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駐車待ち時間を短縮する
駐車場ナビゲーション
○孫為華(1、剣持真弘(2、柴田直樹(2、安本慶一(2、伊藤実(2
(1 大阪大学 サイバーメディアセンター
(2 奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科
2013/12/4

駐車に多大な時間
大型駐車場のどこに車を停めるべきか?
ショッピングセンター、スポーツ会場、駅、あらゆる駐車場
多くの人は人気ゾーンに車を停めたい、そしてはまる
出入り口、EV付近

駐車待ち時間の増大
利用者の不満
燃費、排気、etc…

駅付近駐車場
の混雑例

駐車ナビが必要
駐車の所要時間を短縮
2
2013/12/4

多くの技術で駐車情報を提供
駐車場利用情報表示
A,車両ごとに管理(粒度が小)
センサ-・フラップ式
駐車スペース使用状況をセンサで検知

B,一括管理(粒度が大)
入り口ゲート式
車両台数をゲートで検知

問題点
すべての車両に対し同じ情報を提供
特定のエリアに殺到し,渋滞を引き起こす
3
2013/12/4

駐車経路案内手法SPARK[1]
経路案内
駐車場内に複数の通信路側機を設置
車両の発する電波により車両位置をリアルタイムに測定、空車スペースへ誘導

セキュリティ
車両盗難検出

問題点
普及率が100%でなければならない
ナビゲーションに従わなければならない
違反車出る場合、本来そのスペースに案内されていた車両に影響→破たん
利己的ドライバー

渋滞した駐車場では効果が低下
[1]R.Lu, X.Lin, H.Zhu, X.Shen, “A New VANET-based Smart Parking Scheme for Large
Parking Lots” in Proc. IEEE INFOCOM2009, 19-25 April 2009, pp1413-1421.
4
2013/12/4

既存手法との性格比較

設置・維持
低コスト

負荷分散
ナビゲーション

システム頑健性
破たんしない

早く駐車できる!

車両ごと管理

×

×

○

?

一括管理

○

×

○

?

SPARK

○

○

×

?

必要な手法

○

○

○

○

なにより、普及率低い状況でも、有効でなければならない!
5
2013/12/4

発表構成
研究背景
提案手法
評価実験
まとめ

6
2013/12/4

提案手法の概要
目的:駐車待ち時間が最小となる経路をドライバーに提示
駐車待ち時間期待値
経路1:2分
経路2:3分

ドライバーに提示
経路1

?

ゾーン1

ゾーン2

ゾーン5
ゾーン3

ゾーン4
経路2

• 駐車場内各ゾーンの利用状況を収集
• 結果を車に通知
7
2013/12/4

駐車場
駐車場の構造情報
経路、駐車ゾーンの容量

車両への情報案内機構
WiFiなど

駐車ゾーン利用状況の収集機構
各駐車ゾーン利用状況を収集するサーバ
店舗入口

駐車ゾーン
入出場口
分岐点
8
2013/12/4

車両
カーナビとWiFi受信機の搭載が望ましい
サーバから駐車場情報を受信
駐車路線の計算と提示

自分が位置するゾーンを把握可能
GPS使えるところはGPS

無線LANのAPを用いたフィンガープリンティング

9
2013/12/4

提案手法の流れ

ビーコン

駐車場情報収集

位置検出
現在位置
現在位置
駐車場情報の計算
駐車場情報
駐車場情報
経路計算

10
2013/12/4

駐車場情報の計算方法(サーバ側)
• サーバで駐車場利用情報を計算
▫ ゾーン間の移動時間 : 駐車場の構造情報
▫ ゾーンの駐車確率計算(状況を正確に把握できない場合)
過去一定時間, 各ゾーンにおける車両の
駐車数/到達数=駐車確率
/

