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地球市民の会 第9回通常総会記念イベント
  会員大討論会 ~NPOの未来を考える-今、地球市民の会は何ができるのか?~




      大串政務官              古川知事             佐藤会長          山口副会長
 日時: 平成22年5月16日(日) 15:15~16:45
 場所: アバンセ第2研修室
 出演者: メインスピーカー        大串博志       財務大臣政務官(衆議院議員)・地球市民の会顧問
       コメンテーター        古川康        佐賀県知事・地球市民の会名誉会長
       代表質問者1         佐藤昭二       地球市民の会会長
       代表質問者2         山口久臣       地球市民の会副会長
       コーディネーター       山下雄司       地球市民の会理事長

 NPO法人地球市民の会は、第9回通常総会を記念し、NPOの役割などを考える討論会を開催いたしました。
 大串政務官や古川知事というビックなゲストをお呼びし、NPOの有効性、寄付控除制度の現状と課題、道州制と地方
 分権という旬なテーマで意見を交わしていただきました。
 会場には地球市民の会会員だけでなく、NPO関係者など、60名以上の方々にご参加いただき、大変盛り上がった
 討論会となりました。本レポートでは、討論会の全文を公開いたします。
      ※ イベント時には認定NPOの申請中でしたが、その後、2010年7月1日より佐賀県初の認定NPOとなることが決まりました!
      ※ なお、控除関係については、わかりやすさを重視し、シンプルな数字を用いて話をしております。本文中に出てくる例
        は、あくまでも仮定の話ですので、実際の制度、金額とは異なることもございます。ご了承ください。

開会のことば

 佐藤    皆さん、大変お疲れ様でございます。
       これから勉強会が始まりますが、楽しい時間になればと思います。
       私はどういう質問をしようか考えていますが、まだまとまっていません。
       大串さんのお話を聞くうちに、質問が出てくるかと思っています。
       ぜひ、楽しくお話をさせてください。本日はよろしくお願いします。

はじめに

 山下    皆さま、改めましてこんにちは。外も中も熱気ムンムンですので、
       ネクタイは頭に巻き(会場より笑い)、上着は脱いで、会場の雰囲気作りに
       ご協力ください。                                             コーディネーター山下


       まず始めに、今回の趣旨について紹介いたします。
       1995年1月17日、阪神大震災で多くの犠牲がありました。現在、NPOという言葉を聞く機会が増えま
       したが、そのきっかけは1995年の阪神大震災だったと思います。日本人らしい助け合いの生き方が
       崩壊してきている社会の中で、大惨事をきっかけに「皆で助け合おうよ」という機運が生まれまし
       た。
       今は、激動・激変の時代です。そういう中で、NPOやいろいろな教育・医療・福祉・子育ての市民
       グループの皆さんが志を結集し、立ち上がり、行政だけでは解決できない課題に立ち向かっていま
       す。
       本日は地球市民の会の会員さんだけでなく、NPOやそれぞれの団体のリーダーの方にお集まりいた
       だいております。市民団体が直面している財政的な問題や行政との連携などの課題について、ご
       専門の立場から、皆さんの意見をざっくばらんに聞く会としたいと思います。
       なお、本日は役職ではなく、敬意をもって「さん」付けでお呼びさせていただきたいと思います。

       討論会の進め方についてですが、テーマを3つ設定しております。それぞれのテーマについて、
       まず大串さんから解説をいただき、当会2名より皆さまを代表して質問、古川さんにはコメントを
       いただくというスタイルで進めてまいります。

テーマ1 「新しい公共」におけるNPOの有効性について
                                                 特定非営利活動法人 地球市民の会
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  会員大討論会 ~NPOの未来を考える-今、地球市民の会は何ができるのか?~




山下    今日は「NPOの未来を考える」という大テーマのもとに進めていきますが、最初に「新しい公
      共」について議論をしてみましょう。新しいって何が新しいの?公共ってどういう意味があ
      るの?NPOが担う役割とは?という点について、大串さんよろしくお願いいたします。

大串    今日はこのような場でNPOの未来を考えるということで皆さんと意見交換の機会をいただき、
      ありがとうございます。今日は総会に出られずに申し訳ありませんでした。いろいろな立場で
      佐賀を支えてくださっている皆さんに心から敬意を表したいと思います。

      今、「新しい公共」を作ろうとしています。鳩山総理が新しい公共の概念を作りたいと言いまし
      たが、これは民主党政権だけで始まったことではありません。公の仕事を行政だけが行うのでは
      なく、皆で支えあえないかということです。古川知事の一期目当選のときから議論を進めていま
      した。

      「新しい公共」には、いろいろな例がすでにあります。例えば消防団です。日本の火を消す活動
      は消防署員だけが担っているのではありません。消防署員は全国で10万人程度ですが、消防団員
      は100万人います。これもボランティアです。自治会で、私も地元の小城市で川の水さらいをし
      ていますが、これも公の仕事です。

      今、公に対するお一人お一人の貢献は、「税を払う」という形でしています。しかし、税を払
      って行政が公的サービスをするだけではいけません。税を払うだけではなく、体を、行為を、
      活動を使って、公のために何かできるのではないか、というのが新しい公共という考え方
      です。

      これは、アメリカにもあります。アメリカは寄付金税制などもあり、公のために一人ひとりが活
      動するということが進んでいる国です。誰かが会社に投資をするときは株を買います。株のこと
      を「equity」と言いますが、「sweat equity(汗の株式投資)」という言葉があります。N
      POに自分はどういう貢献をするかと言うときに、「私は汗の貢献をします」という考え方で
      す。それを出来るだけ具体的に進めていくときの担い手がNPOや公益法人の皆さんです。
      新しい公共円卓会議を鳩山さんの下に作って制度を整えています。税制改革や規制緩和を進め、
      出来るだけNPO、公益法人に参画していただく動きを進めています。これが新しい公共です。

山下    ありがとうございました。では、山口さんより質問をお願いします。

山口    「新しい公共」という話は日本人としては新しく聞こえます。私はヨーロッパが似合う男であ
      り(会場より笑い)、ヨーロッパ視察事業に行きました。ヨーロッパで公共について勉強してき
      ました。ヨーロッパは、公の考え方が進んでいます。公園がきれいなのは「私が散らさないから、
      あなたも散らさないでくださいね」という暗黙の契約があるからだそうです。日本では、自分の
      ところからゴミを出したらきれいになるという考え方があるが、ヨーロッパは「皆の場所だから
      皆できれいにしよう」という暗黙の契約があります。それに大変驚きました。
      イギリスに4回行って、元祖パートナーシップ(協働)について学んできました。
      ヨーロッパでは協働が進んでいますが、なかなか日本人の間で協働の意識が高ま
      りません。お上から仕事が流れてくるという感覚で、一緒にやろう、適材適所の
      力の出し合いをしよう、という考え方がないんです。言葉だけで、「協働を進め
      よう!」と言っていますが・・・

古川    質問ばせんね!(会場より笑い)
                                                     ヨーロッパが似合う?
山口    すみませんついつい意見を言いたくなってしまいました。           山口副会長
      ドイツでは行政やNPOがラウンドテーブルについて、同じ立場で話をしようと
      いうことがあります。それが協働の始まりだと思います。お互い違うからこそ協働する。大切
      なのは、それを調整する人がプロとしている、ということだと思います。
      質問ですが、新しい公共の円卓会議のポイントは何でしょうか?

大串    皆で自主的に公の仕事をしていこうという動きが、日本では生まれてきませんでした。円卓会
      議では、協働の意識を前に進めるには、政策として何をしていけばいいのか?ということ
      を話し合っています。税制で促進できないだろうか、NPOや公益法人を設立・運営するハー
      ドルが高すぎないだろうか、と言ったことを議論しています。NPOや公益法人が動きやすい
      ように考えています。
                                          特定非営利活動法人 地球市民の会
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山口    なるほど。

山下    ありがとうございました。では、佐藤さん、質問をお願いします。

佐藤    私は、何故改めて「ボランティア」なのかわかりません。日本はもともとボランティアの国で
      した。消防団、婦人会、青年団、隣組など、ボランティアの根付いた国だったんです。そうい
      う国が、何故今になってあえてボランティアを出さなければならないのでしょうか?時代
      代の流れかもしれませんが、新しい公共と言うより、昔に戻すことはできないのでしょうか?

大串    私もいろいろな国の発展形態を見てまいりましたが、途上国においては地域の自然発生的なコ
      ミュニティーが機能するようです。一定の先進国段階になったときに、地域のコミュニティー
      が維持しにくくなる段階を迎えてくるようです。各国を見ているとそう感じます。より積極的
      に意識的にボランティア活動を進める動きを考える段階に、日本も達していると思います。

山口    日本が新しい公共が進むときに、今のNPOにはそれを担える力があるでしょうか?

大串    私たちは野党時代も、いろいろな人と協働してきました。私の肌感覚で言うと、私たち政府側
      が制度をしっかりしていけば、担う力を持っているNPOはかなり多いと感じています。

山下    ありがとうございました。それでは、古川知事よりコメントをお願いします。

古川    まず、手元に良い資料をいただきました。地球市民の会から、「私たちはこういうことを知り
      たいから勉強してきてくださいね」という書類をもらい、大変関心しました。地球市民の会が
      真剣に知りたいということが伝わってきました。

      政務官も言っておられたましたが、本格的に今の政権で「皆で一緒にやっていこう」という動
      きが具体化しています。今度の参院選挙のマニフェストに何がとりこまれるか?ということも
      注目されますし、年末の税制改正もあります。今は税制については一定の措置はありますが、
      寄付する皆さんとしては使い勝手が悪いと思われる部分もあるかと思います。これが変わると、
      世の中が変わると感じられると思います。

      政務官の立場としては国の税収が減るという方向には議論しづらいと思います。圧倒的に税収
      が足りない状況にあるというのは事実なので、NPOの税制は充実してもらったとして、その他の
      税収はどうしていくかを考えていかなければなりません。「お上のことはしらんさい!おい
      どんがすっとこだけば、協力ばしてよ」(お上のことは知りません。私たちがするところだ
      け協力してほしい)だと本当の新しい公共にならないと思います。

      日本はもともと自分たちのことは自分たちでやる国でした。7人の侍を見ればわかります。「自
      分達のお金で、悪か者ばやっつけてくるばい!」(自分達のお金で悪者をやっつける!)と
      いう話です。また、石川県のある学校はお金がなく、大正時代に学校を立て替えられませんで
      した。そのとき、村人は禁酒をすることを皆で決め、貯めたお金で学校を建てました。今のよう
      に、義務教育施設補助金などがない時代です。だから、昔の学校は「共立」という名前の学校が
      けっこうありました。佐賀県も東脊振にありました。そのように、「自分たちでできることは自
      分たちでやろう」という気持ちは日本人は持っていたはずです。おそらく、戦後の一時期だけ消
      えていたのでしょう。本来我々が持っているものをもう一度出そう、ということだと思います。

      これまで地域に根ざした活動はありましたが、自主的にやっているというより、「決まりだか
      らしょんなか」(仕方がない)という人が多かったと思います。今は、地球市民の会のように
      「志」がある人たちがいます。私たち佐賀県は、県と一緒にやっていく協働の担い手を、「志」
      のあるNPOだけでなく、地域に根ざした人たち(老人会や自治会)なども仲間だと考えていま
      す。だから「CSO」と呼んでいます。佐賀県の協働化テストは、国連の公共サービスオリンピ
      ックの最終審査まで残っています。

         <information>

              ※佐賀県協働化テストについては下記URL参照。
              http://www.pref.saga.lg.jp/web/kyoudouka_test.html

                                                                   特定非営利活動法人 地球市民の会
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      先ほど政務官から消防団の話がありましたが、佐賀県の消防団の組織比率は全国一高いんです。
      2,3年前に有田署の出初式に行きましたが、今右衛門先生が消防団の帽子を被って行進してい
      ました。人間国宝のような人が行進している消防団は、普通はないと思います。これは、地域に
      根付いているものがあるということです。政権がやろうとしているのはそれを制度化するという
      ことです。

 山下   ありがとうございました。
      現場を知られて率先垂範されてきた古川さんですので、説得力のあるコメントだと感じました。

テーマ2 「NPO法人に対する寄付控除制度」の現状と課題

 山下   先ほどの話にも出ましたが、税制面で優遇措置があるかどうかが気なるところです。
      NPO法人は財政基盤に問題がある中、志一つで頑張ってやっている状況です。
      その点について、現状の課題など、大串さんよりお願いします。

 大串   NPOが活動を進めるのためには財政基盤が必要です。NPOの皆様と共に、いろいろな形で参加
      する方々がいます。先ほどのように「sweat equity」という形で汗をかいて参加する方もいれば、
      寄付金という形で参加する方もいます。寄付金で参画する方を増やすために、国税庁がある一定
      の公益性を認めた方々には認定NPOという立場を付与しています。寄付金に対する所得控除
      があるという形です。

      しかし、これにはなかなか認定されにくいという問題がありました。例えば、NPOの収入は通
      常、寄付金、会費、国の補助金、事業収入の4種類があります。認定NPOになるには、公的
      な収入(寄付金、会費、国の補助金)の割合が20%以上ないといけません。これはハードル
      が高いです。
      例えば、良い仕事をしていて、たくさんの人が寄付してくれるNPOがあるとします。
      たくさんの人が少額ずつ寄付をしてくれた場合、寄付金、補助金、会費の割合が全体の収入の20
      %に届かないことも出てきます。すると、認定NPOにはなれませんが、どうもこれは違うので
      はないかという考え方もあります。一人ひとりの額が少なくても、たくさんの人が広く薄く支援
      してくれたら、これはまさに公益性があるということではないか、であれば、公的な収入の割合
      が20%以下でも、かなりたくさんの方が支援してくれているという基準を入れてもよいのではな
      いか、と考えています。

      また、NPOを作っても、すぐに認定NPOになることはできません。なぜなら、寄付金を集め
      たという実績が必要だからです。NPOを作っても、寄付金が集めにくい、さらにお金が集まら
      ないという悪循環になります。それだと大変なので、仮認定をやってはどうか?という話もあり
      ます。このNPOは公益を担おうとしているので仮認定で税制優遇をし、寄付金が集まったら本
      認定にするということも考えています。入口のハードルを下げるということを考えております。

      また、これまで国税庁が認定していましたが、地域主権の時代ですし、地元ごとに公益性が高
      いものは違いますので、国が認定するのではなく、地域が認定する仕組みを入れてはどうか
      ということも考えています。そのようなことが、認定NPOの促進起爆剤にならないかと考え
      ています。

                    もう一点述べさせていただきますと、NPOと公益法人があります。
                    公益法人制度改革が行われ、新しい公益法人制度になります。これま
                    ではそれぞれの事業官庁に認可を貰うと言う形でした。今は公益法人
                    を設立することはできますが、税制の優遇のためには公益性の認定を
                    内閣府からしてもらうことが必要です。その認定を得るのに6ヶ月く
                    らい時間がかかります。公益法人を作っても、動き出すのまでに時間
                    がかかるのです。これを縮めて3、4ヶ月で公益認定をし、できるだ
                    け活動を早く始めてもらうことも考えています。こういう風に促進策
                    を考えています。地元の皆さんがいろんな形で公に参加してもらえる
         大串政務官      仕組みを検討しているところです。

 山下   ありがとうございました。
      ところで、ここにお集まりの皆さんは、地域の事情を投げかけ、国の政策に反映してほしいと
      いう強い気持ちがあると思います。
                                          特定非営利活動法人 地球市民の会
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      そういうことも含めながらお二人から質問お願いします。

佐藤    個人が認定NPOや公益法人に寄付したときの特典はありますか?

