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健康ビジネス問題解決サポートメディア HealthBizWatch
2015 年 8 月号
Health Biz Watch 新コンセプトを「健康ビジネス問題解決サポートメディア」とし
7月7日号よりリニューアルスタートいたしました。
新コンセプトメールマガジン構成
4つのテーマを追求するスタイル
健康サービスビジネスモデルの現場活性化のためのテーマを4つ設定し、各号弊社ディレクターが Authorとして担当テーマ特集を解説し、大
川が全体の編集主幹としてドライブしていきます。
2015 年 8 月 4 日号 ≫ Author:大川耕平
[健康サービス・デザイン] テーマ:健康サービスデザインにおける初期プロセス
2015 年 8 月 11 日号 ≫ Author:渡辺武友
[モバイルヘルス&アプリ動向編] テーマ:今後アプローチすべきモバイルヘルス・デバイスの方向性
2015 年 8 月 18 日号 ≫ Author:脇本和洋
[海外注目企業の継続支援編] テーマ:共創体験情報を使った継続支援
2015 年 8 月 25 日号 ≫ Author:里見将史
[ヘルスコーチングの視線編] テーマ:コミュニケーションの主役は「指導者」から「対象者へ」
健康ビジネス問題解決サポートメディア HealthBizWatch
[健康サービス・デザイン] 2015 年 8 月 4 日号 ≫≫≫Author:大川耕平
【テーマ:健康サービスデザインにおける初期プロセス】
----------------------------------------------------------------------
1.顧客目線で初期プロセスを見直すことでパフォーマンスは変化
----------------------------------------------------------------------
全ての健康サービス(オンオフ限らず)で最も重要な工程が初期プロセスです。個人的には提供プロセス 100 の中で 50 のウェイトを与えても
いいのではと常日頃感じています。その可能性をこの特集で少しでも感じ取っていただければ嬉しいです。
◆あらゆるサービスの初期設定品質が継続率を決めている
フィットネスクラブの会員継続率、健康改善プログラムサービスや健康食品継続利用にとって、「最初の顧客接点から商品サービス利用手続
き場面や初回利用までの初期プロセス品質」が大きく影響していることが分かってきています。
フィットネスクラブは施設サービス利用が自分の目標達成のためにいかに機能し楽しいかを初期に共有できるかがキーです。実は多くの施
設利用者は目的が曖昧で、そのままで利用するとどこかで無理がでて退会してしまいます。
健康食品は成果のためのアクションが商品継続利用であることはもちろんのこと、このサービスでどんな好ましいことが自分に起きるかを徹
底的にイメージできるような情報サポートをします。
健康改善プログラムは初期段階で小さいチャレンジ行動(small action)で成功を体験させ意欲を引き出す工夫をします。
サービスの初期設定には丁寧さ・手間・気配りが必要です。ここを無視して継続率向上は難しいです。初期プロセスを全てシステムで対応す
る場合、その品質が再現できているか要注意です。
◆顧客目線でのプロセスデザインで初期設定品質をアップ可能です
顧客行動として
・なぜその商品サービスをセレクトするのか?
・セレクトしたことがいかに正しいか?
