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LRGライブラリー・リソース・ガイド 第4号/2013年 夏号
発行/アカデミック・リソース・ガイド株式会社
Library Resource Guide
ISSN 2187-4115
特別寄稿 岡本真・鎌倉幸子・米良はるか
特集 嶋田綾子
図書館における資金調達
(ファンドレイジング)の未来
図書館100連発 2
LRG Library Resource Guide
ライブラリー・リソース・ガイド 第4号/2013年 夏号
発行/アカデミック・リソース・ガイド株式会社
特別寄稿 岡本真・鎌倉幸子・米良はるか
特集 嶋田綾子
図書館における資金調達
(ファンドレイジング)の未来
図書館100連発 2
2 ライブラリー・リソース・ガイド 2 0 1 3 年 夏号   巻 頭 言
いささか感慨深いのですが、『 ライブラリー・リソース・ガイド』第4号を皆
さまに届けることができました。感慨深いと申しますのも、お気づきの方もい
らっしゃるでしょうが、昨年、2012年11月に創刊した「 季刊誌」の本誌ですが、
本号でとにもかくにも第1期ともいうべき1年目を過ごすことができたからです。
さて、この1年間、本誌にはときおり、「 もう少し価格が手頃になれば」とい
う嘆きやご要望が寄せられています。そのお気持ちはわからなくはないのですが、
価格を引き下げる予定は当面ありません。と、同時に、手前みそながら、年間1
万円の購読料で、これだけクオリティの高い情報が手に入るのであれば、安い買
い物ではないでしょうか。本誌はこの価値観を共有いただける方々を主たる読者
と考えています。この意味をご理解いただければ幸いです。
さて、今4号は、第3号での特集「 図書館における資金調達( ファンドレイジ
ング)」を受けた特別寄稿と、創刊号で好評を博した特集「 図書館100連発」の
第2弾という、以下の組み合わせになっています。
  ● 特別寄稿「図書館における資金調達(ファンドレイジング)の未来」
  岡本真、鎌倉幸子、米良はるか
  ● 特集「図書館 100 連発 2」 
  嶋田綾子
本誌で初の試みとなる、3名による連名執筆の特別寄稿「 図書館における資金
調達( ファンドレイジング)の未来」では、第3号で特集した資金調達( ファン
巻頭言
活用できる図書館情報誌をめざして
3ラ イ ブ ラ リ ー ・リソース・ガイド 2013 年 夏号 巻頭言
ドレイジング)を掘り下げたものとなっています。第3号で紹介したような事例
から学ぶことも重要ですが、資金調達(ファンドレイジング)そのものを巡って、
考えを深めておくことも重要です。いうなれば、事例と理論の両方について、本
号と前号とを併せて読むことで、資金調達( ファンドレイジング)への理解を
深める一助としていただければと思います。
なお、2013年10月に開催される第15回図書館総合展では、第1回LRGフォーラ
ムと称して、「 これからの図書館の資金調達−寄付・寄贈からファンドレイジン
グへ」を開催します。特別寄稿でご執筆いただいた鎌倉さん、米良さんにもご登
壇いただきますので、読者会の気分でぜひお出かけください。
特集「 図書館100連発 2」は、図書館におけるよい事業や工夫の実践を事例で
紹介する試みの第2弾です。創刊号での特集は大きな反響を呼び、紹介した事例
を参考にして、同じ取り組みを始める図書館が現れるといったうれしい報告を聞
きました。しばしば言われるように、「学ぶ」ことは「真似る」ことに始まります。
本号の「 図書館100連発」第2弾にも、真似をしたくなる事例が多く含まれてい
るはずです。ぜひ、本誌をご活用ください。
壮大・壮麗な建物があることや、読み切れないほどの蔵書があることも大切で
すが、「 神は細部に宿る」という言葉があるように、日常の些細な一点にたゆま
ぬ努力と工夫があること、それが素晴らしい図書館の条件の一つであると信じて
います。
編集兼発行人:岡本真
責任編集者:嶋田綾子
資料提供の工夫 ………………………… 48
[File101]おすすめ絵本を、セットで貸出
[File102]ゴムバンドで束にして、マンガを貸出
[File103]美術館の展覧会と連携した展示
[File104]予約の多い人気本の閲覧コーナーを設置
[File105]イベント・お知らせチラシをファイルで提供
[File106]友好都市、その理由も図書館で
[File107]郷土雑誌のバックナンバーも開架で提供
[File108]新聞広告を曜日ごとに分類して提供
[File109]美術書コーナーを、美術館の入り口に
[File110]「図書館市民まつり」のアルバム化
[File111]被災地の広報誌を取り寄せて提供
[File112]医療書の難易度をシールで表示
[File113]雑誌も図書も、同じ書架で
[File114]地域広報誌をコーナーで展示
[File115]市議会の中継DVDを貸出
[File116]充実した「県内ゆかりの人」の書架
[File117]DAISY図書の必要性を、子どもにも
[File118]一般コーナーで点字新聞を展示
[File119]「職員おすすめ本」の価値、再発見
[File120]全国の観光情報を集めてファイリング
[File121]身近な図書館で知る、海の向こうの姉妹都市
[File122]ゆかりのある地域の郷土史も展示
[File123]自治体のプレスリリースを収集
[File124]大学出版会の出版物をまとめて展示
図書館PRの工夫 ………………………… 73
[File125]自館の活動をエントランスで展示
[File126]自館を紹介するお手製のポスターを展示
[File127]新館の基本計画を大々的に公開
[File128]他館の魅力も積極的に紹介
[File129]自分の図書館の100の魅力を1冊に
[File130]書架でレファレンスの利用をアピール
[File131]リクエストカードで予約機能をアピール
[File132]図書館の方針を常に明示する
[File133]図書館への寄付者を掲示する
[File134]行事予定表も、広報活動の一環に
[File135]借りれば借りるほど、お得な特典
巻 頭 言 活用できる図書館情報誌をめざして[岡本真]………………………………………… 2
特別寄稿 図書館における資金調達(ファンドレイジング)の未来
   [岡本真、鎌倉幸子、米良はるか]……………………………………………………………… 7
     図書館のあり方と変わる資金調達[岡本真] ……………………………………………… 8
     ファンドレイジング、実践の現場から ─図書館×広報×資金調達[鎌倉幸子]………… 20
     クラウドファンディングという選択肢[米良はるか] ………………………………………… 34
特  集 図書館100連発 2[嶋田綾子] …………………………………………………………… 47
LRG CONTENTS
Library Resource Guide
ライブラリー・リソース・ガイド 第4号/2013年 夏号
西ノ島町立中央公民館図書室(File160)
撮影:岡本真 撮影日:2013年5月14日
簡単・便利な工夫 ……………………… 143
[File191]貸出中の本のカバーをディスプレイ
[File192]ちょっとうれしい、滑らぬ先の「傘かけ」
[File193]ゴミになるレシート芯、アイデア次第で大変身
[File194]レターケースで地域のパンフレットを保存
[File195]ブックケースを利用したパンフレットの展示
[File196]封筒に入れてチラシを管理
[File197]100均のクリップでつくれる書架見出し
[File198]書架の切れ目、シンプルできれいに表現
[File199]100均グッズで、雑誌の書架を美しく
[File200]デジタルとアナログつなぐ本棚
地域連携の試み ………………………… 85
[File136]館内に本の注文票を設置
[File137]身近な場所を図書館に
[File138]自治体の政策を図書館がPR協力
[File139]文人ゆかりの地のこだわりを、書架にも
[File140]民家のガレージを一坪図書館に
[File141]ビブリオバトルをコミュニティづくりに生かす
[File142]読書にオープン&ソーシャルな同時性
[File143]市内の「学校だより」を掲示
[File144]貸出票を子どもたちのキャンバスに
[File145]地域商店との連携で利用向上をはかる
[File146]図書館カレンダーで、近隣レストランの割引
[File147]試験対策本・論文資料の再利用
[File148]子育て支援センターへ出張ライブラリー
利用環境の改善 ………………………… 99
[File149]伝えたい人に合わせた館内サイン
[File150]背のバーコードで、蔵書点検の負担を軽減
[File151]常用されない百科事典。書架に1冊、残りは書庫へ
[File152]ママにうれしい、チャイルドシート付きカート
[File153]休館日のガッカリを緩和する情報発信
[File154]子ども扱いしない分類サイン
[File155]禁止事項すらも楽しく発信する館内サイン
[File156]手軽にカーテンレールで授乳室
[File157]ブックポストの存在認知に、一手
[File158]使いやすい図書館は、手づくりの工夫から
[File159]プライベート空間がある図書館
[File160]地元の人による、場に適した書架
[File161]「みんなでつくる」が実感できる図書館づくり
[File162]若者と対話するための投稿箱を設置
[File163]図書館にもっと、デザインの力を
[File164]10代のキモチを生かした読書空間づくり
[File165]住宅地図のコピー問題、解決策を図書館で案内
[File166]バーコードリーダーで、面倒な入力を回避
[File167]ブックポスト前で、休館カレンダーを配布
[File168]うちわの貸出でホスピタリティも演出
資料展示の工夫 ………………………… 120
[File169]地図やアートを生かし、知的空間を創造
[File170]児童書の選び方もわかる児童書コーナー
[File171]ライフスタイルに合わせて本を紹介
[File172]自治体を越えた連携から生まれるサービス
[File173]その日の記念日をテーマにした展示
[File174]エントランスでデジタル資料を展示
[File175]公開予定の映画の原作本を展示
[File176]地域の新聞記事を掲示する
[File177]気になる新聞記事の関連資料を展示
[File178]貸出中・閲覧中の本も存在アピール
[File179]見やすく、わかりやすく、大活字本の掲示
[File180]スリップで新着本のお知らせ
[File181]ひと目でわかる、文学賞
[File182]「ただいま発注中」を書評付きで紹介
[File183]新聞書評、「地元の本」にもっと光を
[File184]40年間のベストセラー本を大集合
[File185]データベースの価値を活用法とともにアピール
[File186]「自己紹介」から始めるデータベース
[File187]仕事との出会いを図書館で
[File188]読書会で読んだ本を展示
[File189]ブックスタートの存在をカウンター前で周知
[File190]書評と掲載紙を面陳で紹介
アカデミック・リソース・ガイド株式会社
業務実績定期報告 ……………………………… 154
定期購読・バックナンバーのご案内 ……………… 156
次号予告 ……………………………………… 158
図
未来
書館 おける
の
(ファンドレイジング)
に
資 調達金
岡本真・鎌倉幸子・米良はるか
8 図書館における資金調達(ファン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来  ラ イ ブ ラ リ ー ・ リソース・ガイド 2013 年 夏号
今、「 ファンドレイジング」という言葉が普及しつつある。ファンドレイジン
グとは、日本語に言い換えると「 資金調達」。いってみれば、企業が株式を公開
してお金を集めるのもファンドレイジングである。
アーティストらが「 READYFOR?」などのクラウドファンディングサイトで作
品制作の資金を集めるほか、震災復興支援をはじめとする社会貢献からデザイン
家電、ハイテク雑貨などのプロダクト制作まで、さまざまなプロジェクトが従来
の「 寄付」とは違った形で資金調達を行っており、ファンドレイジングによっ
てビジネスモデルが大きく転換を迎えている業界も少なくない。
「 お金を集める」ということに図書館において着目したとき、資金調達よりも
寄付のほうに馴染みがある。個人からの膨大なコレクションによって成り立って
きた図書館は少なくない。図書館は寄付・寄贈の文化に支えられてきた土壌があ
るといえるだろう。 
しかしファンドレイジングという概念の普及は、図書館にとっても対岸の出来
事ではない。むしろ、これからは効果的なファンドレイジングができる図書館こ
そが、市民により多く利用され、価値の高い図書館になっていく、そんな時代が
到来しているといっても過言ではないのである。
寄付=ファンドレイジングではない
図書館のあり方と
変わる資金調達
岡本真(おかもと・まこと)
1973年生まれ。アカデミック・リソース・ガイド株式会社代表取締役/プロデューサー、
READYFOR?を運営するオーマ株式会社代表取締役を兼務するほか、公益社団法人シャ
ンティ国際ボランティア会理事などを務める。
著作に『ブックビジネス2.0』(実業之日本社、2010年、共編著)、『ウェブでの<伝わる>
文章の書き方』(講談社、2012年)などがある。
提供:高久雅生
9図書館における資金 調 達 ( フ ァ ン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来   ラ イ ブラリー・リソース・ガイド 2013 年 夏号
ここで、「 ファンドレイジングと寄付は、どう違うのか」を整理しておきたい。
寄付は、いってみれば「誰かが団体や特定の人に対して、自分のお金をあげる」
ことである。特に「 義援金」という言葉が寄付の顕著な例であるように、社会
的な使命感から寄付をするという行為が長くあった。街頭募金や『 24時間テレ
ビ』などは、その代表例だ。
一方で、ファンドレイジングは、「 寄付を含めた、より大きな資金調達の考え
方」を指している。今までの図書館の考え方では、資産の集め方は寄付に限られ
ていた。しかしこれからは、寄付を資金調達の一要素と捉えていくこと、つまり
「 寄付も含めたファンドレイジングに、図書館がどう向き合うのか?」という
ことが、大きな課題になってきているのである。
そうした世の中の流れを象徴する動きとして、2009年の2月18日に設立された
「 日本ファンドレイジング協会」の存在がある。ソーシャルベンチャー・パー
トナーズ東京の代表である井上英之氏らが発起人となって設立されたこの協会の
設立趣旨は「わが国の寄付文化の革新を実現する」ということだった。
同協会は主にファンドレイジングの啓発活動を行っている。たとえば『 寄付
白書』という、ファンドレイジングや寄付に関する白書を発行しており、日本に
おけるファンドレイジングの現状を知るうえでの基本資料になっている。さらに
毎年「 ファンドレイジング日本」というカンファレンスを行っており、すでに
開催が決定している2014年で第5回を数える。カンファレンスでは様々な事例を
紹介しており、最近であればクラウドファンディングのような新しいファンドレ
イジングの手法を紹介したり、あるいは寄付税制に関する制度改正を伝えたりし
ており、非常に賑わっているイベントだ。
さらに、ファンドレイジングを行う専門家のことを「 ファンドレイザー」と
呼ぶが、基本的には無資格の肩書きなので、日本ファンドレイジング協会は彼
ら・彼女らをプロフェッショナルとして認定する制度も用意し、ファンドレイ
ザーに対してより高い社会性を付与する試みも行っている。
世界はもちろん、日本においても資金調達の大きなパラダイムシフトが起こっ
てきているのだ。図書館にとっても、この時流を反映した運営が模索されて然る
べきである。
10 図書館における資金調達(ファン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来  ラ イ ブ ラ リ ー ・ リソース・ガイド 2013 年 夏号
ではそもそも、「 なぜファンドレイジングが重要なのか」というと、図書館の
運営費・経営費が削減傾向にあり、今後も右肩下がりであることが予測されるた
め、新しいモデルで資金調達を行わないと図書館運営が持続可能なモデルに転じ
にくい、ということに尽きる。
国会図書館のような、完全に税金で運営されている国立図書館を別にすれば、
大学図書館や各自治体の公共図書館、学校図書館や専門図書館のどれもが資金難
にあえいでいる部分がある。東京都23区のように「 地方交付税を受け取らない
ような恵まれた自治体」を除けば、日本中のほとんどの自治体は財源難に苦しん
でいるといえるだろう。
周知のとおり日本は「 人口減少社会」であり、税収がこれ以上あがるという
ことは基本的には考えにくい。そうなると自治体では、公共事業全般のコスト
カットが求められる。そのなかでターゲットに挙がりやすいのは、やはり文化事
業だ。これは図書館だけでなく、博物館や美術館なども含まれる。それに追い打
ちをかけるように、市民レベルでもいわゆる狭義の箱物行政に対する批判もあり
「 本当に必要なのだろうか?」という認識も広まってきている。大きな流れと
して「 公共事業としての公共図書館」の運営費は、下がっていく一方だといえ
るだろう。
各図書館がそれぞれに資金調達を独自に考えなければ、この暗い未来の影響を
真正面から受けてしまうことになるのである。
ここで重要になってくるのが、ファンドレイジングだ。前述したように、図
書館はいわゆる「 寄付」文化によって運営されてきた側面がある。一般的には、
公共機関・自治体は簡単に寄付を受け取れないものだが、前述のとおり、図書館
は、書籍などの現物の寄贈を積極的に受けてきた歴史がある。少なくとも戦前ま
では「 地域の人々が経営している図書館」が全国に多くあったのだ。であれば、
実は図書館は、ファンドレイジングと相性がよいはずなのだ。
しかし、図書館法ができてから約50∼60年の間に、公共図書館に関しては「税
金で運営するもの」という認識が広まりすぎた結果、ファンドレイジングへの意
識が薄れてしまった。せいぜい「本を現物で受け取る」といったものだけになっ
てしまったのだ。
その過程にはバブル期のようなものもあり、箱物行政を推進した時代もあった。
なぜファンドレイジングが重要なのか
11図書館における資金 調 達 ( フ ァ ン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来   ラ イ ブラリー・リソース・ガイド 2013 年 夏号
それ自体が全て悪かったわけではないが、そのなかで寄付文化から生まれた図書
館の出自も忘れ去られていくこととなった。
人口増に比例する高度経済成長が見込めない今、どうやって民間にある富を公
共的な方面に差し向けさせるかが課題になってきている。そんな今こそ、ファン
ドレイジングの考え方が重要なのである。
また図書館の側からも、「 公共の図書館は、公共サービス・行政サービスなの
だから全て税金でまかなうという考えが本当に正しいのか」ということを、問い
かけていったほうがいいだろう。というのは、図書館の成り立ちを考えると「公
共サービスというのは、必ずしも行政サービスとイコールではない」はずだから
である。
たとえば、商業施設の中に入っている図書館などでは、図書館の共用廊下など
の掃除について、行政サービスとして税金を使うよりも、地域の人々や利用者の
ちょっとした助け合いで維持管理する方向性で考えることができるかどうかが重
要だ。そうやって一人ひとりが担保できる公共性をきちんと実現していけば、結
果として行政のトータルコストは下がる。そうやって図書館における経営費・運
営費の問題も考えてみる余地があるのではないだろうか。
もちろん必要不可欠な人件費や巨大な設備投資費は、税金でまかなうしかない
という部分は確実にあるが、それでもせめて全体の10分の1、欲をいえば3分
の1くらいは自己調達する気持ちが大切だろう。それぞれの環境に応じたいろん
な資金調達の方法を考え、その調達先は、地域の人々、あるいはその地域に対し
て愛着を持つ人々から、広く薄く、または一発大口のものも視野にいれていいだ
ろう。こうした考え方は、これからの政治のあり方にも適しているはずだ。つま
り最近議論されている「 オープンガバメント」や「 ガバメント2.0」といわれて
いる考え方への適合性である。
伝統的な政府の話をすると、「 大きな政府か、小さな政府か」という二元論が
ある。かつてのイギリスのように巨大で「 大きな政府」を持つ福祉国家は、ゆ
りかごから墓場まで全てを行政が担い、税金で経営するという考えにのっとって
いた。しかし、これでは経済的に破綻するということが見えてきてしまった。で
は、「 小さな政府」でいいのかというと、それはそれで民間に委ねる負荷が大き
市民の参画を促す
12 図書館における資金調達(ファン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来  ラ イ ブ ラ リ ー ・ リソース・ガイド 2013 年 夏号
くなりすぎる。その顕著な例がアメリカである。アメリカは、社会保障の面から
見れば「 失業したら死ぬかもしれない」という状況であり、あれだけの先進国
としては信じがたい状況に陥っている。「 大きな政府」と「 小さな政府」の中道
を行くというのが、おそらく今の「 オープンガバメント」や「 ガバメント2.0」
の志向する未来だと思われる。そのひとつの重要な要素が、市民一人ひとりが担
保できる公共性をきちんと実現し、トータルコストを下げていくように働きかけ
ることなのである。
たとえば道路が陥没していたら、その情報を市民に広く共有して「 一時的な
埋め戻しは、市民のできる人がやる」ということだ。その道は、確かに国道や県
道かもしれないが、「生活者の道」でもある。できる人が最低限の復旧作業をして、
その後に税金で直すようにすれば、市民によって当面の機能回復が図れることに
なる。
しかし現実は、道路が破損したら国が直すまで待っている状態だ。図書館も同
様であり「 公共施設なんだから」と、なんでもお任せ、与えてもらって当たり
前という認識を持っている市民は多い。このマインドセットから抜け出すために
は、図書館の側からも「 全てお任せにされても困ります。『 民間で』というより
も『 市民として』担える部分は担ってください」というお願いも発信していく
べきだと思われる。
繰り返しになるが、図書館は歴史的に見れば、常に市民との支え合いのなかに
あるものだった。他の行政サービスに比べたら、図書館は市民が参画する余地が
大きいし、実際にしているところがたくさんある。実はもともと「ある種のオー