大串    大切な税制上の優遇措置を言い忘れていました。皆さんがNPOに寄付したとき、これまでは
      「所得控除」が適応されていました。すなわち、5千円寄付したら「所得控除」という形で税
      制上の優遇が受けられます。その人が仮に10万円の給料(注:課税所得)をもらっているとす
      ると、10万円に対して税金がかかりますが、5千円を寄付している分、10万円の給料から5千円
      を引いた9万5千円に税率をかけます。だから税額が安くなります。そういう仕組みで、自分が
      国に払う金額が少なくなっていました。国に税金をかけるかわりに、公の仕事をしてくれてい
      るNPOに寄付をしようという仕組みです。

      <所得控除の場合>        課税所得
        寄付しない場合       10万円     ×    税率
        5千円寄付した場合    (10万円-5千円)×    税率    ←税金が少し安くなる。
       

      ところが、「所得控除」の考え方だと、所得の高い人のほうがより得をします。なぜかという
      と、所得税率は10%からの累進課税です。寄付した分の税率がかかってこないということは、
      所得が低く、低い税率の方よりも所得が高くて高い税率に直面している方のほうが得する面が
      大きいのです。ですから、その仕組みを改めて「税額控除」にして、5千円寄付したらその寄
      付した5千円は全く払わなくて良いようにできないか検討しているところです。

      <税額控除の場合>                    ※税額控除が100%だと仮定した場合
       寄付しない場合         税金C
       5千円寄付した場合       税金C-5千円            ← 税金が5千円安くなる。


      こうすると、寄付する人の裾野が広がります。所得の低い、低い税率の皆さんにもより恩恵が
      及ぶようになります。沢山の方が薄く寄付してくださる形のNPOが出来上がるようにしてい
      きたいということなんです。

古川    ここはすごく大事です。入試に出ますよ!(会場笑い)
      「所得控除」「税額控除」という言葉を覚えておいてください。         △ 所得控除
      新聞に「税額控除になった」と書かれていたら「良かった!」と         ◎ 税額控除
      思ってください。

山下    ありがとうございます。佐藤さん、ナイスな質問でした。
      これに相乗効果をもたらせられるでしょうか!ヨーロッパの似合わない山口さん、いかがで
      しょうか?

山口    個人的に悩んでいることなのですが、日本人は税金を払いたくないという感覚があると思いま
      す。皆で公益を良くするためには税金で負担するという意識が日本の国民になければいけない
      と思います。だけど反面、自分が年間何十万円、何百万円も税金を払わなければならないとい
      うのは困ったと感じます。
      NPOに対する税金控除の話は良いと思いますが、反面、日本は政府の借金が880兆円を越す
      ような借金国家になっています。どうしたらいいのだろうか?私が小さい胸を痛めても仕方
      がないですが、どうしたらいいのでしょうか?

大串    認定NPOを促進していくために税制の優遇措置をとっていくのは「本当に大丈夫か?」とい
      う声も出ています。しかし、国の方向性は、行政だけでなく皆で公共をやっていこうという方
      向にあります。税制の優遇措置があるということは、本来は税金で国や地方公共団体、行政機
      関がやるべき公の仕事を、その分のお金をNPOに行くようにするから、そこで公の仕事をし
      てくださいということです。行政機関かNPOか、皆が選べるようになります。誰が公の
      仕事をやるのかということも、皆さんが選べるのです。

      最終的には、財政はニュートラルにならなければなりません。誰がやるのか、主体が違うと
      いうことだけです。理屈的に言うと、財政は中立になるというのが理想です。しかし、確か
      に国の財政を考えると非常に厳しいです。ギリシャ問題もありましたが、日本もかなり近い
                                            特定非営利活動法人 地球市民の会
                            5/16                   http://tpa.nk-i.net/
地球市民の会 第9回通常総会記念イベント
  会員大討論会 ~NPOの未来を考える-今、地球市民の会は何ができるのか?~


      状態にあるのは間違いありません。ですから、なおさら、行政がやって無駄があるようなと
      ころを、NPOの皆さんにやってもらってより良くできるのではないかと期待しています。

山下    国民の立場としては税金がどのように有効に使われているか、疑問を持っている人もいます。
      そういう方は、地域のことをやっているグループも自分達の選択肢としてもてる可能性を秘
      めています。古川さん、ふるさと納税関係の話も織り交ぜながらコメントをお願いします。

古川    ふるさと納税という制度が平成20年度にできました。今は3年目です。これは税額控除の世
      界です。つまり、ものすごく有利な制度を作っていただけました。例えば、佐賀県に3万円寄
      付したら、その人の納税額が2万5千円引かれます。5千円は自己負担になりますが、10万円寄
      付した場合は5千円の手数料で9万5千円のマイナスになります。限度はありますが、寄付した
      分、税金が安くなります。だから、寄付しやすいのです。

      <ふるさと納税(税額控除)>
       納税額Aの人が3万円寄付(ふるさと納税)すると・・・
         納税額A-(3万円-自己負担5千円)=納税額B ←2万5千円税金が安くなる!
           ※注   自己負担額の一部は、平成22年度より2,000円に変更されています。



      今、佐賀県は実額ベースで全国で20位くらいですが、佐賀県の人口を考慮すると、去年で全国
      7,8位くらいでした。佐賀県は大口の寄付がけっこうあるという特徴があります。「こんなに
      寄付されても控除できないですから、もう少し安くても結構です」と言っても、「よかさい!
      する気になったときに受け取らんかい!来年なってもせんよ」(いいから!寄付する気持
      ちのときに受け取ってください。来年になってから寄付しろと言われてもしませんよ)と。
      そう言って3500万円寄付してくださった方や1000万円寄付してくださった方もいらっしゃいま
      した。残念ながら県ではなく市でしたが・・・。
      ふるさと納税ができて、地元に寄付してくれる人が出てきてくれて大変嬉しく思っています。
      これは、「ふるさと納税」という言葉と、税額控除の仕組みが良かったのだと思います。

      ふるさと納税ができたときに批判的な人もいましたが、私は、これは「ふるさと納税」という
      一つのことだけの意味ではなく、個人と税制の関係を考え直す風穴になると思っていました。
      今まで、税金はどのように使われるか、納める側にはわからないのが前提でしたが、ふるさと
      納税は自分で税金の使い道を決めることができるものなんだ、ということを申し上げてきま
      した。NPOの寄付の税制が所得控除から税額控除に変わることで、今までは何に使われるか
      知らずに税金を払ってきましたが、地球市民の会に寄付すると、その分納税額が下がるように
      なり、「私はこのために税金を払ったんだ」と実感できるようになるということです。ずいぶ
      ん世の中が変わっていくと思います。

      大串さんがおっしゃったように、税収は減りますが、意義はあると思います。使い道を自分で
      決めるということにより、タックスペイヤーとしての意識が高まります。もう一つは、無駄
      なことや余計なことがなくなると思います。

      例えば、佐賀県は大きな災害のときは見舞金を出していま
      す。かつては必ず日赤を通していましたが、こう言っては
      悪いが、日赤が何にお金を使っているのかわかりませんで
      した。外国の政府に直接渡すのが良いような気がしました
      が、これもちゃんと使われているかわかりません。ですの
      で、ユニセフに寄付したこともあります。また、ミャンマ
      ーで災害があったときは地球市民の会にお願いしました。
      地球市民の会に寄付をして、「ミャンマーの人のために使
      ってほしい」とお願いしました。

      日赤、ユニセフ、地球市民の会に寄付してきましたが、全然違います。何が違うかと言うと、
      「こういったところに使った、相手からこんな返事をいただいた、佐賀県のお金でこういう
      風にしました」と報告してくれたのは地球市民の会だけです!(会場より拍手)。他のとこ
      ろは何に使ったかわかりませんでした。

      そういう風に、身近な信頼できるところにきちんとお願いして税金を使ってもらい、報告
      してもらうほうが良いと思います。災害時も、遠くの団体より近くの団体に寄付して使い
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      道を確認する仕組みにしたほうが、相手にも喜ばれ、納税者としても安心できると思います。

 山下   さすが私たちの名誉会長!ありがとうございました。
      見える協力は大切ですし、我々も説明する責務を担っていると思います。

テーマ3 「道州制と地方分権、地方主権」とNPOの果たすべき役割

 山下   新しい公共、そしてNPOに対する寄付控除についてのお話をいただきました。
      今、行政の舞台は変化をしていっています。昨今では道州制、地域主権という言葉も聴かれる
      ようになってきました。3つ目のテーマとして、地域の自立ということについて触れさせてい
      ただきたいと思います。大串さんから、道州制と地域主権について、また、その中でのNP
      Oの役割についてお話いただきたいと思います。

 大串   地域主権という考え方については、私たちはマニフェストにも「地域主権」とうたい、地域主
      権戦略会議ということで総理官邸で原口大臣を中心に、私も財務の面から関わって進めていま
      す。私も財務省で20年弱携わってきましたが、日本は中央集権的な国でありましたし、今もそ
      うです。今までは、中央集権制が機能してきたこともありましたが、新しい時代に入ってきま
      したので、「自分のことは自分で決め、国がやらなければならないことだけ国がやる」と
      いう考え方に変わってくれば良いと思います。卖に、「この財源は中央から地方に渡します」
      というような話ではなく、根本的な考え方から変わらなければなりません。

      「補完性の原理」と言うヨーロッパで普及している考え方があります。それはまず、コミュニ
      ティーでやれることはコミュニティーでやる。そして、市町村でできることは市町村がやる。
      「この問題は大きかけん、市町村では決めきらん!」(この問題は大きいから、市町村では
      決められない!)ということなら県が、「県でも大きかばい、決めきらん!」(県でも大き
      くて決められない!)ということに関しては国が決めるということです。国に残るのは外交や
      防衛ぐらいになると思います。距離が近い人がそのことについての第一人者になるということ
      です。まずはコミュニティー、町村市、次に県、そして国。このように地元から権限、決定権
      を持っていきます。これが「補完性の原理」です。こういう風に国の仕組みを変えていきたい
      と思います。

      そのためには、いろいろな仕組みを変える必要があります。今ま
      では、国がいろいろな基準や枠付けをしてきました。例えば、道
      路の幅は何十センチじゃないといけない、というような基準です。
      これは、財源が国から地域に来ているという仕組みがあるからで
      す。「この道路を作るために、この補助金を使いんさい!」
      (この補助金を使いなさい!)と言う風に。佐賀の道路を見た
      ことがない霞ヶ関の人たちが、佐賀に道路がいるかどうかを
      判断する。これはおかしいのではないか、ということです。地域
      で権限を持てる仕組みを作っていきたいと思います。

      その第一歩として、23年度から補助金の一括交付をしていきたいと思っています。今は国の
      補助金を配って地方に事業をやってもらっていますが、補助金は地方に一括して持ってもらい、
      何に使うかは地域の実情で判断していただくようにしたいと思っています。

      この受け皿は誰になるのか、考えていきたいと思います。つまり、道州制という形がいいのか、
      県という形がいいのか、ということです。私の考えでは、地域主権を進めていくと、社会的な
      コンセンサスの中で自然に、「地方自治体はこの規模が望ましい」というのが出てくると思い
      ます。まずは地域に対して権限を用意し、その後の流れの中で自然と、どのような広さの自
      治体が最も適切かどうかが見えてくると思います。

