【第一部:講師 岩口龍児】 ①元日本人従業員が語る中東・イスラム圏で体験した就業・赴任にまつわる本当の話。ビジネス上でリスク回避をするために経営者がするべきこと。 ②中東や東南アジア諸国の雇用上の留意点と各国労働法の概要アジア全地域に進出

1. 中東ビジネスセミナー
～中東進出に伴うリスク最小化のためのポイント～
海外進出コンサルタント 岩口 龍児

2. 今日のセミナーでお話しする内容
１．中東基本情報
２．国別の特徴と市場の魅力
３．日本企業の進出状況
４．進出に伴うトラブル事例と対応策
５．まとめ
６．進出サポートのご紹介

3. １．中東基本情報（1）
・中東諸国、ペルシャ湾岸に面したサウジアラビア、アラブ首長国連邦、
クウェート、カタール、オマーン、バーレーンの湾岸諸国（GCC諸国）、
その対岸にあるイランやイラク等の大産油国、トルコ、アラブ諸国と
アフリカ諸国の要となるエジプト等注目が集まっている地域。
※ アラブ諸国：アラビア語を公用語とする人々が住む国々のこと。
・イスラエルを除くと、国教がイスラーム教である国々、もしくは
イスラーム教徒が人口の多数を占め、国家の指導的立場をイスラーム
教徒が握る国々

4. １．中東基本情報（2）
・GCC（湾岸協力会議）
1981年にサウジアラビア，アラブ首長国連邦（UAE），バーレーン，
オマーン，カタール，クウェートによって設立された組織。
本部（事務局）はサウジアラビアの首都リヤドに所在。
正式名称は「Cooperation Council for the Arab States of the Gulf」で
あり、
Gulf Cooperation Council（GCC）という略称が用いられることが多い。
防衛・経済をはじめとするあらゆる分野における参加国間での調整，
統合，連携を目的としている。

5. ２．国別の特徴と市場の魅力（1）
２－１．GCC（湾岸協力会議加盟国）
・自国民は富裕層が多い
・域内の強い経済連携（GCC域内＊カタール）
・高い購買力と投資力
＊政府が出資する投資ファンドでは、アブダビ投資庁（ADIA）世界2位、
サウジアラビア通貨機構（SAMA）（世界3位）

6. ２．国別の特徴と市場の魅力（2）
２－２．サウジアラビア
・平均年齢26.１歳 20歳未満が39％以上であり、若年層の雇用対策と
教育・職業訓練等・人材育成サービスの需要がある。
・今後10年間で500万人以上のサウジ人が労働市場に流入し、
将来的にアフリカに加えて世界的な労働力の中心になる予想される。
・サルマン国王による新体制 本年3月経済活動のため来日し、
医療やインフラなど事業を中心に日本企業の進出を支援すると発表。
・外国資本(企業)を積極的に誘致し、産業の多角化と雇用創出を実現。
出典：（一財）中東協力センター 大矢隆氏調べ

7. ２．国別の特徴と市場の魅力（3）
【参考１】サウジ・UAE人口構成比（CIA - The World Factbookの情報を加工）
年少人口
(0～14歳)
生産年齢人口
(15～24歳)
生産年齢人口
(25～64歳)
高齢者人口
(65歳以上)
サウジアラビア 27.6% 19.3% 49.9% 3.2%
アラブ首長国連邦 20.7% 13.7% 64.6% 1.0%
【参考】日本
高齢者人口の多い日本と異なり、若者・生産年齢人口の比率が高い

8. ２．国別の特徴と市場の魅力（4）
２－３．アラブ首長国連邦
・首都アブダビの豊富な石油資源
・中東ビジネス・ロジスティックのハブであるドバイ
・法人税・個人所得税各100％免除という39のフリーゾーン（経済特区）
・25歳以下が人口の50％以上
・2020年ドバイ万博開催（中東・アフリカで初の万博）