を理解できるストーリーとして組み込むことでほとんどのサービス初期設定品質はアップします。
----------------------------------------------------------------------
2.初期プロセスが進化することのメリット
----------------------------------------------------------------------
◆顧客との相互学習関係へ
初期プロセスに丁寧に寄り添い顧客の行動意識を高くする交流を通して、サービス提供側も顧客の経験行動の変化から多くの学びを得るこ
とができるはずです。つまり提供側のノウハウ向上チャンスでもあるのです。
◆LTV アプローチの発見へ
初期設定品質アップに取り組むことで、そのノウハウ・モジュールを繰り返すことが、その後の顧客リレーションに活用できることに気づくはず
です。そして、これこそが顧客の生涯価値に寄り添う基本なのです。
「プレゼンテーションは顧客フォローのためにある」という PJ・マイヤーという米国の成功哲学研究家・事業家の言っていたことと同根です。
継続リレーションに成功しているサービスモデルは初期プロゼンテーション要素を何回も繰り返しコミュニケーションエッセンスに組み込んで
いるということなのです。
----------------------------------------------------------------------
3.デザイン思考の常体化へ
----------------------------------------------------------------------
◆経験重視の課題解決活動へ
顧客との交流経験から学び、サービス品質を高めていくアプローチをデザイン思考と言います。この顧客との共創活動こそが健康サービス
の次世代型品質をつくっていくメソッドです。
デザイン思考のプロセスは
Empathy 共感
Define 問題定義
Ideate アイデア発想
Prototype プロトタイプ化
Teat テスト&フィードバック
体験的につくりながら学んで質を磨いていくというアプローチです。
今、日本の健康サービス構築・推進に最も必要なアプローチのひとつだと我々は考えています。
◆継続進化体制へ(マネタイズ強化含む)
顧客との持続性ある関係性をどうつくっていくか?
デザインしていくか?
どこまで続けていけるか?
この方向性課題の「解」を全て顧客との交流の中から発見して実験して育てて磨いいていくことで、プロセスでマネタイズポイントを豊富に発
見できるはずです。
たとえば、活動量計(ライフログデバイス)のプログラムサービスの会員コミュニティから
・運動量キープのための生活技術ノウハウ
・活力キープのための食事術
・トレーニング理論・ノウハウ指導
・イベント企画
・良質サプリメント選択支援
・食事指導
・コンセプトアパレル企画販売キャンペーン
・社会貢献イベントへの参加
などなど様々なアドオンサービスやスポット企画、新たなテーマコミュニティの提案が可能です。
あなたの健康サービスの初期プロセスをチェックしてみませんか?
●Health Biz 問題解決 session
http://hbw-store.com/service/session.html
このサービスは大川が貴社プロジェクトに参加して共創型で問題解決をサポートしていくスタイルでフレキシブルな対応・設計が可能で
す!!
健康ビジネス問題解決サポートメディア HealthBizWatch
[モバイルヘルス&アプリ動向編] 2015 年 8 月 11 日号 ≫≫≫Author:渡辺武友
【テーマ:今後アプローチすべきモバイルヘルス・デバイスの方向性】
----------------------------------------------------------------------
1.モバイルヘルス・デバイスの種類
----------------------------------------------------------------------
現在、主にモバイルヘルス・デバイスとして分類されるのは、
フィットネストラッカー
スマートウォッチ
血圧計
体温計
血糖値計
などです。
研究段階のものとしては、薬の飲み忘れ防止のための服薬支援デバイスなど、医療に関連する新たな技術に注目が集まっています。
<参考:服薬支援デバイス>
・服薬記録パッケージ
http://mhealthwatch.jp/global/news20141027
・体内に薬を運ぶロボット
http://mhealthwatch.jp/global/news20150630-3
現在のモバイルヘルスの主流はフィットネストラッカーです。
フィットネストラッカー市場を中心に詳しく見ていきましょう。
◇フィットネストラッカー市場シェア
2014 年の NRD の調査では、Fitbit が市場シェアの 67%、Jawbone が 18%と Fitbit が圧倒的な強さでした。今年 6 月発表の IDC の調査では、
Fitbit が 34%、2 位に Xiaomi の 25%となり、市場シェアが変動してきました。