プンガバメント」が一定の範囲において成り立ってきたのが図書館なのではない
だろうか。
そんなバックグラウンドを意識したうえで、図書館はより積極的なファンドレ
イジングに乗り出していく必要性が、今、あるのではないかと思う。ここでいう
ファンドレイジングは、「 ヒト・モノ・カネ」全てについて、税金という財源の
もとにまかなうのではなく、「 市民の政治参画」や「 行政参画」という形での支
援を求める必要性があるのではないかということである。
もうひとつ重要な概念として「 アドボカシー」という考え方がある。日本語
アドボカシーの重要性
13図書館における資金 調 達 ( フ ァ ン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来   ラ イ ブラリー・リソース・ガイド 2013 年 夏号
にしにくい単語だが、「政策提言」の意味で使われる「アドボカシー」には、「擁
護」や「援護」という意味がある。
図書館におけるアドボカシーというのは「 図書館はそもそも存在して当然の
ものであり、万が一、失われようとしているのであれば、必ず守らなくてはいけ
ない」と、常に世の中に対して発信していくことに相当する。つまりは図書館の
存在意義を肯定する「擁護」であり「援護」を自主的に行うことを指す。
このアドボカシーが、そもそもファンドレイジングの前提として、非常に重要
なのである。ちょっと過激ではあるが、日本にある1800の自治体のなかで、ま
だ図書館がない自治体があるということ自体が「 そもそもおかしい」といった
ふうに、むしろ踏み込んでしまうぐらいがちょうどよい。なぜならば、国民には
憲法で「 知る権利」が保障されているからである。知りたいことは、誰もが知
るべきである。これは日本が戦後、現憲法をつくるうえで非常に重要視した部分
である。
この情報化社会で知りたいことが知れない状況など生まれない、と思われがち
だが「 生まれてこのかた、本を買ったことがない」という家庭もたくさんある。
そうしたときに、全ての国民に対して最低限の「 知る権利」を保障するという
意味では、どの地域にも必ず、子どもやお年寄りの足でもアクセスできる場所に
図書館があり、そこで知りたいことを知ることができるというのは重要なことだ。
憲法あるいはその前提にある人権という考えのなかに位置づけて考えていくと、
図書館というものは、そもそもあってしかるべき存在なのだ。
こうしたアドボカシーを明確化しておかないと、いざファンドレイジングを
行おうといったときに市民の共感が得にくい。「 図書館が勝手にやってることで
しょう?」となってしまう。「いや、『勝手にやっていること』ではなく、私たちは、
憲法にも裏付けられた『私たち国民の権利を守るため』にやっているんです」と、
常に伝えておけば、市民も図書館の社会的機能を認知しやすく、支援も得やすく
なるのである。 
図書館は日常から「 万人に対して最低限の情報アクセスを保障する」という
魅力を、きちんと社会的機能として伝えているだろうか? ファンドレイジング
ではその魅力が認知されたうえで、それぞれの図書館が持っているユニークさ、
貴重性、有用性をアピールしていく必要があるのである。
14 図書館における資金調達(ファン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来  ラ イ ブ ラ リ ー ・ リソース・ガイド 2013 年 夏号
図書館が「これからファンドレイジングに力を入れていこう」となったときに、
いわゆる「 金銭を寄付で受け取る」こと、「 蔵書を寄贈で受け取る」ことだけに
限定して考える必要はない。もっと多角的に考える必要があり、そのためには図
書館の内と外両方の観点を持つ必要がある。
まず「 内」の観点からお話すると、公共図書館に関していえば、基本的には
自治体から運営資金が出ている。自治体が予算を組むなかで「 図書館の運営経
費にこれだけ使おう」と決めていくわけだ。
従ってまず必要なのは、きちんと「 財源ベースを増やす」こと、あるいはこ
れ以上削減させないこと。そのためには、設置母体や所属組織に対して「 なぜ
我々が必要なのか」ということを、粘り強く言い続ける。前述した「 アドボカ
シー」が必須だ。たとえば、千葉県浦安市の図書館の元館長・常世田良氏は「図
書館は、市長や議員などの『 行政の上級職』に対してとにかくレポートを行う
べきだ」と言っている。「 図書館でこんなことをやっています」「 市民からこんな
レスポンスをいただいている」、「 利用者からこんな要望をいただいた」という
ことをとにかくレポートする。ビジネス用語でいえば「ブリーフィング」である。
実際のところ、本庁の職員は図書館のことを全然知らないものだ。その理由は、
図書館の職員が本庁の職員に対して対話の場を設けていないことに起因すること
がほとんどである。そもそも本庁が図書館に関心を持ってくれない場合もあるが、
そんな場合もとにかく努力して「関心を持たせる」しかない。
たとえば、「 実は年間利用者が100万人を超えています」「 図書館を使ってこう
いう新しいビジネスが生まれました」「非常に優秀な子どもたちが育っています」
なんて言われたら、本庁の企画部署や財政課の人の意識は確実に変わる。そして
「 行政として予算のかけ甲斐がある分野」に位置づけられることは間違いない。
図書館は、大体年に1回『 要覧』で1年間の活動実績をまとめているが、必ず
しも年1回である必要はない。毎月、来館者数に関わらず記者会見を行ったり、
行政の主要な職員を訪ねたりといった、それぞれに取り組みやすい工夫で、月々
のレポートを本庁へ出せば状況は確実に好転するだろう。そうやって本来あるべ
き財源をきちんと獲得しようとすることが、まず大切だ。
また、図書館が本庁にとって有用な存在であるということを、常日頃からア
ピールする努力も大切だ。たとえばとある市で「 市の基本計画をつくりましょ
ファンドレイジングは内と外の観点から
15図書館における資金 調 達 ( フ ァ ン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来   ラ イ ブラリー・リソース・ガイド 2013 年 夏号
う」というのが大きな議題となっているとする。そしてその市のホットイシュー
は「 市役所の移転問題」だとしよう。今の市役所は建物の年数と強度から、市
役所として適切とはいえないため、移転させようという話である。そういったこ
とが市の中枢部で議論されているとき、図書館はただ見ているだけではいけない。
「他の自治体では『市役所を移転する』ときに、どんなことが起きていたのか?」
というのは、図書館の資料を使えばわかるはずなのだから、調べて積極的に情報
提供をするのである。
そうすれば、本庁の側からも「 図書館は役に立つ」と認識が変わる。他の自
治体で行った市役所移転で住民からどんな反対が起きたのかが書かれた新聞記事
をプリントして手渡すだけでも、図書館に対する本庁の評価は高まるに違いない。
これは大学図書館も同様だ。大学全体でカリキュラム改訂をしようというときに、
他の大学の成功事例、あるいは失敗事例のレポートを調べて手渡せば、図書館の
評価は高くなるのだ。
アドボカシーをすることと同時に、実際に役に立つという「 貢献を形にして
見せる」ことが、ファンドレイジングの基本である。それこそを、内部でやらな
くてはいけない。行政を含めた内部の人間を説得できない限り、外の人である市
民を説得することはできないのだ。こうした「内に対するファンドレイジング」
がまず大切だ。
たとえば中央官庁が行っているような補助金や助成金を、図書館が取りにいく
こともそうである。図書館だけでは申請できないケースも多いので、図書館側
でそういった情報は察知しつつ、本庁側に「 こういう補助金が執行されるので、
市として取りにいって、それを図書館に配分しましょう」という提言をするべき
である。そうした話をする時も、常日頃からのアピールがものをいう。図書館の
職員は、市の職員の重要なパートナーである、という認識を持ってもらうことが
まず必要だ。
それらをベースにしたうえで、ようやく「 外」に対するファンドレイジング
が成り立つ。外に対するファンドレイジングには、「狭く、深く」か「広く、浅く」
集めるかという方法に大別され、どちらを取るかはケースバイケースになる。た
だ、多くの場合「 狭く、深く」というのは、よほど図書館の存在が特殊で、そ
こにスポンサーシップを持ってくれるような特殊な思い入れが生まれるケースに
限定されるため、一般的には「広く、浅く」だと思っておいて間違いないだろう。
そうした時、まず考えなくてはいけないのは――これは専門図書館・企業内図
16 図書館における資金調達(ファン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来  ラ イ ブ ラ リ ー ・ リソース・ガイド 2013 年 夏号
書館の場合はやや難しいところもあるが――自分の図書館がどれだけの範囲の
人々に、その恩恵を与え得るか、である。
たとえば横浜市の図書館がファンドレイジングをしようとしたときに、「 横浜
市民にお願いしよう、助けてもらおう」という考えを持つ必要はない。横浜市民
の協力を求めるのは大前提ではあるが、広く神奈川県民、あるいは日本中の人・
世界中の人を視野に入れ、「 横浜というキーワードにひっかかる人」全てから支
援を集める意識を持つことが大切だ。
たとえば、都心や地方で働いている横浜出身者も対象になるだろうし、その人
は「 子どものころ、あの図書館にお世話になった」という特別な思いを持って
いるかもしれない。あるいは、自分自身は横浜に縁もゆかりもないけれど「 何
代前かの先祖が、横浜出身でした」とか、「 祖父母が横浜に住んでいる」という
人もいる。そうした様々な地域と地域を結ぶ「ゆかりの線」は絶対にあるはずだ。
常に最大範囲で集めることを念頭に置くべきなのだろう。
こうした考えに立って成功しているケースに、「 ふるさと納税制度」がある。
佐賀県や佐賀市、あるいは和歌山県などはふるさと納税制度によって、図書館に
かなりの資金を集めることに成功している。こうした事例にも学びながら、全方
位的に支援を求めていこうとする考え方は、非常に重要になってくるに違いない。
前述したとおり、「 外に対するファンドレイジング」の基本は「 広く、薄く」
である。しかし、READYFOR?のようなクラウドファンディングサイトもそうだが、
ファンドレイジングは必ずしも「ヒト・モノ・カネを調達するためだけにやる」
わけではなく、行うこと自体がアドボカシーになるという特性があることを忘れ
てはいけない。 
従ってREADYFOR?では、仮にプロジェクトが成立しなくても、「 プロジェクト
を立てたこと」自体で大きく知名度を上げて、支持者を獲得するということが実
際に起こる。「 私達はこのようなミッションを持っており、実現したいことがあ
る。そのためにはこれだけの資金・モノが必要です」ということを世の中に知ら
しめることで図書館の社会的機能の認知を促し、人々のマインドを「 応援する
べきかもしれない」とか、「応援できないにしても、意識のなかで考えておこう」
といった方向に変えることができる。
ファンドレイジングは日常である
17図書館における資金 調 達 ( フ ァ ン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来   ラ イ ブラリー・リソース・ガイド 2013 年 夏号
同様に金額目標についても、達成できたかどうかだけに一喜一憂するべきでは
ない。さらにいえば、金額を達成できているところは、共感をたくさん集めてい
るから達成できたことを常に認識する必要がある。なぜなら、短期的に金額目標
を達成できたとしても、それでは継続できない。来年も再来年も同じ支援を獲得
しなければならないのだ。あるいは短期的な支援で十分な場合も、またいつ同じ
短期的支援が必要になるか分からない点では、「 1回こっきり」だけでは意味が
ない。
そうした持続可能な支援を獲得するためには、「 なぜ自分たちがこの活動を
やっているのか」ということを長いスパンで発信し、アピールし続けなければな
らない。いってみれば「 ファンドレイジングは日常である」という感覚を持っ
て望まなければ、持続可能なファンドレイジングにならないのである。
「 そんな手間がかかることは無理だ」と思ってしまうものだが、本当にファン
ドレイジングをしたいのであれば「 なんだってできる」という前提に立ったほ
うがいい場合が多い。これは全てのことにいえるが、人は得てして「 いや、そ
れはできない」と言いがちなものだ。しかし、「 できない理由をあれこれ言って
『 できない証明』をするよりは『 できる証明』をしたほうが早い」という言葉
がある。これは新幹線を開発した技術者・島秀雄氏の言葉である。
大抵のことはできる、できる方法は必ずあると思って取り組むことがなにより
も大切なことである。感情論と言われるかもしれないが、結果的にファンドレイ
ジングは、支援者の感情にうったえかけることが不可欠だ。それゆえ支援を求め
る側も、ある意味、感情的に動かなければ始まらないのである。
たとえば、「 図書館に募金箱を置いて寄付を集める」とする。しかし、それを
実行しようとすると、「 それは雑収入になってしまうから、図書館の経営資金に
は充てられない」という物言いがついて頓挫する、ということになりがちだ。し
かし、それは本当にそうなのだろうか? 条例を改正すればなんとかならないだ
ろうか? そこで「 条例改正なんて重い話は……」という方向にはいかず、と
にかく試みてみることで、あっさり解決してしまったりするものだ。
仮に条例改正ができないとしても、募金で集まった分を雑収入として全体予算
に組み込むと同時に、財政部門に「 集まった分は翌年度の予算で必ず割り増し
にする」という内部的なルールをつくればいいのである。これは民間の会社でも
普通に行われていることで、全体の売り上げに対して算入するけれど、よく稼い
だ部門に対しては、翌年はより大きな予算をつけるようにするわけだ。これは企
18 図書館における資金調達(ファン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来  ラ イ ブ ラ リ ー ・ リソース・ガイド 2013 年 夏号
業活動としては当たり前のように行われている投資行為である。それが行政で成
り立たないはずがない。
だから、ファンドレイジングにおいてなにかアイデアがあったとき、とにかく
できる方向について考えてみること。それ自体がファンドレイジングであり、ア
ドボカシーにもなるということだ。
「 できないと言わない」というマインドセットは極めて重要である。とにかく
できる理由や、できる方法を編み出すようにするのである。それにはマインドも
大切だし、やはりそのための手法・ノウハウを身に付けなければいけない。しか
し、それこそ図書館の特権を使って調べればいい。図書館はすぐに調べられると
いうことが、なによりの長所なのだ。
必ずよい方法は見つかるものであるし、どこかの自治体がうまいやりかたを
持っているものだ。行政一般職と図書館専門職の大きな差はおそらくそこにある。
行政職員は、行政の様々な手法についてとにかく詳しい。図書館の専門職員は、
図書館のことについては詳しいが、行政の様々な手法について詳しい人が案外少
ない。これによってせっかくのチャンスを逃してしまうことが往々にしてある。
一番効果があるのは先程の「 内に対するファンドレイジング」によって、行
政の内側の人と信頼関係をつくっていけば、詳しい人に必ず出会うだろうし、そ
の人に教えてもらえばよい。あるいは、行政の一般職が読んでいる文献をきちん
と読んで勉強することも手助けになるだろう。そうして、内側の駆け引きに長け
ていくことで、とにかくできる理由や、できる方法を編み出せるようにもなるは
ずだ。
また、ファンドレイジングには適切なリターンも欠かせない。これはクラウド
ファンディングの場合に顕著だが、ただ「 お金を出してください」というだけ
では、継続性に乏しい。共感して支援してくれている人々との間に、継続的なコ
ミュニケーションのチャネルをつくっておけば、支援も継続するというものだ 
たとえば「お礼状を出す」というのもすごく重要だ。公益社団法人シャンティ
国際ボランティア会の鎌倉幸子氏はファンドレイザーとして広く知られる人物だ
が、シャンティでは寄付を受けたら、寄付をした人に領収書を送るときに、必ず
一筆の言葉を添えられている。
支援者をつなぎ、支援を継続させる「心」
19図書館における資金 調 達 ( フ ァ ン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来   ラ イ ブラリー・リソース・ガイド 2013 年 夏号
その一筆の内容にも、いろいろなパターンがある。書く人によってひとつずつ
違うのだ。「 私たちはあなたに感謝しています」ということを、単なる領収書を
一枚送る時にも、関係者の一人ひとりが直筆で一筆を添える。これだけで、支援
者の心にもう一度感動を呼ぶことができるのだ。こうした姿勢が、来年の支援に
もつながる関係を維持してゆくことは明白だ。
図書館には、どんな「 感謝の表し方」があるのか。ここはもっとデザインさ
れてもいい部分だと感じる。たとえば寄付をすれば「 この部分は○○様のおか
げで整備されました」と小さな、真鍮製のプレートが本棚の一角に貼られたらど
うだろう? 支援者はそこに行くたびに、自分の支援の形を見る事ができ、その
真鍮が古びていく様子に、図書館そのものの存在感をも感じることができる。あ
るいは寄付金によって購入した本の裏表紙に「 この本は○○さんの寄付によっ
て購入できました」というのがあればうれしいものだ。
ひと手間ではあるが、そのひと手間をかけることが、支援者をつなぎ、支援を
継続させるのだ。
支援は心。その心に応えるのもまた、心なのである。
20 図書館における資金調達(ファン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来  ラ イ ブ ラ リ ー ・ リソース・ガイド 2013 年 夏号
シャンティ国際ボランティア会( 以下、シャンティ)は、1981年に内戦の戦
火を逃れ隣国・タイに逃れたカンボジア難民を支援する活動を行うために設立さ
れた国際協力NGOである。難民キャンプでは衣食住の支援が必要とされていた
のは事実だが、悲惨な状況を目のあたりにし、命からがら難民キャンプにたどり
着いた子どもたちが表情なくうなだれている姿を見て「 子どもたちが笑顔を取
り戻すためになにができるか」を考え、スタートしたのが図書館活動だ。難民
キャンプの中での図書館の設置・運営、焼け残った図書の復刻、読み聞かせや伝
統舞踊教室など子どもたちが参加できる活動の提供を行ってきた。
現在では、カンボジア、ラオス、ミャンマー( ビルマ)に難民キャンプ、ア
フガニスタン、タイに現地事務所を置き、図書館事業や学校建設事業など教育・
文化支援の活動を行っている。また2011年3月11日に起きた東日本大震災後、宮
城県気仙沼市でまちづくりの活動を、岩手県陸前高田市、大船渡市、大槌町、山
田町、宮城県山元町、福島県南相馬市で「走れ東北!移動図書館プロジェクト」
を行っている。
2012年度の年次報告書で示している経常収益は6億2546万7036円。シャンティ
は会員制度を取っているが、会費からの収入が4.4%、事業収益8.7%、補助金
20.5%、雑収益0.5%で、個人・団体からの寄付は65.9%となっている。助成金・
補助金は一度とれば大きな額が入ってくるが、単年度決算のものが多い。また
ファンドレイジング、実践の現場から
   ─図書館×広報×資金調達
1999年3月、SVAに入職。同年4月より、カンボジアへ赴任し、図書館事業を担当。
2011年1月より広報課長。
東日本大震災発生後、岩手県、宮城県、福島県で「走れ東北!移動図書館プロジェクト」
を立ち上げる。
Facebook:https://www.facebook.com/kamakura.sachiko
Twitter:https://twitter.com/1192_sachiko E-mail:pr@sva.or.jp
鎌倉幸子(かまくら・さちこ)
公益社団法人シャンティ国際ボランティア会(SVA)広報課長兼東日本大震災図書館事
業アドバイザー
21図書館における資金 調 達 ( フ ァ ン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来   ラ イ ブラリー・リソース・ガイド 2013 年 夏号
助成金を出している先の方針が変われば100が0になる可能性もある。そのため
に、シャンティでは助成金に頼る割合を3割以下に収めるようにしている。ゆえ
に、個人、団体、企業の方々にどのように応援をいただけるかを常に考えながら、
寄付や寄贈の呼びかけを行っている。
資金調達は、活動のための資金を集める行為と定義づけられている。そのため
の手段としてチラシの作成、ホームページの充実、ソーシャルメディアの活用な
ど「 方法」に注目されがちである。私も近年、ブログやFacebookなどソーシャ
ルメディアについて講演を頼まれることが増えてきたが、その前に考えなければ
いけないことがある。それは団体が行っている活動が、社会のどのような課題を
解決するのかをクリアにすること。それをもとに、団体としてなにを目指してい
るのかを明確化することである。
また広報としての立場で常に意識をしているのは「 団体のブランド」をどう
維持し、生かしながら資金調達のメニューを考えるかという点である。ブランド
というと高級ブランドをイメージして、ハードルが高いと感じてしまうかもしれ
ないが、今までやってきたことを振り返り、「 自分たちを改めて知る」ことで答
えが見つかる場合が多い。
経営課題の把握のためにSWOT分析を用いて、自分たちの強み( S=Strength)、
弱み(W=Weakness)、機会(O=Opportunity)、脅威(T=Threat)を認識する
作業をスタッフ全員で行っている。弱みを克服し、脅威を避ける議論も経営的な
面では大切である。私が資金調達メニューをつくる際に注目するのは、団体の強
みと機会を生かすことである。シャンティの場合、
強みは「 海外も含めて行ってきた図書館事業とい
う特徴的な活動があること」、「 おはなしに力を入
れていること」などである。また、団体の創設者が
僧侶だったことから寺院とのつながりがあることも
強みだと認識している。機会は「 社会貢献への関
心の高まり」などがあげられるが、資金調達の活動
を通じて「 図書館」や「 本」に関した機会を発見
することもある。それは後ほど述べる。
資金調達の前に
22 図書館における資金調達(ファン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来  ラ イ ブ ラ リ ー ・ リソース・ガイド 2013 年 夏号
□図書館は地域のどのような課題を解決できるか。
□図書館としてなにを目指しているのか。
□自分たちが過去に行ってきた事業は?
