○五十嵐靖博1・いとうたけひこ2
(1山野美容芸術短期大学・2和光大学)
キーワード:対テロ戦争における「過酷尋問」,批判心理学,心理学の倫理
Critical Psychological Teaching in Introduction to Psychology: How to Teach the Problem of American Psychology in its Relation to Coercive Interrogation in War on Terror
Yasuhiro IGARASHI1, and Takehiko ITO2
(1Yamano College of Aesthetics, 2Wako University)
Key Words: coercive interrogation, critical psychology, ethics
目 的
現在,日本の大学で数多くの学生が心理学を学んでいる.心理学専攻学生だけでなく,他の様々な専攻の学生も心理学概論などの入門科目を学んでおり,心理学教育がいっそう重要になっている.心理学は多様な側面を持つ学問である.心に対する純粋な知的関心によって推進される科学として,社会諸セクターのニーズなど学問外部の諸要因の影響によって変容するものとして,また時代や社会の差異に応じて異なりうる文化的伝統の影響を受ける学問などとして心理学を理解することができる.日本社会とそこで生きる人の主観性の心理学化を背景に,社会諸セクターと心理学の関係を教授する心理学教育が必要とされている.心理学化の顕著な例に戦争との係りがあげられる.幸福や福祉に寄与する心理学の構築を主たる目標の一つとする批判心理学の立場から,心理学概論の一環として「心理学とは何か」を考える授業を行った.2001年に米国を襲った9.11同時多発テロの後に米国の軍事・情報当局が実施した戦争捕虜やテロ容疑者への「過酷尋問」と心理学の関係(五十嵐,刊行中)を事例にあげて講義を行い,学生の心理学へのイメージを検討した.
方 法
2018年4月,和光大学の全学学生を対象とする心理学概論の3回目の授業の特別講師として第1著者が招かれ,「心理学とは何だろうか:対テロ戦争における『心理学的拷問』を例として」と題して授業を行った.心理学の様々な定義や見方を説明し,社会と心理学の関係を示す例としてアメリカ心理学会の「国家安全保障に係る尋問」への加担を説明した.米国の軍事・情報当局が水責めを含む「強化尋問技法」による過酷尋問を行うに至る背景や尋問の実際,マスコミ報道による社会問題化,連邦上院情報委員会報告やホフマン報告などを紹介した.授業後に受講者に研究への協力を依頼し,心理学のイメージの変化(5段階),授業前後の心理学のイメージ,授業の感想と講師へのメッセージを自由記述で回答してもらい,112名から有効回答を得た(男62人,女45人,他5人).記述内容をテキストファイルにして,NTTデータ数理システム社のテキストマイニングソフトであるText Mining Studio Ver.6.0.3を用いて分析した.またユーザーローカルのウェブサイトを活用してWord Cloudを作成した.
結 果
1.授業による心理学のイメージの変化
112名のうち,74人(66%)が心理学のイメージが変化したと答え,13人(12%)が変化しなかったと回答した.22名(20%)がどちらともいえないと回答した(その他・無回答が3人).3群間により授業後の心理学のイメージの回答の多重対応分析をおこなった.また授業の前後の心理学のイメージについてワードクラウドを作成した.授業後のそれを図1に示す.これらと回答の原文から,カウンセリングなど心の健康に関するイメージから講義中に紹介した尋問や戦争と係る心理学のイメージへと変容し,ときに心理学的介入によって対象者の心身に苦痛を与える現状を知ったことが窺われた.
図1 授業後の心理学のイメージのワードクラウド
考 察
特別授業の主な目的は心理学と社会の関係や学問外部の諸要因が心理学に与える影響を説明することだった.2/3の受講生の心理学に対するイメージが変化したことから,対テロ戦争との係りのような一般に教科書に記載されていない主題を一定程度,受講者に伝えることができたと考えられる.一部のアメリカの心理学者が過酷尋問に加担した理由として,医療専門職者に比べて養成課程で倫理教育が希薄なことが指摘されており,こうした心理学教育が倫理観の形成のために重要である.過酷尋問は実質的に拷問だと考えられている.
心理学概論など初学者を対象とする科目であっても「心と行動の科学」に留まらず,社会や政治経済と心理学の関係,文化的現象としての心理学など心理学の多様な側面を教授することで心理学化が進む日本社会において学生が心理学とよりよい関係を築く一助になることが期待される.批判心理学の立場から為される心理学教育の有用性が示唆された.
9. ジンバルドの「監獄」実験疑惑(2)
Ben Blum(June, 7, 2018): The lifespan of a lie
https://medium.com/s/trustissues/the-lifespan-of-a-lie-d869212b1f62
Korpiの精神破綻breakdownはでっち上げsham
ジンバルドを訴訟しなかったのを人生で後悔
Yaccoが2日目に研究参加中止を希望したが却下
本当は実験獄中で試験勉強をしたかったが・・
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