      最後に、今日の議論全体のポイントとなることは、「私たちが選択できることの重要さ」だ
      と思います。先ほどNPOの税の優遇措置の話をしましたが、これは卖にNPOへの寄付金を
      促進するためだけではありません。税を行政に払って行政に仕事をしてもらうのか、NPOに
      払ってNPOにやってもらうのか、最終的には、選択肢を皆さんが持てる社会になるという
      ことではないでしょうか。
      地域主権の話も同じです。私たちから遠い「国」にお金を払うのか、近いところにお金を払う
      のかということです。遠いということは、仕事がわかりづらいということです。住民・市
      民としての選択する権利が、今の新しい日本においては大切なのではないでしょうか。選べる
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      日本になっていくということが、今の日本の大きな変革の中で素晴らしいことだと思います。
      地域主権を進めていきたいということでございます。

山下    身の引き締まる、心強いお話でした。

佐藤    私は3つお聞きしたいことがあります。
      今、原口大臣は地域主権ということを提唱していますが、これは平成の大合併と矛盾するもの
      ではないのでしょうか?「小規模分散」は私の人生のテーマですので原口大臣には賛成でした
      が、地域主権と平成の大合併のことについてお聞きしたいです。

      2つ目ですが、先ほどビデオを流しました。ミャンマーの子ども達のビデオです。私たちは子
               供の何に惹かれてミャンマーに行くのでしょうか?ただ「可愛そう」だ
               からということではないのですが、子どもたちの何に惹かれているのか、
               自分の中で今まで結論が出ないままでした。しかし、さっきのビデオを
               見て答えが出ました。それは何かというと、あの子ども達は自分の親や
               先祖に対する思いやりが強いのです。あれが美しいのだと思いました。
               日本のボランティア意識と向こうの子供との生き方の違いがあります。
               向こうの子どもたちには常に祈りがあります。だから、私たちは「放っ
               ておけない」という気持ちになるのです。私たちのボランティア意識
               は、税制やシステムで解決できる問題なのでしょうか?大串先生の
               問題ではなく、私たち自身の問題だと思います。この中に、子どもがい
        佐藤会長   ない人はいても、親のいない人はいません。私たちのあり方を見直すこ
               とが必要ですし、そのためのフィールドが必要だと思います。

      そして3つ目ですが、そのようなことを「農」を通して勉強していく必要があると思います。
      地球市民の会としては、両先生にご協力いただき、いろいろな人を巻き込んで勉強して、ボ
      ランティア意識が出来上がるのではないかと感じています。

         <information>
            ※ミャンマーの子ども達のビデオ映像は、こちらよりご覧いただけます。
             http://www.youtube.com/watch?v=wDkn86enjF4
           ※「農」については、参考資料「人間の持つべき文明2009」をご覧下さい。


大串    「小規模分散」と平成の大合併という話が佐藤さんよりありました。平成の大合併について、
      この評価はまだ難しいと思います。佐藤さんがおっしゃるように、小規模分散という考え方
      は、人間や自然が存在する上では必然ではないかと思います。エントロピーと言いますが、
      資本主義でも民主主義でも、分散していくというのは必然の力学です。また、補完性の原理、
      つまり、地元で行えることを地元で行い、できないことを市町村や県や国で決めるというこ
      とですが、これがまさに小規模分散という考え方です。細かなことを地元で決めていくと、
      多くのことが地元で決められて、国に残ることはそんなにないと思います。その小規模分散
      の中で、どの行政分野においてどの大きさがふさわしいかは、内容によって変わってきます。
      例えば、医療ならば小さな市町村だけで決めるのは厳しく、広域卖位でやっていくほうが良
      いと感じます。また、他のことはもう少し小さい卖位でも良いこともあるでしょう。必要な
      権限や財源を地域主権にした上で、どういう卖位が良いのかを自然に見出していきたい
      と思います。

      それから、「親」とおっしゃったことに関してですが、私は東
      京でベンチャーキャピタルの人間とつきあうことがあります。
      今、パソコン、デジタルなどに参画している人が成功者だとい
      うイメージがあります。デジタル、数字、機械の時代です。と
      ころが、そういう事業家の人たちに成功の秘訣を聞くと、デジ
      タルや数字などではなく、発想・アイディア・人脈・健康など
      という答えが返ってきます。デジタル文明が進んだこういう時
      代だからこそ、日本を含む先進国においては、親を思う心、
      発想、情念、アナログなどが重要になっています。その想いを背負えるのは行政ではなく、
      NPOだと思います。

山口    大串さんは始めてお話しましたが、けっこういい人ですよね!(会場より笑い)ちょっと
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      びっくりしました。
      私が小さな胸を痛めて悩んでいることその2ですが、私は道州制推進派なんです。その一
      番の理由は、東京大地震の懸念です。東京大地震は100年周期くらいでやってくるそうで、
      そろそろ起きてもおかしくありません。東京が揺れるとスポンジ状の土壌がグラグラと揺れ
      て、ものすごい大地震になるそうです。同時に東海、東单海大地震、富士山の噴火が懸念さ
      れています。富士山の噴火が起こると日本がリセットされるくらいの騒ぎになるそうです。
      今の社会構造や経済構造だと、九州や北海道はドミノ倒しになってしまいます。だから、完
      全独立ではなくても、九州は早く独立したほうが良いと思います。スイスなど、九州と同
      じくらいの面積で十分先進国としてやっている国もあります。九州自身が力をつけ自立する
      ことと、政府の大串さんがおっしゃっているようなことが合致しないといけないと思います。

大串    先ほど、十分な地域主権、すなわち十分な権限や財源を地域に持ってもらった後に、そのと
      きの社会・経済の体制を前提に、どのくらいの大きさになるか自然に決まるという、非常に
      意味深な話をしました。今の一番大きな決定要因は交通と情報通信ですので、今の交通体系
      と情報体系を前提とすると、道州制はおさまりの比較的良い卖位になる可能性はあると思い
      ます。

      九州は、世界ではかなり大きな経済規模になります。世界で十数位、オランダより小さくて
      ベルギーより大きいくらいです。福岡を首都とすれば、30分で福岡に出られますので、佐賀
      は田舎ではなくなります。このような地域が日本全国にできます。だから、地域主権をやっ
      ていかなければならないと思います。このような地域の持つリソースを生かせていなかったの
      が、今までの日本です。それを生かしていくのが地域主権であり、ひょっとしたら道州制なの
      ではないかと思っています。

       <参考資料>
                                                             ※卖位は1,000万ドル




           ※PHP総合研究所HPより
           http://research.php.co.jp/devolution/faq.php#q1


山下    ありがとうございました。それでは待っていました!道州制議論がお得意な古川さん。
      お願いします。

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古川    誤解を恐れずに言えば、道州制はいいんじゃないかと思います。しかし、前提はいろいろあ
      ます。下手すると国家による地域分割になる恐れもある。そうではなく、大串さんがおっしゃ
      っているのは、道州制が良いという雰囲気が皆にない中、上から言ってもダメだということか
      と思います。

      私が道州制が時代の流れだと思っているのは何故かと言うと、客観的に見たときに、明治が始
      まって以来、市町村は何回も合併していますが、県だけは変わっていないからです。明治時代
      は3万くらいあった市町村が1500くらいになっています。国の役所も、くっついたり離れたり
      しながら減っています。県だけが変わっていません。東京府が東京都に、北海道庁が北海道と
      いう自治体になり、沖縄が出入りしたことくらいしかない。あとは何も
      変わっていない。広域自治体だけが変わらなくてよいという理由はない
      と思います。基礎的な自治体に権限や財源を移行していこうとすると、
      広域自治体が今のままでよいという理屈のほうがわかりません。いろい
      ろな形で変化が出てくるに違いないと思います。

      そのときに、九州くらいの卖位でかなりのことを決められるようになっ
      たとイメージすると、いろいろなことができるようになったと感じられ
      で国に訴えていることでも、ダメになっていることが多くあります。私
      がしつこく言っているのはフグ特区です。フグの毒はテトロドトクシン    古川知事
      という毒が肝臓に貯まるんです。海の中にいる微生物の中に毒が含まれていて、それをフグが
      食べるからどんどん蓄積されて有害になっていきます。逆に言えば、毒を含まないえさをあげ
      れば、肝に毒が溜まらないのです。それは、研究でもわかっていることですし、佐賀県だけで
      もやらせて欲しいのですが、「何かあったらダメだ」ということでさせてくれません。権限よ
      りも、欲しいのは責任なんです。責任を取らせて欲しいと言っても、させてもらえないんです。

      また別の例ですが、私は今日も電気自動車で来ました。「電気自動車って、リッターあたり
      いくらですか?」と聞く人がいます(会場笑い)。「電気なのでガソリンはいりません」と
      説明しても「リッターで言うぎ何キロね?」(リッターで言えば何キロですか?)と聞かれ
      ます。また、プラグインハイブリットというのがあります。電気自動車とプリウスを組み合わ
      せたようなものですが、これはリッターあたり57kmです。バイクのカブとほとんど一緒です。
      車がカブと一緒なんて信じられない時代です。これから、電気自動車や水素自動車もできてい
      きます。間違いなくこれから水素や電気が中心になりますので、水素スタンドを作っていかな
      ければなりません。水素スタンド作るときに、国の高圧ガス規制がめちゃくちゃ厳しいんです。
      水素スタンドを1個つくるのに1億かかるくらいです。1千万円くらいでつくれるようにしていか
      ないと水素スタンドは普及しないでしょう。ですから、規制をゆるめてEU並みの基準を作り
      たいと言っています。EUはもう基準ができています。しかし、「EUと日本は違う」と言う
      んですね。「何が違うんですか?」「EUとは人口密度が違うから・・・」「佐賀はそんな
      に人口いないですよ!」「いやいやそがんわけにはいかん」(そういうわけにはいかない)
      という風になってしまうんですね。佐賀だけEU基準を認めて、1000万円で水素スタンドがで
      きるようになればだいぶ違うと思います。今は、もどかしさがあります。責任をとると言って
      もさせてもらえないんです。1県では無理でも、九州くらいの卖位が集まれば、かなりのことが
      できるのではないかと思います。

      また、消費税についてですが、皆さん、自分の家でお金を使うときは節約しますね。自治会で
      公民館の建替えをするときなど、「千円ずつプラスで会費を払ってください」ということもあ
      るでしょう。目に見えるものについては、納得してお金を払うことができますね。

      日本は他に例を見ないほどの高齢化の国です。公のお金がないと社会が成り立っていきません。
      将来、世界で例を見ないくらいの消費税率をカバーしないと、国がもたないかもしれません。
      デンマーク、スエーデンは高い消費税率でも不満がないという話を良く聞きますが、そのような
      国は人口が900万人くらいです。1億2000万人の国で消費税率が25%の国なんてありません。使わ
      れる場所が遠すぎて、高い消費税を払う意味がわからないんです。近くで、自分のところに
      お金が返ってくるという感覚がないといけません。1000万人くらいの国でないと、重い税率が自
      分に返ってくることを理解するのは難しいと思います。消費税率25%を目指しているわけではな
      いのですが。皆が納得して高い消費税を払っているのは、近くで物事が決められているか
      らではないかと思う。だから、道州制をやる意味はあると思います。

      私はそういうこともあり、道州制の議論の際には、佐賀県が九州の道州制の議論をひっぱっ
      ていきたいと思っています。佐賀は人口が多くありません。佐賀のようなコンパクトな県が議
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       論を引っ張らないと、大きな県が決めて「お前は従え!」と言われると困りますから、議論の
       中心にいようとしています。九州は、知事会と経済界が一緒に九州モデルを作りましたが、九
       州モデルは佐賀県が作った案なんです。

       地域主権戦略会議の中でも、モデルをやるには九州がやりやすいと言われています。例えば、
       長野県を何州に入れるかというと、気が狂うような話になりますね。九州は、山口や沖縄を
       どうするかという問題がありますが、比較的まとまりやすいです。例えば、夏の高校野球の
       とき、佐賀を応援しますよね。で、佐賀が負けたら九州を応援する。そして、九州が全部
       負けると夏が終わるんです(会場盛り上がる)。そういう感覚がありますよね。そういう感
       覚があるところは、まとまりがあるからモデルになると思います。

       これから、道州制について考える時期になると思いますので、私たちはどんな話になっても
       大丈夫なように、しっかり議論をしていきたいと思います。先に形ありきではなく、基礎的
       な自治体にしっかりと権限や財源を移譲し、自分達のことは自分達でしていくという雰囲気
       づくりをしていきたいと思います。

 山下    ありがとうございました。九州は一つ、熱い九州モデルの熱弁をいただきました。

質疑応答

 山下    今度は会場にお見えの皆さま方から質問をお受けしたいと思います。
       では、東京から来られた有澤さん、お願いします。

 有澤    大串さんに聞きたいのは、税額控除のやり方です。確定申告方式とサラリーマンの年末調整
       方式がありますが、このへんを上手くやらないと寄付はなかなか伸びないと思います。ふる
       さと納税は確定申告方式なので、伸びていないのではないかと思います。認定NPOに対し
       ては、年末調整でもできるように考えていただきたいです。

 大串    ありがとうございます。税制の問題と共に、徴税制度の問題もあります。日本は、源泉徴収
       をして年末調整がそれを補完するという、他に類をみない制度をとっています。アメリカの
       ように、確定申告が基本という国もあります。アメリカの場合はタックスリターンと言いま
       すが、これは「控除を取り戻す」という意味です。アメリカも源泉徴収が幅広くあり、確定
       申告をして、返ってくる分を取り戻すということです。前提として、税のインフラや番号制
       度についても議論されています。これがあるかないかでも、徴税制度は変わってきます。今
       のインフラでは、年末調整が限界かもしれません。それも併せて、徴税制度を踏まえて検討
       したいと思います。

        <information>
           ※納税者番号制度とは納税者の管理制度の一つ。納税する年齢に達した
            国民に番号を割当、所得や資産、納税の状況を一元的に把握するシステム。

 有澤    ありがとうございました。是非大串さんには頑張っていただき、民主党と言わ
       ず、日本を背負う政界人になっていただきたいです。

 山下    では、熊本の成尾さん、どうぞ。

 成尾    地球市民の会の会員は会費を12,000円払っています。今はまだ認定NPOでは
       なく、申請中です。仮に所得が300万円の人がいて、税率が10%と考えますと、
       30万円の税金を払っています。認定NPOでないので、会費の12,000円は控除 地球市民の会東京
       の対象になりませんね。所得控除でも税制控除でもありません。             有澤さん

       <課税所得300万円の人が12,000円寄付した場合>
        ○現在(控除なし)
          年収 3,000,000円     × 税率10% = 税額 300,000円

        ○現在の制度で認定NPOになった場合(所得控除)
         年収(3,000,000円-12,000円) 税率10% = 税額 298,000円
                               ×                      (1,200円控除)

        ○制度が変わり、認定NPOになった場合(50%の税額控除)
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           300,000円 - ( 12,000円 × 50% ) 税額 294,000円
                                       =                (6,000円控除)
                            ※その他、自己負担額が発生

       これが、今の制度で認定NPOになると、所得控除になりますね。12,000円の会費ですから、
       300万円から12,000円を引いて、それに10%の税金がかかります。つまり、1,200円の控除が
       あるので、10,800円が寄付ということになりますね。

         ※注   地球市民の会の正会員の会費は、総会の議決権という対価があるため、法律上では「寄付」と
              みなされない可能性がございます。認定NPOになった際には、詳細を皆さまにお伝えします。

 成尾    所得控除から税額控除に制度が変わった場合、上限などはあるのでしょうか?

