また人格者でも
あります。腰椎前方固定術は1時間程度と素早くかつ安全に行っており、自身のオリジ
ナルの開創器も考案されていました。
2.Freeman 教授の Scheuermann 病の骨切り術
Freeman 教授は物静かな紳士であり、ロンドンのクィーンズ病院で長年脊椎の手術を行
った後、本病院の教授に就任したようです。側彎手術などの変形矯正の手術も積極的にこな
していました。我が国ではほとんどみることのない Scheuermann 病の骨切り術が非常に印
象的でした。
- 4. 3.Hall 先生の頚椎椎弓形成術
Hall 先生は以前に日本に研修に来たことがあるということで、非常に親日家でした。ま
た海外の脊椎外科医には珍しく頚椎椎弓形成術を積極的に行っていました。てきぱきと
したメスさばきで、プレート併用で平林法変法を行っていました。オープンサイドをケ
リソンパンチで骨切除していたので、日本ではハイスピードドリルを使用することが多
いと説明しました。
4.Rau 先生の頚椎固定術
Rau 先生は脳 Freeman 教授と同様にロンドンのクィーンズ病院で長年脊椎の手術の研
鑽を
積んだ脳神経外科医です。中国系の先生でしたので、非常に気配りが細やかでアジア的であ
り、われわれの方が恐縮するような場面も少なからずありました。非常にアグレッシブな脊
椎外科医であり、頚椎の手術も日本と変わらないレベルでの手術が行われていました。
- 5. フェローの先生
脊椎のフェローは Mike と Simon の二人でしたが、研修生活をうまく乗り切るには彼ら
と仲良くなるのがとても重要だと痛感しました。おかげさまで親切にしてくれて、一緒に昼
ご飯を食べたりもしました。彼らは1年契約ですが、身分は開業医(GP)よりも高く、収
入もそれなりにあるようでした。Simon はイギリスからやってきた脳神経外科医でした。
食生活
昼食はだいたいサンドイッチを食べていました。これはアメリカやイギリスもほぼ同様
のようで、夕食が豪勢であるのは好対照でした。アデレードはおいしいレストランが多く、
シーフードやインド料理はかなり美味と感じました。さらにはオーストラリアワインも非
常においしく、赤のスパークリングワインは絶品でした。下図は Tim 先生夫妻との食事風景
です。さらに Hall 先生はなんとワイナリーのオーナーでもありました。