出発数 2
ゾーンC

駐車数 6
駐車確率 = 6/8 = 75%
ゾーンB

到達数 8
ゾーンA

入場口
11
2013/12/4

駐車場情報を見積もる際の設定
駐車確率は過去30分のデータで計算
渋滞してくると結果に反映される

30分内に一台も到達してないゾーンの駐車確率は50%

12
2013/12/4

駐車経路の計算方法(車両側)
サーバからの駐車場情報を受けて実行
入力:各ゾーンまでの移動時間と駐車確率

一定範囲内の複数ゾーンを巡回する全経路を探索
駐車所要時間期待値の小さい経路をドライバーへ提示
ゾーンE

ゾーンD

ゾーンC

ゾーンB

ゾーンA

入場口
13
2013/12/4

各経路の待ち時間期待値の計算方法
待ち時間期待値の計算
駐車確率
移動時間 P =0.5
A
TR1=2
TR2=5
ゾーンA
TZA=1
ゾーン内移動時間

PB=0.3

PC=0.2
TR3=5

ゾーンB
TZB=1

ゾーンC
TZC=1

待ち時間期待値 = 0.5・(2+1) + (1 – 0.5)(0.3・(7+1))
+ (1 – 0.5)(1 – 0.3)(0.2・(12+1)) = 3.61

14
2013/12/4

駐車経路計算のための予備実験
計算経路長
無限長のルートで計算すると膨大な計算量
長さkで打ち切り,その期待値を近似値として利用
長さkを予備実験で決定

実験結果
長さ3以上の経路は待ち
時間に顕著な差はない

提示経路の長さkを4とする

15
2013/12/4

提示経路で到来車両をばらける
混雑時、同時に入場する車両は提示経路が重複
予想駐車時間を大幅に超過する可能性

時間期待値の小さな経路ベスト3からランダムに提示

16
2013/12/4

発表構成
研究背景
提案手法
評価実験
まとめ

17
2013/12/4

評価実験
実験目的
提案手法を用いた際の駐車待ち時間を従来手法と比較

実験シミュレータ
駐車場のモデル:イオン奈良登美ケ丘の駐車場
用いた駐車データは統計データ

18
2013/12/4

シミュレーション環境
駐車スペースや通路にセルを対応さ
せたセルオートマトン
セルの集合で駐車場を表現

提案システム搭載率:10%, 100%
駐車場の初期状態:全て空車
入構台数はイオンの統計数を利用

2Fゾーン1
2Fゾーン1
ゾーン
2Fゾーン2
2Fゾーン2
ゾーン
2Fゾーン
ゾーン3
2Fゾーン3
1Fゾーン
1Fゾーン
4Fゾーン
4Fゾーン

40
30
50
20
50
19
2013/12/4

ベンチマーク手法1と2
ランダム手法
行き先をランダムに決定
行き先ゾーンが満車の場合,再度行き先をランダムに決定

掲示板案内手法
入場時,各ゾーンの空車スペースの有無の情報を提示
空のゾーンの中で最も人気の高いゾーンを行き先に選択
行き先ゾーンが満車の,ランダム手法に切り替える

20
2013/12/4

ベンチマーク手法3
グリーディー手法
50%の車両
最も人気の高いゾーンに向かい,満車でも4度巡回
無理なら次の人気ゾーンに向かい,同様の行動

残り50%の車両
ランダム方式を採用

21
2013/12/4

利己的行動とシステム普及率
すべての手法において、案内された経路に到達する前に空
きスペースを発見した場合,すぐに駐車

すべての人は利己的
◌
֩

提案手法、異なる搭載率を用いた
搭載率10%の実験では、未搭載車両(残り90%)は掲示板案内手法
搭載率100%の実験では、全車両は提案手法を用いる

提案手法

掲示板案内手法

22
2013/12/4

評価実験:入場口毎の入場車両比率
均等入場
3つの入場口から車両が均等に入場

非均等入場
入場口毎に到来する車両に偏りが存在
1F入場口に全体の1/2
2F入場口1、2に1/4ずつの車両が到来

23
2013/12/4

実験結果:入場車両比率(均等入場)
手法

平均時間(
平均時間(秒)

