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マッチング・マーケットデザイン

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スタンフォード大学の小島武仁氏との共著論文。『経済セミナー』2009 年4・5 月号に所収された同名の記事を大幅に加筆・訂正したものです。

Publié dans : Économie & finance
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マッチング・マーケットデザイン

  1. 1. マッチング・マーケットデザイン∗ 小島武仁† 安田洋祐‡ 2009 年 3 月 8 日 1 はじめに マーケットデザインと呼ばれるミクロ経済学の新しい分野を耳にされたことがあるだろ うか? 伝統的な経済学が市場や制度を “与えられたもの” としてとらえ,主にその機能 や帰結の分析に力を注いできたのとは対照的に,マーケットデザインでは経済制度を “設 計するもの” と考え,現実の制度設計や制度変更を提案しているのが特徴的だ.このマー ケットデザインの考え方は,近年になって欧米を中心に現実社会へ応用され始め,急速に 関心を集めている.携帯電話に代表される周波数帯のオークション設計から,バスのルー トや空港の発着枠の割り当て,本稿でも詳しく取り上げる医学部の研修医マッチングや学 校選択制,果ては腎臓移植を希望する患者とドナーをマッチさせる臓器交換メカニズムに 至るまで,その応用例は実に多岐にわたる.医学部の研修医マッチングは,臨床研修医制 度が必修化された 2004 年を機に日本でも導入され話題を呼んだ.このように,マーケッ トデザインは極めて実践的かつエキサイティングな分野なのである1. 本稿では,近年注目が集まるマーケットデザインの中でも,とりわけ有用な分析手法と して知られるマッチング理論に焦点をあてる.マッチング・マーケットデザインとも呼ば れるこの分野で蓄積された理論的成果に加えて,これらの理論がどのように現実の市場や 制度の設計に使われているのかを紹介していきたい.まず 2 章において,研修医マッチン グを例にとりながらマッチングの基本モデルを導入して,分析上キーとなる重要な概念や その性質を見ていく.3 章では,この数年で著しい発展を見せている学校選択制の理論分 析について最新の成果を盛り込みながら詳しく論じる.そこでは,一見すると研修医マッ チングとほとんど同じ分析ができるように見える学校選択制が,様々な点において基本モ デルを超えた新たな問題を生じさせることが明らかにされる.4 章では更なる理論的発展 として,マッチングに付随した金銭や契約のやりとりを認めるより複雑な状況への拡張や, ∗ 本稿は『マッチング・マーケットデザイン』(「経済セミナー」2009 年 4・5 月号所収) を大幅に加筆・訂 正したものである.本稿の作成にあたり河村耕平氏,成田悠輔氏から有益な助言を頂いたことに感謝したい. † こじま・ふひと — スタンフォード大学助教授.E-mail:fuhitokojima1979@gmail.com ‡ やすだ・ようすけ — 政策研究大学院大学助教授.E-mail:yosuke.yasuda@gmail.com 1 マーケットデザインに関する多くの情報や展望論文が,この分野を牽引する Alvin Roth ハーバード大 学教授のウェブサイト (http://kuznets.fas.harvard.edu/∼aroth/alroth.html) から得ることができる. 邦語によるコンパクトな展望論文としては安田 (2008) を挙げておく. 1
  2. 2. この 10 年で急速にマッチング分析に普及した新しい数学的手法などについて紹介する.最 後に 5 章において,本稿では取り上げることのできなかったマーケットデザインの実践例 に触れつつ,将来への展望について語りたい. 2 研修医マッチング 医学部の卒業生が,医師としてひとり立ちする前に病院で実地研修をする研修医制度は, 各国で採用されている.日本においても近年の医療制度改革の目玉として,2004 年から 必修の臨床研修医制度が発足し,医学部卒業生に 2 年間の研修が義務付けられた.この研 修制度とあわせて,どの研修医がどの病院で働くかを一定のルールに従って決める研修医 マッチング制度が新たに採用された.このマッチング制度はアメリカで実に 1950 年代か ら使われているルールを基礎としており,理論的にも実証的にも,マッチングを公平かつ 効率的に行うことができる方法であることが明らかにされている.本章では研修医マッチ ングの文脈に即して,マッチング理論の基礎的なトピックを解説していく. はじめに,マッチング理論の基本的なモデルである College Admissions Problem を説 明する2.以下では,マーケットにいくつかの病院と学生 (医学部生) がいる状況を考えよ う.各学生は病院に対して選好 (好みのランキング) を持っている.たとえば 学生 1:病院 A,病院 B という記号は「学生1の第一希望は病院 A,第二希望は病院 Bで,他の病院は Unacceptable である (他の病院で働くよりも,どの病院ともマッチしないことを好む)」という意味だと する.病院は学生たちに対して選好を持っており,さらに各病院には定員が定められてい る.たとえば 病院 A:学生 1,学生 2,学生 3     定員  2 と書いた場合,それは「病院 A の学生に対するランキングは学生 1,学生 2,学生 3 の順 で,他の学生は採用したくなく,定員数は 2 である」という意味だとしよう. マッチングは,どの学生がどの病院で働くかを指定した関数として表される.たとえば 病院 A — 学生 1,学生 2 病院 B — 学生 3 病院 C 学生 4 と書けば,それは「病院 A は学生1と2を採用,病院 B は学生3を採用し,病院 C と学 生4は Unmatched(どのパートナーともマッチしない) である」という意味だとする. 2 College Admissions Problem という呼称は,マッチング分野を切り開いた先駆的研究である Gale and Shapley (1962) による.彼らは研修医マッチングではなく,大学の入学プロセスになぞらえて Many-to-One Matching(後述) のモデルを解説している.もちろんこのモデルは大学入試以外にも適用が可能であり,ここ での用語は便宜上のものである. 2
  3. 3. College Admissions Problem では,各病院が複数の (=Many) 学生を採用できる一方 で,各学生はたかだかひとつの (=One) 病院としかマッチできない.こういったケースは Many-to-One Matching と呼ばれる.現実には Many-to-One の他にも,男女のマッチング のようにどちらのサイドもたかだか一人のパートナーとかマッチできない (One-to-One) 状況や,作家と出版社のマッチングのようにどちらのサイドも複数のパートナーとのマッ チが可能 (Many-to-Many) な状況も考えられる.これらは,ここで扱うベンチマークモデ ルである Many-to-One Matching の特殊ケース,および一般化と考えることができる. さて,マッチング問題をどのように数学的に表現すればよいかが分かったところで,次 にマッチングの望ましさを評価するための基準について考えてみたい.ここで登場する もっとも重要な概念が Stability (安定性) と呼ばれる性質だ.まずはこれを定義したいの だが,そのための準備として Individual Rationality (個人合理性) と Blocking Pair とい う概念を説明しよう. 定義 1 あるマッチングが Individually Rational (個人合理的) であるとは,どの学生や病 院も Unacceptable な相手とマッチしておらず,どの病院も定員オーバーになっていない ことを指す. このアイデアの背景には,もしも Individually Rational では “ない” マッチングが実現 しているとすると,そのマッチングに “従わない” インセンティブをもつ学生か病院が少 なくとも一人 (ひとつ) はいることになるので,そもそもマッチングが実現できないだろう という考えがある.マッチングの望ましさの最低条件としてこの Individual Rationality を求めるのは理に適っているだろう. それでは,Individually Rational なマッチングはすべて望ましいと言えるだろうか?  実は研修医マッチングの世界では,Individual Rationality だけでは十分ではない.いま 仮に,決められたマッチングに不満をもつ学生がいるとしよう.もしもその学生がもっと 行きたいと思っている病院の定員に空きがあったらどうだろう? あるいは定員が埋まっ ているにも関わらず,いま採用している学生よりもこの学生の方が望ましいという病院が あった場合はどうだろうか? そのようなケースでは,この学生と病院のペアは最初に決 められたマッチングに従わずに,お互いに自分たちで新たなマッチングを組み直すインセ ンティブがあるだろう.このアイデアを数学的に定義すると,次のようになる. 定義 2 次の (1),(2) の条件を満たすような学生 i と病院 h のペアが存在するとき,マッ チング µ が Block(ブロック) されるという.また,このような i と h の組を Blocking Pair と呼ぶ. (1) i は µ で定められた相手よりも h をより好み, (2) i は h にとって Acceptable であり µ のもとでは h の定員に空きがあるか,もしくは µ のもとで定められた学生のうち i よりも h にとって望ましくない学生がいる. すでに説明したように,Block されるようなマッチングは現実に達成できるとは考えに くい.そこで,マッチングの自然な安定性を定義することができる. 3