Xiaomi は昨年、13 ドル(現在 14.99 ドル)という圧倒的な安さのフィットネストラッカー「Mi Band」を発売し、低価格路線で市場を一気に奪ってい
きました。Xiaomi はまだ日本で正式発売されていません。しかし、この波は日本にも起こることですし、海外展開を考えれば無視できません。
<参考:市場シェア>
・IDC 調査
http://mhealthwatch.jp/global/news20150624
◇フィットネストラッカーの機能
2011 年に登場した「UP by Jawbone」あたりから一気にムーブメントになっていたフィットネストラッカーの主な機能は、活動量(歩数、睡眠)ま
ででした。2013-2014 年あたりから多くの端末で心拍計測が追加されました。現在のトレンドとしては、水泳のトラッキング機能が増えていま
す。
機能面では、どこかが出せば各社が追随する傾向にあるため、機能のみでの差別化は現実的ではありません。
<参考:水泳トラッカー>
・スポーツウェアラブル市場調査
http://mhealthwatch.jp/global/news20150310-2
・Apple Watch 用スイミングアプリ
http://mhealthwatch.jp/global/news20150715-3
◇価格競争の激化
Misfit が低価格モデル強化を進めています。要因は Apple Watch の登場で、フィットネストラッキングはスマートウォッチの 1 つの機能になっ
てしまうと想定したためです。また前記した Xiaomi の米国進出も大きな要因となっています。
今後、さらなる低価格デバイスが登場してきます。
<参考:フィットネストラッカーの低価格化>
・Misfit、19.99 ドルで『Flash Link』発売
http://mhealthwatch.jp/global/news20150727
・Xiaomi、ニューモデルを近々発表
http://mhealthwatch.jp/global/news20150717
----------------------------------------------------------------------
2.モバイルヘルス・デバイスに求められる機能
----------------------------------------------------------------------
「技術的に何が測れるか?」よりも「健康課題として何を解決できるか?」の視点が必要になります。ダイエットでみた場合、運動の面は現状
のフィットネストラッカーで対応できますが、今後もう 1 つの大きな要素となる「食事」へのアプローチが求められます。
また、糖尿病など生活習慣病では、定期的な計測が求められ、そのストレスを技術がどう解決するかも重要な視点になります。
◇デバイスによる摂取カロリーの自動記録
ここ 2、3 年で、ベンチャー企業が食事に関する記録の自動化にチャレンジを始めています。製品化まで行った例としては『Healbe GoBe』があ
ります。『Healbe GoBe』は、皮膚からグルコースを読み取り摂取カロリーを測定するというアプローチをとっています。日本でも並行輸入で購
入可能です。
どこまでデータが取れるかの問題はありますが、食事記録の自動化であれば、連携したいサービス企業は多いです。
<参考:デバイスによる摂取カロリー計測>
・Healbe GoBe
http://mhealthwatch.jp/global/news20150715-2
◇非侵襲による血糖値記録
生活習慣病では、糖尿病患者向けの取り組みがサービス面、デバイス面でも注目されています。特に血糖値計測では、血液を採取しなくて
よい、非侵襲血糖値計の研究が進んでいます。血液に関わるデータを非侵襲で計測するのは技術的にもかなり難しいですが、多くのソリュ
ーションと連動する可能性があり、チャレンジすべき領域です。
<参考:非侵襲血糖値計>
・皮膚に貼る『ウェアラブルタトゥー』
http://mhealthwatch.jp/global/news20150601-2
----------------------------------------------------------------------
3.今後のモバイルヘルス・デバイスを活用したビジネスのポイント
----------------------------------------------------------------------
フィットネストラッカーでみた場合、機能を追加してもすぐに他社に追随され、差別化がしにくい状況です。また、Xiaomi が一気に市場シェアを
広げていることからも、ユーザーが低価格商品に流れてしまう動きは止められず、今後、価格破壊が起きます。
ニーズとしてある「健康課題を解決する」ためにも、測れるだけではない、解決策(サービス要素)を軸にした展開で、他社との違いを明確にし
ていくことが重要になります。この動きはまだ始まったばかりですので、大いに先行優位に立てる可能性があります。
では今後、開発企画を進めるにはどうすべきか?
