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障害児支援における記録用紙「ヒトマト」導入の効果―支援員の障害児支援に対する「援助・援護・教授」機能に着目して―
- 3. 援助・援護・教授
援助設定をした上で、
必要な行動を教える
今できる選択肢を作
る
一旦基準を緩める 選択肢や基準を
社会に向けて主張す
る
望月(2007)
• 障害児支援の中では、障害児に対する「援助・援護・教
授」と同時に、支援員に対する「援助・援護・教授」も
行われているのではないか?
3
- 5. 実践場所の概要 (2012.4時点)
• 障害福祉施設アルス・ノヴァ(静岡県浜松市)
の放課後等デイサービス
• 支援員:正職員4名、準職員3名
• 利用者:知的・精神・発達障害の小中高校生
• 施設の方針
– 「診断名」ではなく「個人」から始まる支援
– 問題行動の読み替えによる価値の転換
– 障害者の存在を通して、社会の既存の価値観や規範
をゆさぶっていく、変えていく
5
- 7. ヒトマトリックス(通称:ヒトマト)
支援員ごとに
真ん中に名前 ペンの色が
が書かれた 決まっている
A4の紙
誰かが書いたことに
出来事や
他の人が情報やコメ
思ったことを
ントを加える
書く
日付を記入
7
- 8. ヒトマト導入の経緯
時期 出来事
2011年春 • 利用者一人につき支援員一人が様子を記録
• 問題行動などを口頭で共有
⇒振り返りがつまらない。積み重ね感がない。
一方で、雑談で共有されるエピソードは豊
か。
2011年夏 ドキュメント展「佐藤は見た!!!!!」開催
• 福祉施設の日常のエピソードを発信
• 各支援員の目線で「面白いこと」を展示
2011年秋冬 「佐藤は見た!!!!!!」の経験を踏まえて、日々の
支援と記録の方法を見直すための議論。
2012年4月 ヒトマト導入
8
- 9. Aくんのプロフィール (2012.4時点)
• 特別支援学校に通う12歳男児
• 自閉症
• 2010年6月から当施設を利用
• 外国出身で、スペイン語(家庭)・日本語(学
校、施設)を理解
• 音声による発話もあるが、発音がうまくできず
聞き取ることが難しい
• 2012年4月頃~ひとりの支援員とジェスチャー
で会話をはじめる
• 2012年4月当初は他害(他の人の目を突く、叩
く)が問題視されていた
9
- 10. 支援員プロフィール(2012.4時点)
Bさん(29歳,男性) Dさん(25歳,男性)
•勤続2年 •勤続1年8ヶ月
•精神保健福祉士 •保育士
•専門:社会福祉 •専門:保育
•他施設勤務経験あり
Eさん(23歳,女性)
•Aくん担当者(2012年3月
~8月) •勤続1年
•保育士
Cさん(28歳,男性) •専門:芸術教育
•勤続1年6ヶ月 •Aくん担当者(2012年9月
•専門:工業デザイン ~現在)
10
- 12. ヒトマトの使い方:振り返り
• 子ども一人一人に1
日1枚のシート
• どんなことをして過
ごしていたか、それ
を見てどう思ったか
などを職員全員で記
入
• 個人のバインダーで
保管
12
- 13. ヒトマトの使い方:振り返り
• 支援員一人一人に1
日1枚のシート
• 誰とどんな関わり方
をしていたか、それ
を見てどう思ったか
などを職員全員で記
入
• 個人のバインダーで
保管
13
- 14. ヒトマトの使い方:漉し作業
• それぞれの子どもの
担当者が、たまった
シートを見返して、
その子の特徴や今後
の目標を書き出して
いく
• 支援員のヒトマトの
漉し作業は今のとこ
ろやっていない
14
- 15. ヒトマトの使い方:漉し作業
• 漉し作業で出てきた
、その子の特徴、今
後の目標などの中か
ら、特にみんなで共
有すべきことを付箋
に書いて、壁に貼る
15
- 17. ヒトマトの使い方の相関図
支援→振返 支援→振り返
雑多な記 り
雑多な記録
録
トピック立
支援→振返 て
雑多な記 漉し作業 漉し作業
録 支援→振り返
り
支援→振返 雑多な記録