最大時間(
最大時間(秒)

搭載率100%

79.2

216.0

搭載率10%(搭載車)

96.1

219.0

搭載率10%(非搭載車)
◌
֥

124.0

961.0

ランダム手法

121.4

1184.0

掲示板案内手法

109.4

997.0

グリーディー手法

244.1

3964.0

• 提案手法を用いる場合
• 搭載車両は平均・最大両方において短い時間で駐車可能
• 非搭載車両は、平均ではランダム、掲示板方式とほぼ同等な性能
• 最大時間の場合も近い結果
24
2013/12/4

実験結果:入場比率(均等入場)
ランダム、掲示板手法が提案手法搭載率10%と拮抗
提案手法を搭載した車両は大幅に所要時間が短縮
提案手法中、未登載車は恩恵を受ける

提案10%
提案10%
全車両)
(全車両)
ランダム

グリーディー
掲示板

140 170 190

320
25
2013/12/4

実験結果:入場比率(非均等入場)
手法

平均時間(
平均時間(秒)

最大時間(
最大時間(秒)

搭載率100%

100.0

549.0

搭載率10%(搭載車)

109.1

575.0

搭載率10%(非搭載車)

132.3

փ

1193.0

ランダム手法

226.0

1792.0

掲示板案内手法

161.4

1716.0

グリーディー手法

375.4

5834.0

•提案手法を用いる場合、非搭載車
•平均時間において、それぞれ42%,

18%, 65%改善
•最大時間において、それぞれ34%, 31%, 80%改善
•非搭載車も待ち時間が短縮
26
2013/12/4

実験結果:入場比率(非均等入場)
ランダム、掲示板手法に比べ提案手法では搭載率があまり高くない
場合でも駐車所要時間を削減可能
提案手法は到来車両に偏りが発生する場合、高い性能を発揮

提案10%
提案10%
(搭載車)
掲示板

グリーディー
ランダム

17%改善
44%改善

提案10%
提案10%
(全車両)
200 240

360
27
2013/12/4

考察(非均等入場)
ランダム手法: 1Fゾーンの混雑に多くの車
両が巻き込まれた

掲示板案内: 目的ゾーンまで距離が長く,
禀 ֲ◌
ゾーン間の移動中に目的ゾーンが埋まって
しまい駐車時間が増大

提案手法: 最初の目的ゾーンが満車でも、
次のゾーンが指示されているため,
大幅な増大は見られなかった
非搭載車両:
搭載車両がわずかでも、場内車両分布をバランスする効果が表れる
その結果、非搭載車両が駐車しやすくなる
28
2013/12/4

評価実験:駐車場容量と構造
駐車場容量と構造を変えて実験
入場車両数は容量によってフィッティング

禀 ֲ◌

1:駐車容量818台
2:駐車容量697台
3:駐車容量418台
4:駐車容量297台

29
2013/12/4

実験結果:構造、容量変化
駐車場の規模が大きくなるに連れて待ち時間も増加
提案手法は駐車容量にかかわらず安定した性能を発揮

禀 ֲ◌

30
2013/12/4

考察:構造、容量変化
グリーディー、ランダム手法
入場車両が増加することで,渋滞の規模が拡大したため待ち
時間が増加

掲示板手法
ֲ◌
駐車場が大きくなるにつれて,目的ゾーンまでの移動時間が増
加し,到達時に入場時の状況と異なっているケースが多くなる
ため待ち時間が増加
禀

31
2013/12/4

まとめ
大型駐車場において、車両が入場から空きスペースを見つけ駐
車までの時間を最小化するナビゲーション手法を提案
奈良登美ヶ丘イオンモール駐車場データを用いたシミュレーション
搭載率が低い時でも、非搭載車両は駐車待ち時間が短縮された

今後の課題
実用化に向けて登美ヶ丘イオン以外の駐車場マップとデータで実験
お世話になったイオンにこの論文の送付…

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