  4. 4. 定義 3 マッチングが Stable (安定)であるとは,Individually Rationalであり,かつ Block- ing Pair が一組も存在しないことをいう. いままで説明したように,Stable なマッチングは,そこから逸脱して利益を得ることが できる参加者がいない,という意味で望ましいマッチングであると考えられる.ここで沸 いてくる自然な疑問は,「果たして Stable なマッチングは常に存在するのか?」「存在した としても簡単に見つけ出すことができるのだろうか?」ということだろう.マッチング理 論の記念碑的研究である Gale and Shapley (1962) は,まさにこの疑問を解決することで マッチングの分野を切り開いた. 定理 1 College Admissions Problem には,必ず Stable Matching が存在する.(一般に は複数存在しうる) Stable Matching のひとつは,以下の Deferred Acceptance Algorithm (略称:DA アルゴリズム) で見つけることができる. 定理 1 がなぜ成り立つのかを説明するには,まず DA アルゴリズムとは何かを説明しな ければならない.このアルゴリズムを行うためには,マッチング制度を中央集権的に運営 する主体が,各学生の選好と各病院の選好および定員の情報を集める必要がある.この情 報をもとに,以下のアルゴリズムを実行する3. • ステップ 1:各学生は,自分の第一希望の病院に応募する.各病院は,応募してきた 学生の中から Acceptable なものを上から順番に定員が埋まるまで “暫定的に” 採用 (仮マッチ) し,残りの学生を不採用にする. • ステップ t:ステップ t-1 で不採用にされた各学生は,まだ自分を不採用にしていな い病院の中から自分の第一希望の病院に応募する (もし Acceptable な病院が残って いなければ,どこにも応募しない).各病院は,このステップで新たに応募してきた 学生と現在仮マッチしている学生の中から Acceptable なものを上から順番に定員が 埋まるまで仮マッチし,残りの学生を不採用にする. • 終了ルール:新たに不採用にされる学生が一人もいなくなった時点でアルゴリズム が終了し,各病院がその時点で仮マッチしている学生を正式に採用する. このアルゴリズムが有限回でストップすることは簡単に示すことができる.アルゴリズ ムがストップした時点での仮マッチを最終的なマッチングとするため,DA アルゴリズム を用いることできちんとマッチングを実現できることが分かる. なぜ DA アルゴリズムが Stable Matching を見つけてくれるのかは,驚くほど簡単に証 明することができる.まず,DA アルゴリズムの結果が Individually Rational なことは次 のようにわかる.まず,アルゴリズムのどのステップでも学生は決して Unacceptable な 病院には応募しないので,最終的に学生が Unacceptable な病院とマッチすることはない. 同様に,各病院はどのステップにおいても Unacceptable な学生を仮マッチさせることは 3 DA アルゴリズムは,考案者の名前を取ってしばしば Gale-Shapley アルゴリズムや Gale-Shapley メカ ニズムなどとも呼ばれる.このアルゴリズムのわかりやすい図解が,医師臨床研修マッチング協議会のホー ムページ (http://www.jrmp.jp/) に掲載されている. 4
  5. 5. ないので,最終的に Unacceptable な学生とマッチすることはない.そして各ステップで病 院は定員以上の学生とは仮マッチしないので,最終的に定員を超えて採用することはない. Blocking Pair が存在しないことは次のように示すことができる.たとえば学生 1 が,指 定された病院よりも病院 A を好むとしよう.もしもこのような状況が発生しているとすれ ば,学生 1 は DA アルゴリズムのどこかのステップで病院 A に不採用にされていなければ ならない.ということは,学生 1 は病院 A にとって Unacceptable であるか,そうでなけ ればそのステップで病院 A の定員は学生 1 よりも望ましい学生で既に埋まっているはずで ある.前者の場合に学生 1 と病院 A が Blocking Pair にならないのは明らかである.後者 の場合にはアルゴリズムの性質から,各病院に仮マッチでやってくる学生はステップを重 ねるごとに改善していく一方であるから,最終的に実現したマッチングでもやはり病院 A は学生 1 よりも望ましい学生を定員いっぱいまで採用していなければならない.この場合 にも学生 1 と病院 A が Blocking Pair になることはない.以上より,DA アルゴリズムで 見つかるマッチングが Stable であることが示された. 定理 1 により,Stable なマッチングが常に存在することが明らかになったが,実は Stable なマッチングは一つであるとは限らないことが知られている.DA アリゴリズムは,複数 存在するかもしれない Stable Matchings の中から特定のマッチングを見つけ出している のである.実はこの DA アリゴリズムの選び方は,次のような非常に興味深い性質を持っ ている (証明は Roth and Sotomayor (1990),定理 2.12 を参照). 定理 2 DA アルゴリズムで発見されるマッチングでは,各学生は (一般には複数存在しう る) Stable Matching の下でマッチできる病院の中から,最も望ましいものとマッチして いる. DA アルゴリズムは現実の労働市場で使用され,成功を収めている.もっとも有名なの はアメリカの研修医・病院マッチング市場である National Resident Matching Program (NRMP) である.マッチング理論が経済学で注目されるきっかけを作ったといわれる Roth (1984) は,アメリカの研修医マッチングで実際に使われているアルゴリズムが DA アルゴ リズムと同じものであることを発見した4.Gale and Shapley (1962) の論文は 1962 年刊 行である一方,現実の研修医マッチングにおいては 1950 年代からこのアルゴリズムが使 われており,これらの発見は互いに独立であるようだ.経済学者たちによって理論的な関 心から導かれた方法と,マーケットにおける試行錯誤から生まれた方法が一致していると いうことは非常に興味深い. これまで見てきたように,DA アルゴリズムは提出されたどんな選好に対しても Stable Matching を発見できる強力な方法である.しかし実際に DA をメカニズムとして現実社 会へ応用する理由としては,ここまで紹介してきた結果だけでは不十分だろう.というの は,選好の情報は各学生や各病院しか知らない私的情報であるから,もしも DA が学生 や病院がウソをついて得できる仕組みであったら,実現するマッチングが本当の選好に照 らして望ましい結果になっていないかもしれないからである.幸いなことに,DA アルゴ 4 より正確には,Roth (1984) は当時使われていたやり方が DA アルゴリズムのうちで病院側が学生側にオ ファーを出すバージョンと同じ結果をもたらすことを明らかにした.本文では病院オファーバージョンの DA の説明を省いたが,その仕組みはほとんど同一である.各ステップでオファーを出すのは学生ではなく病院 であり,各病院はその時点で空席になっているポジションの数だけ学生にオファーを出す点が変更点である. 5