 大串    50%と言われています。

 成尾    50%でしたら、300万円の収入の人が30万円の税金ですから、15万円を
       地球市民の会に寄付すれば、税金は15万円でいいということですか?

 大串    そういう50%ではありません。
       300万円の収入の人は30万円の税金を払います。
       その人が寄付を4万円したとすると、50%なので2万円が控除になります。     成尾理事
       30万円から2万円引いて、その人は28万円の税金を納めるということになります。

       <年収300万円の人が4万円寄付した場合>
        ○税額控除
          寄付 40,000円 × 税額控除 50% = 控除額 20,000円
          税額 300,000円 - 控除額 20,000円 = 税額 280,000円(総額320,000円)
                       ※その他、自己負担額が発生

 成尾    その人が30万円寄付した場合はどうなりますか?

 大串    30万円寄付したら、50%ですので15万円が税額控除となります。
       30万円から15万円引いて、15万円が税金となります。つまり、その人は総額45万円払います。

       これが所得控除だと、300万円の収入から30万円を引きますので、270万円です。その10%の
       税金ですので、27万円の税金ということになります。
       それが、税額控除だと、15万円で済みます。税額控除だと税金が少なくて済むんですね。

       <年収300万円の人が30万円寄付した場合>
        ○税額控除
          寄付 300,000円 × 税額控除 50% = 控除額 150,000円
          税額 300,000円 - 控除額 150,000円 = 税額 150,000円 (総額450,000円)
                       ※その他、自己負担額が発生
                                                120,000円もの差が出てくる!
         ○所得控除
          年収(3,000,000円-寄付 300,000円)× 税率 10% = 税額 270,000円
                                                 (総額570,000円)

 成尾    12,000円の会費は寄付と見なせるのですよね?そのうち6,000円に関しては税金を払わなくて
       いいということになりますね。12,000円の会費と思っていたのが、実は本人の負担は6,000円
       ということになります。認定NPOになると12,000円ではなく6,000円で済むようになります
       ので、是非、正会員2口ということにしていきましょう!!

         ※正会員会費は寄付とみなせない可能性がございます。詳しくは決まり次第お知らせいたします。

 山下    会場からのご質問、ありがとうございました。また、分かりやすい回答もありがとうござい
       ました。

終わりに

 山下    今日、ご出演いただいた皆様より、簡潔にまとめや感想をお願いします。
                                                    特定非営利活動法人 地球市民の会
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地球市民の会 第9回通常総会記念イベント
  会員大討論会 ~NPOの未来を考える-今、地球市民の会は何ができるのか?~




山口    今日はNPO・NGOの未来を語るという討論会ですから、地球市民の会が九州で何をでき
      るのか、何をしなければならないのかというところです。ポイントは、自分の標語でもある
      のですが、「初めに志あり、初めに大儀あり、初めに忠臣あり」と思っている。初めに志
      と大儀がどのくらいあるのか、それに社会的力をどれだけつけられるのかということがNP
      Oとしては大切だと思います。さらに発展すると、行政だけではなく、NPOがその地域の
      予算を半分くらいは決めようという流れなっていけるのではないかと思います。また、そ
      うなっていくことが「新しい公共」ではないかと思います。

佐藤    私が地球市民の会の会長として常に考えているのは、これからは老いも若きも「農」を中心
      にして、その精神的なものを学べるフィールドを作っていきたいということです。そのため
      には、古川知事や大串先生にお世話にならなければならないと考えておりますので、覚悟を
      してご協力のほどをお願いしたいと思います。




古川    前にいただいた質問に、「小さな政府にしたいから、協働やNPOへの委託を進めているので
      すか?」とありましたが、「小さな」政府というより「ほど良い」政府を作るということ
      だと思います。我々がやるより、皆と一緒にやるほうが良いこともあるでしょう。政府とし
      てやらなければいけないことも、もっとあると思います。小さい政府を目指すのではなく、
      政府がやるよりも他がやるほうが良いものは、どんどん一緒にやっていこうというこ
      とです。

      私達が取り組んでいる協働化テストは、県がやっている仕事を全部さらけ出して、県より
      自分達がやったほうが良いということがあるなら提案してほしい、ということでアイデアを
      出してもらっています。例えば、佐賀元気広場というのがありますが、県の直営だったとこ
      ろをCSO推進機構にお願いしています。コストが安くなるからではなく、満足度が高くな
      るからです。CSO推進機構にお願いしたことにより、県内にある他のCSOの拠点と結ぶ
      ことができるようになりました。県の嘱託の方は今まで一生懸命やってくださっていました
      が、それよりもさらに良いものが提供できるようになり、県民の方々にも喜んでいただけて
      います。

      私は「何がなんでも小さくすれば良い」というのは、正しいのか疑問に思い始めています。
      カスカスになっている感じがあるんです。誰が答えを出しても良いことは、コンピューター
      がやってくれます。今、行政がしなくてはいけないのは、人によって答えがちがうこと、と
      りわけ対人関係業務が増えてくると思います。ケアやサポートを必要とする人が増えてくる
      と、そこに関わる人の数を減らそうとするのは、「もうそろそろよかっちゃなか?」(も
      うそろそろよいのではないか?)という気持ちがしています。ひたすらに減らすことを目
      的とするのは間違っていると思います。公務員の数が減るというのは、県民負担が増えると
      いうことと同義です。どこを減らせば良いのか、はっきりさせなければなりません。例えば
      教育です。よく言われるのは、日本はOECD諸国のの中で教員数が少ないということです
      が、他国と比べると、とても国民負担率が低いという事実もあります。教育を充実させよう
      とすると、学校の先生を増やすということが必要ですが、そのためにはコストもかかります
      ので、それらを同時に議論しなければなりません。ある一部だけ取り出してもダメだと思い
      ます。

      「小規模分散」というキーワードには共感できます。「合併とは、何だったんだ?」と私
      自身思うこともあります。県は、これからは合併の推進策は出さないと宣言しています。
      合併したいところはご自由にどうぞ、邪魔はしませんが、勧めることもしませんということ
      です。今、原口大臣が国会で出している法案の中に、共同機関の設立を自由にできるとい
      うのがあります。合併しなくても、合併したような効果を上げられるというものです。例え
      ば、国保を吉野ヶ里だけでは集めるのは大変なので、神埼と一緒にやろうというようなこと
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地球市民の会 第9回通常総会記念イベント
  会員大討論会 ~NPOの未来を考える-今、地球市民の会は何ができるのか?~


      です。市の国保課のようなものを共同でつくるということを可能にします。それにより、効
      率を良くしたり、やりにくい仕事をやりやすくできるようにしたりなどの効果をあげること
      ができます。これは大変良いと思います。今までは、そういうことをしようとするには合併
      するしかありませんでしたが、自分たちの名前、議員さん、首長さんを残しながら、効率化
      できる仕組みができます。これからは、それらを活用できる知恵も必要となってくるでしょ
      う。

大串    今日は貴重な機会をいただきありがとうございました。皆さまと共有させていただきたいこと
      があります。それは、国民一人ひとりが自分自身で選択する日本、県、佐賀になっている




                                          特定非営利活動法人 地球市民の会
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  会員大討論会 ~NPOの未来を考える-今、地球市民の会は何ができるのか?~


       ということです。税を納め、あとは行政に任せればだいたいのことはなんとかなる、という時
       代は終わりました。

       今は、財政が非常に厳しい状況です。ギリシャの問題は、ギリシャだけではなく、スペインや
       ポルトガルを含んだヨーロッパ全体の問題となっています。いつ、日本の問題として顕在化す
       るかわかりません。そのときは、大変な状況になるでしょう。日本は今後、経済成長している
       のでしょうか?少子高齢化の中で、毎年の成長率は1%です。今年中に、中国に世界第2位の地
       位が抜かれます。私達は、佐賀、日本を、未来の子どもたちに渡していけるものにできている
       のか、私たち自身が問い、厳しく関与・選択していかなければならないと思います。誰がやっ
       ても同じなのではなく、自分たちで「こうすべき、ああすべき、こうしたい、この人に担っ
       てほしい」と、声を上げて運動して、自分達で動かす時代になっています。

       今日、参加されているNPO関係の方々は、問題意識が高いと思います。国や県が何をやって
       くれるかということよりも、自分達が何をできるかを考えようとする意識があります。この
       意識を、佐賀県だけでなく、日本全国に広げていただきたいと思います。日本全国で、今、私
       たちが何をすべきなのか、誰かに任せるのではなく、自分たち自身で動かす日本にならなけ
       ればなりません。そういうことを広めるリーダーシップの役割を、地球市民の会の皆様には果
       たしていただきたいと思います。私自身もその想いを胸に据えながら活動していきます。どう
       か、皆さんと一緒に、私たちができることを日本全国に広めていきたいです。本日は良い機会
       をいただき、ありがとうございました。

山下     今日の大討論会はいかがでしたでしょうか?(会場大拍手)
       地球市民の会は今年から、ご参加いただいた皆さまにどれだけ満足いただけるかということも
       事業の評価として大切にしていきたいと思っています。
       今日は4名の出演者の皆さまに、熱い話をしていただきました。皆さん、ネクタイが頭に巻か
       れたような状態で話をしていただいたと思います。我々は同志ですので、お互い刺激しあって
       日本づくりを助け合っていきたいと思います。
       以上を持ちまして、大討論会をお開きとさせていただきます。ありがとうございました。


参考資料
                  「人間の持つべき文明2009」TERRAアピール
                    “農”という思想を実現するために
【序文】
 1992年、地球市民の会はリオデジャネイロで開催された「環境と開発に関する国連会議」(地球サミット)のNGO会
議に対しTERRAアピールとして『人間の持つべき文明』を提唱しました。
 このアピールは次の2点において、全人類へのメッセージとして発信致しました。
 まず、地球上に起きている様々な緊急課題、例えば地球環境問題、人間社会における心の荒廃、紛争やテロリズム、
貧困と貧富の格差の問題、健康被害の問題は、私たち人間が経済至上主義の文明を構築し、「より多く」「より便利に」
「より楽しく」を求め続けたことに原因があった、ということでした。
 次いで、これらの問題を解決していくために、私たちは私たちの持つ文明の方向そのものを見直す必要があるという
ことでした。その方向は相互依存関係の中ですべてのものに生かされていること、すべてのものにつながっていること
を認識することにあります。これは循環型共生社会の基本的な考え方であり、今以上を求めない「足る」を知ることを
通し、私たちは、すべての人が生かされることへ感謝し、他の幸せを希求する精神を持つことこそ、私たちが目指すべ
き文明の方向であると提言しました。
 地球市民の会は25周年にあたり、17年前に発信したこのTERRAアピールを基本とし、今後の進むべき道として、「農」
という思想を大きな要とし、活動を進めていくことを宣言致します。
 「農」は、従来の生活の生業としての「農業」のことではなく、農耕を基礎とする人間の根源的な思想であり、哲学
を示し、この地球上で持続可能な生き方を実践していくための礎と定義します。この「農」の思想には、「いのち」「
自然」「文化」「環境」「暮らし」「生き方」「教育」「食育」「地球」「地域」等のキーワードを包含します。

【本文】
1、「農」は循環共生と創造再生していく「自然」のサイクルそのものである。私たちは食糧の供給手段でもある「農」
  に「自然」との共生手段を見出し、その偉大さに感謝し、畏敬するものである。
2、「農」は自然を耕し作り上げられた「文化」そのものである。私たちは地球上・歴史上に創造されてきたすべての
  「文化」を、愛を持って受入れ、尊重するものである。
3、「農」は連綿とつながる地球上にある悠久の「いのち」そのものである。私たちは「いのち」が「いのち」によっ
  て支え、つながってきた相互の協働関係を認識し、「いのち」の尊厳を広く、深く伝えていくものである。
 以上のことを地球市民の会は「地球市民運動」および「地球共感教育」を通して伝え、実践していくこと

                                             特定非営利活動法人 地球市民の会
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  会員大討論会 ~NPOの未来を考える-今、地球市民の会は何ができるのか?~


を宣言致します。
                                                  2009年2月8日




                                          特定非営利活動法人 地球市民の会
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地球市民の会大討論会全文レポート【最終】