□自分たちの図書館の強み、機会は?
「 お金の話はするのが苦手」と思っていらっしゃる方が大半ではないだろうか。
世界中の資金調達の担当たちは「ファンドレイジング(資金調達)の本質は『フ
レンド( 友達)レイジング』にある」と語る。金銭的なものだけではなく、寄
贈やボランティアとして参加してもらうことを通じて、いかに社会の問題解決の
ための友達を増やしていくかが本質の部分である。
シャンティは図書館事業への支援を呼び掛けているが、支援者は金銭的な支援
を行う前に「 なぜ図書館が必要か」「 事業をすると子どもたちの未来は、どう変
わるのか」を考えてから行動する。寄付をしてくれた時点で、「 図書館」の存在
意義を考え、その場所を一緒に支えたいという気持ちを起こしていただくことで、
「 図書館振興」の強い味方になってくれているのである。図書館は孤独な存在
ではなく、資金調達を通じて友達や味方を増やすことができる。
寄付しない一番の大きな理由は「 お願いされなかったから」である。まずは
尋ねることが第一歩となる。そのために私が考慮しているのは、団体の使命や事
業を「共感する」「応援したくなる」メッセージ化をする作業である。
国際協力の業界は意味不明な用語を使いがちである。「 サスティナブルな社会
の実現のため、アドボカシーの強化を行う」など聞くと、なんのことやらと思う
のが正直なところ。この業界のなかで使うにはよいが、一般の人たちに伝わるの
かどうかを考えないと自己満足で終わってしまう。
また、ただ伝えるのではなく、思わず乗り出してしまう「 共感メッセージ」
をつくるように心がけている。私がキャッチコピーをつくる際に振り返るのが、
【考えてみよう】
資金調達は友達づくり
共感メッセージ力
23図書館における資金 調 達 ( フ ァ ン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来   ラ イ ブラリー・リソース・ガイド 2013 年 夏号
自分たちが生み出してきた価値や活動を通じて出会った子どもたちの声を大切に
すること。そこにヒントがあるし、キャッチコピーは「 つくるより拾うほうが
早い」ともいわれている。2012年12月にミャンマー( ビルマ)難民キャンプ事
務所に駐在していた元スタッフの報告会を行った。「 難民キャンプでの図書館活
動と子どもたち」というタイトルは正しいが、共感するかというとそうでもない。
そこで現地の図書館に通う難民の子どもの声をそのまま講演会のタイトルにした。
それが「 どうか図書館が ぼくのそばからなくなりませんように」。そこまで切
実な存在として現地の人に想われる図書館の存在とはなんなのだろうと関心を持
ち、改めて自分たちの図書館のことを考えたいと参加してくれる方たちがたくさ
んいた。
コミュニケーション戦略として、ACTIONフレームで考えることをお勧めする。
様々な切り口からメッセージを抽出する作業である。ぜひ自館をACTIONで表現
してもらいたい。
A=Attention
キャッチコピーや心を打つ写真など、相手が気にかける「 なにか」を仕掛け
ること。私は心に引っかかったCMや雑誌の広告などメモしています。また図書
館の広報関連のコーナーに有名なキャッチコピーを集めた本があるのでそれも参
考にしている。
C=Change
社会のなにを変えようとして、なにを実現しようとしているのか伝えること。
アジアでは日常生活の読み書きに困る人もたくさんいます。そのため、「 図書館
で本を読み、字を知ることができれば、変な契約書にサインをして土地をだまし
取られなくて済む。字を知る人を増やしたい」というメッセージを伝えている。
ディオドロスの『神代地誌』によると、古代エジプトのテーベの図書館には「魂
の診療所」というサインが掲げられていたそうである。この現代社会において
「図書館に来れば、心が安らかになる」というのも大きな意義ではないだろうか。
T=Trust
夢を語られても信頼に至らないことも多い。過去の実績などを示し、信頼性を
【考えてみよう】
24 図書館における資金調達(ファン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来  ラ イ ブ ラ リ ー ・ リソース・ガイド 2013 年 夏号
補完すること。図書館を胡散臭い場所と思う人は少ないと思われるが、どうすれ
ばもっと信頼されるかを考える必要がある。
I=Imagination
受益者や代表のストーリー。物語が、イメージを湧かせやすくすること。市や
町の広報誌で図書館が取り上げられた記事を読んだことがある。館長の熱いメッ
セージや図書館員の静かだが強い思いに心を打たれた。「 こんな人がいる図書館
に行ってみたい」と思わせてくれた。
O=Only One
自分のオンリーワンを探し、表現すること。オンリーは難しくても強みはある
はず。その地域にしかない資料がある、名物館長がいる、レファレンスの達人が
いる、読み聞かせの匠の市民ボランティアがいるなど、強みを表現するのも手。
N=Network
「 一人で頑張っている」よりも「 つながりや広がり」をイメージできるほうが
応援したくなる傾向がある。すでに人々が集まっていると、あそこでなにが行わ
れているのだろうと思わず見てしまうのと一緒である。
事業費に充てるため、広報にはなかなか予算が下りない。ゆえにチラシの印
刷などもできないのが現状である。認知度を高めるために予算をお願いすると、
「 鎌倉、俺たちには金はないが、知恵はある」と言われた。また「 想像しろ」
と先輩たちから伝えられる。
結果的にはその無茶ぶりは大変ありがたいと思っているし、そこで味方をして
くれるのが図書館だ。FacebookやTwitterを最大限活用するために、図書館のビ
ジネスコーナーに行ってリサーチする、企画書の書き方を読んで企業への協賛の
お願い状を書く、人を引き付けるイベントのやり方を学ぶ、疲れてきたら新聞か
雑誌を読む、そこで魅力的なキャッチコピーを見つける。地元の図書館を使い倒
せば、いい企画が生まれ、実行される。私は毎月イベントや資金調達の企画を3
∼5本上げている。また出張も多い。そのために行く先々の図書館をチェックし、
利用させていただいている。イベントを行いながら「ありがとう。○○図書館」
としみじみ思う。
予算がないからできないのではなく、図書館を自分の右腕や脳として使い倒す
広報への予算がない分、図書館を使い倒す
25図書館における資金 調 達 ( フ ァ ン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来   ラ イ ブラリー・リソース・ガイド 2013 年 夏号
ことが成功の秘訣である。
資金調達を考えたとき、最初から大口の何百万、何千万円を狙うのは難しい。
たまにお亡くなりになった方の意思で図書館に大口の寄付が寄せられることもあ
るが、日々起こるわけではない。
資金調達の世界では「 ドナーピラミッド」という概念がある。ピラミッドの
外にはまだ関わりがない人たちがいる。その人たちが関心を持ち、なにかしらの
アクションを起こすことでピラミッドの一番下の層に入る。ピラミッドの頂点に
くるのは、高額の寄付者や継続的な支援者である。ドナーピラミッドは下の階層
にいる人たちをどのように上の階層にあげるのかを考える戦略をつくる際に用い
られる。
シャンティのドナーピラミッドは図の通り(p26参照)。7つの階層がある。ま
た3つのアプローチが取られている。
アプローチ①は、知らない人にシャンティを知ってもらう、また認知している
人にドナーピラミッドのなかに入ってきてもらうための施策である。最初から金
銭的な寄付をするのはハードルが高いと感じる人が多い。またそのためにも団体
の信頼度や共感できるかを確認してから寄付をしようと思うのが普通である。そ
のためにまずは、毎週出しているメルマガの読者登録やFacebookのいいね!を
押してもらい、団体の情報に日々接してもらう。広告関係で仕事をしている知り
合いが「 7回その情報に会えば、人は運命を感じる」と言っていた。情報に接し
てもらうことで団体に親しみを感じてもらえればと思っている。
アプローチ②は、ドナーピラミッドの下の層から上へ登ってきてもらう取り組
みである。私は「 デジタルイン、アナログアウト」をいつも意識している。つ
まりブログやFacebookなどデジタルでつながっても、最後は直接顔を合わすア
ナログの場所をつくることを意識している。メルマガなどでお知らせを受け取っ
た人たちが、実施されるイベントや勉強会に参加してもらうにはどうすればよい
か、集客の方法、ターゲット設定を考慮しアレンジをしている。イベントには適
正な規模がある。大人数が集まればよいというわけではなく、少人数でもじっく
りと話ができたほうがよい場合もある。といいつつも、シャンティは「 赤を出
さない」が一つの基準であり、会場費や資料代など「 赤」を出せばアウト。か
支援者は階段を上る∼ドナーピラミッドをつくる
26 図書館における資金調達(ファン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来  ラ イ ブ ラ リ ー ・ リソース・ガイド 2013 年 夏号
なりなお叱りを受けるので、緊張することは確かだが、その分必死で動き、いろ
いろ試すなかで使えるツールや方法が見つかることもある。またイベントのアレ
ンジやその時おこった問題など、Facebookなどで見せることで、助け船を出し
てくれる人も現れてくれるのがありがたい。
近年イベントの際に「 シャンティ部活動参加者募集」というお知らせをして
いる。1回きりのイベントに参加するだけではなく、ボランティアとして継続的
に関わる人を開拓している。ボランティア募集ではなく「 部活動参加者募集」
としているのは、みんなで練習しつくり上げる感があるから。
その後、書き損じはがきや本の寄贈など物の支援を経て、募金としての支援を
お願いしていく。1回寄付をしてみて様子を見られる方が多い。その後、継続支
援者となり、なかには学校建設など大口の支援に結びついていくケースが見られ
る。
アプローチ③は、人によってドナーピラミッドの階段を上がらなくとも、最初
から大口支援者になる可能性もあることを示している。特定の国やプログラムに
関心のある方が、インターネットなどで調べ、最初から建設の支援など大口のご
寄付をお寄せいただける例もある。
このドナーピラミッドには課題もある。当会は東京に事務所があるため、イベ
ントも首都圏に集中しがちである。そのため他の地域の方とアナログアウトをす
る機会が少ない。この論理でいうと、ドナーピラミッドの2層目で止まってしま
う。現在議論されているのは、スタッフが地方出張の際には積極的にご支援者を
アプローチ①
SNS やキャンペーンを通じてメルマガ登録を増やす。
アプローチ②
 プログラムごとに
 ステップアップし
 ていってもらう。
大口寄付大口寄付
継続寄付
単発寄付
物品の寄贈
「部員募集」ボランティア
イベント・勉強会
メルマガ・Facebook「いいね!」・HP
アプローチ③
 プログラムごとへ
 ダイレクトに導く。
27図書館における資金 調 達 ( フ ァ ン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来   ラ イ ブラリー・リソース・ガイド 2013 年 夏号
訪問すること、また可能であれば報告会などをアレンジして、直接会う接点を増
やすことである。私も近年、色々な図書館から講演の依頼をいただく。今年も愛
知や島根で講演をさせていただくことになった。これは大変ありがたいオファー
である。前に述べたACTIONのN=ネットワークではないが、自分たち一人でな
にかをやるには限界があるなか、同じ志を持ったパートナーとなりうる施設、団
体、個人と一緒にやることで、1+1が2になる以上のビックバンが起きる可能性
がある。
①笑って国際協力∼チャリティ寄席
2005年、事業評価でアフガニスタンにいた私は、他の日本人スタッフ2人と
シャンティの認知度向上のためなにかできないかと考えていた。アフガニスタン
は治安も悪く、夜外に出られない。日が暮れてやることといったら事業評価をま
とめる作業か、語り合うしかなかったので、私たちはちょっと違った切り口で認
知を上げ、資金調達につなげることをテーマで話し合った。
ただ団体としてのブランドは大切にしたい。「 図書館」からぶれず、また今ま
でシャンティと接触したことがない人が集まるイベントやキャンペーンとはどん
なものか。
どの国でも子どもを中心とした図書館の事業を行っている。読書はもちろん、
一番大切にしているのが「 おはなし」である。素話( すばなし)から絵本や紙
芝居を用いたおはなしまで、自分のほうを見て生の声で語ってくれる大人の存在
を子どもたちに感じてほしいと願って行っている。またカンボジアのように内戦
の中で書物が失われ、多くの大人が亡くなった地域では、善悪や社会で生きる道
を伝えてくれる民話や説話を語り継ぐ伝統が途絶えつつあった。そのなかで、民
話などを中心に絵本や紙芝居の出版を行ってきた。
3人で発想したのは、シャンティの図書館⇒おはなし⇒語り⇒それに文化的要
素⇒日本で文化的要素を持った語りとは?