9. ２．国別の特徴と市場の魅力（5）
【参考２】フリーゾーン（経済特区）とは？
外国投資に対し様々な優遇措置を行っている地域のことをいう。
フリーゾーンにおける主な優遇措置は次のとおり：
・100％外国資本による所有可
・法人税・所得税50年間免除（更新可能）
・ローカル・スポンサー（サービス代理人）不要
・資本、利益の本国送金自由
・外国人労働者雇用制限なし
・保税区
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10. ２．国別の特徴と市場の魅力（6）
【参考３】ドバイ万博について（出典：「Inter Press Service/INPS Japan」）
2020年万博のインフラ関連予算は約70億ドルとみられており、建物の一部
は恒久的な施設として、万博閉会後も他の用途に活用する予定である。
ドバイ万博の開催が決定したことでUAEでは向こう7年間に、
27万7000件の雇用創出が見込まれている。
ドバイ万博への訪問予想者は２千５百万人で、万博史上初めて、訪問者の
70％以上が開催国外からの来場者になるとみている。
経済発展と将来に波及する大きな経済効果が見込まれる。

11. ３．日本企業の進出状況（1）
３－１．サウジアラビア
・日本郵船（2016：サービス業）初期の総プロジェクトコスト約10億円
・三菱日立パワーシステムズ（2014：メンテナンス業）
プロジェクトコスト約6.1億円
・東レ（2014：水関連事業）初期投資約16億円
など
・進出企業数119社（2017年JETRO発表）

12. ３．日本企業の進出状況（2）
３－２．アラブ首長国連邦（ドバイ）
・セブン＆アイ（2014小売り）2015年ドバイに1号店、3年間で100店舗
目指す
・資生堂（2013化粧品）地場企業と合弁会社を設立
・無印良品（2013小売り）
12年クウェート1号店、13年2月にドバイモールに1号店
・ヨックモック（2012食品）中東に20店舗以上。
クウェート、ヨルダンにも
など
・進出企業数304社（2017年JETRO発表）

13. ３．日本企業の進出状況（3）
３－３．カタール
・三菱重工、三菱商事、日立製作所他（2015鉄道）
ドーハメトロ受注
・中部電力（2011電力）発電造水及び発電事業
・千代田化工（2009プラント）世界初・世界最大LNGプラント
進出企業数46社（2017年JETRO発表）
など

14. ４．進出に伴うトラブル事例
進出に伴って起きやすいトラブルの種類
(1) 商習慣・宗教に関するトラブル
(2) 労使間のトラブル
(3) 法律に対する無知によるトラブル
(4) 販路開拓に関するトラブル

15. ４．進出に伴うトラブル事例（1）
４－１ 商慣習・宗教に関するトラブル①
現地営業用に商品パンフレットを作成したが、パンフレットに使用した
写真が戒律上で不適切と指摘され、現地当局による法人の役員が
現地警察に身柄を拘束された。
写真には、肌の露出した女性が掲載されていた。
【解決策】 宗教文化に関する理解を深める
コーランには「女性の美しい部分を隠すべき」という記述があり、
中東各国ではコーランの文言を遵守している。

16. ４．進出に伴うトラブル事例（2）
４－１ 商慣習・宗教に関するトラブル②
コミュニケーションの一環として、イスラーム教徒の従業員を
飲酒を伴う接待に誘ったところ、現地警察から身柄拘束された。
【解決策】 宗教文化に関する理解を深める
コーランには「酒から避けるべき」という記述があり、サウジアラビアな
どでは特にこのコーランの文言を遵守している。

17. ４．進出に伴うトラブル事例（3）
４－１ 商慣習・宗教に関するトラブル③
宗教上の習慣（勤務時間中の礼拝や断食月中の勤務時間など）に
配慮しなかったところ、労働法違反で従業員に訴訟を起こされた。
【解決策】 宗教と現地の労働慣行について情報を収
集し、その内容に従って就業規則を作成し、労働させ
る。
アラブ首長国連邦労働法65条やサウジアラビア労働法98条では、
8時間から2時間短縮され6時間になる。