  • 1. 地球市民の会 第9回通常総会記念イベント   会員大討論会 ~NPOの未来を考える-今、地球市民の会は何ができるのか?~ 大串政務官 古川知事 佐藤会長 山口副会長 日時: 平成22年5月16日(日) 15:15~16:45 場所: アバンセ第2研修室 出演者: メインスピーカー 大串博志 財務大臣政務官(衆議院議員)・地球市民の会顧問 コメンテーター 古川康 佐賀県知事・地球市民の会名誉会長 代表質問者1 佐藤昭二 地球市民の会会長 代表質問者2 山口久臣 地球市民の会副会長 コーディネーター 山下雄司 地球市民の会理事長 NPO法人地球市民の会は、第9回通常総会を記念し、NPOの役割などを考える討論会を開催いたしました。 大串政務官や古川知事というビックなゲストをお呼びし、NPOの有効性、寄付控除制度の現状と課題、道州制と地方 分権という旬なテーマで意見を交わしていただきました。 会場には地球市民の会会員だけでなく、NPO関係者など、60名以上の方々にご参加いただき、大変盛り上がった 討論会となりました。本レポートでは、討論会の全文を公開いたします。 ※ イベント時には認定NPOの申請中でしたが、その後、2010年7月1日より佐賀県初の認定NPOとなることが決まりました! ※ なお、控除関係については、わかりやすさを重視し、シンプルな数字を用いて話をしております。本文中に出てくる例 は、あくまでも仮定の話ですので、実際の制度、金額とは異なることもございます。ご了承ください。 開会のことば 佐藤 皆さん、大変お疲れ様でございます。 これから勉強会が始まりますが、楽しい時間になればと思います。 私はどういう質問をしようか考えていますが、まだまとまっていません。 大串さんのお話を聞くうちに、質問が出てくるかと思っています。 ぜひ、楽しくお話をさせてください。本日はよろしくお願いします。 はじめに 山下 皆さま、改めましてこんにちは。外も中も熱気ムンムンですので、 ネクタイは頭に巻き(会場より笑い)、上着は脱いで、会場の雰囲気作りに ご協力ください。  コーディネーター山下 まず始めに、今回の趣旨について紹介いたします。 1995年1月17日、阪神大震災で多くの犠牲がありました。現在、NPOという言葉を聞く機会が増えま したが、そのきっかけは1995年の阪神大震災だったと思います。日本人らしい助け合いの生き方が 崩壊してきている社会の中で、大惨事をきっかけに「皆で助け合おうよ」という機運が生まれまし た。 今は、激動・激変の時代です。そういう中で、NPOやいろいろな教育・医療・福祉・子育ての市民 グループの皆さんが志を結集し、立ち上がり、行政だけでは解決できない課題に立ち向かっていま す。 本日は地球市民の会の会員さんだけでなく、NPOやそれぞれの団体のリーダーの方にお集まりいた だいております。市民団体が直面している財政的な問題や行政との連携などの課題について、ご 専門の立場から、皆さんの意見をざっくばらんに聞く会としたいと思います。 なお、本日は役職ではなく、敬意をもって「さん」付けでお呼びさせていただきたいと思います。 討論会の進め方についてですが、テーマを3つ設定しております。それぞれのテーマについて、 まず大串さんから解説をいただき、当会2名より皆さまを代表して質問、古川さんにはコメントを いただくというスタイルで進めてまいります。 テーマ1 「新しい公共」におけるNPOの有効性について 特定非営利活動法人 地球市民の会 1/16 http://tpa.nk-i.net/
  • 2. 地球市民の会 第9回通常総会記念イベント   会員大討論会 ~NPOの未来を考える-今、地球市民の会は何ができるのか?~ 山下 今日は「NPOの未来を考える」という大テーマのもとに進めていきますが、最初に「新しい公 共」について議論をしてみましょう。新しいって何が新しいの?公共ってどういう意味があ るの?NPOが担う役割とは?という点について、大串さんよろしくお願いいたします。 大串 今日はこのような場でNPOの未来を考えるということで皆さんと意見交換の機会をいただき、 ありがとうございます。今日は総会に出られずに申し訳ありませんでした。いろいろな立場で 佐賀を支えてくださっている皆さんに心から敬意を表したいと思います。 今、「新しい公共」を作ろうとしています。鳩山総理が新しい公共の概念を作りたいと言いまし たが、これは民主党政権だけで始まったことではありません。公の仕事を行政だけが行うのでは なく、皆で支えあえないかということです。古川知事の一期目当選のときから議論を進めていま した。 「新しい公共」には、いろいろな例がすでにあります。例えば消防団です。日本の火を消す活動 は消防署員だけが担っているのではありません。消防署員は全国で10万人程度ですが、消防団員 は100万人います。これもボランティアです。自治会で、私も地元の小城市で川の水さらいをし ていますが、これも公の仕事です。 今、公に対するお一人お一人の貢献は、「税を払う」という形でしています。しかし、税を払 って行政が公的サービスをするだけではいけません。税を払うだけではなく、体を、行為を、 活動を使って、公のために何かできるのではないか、というのが新しい公共という考え方 です。 これは、アメリカにもあります。アメリカは寄付金税制などもあり、公のために一人ひとりが活 動するということが進んでいる国です。誰かが会社に投資をするときは株を買います。株のこと を「equity」と言いますが、「sweat equity(汗の株式投資)」という言葉があります。N POに自分はどういう貢献をするかと言うときに、「私は汗の貢献をします」という考え方で す。それを出来るだけ具体的に進めていくときの担い手がNPOや公益法人の皆さんです。 新しい公共円卓会議を鳩山さんの下に作って制度を整えています。税制改革や規制緩和を進め、 出来るだけNPO、公益法人に参画していただく動きを進めています。これが新しい公共です。 山下 ありがとうございました。では、山口さんより質問をお願いします。 山口 「新しい公共」という話は日本人としては新しく聞こえます。私はヨーロッパが似合う男であ り(会場より笑い)、ヨーロッパ視察事業に行きました。ヨーロッパで公共について勉強してき ました。ヨーロッパは、公の考え方が進んでいます。公園がきれいなのは「私が散らさないから、 あなたも散らさないでくださいね」という暗黙の契約があるからだそうです。日本では、自分の ところからゴミを出したらきれいになるという考え方があるが、ヨーロッパは「皆の場所だから 皆できれいにしよう」という暗黙の契約があります。それに大変驚きました。 イギリスに4回行って、元祖パートナーシップ(協働)について学んできました。 ヨーロッパでは協働が進んでいますが、なかなか日本人の間で協働の意識が高ま りません。お上から仕事が流れてくるという感覚で、一緒にやろう、適材適所の 力の出し合いをしよう、という考え方がないんです。言葉だけで、「協働を進め よう!」と言っていますが・・・ 古川 質問ばせんね!(会場より笑い)  ヨーロッパが似合う? 山口 すみませんついつい意見を言いたくなってしまいました。 山口副会長 ドイツでは行政やNPOがラウンドテーブルについて、同じ立場で話をしようと いうことがあります。それが協働の始まりだと思います。お互い違うからこそ協働する。大切 なのは、それを調整する人がプロとしている、ということだと思います。 質問ですが、新しい公共の円卓会議のポイントは何でしょうか? 大串 皆で自主的に公の仕事をしていこうという動きが、日本では生まれてきませんでした。円卓会 議では、協働の意識を前に進めるには、政策として何をしていけばいいのか?ということ を話し合っています。税制で促進できないだろうか、NPOや公益法人を設立・運営するハー ドルが高すぎないだろうか、と言ったことを議論しています。NPOや公益法人が動きやすい ように考えています。 特定非営利活動法人 地球市民の会 2/16 http://tpa.nk-i.net/
  • 3. 地球市民の会 第9回通常総会記念イベント   会員大討論会 ~NPOの未来を考える-今、地球市民の会は何ができるのか?~ 山口 なるほど。 山下 ありがとうございました。では、佐藤さん、質問をお願いします。 佐藤 私は、何故改めて「ボランティア」なのかわかりません。日本はもともとボランティアの国で した。消防団、婦人会、青年団、隣組など、ボランティアの根付いた国だったんです。そうい う国が、何故今になってあえてボランティアを出さなければならないのでしょうか?時代 代の流れかもしれませんが、新しい公共と言うより、昔に戻すことはできないのでしょうか? 大串 私もいろいろな国の発展形態を見てまいりましたが、途上国においては地域の自然発生的なコ ミュニティーが機能するようです。一定の先進国段階になったときに、地域のコミュニティー が維持しにくくなる段階を迎えてくるようです。各国を見ているとそう感じます。より積極的 に意識的にボランティア活動を進める動きを考える段階に、日本も達していると思います。 山口 日本が新しい公共が進むときに、今のNPOにはそれを担える力があるでしょうか? 大串 私たちは野党時代も、いろいろな人と協働してきました。私の肌感覚で言うと、私たち政府側 が制度をしっかりしていけば、担う力を持っているNPOはかなり多いと感じています。 山下 ありがとうございました。それでは、古川知事よりコメントをお願いします。 古川 まず、手元に良い資料をいただきました。地球市民の会から、「私たちはこういうことを知り たいから勉強してきてくださいね」という書類をもらい、大変関心しました。地球市民の会が 真剣に知りたいということが伝わってきました。 政務官も言っておられたましたが、本格的に今の政権で「皆で一緒にやっていこう」という動 きが具体化しています。今度の参院選挙のマニフェストに何がとりこまれるか?ということも 注目されますし、年末の税制改正もあります。今は税制については一定の措置はありますが、 寄付する皆さんとしては使い勝手が悪いと思われる部分もあるかと思います。これが変わると、 世の中が変わると感じられると思います。 政務官の立場としては国の税収が減るという方向には議論しづらいと思います。圧倒的に税収 が足りない状況にあるというのは事実なので、NPOの税制は充実してもらったとして、その他の 税収はどうしていくかを考えていかなければなりません。「お上のことはしらんさい!おい どんがすっとこだけば、協力ばしてよ」(お上のことは知りません。私たちがするところだ け協力してほしい)だと本当の新しい公共にならないと思います。 日本はもともと自分たちのことは自分たちでやる国でした。7人の侍を見ればわかります。「自 分達のお金で、悪か者ばやっつけてくるばい!」(自分達のお金で悪者をやっつける!)と いう話です。また、石川県のある学校はお金がなく、大正時代に学校を立て替えられませんで した。そのとき、村人は禁酒をすることを皆で決め、貯めたお金で学校を建てました。今のよう に、義務教育施設補助金などがない時代です。だから、昔の学校は「共立」という名前の学校が けっこうありました。佐賀県も東脊振にありました。そのように、「自分たちでできることは自 分たちでやろう」という気持ちは日本人は持っていたはずです。おそらく、戦後の一時期だけ消 えていたのでしょう。本来我々が持っているものをもう一度出そう、ということだと思います。 これまで地域に根ざした活動はありましたが、自主的にやっているというより、「決まりだか らしょんなか」(仕方がない)という人が多かったと思います。今は、地球市民の会のように 「志」がある人たちがいます。私たち佐賀県は、県と一緒にやっていく協働の担い手を、「志」 のあるNPOだけでなく、地域に根ざした人たち(老人会や自治会)なども仲間だと考えていま す。だから「CSO」と呼んでいます。佐賀県の協働化テストは、国連の公共サービスオリンピ ックの最終審査まで残っています。 <information> ※佐賀県協働化テストについては下記URL参照。 http://www.pref.saga.lg.jp/web/kyoudouka_test.html 特定非営利活動法人 地球市民の会 3/16 http://tpa.nk-i.net/
  • 4. 地球市民の会 第9回通常総会記念イベント   会員大討論会 ~NPOの未来を考える-今、地球市民の会は何ができるのか?~ 先ほど政務官から消防団の話がありましたが、佐賀県の消防団の組織比率は全国一高いんです。 2,3年前に有田署の出初式に行きましたが、今右衛門先生が消防団の帽子を被って行進してい ました。人間国宝のような人が行進している消防団は、普通はないと思います。これは、地域に 根付いているものがあるということです。政権がやろうとしているのはそれを制度化するという ことです。 山下 ありがとうございました。 現場を知られて率先垂範されてきた古川さんですので、説得力のあるコメントだと感じました。 テーマ2 「NPO法人に対する寄付控除制度」の現状と課題 山下 先ほどの話にも出ましたが、税制面で優遇措置があるかどうかが気なるところです。 NPO法人は財政基盤に問題がある中、志一つで頑張ってやっている状況です。 その点について、現状の課題など、大串さんよりお願いします。 大串 NPOが活動を進めるのためには財政基盤が必要です。NPOの皆様と共に、いろいろな形で参加 する方々がいます。先ほどのように「sweat equity」という形で汗をかいて参加する方もいれば、 寄付金という形で参加する方もいます。寄付金で参画する方を増やすために、国税庁がある一定 の公益性を認めた方々には認定NPOという立場を付与しています。寄付金に対する所得控除 があるという形です。 しかし、これにはなかなか認定されにくいという問題がありました。例えば、NPOの収入は通 常、寄付金、会費、国の補助金、事業収入の4種類があります。認定NPOになるには、公的 な収入(寄付金、会費、国の補助金)の割合が20%以上ないといけません。これはハードル が高いです。 例えば、良い仕事をしていて、たくさんの人が寄付してくれるNPOがあるとします。 たくさんの人が少額ずつ寄付をしてくれた場合、寄付金、補助金、会費の割合が全体の収入の20 %に届かないことも出てきます。すると、認定NPOにはなれませんが、どうもこれは違うので はないかという考え方もあります。一人ひとりの額が少なくても、たくさんの人が広く薄く支援 してくれたら、これはまさに公益性があるということではないか、であれば、公的な収入の割合 が20%以下でも、かなりたくさんの方が支援してくれているという基準を入れてもよいのではな いか、と考えています。 また、NPOを作っても、すぐに認定NPOになることはできません。なぜなら、寄付金を集め たという実績が必要だからです。NPOを作っても、寄付金が集めにくい、さらにお金が集まら ないという悪循環になります。それだと大変なので、仮認定をやってはどうか?という話もあり ます。このNPOは公益を担おうとしているので仮認定で税制優遇をし、寄付金が集まったら本 認定にするということも考えています。入口のハードルを下げるということを考えております。 また、これまで国税庁が認定していましたが、地域主権の時代ですし、地元ごとに公益性が高 いものは違いますので、国が認定するのではなく、地域が認定する仕組みを入れてはどうか ということも考えています。そのようなことが、認定NPOの促進起爆剤にならないかと考え ています。 もう一点述べさせていただきますと、NPOと公益法人があります。 公益法人制度改革が行われ、新しい公益法人制度になります。これま ではそれぞれの事業官庁に認可を貰うと言う形でした。今は公益法人 を設立することはできますが、税制の優遇のためには公益性の認定を 内閣府からしてもらうことが必要です。その認定を得るのに6ヶ月く らい時間がかかります。公益法人を作っても、動き出すのまでに時間 がかかるのです。これを縮めて3、4ヶ月で公益認定をし、できるだ け活動を早く始めてもらうことも考えています。こういう風に促進策 を考えています。地元の皆さんがいろんな形で公に参加してもらえる 大串政務官 仕組みを検討しているところです。 山下 ありがとうございました。 ところで、ここにお集まりの皆さんは、地域の事情を投げかけ、国の政策に反映してほしいと いう強い気持ちがあると思います。 特定非営利活動法人 地球市民の会 4/16 http://tpa.nk-i.net/