糸をたどるかのように発想していった時、誰かが叫んだ。「落語だ!」と。
会話を楽しむだけで終わるのではなく、行動に起こすのがシャンティである。
当時、私はカンボジア事務所に勤務していたので、アフガニスタンからカンボジ
アに戻った。その後、日本に一時帰国した時、アフガニスタンで一緒に議論して
「図書館」を中心に考えた具体的な事例の紹介
28 図書館における資金調達(ファン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来  ラ イ ブ ラ リ ー ・ リソース・ガイド 2013 年 夏号
いたスタッフが「 落語関係者に会いに行こう」と言い出したのだ。日曜日に日
本テレビで放送されている『 笑点』司会者の桂歌丸師匠が会長を務める、シャ
ンティの事務所と同じく新宿区にある公益社団法人落語芸術協会にアポを入れた。
「 はじめまして。アジアで語りをしている団体です。チャリティ寄席ができま
せんか」と、こちらからかなりストレートなお願いだったと記憶している。回り
くどく言わずに、まずは結論から言った方が楽になると思っている。寄席は座布
団などが必要になるので、寄席に使う座布団、マイクなどがそろっていることが
多いお寺に、開催する場所としてお願いしていった。また企業の社会的取り組み
として活用していただいている。
誰かと一緒に資金調達の取り組みを行う時、全員がwin-winになるためにはど
うすればいいかを考える必要がある。シャンティとしてはチャリティ寄席の開催
を通じて、団体を知ってもらい、寄付の呼びかけを通じて資金調達ができる。で
は落語芸術協会や開催する主催者のメリットはなにか。落語芸術協会は、日本の
文化である落語を広く伝えたいという思いがある。東京都内では新宿の末広亭や
浅草演芸ホールがあるが、やはり地方での興行も行いたい。『 笑点』に出ている
ようなメンバーだとお呼びがかかるが、あまり知られていない若手はなかなか出
番がない。人前で話すことで上達するような場が欲しいという話であった。チャ
リティ寄席を開催してくださる企業・団体には、交通費などかかる経費と芸人さ
んへのギャランティをご負担いただいている。落語芸術協会の協力により通常
よりも安い出演料でお願いはしているが、金銭的な負担をしながらの開催のな
か、どのようなメリットがあるのか。ある企業では子会社などを招いた新年の名
刺交換にチャリティ
寄席を採用した。景
気が悪いなか、新年
は笑って景気づけた
いという願いがあっ
たそうだ。江戸太神
楽曲芸師が傘の上で
升を回し、「 皆さん、
ますますご繁盛」と
言うと、大きな歓声
が上がった。また落
29図書館における資金 調 達 ( フ ァ ン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来   ラ イ ブラリー・リソース・ガイド 2013 年 夏号
語では会場全体が笑いの渦に巻き込まれ、皆さん「 元気をもらった」と言い会
場を後にされていた。お寺は「お檀家さんに気軽にお寺に来てもらいたい」、「お
盆などもお墓参りだけではなく、お寺の中に入って休んでいってほしい。親しみ
を持ってもらいたい」という思いがあった。また落語はお寺から生まれたものと
も言われており、落語とお坊さんの説法は近いものがあることから、受け入れら
れやすかった。
電話などで日程や出演希望を伝えてもらい、落語芸術協会と調整をする。落語
家さんは200人ほどいるので、どれだけ日程が重なってもお断りすることはない。
「 笑ったら募金してください」とお願いしており、落語会の最後に後ろに置い
てある募金箱に募金をしてもらっている。参加した人たちから「 次はいつやる
の?」、「 久しぶり笑った」、「 おばあちゃんを連れてきて、楽しそうだったから
一緒に参加してしまった。お寺でこんな行事があるのですね」という声が届く
と、開催側はまたやりたいと思っていただけるらしくリピート率が高い。スタッ
フが出張したり、集客を含めたアレンジは開催企業やお寺がやってくれるので人
を割く必要がない。また開催地は東京に限らず、全国どこでもお伺いしている。
2012年は80回開催し、426万円の募金が寄せられた。
ここで大切なのはストーリーである。「 語り」がキーワードであること。落語
で大笑いした後、「 同じような笑いと笑顔を、アジアの子どもたちもできる社会
をつくりたい」ことを伝えている。
□図書館で行われている活動を書き出す。
□書き出した中から特徴的なものを1つ選ぶ。
□それに関連しているキーワードを出す。シャンティは「発想の1000本ノッ 
 ク」と題して、アイディアが出し尽くされるまで出す。
□ストーリーをつくる。
□売り込む。実施する。
②陸前高田市の空っぽの図書館を本でいっぱいにするプロジェクト
このプロジェクトは、LRG第3号〈 2013年春号〉にも紹介された日本初のク
ラウドファンディングの「 READYFOR?」を通じた資金調達プロジェクトである。
【考えてみよう】
30 図書館における資金調達(ファン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来  ラ イ ブ ラ リ ー ・ リソース・ガイド 2013 年 夏号
200万円の目標のところ、2012年3月11日から4月30日までの約1ヶ月半で862人
の方から824万円のご協力をいただいた。今号をご覧いただいている方のなかに
も、心温まるご支援をお寄せいただいた方がたくさんいらっしゃる。改めて御礼
申し上げます。
陸前高田市のモビリアオートキャンプ場の仮設住宅団地の敷地に、集会場兼図
書室を建設することになった。建物は神戸の団体からの建設費の提供があって完
成したが、中に入れる本棚や本はこちらで購入をせねばいけなかった。スタッフ
から届いた見積もりは150万円。震災後に寄せられた募金を充てることはできた
のだが、「 お金の切れ目が活動の切れ目」。長期的に活動を行いたいので、すで
にある募金を使うのは心が痛んだ。また図書館は地元の書店の保護が役割として
あるなか、全国に本を呼びかけるのも避けたかった。そこで決めたのは「 150万
円を集める」こと。ちょうどその時、日本ファンドレイジング協会が主催する大
会でREADYFOR?の存在を知り、藁をもつかむ思いで取り組むことを決めた。
実行者は、シャンティのスタッフで陸前高田市と大船渡市の移動図書館の運行
リーダーである吉田晃子。吉田は移動図書館の運行や倉庫の整理など多忙を極め、
またインターネット上でのクラウドファンディングは経験がないため、広報担当
の私が総合的なプロデュースをすることになった。
そ の 際 に 工 夫 し た こ と が 数 点 あ る。1 つ 目 は プ ロ ジ ェ ク ト の タ イ ト ル。
READYFOR?は、プロジェクト名が30文字以内という制限がある。最大30文字を
使い「 どこで、いまどのような状態で、支援が寄せられればこういう状態にな
る」ことを一言で表し、支援をご検討くださる方が名前を聞いただけでイメージ
してもらえるようにつけたのが「 陸前高田市の空っぽの図書室を本でいっぱい
にするプロジェクト」で
あった。READYFOR?はソー
シャルメディアとの相性が
よい。プロジェクトページ
に は、TwitterのRTボ タ ン
やFacebookの「いいね!」
ボタンがついている。プロ
ジェクト名を考えることは、
これらのSNSを使ってプロ
ジェクトを拡散しようとし
31図書館における資金 調 達 ( フ ァ ン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来   ラ イ ブラリー・リソース・ガイド 2013 年 夏号
てくれる人たちのストレスを減らすことも考えねばならない。例えばツイッター
のボタンを押すと「 陸前高田市の空っぽの図書室を本でいっぱいにしようプロ
ジェクト( 吉田晃子)- READYFOR? #ready_for https://readyfor.jp/projects/an_
empty_library @ready_forさんから」という文言が現れる。もし名前から想像で
きないプロジェクトだと、リツイートしてくれた人が説明文を付け足して書かな
いといけない。SNSなどで拡散してくれる方々も大切なボランティアである。そ
の方たちに負担なく参加してもらえるように考慮した。
2つ目は新着情報を上げること。READYFOR?はブログのように簡単に新着情報
を上げられる。そしてその記事にもSNSのボタンがついている。この業界の人間
は「 自分たちのやっていることは正しい」と思いがちである。ただ理解されな
いものは、伝わっていないと同然。どのように社会の人たちに分かるように表現
していくかは、何度も発信し、学んでいくしかない。新着情報を上げると自動
的に2万人を擁するREADYFOR?のFacebookのファンページに掲載される。また
自分のSNSでも簡単にシェアできる。私自身も自信満々で書いた記事に反応がな
かったり、逆に想像しなかった記事に「 いいね!」が多かったりして気づきを
たくさんいただけた。社会の関心に合わせ、理念など骨格の部分を変える必要は
ないが社会に通じる言い回し、キャッチコピー、関心ごとは常にアンテナを張る
必要があり、発信の場であるSNSはその修行の場である。
3つ目は「 我がこと化」を生み出すこと。このプロジェクトの期間中、たくさ
んの方から募金と一緒にメッセージをいただいた。自分にとっても図書館は小さ
いころの思い出の場所、苦しい時、本に励まされたのでその思いを届けたい、図
書館は遊びの場所であり学びの場所だったので、「 きっと図書館や本がなくなっ
て、悲しい思いをしているに違いない」と気づき、思いを寄せてくださったもの
だ。気が付いたことは、ほとんどの方が「 自分の経験」をまずは振り返られて
いたことだ。そのプロセスを通じて、図書館が壊滅的な被害を受けた陸前高田市
の住民の方と「自分を重ね合わせ」、我がことのように思っている姿であった。
遠い世界のことは自分とは関係ないのではなく、自分事として捉えてもらうに
はどうしたらよいかを考える必要がある。数字でデータを示すよりも、声は強い
メッセージとなる。プロジェクトページには現場の現状や、活動内容だけではな
く、「 こんなときだから、今出会う本が、子どもたちの一生の支えになる」とい
う現場の図書館員の声を記した。
32 図書館における資金調達(ファン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来  ラ イ ブ ラ リ ー ・ リソース・ガイド 2013 年 夏号
□30文字以内でプロジェクト名を付けてみよう。
□SNSを活用しよう。まだアカウントを持っていない人は開こう。使おう。使い
 倒そう。
    
資金調達の黄金律は2点ある。Ask(お願いすること)とThank(感謝すること)
である。いろいろな手段で資金調達をした後に、ご協力くださった方に感謝する
ことを忘れてはいけない。ただ感謝するのではなく、「 感謝しまくれ」とスタッ
フには伝えている。自分だってポケットマネーから少しでも寄付することは大き
なイベントではないか。わざわざ時間を使い郵便局まで行ってくれてありがとう。
クレジットカード決済の画面に進んでくれてありがとうという気持ちでいっぱい
になる。支援者に領収書を発送する際も、一筆を入れることを徹底している。
寄付して一番知りたいことはそのお金がなにに使われたか。シャンティはHP
上で年次報告を公開すると
ともに、ネットにアクセス
できない方用に印刷した年
次報告も用意している。ま
たラオスの絵本出版という
ように、プログラム指定の
募金をいただいたときには、
そのプログラムの報告書を
お送りしている。
先日READYFOR?実行者の集いがあり、2012年の大賞に「 コアラを守りたい!
∼東山動植物園コアラ応援プロジェクト」が選ばれた。東山動物園は名古屋市が
管轄。税金と入場料で賄っているが、年間にかかるエサ代が課題となっていたそ
お礼を伝える
終わりに
【考えてみよう】
33図書館における資金 調 達 ( フ ァ ン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来   ラ イ ブラリー・リソース・ガイド 2013 年 夏号
うである。コアラのエサ代を賄うために集める以上に、「 動物や自然と触れ合う
生涯学習の場としての動物園を認識してもらう」ことを意識したそうである。こ
の名古屋市の事例を見て、公立の図書館も自分たちで資金調達が可能になる日が
来るかもしれないと感じた。また資金調達のプロセスを通じて、単なるお金集め
ではなく、共感する仲間を増やすことで、図書館の存在をたくさんの方に認識し、
支えてもらえるようになるのではないかと感じている。その輪を広げることで図
書館が見直され、業界全体の底上げにつながると感じている。
東日本大震災図書館事業アドバイザーを務めながら、震災前からのポジション
である広報とマーケティングの仕事をしている。そのなかで大切にしている視点
や担当した事例をご紹介した。私自身「 図書館×広報×資金調達」はこれから
も追及したいテーマである。またこのトピックでワークショップを頼まれること
も増えてきた。なにかお手伝いできることがあれば気軽に声をかけて欲しい。一
緒に図書館のファンを増やしていければと思っている。
34 図書館における資金調達(ファン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来  ラ イ ブ ラ リ ー ・ リソース・ガイド 2013 年 夏号
クラウドファンディングと図書館の結びつきが最も広く知られるきっかけに
なったのは、「 READYFOR?」( https://readyfor.jp/)での「 陸前高田市の空っぽの
図書室を本でいっぱいにしようプロジェクト 」( https://readyfor.jp/projects/an_
empty_library)だったといえるでしょう。震災から1年後の2012年3月11日から
プロジェクトがスタートし、支援した人数はのべ862人。200万円の目標に対し、
達成金額824万5000円を記録しました。これは、現在でもREADYFOR?が支援し
たプロジェクトのなかで最も達成額が高かった事例のひとつです。
このプロジェクトは、吉田晃子さんという方が始めたプロジェクトでした。吉
田さんは陸前高田市にあるモビリア仮設住宅の中に、誰でも使える図書室「 陸
前高田コミュニティ図書室」をつくる活動を行っていました。
吉田さんは岩手県陸前高田市で育ち、子どもの頃から本が好きで図書館によく
通っていましたそうです。しかし、東日本大震災によって親しんだ図書館は全壊、
図書館員は全員死亡もしくは行方不明、蔵書も流出という悲劇が起こったのです。
震災から1年が経ち、モビリア仮設住宅の中に人々が集う図書館が生まれよう
としていました。しかし、中に入れる本棚や本がなかったのです。そのための資
金調達を、READYFOR?によって呼びかけたのです。
クラウドファンディング
という選択肢
米良はるか(めら・はるか)
1987年生まれ。2012年慶應義塾大学メディアデザイン研究科修了。2010年スタンフォ
ード大学へ留学し、帰国後、大学時代から関わっていたウェブベンチャー、オーマ株式会
社にて取締役に就任。2011年3月日本初のクラウドファンディングサービスREADYFOR?
の立ち上げを行い、NPOやクリエイターに対してネット上で資金調達を可能にする仕組
みを提供している。World Economic Forumグローバルシェイパーズ2011に選出され、
日本人史上最年少でスイスで行われたダボス会議に参加。
Facebook:https://www.facebook.com/haruka.mera
Twitter:https://twitter.com/myani1020
クラウドファンディングと図書館を結んだ「思い」
35図書館における資金 調 達 ( フ ァ ン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来   ラ イ ブラリー・リソース・ガイド 2013 年 夏号
「 今回のプロジェクトを支援して下さった方には、皆様の大好きな本、ちょっ
と励まされた本、ためになった本……そんな皆様の思いがいっぱい詰まった本を
一冊、蔵書として、空っぽの図書室に加えさせて頂きます。皆様の思いの分だけ、
少しずつ図書室に本が加わっていきます。皆様の温かいご支援によって、空っぽ
の図書室を本でいっぱいにして下さい。どうか宜しくお願いいたします」
吉田さんの思いに共感した多くの方々から支援が集まりました。「 陸前高田コ
ミュニティ図書室」は、図書室としての利用のほかにも、住人たちの憩いの場と
して、保育園園児が描いた絵が張り出されたりといった、愛されるコミュニティ
として運営されています。
このほかにも、図書館によるREADYFOR?プロジェクトは数多くあります。た
とえば、東日本大震災で7割の家屋が流された女川町にあった女川町図書室は全
壊し、4万冊の蔵書はすべて流出してしまいました。そこで女川町図書室は書
籍購入費、備品費用、施設の補修費調達のため「 被災地の『 女川つながる図書
館』を大好きな本でいっぱいにしよう 」( https://readyfor.jp/projects/tsunagaru_
library)プロジェクトを始めました。このプロジェクトでは、200万円の目標に
対して、320万1000円の調達を実現しました。
また『 男はつらいよ』全作のシナリオや、歌舞伎座で上演された数々の
歌舞伎作品の台本などの資料を所蔵している松竹大谷図書館( http://www.
shochiku.co.jp/shochiku-otani-toshokan/)では、運営費用調達として「 歌舞伎
や『 寅さん』、大切な日本の文化の宝箱を守る。( https://readyfor.jp/projects/
ootanitosyokan)」プロジェクトを始めました。
このプロジェクトは、松竹大谷図書館に勤務する司書の須貝弥生さんが始めま
した。須貝さんは大の歌舞伎好きで、面接に来て書庫を案内された時、林立する
歌舞伎台本、400冊の浄瑠璃本に接して、ここで働きたい!と思ったことが松竹
大谷図書館との出会いだったそうです。
現在、松竹大谷図書館には約43万点の資料があり、演劇では歌舞伎、新派、新
国劇、商業演劇、新劇、文楽、日本舞踊などの台本やプログラム、舞台写真を所
蔵し、映画ではシナリオ、プログラム、ポスター、スチール写真などを所蔵して
います。
古いものでは阿國歌舞伎の様子を伝える江戸時代の奈良絵本『 かふきのさう
し』や、300年前の浄瑠璃本もあるほか、市販されない上演台本や映画シナリオ、
36 図書館における資金調達(ファン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来  ラ イ ブ ラ リ ー ・ リソース・ガイド 2013 年 夏号
また、公開期間を過ぎてしまえば入手困難になってしまう各作品の劇場プログラ
ムなどは、この図書館ならではの所蔵資料です。
このような貴重な資料を収集し、利用者に提供できるように整理して保存する
のは図書館の重要な仕事です。しかし、毎年9000点も増えていく資料を確実に
整理して公開するのは大変な作業であり、資金不足から図書館の運営が苦しく
なってきていたそうです。そこで、図書館の規模を縮小することなく、利用者へ
のサービスを続けていけるようREADYFOR?を使って支援を呼びかけたのです。
このプロジェクトでは200万円目標に対して、357万9000円を調達しました。
このように、図書館のプロジェクトは高額な資金調達を達成しているものが数多
く見られます。
どうして図書館とクラウドファンディングは相性がよいのでしょうか? もち
ろん、大震災という大きな社会的悲劇に、市民からの温かい気持ちと関心、「 自
分もできる支援をしよう」という使命感が集まり、陸前高田市のプロジェクトの
ような成功を生んだのは確かなことでしょう。しかし、それに加えて、図書館と
いう存在への多くの人の温かな思いがつながった、ということがうかがえます。
人は、本から人間的成長や学びを得て育った記憶を持って生きているものです。
そんな本と出会う機会を提供したり、地域の人々が集まることのできるコミュニ
ティスペースとなっている図書館を、実は日本中の多くの人々が協力して守って
いきたいと考えていたのです。この陸前高田市のような事例は、人々の、普段は
見えない図書館への思いが顕在化した結果だとも考えられます。
図書館は地域の人々のために存在し、運営されているはずですが、利用者から
は直接的な利用料などを集めることができないタイプの公共施設です。ですから、
運営主体である自治体の財政が悪化したり、災害などで財政基盤がゆらぐと、同
時に図書館の運営も大きな影響を受けざるを得ません。
そうした状況に、クラウドファンディングによる日本全国からの資金調達とい
う選択肢は相性のよいソリューションといえるでしょう。
図書館の資金調達の手段というのは、まだまだ少ないのが現状です。図書館
における二大資金調達手段は、「 直接的な募金」か「 本を寄贈してもらう」こと。
しかし実際には、図書館はあまりお金を受け取らない体質でもあるために、ほぼ
支援と資金を同時に集めるための仕組み
37図書館における資金 調 達 ( フ ァ ン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来   ラ イ ブラリー・リソース・ガイド 2013 年 夏号
本の寄贈のみになってしまっているのが現状ではないでしょうか? もちろん本
というものは図書館の財産ですが、本だけでは解決できないこともたくさんある
のが現状です。
こうした背景が、あるいは図書館が一般的な資金調達を控えてしまう背景なの
かもしれません。しかし、クラウドファンディングは、いわゆる「 募金を集め
る仕組み」といった体質のものではなく、「 支持者を集めながら資金も同時に調
達できる仕組み」です。
図書館に限らず、READYFOR?のプロジェクト全体にいえることは、支持者は
「 このプロジェクトを支持したいので、自分はお金による支援という形で、活
動への支持を表明している」のです。つまり「 お金を通じて人を集めている」
というニュアンスが大きく、「 お金を集めるために人を集めている」わけではあ
りません。そこが狭義の「 募金」的なアプローチと異なるところであり、図書
館にとっても資金調達の選択肢に入れていただける個性であるように感じます。
