本研究では、音楽が得意な子ども、苦手な子どもに限らず「どのような子どもでも音楽による表現活動を楽しむことができる」ことを目指し、音と触れ合う表現活動について調査し、考察を行った。最終的に、マリー・シェーファーのサウンドスケープ思想を基盤としたサウンド・エデュケーションと、幼児の発達段階（主に記憶力）を関連づけ、各年齢に適した保育活動を提案するに至った。

1. 幼児期と音・音楽の関係性
～保育活動の実践について～
12102002 赤石愛華
12102041 原田結衣

2. 研究に先立って
保育現場において、子どもたちは朝や帰りの歌、季節
や行事の歌、手遊び、楽器合奏、お遊戯会、リトミッ
クなど、様々な場面で音楽に触れる機会がある
音に触れる、音に意識を向ける活動はあるか？
まず、音に触れる活動を行うことで、年齢や楽器演奏
の得手不得手に関係なく活動を楽しむことができ、そ
の流れで音楽に興味を持つことができるのでは？

3. サウンドスケープ思想ってなあに？
サウンドスケープ[soundscape]とは、 1970 年代
のカナダで R.マリー・シェーファーによって作
られた造語であり、「音の風景」を意味する
自分自身の身体（主に聴覚）を通じて、日々の
生活のなかで周囲の世界をどのように感じるの
か、それぞれの空間をどのように読み込み、そ
の環境をどのように捉えるのかに着目し、世界
中の音環境を捉え直すという考え方
鳥越けい子（1997）『サウンドスケープ その思想と実践』より

4. サウンド・エデュケーションってなあに？
○サウンドスケープ思想から生まれた音に関
する教育活動であり、サウンドスケープの
概念を実現するため の諸活動のひとつであ
る。聴覚の復権をめざしてシェーファー に
よって開発されたのが、サウンド・エデュ
ケーションという教育プログラムである
○聴き方を学ぶ100の課題集としてシェーファー
が『サウンド・エデュケーション』（1992）を出版
しており、ここで紹介されているエクササイズは
聴覚や聴覚的想像力に関する課題、音づくり
に関する課題、社会の音に関する課題の3つ
のカテゴリーに分かれている

5. リスニング・ウォークの実践
○2022 年 4 月 28 日木曜日の午前 9 時頃、特別研究時
間に青森中央短期大学の周りでリスニング・ウォー
クを行った
○7月22日には、青森公立大学国際芸術センター青森
（ACAC）に行き、リスニング・ウォークを行った
それぞれのリスニング・ウォーク後にどんな音を聴
いたかフィードバックを行った

6. リスニング・ウォークの活動を通して
○リスニング・ウォークを通して聴いた音を分類した
音の分類の仕方が違うということは、同じ環境にいても人に
よって聞き方や記憶の仕方が違う言うことができるのでは？
一緒に活動した人が聴いた音や、どう分類したか共有するこ
とで、新しい音や音の聴き方を発見することができる！
自然の音、人が
作り出す音、機
械音、その他に
分類したよ！
人間が作り出して
いる音、自然音、
高音、低音に分類
したよ！

7. 保育活動への応用について
聞こえてきた音を自分たちで真似をしてみるという
活動を取り入れる
→保育士がサポートし、活動内で生まれた面白いリ
ズムや音質をもとに音楽創作を行っていくことは
十分に可能
音を聴く活動から音楽創作・表現活動への発展
楽譜や西洋の音楽理論も必要ない＝楽器の演奏や歌
に苦手意識を持つ子どもや保育者も楽しんで行うこ
とができる！

8. 以上児の記憶力は？
〈3歳児〉
記憶力が育まれ、
集中力も上がり
絵本やアニメを
集中してみるこ
とができるよう
になる！
〈4歳児〉
短期記憶と長
期記憶が発達
しているが複
雑な情報や長
い情報を記憶
することはで
きない！
〈5歳児〉
記憶力はかなり
優れていて子ど
も自身に起こっ
たことを覚えて
いたり、聞いた
ことを思い出せ
るようになる！

9. 各年齢に合わせた保育活動
・3歳児 は合奏が難しいと考えるため、聞こえた音の中
から保育者が楽器を用いて演奏し、その音に合わせ
て体を動かす活動
・4、5 歳児では活動を通して聴いた音をもとに、楽器
や音の出るものを使って音を出してみて、その後合奏
・5歳児には「音日記」（次ページ参照）を取り入れる
ことができる
・聴いた音の中で、どの音に似ているか当ててもらう
→クイズ形式の活動は簡単なものであれば 3 歳児からも
参加できるのでは？

10. 音日記とは
音日記は、 『サウンド・エデュケーション』のなかで15番
目に出てくる課題である。
珍しいと思う音やその音についての自分の反応（びっ
くりした、初めは気づかなかったなど）、重要だと思
うことなどを綴るという課題である。この活動を通し
て、実践者は音に対する能動的、意識的な働きかけが
できるようになる。
保育活動内では、リスニング・ウォーク後に実践する
ことで、聴いた音を意識することができ、記憶の助け
になることが期待できる。

11. 結論
サウンド・エデュケーションを保育活動に取り
入れることで楽器を弾くことが困難な年齢、演
奏の得意不得意に関係なく音に触れる環境を作
ることができる
保育現場では様々な場面で「音」に触れるため、
活動の経験は有意義である
リスニング・ウォークや音日記以外にも保育活
動に応用できる活動、そのまま取り入れること
のできる活動があると思われるため、活動の発
展が期待できる
以上のことから、サウンド・エデュケーション
は保育活動との間に親和性がある