  6. 6. リズムの下では,どの学生にとっても正直に選好を報告することが支配戦略になっている ことが知られている.つまり,学生たちは他の学生や病院がどのような選好を報告してい ても,自分は正直に選好を報告するのが最適な戦略になっているのである5.この性質は Strategy-Proofness (戦略的操作不可能性) と呼ばれ,マーケットデザインで最も重要な性 質のひとつと考えられている. 学生側にウソをつくインセンティブがないことは分かったが,病院側についてはどうだ ろうか? 残念ながら DA アルゴリズムのもとでは,ある病院がウソをついて得ができる ような場合がある.たとえば学生と病院の真の選好が次のように与えられているとしよう. 学生 1:病院 A,病院 B 学生 2:病院 B,病院 A 病院 A:学生 2,学生 1     定員  1 病院 B:学生 1,学生 2     定員  1 もし全ての参加者が正直に申告したとすると,DA アルゴリズムでは最初のステップで学生 1 が病院 A,学生 2 が病院 B に応募して仮マッチされ,これがそのまま最終的なマッチング として確定する.次に,病院 A が「学生 2 だけが Acceptable で,学生 1 は Unacceptable」 だとウソを申告したとしよう.すると,DA アルゴリズムの第 1 ステップでは,学生 1 は 病院 A に不採用になる.そして第 2 ステップで学生 1 は病院 B に応募して,これを受け た病院 B は学生 1 を仮マッチして学生 2 を不採用にする.第 3 ステップで学生 2 は病院 A に応募し,仮マッチされる.この段階でアルゴリズムは終了するので,最終的に確定した マッチングでは病院 A は第一希望である学生 2 とマッチすることができる.この例から, 病院 A はウソをつくインセンティブを持っていることがわかった. 残念なことに,このインセンティブの問題は DA アルゴリズムだけのものではない.Roth (1982) は,さらに一般的な不可能性定理を証明した. 定理 3 Stable かつ Strategy-Proof なメカニズムは存在しない. この定理の証明は驚くほど簡単であるが (Roth and Sotomayor (1990),定理 4.4 を参 照),その政策的含意は重要である.インセンティブの問題は DA アルゴリズム特有の問 題ではなく,Stability を要求する限り決して解決できない問題であるというのだ.つまり この定理は,マッチングの運営者がどれだけメカニズムを工夫してもインセンティブの問 題を完全に解決することはできない,という不幸な政策的含意を導いてしまうのである. ところが不可能性定理は研究の終わりではない.不可能性定理は “完全な”Strategy- Proofness の実現が不可能であることを示しているだけであり,実際のマーケットで特定の メカニズムを使った場合に,各参加者がウソをつく危険性が高いのかどうかについては何 も述べていない.もしも実際のマーケットでウソをつくインセンティブが無視できるほど 小さいならば,現実的には DA アルゴリズムを使うことに重大な問題はないのではないか?  この問題を分析した論文に,Roth and Peranson (1999) がある.彼らは NRMP に実際 5 実際には Group Strategy-Proofness という性質が知られている.これは,たとえ学生たちが相談して一 緒にウソをついても,そのグループ全員が得することはないという性質である.この点についての現在のと ころ最も一般的な結果は,Hatfield and Kojima (forthcoming) で与えられている. 6
  7. 7. に提出されたデータを用いて,参加者のうちどの程度の割合がウソをつくインセンティブ を持つかを計算した.その結果,驚くべきことに 4,000 近い病院の中からウソをつくイン センティブを持つのはわずか 20 から 30 程度であることが明らかにされた.Immorlica and Mahdian (2005) や Kojima and Pathak (forthcoming) によってこの現象の理論的説明が 与えられている.彼らによれば,マーケットが大きい,つまりマーケット参加者の数が多 いと,各病院が自分の報告により DA アルゴリズムに与えることができる (病院自身に都 合のよい) 影響は小さくなっていくという.このため,病院がウソをついて得できる可能性 は減少していく.さらに,マーケットサイズが限りなく大きくなっていくにつれて,ウソ をつくインセンティブはゼロに収束する.NRMP は非常に大きいマーケットであり (病院 数約 4,000,学生数約 25,000)6,こういった大きなマーケットでは,たとえ Strategy-Proof でない DA アルゴリズムを用いたとしても,実際上の問題点はクリアされているというこ とが示唆されているのである7. インセンティブの問題以外にも,大きなマッチングマーケットにおいてはいくつかの問 題がクリアされる可能性がある.その一例として,Kojima, Pathak and Roth (2009) を 紹介しよう.NRMP などのマーケットでは,学生同士が結婚してカップルで就職活動を するケースがしばしば見られる.実はカップルの存在は DA アルゴリズムにとって重大な 問題を引き起こす.というのは,実はカップルが存在するマーケットでは必ずしも Stable Matching は存在しないのだ.ところが現実のマーケット,たとえば NRMP やアメリカの 心理学者のマーケットなどでは,カップルが存在するのにもかかわらず,Stable Matching が発見され続けていると言われている.Kojima, Pathak and Roth (2009) は,カップルが 存在するマーケットにおいても,マーケットが大きくなるにつれて Stable Matching が存 在する確率が上がっていき,マーケットサイズが無限大になる極限では Stable Matching の存在する確率は1に収束することを示している. このように,従来考えられてこなかったマーケットサイズと Stable Matching の関係は 伝統的な理論で知られていたマッチングメカニズムの限界を克服する可能性を秘めている. また,上で見てきたアプローチは実際の市場環境を真剣に観察することから着想されてい る,という点も重要である.現実のマーケットはしばしばサイズが大きいという単純な事 実や,伝統的理論による不可能性定理が実際のマーケットでそこまで致命的な問題になっ ていない,という観察事実などがこれに相当する.その意味で,こういった研究方法は現 実社会への応用を強く意識するという,マーケットデザインの典型的なアプローチと言え るだろう.マーケットサイズとマッチングメカニズムの興味深い関係は,次に取り上げる 学校選択の文脈にも現れる. 6 ここでは Roth and Peranson (1999) が対象にした 1990 年代半ば時点の数値を紹介した.NRMP の参 加者は近年増加傾向にあり,詳しい数値は NRMP のウェブサイト (http://www.nrmp.org/) で見つけるこ とができる. 7 なお,Peranson は NRMP のマッチングを運営している National Matching Services Inc. の社長であ り,1990 年代に NRMP を批判する学生運動が起きたのを受けて Roth とともにマッチングアルゴリズムの 一部を変更した.DA アルゴリズムでの参加者のインセンティブの問題は単なる机上の空論ではなく,この運 動の中で市場参加者が抱いていた疑問や要請に答える形で研究されたのである. 7
  8. 8. 3 学校選択制 学校選択制とは,公立学校の生徒たちが従来の通学区域にしばられることなく複数の選 択肢の中から学校を選べるようにする新しい制度である.80 年代後半から各国で導入がス タートした学校選択制は,多くの国において教育問題の中心的なテーマとして高い関心を 集めている.日本でも,1998 年の三重県紀宝町を皮切りに全国で導入が進められており, 選択制が教育の質や学校間格差に与える影響などを中心に活発に論争や研究が行われてき た.しかしながら,従来の議論においては学校選択制という制度自体の “是非” にもっぱ ら関心が集まり「現行方式による運営が本当に望ましいのか?」「より多くの学生が行き たい学校へ通うことができる新方式は考えられないか?」といった,“制度選択” や “制度 設計” の視点が欠けていたように思われる8.本章では,マッチング理論の視点から,学校 選択問題および学校選択制の制度設計について論じていく. 3.1 研修医マッチングとの共通点と違い 学校選択問題の基本的な枠組みは Abdulkadiro˘glu and S¨onmez (2003) によって定式化 された9.数学的にはこの問題は研修医マッチングと “ほとんど” 同じである.学生が学校 に対して (Strict な) 選好を持つ点はまったく同じで,学校についても,典型的な公立学校 は学生に対して Priority Order (優先順位) を持っている.たとえば,学生 A が学生 B よ りも学校の近くに住んでいれば,学生 A の入学を優先する,といった具合である.数学的 にはこの Priority Order を,あたかも学校が学生に対して持っている選好だとみなすこと ができるので,形式的には学校選択問題は 2 章で扱った College Admissions Problem と 一対一に対応している10. 学校選択問題では,Stability の概念にも新しい解釈を与えることができる.マッチング がある学生 1 と学校 A にブロックされているとしよう.これは次のようなことを意味す る.学生 1 は学校 A に行きたいのに行けず,一方の学校 A には定員に空きがあるか,も しくは学生 1 よりも Priority の低い学生とマッチしている.このようなことが起きている 場合,学生 1 は理不尽な思いを味わうこととなり,マッチングは公平性を欠くと言えるだ ろう11.従って,学校選択問題においてマッチングが Stable であるというのは (1) どの学生も自分が希望しない学校に行かされず,学校も入学資格のない学生を受け 入れていない (Individual Rationality) (2) 本来 Priority を持っている学生が希望する学校に行くことができない,という不公 平が発生しない (No Blocking-Pair) 8 安田 (2009) が学校選択制の是非をめぐる論点の整理を行っている. 9 この分野の先駆的な研究である Balinski and S¨onmez (1999) も参照. 10 現実の学校選択問題ではしばしば Priority Order が Strict に与えられておらず,このことが新しい理論 的課題を生み出している.この点については後に述べることにする. 11 この理不尽な思いは Justified Envy (正当化される羨望) と呼ばれる.学校選択問題において,Justified Envy が存在しないという性質 (Elimination of Justified Envy) と No blocking pair は同値である.(論文に よっては,ある学生が “他の学生を” 羨望する場合のみを指して Justified Envy と呼ぶ場合もある.この場 合,定員に空きがあるかぎり入学希望者を受け入れるという性質を Non-wastefulness と呼んで Elimination of Justified Envy と区別する.) 8