18. ４．進出に伴うトラブル事例（4）
４－１ 商慣習・宗教に関するトラブル④
工場に食堂を設置し、日本人が好む豚肉を中心に食事を提供したところ、
イスラーム教徒の従業員からクレームを受けた。
【解決策】 宗教、特にハラールに関する理解を深め
る
コーランでは、豚肉を食することが禁じられている。

19. ４．進出に伴うトラブル事例（5）
４－２．労使間のトラブル
現地従業員が、ある日突然退職した。
退職後、その従業員が他の現地人従業員に業務や待遇面について不満を
漏らしていたことが分かった。
【解決策】 日頃から定期的に現地人従業員からヒア
リング調査する。就業規則等で雇用条件を明確化して
おく。
現地従業員は、地元国有企業の就職願望が強かったり、
また少しでも条件のよい企業があると転職する傾向がある。
現地従業員が納得するような給与水準規定を準備する。

20. ４．進出に伴うトラブル事例（6）
４－３．法律に対する無知によるトラブル①
現地人を雇用する割合が低かったので、現地労働省から法令違反の疑いが
掛けられ日本人従業員の新規ビザ発給が取れないトラブルに見舞われた。
【解決策】 現地法令を遵守する。
省庁が提供する情報を常に確認する。
各国省庁のwebサイトでは、英語でも最新法令などを公開している。

21. ４．進出に伴うトラブル事例（6）
４－３．法律に対する無知によるトラブル②
従業員が西暦と現地のカレンダー（イスラーム暦）を勘違いし、就労ビザ
の更新が遅れた。ペナルティとして勤務停止になり、その従業員が中心に
関わっていたプロジェクトの納期が間に合わなくなった。
【解決策】 社内で暦に関する研修会を開催する。
西暦との違いを全従業員に周知する。
全従業員の就労ビザやパスポートなどの期限は、会社の管理部などで
管理し、1か月前などに各人にメールなどで注意を促す。

22. ４．進出に伴うトラブル事例（7）
４－４．販路開拓に関するトラブル
自社の商品を売り出すために、現地企業に大量の商品を送ったら、
現地のニーズと合わず在庫を抱えてしまった。
【解決策】 事前マーケティング調査をする。
調査会社を利用してマーケティングを行う。
ECサイトを利用し、自社商品が現地のニーズに合っているか試してみる。

23. ５．まとめ
中東進出にあたって押さえておくべき
３つのポイント
(1) 基本的な宗教文化について情報収集する。
(2) イスラーム法や現地労働法の基本を学ぶ。
(3) 社内コミュニケーションの円滑化や
より速く詳細な情報収集を行うため、
現地従業員を管理スタッフとして採用し、活用する。

24. ６．進出サポートのご紹介（1）
６－１ 第2回中東ビジネス・貿易初歩セミナー
開催日時 詳細
平成29年
7月20日(木)
14:00~15:30
中東ECサイト・アマゾンFBAセミナー
場所：
費用：無料
本年2017年3月米アマゾンがドバイを拠点とする中東の最大規模オンライン小
売り「スーク（Souq.com）」買収したことがニュースで話題になりました。
中東・イスラーム圏のECビジネスは今後ますます活発になることでしょう。
また、スークを買収したアマゾンのサービスFBAについてもお話する予定です。

25. ６．進出サポートのご紹介（2）
６－２ ドバイ視察ツアー
2019年2月16日～20日 「Gulfood2018」視察ツアー
＊Gulfood（ガルフード）について
・毎年ドバイで開催される中東最大級の食品見本市です。
・日本企業の出品者（2017年）の主な内訳は、
和牛関連：9社、加工食品：9社、調味料：8社、茶：4社です。
展示会見学のほか、複数社への企業訪問を予定。（現在調整中）

26. 最後に
ご清聴ありがとうございました。
岩口龍児
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