というのも、READYFOR?は、そもそも「 ソーシャルイシュー」つまり「 社会
的問題意識」のなかで生まれる活動を、資金調達を通じてサポートするというこ
とがサービスコンセプトの一つになっているのです。社会問題を解決しようとし
ている人の活動をインターネットを通じて広く伝え、支持者からの小さな支援を
集めてその活動を応援し、結果的に社会をよくしていくこと全体をサービスのス
キームとして提供したいと考えています。つまり、温かく応援される社会活動を
たくさん集め、より多くの人々に伝えていきたいというのがREADYFOR?の第一
義なのです。図書館における資金調達もそのひとつであり、今までは自治体的な
予算によって決められていたことが、社会的な支援によって、よりよい解決に至
ることができる可能性を創出できることそのものに、READYFOR?は関心があり
ます。それゆえに、より多くの図書館に、READYFOR?のサービスを利用してい
ただきたいと願っているのです。
さらに「 この図書館が大切だ、と言ってくれる人がこれだけいる」というこ
とを示すことができるのは、もしかしたら、お金を集める以上の意味があるのか
もしれません。
今までそうした声を集めることは「 署名」といった形で行われてきました。
しかし、署名で集められるのは、声だけです。さらに、時として署名は数を集め
ることだけに走りがちであり、本当に支持者の気持ちのこもった「 声」といえ
るのかどうかがわからない部分もあり、世間一般的にもあまり高く評価されない
38 図書館における資金調達(ファン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来  ラ イ ブ ラ リ ー ・ リソース・ガイド 2013 年 夏号
というのが事実です。
一方で、READYFOR?のようなクラウドファンディングの場合は、「 このプロ
ジェクトには多くの支持者が存在し、支援が集まっています」ということが、イ
ンターネット上に常に公開され、誰にでも見ることができ、さらに誰でも支援を
することができます。
多くの人々にプロジェクトが支持され、さらにお金も集まっているということ
を見せること、つまりその活動の社会的重要性を示すことを通して、資金調達を
可能にしているのです。そういった声を集めて力に変えていくということは、ま
さに地域にある図書館などの必要性を訴えるといった文脈などで、大きな有用性
があるかもしれません。
また、READYFOR?には「 応援コメント」という機能があります。これは支援
者が書くコメントなのですが、このコメントには、非常に強く思いがこもったも
のが多く見られます。そしてプロジェクトの実行者は、このコメントを読んで、
「 プロジェクトをやってよかった」といった感想を持つ事が多いのです。「 お金
が集まったのもよかったけれど、仲間の存在を強く感じることができたのが励ま
しになった」といった感想も数多く寄せられています。
READYFOR?のプロジェクトの実行者は、起業家魂を持っている方がたくさん
います。そして彼ら彼女らは常に「 自分のやりたいこと」や「 見たい世界を実
現していく」なかで、不安を感じることが多いのです。コメントを通してでも
「 応援してくれる人」とたくさん出会うことできると、「 もっと頑張れる!」と
思うこともできます。それが結果として、社会的に有用なアイデアを前進させる
ことにつながるのです。
READYFOR?は、本当に社会的に意味のあることをしている人に、支持者との
出会いを生み出し、正しい社会的評価としての支援と資金を同時に集めるための
仕組みなのです。
READYFOR?は、「 実行者」を支援するための、日本初にして国内最大規模の
クラウドファンディングサービスであり、現在では合計2億円もの支援がこれに
よって生み出され、さまざまなプロジェクトが実現されています。
READYFOR?で資金調達をしたい時は、まずWebサイト( readyfor.jp)にアク
0円スタートが可能な資金調達
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『ライブラリー・リソース・ガイド(LRG)』第4号(2013年8月)

  • 1. LRGライブラリー・リソース・ガイド 第4号/2013年 夏号 発行/アカデミック・リソース・ガイド株式会社 Library Resource Guide ISSN 2187-4115 特別寄稿 岡本真・鎌倉幸子・米良はるか 特集 嶋田綾子 図書館における資金調達 (ファンドレイジング)の未来 図書館100連発 2
  • 2. LRG Library Resource Guide ライブラリー・リソース・ガイド 第4号/2013年 夏号 発行/アカデミック・リソース・ガイド株式会社 特別寄稿 岡本真・鎌倉幸子・米良はるか 特集 嶋田綾子 図書館における資金調達 (ファンドレイジング)の未来 図書館100連発 2
  • 3. 2 ライブラリー・リソース・ガイド 2 0 1 3 年 夏号   巻 頭 言 いささか感慨深いのですが、『 ライブラリー・リソース・ガイド』第4号を皆 さまに届けることができました。感慨深いと申しますのも、お気づきの方もい らっしゃるでしょうが、昨年、2012年11月に創刊した「 季刊誌」の本誌ですが、 本号でとにもかくにも第1期ともいうべき1年目を過ごすことができたからです。 さて、この1年間、本誌にはときおり、「 もう少し価格が手頃になれば」とい う嘆きやご要望が寄せられています。そのお気持ちはわからなくはないのですが、 価格を引き下げる予定は当面ありません。と、同時に、手前みそながら、年間1 万円の購読料で、これだけクオリティの高い情報が手に入るのであれば、安い買 い物ではないでしょうか。本誌はこの価値観を共有いただける方々を主たる読者 と考えています。この意味をご理解いただければ幸いです。 さて、今4号は、第3号での特集「 図書館における資金調達( ファンドレイジ ング)」を受けた特別寄稿と、創刊号で好評を博した特集「 図書館100連発」の 第2弾という、以下の組み合わせになっています。   ● 特別寄稿「図書館における資金調達(ファンドレイジング)の未来」   岡本真、鎌倉幸子、米良はるか   ● 特集「図書館 100 連発 2」    嶋田綾子 本誌で初の試みとなる、3名による連名執筆の特別寄稿「 図書館における資金 調達( ファンドレイジング)の未来」では、第3号で特集した資金調達( ファン 巻頭言 活用できる図書館情報誌をめざして
  • 4. 3ラ イ ブ ラ リ ー ・リソース・ガイド 2013 年 夏号 巻頭言 ドレイジング)を掘り下げたものとなっています。第3号で紹介したような事例 から学ぶことも重要ですが、資金調達(ファンドレイジング)そのものを巡って、 考えを深めておくことも重要です。いうなれば、事例と理論の両方について、本 号と前号とを併せて読むことで、資金調達( ファンドレイジング)への理解を 深める一助としていただければと思います。 なお、2013年10月に開催される第15回図書館総合展では、第1回LRGフォーラ ムと称して、「 これからの図書館の資金調達−寄付・寄贈からファンドレイジン グへ」を開催します。特別寄稿でご執筆いただいた鎌倉さん、米良さんにもご登 壇いただきますので、読者会の気分でぜひお出かけください。 特集「 図書館100連発 2」は、図書館におけるよい事業や工夫の実践を事例で 紹介する試みの第2弾です。創刊号での特集は大きな反響を呼び、紹介した事例 を参考にして、同じ取り組みを始める図書館が現れるといったうれしい報告を聞 きました。しばしば言われるように、「学ぶ」ことは「真似る」ことに始まります。 本号の「 図書館100連発」第2弾にも、真似をしたくなる事例が多く含まれてい るはずです。ぜひ、本誌をご活用ください。 壮大・壮麗な建物があることや、読み切れないほどの蔵書があることも大切で すが、「 神は細部に宿る」という言葉があるように、日常の些細な一点にたゆま ぬ努力と工夫があること、それが素晴らしい図書館の条件の一つであると信じて います。 編集兼発行人:岡本真 責任編集者:嶋田綾子
  • 5. 資料提供の工夫 ………………………… 48 [File101]おすすめ絵本を、セットで貸出 [File102]ゴムバンドで束にして、マンガを貸出 [File103]美術館の展覧会と連携した展示 [File104]予約の多い人気本の閲覧コーナーを設置 [File105]イベント・お知らせチラシをファイルで提供 [File106]友好都市、その理由も図書館で [File107]郷土雑誌のバックナンバーも開架で提供 [File108]新聞広告を曜日ごとに分類して提供 [File109]美術書コーナーを、美術館の入り口に [File110]「図書館市民まつり」のアルバム化 [File111]被災地の広報誌を取り寄せて提供 [File112]医療書の難易度をシールで表示 [File113]雑誌も図書も、同じ書架で [File114]地域広報誌をコーナーで展示 [File115]市議会の中継DVDを貸出 [File116]充実した「県内ゆかりの人」の書架 [File117]DAISY図書の必要性を、子どもにも [File118]一般コーナーで点字新聞を展示 [File119]「職員おすすめ本」の価値、再発見 [File120]全国の観光情報を集めてファイリング [File121]身近な図書館で知る、海の向こうの姉妹都市 [File122]ゆかりのある地域の郷土史も展示 [File123]自治体のプレスリリースを収集 [File124]大学出版会の出版物をまとめて展示 図書館PRの工夫 ………………………… 73 [File125]自館の活動をエントランスで展示 [File126]自館を紹介するお手製のポスターを展示 [File127]新館の基本計画を大々的に公開 [File128]他館の魅力も積極的に紹介 [File129]自分の図書館の100の魅力を1冊に [File130]書架でレファレンスの利用をアピール [File131]リクエストカードで予約機能をアピール [File132]図書館の方針を常に明示する [File133]図書館への寄付者を掲示する [File134]行事予定表も、広報活動の一環に [File135]借りれば借りるほど、お得な特典 巻 頭 言 活用できる図書館情報誌をめざして[岡本真]………………………………………… 2 特別寄稿 図書館における資金調達(ファンドレイジング)の未来    [岡本真、鎌倉幸子、米良はるか]……………………………………………………………… 7      図書館のあり方と変わる資金調達[岡本真] ……………………………………………… 8      ファンドレイジング、実践の現場から ─図書館×広報×資金調達[鎌倉幸子]………… 20      クラウドファンディングという選択肢[米良はるか] ………………………………………… 34 特  集 図書館100連発 2[嶋田綾子] …………………………………………………………… 47 LRG CONTENTS Library Resource Guide ライブラリー・リソース・ガイド 第4号/2013年 夏号 西ノ島町立中央公民館図書室(File160) 撮影:岡本真 撮影日:2013年5月14日
  • 6. 簡単・便利な工夫 ……………………… 143 [File191]貸出中の本のカバーをディスプレイ [File192]ちょっとうれしい、滑らぬ先の「傘かけ」 [File193]ゴミになるレシート芯、アイデア次第で大変身 [File194]レターケースで地域のパンフレットを保存 [File195]ブックケースを利用したパンフレットの展示 [File196]封筒に入れてチラシを管理 [File197]100均のクリップでつくれる書架見出し [File198]書架の切れ目、シンプルできれいに表現 [File199]100均グッズで、雑誌の書架を美しく [File200]デジタルとアナログつなぐ本棚 地域連携の試み ………………………… 85 [File136]館内に本の注文票を設置 [File137]身近な場所を図書館に [File138]自治体の政策を図書館がPR協力 [File139]文人ゆかりの地のこだわりを、書架にも [File140]民家のガレージを一坪図書館に [File141]ビブリオバトルをコミュニティづくりに生かす [File142]読書にオープン&ソーシャルな同時性 [File143]市内の「学校だより」を掲示 [File144]貸出票を子どもたちのキャンバスに [File145]地域商店との連携で利用向上をはかる [File146]図書館カレンダーで、近隣レストランの割引 [File147]試験対策本・論文資料の再利用 [File148]子育て支援センターへ出張ライブラリー 利用環境の改善 ………………………… 99 [File149]伝えたい人に合わせた館内サイン [File150]背のバーコードで、蔵書点検の負担を軽減 [File151]常用されない百科事典。書架に1冊、残りは書庫へ [File152]ママにうれしい、チャイルドシート付きカート [File153]休館日のガッカリを緩和する情報発信 [File154]子ども扱いしない分類サイン [File155]禁止事項すらも楽しく発信する館内サイン [File156]手軽にカーテンレールで授乳室 [File157]ブックポストの存在認知に、一手 [File158]使いやすい図書館は、手づくりの工夫から [File159]プライベート空間がある図書館 [File160]地元の人による、場に適した書架 [File161]「みんなでつくる」が実感できる図書館づくり [File162]若者と対話するための投稿箱を設置 [File163]図書館にもっと、デザインの力を [File164]10代のキモチを生かした読書空間づくり [File165]住宅地図のコピー問題、解決策を図書館で案内 [File166]バーコードリーダーで、面倒な入力を回避 [File167]ブックポスト前で、休館カレンダーを配布 [File168]うちわの貸出でホスピタリティも演出 資料展示の工夫 ………………………… 120 [File169]地図やアートを生かし、知的空間を創造 [File170]児童書の選び方もわかる児童書コーナー [File171]ライフスタイルに合わせて本を紹介 [File172]自治体を越えた連携から生まれるサービス [File173]その日の記念日をテーマにした展示 [File174]エントランスでデジタル資料を展示 [File175]公開予定の映画の原作本を展示 [File176]地域の新聞記事を掲示する [File177]気になる新聞記事の関連資料を展示 [File178]貸出中・閲覧中の本も存在アピール [File179]見やすく、わかりやすく、大活字本の掲示 [File180]スリップで新着本のお知らせ [File181]ひと目でわかる、文学賞 [File182]「ただいま発注中」を書評付きで紹介 [File183]新聞書評、「地元の本」にもっと光を [File184]40年間のベストセラー本を大集合 [File185]データベースの価値を活用法とともにアピール [File186]「自己紹介」から始めるデータベース [File187]仕事との出会いを図書館で [File188]読書会で読んだ本を展示 [File189]ブックスタートの存在をカウンター前で周知 [File190]書評と掲載紙を面陳で紹介 アカデミック・リソース・ガイド株式会社 業務実績定期報告 ……………………………… 154 定期購読・バックナンバーのご案内 ……………… 156 次号予告 ……………………………………… 158
  • 7.
  • 9. 8 図書館における資金調達(ファン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来  ラ イ ブ ラ リ ー ・ リソース・ガイド 2013 年 夏号 今、「 ファンドレイジング」という言葉が普及しつつある。ファンドレイジン グとは、日本語に言い換えると「 資金調達」。いってみれば、企業が株式を公開 してお金を集めるのもファンドレイジングである。 アーティストらが「 READYFOR?」などのクラウドファンディングサイトで作 品制作の資金を集めるほか、震災復興支援をはじめとする社会貢献からデザイン 家電、ハイテク雑貨などのプロダクト制作まで、さまざまなプロジェクトが従来 の「 寄付」とは違った形で資金調達を行っており、ファンドレイジングによっ てビジネスモデルが大きく転換を迎えている業界も少なくない。 「 お金を集める」ということに図書館において着目したとき、資金調達よりも 寄付のほうに馴染みがある。個人からの膨大なコレクションによって成り立って きた図書館は少なくない。図書館は寄付・寄贈の文化に支えられてきた土壌があ るといえるだろう。  しかしファンドレイジングという概念の普及は、図書館にとっても対岸の出来 事ではない。むしろ、これからは効果的なファンドレイジングができる図書館こ そが、市民により多く利用され、価値の高い図書館になっていく、そんな時代が 到来しているといっても過言ではないのである。 寄付=ファンドレイジングではない 図書館のあり方と 変わる資金調達 岡本真(おかもと・まこと) 1973年生まれ。アカデミック・リソース・ガイド株式会社代表取締役/プロデューサー、 READYFOR?を運営するオーマ株式会社代表取締役を兼務するほか、公益社団法人シャ ンティ国際ボランティア会理事などを務める。 著作に『ブックビジネス2.0』(実業之日本社、2010年、共編著)、『ウェブでの<伝わる> 文章の書き方』(講談社、2012年)などがある。 提供:高久雅生
  • 10. 9図書館における資金 調 達 ( フ ァ ン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来   ラ イ ブラリー・リソース・ガイド 2013 年 夏号 ここで、「 ファンドレイジングと寄付は、どう違うのか」を整理しておきたい。 寄付は、いってみれば「誰かが団体や特定の人に対して、自分のお金をあげる」 ことである。特に「 義援金」という言葉が寄付の顕著な例であるように、社会 的な使命感から寄付をするという行為が長くあった。街頭募金や『 24時間テレ ビ』などは、その代表例だ。 一方で、ファンドレイジングは、「 寄付を含めた、より大きな資金調達の考え 方」を指している。今までの図書館の考え方では、資産の集め方は寄付に限られ ていた。しかしこれからは、寄付を資金調達の一要素と捉えていくこと、つまり 「 寄付も含めたファンドレイジングに、図書館がどう向き合うのか?」という ことが、大きな課題になってきているのである。 そうした世の中の流れを象徴する動きとして、2009年の2月18日に設立された 「 日本ファンドレイジング協会」の存在がある。ソーシャルベンチャー・パー トナーズ東京の代表である井上英之氏らが発起人となって設立されたこの協会の 設立趣旨は「わが国の寄付文化の革新を実現する」ということだった。 同協会は主にファンドレイジングの啓発活動を行っている。たとえば『 寄付 白書』という、ファンドレイジングや寄付に関する白書を発行しており、日本に おけるファンドレイジングの現状を知るうえでの基本資料になっている。さらに 毎年「 ファンドレイジング日本」というカンファレンスを行っており、すでに 開催が決定している2014年で第5回を数える。カンファレンスでは様々な事例を 紹介しており、最近であればクラウドファンディングのような新しいファンドレ イジングの手法を紹介したり、あるいは寄付税制に関する制度改正を伝えたりし ており、非常に賑わっているイベントだ。 さらに、ファンドレイジングを行う専門家のことを「 ファンドレイザー」と 呼ぶが、基本的には無資格の肩書きなので、日本ファンドレイジング協会は彼 ら・彼女らをプロフェッショナルとして認定する制度も用意し、ファンドレイ ザーに対してより高い社会性を付与する試みも行っている。 世界はもちろん、日本においても資金調達の大きなパラダイムシフトが起こっ てきているのだ。図書館にとっても、この時流を反映した運営が模索されて然る べきである。
  • 11. 10 図書館における資金調達(ファン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来  ラ イ ブ ラ リ ー ・ リソース・ガイド 2013 年 夏号 ではそもそも、「 なぜファンドレイジングが重要なのか」というと、図書館の 運営費・経営費が削減傾向にあり、今後も右肩下がりであることが予測されるた め、新しいモデルで資金調達を行わないと図書館運営が持続可能なモデルに転じ にくい、ということに尽きる。 国会図書館のような、完全に税金で運営されている国立図書館を別にすれば、 大学図書館や各自治体の公共図書館、学校図書館や専門図書館のどれもが資金難 にあえいでいる部分がある。東京都23区のように「 地方交付税を受け取らない ような恵まれた自治体」を除けば、日本中のほとんどの自治体は財源難に苦しん でいるといえるだろう。 周知のとおり日本は「 人口減少社会」であり、税収がこれ以上あがるという ことは基本的には考えにくい。そうなると自治体では、公共事業全般のコスト カットが求められる。そのなかでターゲットに挙がりやすいのは、やはり文化事 業だ。これは図書館だけでなく、博物館や美術館なども含まれる。それに追い打 ちをかけるように、市民レベルでもいわゆる狭義の箱物行政に対する批判もあり 「 本当に必要なのだろうか?」という認識も広まってきている。大きな流れと して「 公共事業としての公共図書館」の運営費は、下がっていく一方だといえ るだろう。 各図書館がそれぞれに資金調達を独自に考えなければ、この暗い未来の影響を 真正面から受けてしまうことになるのである。 ここで重要になってくるのが、ファンドレイジングだ。前述したように、図 書館はいわゆる「 寄付」文化によって運営されてきた側面がある。一般的には、 公共機関・自治体は簡単に寄付を受け取れないものだが、前述のとおり、図書館 は、書籍などの現物の寄贈を積極的に受けてきた歴史がある。少なくとも戦前ま では「 地域の人々が経営している図書館」が全国に多くあったのだ。であれば、 実は図書館は、ファンドレイジングと相性がよいはずなのだ。 しかし、図書館法ができてから約50∼60年の間に、公共図書館に関しては「税 金で運営するもの」という認識が広まりすぎた結果、ファンドレイジングへの意 識が薄れてしまった。せいぜい「本を現物で受け取る」といったものだけになっ てしまったのだ。 その過程にはバブル期のようなものもあり、箱物行政を推進した時代もあった。 なぜファンドレイジングが重要なのか