  9. 9. ということを意味している. このような意味で,学校選択問題において Stability は,非常に規範的な公平性の概念 として重要視されるのである.さらに 2 章で触れた定理 2 は学校選択では特別な意味を持 つ.この定理は,DA アルゴリズムによって見つかるマッチングが,(Stability の意味で) 公平なマッチングの中で,全ての学生にとって最も望ましいマッチングになっていること を意味しているのである.もしも学校選択制の文脈において,学生の厚生のみを社会厚生 として定義するならば — つまり公立学校は究極的には学生を教育するための機関であり, 学校自身の厚生を社会厚生に含めるべきではないと考えるならば — DA アルゴリズムの 結果は公平性を満たす中でパレート最適なマッチングになっていることがわかる.ただし この結果は,学校の Priority Order が Strict に与えられているという仮定に強く依存して いるため注意が必要である.この点については後で詳しく検討を加える.また学校選択で は Stability の意味での公平性を必ずしも絶対視しない立場もあり,Abdulkadiro˘glu and S¨onmez (2003) はその場合のために DA よりも効率性の高い Top Trading Cycles (TTC) アルゴリズムを提唱している.Ergin (2002) は,DA が完全に効率的になるための条件を 特徴付けた.Kojima and Manea (2008) は学校選択で公平性が絶対視されないような場 合の DA の公理的特徴づけを行い,どのような意味で DA が効率性を犠牲にするのかを理 論的に分析している. マッチングメカニズムの理論は現実の公立学校の入学制度にも取り入れられ始めている. その最も有名な事例が,アメリカのニューヨーク市とボストン市で行われた学校選択制の 制度変更だろう.ニューヨークでは 2003 年,ボストンでは 2005 年から旧来の学校選択制 に代わって DA アルゴリズムが使われている.2005 年にはアメリカ全土の教育政策関係者 と経済学者を集めてハーバード大学でシンポジウムが行われ,両市の事例が紹介された12. さて,学校選択問題は研修医マッチングと非常に似ていることはすでに説明したが,学 校選択ならではの興味深い性質も多く存在する.その中でも恐らく最も特徴的な点は,公 立学校における Priority Order は多くの場合法律で定められており,学校の私的情報では ないということであろう.前章で説明した Strategy-Proofness を思い出してほしい.DA アルゴリズムが抱えていた重要な問題は,オファーを受ける側にとって Strategy-Proof に なっていないという点であった.ところがここで考えている学校選択問題では学校がそ もそも私的情報を持っておらず,その場合には学校を Strategic なプレーヤーと考える必 要がない13.よって,学生側からオファーを出していく DA アルゴリズムを採用する限 り,マーケットの全ての参加者について Strategy-Proofness が保障されるのである.実際, Strategy-Proofness はニューヨーク市やボストン市で DA アルゴリズムが採用された決定 的な理由のひとつだとされている14.このようにマッチング理論は新しい応用先を発見し, 12 Eric Mindich Conference on Designing Choice (2005).筆者の 1 人 (小島) はこのシンポジウムに参加 したが,教育関係者の関心が非常に高いのが印象的であった.マッチングメカニズムの導入は,経済学者だ けが関心を寄せる狭い現象ではなく,アメリカ中の教育政策担当者たちが注目・期待する重大な政策課題な のである. 13 ただし学校に選好の表明をさせる学区もあり,その場合にはやはり学校がウソをつく可能性に注意する必 要がある.たとえばニューヨークの従来の制度では,定員に関してウソをつく学校が存在したことが問題視 されていた.この場合,前述した Kojima and Pathak (forthcoming) の結果により,ニューヨークのような 大きな学区では,DA を使う限り学校がウソをついて得をする可能性は非常に低いことが予想される. 14 Strategy-Proofness は,戦略的な思考に長けているかどうかによって結果が左右されない,という公平 性に関する利点も持っている.詳しくは Abdulkadiro˘glu, Pathak and Roth (forthcoming) を参照. 9
  10. 10. 理論から得られた知見が以前の労働市場と同様,あるいはそれ以上に強力なツールとして 用いられているのである. これまで強調してきたように,マッチング・マーケットデザインが近年発展してきたひ とつの理由として,マーケットを虚心坦懐に見つめることで新しい理論の発展が促されて きたという点が挙げられる.学校選択制の文脈でもひとつ例を紹介しよう.いままで説明 してきた学校選択問題では,学校の学生に対する Priority Order は Strict であるとしてき た.ところが実際には,学生に対する公立学校の Priority は多くの Indifference (無差別) を含んでいる (つまり,同順位の優先順位を持つ学生が複数いる).たとえばボストン市の 場合には,各学校の学生に対する Priority Order は 4 つのグループに分けられる.具体的 には (1) 学校の近所に住んでおり,かつ兄弟が同じ学校に通っているグループ (2) 兄弟が同じ学校に通っているグループ (3) 学校の近所に住んでいるグループ (4) 上記のいずれにも該当しない学生 の順番に Priority が与えられている.これから見てわかるように,実際には何十人・何 百人もの学生が同じ Priority を与えられることとなる.一方 Gale and Shapley によって 提案された DA アルゴリズムでは,全ての選好は Strict になっていることが前提であり, Indifference はないものと仮定されている.この違いを克服するためにボストン市で採用 されたマッチングメカニズムでは,まず Indifferent な学生たちをランダムに順位付けして Priority Order を人工的に Strict に変えて (タイブレーキング),その上で DA アルゴリズ ムによるマッチングを行っているのである. ボストン市が採用したこの「タイブレーク+ DA」のやり方は,一見すると文句の付け ようがない方法に思えるが,実はこれは完璧な方法であるとは言えない.Erdil and Ergin (2008) は人工的なタイブレーキングのせいで効率性が犠牲になってしまう可能性を指摘し た.彼らの論文で紹介された次の例を見てみよう. 学生 1:学校 B,学校 A,学校 C 学生 2:学校 C,学校 B,学校 A 学生 3:学校 B,学校 C,学校 A 学校 A:学生 1,(学生 2 と学生 3 が無差別)     定員  1 学校 B:学生 2,(学生 1 と学生 3 が無差別)     定員  1 学校 C:学生 3,(学生 1 と学生 2 が無差別)     定員  1 この例で,タイブレークを学生の番号順に行ったとする.つまり Indifference がある限り 学生 1,学生 2,学生 3 の順番に Priority を与えてみよう.するとタイブレーク後の学校 の学生に対する Priority Order は 学校 A:学生 1,学生 2,学生 3     定員  1 10