計測として何ができるかよりも、以下の項目を整理することから始めることが望ましいです。
・健康課題の洗い出し
・個々の課題の解決策把握(リアルを含めて)
・解決策と親和性がある自社技術の棚卸し
ぜひ他社に真似されない、独自性あるモバイルヘルス・デバイスの開発にチャレンジしてください。
【モバイルヘルス・デバイスの方向性検討】
スポルツでは、現状のモバイルヘルス・デバイスの市場調査から、企画検討、デバイス連動サービスの開発をサポートします。
まずは気軽な情報交換など、お声がけください。
お問い合わせはこちら
https://hbw.heteml.jp/healthbizwatch.com/inq/inq.html
健康ビジネス問題解決サポートメディア HealthBizWatch
[海外注目企業の継続支援編] 2015 年 8 月 18 日号 ≫≫≫Author:脇本和洋
【テーマ:共創体験情報を使った継続支援】
----------------------------------------------------------------------
共創体験情報とは
----------------------------------------------------------------------
共創体験情報は、「企業」と「その企業の商品・サービスを利用してうまくいっている体験者」が、共創によって生み出す情報のことです。
具体的には、
(1)まず特定の企業が「自社の商品サービスを使いうまくいき、人に貢献したい体験者」を募ります。
(2)次に、体験者と共同で、うまくいったコツや肉体的・精神的変化の情報を制作します。
(3)最終的には、その情報を既存顧客に届け、既存顧客の継続率を高めるというものです。
今回は、「共創体験情報」を使って継続を支援する 2 つの事例を紹介します。
----------------------------------------------------------------------
事例1:Patientslikeme の「patients voice」
----------------------------------------------------------------------
Patientslikeme は、難病患者のためのコミュニティサービスを提供します。同じ病気や症状に苦しむ患者同士が、症状や治療法のデータを共
有することで、新たな対策を見つける集合知サイトです。
●patients voice とは
難病でありながらうまくコントロールできている「体験者」へのインタビュー。病気の発症、利用のきっかけ、実際の使い方、利用してできたこと
(変わったこと)をストーリー形式で紹介しています。(一人 2-3 分の動画)
例)patients voice(てんかん、パーキンソン病などの患者)
https://www.youtube.com/watch?v=pLXqqpQF1TU
https://www.youtube.com/watch?v=STdx8yV9u9c
https://www.youtube.com/watch?v=5ZWjGT2A9Xc
https://www.youtube.com/watch?v=p-CmuXRdTgk
●patients voice における共創
・参加者
同社には、「data for good」という患者が自身のデータを製薬会社の新薬研究のために提供するプロジェクトがあります。patients voice に参
加している人は、「data for good」にも参加している人です。つまり、自分がよくなることだけではなく「人のために何かしたい」という思いの強
い人です。
・共創体験情報
参加者は難病の人が多いだけに、制作は難しいものとなります。しかし、体調を見ながら、自分の生活をオープンにし、制作に協力していま
す。そのような環境で作った情報だけに、サービス利用のコツが具体的で、うまくいくイメージをつかみやすいものになっています。既存顧客
がこの情報を見ると、サービス利用を継続したくなるはずです。
※Patientslikeme に関するバックナンバー
http://www.healthbizwatch.com/mailmagazine/unique/229.html
----------------------------------------------------------------------
事例2:ウェイトウォッチャーズの「I'm Only Human and I Did It Project」
----------------------------------------------------------------------
ウェイトウォッチャーズは世界最大のダイエットセンターです。同社のダイエット法で成功した人(グループリーダー)が教えるミーティングビジ
ネスが特長です。
●I'm Only Human and I Did It" Project とは
同社のサービスを受ける前と後の姿、減量で自分が工夫した具体的な点などを体験者自らが動画で撮影し、規定の YouTube サイトにアップ
するものです。(一人 2-3 分の動画)
例)成功者からの動画(女性中心)
https://www.youtube.com/watch?v=NZN7w9plCRo
https://www.youtube.com/watch?v=VltqW15WnJ0
https://www.youtube.com/watch?v=7hSptXUTpAc
https://www.youtube.com/user/OnlyHumanProject
●「I'm Only Human and I Did It Projec」における共創
・参加者
このプロジェクトに参加している人は、同社の募集サイトに自ら応募した人で、同社を利用し減量に成功した人です。特に「今までうまくいかな