  • 5. 地球市民の会 第9回通常総会記念イベント   会員大討論会 ~NPOの未来を考える-今、地球市民の会は何ができるのか?~ そういうことも含めながらお二人から質問お願いします。 佐藤 個人が認定NPOや公益法人に寄付したときの特典はありますか? 大串 大切な税制上の優遇措置を言い忘れていました。皆さんがNPOに寄付したとき、これまでは 「所得控除」が適応されていました。すなわち、5千円寄付したら「所得控除」という形で税 制上の優遇が受けられます。その人が仮に10万円の給料(注:課税所得)をもらっているとす ると、10万円に対して税金がかかりますが、5千円を寄付している分、10万円の給料から5千円 を引いた9万5千円に税率をかけます。だから税額が安くなります。そういう仕組みで、自分が 国に払う金額が少なくなっていました。国に税金をかけるかわりに、公の仕事をしてくれてい るNPOに寄付をしようという仕組みです。 <所得控除の場合> 課税所得 寄付しない場合  10万円 × 税率 5千円寄付した場合 (10万円-5千円)× 税率 ←税金が少し安くなる。   ところが、「所得控除」の考え方だと、所得の高い人のほうがより得をします。なぜかという と、所得税率は10%からの累進課税です。寄付した分の税率がかかってこないということは、 所得が低く、低い税率の方よりも所得が高くて高い税率に直面している方のほうが得する面が 大きいのです。ですから、その仕組みを改めて「税額控除」にして、5千円寄付したらその寄 付した5千円は全く払わなくて良いようにできないか検討しているところです。 <税額控除の場合> ※税額控除が100%だと仮定した場合 寄付しない場合 税金C 5千円寄付した場合 税金C-5千円 ← 税金が5千円安くなる。 こうすると、寄付する人の裾野が広がります。所得の低い、低い税率の皆さんにもより恩恵が 及ぶようになります。沢山の方が薄く寄付してくださる形のNPOが出来上がるようにしてい きたいということなんです。 古川 ここはすごく大事です。入試に出ますよ!(会場笑い) 「所得控除」「税額控除」という言葉を覚えておいてください。 △ 所得控除 新聞に「税額控除になった」と書かれていたら「良かった!」と ◎ 税額控除 思ってください。 山下 ありがとうございます。佐藤さん、ナイスな質問でした。 これに相乗効果をもたらせられるでしょうか!ヨーロッパの似合わない山口さん、いかがで しょうか? 山口 個人的に悩んでいることなのですが、日本人は税金を払いたくないという感覚があると思いま す。皆で公益を良くするためには税金で負担するという意識が日本の国民になければいけない と思います。だけど反面、自分が年間何十万円、何百万円も税金を払わなければならないとい うのは困ったと感じます。 NPOに対する税金控除の話は良いと思いますが、反面、日本は政府の借金が880兆円を越す ような借金国家になっています。どうしたらいいのだろうか?私が小さい胸を痛めても仕方 がないですが、どうしたらいいのでしょうか? 大串 認定NPOを促進していくために税制の優遇措置をとっていくのは「本当に大丈夫か?」とい う声も出ています。しかし、国の方向性は、行政だけでなく皆で公共をやっていこうという方 向にあります。税制の優遇措置があるということは、本来は税金で国や地方公共団体、行政機 関がやるべき公の仕事を、その分のお金をNPOに行くようにするから、そこで公の仕事をし てくださいということです。行政機関かNPOか、皆が選べるようになります。誰が公の 仕事をやるのかということも、皆さんが選べるのです。 最終的には、財政はニュートラルにならなければなりません。誰がやるのか、主体が違うと いうことだけです。理屈的に言うと、財政は中立になるというのが理想です。しかし、確か に国の財政を考えると非常に厳しいです。ギリシャ問題もありましたが、日本もかなり近い 特定非営利活動法人 地球市民の会 5/16 http://tpa.nk-i.net/
  • 6. 地球市民の会 第9回通常総会記念イベント   会員大討論会 ~NPOの未来を考える-今、地球市民の会は何ができるのか?~ 状態にあるのは間違いありません。ですから、なおさら、行政がやって無駄があるようなと ころを、NPOの皆さんにやってもらってより良くできるのではないかと期待しています。 山下 国民の立場としては税金がどのように有効に使われているか、疑問を持っている人もいます。 そういう方は、地域のことをやっているグループも自分達の選択肢としてもてる可能性を秘 めています。古川さん、ふるさと納税関係の話も織り交ぜながらコメントをお願いします。 古川 ふるさと納税という制度が平成20年度にできました。今は3年目です。これは税額控除の世 界です。つまり、ものすごく有利な制度を作っていただけました。例えば、佐賀県に3万円寄 付したら、その人の納税額が2万5千円引かれます。5千円は自己負担になりますが、10万円寄 付した場合は5千円の手数料で9万5千円のマイナスになります。限度はありますが、寄付した 分、税金が安くなります。だから、寄付しやすいのです。 <ふるさと納税(税額控除)> 納税額Aの人が3万円寄付(ふるさと納税)すると・・・ 納税額A-(3万円-自己負担5千円)=納税額B ←2万5千円税金が安くなる! ※注 自己負担額の一部は、平成22年度より2,000円に変更されています。 今、佐賀県は実額ベースで全国で20位くらいですが、佐賀県の人口を考慮すると、去年で全国 7,8位くらいでした。佐賀県は大口の寄付がけっこうあるという特徴があります。「こんなに 寄付されても控除できないですから、もう少し安くても結構です」と言っても、「よかさい! する気になったときに受け取らんかい!来年なってもせんよ」(いいから!寄付する気持 ちのときに受け取ってください。来年になってから寄付しろと言われてもしませんよ)と。 そう言って3500万円寄付してくださった方や1000万円寄付してくださった方もいらっしゃいま した。残念ながら県ではなく市でしたが・・・。 ふるさと納税ができて、地元に寄付してくれる人が出てきてくれて大変嬉しく思っています。 これは、「ふるさと納税」という言葉と、税額控除の仕組みが良かったのだと思います。 ふるさと納税ができたときに批判的な人もいましたが、私は、これは「ふるさと納税」という 一つのことだけの意味ではなく、個人と税制の関係を考え直す風穴になると思っていました。 今まで、税金はどのように使われるか、納める側にはわからないのが前提でしたが、ふるさと 納税は自分で税金の使い道を決めることができるものなんだ、ということを申し上げてきま した。NPOの寄付の税制が所得控除から税額控除に変わることで、今までは何に使われるか 知らずに税金を払ってきましたが、地球市民の会に寄付すると、その分納税額が下がるように なり、「私はこのために税金を払ったんだ」と実感できるようになるということです。ずいぶ ん世の中が変わっていくと思います。 大串さんがおっしゃったように、税収は減りますが、意義はあると思います。使い道を自分で 決めるということにより、タックスペイヤーとしての意識が高まります。もう一つは、無駄 なことや余計なことがなくなると思います。 例えば、佐賀県は大きな災害のときは見舞金を出していま す。かつては必ず日赤を通していましたが、こう言っては 悪いが、日赤が何にお金を使っているのかわかりませんで した。外国の政府に直接渡すのが良いような気がしました が、これもちゃんと使われているかわかりません。ですの で、ユニセフに寄付したこともあります。また、ミャンマ ーで災害があったときは地球市民の会にお願いしました。 地球市民の会に寄付をして、「ミャンマーの人のために使 ってほしい」とお願いしました。 日赤、ユニセフ、地球市民の会に寄付してきましたが、全然違います。何が違うかと言うと、 「こういったところに使った、相手からこんな返事をいただいた、佐賀県のお金でこういう 風にしました」と報告してくれたのは地球市民の会だけです!(会場より拍手)。他のとこ ろは何に使ったかわかりませんでした。 そういう風に、身近な信頼できるところにきちんとお願いして税金を使ってもらい、報告 してもらうほうが良いと思います。災害時も、遠くの団体より近くの団体に寄付して使い 特定非営利活動法人 地球市民の会 6/16 http://tpa.nk-i.net/
  • 7. 地球市民の会 第9回通常総会記念イベント   会員大討論会 ~NPOの未来を考える-今、地球市民の会は何ができるのか?~ 道を確認する仕組みにしたほうが、相手にも喜ばれ、納税者としても安心できると思います。 山下 さすが私たちの名誉会長!ありがとうございました。 見える協力は大切ですし、我々も説明する責務を担っていると思います。 テーマ3 「道州制と地方分権、地方主権」とNPOの果たすべき役割 山下 新しい公共、そしてNPOに対する寄付控除についてのお話をいただきました。 今、行政の舞台は変化をしていっています。昨今では道州制、地域主権という言葉も聴かれる ようになってきました。3つ目のテーマとして、地域の自立ということについて触れさせてい ただきたいと思います。大串さんから、道州制と地域主権について、また、その中でのNP Oの役割についてお話いただきたいと思います。 大串 地域主権という考え方については、私たちはマニフェストにも「地域主権」とうたい、地域主 権戦略会議ということで総理官邸で原口大臣を中心に、私も財務の面から関わって進めていま す。私も財務省で20年弱携わってきましたが、日本は中央集権的な国でありましたし、今もそ うです。今までは、中央集権制が機能してきたこともありましたが、新しい時代に入ってきま したので、「自分のことは自分で決め、国がやらなければならないことだけ国がやる」と いう考え方に変わってくれば良いと思います。卖に、「この財源は中央から地方に渡します」 というような話ではなく、根本的な考え方から変わらなければなりません。 「補完性の原理」と言うヨーロッパで普及している考え方があります。それはまず、コミュニ ティーでやれることはコミュニティーでやる。そして、市町村でできることは市町村がやる。 「この問題は大きかけん、市町村では決めきらん!」(この問題は大きいから、市町村では 決められない!)ということなら県が、「県でも大きかばい、決めきらん!」(県でも大き くて決められない!)ということに関しては国が決めるということです。国に残るのは外交や 防衛ぐらいになると思います。距離が近い人がそのことについての第一人者になるということ です。まずはコミュニティー、町村市、次に県、そして国。このように地元から権限、決定権 を持っていきます。これが「補完性の原理」です。こういう風に国の仕組みを変えていきたい と思います。 そのためには、いろいろな仕組みを変える必要があります。今ま では、国がいろいろな基準や枠付けをしてきました。例えば、道 路の幅は何十センチじゃないといけない、というような基準です。 これは、財源が国から地域に来ているという仕組みがあるからで す。「この道路を作るために、この補助金を使いんさい!」 (この補助金を使いなさい!)と言う風に。佐賀の道路を見た ことがない霞ヶ関の人たちが、佐賀に道路がいるかどうかを 判断する。これはおかしいのではないか、ということです。地域 で権限を持てる仕組みを作っていきたいと思います。 その第一歩として、23年度から補助金の一括交付をしていきたいと思っています。今は国の 補助金を配って地方に事業をやってもらっていますが、補助金は地方に一括して持ってもらい、 何に使うかは地域の実情で判断していただくようにしたいと思っています。 この受け皿は誰になるのか、考えていきたいと思います。つまり、道州制という形がいいのか、 県という形がいいのか、ということです。私の考えでは、地域主権を進めていくと、社会的な コンセンサスの中で自然に、「地方自治体はこの規模が望ましい」というのが出てくると思い ます。まずは地域に対して権限を用意し、その後の流れの中で自然と、どのような広さの自 治体が最も適切かどうかが見えてくると思います。 最後に、今日の議論全体のポイントとなることは、「私たちが選択できることの重要さ」だ と思います。先ほどNPOの税の優遇措置の話をしましたが、これは卖にNPOへの寄付金を 促進するためだけではありません。税を行政に払って行政に仕事をしてもらうのか、NPOに 払ってNPOにやってもらうのか、最終的には、選択肢を皆さんが持てる社会になるという ことではないでしょうか。 地域主権の話も同じです。私たちから遠い「国」にお金を払うのか、近いところにお金を払う のかということです。遠いということは、仕事がわかりづらいということです。住民・市 民としての選択する権利が、今の新しい日本においては大切なのではないでしょうか。選べる 特定非営利活動法人 地球市民の会 7/16 http://tpa.nk-i.net/