  11. 11. 学校 B:学生 2,学生 1,学生 3     定員  1 学校 C:学生 3,学生 1,学生 2     定員  1 となる.このタイブレーク “後の”Priority Order の下で DA アルゴリズムを用いて見つけ られるマッチングは 学校 A — 学生 1 学校 B — 学生 2 学校 C — 学生 3 となる.ところが次のマッチング 学校 A — 学生 1 学校 B — 学生 3 学校 C — 学生 2 もタイブレーク “前の”Priority Order に関しては Stable になっている.しかもこのマッチ ングは DA で発見されたマッチングをパレート支配している.このことから,タイブレー ク+ DA を行うと最終的なマッチングの効率性を犠牲にしてしまう危険性があることがわ かるのである.前述したように,定理 2 は学校選択問題で DA を使うことを効率性の立場 から正当化するものと考えられていた.しかしここで見たように,もしも学校の Priority Order が Indifference を含んでいる場合には,効率性による正当化は厳密には正しくない ことになる. この事実から出発して,Erdil and Ergin (2008) はタイブレークする前の Priority Order に対してStableなマッチングを考え,その中で最も効率的な(より正確に言うとConstrained Efficient な) マッチングを発見する,Stable Improvement Cycles (SIC) アルゴリズムを提 案した.Abdulkadiro˘glu, Pathak and Roth (forthcoming) は,ボストン市およびニュー ヨーク市のデータを用いて,各学生が SIC アルゴリズムでも DA と同じく正直に選好を 申告するという仮定の下で SIC アルゴリズムがどの程度効率性を改善するかを測定してい る.その結果,ボストン市に関してはほとんど変化が見られないものの,ニューヨーク市 については無視できない効率性の改善が見られることが明らかになった.ただし SIC アル ゴリズムが学生について Strategy-Proof になって “いない” ことも,Erdil and Ergin 自身 によって指摘されており,実際に SIC アルゴリズムを用いるべきかどうかには十分な検討 が必要であろう. Abdulkadiro˘glu, Pathak and Roth (forthcoming) はさらに一般に,タイブレーク+ DA アルゴリズムを常にパレート支配する Strategy-Proof なメカニズムが存在しないことを示 した.ここでは詳細を述べないが,たとえ大きなマーケットであっても SIC アルゴリズム はインセンティブの面で改善しないであろうことが多くの研究者たちの間で予想されてい る15.このことを踏まえると,Indifference のある学校選択問題において,真に望ましい メカニズムが何であるかを考えるのは,まだまだ研究する余地が十分にある問題ではない かと思われる. 15 ただしこのことを厳密に示した研究は,筆者たちの知る限りいまのところ存在しない. 11
  12. 12. 3.2 学校選択における抽選と効率性 実は Priority Order に Indifference が存在することは,さらに新しい興味深い問題への 道を開いている.いままでの議論ではマッチングの効率性は事後的にのみ評価されていた. 言い換えると,最終的に決定されたマッチングを見たときにそこから改善の余地がなけれ ば,マッチングは効率的であると考えられた.しかし Indifference がある場合のマッチン グメカニズムでは,まずランダムにタイブレークを行わなければならない.言い換えると, 学校の定員と比べて入学希望者が多い時には,抽選を行わなければならないのである.こ れは何を意味するのか.それは,学生たちが受け取るものは Deterministic に決められた 学校ではなくて,いろいろな学校に対する確率分布,つまりクジであるということである. 経済学でよく知られているように,事後的な効率性は事前での効率性を必ずしも意味しな い.この点を確認するために,Bogomolnaia and Moulin (2001) を元に単純化した,次の 例を考えよう. 学生 1,2:学校 A,学校 B 学生 3,4:学校 B,学校 A 学校 A,B ともに全ての学生は Indifferent であり,定員は1であるとしよう.タイブレー クの仕方は両学校で共通であり (これを Single Tie Break と呼ぶ),そのやり方は一様分布 であるとする16.たとえばタイブレークによる優先順位が 1,2,3,4 の順番であれば,学 生 1 が学校 A,学生 2 が学校 B へ入学を許可される一方,学生 3,4 は Unmatched とな る.逆に優先順位が 4,3,2,1 の順番であれば,学生 4 が学校 B,学生 3 が学校 A へ入 学を許可され,学生 1,2 は Unmatched となる.これは明らかに非効率的である.なぜか といえば,正の確率で学生 2 は望ましくない学校 B に入学している一方で学校 B は学生 3 にとって第一希望であり,逆に正の確率で学生 3 は望ましくない学校 A に入学している 一方で学校 A は学生 2 にとって第一希望であるから,もしも事前にこれらの確率を交換 できたならば双方の学生にとって得だからである.ここで,各学生がそれぞれの学校に対 して持っている好みの “強さ”(= Cardinal Preference) には一切触れていない点に注意し よう.これは,上記のランキング (= Ordinal Preference) を満たす “どのような”Cardinal Preference,つまり期待効用関数を各学生が持っていたとしても事前の確率交換によって 学生たちが得をすることができる,ことを意味する.このような場合に,事前の確率的な 配分は Ordinally Efficient ではないと言う.つまり,タイブレーク+ DA アルゴリズムは Ordinally Efficient ではない,という意味で事前的な非効率性を生み出す危険性を秘めて いるのだ.ちなみに前述した SIC アルゴリズムでもここで紹介した非効率性が克服できな いことは簡単に確認できる17. Bogomolnaia and Moulin (2001) はさらに,事前の非効率性をなくす新しいメカニズ ムとして Probabilistic Serial (PS) メカニズムを提案し,この新メカニズムが Ordinally 16 このやり方の他に,各学校で独立にタイブレークを行う Multiple Tie Break という方法も知られている. Single Tie Break と Multiple Tie Break のどちらの方式が望ましいかについては,実務および理論の両面か ら活発に議論されている.最新の理論的成果は Abdulkadiro˘glu, Che and Yasuda (2008) に詳しい. 17 各学校が全ての学生を Indifferent とする場合,DA +タイブレークは Random Serial Dictatorship (RSD) や Random Priority (RP) と呼ばれるメカニズムと一致する.実際,ここで紹介した論文の多くはこのよう な場合を扱っており,RSD や RP という呼称が用いられている. 12
  13. 13. Efficient であることを証明した.ところが残念なことに,PS メカニズムは Strategy-Proof ではないことも明らかにされた.そのため,タイブレーク+ DA と PS メカニズムのどちら を採用するべきかについては活発な議論が起きている.たとえば Pathak (2008) はタイブ レーク+ DA を使っているニューヨーク市のデータを研究した.彼の結果によれば,確か に DA と比較すると PS メカニズムは効率性の点で勝っているが,効率性の向上幅はごく ごく小さいものだという.このことと PS が Strategy-proof でないことから Pathak (2008) は DA を推奨する立場をとっている.一方で Kojima and Manea (2007) は,マーケット が大きくなると PS メカニズムが Strategy-Proof になることを理論的に示し,ニューヨー クの学校選択のようにマーケットサイズが大きい場合に PS を用いることに対する一定の 正当化を与えた.この対立は Che and Kojima (2008) によってさらに研究された.彼ら は,実はマーケットが大きくなっていくとタイブレーク+ DA と PS メカニズムはお互いに 近づいていき,マーケットサイズが無限になった極限では完全に一致することを示したの である.この意味で,どちらのメカニズムも一般には不完全であるが,大きなマーケット ではどちらもお互いの短所を補い合い,より強い正当性を獲得することがわかる.なお方 法論的には,第 2 章で触れたのと同様に,ここでもメカニズムを評価するにあたってマー ケットサイズが有用な役割を果たしていることが見て取れるだろう. 以上で見てきたように,タイブレーク+ DA はマーケットサイズが十分に大きい場合に は近似的に Ordinally Efficient になることが分かった.それでは,タイブレーク+ DA は 十分に大きいマーケットにおいては事前の非効率性を全くもたらさないと言えるのだろう か?  Abdulkadiro˘glu, Che and Yasuda (2008) は,各学校に対する学生たちの Ordinal な好みだけではなく Cardinal な好みまで考慮に入れると,事前の非効率性が発生するこ とを明らかにした.まずは彼らの論文で紹介された以下の例を見てみよう18. 学生 1 学生 2 学生 3 学校 A 4 4 3 学校 B 1 1 2 学校 C 0 0 0 各学校の定員は 1 人ずつで,いままでの例と同じように全ての学生は学校にとって In- different だとしよう.表の中の数字は各学生の期待効用を表しており,学生 1 と 2 は,学 校 A,B,C とマッチした時にそれぞれ 4,1,0 の利得を得る一方で,学生 3 は 3,2,0 の 利得をそれぞれ得る.これは,どの学生も学校 A,B,C の順番に好んでいるものの,ど れだけその学校に行きたいかの強さが学生の間で異なる状況を表している19.この状況で タイブレーク+ DA を行うと,Strategy-Proofness が満たされているため全ての学生が A, B,C の順番のランキングを提出することになり,結局 1/3 ずつの確率で各学校とランダ ムにマッチする.この時の事前の期待効用を計算すると 学生 1,2 → 4 × 1/3 + 1 × 1/3 = 5/3 学生 3 → 3 × 1/3 + 2 × 1/3 = 5/3 18 以下で紹介する非効率性はマーケットが大きくなっても解消しないことが明らかになっている. 19 この例ではすべてのマッチングが事後的にはパレート効率的なので,Erdil and Ergin (2008) の提唱した SIC を用いても結果は一切改善されない. 13