かったけど、今回成功した」「その成果を見てもらいたい」「同じダイエット法を行っている人の役に立ちたい」という思いの強い人です。(見る
限り、同社が多額のインセンティブを用意はしていません)
・共創体験情報
参加者が動画を撮影し、それを同社が適宜編集するという共同制作の形になっています。「人の役に立ちたい思い」が強く、成功している人
からの情報なので、サービス利用のコツが具体的で、成功イメージをつかみやすいものになっています。だからこそ、既存顧客がこの情報を
見ると、サービス利用を継続したくなるわけです。
※ウェイトウォッチャーズに関するバックナンバー
http://www.healthbizwatch.com/mailmagazine/unique/267.html
----------------------------------------------------------------------
共創体験情報を企画・制作する際のポイント
----------------------------------------------------------------------
企業が、顧客にサービスを継続してもらうには、「うまくいったコツ・イメージ」を伝えることがポイントになります。一方うまくいった人は、うまく
いったことを「人に教え、貢献したい」という欲求があります。
「共創体験情報」はこの 2 つを結び付けるものです。
スポルツが「共創体験情報」を作成してきた経験から、企画・制作におけるポイントを以下にまとめました。
<参加者に対して>
・貢献したい(教えたい)欲求に答えること
・人の役に立ちたいという欲求に答えること
・メディアに掲載される喜びに答えること
・継続的に活動できるようにすること
<情報を見る人にとって>
・自分ごと化できるヒントが豊富にあること(定性・定量)
・実効性のある実践の「細部のコツ」がわかること
今回紹介した、「共創体験情報」は継続支援の新しい切り口です。うまく活用してはいかがでしょうか。
●参考
「共創体験情報を使った継続支援」の参考事例として、リクルートが発行する「ゼクシー」という情報誌の「花嫁 1000 名委員会」があります。健
康業界とは違いますが、一歩先をいく共創事例です。
http://zexy.net/contents/guide/hanakai/information.html
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
継続率向上のためのスポルツのサポートサービス
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■継続ドライバとは
http://www.healthbizwatch.com/project_note/post_471.html
スポルツでは、国内外の様々な健康ビジネス事例研究、専門家へのヒアリングから、健康行動の継続に作用する支援技術を探査・抽出・整
理して「継続ドライバ」と命名、2007 年から自主研究、現場への活用を行っています。
■継続ドライバのオープンセミナー(10 月 8 日開催)
http://hbw-store.com/seminar/keizokudriva1510.html
継続ドライバ全体を紹介するオープンセミナーを定期開催しています。事例を使って一つ一つの継続ドライバを紹介します。少人数制で質疑
応答も充実させていますので、是非ご参加ください。
■健康食品、ウェブ、施設サービスの利用継続率を伸ばすための「継続支援企画」
http://hbw-store.com/service/keizoku1507.html
継続ドライバを活用いただき、貴社施策の費用対効果を高めるというものです。
・社内セミナー
・ベンチマーク調査
・共同企画
という 3 つのメニューでサポートしています。
健康ビジネス問題解決サポートメディア HealthBizWatch
[ヘルスコーチングの視線編] 2015 年 8 月 25 日号 ≫≫≫Author:里見将史
【テーマ:コミュニケーションの主役は「指導者」から「対象者へ」】
我々が長年研究している「継続ドライバ」というものがあります。
この「継続ドライバ」の一つに「ヘルスコミュニケーション」があり、そのコミュニケーションはいくつかに分類されアプローチが異なっています。
「ヘルスコミュニケーション」の分類
・ヘルスティーチング
・メンタリング
・コンシェルジュ
・カウンセリング
・ヘルスコーチング
これらのヘルスコミュニケーションの中で、対象者自らの「行動」にフォーカスしているのが、「ヘルスコーチング」です。
また、これらのコミュニケーションの中で、唯一「対象者」が会話の中心になるのが「ヘルスコーチング」なのです。
今回は、ヘルスコーチングの基本的なアプローチに関して、みなさんにお届けします。
----------------------------------------------------------------------
1.ヘルスコーチは行動変容を支援するコーチ
----------------------------------------------------------------------
「ヘルスコーチング」のコミュニケーション技術を使ってアプローチする人を「ヘルスコーチ」と言います。では、「ヘルスコーチ」とはどんな
コーチなのでしょうか?一言でいうと行動変容を支援するコーチなのです。
通常、「●●コーチ」と聞くと何かを教えてくれる人、指導してくれる人をイメージしますが、「ヘルスコーチ」は教える、指導するコーチとアプ
ローチが異なります。この「行動変容を支援するコーチ」という表現が、まさに「ヘルスコーチング」のアプローチなのです。
1-1 効果的な提案、提示は必須項目!