  • 8. 地球市民の会 第9回通常総会記念イベント   会員大討論会 ~NPOの未来を考える-今、地球市民の会は何ができるのか?~ 日本になっていくということが、今の日本の大きな変革の中で素晴らしいことだと思います。 地域主権を進めていきたいということでございます。 山下 身の引き締まる、心強いお話でした。 佐藤 私は3つお聞きしたいことがあります。 今、原口大臣は地域主権ということを提唱していますが、これは平成の大合併と矛盾するもの ではないのでしょうか?「小規模分散」は私の人生のテーマですので原口大臣には賛成でした が、地域主権と平成の大合併のことについてお聞きしたいです。 2つ目ですが、先ほどビデオを流しました。ミャンマーの子ども達のビデオです。私たちは子 供の何に惹かれてミャンマーに行くのでしょうか?ただ「可愛そう」だ からということではないのですが、子どもたちの何に惹かれているのか、 自分の中で今まで結論が出ないままでした。しかし、さっきのビデオを 見て答えが出ました。それは何かというと、あの子ども達は自分の親や 先祖に対する思いやりが強いのです。あれが美しいのだと思いました。 日本のボランティア意識と向こうの子供との生き方の違いがあります。 向こうの子どもたちには常に祈りがあります。だから、私たちは「放っ ておけない」という気持ちになるのです。私たちのボランティア意識 は、税制やシステムで解決できる問題なのでしょうか?大串先生の 問題ではなく、私たち自身の問題だと思います。この中に、子どもがい 佐藤会長 ない人はいても、親のいない人はいません。私たちのあり方を見直すこ とが必要ですし、そのためのフィールドが必要だと思います。 そして3つ目ですが、そのようなことを「農」を通して勉強していく必要があると思います。 地球市民の会としては、両先生にご協力いただき、いろいろな人を巻き込んで勉強して、ボ ランティア意識が出来上がるのではないかと感じています。 <information> ※ミャンマーの子ども達のビデオ映像は、こちらよりご覧いただけます。 http://www.youtube.com/watch?v=wDkn86enjF4 ※「農」については、参考資料「人間の持つべき文明2009」をご覧下さい。 大串 「小規模分散」と平成の大合併という話が佐藤さんよりありました。平成の大合併について、 この評価はまだ難しいと思います。佐藤さんがおっしゃるように、小規模分散という考え方 は、人間や自然が存在する上では必然ではないかと思います。エントロピーと言いますが、 資本主義でも民主主義でも、分散していくというのは必然の力学です。また、補完性の原理、 つまり、地元で行えることを地元で行い、できないことを市町村や県や国で決めるというこ とですが、これがまさに小規模分散という考え方です。細かなことを地元で決めていくと、 多くのことが地元で決められて、国に残ることはそんなにないと思います。その小規模分散 の中で、どの行政分野においてどの大きさがふさわしいかは、内容によって変わってきます。 例えば、医療ならば小さな市町村だけで決めるのは厳しく、広域卖位でやっていくほうが良 いと感じます。また、他のことはもう少し小さい卖位でも良いこともあるでしょう。必要な 権限や財源を地域主権にした上で、どういう卖位が良いのかを自然に見出していきたい と思います。 それから、「親」とおっしゃったことに関してですが、私は東 京でベンチャーキャピタルの人間とつきあうことがあります。 今、パソコン、デジタルなどに参画している人が成功者だとい うイメージがあります。デジタル、数字、機械の時代です。と ころが、そういう事業家の人たちに成功の秘訣を聞くと、デジ タルや数字などではなく、発想・アイディア・人脈・健康など という答えが返ってきます。デジタル文明が進んだこういう時 代だからこそ、日本を含む先進国においては、親を思う心、 発想、情念、アナログなどが重要になっています。その想いを背負えるのは行政ではなく、 NPOだと思います。 山口 大串さんは始めてお話しましたが、けっこういい人ですよね!(会場より笑い)ちょっと 特定非営利活動法人 地球市民の会 8/16 http://tpa.nk-i.net/
  • 9. 地球市民の会 第9回通常総会記念イベント   会員大討論会 ~NPOの未来を考える-今、地球市民の会は何ができるのか?~ びっくりしました。 私が小さな胸を痛めて悩んでいることその2ですが、私は道州制推進派なんです。その一 番の理由は、東京大地震の懸念です。東京大地震は100年周期くらいでやってくるそうで、 そろそろ起きてもおかしくありません。東京が揺れるとスポンジ状の土壌がグラグラと揺れ て、ものすごい大地震になるそうです。同時に東海、東单海大地震、富士山の噴火が懸念さ れています。富士山の噴火が起こると日本がリセットされるくらいの騒ぎになるそうです。 今の社会構造や経済構造だと、九州や北海道はドミノ倒しになってしまいます。だから、完 全独立ではなくても、九州は早く独立したほうが良いと思います。スイスなど、九州と同 じくらいの面積で十分先進国としてやっている国もあります。九州自身が力をつけ自立する ことと、政府の大串さんがおっしゃっているようなことが合致しないといけないと思います。 大串 先ほど、十分な地域主権、すなわち十分な権限や財源を地域に持ってもらった後に、そのと きの社会・経済の体制を前提に、どのくらいの大きさになるか自然に決まるという、非常に 意味深な話をしました。今の一番大きな決定要因は交通と情報通信ですので、今の交通体系 と情報体系を前提とすると、道州制はおさまりの比較的良い卖位になる可能性はあると思い ます。 九州は、世界ではかなり大きな経済規模になります。世界で十数位、オランダより小さくて ベルギーより大きいくらいです。福岡を首都とすれば、30分で福岡に出られますので、佐賀 は田舎ではなくなります。このような地域が日本全国にできます。だから、地域主権をやっ ていかなければならないと思います。このような地域の持つリソースを生かせていなかったの が、今までの日本です。それを生かしていくのが地域主権であり、ひょっとしたら道州制なの ではないかと思っています。 <参考資料> ※卖位は1,000万ドル ※PHP総合研究所HPより http://research.php.co.jp/devolution/faq.php#q1 山下 ありがとうございました。それでは待っていました!道州制議論がお得意な古川さん。 お願いします。 特定非営利活動法人 地球市民の会 9/16 http://tpa.nk-i.net/
  • 10. 地球市民の会 第9回通常総会記念イベント   会員大討論会 ~NPOの未来を考える-今、地球市民の会は何ができるのか?~ 古川 誤解を恐れずに言えば、道州制はいいんじゃないかと思います。しかし、前提はいろいろあ ます。下手すると国家による地域分割になる恐れもある。そうではなく、大串さんがおっしゃ っているのは、道州制が良いという雰囲気が皆にない中、上から言ってもダメだということか と思います。 私が道州制が時代の流れだと思っているのは何故かと言うと、客観的に見たときに、明治が始 まって以来、市町村は何回も合併していますが、県だけは変わっていないからです。明治時代 は3万くらいあった市町村が1500くらいになっています。国の役所も、くっついたり離れたり しながら減っています。県だけが変わっていません。東京府が東京都に、北海道庁が北海道と いう自治体になり、沖縄が出入りしたことくらいしかない。あとは何も 変わっていない。広域自治体だけが変わらなくてよいという理由はない と思います。基礎的な自治体に権限や財源を移行していこうとすると、 広域自治体が今のままでよいという理屈のほうがわかりません。いろい ろな形で変化が出てくるに違いないと思います。 そのときに、九州くらいの卖位でかなりのことを決められるようになっ たとイメージすると、いろいろなことができるようになったと感じられ で国に訴えていることでも、ダメになっていることが多くあります。私 がしつこく言っているのはフグ特区です。フグの毒はテトロドトクシン 古川知事 という毒が肝臓に貯まるんです。海の中にいる微生物の中に毒が含まれていて、それをフグが 食べるからどんどん蓄積されて有害になっていきます。逆に言えば、毒を含まないえさをあげ れば、肝に毒が溜まらないのです。それは、研究でもわかっていることですし、佐賀県だけで もやらせて欲しいのですが、「何かあったらダメだ」ということでさせてくれません。権限よ りも、欲しいのは責任なんです。責任を取らせて欲しいと言っても、させてもらえないんです。 また別の例ですが、私は今日も電気自動車で来ました。「電気自動車って、リッターあたり いくらですか?」と聞く人がいます(会場笑い)。「電気なのでガソリンはいりません」と 説明しても「リッターで言うぎ何キロね?」(リッターで言えば何キロですか?)と聞かれ ます。また、プラグインハイブリットというのがあります。電気自動車とプリウスを組み合わ せたようなものですが、これはリッターあたり57kmです。バイクのカブとほとんど一緒です。 車がカブと一緒なんて信じられない時代です。これから、電気自動車や水素自動車もできてい きます。間違いなくこれから水素や電気が中心になりますので、水素スタンドを作っていかな ければなりません。水素スタンド作るときに、国の高圧ガス規制がめちゃくちゃ厳しいんです。 水素スタンドを1個つくるのに1億かかるくらいです。1千万円くらいでつくれるようにしていか ないと水素スタンドは普及しないでしょう。ですから、規制をゆるめてEU並みの基準を作り たいと言っています。EUはもう基準ができています。しかし、「EUと日本は違う」と言う んですね。「何が違うんですか?」「EUとは人口密度が違うから・・・」「佐賀はそんな に人口いないですよ!」「いやいやそがんわけにはいかん」(そういうわけにはいかない) という風になってしまうんですね。佐賀だけEU基準を認めて、1000万円で水素スタンドがで きるようになればだいぶ違うと思います。今は、もどかしさがあります。責任をとると言って もさせてもらえないんです。1県では無理でも、九州くらいの卖位が集まれば、かなりのことが できるのではないかと思います。 また、消費税についてですが、皆さん、自分の家でお金を使うときは節約しますね。自治会で 公民館の建替えをするときなど、「千円ずつプラスで会費を払ってください」ということもあ るでしょう。目に見えるものについては、納得してお金を払うことができますね。 日本は他に例を見ないほどの高齢化の国です。公のお金がないと社会が成り立っていきません。 将来、世界で例を見ないくらいの消費税率をカバーしないと、国がもたないかもしれません。 デンマーク、スエーデンは高い消費税率でも不満がないという話を良く聞きますが、そのような 国は人口が900万人くらいです。1億2000万人の国で消費税率が25%の国なんてありません。使わ れる場所が遠すぎて、高い消費税を払う意味がわからないんです。近くで、自分のところに お金が返ってくるという感覚がないといけません。1000万人くらいの国でないと、重い税率が自 分に返ってくることを理解するのは難しいと思います。消費税率25%を目指しているわけではな いのですが。皆が納得して高い消費税を払っているのは、近くで物事が決められているか らではないかと思う。だから、道州制をやる意味はあると思います。 私はそういうこともあり、道州制の議論の際には、佐賀県が九州の道州制の議論をひっぱっ ていきたいと思っています。佐賀は人口が多くありません。佐賀のようなコンパクトな県が議 特定非営利活動法人 地球市民の会 10/16 http://tpa.nk-i.net/
  • 11. 地球市民の会 第9回通常総会記念イベント   会員大討論会 ~NPOの未来を考える-今、地球市民の会は何ができるのか?~ 論を引っ張らないと、大きな県が決めて「お前は従え!」と言われると困りますから、議論の 中心にいようとしています。九州は、知事会と経済界が一緒に九州モデルを作りましたが、九 州モデルは佐賀県が作った案なんです。 地域主権戦略会議の中でも、モデルをやるには九州がやりやすいと言われています。例えば、 長野県を何州に入れるかというと、気が狂うような話になりますね。九州は、山口や沖縄を どうするかという問題がありますが、比較的まとまりやすいです。例えば、夏の高校野球の とき、佐賀を応援しますよね。で、佐賀が負けたら九州を応援する。そして、九州が全部 負けると夏が終わるんです(会場盛り上がる)。そういう感覚がありますよね。そういう感 覚があるところは、まとまりがあるからモデルになると思います。 これから、道州制について考える時期になると思いますので、私たちはどんな話になっても 大丈夫なように、しっかり議論をしていきたいと思います。先に形ありきではなく、基礎的 な自治体にしっかりと権限や財源を移譲し、自分達のことは自分達でしていくという雰囲気 づくりをしていきたいと思います。 山下 ありがとうございました。九州は一つ、熱い九州モデルの熱弁をいただきました。 質疑応答 山下 今度は会場にお見えの皆さま方から質問をお受けしたいと思います。 では、東京から来られた有澤さん、お願いします。 有澤 大串さんに聞きたいのは、税額控除のやり方です。確定申告方式とサラリーマンの年末調整 方式がありますが、このへんを上手くやらないと寄付はなかなか伸びないと思います。ふる さと納税は確定申告方式なので、伸びていないのではないかと思います。認定NPOに対し ては、年末調整でもできるように考えていただきたいです。 大串 ありがとうございます。税制の問題と共に、徴税制度の問題もあります。日本は、源泉徴収 をして年末調整がそれを補完するという、他に類をみない制度をとっています。アメリカの ように、確定申告が基本という国もあります。アメリカの場合はタックスリターンと言いま すが、これは「控除を取り戻す」という意味です。アメリカも源泉徴収が幅広くあり、確定 申告をして、返ってくる分を取り戻すということです。前提として、税のインフラや番号制 度についても議論されています。これがあるかないかでも、徴税制度は変わってきます。今 のインフラでは、年末調整が限界かもしれません。それも併せて、徴税制度を踏まえて検討 したいと思います。 <information> ※納税者番号制度とは納税者の管理制度の一つ。納税する年齢に達した  国民に番号を割当、所得や資産、納税の状況を一元的に把握するシステム。 有澤 ありがとうございました。是非大串さんには頑張っていただき、民主党と言わ ず、日本を背負う政界人になっていただきたいです。 山下 では、熊本の成尾さん、どうぞ。 成尾 地球市民の会の会員は会費を12,000円払っています。今はまだ認定NPOでは なく、申請中です。仮に所得が300万円の人がいて、税率が10%と考えますと、 30万円の税金を払っています。認定NPOでないので、会費の12,000円は控除 地球市民の会東京 の対象になりませんね。所得控除でも税制控除でもありません。 有澤さん <課税所得300万円の人が12,000円寄付した場合> ○現在(控除なし) 年収 3,000,000円 × 税率10% = 税額 300,000円 ○現在の制度で認定NPOになった場合(所得控除) 年収(3,000,000円-12,000円) 税率10% = 税額 298,000円 × (1,200円控除) ○制度が変わり、認定NPOになった場合(50%の税額控除) 特定非営利活動法人 地球市民の会 11/16 http://tpa.nk-i.net/