  • 12. 11図書館における資金 調 達 ( フ ァ ン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来   ラ イ ブラリー・リソース・ガイド 2013 年 夏号 それ自体が全て悪かったわけではないが、そのなかで寄付文化から生まれた図書 館の出自も忘れ去られていくこととなった。 人口増に比例する高度経済成長が見込めない今、どうやって民間にある富を公 共的な方面に差し向けさせるかが課題になってきている。そんな今こそ、ファン ドレイジングの考え方が重要なのである。 また図書館の側からも、「 公共の図書館は、公共サービス・行政サービスなの だから全て税金でまかなうという考えが本当に正しいのか」ということを、問い かけていったほうがいいだろう。というのは、図書館の成り立ちを考えると「公 共サービスというのは、必ずしも行政サービスとイコールではない」はずだから である。 たとえば、商業施設の中に入っている図書館などでは、図書館の共用廊下など の掃除について、行政サービスとして税金を使うよりも、地域の人々や利用者の ちょっとした助け合いで維持管理する方向性で考えることができるかどうかが重 要だ。そうやって一人ひとりが担保できる公共性をきちんと実現していけば、結 果として行政のトータルコストは下がる。そうやって図書館における経営費・運 営費の問題も考えてみる余地があるのではないだろうか。 もちろん必要不可欠な人件費や巨大な設備投資費は、税金でまかなうしかない という部分は確実にあるが、それでもせめて全体の10分の1、欲をいえば3分 の1くらいは自己調達する気持ちが大切だろう。それぞれの環境に応じたいろん な資金調達の方法を考え、その調達先は、地域の人々、あるいはその地域に対し て愛着を持つ人々から、広く薄く、または一発大口のものも視野にいれていいだ ろう。こうした考え方は、これからの政治のあり方にも適しているはずだ。つま り最近議論されている「 オープンガバメント」や「 ガバメント2.0」といわれて いる考え方への適合性である。 伝統的な政府の話をすると、「 大きな政府か、小さな政府か」という二元論が ある。かつてのイギリスのように巨大で「 大きな政府」を持つ福祉国家は、ゆ りかごから墓場まで全てを行政が担い、税金で経営するという考えにのっとって いた。しかし、これでは経済的に破綻するということが見えてきてしまった。で は、「 小さな政府」でいいのかというと、それはそれで民間に委ねる負荷が大き 市民の参画を促す
  • 13. 12 図書館における資金調達(ファン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来  ラ イ ブ ラ リ ー ・ リソース・ガイド 2013 年 夏号 くなりすぎる。その顕著な例がアメリカである。アメリカは、社会保障の面から 見れば「 失業したら死ぬかもしれない」という状況であり、あれだけの先進国 としては信じがたい状況に陥っている。「 大きな政府」と「 小さな政府」の中道 を行くというのが、おそらく今の「 オープンガバメント」や「 ガバメント2.0」 の志向する未来だと思われる。そのひとつの重要な要素が、市民一人ひとりが担 保できる公共性をきちんと実現し、トータルコストを下げていくように働きかけ ることなのである。 たとえば道路が陥没していたら、その情報を市民に広く共有して「 一時的な 埋め戻しは、市民のできる人がやる」ということだ。その道は、確かに国道や県 道かもしれないが、「生活者の道」でもある。できる人が最低限の復旧作業をして、 その後に税金で直すようにすれば、市民によって当面の機能回復が図れることに なる。 しかし現実は、道路が破損したら国が直すまで待っている状態だ。図書館も同 様であり「 公共施設なんだから」と、なんでもお任せ、与えてもらって当たり 前という認識を持っている市民は多い。このマインドセットから抜け出すために は、図書館の側からも「 全てお任せにされても困ります。『 民間で』というより も『 市民として』担える部分は担ってください」というお願いも発信していく べきだと思われる。 繰り返しになるが、図書館は歴史的に見れば、常に市民との支え合いのなかに あるものだった。他の行政サービスに比べたら、図書館は市民が参画する余地が 大きいし、実際にしているところがたくさんある。実はもともと「ある種のオー プンガバメント」が一定の範囲において成り立ってきたのが図書館なのではない だろうか。 そんなバックグラウンドを意識したうえで、図書館はより積極的なファンドレ イジングに乗り出していく必要性が、今、あるのではないかと思う。ここでいう ファンドレイジングは、「 ヒト・モノ・カネ」全てについて、税金という財源の もとにまかなうのではなく、「 市民の政治参画」や「 行政参画」という形での支 援を求める必要性があるのではないかということである。 もうひとつ重要な概念として「 アドボカシー」という考え方がある。日本語 アドボカシーの重要性
  • 14. 13図書館における資金 調 達 ( フ ァ ン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来   ラ イ ブラリー・リソース・ガイド 2013 年 夏号 にしにくい単語だが、「政策提言」の意味で使われる「アドボカシー」には、「擁 護」や「援護」という意味がある。 図書館におけるアドボカシーというのは「 図書館はそもそも存在して当然の ものであり、万が一、失われようとしているのであれば、必ず守らなくてはいけ ない」と、常に世の中に対して発信していくことに相当する。つまりは図書館の 存在意義を肯定する「擁護」であり「援護」を自主的に行うことを指す。 このアドボカシーが、そもそもファンドレイジングの前提として、非常に重要 なのである。ちょっと過激ではあるが、日本にある1800の自治体のなかで、ま だ図書館がない自治体があるということ自体が「 そもそもおかしい」といった ふうに、むしろ踏み込んでしまうぐらいがちょうどよい。なぜならば、国民には 憲法で「 知る権利」が保障されているからである。知りたいことは、誰もが知 るべきである。これは日本が戦後、現憲法をつくるうえで非常に重要視した部分 である。 この情報化社会で知りたいことが知れない状況など生まれない、と思われがち だが「 生まれてこのかた、本を買ったことがない」という家庭もたくさんある。 そうしたときに、全ての国民に対して最低限の「 知る権利」を保障するという 意味では、どの地域にも必ず、子どもやお年寄りの足でもアクセスできる場所に 図書館があり、そこで知りたいことを知ることができるというのは重要なことだ。 憲法あるいはその前提にある人権という考えのなかに位置づけて考えていくと、 図書館というものは、そもそもあってしかるべき存在なのだ。 こうしたアドボカシーを明確化しておかないと、いざファンドレイジングを 行おうといったときに市民の共感が得にくい。「 図書館が勝手にやってることで しょう?」となってしまう。「いや、『勝手にやっていること』ではなく、私たちは、 憲法にも裏付けられた『私たち国民の権利を守るため』にやっているんです」と、 常に伝えておけば、市民も図書館の社会的機能を認知しやすく、支援も得やすく なるのである。  図書館は日常から「 万人に対して最低限の情報アクセスを保障する」という 魅力を、きちんと社会的機能として伝えているだろうか? ファンドレイジング ではその魅力が認知されたうえで、それぞれの図書館が持っているユニークさ、 貴重性、有用性をアピールしていく必要があるのである。
  • 15. 14 図書館における資金調達(ファン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来  ラ イ ブ ラ リ ー ・ リソース・ガイド 2013 年 夏号 図書館が「これからファンドレイジングに力を入れていこう」となったときに、 いわゆる「 金銭を寄付で受け取る」こと、「 蔵書を寄贈で受け取る」ことだけに 限定して考える必要はない。もっと多角的に考える必要があり、そのためには図 書館の内と外両方の観点を持つ必要がある。 まず「 内」の観点からお話すると、公共図書館に関していえば、基本的には 自治体から運営資金が出ている。自治体が予算を組むなかで「 図書館の運営経 費にこれだけ使おう」と決めていくわけだ。 従ってまず必要なのは、きちんと「 財源ベースを増やす」こと、あるいはこ れ以上削減させないこと。そのためには、設置母体や所属組織に対して「 なぜ 我々が必要なのか」ということを、粘り強く言い続ける。前述した「 アドボカ シー」が必須だ。たとえば、千葉県浦安市の図書館の元館長・常世田良氏は「図 書館は、市長や議員などの『 行政の上級職』に対してとにかくレポートを行う べきだ」と言っている。「 図書館でこんなことをやっています」「 市民からこんな レスポンスをいただいている」、「 利用者からこんな要望をいただいた」という ことをとにかくレポートする。ビジネス用語でいえば「ブリーフィング」である。 実際のところ、本庁の職員は図書館のことを全然知らないものだ。その理由は、 図書館の職員が本庁の職員に対して対話の場を設けていないことに起因すること がほとんどである。そもそも本庁が図書館に関心を持ってくれない場合もあるが、 そんな場合もとにかく努力して「関心を持たせる」しかない。 たとえば、「 実は年間利用者が100万人を超えています」「 図書館を使ってこう いう新しいビジネスが生まれました」「非常に優秀な子どもたちが育っています」 なんて言われたら、本庁の企画部署や財政課の人の意識は確実に変わる。そして 「 行政として予算のかけ甲斐がある分野」に位置づけられることは間違いない。 図書館は、大体年に1回『 要覧』で1年間の活動実績をまとめているが、必ず しも年1回である必要はない。毎月、来館者数に関わらず記者会見を行ったり、 行政の主要な職員を訪ねたりといった、それぞれに取り組みやすい工夫で、月々 のレポートを本庁へ出せば状況は確実に好転するだろう。そうやって本来あるべ き財源をきちんと獲得しようとすることが、まず大切だ。 また、図書館が本庁にとって有用な存在であるということを、常日頃からア ピールする努力も大切だ。たとえばとある市で「 市の基本計画をつくりましょ ファンドレイジングは内と外の観点から
  • 16. 15図書館における資金 調 達 ( フ ァ ン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来   ラ イ ブラリー・リソース・ガイド 2013 年 夏号 う」というのが大きな議題となっているとする。そしてその市のホットイシュー は「 市役所の移転問題」だとしよう。今の市役所は建物の年数と強度から、市 役所として適切とはいえないため、移転させようという話である。そういったこ とが市の中枢部で議論されているとき、図書館はただ見ているだけではいけない。 「他の自治体では『市役所を移転する』ときに、どんなことが起きていたのか?」 というのは、図書館の資料を使えばわかるはずなのだから、調べて積極的に情報 提供をするのである。 そうすれば、本庁の側からも「 図書館は役に立つ」と認識が変わる。他の自 治体で行った市役所移転で住民からどんな反対が起きたのかが書かれた新聞記事 をプリントして手渡すだけでも、図書館に対する本庁の評価は高まるに違いない。 これは大学図書館も同様だ。大学全体でカリキュラム改訂をしようというときに、 他の大学の成功事例、あるいは失敗事例のレポートを調べて手渡せば、図書館の 評価は高くなるのだ。 アドボカシーをすることと同時に、実際に役に立つという「 貢献を形にして 見せる」ことが、ファンドレイジングの基本である。それこそを、内部でやらな くてはいけない。行政を含めた内部の人間を説得できない限り、外の人である市 民を説得することはできないのだ。こうした「内に対するファンドレイジング」 がまず大切だ。 たとえば中央官庁が行っているような補助金や助成金を、図書館が取りにいく こともそうである。図書館だけでは申請できないケースも多いので、図書館側 でそういった情報は察知しつつ、本庁側に「 こういう補助金が執行されるので、 市として取りにいって、それを図書館に配分しましょう」という提言をするべき である。そうした話をする時も、常日頃からのアピールがものをいう。図書館の 職員は、市の職員の重要なパートナーである、という認識を持ってもらうことが まず必要だ。 それらをベースにしたうえで、ようやく「 外」に対するファンドレイジング が成り立つ。外に対するファンドレイジングには、「狭く、深く」か「広く、浅く」 集めるかという方法に大別され、どちらを取るかはケースバイケースになる。た だ、多くの場合「 狭く、深く」というのは、よほど図書館の存在が特殊で、そ こにスポンサーシップを持ってくれるような特殊な思い入れが生まれるケースに 限定されるため、一般的には「広く、浅く」だと思っておいて間違いないだろう。 そうした時、まず考えなくてはいけないのは――これは専門図書館・企業内図
  • 17. 16 図書館における資金調達(ファン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来  ラ イ ブ ラ リ ー ・ リソース・ガイド 2013 年 夏号 書館の場合はやや難しいところもあるが――自分の図書館がどれだけの範囲の 人々に、その恩恵を与え得るか、である。 たとえば横浜市の図書館がファンドレイジングをしようとしたときに、「 横浜 市民にお願いしよう、助けてもらおう」という考えを持つ必要はない。横浜市民 の協力を求めるのは大前提ではあるが、広く神奈川県民、あるいは日本中の人・ 世界中の人を視野に入れ、「 横浜というキーワードにひっかかる人」全てから支 援を集める意識を持つことが大切だ。 たとえば、都心や地方で働いている横浜出身者も対象になるだろうし、その人 は「 子どものころ、あの図書館にお世話になった」という特別な思いを持って いるかもしれない。あるいは、自分自身は横浜に縁もゆかりもないけれど「 何 代前かの先祖が、横浜出身でした」とか、「 祖父母が横浜に住んでいる」という 人もいる。そうした様々な地域と地域を結ぶ「ゆかりの線」は絶対にあるはずだ。 常に最大範囲で集めることを念頭に置くべきなのだろう。 こうした考えに立って成功しているケースに、「 ふるさと納税制度」がある。 佐賀県や佐賀市、あるいは和歌山県などはふるさと納税制度によって、図書館に かなりの資金を集めることに成功している。こうした事例にも学びながら、全方 位的に支援を求めていこうとする考え方は、非常に重要になってくるに違いない。 前述したとおり、「 外に対するファンドレイジング」の基本は「 広く、薄く」 である。しかし、READYFOR?のようなクラウドファンディングサイトもそうだが、 ファンドレイジングは必ずしも「ヒト・モノ・カネを調達するためだけにやる」 わけではなく、行うこと自体がアドボカシーになるという特性があることを忘れ てはいけない。  従ってREADYFOR?では、仮にプロジェクトが成立しなくても、「 プロジェクト を立てたこと」自体で大きく知名度を上げて、支持者を獲得するということが実 際に起こる。「 私達はこのようなミッションを持っており、実現したいことがあ る。そのためにはこれだけの資金・モノが必要です」ということを世の中に知ら しめることで図書館の社会的機能の認知を促し、人々のマインドを「 応援する べきかもしれない」とか、「応援できないにしても、意識のなかで考えておこう」 といった方向に変えることができる。 ファンドレイジングは日常である
  • 18. 17図書館における資金 調 達 ( フ ァ ン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来   ラ イ ブラリー・リソース・ガイド 2013 年 夏号 同様に金額目標についても、達成できたかどうかだけに一喜一憂するべきでは ない。さらにいえば、金額を達成できているところは、共感をたくさん集めてい るから達成できたことを常に認識する必要がある。なぜなら、短期的に金額目標 を達成できたとしても、それでは継続できない。来年も再来年も同じ支援を獲得 しなければならないのだ。あるいは短期的な支援で十分な場合も、またいつ同じ 短期的支援が必要になるか分からない点では、「 1回こっきり」だけでは意味が ない。 そうした持続可能な支援を獲得するためには、「 なぜ自分たちがこの活動を やっているのか」ということを長いスパンで発信し、アピールし続けなければな らない。いってみれば「 ファンドレイジングは日常である」という感覚を持っ て望まなければ、持続可能なファンドレイジングにならないのである。 「 そんな手間がかかることは無理だ」と思ってしまうものだが、本当にファン ドレイジングをしたいのであれば「 なんだってできる」という前提に立ったほ うがいい場合が多い。これは全てのことにいえるが、人は得てして「 いや、そ れはできない」と言いがちなものだ。しかし、「 できない理由をあれこれ言って 『 できない証明』をするよりは『 できる証明』をしたほうが早い」という言葉 がある。これは新幹線を開発した技術者・島秀雄氏の言葉である。 大抵のことはできる、できる方法は必ずあると思って取り組むことがなにより も大切なことである。感情論と言われるかもしれないが、結果的にファンドレイ ジングは、支援者の感情にうったえかけることが不可欠だ。それゆえ支援を求め る側も、ある意味、感情的に動かなければ始まらないのである。 たとえば、「 図書館に募金箱を置いて寄付を集める」とする。しかし、それを 実行しようとすると、「 それは雑収入になってしまうから、図書館の経営資金に は充てられない」という物言いがついて頓挫する、ということになりがちだ。し かし、それは本当にそうなのだろうか? 条例を改正すればなんとかならないだ ろうか? そこで「 条例改正なんて重い話は……」という方向にはいかず、と にかく試みてみることで、あっさり解決してしまったりするものだ。 仮に条例改正ができないとしても、募金で集まった分を雑収入として全体予算 に組み込むと同時に、財政部門に「 集まった分は翌年度の予算で必ず割り増し にする」という内部的なルールをつくればいいのである。これは民間の会社でも 普通に行われていることで、全体の売り上げに対して算入するけれど、よく稼い だ部門に対しては、翌年はより大きな予算をつけるようにするわけだ。これは企
  • 19. 18 図書館における資金調達(ファン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来  ラ イ ブ ラ リ ー ・ リソース・ガイド 2013 年 夏号 業活動としては当たり前のように行われている投資行為である。それが行政で成 り立たないはずがない。 だから、ファンドレイジングにおいてなにかアイデアがあったとき、とにかく できる方向について考えてみること。それ自体がファンドレイジングであり、ア ドボカシーにもなるということだ。 「 できないと言わない」というマインドセットは極めて重要である。とにかく できる理由や、できる方法を編み出すようにするのである。それにはマインドも 大切だし、やはりそのための手法・ノウハウを身に付けなければいけない。しか し、それこそ図書館の特権を使って調べればいい。図書館はすぐに調べられると いうことが、なによりの長所なのだ。 必ずよい方法は見つかるものであるし、どこかの自治体がうまいやりかたを 持っているものだ。行政一般職と図書館専門職の大きな差はおそらくそこにある。 行政職員は、行政の様々な手法についてとにかく詳しい。図書館の専門職員は、 図書館のことについては詳しいが、行政の様々な手法について詳しい人が案外少 ない。これによってせっかくのチャンスを逃してしまうことが往々にしてある。 一番効果があるのは先程の「 内に対するファンドレイジング」によって、行 政の内側の人と信頼関係をつくっていけば、詳しい人に必ず出会うだろうし、そ の人に教えてもらえばよい。あるいは、行政の一般職が読んでいる文献をきちん と読んで勉強することも手助けになるだろう。そうして、内側の駆け引きに長け ていくことで、とにかくできる理由や、できる方法を編み出せるようにもなるは ずだ。 また、ファンドレイジングには適切なリターンも欠かせない。これはクラウド ファンディングの場合に顕著だが、ただ「 お金を出してください」というだけ では、継続性に乏しい。共感して支援してくれている人々との間に、継続的なコ ミュニケーションのチャネルをつくっておけば、支援も継続するというものだ  たとえば「お礼状を出す」というのもすごく重要だ。公益社団法人シャンティ 国際ボランティア会の鎌倉幸子氏はファンドレイザーとして広く知られる人物だ が、シャンティでは寄付を受けたら、寄付をした人に領収書を送るときに、必ず 一筆の言葉を添えられている。 支援者をつなぎ、支援を継続させる「心」
  • 20. 19図書館における資金 調 達 ( フ ァ ン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来   ラ イ ブラリー・リソース・ガイド 2013 年 夏号 その一筆の内容にも、いろいろなパターンがある。書く人によってひとつずつ 違うのだ。「 私たちはあなたに感謝しています」ということを、単なる領収書を 一枚送る時にも、関係者の一人ひとりが直筆で一筆を添える。これだけで、支援 者の心にもう一度感動を呼ぶことができるのだ。こうした姿勢が、来年の支援に もつながる関係を維持してゆくことは明白だ。 図書館には、どんな「 感謝の表し方」があるのか。ここはもっとデザインさ れてもいい部分だと感じる。たとえば寄付をすれば「 この部分は○○様のおか げで整備されました」と小さな、真鍮製のプレートが本棚の一角に貼られたらど うだろう? 支援者はそこに行くたびに、自分の支援の形を見る事ができ、その 真鍮が古びていく様子に、図書館そのものの存在感をも感じることができる。あ るいは寄付金によって購入した本の裏表紙に「 この本は○○さんの寄付によっ て購入できました」というのがあればうれしいものだ。 ひと手間ではあるが、そのひと手間をかけることが、支援者をつなぎ、支援を 継続させるのだ。 支援は心。その心に応えるのもまた、心なのである。
