by 出雲市民病院 家庭医療科 高橋賢史 ---- ＜NEURAL GP Networkとは＞ 島根県発・総合診療医育成プロジェクト 地域医療現場と大学を結ぶTeal型組織構造 診療医療の育成は現場においてのみ可能である。 しかし、現場だけでは日本全体の総合診療を成長させるには不十分。 だから、わたしたちは今、 島根県からITを駆使して総合医療のニューラルネットワーク構築を目指します。 NEURAL GP Network WEBサイト: https://shimanegp.com/

1. v
医学教育学 前編
出雲市民病院
家庭医療科 高橋 賢史

2. 行動主義から構成主義への変遷
• 日本での近代学校教育制度は1872年の「学制」から．
• その後，学習メカニズムは行動主義的心理学研究を通して科学的根拠を提示された．
• 1950年代に教育工学的アプローチが誕生し，明確な行動目標を設定し，授業を設計し，
その設計にもとづいて教育の実施・評価を行うことが始まった．
• その後，認知心理学をもとにした構成主義的アプローチの発展に至る．
1800年代後半 1950年代 1970年代
日本での近代学校の成立
行動主義・教育工学的アプローチ
構成主義的アプローチ

3. 行動主義的教育と構成主義的教育
• 行動主義的教育観は，教育工学の発展をもたらした．
• 目標を定め，それに沿って方略を設定・実施し，教育評価を行う．
• それまで構造化されていなかった教育が，科学的にプランニングされるよ
うになった事は大きな成果と言える．
• しかし現実世界では，教育者が「教える」だけでは学習者が目標へ達成で
きるという保証は無い．その事を踏まえ，「何を教えるか」よりも「どう
学ぶか，何を学ぶか」に 主眼を置いたカリキュラムの作成が妥当．
• そのカリキュラムプランニングは，教育工学の知見が使用される．

4. 教育とは，学習者に価値ある変化を
もたらすプロセスである

5. 教育のプロセス
ニーズ
現実的制約
目標
学
習
者 教育方略
教
育
者
評価
支援
3）より作成

6. ニーズの把握
• 社会のニーズ，教育者のニーズ，学習者のニーズを把握する．
• ニーズと現実的制約を踏まえ，アウトカムを検討する．
• 学習者の背景やレディネスも踏まえニーズ評価（推定も含め）を行う．

7. 教育目標
• 教育目標が学習者へ共有されないのは，ゴールを知らされない
マラソンのようなもの．
• 学習者が半分しか到達できないような目標は，教育目標としてはナンセンス．
• どんなアウトカムを想定し，それを踏まえた目標とするかが重要．
スタートしますが，
ゴールは決めてないですよ．
富士山までは行けて当然だよ
ね．みんな頑張れよ～．
ムチャクチャや

8. 教育目標の大原則：RUMBA
R e a l 現 実 的
U n d e r s t a n d a b l e 誰 で も 理 解 で き る
Measurable 達成度が判定できる
B e h a v i o r a b l e 行 動 （ 実 行 ） 可 能
A c h i e v e a b l e 達 成 可 能

9. 教育方略・学習方略
• レクチャー，ディスカッション，シミュレーション，実習，
振り返り etc…
• 教育目標到達に向けて，妥当な方法での教育の実施が必要．
• 実技能力向上のために，いくらレクチャーを行ってもスキルが向上す
る訳では無い．
• 学習者がいかに学習できるか，を意識した
教育の実施が重要．
• 課題も学習のドライブに活用する．
• 課題作成を通して目標達成につながるような
仕組みが重要．

10. 教育評価
• 評価の対象は学習者だけではない．
• 目標は適切か，教育者の教え方は適切だったか，教育方略・学習方略
は適切だったか，
• そして評価そのものも，「『その評価は本当に学習者が目標へ到達で
きたかどうか』を適切に評価できているのか」を評価される．
先日のレクチャー内容について
理解できたかどうかは，
論文10個アクセプトされるかどう
かで評価を決めるからね．
ムチャ言うな
．．．

11. 教育のアウトカムの考え方 Kirkpatrickモデル
Level 1：Reaction
Level 2：Learning
Level 3：Behavior
Level 4：Results
「おもしろかった」
「○○の知識を新たに得た」
結果が良いものに変わる
具体的な行動が変わる
この差が大きい

12. 行動主義的教育の限界と構成主義的教育
• 行動主義的教育観は教育工学の発展をもたらし，教育の構造化を達成した．
• しかし現実世界では，教育者が「教える」だけでは学習者が目標へ達成
できるという保証は無い．行動主義的教育観では，そこに限界がある．
• 教育者が「教えた」内容と，学習者が「学んだ」内容とは必ずしも
イコールではない．
• 構成主義的教育では，その前提に立っている．
• 現在の教育のトピックスは，構成主義的教育観をもとにしたものが多数ある．
• そのトピックスは，後編で取り上げる．

13. 参考文献
１）西城卓也. 行動主義から構成主義. 医学教育, 2012, 43.4: 290-291.
２）グレッグ美鈴/池西悦子 編集．看護教育学 改定第2版．南江堂，2018．
３）日本医学教育学会教育開発委員会 編．医学教育マニュアル第1巻
医学教育の原理と進め方．篠原出版，1978．
４）大西弘高．新医学教育学入門．医学書院，2005．