雑多な記 トピック立
録 て
場合によっては 場合によっては
数回繰り返す 数回繰り返す
17
- 19. 事例:Aに対する支援の変化
手話辞典プロジェクト
•Aの“おしゃべり”相手を増
やすため、彼の手話をイラ
ストと文字で示した辞典を
作成。
•そのプロセス自体が、彼の
できること(手話によるコ
ミュニケーション)を見つ
け、共有し、分化強化する
支援だった。
19
- 20. 事例:Aの言語行動に関する記述の変
化
Aのタクトとイントラバー Aのタクトとイントラバー
バルに関する記述の一日平 バルに言及した支援員の一
均数 日平均人数
※Aの言語行動そのものの指標ではなく、Aの言 ※同左
語行動に対する支援員の注目の指標である点に
注意
1.6 1.4
1.4 1.2
1.2 1
1
0.8
0.8
0.6
0.6
0.4 0.4
0.2 0.2
0 0
4月 5月 6月 7月 4月 5月 6月 7月
「おしゃべり」「いろいろ教えてくれる」「語彙が増えた」との記述
20
- 21. 支援全般に対する効果 (6月インタビュー)
• 誰かに言いたいけど議題にあげるまでもないことが毎日
ある。それを吐き出していい時間。(Cさん)
• ヒトマトに書いたことに対して、他の人がコメントして
くれる。ちゃんと見られている安心感。去年とやってる
こと自体は変わらないけれど、これでいいんだという自
信を持てた。(Dさん)
• 待つという支援をしたいときに、何もやっていないんじ
ゃなくて、支援として待っているんだと、はっきり言え
るようになったので、やりやすくなった。(Eさん)
21
- 22. 支援全般に対する効果 (6月インタビュー)
• あの人はあの子に今こういうふうに関わっているんだな
というのが共有できているので「やってるやってる」と
か「これからどうなるんだろう」と期待して見ていられ
るようになった。(Cさん)
• 自分が見てなかった情報も集まる。漉すのは自分だけれ
ど、独りよがりにならずにすむ。(Dさん)
• 「支援目標」に対する考え方が変わった。子どもがどう
なるべきかというよりも、自分が子どもに対してどうい
う目線を向けたいのか、どう関わりたいのか、という支
援員にとっての指針だと思う。(Bさん)
22
- 23. ヒトマトの「援助」機能
子どもに対する「援助」 支援員に対する「援助」
• 意識が集中しがちな問題 • 支援員それぞれの関わり
行動以外の様々な行動に 方が、他の支援員によっ
ついても記録される余地 て肯定される。見られる
がある。強化の機会が増 、認められることによる
える。 強化。
• 複数の目線からの評価が • 些細な出来事でも吐き出
得られる。価値の反転や せる。表現することによ
問題の読み替えが起きる る自己強化。
機会が増える。
23
- 24. ヒトマトの「援護」機能
子どもに対する「援護」 支援員に対する「援護」
• 援助つき行動が起きる環 • 支援の方針や意図を、他
境設定を支援員どうしが の支援員に対して示すこ
共有できる。同様の関わ とができる。期待を持っ
りを他の支援員も行うこ て見守ってもらえる。理
とによって、当該行動を 解や協力を得られる。
維持・般化しやすくなる
。
24
- 25. ヒトマトの「教授支援」機能
• 設定された目標に向かって行動をどう増やすか/減らす
かについてのアイデア集めとその共有を行い、支援場面
の「教授」行動を支援する。
子どもに対する「教授支援」 支援員に対する「教授支援」
• 日々の様子から、次回、その • 漉し作業を通して、支援員に
子に対してどのような環境を とっての次の方針を確認、見
提供するかというチャレンジ 直しできる。
の方向性が見える。 • 通常の振り返りでのコメント
• 漉し作業を通して、子どもに や、トピック立てによって、
とっての次の目標が設定され 他の支援員から様々な情報や
る。 アイデアを提供してもらうこ
とができる。
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