  • 21. 20 図書館における資金調達(ファン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来  ラ イ ブ ラ リ ー ・ リソース・ガイド 2013 年 夏号 シャンティ国際ボランティア会( 以下、シャンティ)は、1981年に内戦の戦 火を逃れ隣国・タイに逃れたカンボジア難民を支援する活動を行うために設立さ れた国際協力NGOである。難民キャンプでは衣食住の支援が必要とされていた のは事実だが、悲惨な状況を目のあたりにし、命からがら難民キャンプにたどり 着いた子どもたちが表情なくうなだれている姿を見て「 子どもたちが笑顔を取 り戻すためになにができるか」を考え、スタートしたのが図書館活動だ。難民 キャンプの中での図書館の設置・運営、焼け残った図書の復刻、読み聞かせや伝 統舞踊教室など子どもたちが参加できる活動の提供を行ってきた。 現在では、カンボジア、ラオス、ミャンマー( ビルマ)に難民キャンプ、ア フガニスタン、タイに現地事務所を置き、図書館事業や学校建設事業など教育・ 文化支援の活動を行っている。また2011年3月11日に起きた東日本大震災後、宮 城県気仙沼市でまちづくりの活動を、岩手県陸前高田市、大船渡市、大槌町、山 田町、宮城県山元町、福島県南相馬市で「走れ東北!移動図書館プロジェクト」 を行っている。 2012年度の年次報告書で示している経常収益は6億2546万7036円。シャンティ は会員制度を取っているが、会費からの収入が4.4%、事業収益8.7%、補助金 20.5%、雑収益0.5%で、個人・団体からの寄付は65.9%となっている。助成金・ 補助金は一度とれば大きな額が入ってくるが、単年度決算のものが多い。また ファンドレイジング、実践の現場から    ─図書館×広報×資金調達 1999年3月、SVAに入職。同年4月より、カンボジアへ赴任し、図書館事業を担当。 2011年1月より広報課長。 東日本大震災発生後、岩手県、宮城県、福島県で「走れ東北!移動図書館プロジェクト」 を立ち上げる。 Facebook:https://www.facebook.com/kamakura.sachiko Twitter:https://twitter.com/1192_sachiko E-mail:pr@sva.or.jp 鎌倉幸子(かまくら・さちこ) 公益社団法人シャンティ国際ボランティア会(SVA)広報課長兼東日本大震災図書館事 業アドバイザー
  • 22. 21図書館における資金 調 達 ( フ ァ ン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来   ラ イ ブラリー・リソース・ガイド 2013 年 夏号 助成金を出している先の方針が変われば100が0になる可能性もある。そのため に、シャンティでは助成金に頼る割合を3割以下に収めるようにしている。ゆえ に、個人、団体、企業の方々にどのように応援をいただけるかを常に考えながら、 寄付や寄贈の呼びかけを行っている。 資金調達は、活動のための資金を集める行為と定義づけられている。そのため の手段としてチラシの作成、ホームページの充実、ソーシャルメディアの活用な ど「 方法」に注目されがちである。私も近年、ブログやFacebookなどソーシャ ルメディアについて講演を頼まれることが増えてきたが、その前に考えなければ いけないことがある。それは団体が行っている活動が、社会のどのような課題を 解決するのかをクリアにすること。それをもとに、団体としてなにを目指してい るのかを明確化することである。 また広報としての立場で常に意識をしているのは「 団体のブランド」をどう 維持し、生かしながら資金調達のメニューを考えるかという点である。ブランド というと高級ブランドをイメージして、ハードルが高いと感じてしまうかもしれ ないが、今までやってきたことを振り返り、「 自分たちを改めて知る」ことで答 えが見つかる場合が多い。 経営課題の把握のためにSWOT分析を用いて、自分たちの強み( S=Strength)、 弱み(W=Weakness)、機会(O=Opportunity)、脅威(T=Threat)を認識する 作業をスタッフ全員で行っている。弱みを克服し、脅威を避ける議論も経営的な 面では大切である。私が資金調達メニューをつくる際に注目するのは、団体の強 みと機会を生かすことである。シャンティの場合、 強みは「 海外も含めて行ってきた図書館事業とい う特徴的な活動があること」、「 おはなしに力を入 れていること」などである。また、団体の創設者が 僧侶だったことから寺院とのつながりがあることも 強みだと認識している。機会は「 社会貢献への関 心の高まり」などがあげられるが、資金調達の活動 を通じて「 図書館」や「 本」に関した機会を発見 することもある。それは後ほど述べる。 資金調達の前に
  • 23. 22 図書館における資金調達(ファン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来  ラ イ ブ ラ リ ー ・ リソース・ガイド 2013 年 夏号 □図書館は地域のどのような課題を解決できるか。 □図書館としてなにを目指しているのか。 □自分たちが過去に行ってきた事業は? □自分たちの図書館の強み、機会は? 「 お金の話はするのが苦手」と思っていらっしゃる方が大半ではないだろうか。 世界中の資金調達の担当たちは「ファンドレイジング(資金調達)の本質は『フ レンド( 友達)レイジング』にある」と語る。金銭的なものだけではなく、寄 贈やボランティアとして参加してもらうことを通じて、いかに社会の問題解決の ための友達を増やしていくかが本質の部分である。 シャンティは図書館事業への支援を呼び掛けているが、支援者は金銭的な支援 を行う前に「 なぜ図書館が必要か」「 事業をすると子どもたちの未来は、どう変 わるのか」を考えてから行動する。寄付をしてくれた時点で、「 図書館」の存在 意義を考え、その場所を一緒に支えたいという気持ちを起こしていただくことで、 「 図書館振興」の強い味方になってくれているのである。図書館は孤独な存在 ではなく、資金調達を通じて友達や味方を増やすことができる。 寄付しない一番の大きな理由は「 お願いされなかったから」である。まずは 尋ねることが第一歩となる。そのために私が考慮しているのは、団体の使命や事 業を「共感する」「応援したくなる」メッセージ化をする作業である。 国際協力の業界は意味不明な用語を使いがちである。「 サスティナブルな社会 の実現のため、アドボカシーの強化を行う」など聞くと、なんのことやらと思う のが正直なところ。この業界のなかで使うにはよいが、一般の人たちに伝わるの かどうかを考えないと自己満足で終わってしまう。 また、ただ伝えるのではなく、思わず乗り出してしまう「 共感メッセージ」 をつくるように心がけている。私がキャッチコピーをつくる際に振り返るのが、 【考えてみよう】 資金調達は友達づくり 共感メッセージ力
  • 24. 23図書館における資金 調 達 ( フ ァ ン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来   ラ イ ブラリー・リソース・ガイド 2013 年 夏号 自分たちが生み出してきた価値や活動を通じて出会った子どもたちの声を大切に すること。そこにヒントがあるし、キャッチコピーは「 つくるより拾うほうが 早い」ともいわれている。2012年12月にミャンマー( ビルマ)難民キャンプ事 務所に駐在していた元スタッフの報告会を行った。「 難民キャンプでの図書館活 動と子どもたち」というタイトルは正しいが、共感するかというとそうでもない。 そこで現地の図書館に通う難民の子どもの声をそのまま講演会のタイトルにした。 それが「 どうか図書館が ぼくのそばからなくなりませんように」。そこまで切 実な存在として現地の人に想われる図書館の存在とはなんなのだろうと関心を持 ち、改めて自分たちの図書館のことを考えたいと参加してくれる方たちがたくさ んいた。 コミュニケーション戦略として、ACTIONフレームで考えることをお勧めする。 様々な切り口からメッセージを抽出する作業である。ぜひ自館をACTIONで表現 してもらいたい。 A=Attention キャッチコピーや心を打つ写真など、相手が気にかける「 なにか」を仕掛け ること。私は心に引っかかったCMや雑誌の広告などメモしています。また図書 館の広報関連のコーナーに有名なキャッチコピーを集めた本があるのでそれも参 考にしている。 C=Change 社会のなにを変えようとして、なにを実現しようとしているのか伝えること。 アジアでは日常生活の読み書きに困る人もたくさんいます。そのため、「 図書館 で本を読み、字を知ることができれば、変な契約書にサインをして土地をだまし 取られなくて済む。字を知る人を増やしたい」というメッセージを伝えている。 ディオドロスの『神代地誌』によると、古代エジプトのテーベの図書館には「魂 の診療所」というサインが掲げられていたそうである。この現代社会において 「図書館に来れば、心が安らかになる」というのも大きな意義ではないだろうか。 T=Trust 夢を語られても信頼に至らないことも多い。過去の実績などを示し、信頼性を 【考えてみよう】
  • 25. 24 図書館における資金調達(ファン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来  ラ イ ブ ラ リ ー ・ リソース・ガイド 2013 年 夏号 補完すること。図書館を胡散臭い場所と思う人は少ないと思われるが、どうすれ ばもっと信頼されるかを考える必要がある。 I=Imagination 受益者や代表のストーリー。物語が、イメージを湧かせやすくすること。市や 町の広報誌で図書館が取り上げられた記事を読んだことがある。館長の熱いメッ セージや図書館員の静かだが強い思いに心を打たれた。「 こんな人がいる図書館 に行ってみたい」と思わせてくれた。 O=Only One 自分のオンリーワンを探し、表現すること。オンリーは難しくても強みはある はず。その地域にしかない資料がある、名物館長がいる、レファレンスの達人が いる、読み聞かせの匠の市民ボランティアがいるなど、強みを表現するのも手。 N=Network 「 一人で頑張っている」よりも「 つながりや広がり」をイメージできるほうが 応援したくなる傾向がある。すでに人々が集まっていると、あそこでなにが行わ れているのだろうと思わず見てしまうのと一緒である。 事業費に充てるため、広報にはなかなか予算が下りない。ゆえにチラシの印 刷などもできないのが現状である。認知度を高めるために予算をお願いすると、 「 鎌倉、俺たちには金はないが、知恵はある」と言われた。また「 想像しろ」 と先輩たちから伝えられる。 結果的にはその無茶ぶりは大変ありがたいと思っているし、そこで味方をして くれるのが図書館だ。FacebookやTwitterを最大限活用するために、図書館のビ ジネスコーナーに行ってリサーチする、企画書の書き方を読んで企業への協賛の お願い状を書く、人を引き付けるイベントのやり方を学ぶ、疲れてきたら新聞か 雑誌を読む、そこで魅力的なキャッチコピーを見つける。地元の図書館を使い倒 せば、いい企画が生まれ、実行される。私は毎月イベントや資金調達の企画を3 ∼5本上げている。また出張も多い。そのために行く先々の図書館をチェックし、 利用させていただいている。イベントを行いながら「ありがとう。○○図書館」 としみじみ思う。 予算がないからできないのではなく、図書館を自分の右腕や脳として使い倒す 広報への予算がない分、図書館を使い倒す
  • 26. 25図書館における資金 調 達 ( フ ァ ン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来   ラ イ ブラリー・リソース・ガイド 2013 年 夏号 ことが成功の秘訣である。 資金調達を考えたとき、最初から大口の何百万、何千万円を狙うのは難しい。 たまにお亡くなりになった方の意思で図書館に大口の寄付が寄せられることもあ るが、日々起こるわけではない。 資金調達の世界では「 ドナーピラミッド」という概念がある。ピラミッドの 外にはまだ関わりがない人たちがいる。その人たちが関心を持ち、なにかしらの アクションを起こすことでピラミッドの一番下の層に入る。ピラミッドの頂点に くるのは、高額の寄付者や継続的な支援者である。ドナーピラミッドは下の階層 にいる人たちをどのように上の階層にあげるのかを考える戦略をつくる際に用い られる。 シャンティのドナーピラミッドは図の通り(p26参照)。7つの階層がある。ま た3つのアプローチが取られている。 アプローチ①は、知らない人にシャンティを知ってもらう、また認知している 人にドナーピラミッドのなかに入ってきてもらうための施策である。最初から金 銭的な寄付をするのはハードルが高いと感じる人が多い。またそのためにも団体 の信頼度や共感できるかを確認してから寄付をしようと思うのが普通である。そ のためにまずは、毎週出しているメルマガの読者登録やFacebookのいいね!を 押してもらい、団体の情報に日々接してもらう。広告関係で仕事をしている知り 合いが「 7回その情報に会えば、人は運命を感じる」と言っていた。情報に接し てもらうことで団体に親しみを感じてもらえればと思っている。 アプローチ②は、ドナーピラミッドの下の層から上へ登ってきてもらう取り組 みである。私は「 デジタルイン、アナログアウト」をいつも意識している。つ まりブログやFacebookなどデジタルでつながっても、最後は直接顔を合わすア ナログの場所をつくることを意識している。メルマガなどでお知らせを受け取っ た人たちが、実施されるイベントや勉強会に参加してもらうにはどうすればよい か、集客の方法、ターゲット設定を考慮しアレンジをしている。イベントには適 正な規模がある。大人数が集まればよいというわけではなく、少人数でもじっく りと話ができたほうがよい場合もある。といいつつも、シャンティは「 赤を出 さない」が一つの基準であり、会場費や資料代など「 赤」を出せばアウト。か 支援者は階段を上る∼ドナーピラミッドをつくる
  • 27. 26 図書館における資金調達(ファン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来  ラ イ ブ ラ リ ー ・ リソース・ガイド 2013 年 夏号 なりなお叱りを受けるので、緊張することは確かだが、その分必死で動き、いろ いろ試すなかで使えるツールや方法が見つかることもある。またイベントのアレ ンジやその時おこった問題など、Facebookなどで見せることで、助け船を出し てくれる人も現れてくれるのがありがたい。 近年イベントの際に「 シャンティ部活動参加者募集」というお知らせをして いる。1回きりのイベントに参加するだけではなく、ボランティアとして継続的 に関わる人を開拓している。ボランティア募集ではなく「 部活動参加者募集」 としているのは、みんなで練習しつくり上げる感があるから。 その後、書き損じはがきや本の寄贈など物の支援を経て、募金としての支援を お願いしていく。1回寄付をしてみて様子を見られる方が多い。その後、継続支 援者となり、なかには学校建設など大口の支援に結びついていくケースが見られ る。 アプローチ③は、人によってドナーピラミッドの階段を上がらなくとも、最初 から大口支援者になる可能性もあることを示している。特定の国やプログラムに 関心のある方が、インターネットなどで調べ、最初から建設の支援など大口のご 寄付をお寄せいただける例もある。 このドナーピラミッドには課題もある。当会は東京に事務所があるため、イベ ントも首都圏に集中しがちである。そのため他の地域の方とアナログアウトをす る機会が少ない。この論理でいうと、ドナーピラミッドの2層目で止まってしま う。現在議論されているのは、スタッフが地方出張の際には積極的にご支援者を アプローチ① SNS やキャンペーンを通じてメルマガ登録を増やす。 アプローチ②  プログラムごとに  ステップアップし  ていってもらう。 大口寄付大口寄付 継続寄付 単発寄付 物品の寄贈 「部員募集」ボランティア イベント・勉強会 メルマガ・Facebook「いいね!」・HP アプローチ③  プログラムごとへ  ダイレクトに導く。
  • 28. 27図書館における資金 調 達 ( フ ァ ン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来   ラ イ ブラリー・リソース・ガイド 2013 年 夏号 訪問すること、また可能であれば報告会などをアレンジして、直接会う接点を増 やすことである。私も近年、色々な図書館から講演の依頼をいただく。今年も愛 知や島根で講演をさせていただくことになった。これは大変ありがたいオファー である。前に述べたACTIONのN=ネットワークではないが、自分たち一人でな にかをやるには限界があるなか、同じ志を持ったパートナーとなりうる施設、団 体、個人と一緒にやることで、1+1が2になる以上のビックバンが起きる可能性 がある。 ①笑って国際協力∼チャリティ寄席 2005年、事業評価でアフガニスタンにいた私は、他の日本人スタッフ2人と シャンティの認知度向上のためなにかできないかと考えていた。アフガニスタン は治安も悪く、夜外に出られない。日が暮れてやることといったら事業評価をま とめる作業か、語り合うしかなかったので、私たちはちょっと違った切り口で認 知を上げ、資金調達につなげることをテーマで話し合った。 ただ団体としてのブランドは大切にしたい。「 図書館」からぶれず、また今ま でシャンティと接触したことがない人が集まるイベントやキャンペーンとはどん なものか。 どの国でも子どもを中心とした図書館の事業を行っている。読書はもちろん、 一番大切にしているのが「 おはなし」である。素話( すばなし)から絵本や紙 芝居を用いたおはなしまで、自分のほうを見て生の声で語ってくれる大人の存在 を子どもたちに感じてほしいと願って行っている。またカンボジアのように内戦 の中で書物が失われ、多くの大人が亡くなった地域では、善悪や社会で生きる道 を伝えてくれる民話や説話を語り継ぐ伝統が途絶えつつあった。そのなかで、民 話などを中心に絵本や紙芝居の出版を行ってきた。 3人で発想したのは、シャンティの図書館⇒おはなし⇒語り⇒それに文化的要 素⇒日本で文化的要素を持った語りとは? 糸をたどるかのように発想していった時、誰かが叫んだ。「落語だ!」と。 会話を楽しむだけで終わるのではなく、行動に起こすのがシャンティである。 当時、私はカンボジア事務所に勤務していたので、アフガニスタンからカンボジ アに戻った。その後、日本に一時帰国した時、アフガニスタンで一緒に議論して 「図書館」を中心に考えた具体的な事例の紹介
  • 29. 28 図書館における資金調達(ファン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来  ラ イ ブ ラ リ ー ・ リソース・ガイド 2013 年 夏号 いたスタッフが「 落語関係者に会いに行こう」と言い出したのだ。日曜日に日 本テレビで放送されている『 笑点』司会者の桂歌丸師匠が会長を務める、シャ ンティの事務所と同じく新宿区にある公益社団法人落語芸術協会にアポを入れた。 「 はじめまして。アジアで語りをしている団体です。チャリティ寄席ができま せんか」と、こちらからかなりストレートなお願いだったと記憶している。回り くどく言わずに、まずは結論から言った方が楽になると思っている。寄席は座布 団などが必要になるので、寄席に使う座布団、マイクなどがそろっていることが 多いお寺に、開催する場所としてお願いしていった。また企業の社会的取り組み として活用していただいている。 誰かと一緒に資金調達の取り組みを行う時、全員がwin-winになるためにはど うすればいいかを考える必要がある。シャンティとしてはチャリティ寄席の開催 を通じて、団体を知ってもらい、寄付の呼びかけを通じて資金調達ができる。で は落語芸術協会や開催する主催者のメリットはなにか。落語芸術協会は、日本の 文化である落語を広く伝えたいという思いがある。東京都内では新宿の末広亭や 浅草演芸ホールがあるが、やはり地方での興行も行いたい。『 笑点』に出ている ようなメンバーだとお呼びがかかるが、あまり知られていない若手はなかなか出 番がない。人前で話すことで上達するような場が欲しいという話であった。チャ リティ寄席を開催してくださる企業・団体には、交通費などかかる経費と芸人さ んへのギャランティをご負担いただいている。落語芸術協会の協力により通常 よりも安い出演料でお願いはしているが、金銭的な負担をしながらの開催のな か、どのようなメリットがあるのか。ある企業では子会社などを招いた新年の名 刺交換にチャリティ 寄席を採用した。景 気が悪いなか、新年 は笑って景気づけた いという願いがあっ たそうだ。江戸太神 楽曲芸師が傘の上で 升を回し、「 皆さん、 ますますご繁盛」と 言うと、大きな歓声 が上がった。また落
  • 30. 29図書館における資金 調 達 ( フ ァ ン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来   ラ イ ブラリー・リソース・ガイド 2013 年 夏号 語では会場全体が笑いの渦に巻き込まれ、皆さん「 元気をもらった」と言い会 場を後にされていた。お寺は「お檀家さんに気軽にお寺に来てもらいたい」、「お 盆などもお墓参りだけではなく、お寺の中に入って休んでいってほしい。親しみ を持ってもらいたい」という思いがあった。また落語はお寺から生まれたものと も言われており、落語とお坊さんの説法は近いものがあることから、受け入れら れやすかった。 電話などで日程や出演希望を伝えてもらい、落語芸術協会と調整をする。落語 家さんは200人ほどいるので、どれだけ日程が重なってもお断りすることはない。 「 笑ったら募金してください」とお願いしており、落語会の最後に後ろに置い てある募金箱に募金をしてもらっている。参加した人たちから「 次はいつやる の?」、「 久しぶり笑った」、「 おばあちゃんを連れてきて、楽しそうだったから 一緒に参加してしまった。お寺でこんな行事があるのですね」という声が届く と、開催側はまたやりたいと思っていただけるらしくリピート率が高い。スタッ フが出張したり、集客を含めたアレンジは開催企業やお寺がやってくれるので人 を割く必要がない。また開催地は東京に限らず、全国どこでもお伺いしている。 2012年は80回開催し、426万円の募金が寄せられた。 ここで大切なのはストーリーである。「 語り」がキーワードであること。落語 で大笑いした後、「 同じような笑いと笑顔を、アジアの子どもたちもできる社会 をつくりたい」ことを伝えている。 □図書館で行われている活動を書き出す。 □書き出した中から特徴的なものを1つ選ぶ。 □それに関連しているキーワードを出す。シャンティは「発想の1000本ノッ   ク」と題して、アイディアが出し尽くされるまで出す。 □ストーリーをつくる。 □売り込む。実施する。 ②陸前高田市の空っぽの図書館を本でいっぱいにするプロジェクト このプロジェクトは、LRG第3号〈 2013年春号〉にも紹介された日本初のク ラウドファンディングの「 READYFOR?」を通じた資金調達プロジェクトである。 【考えてみよう】