  14. 14. となり,全員が 5/3 を得ることが分かる.ここで,タイブレーク+ DA とは異なる次のよ うな確率的な配分を考えてみたい.「学生 1,2 は半々の確率で学校 A および C とマッチ し,学生 3 は確率 1 で学校 B とマッチする」というものだ.こちらのクジのもとでは,ど の学生も 2 の期待効用を得ることが簡単に計算できる.つまり,この新たな配分は,全て の学生にとってタイブレーク+ DA によってもたらされる配分よりも事前の意味で望まし い (正確に言うと,パレート優位にある) のである. 実はこの望ましい配分は,旧来ボストンで用いられていた方式 (以後,ボストンメカニズ ムと呼ぶ) によってもたらされる配分に一致することを示すことができる.ボストンメカニ ズムは DA アルゴリズムと一見するとよく似たアルゴリズムなのだが,各ステップで決ま るマッチが仮マッチではなく最終的なマッチである点が大きく異なる.一度定員が埋まっ てしまった学校には後から申し込むことができないため,学生はランキングを偽って報告 することで得できるかもしれない.つまり,ボストンメカニズムは Strategy-Proofness を 満たさないのだ.実際にこの例でボストンメカニズムを用いると,学生 1 と 2 はランキン グを正直に申告するが,学生 3 はランキングを偽って学校 B を第一希望とすることが分か る20.この時,さきほどの望ましい確率的な配分がまさに実現されるのである. ここで注目したいのが,ボストンメカニズムが DA アルゴリズムよりも事前の意味で 効率的になる理由だ.DA アルゴリズムは Strategy-Proof であるため,どんなに Cardinal な好みが異なっていても,各学生は自分の Ordinal な好み “だけ” に応じたランキングを 提出せざるを得ない.一方のボストンメカニズムは Strategy-Proofness を満たさないため に,各学生は自分の Cardinal な好みに応じてランキングを変更できる可能性がある.つ まり,DA アルゴリズムは Cardinal な好みを一切くみ取ることができないのに対して,ボ ストンメカニズムは戦略的なランキングの操作によってその一部を反映させることができ るのだ.上記の例においても,「学校 A に強く行きたいと思っている学生 1 と 2 がリスクを 犯して学校 A を第一希望に指定する」のに対して,「学校 B でもそれなりに満足できる学 生 3 は確実に席をキープすることができる学校 B を第一希望に選ぶ」,という形で選好の 強さがうまく反映されていることが分かる.こうした効率性の改善は,DA アルゴリズム に代表されるような Strategy-Proof なメカニズムでは起こり得ない.この意味において, Strategy-Proofness と事前の効率性との間には,トレード・オフが存在するのである. Abdulkadiro˘glu, Che and Yasuda (2008) はさらに,Strategy-Proofness をできるだけ 崩さずに事前の非効率性を抑えるような新たなメカニズムとして,Choice-Augmented Deferred Acceptance (CADA) アルゴリズムを提案した.CADA アルゴリズムは,ランキ ングの提出の他に,(一つだけ) 選んだ学校に対して自分の Priority を上げることのできる 指定校オプションを加えた,DA アルゴリズムの修正版となっている.どの学校に指定校 オプションを使うのかは各学生が戦略的に決めなければならないものの,学校に対するラ ンキングは正直に申告するのが支配戦略になっているため,DA アルゴリズムと同様にラ ンキング提出に関する Strategy-Proofness は満たされる.一方で,この指定校オプション の導入が事前の効率性を大きく改善することを,理論とシミュレーションの両面から彼ら は示している. 20 正確に言うと,ボストンメカニズムを完備情報ゲームとして考えた時に,このランキングの組合せがナッ シュ均衡になっている. 14
  15. 15. 以上駆け足で近年の発展が著しい学校選択制の研究を展望してきた.この分野の草分け 的存在の Abdulkadiro˘glu and S¨onmez (2003) は 2003 年の出版であり,ニューヨークやボ ストンで DA アルゴリズムが使われ始めたのも 2000 年代に入ってからである.このこと からわかるように,学校選択は非常に新しい研究分野であり,今後の発展がおおいに期待 できるというのが筆者たちの考えである. 4 マッチングの理論的発展 研修医マッチングの章を読んでおやっ,と思った読者がいるかもしれない.いままでの モデルでは経済学とりわけ労働市場の分析に必ずと言って良いほど登場する “あるもの” が存在していないからである.そう,労働者の賃金はどこに出てきたのだろうか? いま までのモデルでは賃金や勤務時間その他の労働条件はすでに外側から与えられており,こ れら諸々の条件に対する選好は,マッチする相手に対する選好の中に含められていると仮 定されていた.しかし現実の労働市場では賃金や労働条件などはある程度はフレキシブル であろう.このような場合にもマッチング理論は拡張できるだろうか. 労働市場のマッチングに賃金を導入した初期の貢献には Kelso and Crawford (1982) があり,その後の研究の重要な基礎となっている.ここではより一般的な,Hatfield and Milgrom (2005) で提案された契約つきマッチングモデル (Matching with Contracts) を説 明する.いままでと同様に,マーケットには学生と病院がいるとする.各学生と病院につ いて,彼らが結ぶことができる契約の集合が定められており,学生や病院は契約に対して 選好を持つとしよう.たとえば契約の内容が賃金であれば,同じ学生と病院がマッチング するのであっても,労働者はより高賃金の契約を好み,病院はより低賃金の契約を好む, といった具合である.さらに,病院は契約のグループの集合に対して選好を持っており, 個々の契約のランキングをそのまま足し合わせる必要はない.このモデルにおいてマッチ ングの Stability は,「病院と学生たちがお互いにとって有益な契約を結んで現在のマッチン グから逸脱するインセンティブを持たないこと」として定義される.Hatfield and Milgrom (2005) は Kelso and Crawford (1982) で提唱された代替性の概念を契約つきマッチングモ デルに拡張し,この代替性のもとで Stable Matching が必ず存在することを示した.その 後,Hatfield and Kojima (2008, 2009) は Hatfield and Milgrom (2005) の代替性は Stable Matching の存在のためには必ずしも必要ないことを示し,より一般的な新しい代替性の 概念を提出し分析している. 抽象的な契約を許したモデルは賃金や労働条件を内生的に扱うことができ,一見すると これ以上一般的なモデルは必要ないようにも思える.しかしこれまでの議論では一貫して, マーケットには二種類のプレーヤー (学生と病院) がいる,つまりマーケットが Two-Sided であると仮定してきたことに注意が必要だ.現実には,Two-Sided ではないもっと複雑な マッチングマーケットが数多く存在する.いわゆるサプライチェーンなどはその代表的な ものだろう.たとえばパンの市場を考えよう.この市場では農家が小麦を生産して製粉会 社に売り,製粉会社が小麦粉を作りそれをパン工場に売る.それをパン工場がパンに加工 し,販売会社に売るかもしれない.最終的な消費者にパンが渡るのはその後であろう.さ らにパン工場は小麦だけではなくパンを焼く機械を購入するかもしれないし,製粉会社は 15