  • 12. 地球市民の会 第9回通常総会記念イベント   会員大討論会 ~NPOの未来を考える-今、地球市民の会は何ができるのか?~ 300,000円 - ( 12,000円 × 50% ) 税額 294,000円 = (6,000円控除) ※その他、自己負担額が発生 これが、今の制度で認定NPOになると、所得控除になりますね。12,000円の会費ですから、 300万円から12,000円を引いて、それに10%の税金がかかります。つまり、1,200円の控除が あるので、10,800円が寄付ということになりますね。 ※注 地球市民の会の正会員の会費は、総会の議決権という対価があるため、法律上では「寄付」と みなされない可能性がございます。認定NPOになった際には、詳細を皆さまにお伝えします。 成尾 所得控除から税額控除に制度が変わった場合、上限などはあるのでしょうか? 大串 50%と言われています。 成尾 50%でしたら、300万円の収入の人が30万円の税金ですから、15万円を 地球市民の会に寄付すれば、税金は15万円でいいということですか? 大串 そういう50%ではありません。 300万円の収入の人は30万円の税金を払います。 その人が寄付を4万円したとすると、50%なので2万円が控除になります。 成尾理事 30万円から2万円引いて、その人は28万円の税金を納めるということになります。 <年収300万円の人が4万円寄付した場合> ○税額控除 寄付 40,000円 × 税額控除 50% = 控除額 20,000円 税額 300,000円 - 控除額 20,000円 = 税額 280,000円(総額320,000円) ※その他、自己負担額が発生 成尾 その人が30万円寄付した場合はどうなりますか? 大串 30万円寄付したら、50%ですので15万円が税額控除となります。 30万円から15万円引いて、15万円が税金となります。つまり、その人は総額45万円払います。 これが所得控除だと、300万円の収入から30万円を引きますので、270万円です。その10%の 税金ですので、27万円の税金ということになります。 それが、税額控除だと、15万円で済みます。税額控除だと税金が少なくて済むんですね。 <年収300万円の人が30万円寄付した場合> ○税額控除 寄付 300,000円 × 税額控除 50% = 控除額 150,000円 税額 300,000円 - 控除額 150,000円 = 税額 150,000円 (総額450,000円) ※その他、自己負担額が発生 120,000円もの差が出てくる! ○所得控除 年収(3,000,000円-寄付 300,000円)× 税率 10% = 税額 270,000円 (総額570,000円) 成尾 12,000円の会費は寄付と見なせるのですよね?そのうち6,000円に関しては税金を払わなくて いいということになりますね。12,000円の会費と思っていたのが、実は本人の負担は6,000円 ということになります。認定NPOになると12,000円ではなく6,000円で済むようになります ので、是非、正会員2口ということにしていきましょう!! ※正会員会費は寄付とみなせない可能性がございます。詳しくは決まり次第お知らせいたします。 山下 会場からのご質問、ありがとうございました。また、分かりやすい回答もありがとうござい ました。 終わりに 山下 今日、ご出演いただいた皆様より、簡潔にまとめや感想をお願いします。 特定非営利活動法人 地球市民の会 12/16 http://tpa.nk-i.net/
  • 13. 地球市民の会 第9回通常総会記念イベント   会員大討論会 ~NPOの未来を考える-今、地球市民の会は何ができるのか?~ 山口 今日はNPO・NGOの未来を語るという討論会ですから、地球市民の会が九州で何をでき るのか、何をしなければならないのかというところです。ポイントは、自分の標語でもある のですが、「初めに志あり、初めに大儀あり、初めに忠臣あり」と思っている。初めに志 と大儀がどのくらいあるのか、それに社会的力をどれだけつけられるのかということがNP Oとしては大切だと思います。さらに発展すると、行政だけではなく、NPOがその地域の 予算を半分くらいは決めようという流れなっていけるのではないかと思います。また、そ うなっていくことが「新しい公共」ではないかと思います。 佐藤 私が地球市民の会の会長として常に考えているのは、これからは老いも若きも「農」を中心 にして、その精神的なものを学べるフィールドを作っていきたいということです。そのため には、古川知事や大串先生にお世話にならなければならないと考えておりますので、覚悟を してご協力のほどをお願いしたいと思います。 古川 前にいただいた質問に、「小さな政府にしたいから、協働やNPOへの委託を進めているので すか?」とありましたが、「小さな」政府というより「ほど良い」政府を作るということ だと思います。我々がやるより、皆と一緒にやるほうが良いこともあるでしょう。政府とし てやらなければいけないことも、もっとあると思います。小さい政府を目指すのではなく、 政府がやるよりも他がやるほうが良いものは、どんどん一緒にやっていこうというこ とです。 私達が取り組んでいる協働化テストは、県がやっている仕事を全部さらけ出して、県より 自分達がやったほうが良いということがあるなら提案してほしい、ということでアイデアを 出してもらっています。例えば、佐賀元気広場というのがありますが、県の直営だったとこ ろをCSO推進機構にお願いしています。コストが安くなるからではなく、満足度が高くな るからです。CSO推進機構にお願いしたことにより、県内にある他のCSOの拠点と結ぶ ことができるようになりました。県の嘱託の方は今まで一生懸命やってくださっていました が、それよりもさらに良いものが提供できるようになり、県民の方々にも喜んでいただけて います。 私は「何がなんでも小さくすれば良い」というのは、正しいのか疑問に思い始めています。 カスカスになっている感じがあるんです。誰が答えを出しても良いことは、コンピューター がやってくれます。今、行政がしなくてはいけないのは、人によって答えがちがうこと、と りわけ対人関係業務が増えてくると思います。ケアやサポートを必要とする人が増えてくる と、そこに関わる人の数を減らそうとするのは、「もうそろそろよかっちゃなか?」(も うそろそろよいのではないか?)という気持ちがしています。ひたすらに減らすことを目 的とするのは間違っていると思います。公務員の数が減るというのは、県民負担が増えると いうことと同義です。どこを減らせば良いのか、はっきりさせなければなりません。例えば 教育です。よく言われるのは、日本はOECD諸国のの中で教員数が少ないということです が、他国と比べると、とても国民負担率が低いという事実もあります。教育を充実させよう とすると、学校の先生を増やすということが必要ですが、そのためにはコストもかかります ので、それらを同時に議論しなければなりません。ある一部だけ取り出してもダメだと思い ます。 「小規模分散」というキーワードには共感できます。「合併とは、何だったんだ?」と私 自身思うこともあります。県は、これからは合併の推進策は出さないと宣言しています。 合併したいところはご自由にどうぞ、邪魔はしませんが、勧めることもしませんということ です。今、原口大臣が国会で出している法案の中に、共同機関の設立を自由にできるとい うのがあります。合併しなくても、合併したような効果を上げられるというものです。例え ば、国保を吉野ヶ里だけでは集めるのは大変なので、神埼と一緒にやろうというようなこと 特定非営利活動法人 地球市民の会 13/16 http://tpa.nk-i.net/
  • 14. 地球市民の会 第9回通常総会記念イベント   会員大討論会 ~NPOの未来を考える-今、地球市民の会は何ができるのか?~ です。市の国保課のようなものを共同でつくるということを可能にします。それにより、効 率を良くしたり、やりにくい仕事をやりやすくできるようにしたりなどの効果をあげること ができます。これは大変良いと思います。今までは、そういうことをしようとするには合併 するしかありませんでしたが、自分たちの名前、議員さん、首長さんを残しながら、効率化 できる仕組みができます。これからは、それらを活用できる知恵も必要となってくるでしょ う。 大串 今日は貴重な機会をいただきありがとうございました。皆さまと共有させていただきたいこと があります。それは、国民一人ひとりが自分自身で選択する日本、県、佐賀になっている 特定非営利活動法人 地球市民の会 14/16 http://tpa.nk-i.net/
  • 15. 地球市民の会 第9回通常総会記念イベント   会員大討論会 ~NPOの未来を考える-今、地球市民の会は何ができるのか?~ ということです。税を納め、あとは行政に任せればだいたいのことはなんとかなる、という時 代は終わりました。 今は、財政が非常に厳しい状況です。ギリシャの問題は、ギリシャだけではなく、スペインや ポルトガルを含んだヨーロッパ全体の問題となっています。いつ、日本の問題として顕在化す るかわかりません。そのときは、大変な状況になるでしょう。日本は今後、経済成長している のでしょうか?少子高齢化の中で、毎年の成長率は1%です。今年中に、中国に世界第2位の地 位が抜かれます。私達は、佐賀、日本を、未来の子どもたちに渡していけるものにできている のか、私たち自身が問い、厳しく関与・選択していかなければならないと思います。誰がやっ ても同じなのではなく、自分たちで「こうすべき、ああすべき、こうしたい、この人に担っ てほしい」と、声を上げて運動して、自分達で動かす時代になっています。 今日、参加されているNPO関係の方々は、問題意識が高いと思います。国や県が何をやって くれるかということよりも、自分達が何をできるかを考えようとする意識があります。この 意識を、佐賀県だけでなく、日本全国に広げていただきたいと思います。日本全国で、今、私 たちが何をすべきなのか、誰かに任せるのではなく、自分たち自身で動かす日本にならなけ ればなりません。そういうことを広めるリーダーシップの役割を、地球市民の会の皆様には果 たしていただきたいと思います。私自身もその想いを胸に据えながら活動していきます。どう か、皆さんと一緒に、私たちができることを日本全国に広めていきたいです。本日は良い機会 をいただき、ありがとうございました。 山下 今日の大討論会はいかがでしたでしょうか?(会場大拍手) 地球市民の会は今年から、ご参加いただいた皆さまにどれだけ満足いただけるかということも 事業の評価として大切にしていきたいと思っています。 今日は4名の出演者の皆さまに、熱い話をしていただきました。皆さん、ネクタイが頭に巻か れたような状態で話をしていただいたと思います。我々は同志ですので、お互い刺激しあって 日本づくりを助け合っていきたいと思います。 以上を持ちまして、大討論会をお開きとさせていただきます。ありがとうございました。 参考資料 「人間の持つべき文明2009」TERRAアピール “農”という思想を実現するために 【序文】  1992年、地球市民の会はリオデジャネイロで開催された「環境と開発に関する国連会議」(地球サミット)のNGO会 議に対しTERRAアピールとして『人間の持つべき文明』を提唱しました。  このアピールは次の2点において、全人類へのメッセージとして発信致しました。  まず、地球上に起きている様々な緊急課題、例えば地球環境問題、人間社会における心の荒廃、紛争やテロリズム、 貧困と貧富の格差の問題、健康被害の問題は、私たち人間が経済至上主義の文明を構築し、「より多く」「より便利に」 「より楽しく」を求め続けたことに原因があった、ということでした。  次いで、これらの問題を解決していくために、私たちは私たちの持つ文明の方向そのものを見直す必要があるという ことでした。その方向は相互依存関係の中ですべてのものに生かされていること、すべてのものにつながっていること を認識することにあります。これは循環型共生社会の基本的な考え方であり、今以上を求めない「足る」を知ることを 通し、私たちは、すべての人が生かされることへ感謝し、他の幸せを希求する精神を持つことこそ、私たちが目指すべ き文明の方向であると提言しました。  地球市民の会は25周年にあたり、17年前に発信したこのTERRAアピールを基本とし、今後の進むべき道として、「農」 という思想を大きな要とし、活動を進めていくことを宣言致します。  「農」は、従来の生活の生業としての「農業」のことではなく、農耕を基礎とする人間の根源的な思想であり、哲学 を示し、この地球上で持続可能な生き方を実践していくための礎と定義します。この「農」の思想には、「いのち」「 自然」「文化」「環境」「暮らし」「生き方」「教育」「食育」「地球」「地域」等のキーワードを包含します。 【本文】 1、「農」は循環共生と創造再生していく「自然」のサイクルそのものである。私たちは食糧の供給手段でもある「農」 に「自然」との共生手段を見出し、その偉大さに感謝し、畏敬するものである。 2、「農」は自然を耕し作り上げられた「文化」そのものである。私たちは地球上・歴史上に創造されてきたすべての 「文化」を、愛を持って受入れ、尊重するものである。 3、「農」は連綿とつながる地球上にある悠久の「いのち」そのものである。私たちは「いのち」が「いのち」によっ て支え、つながってきた相互の協働関係を認識し、「いのち」の尊厳を広く、深く伝えていくものである。  以上のことを地球市民の会は「地球市民運動」および「地球共感教育」を通して伝え、実践していくこと 特定非営利活動法人 地球市民の会 15/16 http://tpa.nk-i.net/