  • 31. 30 図書館における資金調達(ファン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来  ラ イ ブ ラ リ ー ・ リソース・ガイド 2013 年 夏号 200万円の目標のところ、2012年3月11日から4月30日までの約1ヶ月半で862人 の方から824万円のご協力をいただいた。今号をご覧いただいている方のなかに も、心温まるご支援をお寄せいただいた方がたくさんいらっしゃる。改めて御礼 申し上げます。 陸前高田市のモビリアオートキャンプ場の仮設住宅団地の敷地に、集会場兼図 書室を建設することになった。建物は神戸の団体からの建設費の提供があって完 成したが、中に入れる本棚や本はこちらで購入をせねばいけなかった。スタッフ から届いた見積もりは150万円。震災後に寄せられた募金を充てることはできた のだが、「 お金の切れ目が活動の切れ目」。長期的に活動を行いたいので、すで にある募金を使うのは心が痛んだ。また図書館は地元の書店の保護が役割として あるなか、全国に本を呼びかけるのも避けたかった。そこで決めたのは「 150万 円を集める」こと。ちょうどその時、日本ファンドレイジング協会が主催する大 会でREADYFOR?の存在を知り、藁をもつかむ思いで取り組むことを決めた。 実行者は、シャンティのスタッフで陸前高田市と大船渡市の移動図書館の運行 リーダーである吉田晃子。吉田は移動図書館の運行や倉庫の整理など多忙を極め、 またインターネット上でのクラウドファンディングは経験がないため、広報担当 の私が総合的なプロデュースをすることになった。 そ の 際 に 工 夫 し た こ と が 数 点 あ る。1 つ 目 は プ ロ ジ ェ ク ト の タ イ ト ル。 READYFOR?は、プロジェクト名が30文字以内という制限がある。最大30文字を 使い「 どこで、いまどのような状態で、支援が寄せられればこういう状態にな る」ことを一言で表し、支援をご検討くださる方が名前を聞いただけでイメージ してもらえるようにつけたのが「 陸前高田市の空っぽの図書室を本でいっぱい にするプロジェクト」で あった。READYFOR?はソー シャルメディアとの相性が よい。プロジェクトページ に は、TwitterのRTボ タ ン やFacebookの「いいね!」 ボタンがついている。プロ ジェクト名を考えることは、 これらのSNSを使ってプロ ジェクトを拡散しようとし
  • 32. 31図書館における資金 調 達 ( フ ァ ン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来   ラ イ ブラリー・リソース・ガイド 2013 年 夏号 てくれる人たちのストレスを減らすことも考えねばならない。例えばツイッター のボタンを押すと「 陸前高田市の空っぽの図書室を本でいっぱいにしようプロ ジェクト( 吉田晃子)- READYFOR? #ready_for https://readyfor.jp/projects/an_ empty_library @ready_forさんから」という文言が現れる。もし名前から想像で きないプロジェクトだと、リツイートしてくれた人が説明文を付け足して書かな いといけない。SNSなどで拡散してくれる方々も大切なボランティアである。そ の方たちに負担なく参加してもらえるように考慮した。 2つ目は新着情報を上げること。READYFOR?はブログのように簡単に新着情報 を上げられる。そしてその記事にもSNSのボタンがついている。この業界の人間 は「 自分たちのやっていることは正しい」と思いがちである。ただ理解されな いものは、伝わっていないと同然。どのように社会の人たちに分かるように表現 していくかは、何度も発信し、学んでいくしかない。新着情報を上げると自動 的に2万人を擁するREADYFOR?のFacebookのファンページに掲載される。また 自分のSNSでも簡単にシェアできる。私自身も自信満々で書いた記事に反応がな かったり、逆に想像しなかった記事に「 いいね!」が多かったりして気づきを たくさんいただけた。社会の関心に合わせ、理念など骨格の部分を変える必要は ないが社会に通じる言い回し、キャッチコピー、関心ごとは常にアンテナを張る 必要があり、発信の場であるSNSはその修行の場である。 3つ目は「 我がこと化」を生み出すこと。このプロジェクトの期間中、たくさ んの方から募金と一緒にメッセージをいただいた。自分にとっても図書館は小さ いころの思い出の場所、苦しい時、本に励まされたのでその思いを届けたい、図 書館は遊びの場所であり学びの場所だったので、「 きっと図書館や本がなくなっ て、悲しい思いをしているに違いない」と気づき、思いを寄せてくださったもの だ。気が付いたことは、ほとんどの方が「 自分の経験」をまずは振り返られて いたことだ。そのプロセスを通じて、図書館が壊滅的な被害を受けた陸前高田市 の住民の方と「自分を重ね合わせ」、我がことのように思っている姿であった。 遠い世界のことは自分とは関係ないのではなく、自分事として捉えてもらうに はどうしたらよいかを考える必要がある。数字でデータを示すよりも、声は強い メッセージとなる。プロジェクトページには現場の現状や、活動内容だけではな く、「 こんなときだから、今出会う本が、子どもたちの一生の支えになる」とい う現場の図書館員の声を記した。
  • 33. 32 図書館における資金調達(ファン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来  ラ イ ブ ラ リ ー ・ リソース・ガイド 2013 年 夏号 □30文字以内でプロジェクト名を付けてみよう。 □SNSを活用しよう。まだアカウントを持っていない人は開こう。使おう。使い  倒そう。      資金調達の黄金律は2点ある。Ask(お願いすること)とThank(感謝すること) である。いろいろな手段で資金調達をした後に、ご協力くださった方に感謝する ことを忘れてはいけない。ただ感謝するのではなく、「 感謝しまくれ」とスタッ フには伝えている。自分だってポケットマネーから少しでも寄付することは大き なイベントではないか。わざわざ時間を使い郵便局まで行ってくれてありがとう。 クレジットカード決済の画面に進んでくれてありがとうという気持ちでいっぱい になる。支援者に領収書を発送する際も、一筆を入れることを徹底している。 寄付して一番知りたいことはそのお金がなにに使われたか。シャンティはHP 上で年次報告を公開すると ともに、ネットにアクセス できない方用に印刷した年 次報告も用意している。ま たラオスの絵本出版という ように、プログラム指定の 募金をいただいたときには、 そのプログラムの報告書を お送りしている。 先日READYFOR?実行者の集いがあり、2012年の大賞に「 コアラを守りたい! ∼東山動植物園コアラ応援プロジェクト」が選ばれた。東山動物園は名古屋市が 管轄。税金と入場料で賄っているが、年間にかかるエサ代が課題となっていたそ お礼を伝える 終わりに 【考えてみよう】
  • 34. 33図書館における資金 調 達 ( フ ァ ン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来   ラ イ ブラリー・リソース・ガイド 2013 年 夏号 うである。コアラのエサ代を賄うために集める以上に、「 動物や自然と触れ合う 生涯学習の場としての動物園を認識してもらう」ことを意識したそうである。こ の名古屋市の事例を見て、公立の図書館も自分たちで資金調達が可能になる日が 来るかもしれないと感じた。また資金調達のプロセスを通じて、単なるお金集め ではなく、共感する仲間を増やすことで、図書館の存在をたくさんの方に認識し、 支えてもらえるようになるのではないかと感じている。その輪を広げることで図 書館が見直され、業界全体の底上げにつながると感じている。 東日本大震災図書館事業アドバイザーを務めながら、震災前からのポジション である広報とマーケティングの仕事をしている。そのなかで大切にしている視点 や担当した事例をご紹介した。私自身「 図書館×広報×資金調達」はこれから も追及したいテーマである。またこのトピックでワークショップを頼まれること も増えてきた。なにかお手伝いできることがあれば気軽に声をかけて欲しい。一 緒に図書館のファンを増やしていければと思っている。
  • 35. 34 図書館における資金調達(ファン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来  ラ イ ブ ラ リ ー ・ リソース・ガイド 2013 年 夏号 クラウドファンディングと図書館の結びつきが最も広く知られるきっかけに なったのは、「 READYFOR?」( https://readyfor.jp/)での「 陸前高田市の空っぽの 図書室を本でいっぱいにしようプロジェクト 」( https://readyfor.jp/projects/an_ empty_library)だったといえるでしょう。震災から1年後の2012年3月11日から プロジェクトがスタートし、支援した人数はのべ862人。200万円の目標に対し、 達成金額824万5000円を記録しました。これは、現在でもREADYFOR?が支援し たプロジェクトのなかで最も達成額が高かった事例のひとつです。 このプロジェクトは、吉田晃子さんという方が始めたプロジェクトでした。吉 田さんは陸前高田市にあるモビリア仮設住宅の中に、誰でも使える図書室「 陸 前高田コミュニティ図書室」をつくる活動を行っていました。 吉田さんは岩手県陸前高田市で育ち、子どもの頃から本が好きで図書館によく 通っていましたそうです。しかし、東日本大震災によって親しんだ図書館は全壊、 図書館員は全員死亡もしくは行方不明、蔵書も流出という悲劇が起こったのです。 震災から1年が経ち、モビリア仮設住宅の中に人々が集う図書館が生まれよう としていました。しかし、中に入れる本棚や本がなかったのです。そのための資 金調達を、READYFOR?によって呼びかけたのです。 クラウドファンディング という選択肢 米良はるか(めら・はるか) 1987年生まれ。2012年慶應義塾大学メディアデザイン研究科修了。2010年スタンフォ ード大学へ留学し、帰国後、大学時代から関わっていたウェブベンチャー、オーマ株式会 社にて取締役に就任。2011年3月日本初のクラウドファンディングサービスREADYFOR? の立ち上げを行い、NPOやクリエイターに対してネット上で資金調達を可能にする仕組 みを提供している。World Economic Forumグローバルシェイパーズ2011に選出され、 日本人史上最年少でスイスで行われたダボス会議に参加。 Facebook:https://www.facebook.com/haruka.mera Twitter:https://twitter.com/myani1020 クラウドファンディングと図書館を結んだ「思い」
  • 36. 35図書館における資金 調 達 ( フ ァ ン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来   ラ イ ブラリー・リソース・ガイド 2013 年 夏号 「 今回のプロジェクトを支援して下さった方には、皆様の大好きな本、ちょっ と励まされた本、ためになった本……そんな皆様の思いがいっぱい詰まった本を 一冊、蔵書として、空っぽの図書室に加えさせて頂きます。皆様の思いの分だけ、 少しずつ図書室に本が加わっていきます。皆様の温かいご支援によって、空っぽ の図書室を本でいっぱいにして下さい。どうか宜しくお願いいたします」 吉田さんの思いに共感した多くの方々から支援が集まりました。「 陸前高田コ ミュニティ図書室」は、図書室としての利用のほかにも、住人たちの憩いの場と して、保育園園児が描いた絵が張り出されたりといった、愛されるコミュニティ として運営されています。 このほかにも、図書館によるREADYFOR?プロジェクトは数多くあります。た とえば、東日本大震災で7割の家屋が流された女川町にあった女川町図書室は全 壊し、4万冊の蔵書はすべて流出してしまいました。そこで女川町図書室は書 籍購入費、備品費用、施設の補修費調達のため「 被災地の『 女川つながる図書 館』を大好きな本でいっぱいにしよう 」( https://readyfor.jp/projects/tsunagaru_ library)プロジェクトを始めました。このプロジェクトでは、200万円の目標に 対して、320万1000円の調達を実現しました。 また『 男はつらいよ』全作のシナリオや、歌舞伎座で上演された数々の 歌舞伎作品の台本などの資料を所蔵している松竹大谷図書館( http://www. shochiku.co.jp/shochiku-otani-toshokan/)では、運営費用調達として「 歌舞伎 や『 寅さん』、大切な日本の文化の宝箱を守る。( https://readyfor.jp/projects/ ootanitosyokan)」プロジェクトを始めました。 このプロジェクトは、松竹大谷図書館に勤務する司書の須貝弥生さんが始めま した。須貝さんは大の歌舞伎好きで、面接に来て書庫を案内された時、林立する 歌舞伎台本、400冊の浄瑠璃本に接して、ここで働きたい!と思ったことが松竹 大谷図書館との出会いだったそうです。 現在、松竹大谷図書館には約43万点の資料があり、演劇では歌舞伎、新派、新 国劇、商業演劇、新劇、文楽、日本舞踊などの台本やプログラム、舞台写真を所 蔵し、映画ではシナリオ、プログラム、ポスター、スチール写真などを所蔵して います。 古いものでは阿國歌舞伎の様子を伝える江戸時代の奈良絵本『 かふきのさう し』や、300年前の浄瑠璃本もあるほか、市販されない上演台本や映画シナリオ、
  • 37. 36 図書館における資金調達(ファン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来  ラ イ ブ ラ リ ー ・ リソース・ガイド 2013 年 夏号 また、公開期間を過ぎてしまえば入手困難になってしまう各作品の劇場プログラ ムなどは、この図書館ならではの所蔵資料です。 このような貴重な資料を収集し、利用者に提供できるように整理して保存する のは図書館の重要な仕事です。しかし、毎年9000点も増えていく資料を確実に 整理して公開するのは大変な作業であり、資金不足から図書館の運営が苦しく なってきていたそうです。そこで、図書館の規模を縮小することなく、利用者へ のサービスを続けていけるようREADYFOR?を使って支援を呼びかけたのです。 このプロジェクトでは200万円目標に対して、357万9000円を調達しました。 このように、図書館のプロジェクトは高額な資金調達を達成しているものが数多 く見られます。 どうして図書館とクラウドファンディングは相性がよいのでしょうか? もち ろん、大震災という大きな社会的悲劇に、市民からの温かい気持ちと関心、「 自 分もできる支援をしよう」という使命感が集まり、陸前高田市のプロジェクトの ような成功を生んだのは確かなことでしょう。しかし、それに加えて、図書館と いう存在への多くの人の温かな思いがつながった、ということがうかがえます。 人は、本から人間的成長や学びを得て育った記憶を持って生きているものです。 そんな本と出会う機会を提供したり、地域の人々が集まることのできるコミュニ ティスペースとなっている図書館を、実は日本中の多くの人々が協力して守って いきたいと考えていたのです。この陸前高田市のような事例は、人々の、普段は 見えない図書館への思いが顕在化した結果だとも考えられます。 図書館は地域の人々のために存在し、運営されているはずですが、利用者から は直接的な利用料などを集めることができないタイプの公共施設です。ですから、 運営主体である自治体の財政が悪化したり、災害などで財政基盤がゆらぐと、同 時に図書館の運営も大きな影響を受けざるを得ません。 そうした状況に、クラウドファンディングによる日本全国からの資金調達とい う選択肢は相性のよいソリューションといえるでしょう。 図書館の資金調達の手段というのは、まだまだ少ないのが現状です。図書館 における二大資金調達手段は、「 直接的な募金」か「 本を寄贈してもらう」こと。 しかし実際には、図書館はあまりお金を受け取らない体質でもあるために、ほぼ 支援と資金を同時に集めるための仕組み
  • 38. 37図書館における資金 調 達 ( フ ァ ン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来   ラ イ ブラリー・リソース・ガイド 2013 年 夏号 本の寄贈のみになってしまっているのが現状ではないでしょうか? もちろん本 というものは図書館の財産ですが、本だけでは解決できないこともたくさんある のが現状です。 こうした背景が、あるいは図書館が一般的な資金調達を控えてしまう背景なの かもしれません。しかし、クラウドファンディングは、いわゆる「 募金を集め る仕組み」といった体質のものではなく、「 支持者を集めながら資金も同時に調 達できる仕組み」です。 図書館に限らず、READYFOR?のプロジェクト全体にいえることは、支持者は 「 このプロジェクトを支持したいので、自分はお金による支援という形で、活 動への支持を表明している」のです。つまり「 お金を通じて人を集めている」 というニュアンスが大きく、「 お金を集めるために人を集めている」わけではあ りません。そこが狭義の「 募金」的なアプローチと異なるところであり、図書 館にとっても資金調達の選択肢に入れていただける個性であるように感じます。 というのも、READYFOR?は、そもそも「 ソーシャルイシュー」つまり「 社会 的問題意識」のなかで生まれる活動を、資金調達を通じてサポートするというこ とがサービスコンセプトの一つになっているのです。社会問題を解決しようとし ている人の活動をインターネットを通じて広く伝え、支持者からの小さな支援を 集めてその活動を応援し、結果的に社会をよくしていくこと全体をサービスのス キームとして提供したいと考えています。つまり、温かく応援される社会活動を たくさん集め、より多くの人々に伝えていきたいというのがREADYFOR?の第一 義なのです。図書館における資金調達もそのひとつであり、今までは自治体的な 予算によって決められていたことが、社会的な支援によって、よりよい解決に至 ることができる可能性を創出できることそのものに、READYFOR?は関心があり ます。それゆえに、より多くの図書館に、READYFOR?のサービスを利用してい ただきたいと願っているのです。 さらに「 この図書館が大切だ、と言ってくれる人がこれだけいる」というこ とを示すことができるのは、もしかしたら、お金を集める以上の意味があるのか もしれません。 今までそうした声を集めることは「 署名」といった形で行われてきました。 しかし、署名で集められるのは、声だけです。さらに、時として署名は数を集め ることだけに走りがちであり、本当に支持者の気持ちのこもった「 声」といえ るのかどうかがわからない部分もあり、世間一般的にもあまり高く評価されない
  • 39. 38 図書館における資金調達(ファン ド レ イ ジ ン グ ) の 未 来  ラ イ ブ ラ リ ー ・ リソース・ガイド 2013 年 夏号 というのが事実です。 一方で、READYFOR?のようなクラウドファンディングの場合は、「 このプロ ジェクトには多くの支持者が存在し、支援が集まっています」ということが、イ ンターネット上に常に公開され、誰にでも見ることができ、さらに誰でも支援を することができます。 多くの人々にプロジェクトが支持され、さらにお金も集まっているということ を見せること、つまりその活動の社会的重要性を示すことを通して、資金調達を 可能にしているのです。そういった声を集めて力に変えていくということは、ま さに地域にある図書館などの必要性を訴えるといった文脈などで、大きな有用性 があるかもしれません。 また、READYFOR?には「 応援コメント」という機能があります。これは支援 者が書くコメントなのですが、このコメントには、非常に強く思いがこもったも のが多く見られます。そしてプロジェクトの実行者は、このコメントを読んで、 「 プロジェクトをやってよかった」といった感想を持つ事が多いのです。「 お金 が集まったのもよかったけれど、仲間の存在を強く感じることができたのが励ま しになった」といった感想も数多く寄せられています。 READYFOR?のプロジェクトの実行者は、起業家魂を持っている方がたくさん います。そして彼ら彼女らは常に「 自分のやりたいこと」や「 見たい世界を実 現していく」なかで、不安を感じることが多いのです。コメントを通してでも 「 応援してくれる人」とたくさん出会うことできると、「 もっと頑張れる!」と 思うこともできます。それが結果として、社会的に有用なアイデアを前進させる ことにつながるのです。 READYFOR?は、本当に社会的に意味のあることをしている人に、支持者との 出会いを生み出し、正しい社会的評価としての支援と資金を同時に集めるための 仕組みなのです。 READYFOR?は、「 実行者」を支援するための、日本初にして国内最大規模の クラウドファンディングサービスであり、現在では合計2億円もの支援がこれに よって生み出され、さまざまなプロジェクトが実現されています。 READYFOR?で資金調達をしたい時は、まずWebサイト( readyfor.jp)にアク 0円スタートが可能な資金調達