  16. 16. パン工場だけではなく他の用途にも小麦粉を売るかもしれない.このように複雑に入り組 んだ市場に果たして Stable Matching は存在するのだろうか.Ostrovsky (2008) はこの問 題に取り組んだ研究である.彼は Hatfield and Milgrom (2005) のようにさまざまな契約 を許したモデルを考え,彼らの仮定した代替性の条件をサプライチェーンに拡張して,そ の下で Stable Matching が存在することを始めて示した.Gale and Shapley 以来,市場に 二種類のプレーヤーしかいないことがマッチングモデルに不可欠であると信じられていた ことを考えると,この研究は特筆に価する. このようにマッチングモデルは最近になって大きく守備範囲を広げてきたが,その基礎 となるのはある日本人経済学者によって開発された革新的な数学モデルである.Adachi (2000) がそれである.彼はマッチングそのものを考えるのではなく,Pre-Matching とい う数学的対象を考案することで,マッチングモデルが数学的に非常に整った性質を持って いることを明らかにした.詳しい説明は省かねばならないが,Pre-Matching とは各プレー ヤーがどの相手とマッチしている “つもり” であるかを指定した関数で,必ずしもその予 想が正しいことを要求しない.たとえば学生 1 が病院 A にマッチするつもりでも,病院 A は学生 2 にマッチするつもりでいても良い.もし全てのプレーヤーの予想が一致すれば, そのような Pre-Matching は本当のマッチングになる.Adachi はある関数 T が存在して (1) T の不動点の集合が Stable Matching の集合と一致し (2) Pre-Matching の空間に適切な順序関係を導入すると,T は complete lattice 上の増 加関数になる ことを証明した.Tarski の不動点定理 (Tarski, 1955) という数学の結果によれば,増加関数 は不動点を持つことが知られているので,これによって Adachi (2000) は Stable Matching の存在を Gale and Shapley (1962) とは異なる方法で示したことになる.さらに Tarski の 不動点定理は数々の構造的な性質を導くことが知られており,Adachi (2000) の知見によっ て,50 年近いマッチング研究の中で徐々に明らかにされてきた Stable Matching に関する 結果の多くが,統一的な方法により得られることになったのである.彼の革新的なアイデ アはその後多くの研究者によって拡張,発展させられている.たとえば上記の Hatfield and Milgrom (2005) や Ostrovsky (2008) の分析手法は Adachi (2000) の自然な発展となってい る.他にも Echenique and Oviedo (2004, 2006), Echenique and Yenmez (2007), Fleiner (2003), Kojima (2007), Kojima, Pathak and Roth (2009) などはこの手法を様々な場面で 活用している.また Adachi (2003) は類似の手法をサーチモデルの文脈に用いて,マッチ ングとサーチモデルの関係に関する研究を発展させている. Kandori, Kojima and Yasuda (2008) はこれらのアイデアをさらに発展させ,マッチン グの理論と戦略的補完性の理論との関係を明らかにする研究を目下行っている.Adachi (2000) に端を発した理論的発展はマッチングの構造を Tarski の不動点定理という数学ツー ルによって統一的に理解することを可能にしたが,その一方で分析に登場する関数の経済 学的な意味は必ずしも明らかではなかった.Kandori, Kojima and Yasuda (2008) はある 種の非協力ゲームを考え,Adachi 流の関数 T がこのゲームに登場するプレーヤーたちの 最適反応関数と一致することを示した.これは以下のことを意味する. 16
  17. 17. (1) 関数 T が増加関数であるというのは,非協力ゲームが戦略的補完性を持っているこ とに対応する (2) T の不動点はこのゲームの純粋戦略ナッシュ均衡に対応する これらの結果により,マッチングモデルに Stable Matching が存在するという現象は,戦 略的補完性のあるゲームに純粋戦略ナッシュ均衡が存在するという,非協力ゲームでよく 知られた事実の一例であることが明らかになったのである.他にも,学生 (/病院) にとっ て最も望ましい Stable Matching と最小の (/最大の) 純粋戦略ナッシュ均衡が一対一に対 応することや,DA アルゴリズム (のある種のバージョン) が非協力ゲームの最適反応動学 と見なせることなど,両者をつなぐ数々の数学的性質が明らかにされつつある.この研究 はいまだ発展途上であり,協力ゲームの枠組みで分析されてきたマッチング理論に非協力 ゲームの光を当てることで,マッチング理論のより深い理解が得られるのではないかと筆 者たちは期待している. 5 まとめ 以上,マッチング理論とその応用であるマーケットデザインについて駆け足で概観を試 みた.マッチング・マーケットデザインは 1990 年代後半以降に急速な発展を見せており, 現在でも新しい問題や発見が次々と生まれてきている.また,この分野に身をおく研究者 として,筆者たちはマッチング・マーケットデザインが今後もエキサイティングな分野と して急速に発展していくだろうと期待している.日本の研究者の方々,特に経済理論に興 味を持つ若手研究者のみなさんが,マッチングという研究分野の広がりと可能性を本稿か ら感じて頂ければ,書き手としてそれに勝る喜びはない. 本稿を終える前に,ここでは扱えなかった周辺分野も急速な発展を見せていることを指 摘しておきたい.たとえば Roth, S¨onmez and ¨Unver (2004, 2005, 2007) による一連の研 究により,生体臓器移植の問題がマッチングの問題としてデザイン可能であることが明ら かにされた.彼らはアメリカにおける臓器提供のネットワークを構築するために活躍中で ある21 .またオークション理論をマーケットデザインに応用した成功例も多数ある.複数 財のオークションは近年発展が著しい分野であり,ここでは複数の財を扱うオークション とマッチングにはさまざまな類似性があることを指摘しておく.詳しくは本稿でも取り上 げた Hatfield and Milgrom (2005), Milgrom (2007), Hatfield and Kojima (2009) などを 参照されたい22. 最後に,筆者たちが関わっている現実のマーケットデザインについて簡単にご紹介しつ つ本稿の結びとしたい.我々は現在,フェロー (研究員) として VCASI(ヴィカシ,東京財 団仮想制度研究所) に所属し,そこで「学校選択制デザインプロジェクト」という学校選 択制に焦点を絞った研究グループに参加している.プロジェクトが発足した 2008 年 10 月 21 詳しくは次に挙げる Roth のウェブサイトの該当箇所を参照. (http://kuznets.fas.harvard.edu/∼aroth/alroth.html#KidneyExchange) 22 本稿で解説したマッチングに加えて臓器移植やオークションまで取り上げている優れた専門書として,坂 井・藤中・若山 (2008) を挙げたい. 17
  18. 18. 以降,自治体へのヒアリング等を通じて日本における学校選択制の現状について調査する とともに,学校選択制に関する最新の学術成果や海外における制度変更の事例を研究しな がら,望ましい学校選択制の制度設計に他の参加メンバーと共同で取り組んでいる23.本 稿でも触れたように,学校選択制に関する分析は日進月歩の状態で,次々と新たな成果が 明らかにされている.こうした最先端の学術的な知見を活かしつつ,教育現場と連携を取 りながら現実と理論をうまく融合させ,よりよい学校選択制の実現を目指して積極的に活 動していきたい. 参考文献 [1] Abdulkadiro˘glu, Che and Yasuda (2008), “Expanding ‘Choice’ in School Choice,” unpublished manuscript. [2] Abdulkadiro˘glu, Pathak and Roth (forthcoming), “Strategy-Proofness versus Effi- ciency in Matching with Indifferences: Redesigning the NYC High School Match,” American Economic Review. [3] Abdulkadiro˘glu and S¨onmez (2003), “School Choice: A Mechanism Design Ap- proach,” American Economic Review, 93: 729-747. [4] Adachi (2000), “On a Characterization of Stable Matchings,” Economics Letters, 68: 43-49. [5] Adachi (2003), “A Search Model of Two-Sided Matching under Nontransferable Utility,” Journal of Economic Theory, 113: 182-198. [6] Balinski and S¨onmez (1999), “A Tale of Two Mechanisms: Student Placement,” Journal of Economic Theory, 84: 73-94. [7] Bogomolnaia and Moulin (2001), “A New Solution to the Random Assignment Problem,” Journal of Economic Theory, 100: 295-328. [8] Che and Kojima (2008), “Asymptotic Equivalence of Random Priority and Proba- bilistic Serial Mechanisms,” unpublished manuscript. [9] Echenique and Oviedo (2004), “Core Many-to-One Matchings by Fixed-Point Meth- ods,” Journal of Economic Theory, 115: 358-376. [10] Echenique and Oviedo (2006), “A Theory of Stability in Many-to-Many Matching Markets,” Theoretical Economics, 1: 233-273. [11] Echenique and Yenmez (2007), “A Solution to Matching with Preferences over Col- leagues,” Games and Economic Behavior, 59: 46-71. 23 詳しくは VCASI 内のウェブサイト (http://www.vcasi.org/scdp/273#) を参照. 18