では、全く教えないのかというと、そんなことはありません。専門家としての知識やノウハウ、情報は個人個人に合わせて選択支援という形で
タイミングに合わせて提案や提示を効果的に行います。しかし、あくまで提案、提示であってアドバイスではありません。指導者からの提案や
提示を対象者が選択する、しないは自由です。
しかし、この提案、提示はその人に寄り添っているヘルスコーチならではの専門性を活かした内容でパーソナライズされていることが基本で
す。
1-2 アプローチの中心は行動の継続
場合によっては鬼軍曹(専門家)が寄り添ってアドバイスし続けた方が、一定期間内の成果だけでみると効果が高いかもしれません。
しかし、その期間が終了した以降の行動の継続はどうでしょうか?
これまでのヘルスコミュニケーションでは、指導者、専門家側のアドバイスを対象者が忠実にこなしていくスタイルで、どちらかというと対象者
は受動的、受け身の状態です。
しかし、「ヘルスコーチング」では、行動変容を支援して、そのあと対象者が自ら継続できることに目を向けたアプローチであるため、対象者は
能動的なのです。対象者が自ら気づいて行動を続けていきながら PDCA をしっかりと回していくため、「自分流」が備わっていくのです。
----------------------------------------------------------------------
2.「教える」から「気づいてもらう」へ
----------------------------------------------------------------------
これまでのヘルスコミュニケーションの主役は指導者側でした。
しかし、ヘルスコーチングでは対象者が主役であって、ヘルスコーチはあくまでもサポーターなのです。では、対象者が主役のコミュニケーシ
ョンとはどんなイメージなのでしょうか?
2-1 「聞く」、「尋ねる」
これまでは、教えることが中心的だったため、話す内容や説明の仕方などが重要視されていました。
しかし、目標や達成イメージに向けて行動に取り組む中では、意識や身体の変化に気づくことはもちろん、自分に合う行動、合わない行動に
気づいたりなど様々な気づき、発見を重ねて「自分流」を見つけることが、行動の習慣化、定着化には必要になってきます。
ヘルスコーチングでは、対象者が自ら気づくためのサポートが中心になるため、対象者との会話では「聞く」「尋ねる」を繰り返します。
そのため、コミュニケーション(会話)の中心は、対象者になるのです。
2-2 指導者が決めるのではない!対象者が決める!