  19. 19. [12] Erdil and Ergin (2008), “What’s the Matter with Tie-breaking? Improving Effi- ciency in School Choice,” American Economic Review, 98: 669-689. [13] Ergin (2002), “Efficient Allocation on the Basis of Priorities,” Econometrica, 70: 2489-2497. [14] Fleiner (2003), “A Fixed-Point Approach to Stable Matchings and Some Applica- tions,” Mathematical Operations Research, 28: 103-126. [15] Gale and Shapley (1962), “College Admissions and the Stability of Marriage,” American Mathematical Monthly, 69: 9-15. [16] Hatfield and Kojima (2008), “Matching and Contracts: Comment,” American Eco- nomic Review, 98: 1189- 1194. [17] Hatfield and Kojima (2009), “Substitutes and Stability for Matching with Con- tracts,”unpublished manuscript. [18] Hatfield and Kojima (forthcoming), “Group Incentive Compatibility for Matching with Contracts,” Games and Economic Behavior. [19] Hatfield and Milgrom (2005), “Matching with Contracts,” American Economic Re- view, 95: 913-935. [20] Immorlica and Mahdian (2005), “Marriage, Honesty, and Stability,” in Proceedings of the Sixteenth Annual ACM-SIAM Symposium on Discrete Algorithms: 53-62. [21] Kandori, Kojima and Yasuda (2008), “Understanding Stable Matchings: A Non- Cooperative Approach,” unpublished manuscript. [22] Kelso and Crawford (1982), “Job Matchings, Coalition Formation, and Gross Sub- stitutes,” Econometrica, 50: 1483-1504. [23] Kojima (2007), “Finding All Stable Matchings with Couples,” unpublished manuscript. [24] Kojima and Manea (2007), “Strategy-Proofness of the Probabilistic Serial Mecha- nism in Large Random Assignment Problems,” unpublished manuscript. [25] Kojima and Manea (2008), “Competitive Claims and Resource Allocation by De- ferred Acceptance,” unpublished manuscript. [26] Kojima and Pathak (forthcoming), “Incentives and Stability in Large Two-Sided Matching Markets,” American Economic Review. [27] Kojima, Pathak and Roth (2009), “Matching with Couples,” in progress. [28] Milgrom (2007), “Package Auctions and Package Exchanges,” Econometrica, 75: 935-966. 19
  20. 20. [29] Ostrovsky (2008), “Stability in Supply Chain Networks,” American Economic Re- view, 98: 897-923. [30] Pathak (2008), “Lotteries in Student Assignment: The Equivalence of Queueing and a Market-Based Approach,” unpublished manuscript. [31] Roth (1982), “The Economics of Matching: Stability and Incentives,” Mathematics of Operations Research, 7: 617-628. [32] Roth (1984), “The Evolution of the Labor Market for Medical Interns and Residents: A Case Study in Game Theory,” Journal of Political Economy, 92: 991-1016. [33] Roth and Peranson (1999), “The Redesign of the Matching Market for American Physicians: Some Engineering Aspects of Economic Design,” American Economic Review, 89: 748-780. [34] Roth, S¨onmez and ¨Unver (2004), “Kidney Exchange,” Quarterly Journal of Eco- nomics, 119: 457-488. [35] Roth, S¨onmez and ¨Unver (2005), “Pairwise Kidney Exchange,” Journal of Economic Theory, 125: 151-188. [36] Roth, S¨onmez and ¨Unver (2007), “Efficient Kidney Exchange: Coincidence of Wants in Markets with Compatibility-Based Preferences,” American Economic Review, 97: 828-851. [37] Roth and Sotomayor (1990), Two-Sided Matching: A Study in Game-Theoretic Modeling and Analysis, Econometric Society Monographs No.18, Cambridge Uni- versity Press. [38] Tarski (1955), “A Lattice-Theoretical Fixpoint Theorem and its Applications,” Pa- cific Journal of Mathematics, 5: 285-310. [39] 坂井・藤中・若山 (2008)『メカニズムデザイン』ミネルヴァ書房 [40] 安田 (2008)『注目集まる「マーケット・デザイン」:欧米の制度設計で適用』日本経 済新聞 (6 月 5 日「経済教室」) [41] 安田 (2009)『学校選択制を経済学で考える』週刊エコノミスト (1 月 13 日「学者が 斬る」) 20

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