ヘルスコーチングでは、コーチが寄り添う中で感じたことや気づきのための提案や提示をフィードバックとして積極的に行います。
その提案や提示については気づきを促すために様々な角度から提示し、最終的には対象者自ら選択します。
対象者が自ら選択して言葉にしてヘルスコーチに伝えることで、選択したことを自分の中に取り込む、自分の中での整理につながります。
このステップが、自ら行動を起こして継続する上で必要なコミュニケーションなのです。
----------------------------------------------------------------------
3.プラスへのアプローチ
----------------------------------------------------------------------
冒頭でお伝えしたヘルスコミュニケーションの中に「カウンセリング」というアプローチがあります。
ヘルスコーチングと何が違うのかというと、
・「カウンセリング」はマイナスをゼロに戻すアプローチ
・「ヘルスコーチング」はゼロからプラスにしていくアプローチ
カウンセリングは専門知識を持ったカウンセラーがアドバイスを行い問題を取り除く「ゼロ」に戻すアプローチです。
ヘルスコーチングは、コーチが対象者の中にある答えを引き出して、目標達成をサポートするアプローチで、「プラス」へのアプローチが中心
になります。
3-1 課題がスタート地点とは限らない
目的に向かって具体的な行動に落としこむ際、現在の課題、問題行動を見つけて、その改善にアプローチしたやり方は、マイナスをプラスに
する、マイナス起点の発想なのです。しかし、ヘルスコーチングのアプローチでは、現在の課題、問題行動を前提にするのではなく、現時点で
出来ていることにも目を向けていきます。
3-2 「出来ていること」に目を向ける
ヘルスコーチングでは、具体的な行動に目を向けて継続的にサポートしていきます。その中で、「出来る行動」「出来ない行動」がハッキリ見
えてきます。通常、出来ない行動(マイナス)に意識が向かってしまいがちですが、出来ていることを早めに見つけて、その出来ている部分を
より習慣化、定着化に向けて工夫していくことが大切なのです。
----------------------------------------------------------------------
今回はヘルスコーチングの基本的なアプローチを解説しました。対象者の行動変容を支援することがヘルスコーチングの最大の特長です。
実際にヘルスコーチングをサービスで導入している事例は、前回ご紹介しておりますので、そちらをご覧ください!
http://www.healthbizwatch.com/mailmagazine/news/004.html
次回は、ヘルスコーチングの新しい展開の一つである「ヘルスコーチング×コミュニティ」をご紹介する予定です。ご期待ください。
【『ヘルスコーチング』早わかりガイド】
「ヘルスコーチング」をみなさまに広く知っていただくため、ヘルスコーチングの特長的なキーワードだけを抽出し、簡単に解説した「『ヘルスコ
ーチング』早わかりガイド」といったステップメールを準備しています。
ヘルスコーチングを健康サービスに組み込む際のポイントを 28 個のキーワードにして毎日お送りするステップメールです。
もちろん、無料でご提供しておりますので、ご興味ある方は、以下より『ヘルスコーチング』早わかりガイド」希望とご連絡ください。
お問い合わせはこちら
https://hbw.heteml.jp/healthbizwatch.com/inq/inq.html
最後に、ヘルスコーチとして活動しております、私の簡単な自己紹介です。
私は 2006 年にコーチングの資格を取得し、ヘルスケアサービスのポイントとコーチングのコミュニケーション技法の中からヘルスコーチングと
しての要素を整理してきております。
オンライン、オフラインを含めてヘルスケアサービスにヘルスコーチングの要素を組み込み、多くのサービス企画はもちろん、実際のサービス
運用まで幅広くサポートしております。
ご興味ある方はぜひご連絡ください!!お待ちしております。
http://www.healthbizwatch.com/mailmagazine/entry.html
◇お問い合わせ
https://hbw.heteml.jp/sportz.co.jp/inq/inq.html
◇発行:株式会社スポルツ
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◇注:本メルマガの情報は、企業サイト・プレスリリース・関連情報サイトなどから収集した事実とスポルツの解釈・類推を含みます。
◇住所:〒150-0001 東京都渋谷区神宮前 6-18-3 RooMY 生稲 4 階
◇電話番号:03-6427-4541
◇編集主幹:大川耕平
◇Author:大川耕平・脇本和洋・渡辺武友・里見将史
◇編集デスク:岩隈七重
(C) 1998-2015 SPORTZ,inc. All Rights Reserved

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HealthBizWatch 2015年8月号