シリア内戦＆シリア難民問題をふりかえる

Copyright 2016 Daichi Hirakawa (Dec 6, 2016)
シリア内戦＆シリア難民問題
をふりかえる
～デモから国際紛争へ～
中東政治・治安研究家
平川大地
1

この資料でご説明したいこと
① 政治・経済・社会問題・国際情勢など
いろんな要素が絡み合って始まった
シリア内戦は・・・
② 大国や周辺の国々が介入して、
複雑な「国際紛争」になってしまった
③ 避難民や人道援助…日本はもちろん、
世界中に関係する問題
2

もくじ
3
1. シリアと内戦
2. シリア国内の「登場人物」
3. シリア国外の「登場人物」
4. 行き場を探す避難民
5. シリア内戦と日本
最後に…リア内戦と日本
[付録] シリア内戦の経緯
p.4～
p.19～
p.22～
p.32～
p.40～
p.48
p.49～

シリア・アラブ共和国
１. シリアと内戦
4

5

【治安】
• 武力紛争はもちろん、テロとも無縁、犯罪も極めて少ない
【社会】
• 政治と宗教の分離を守る「世俗国家」
• 宗教・宗派同士の対立はほとんど表面化せず
【経済】
• 2004～2010年の平均経済成長率５．４％
【観光・留学】
• 海・緑・砂漠・雪がそろった数少ないアラブ国
• しつこすぎずあたたかい国民性＝中東旅行ビギナーに最適
• ウマイヤ朝時代の首都ダマスカス、ローマ帝国時代の町がそのま
ま残るパルミラ、「世界最古の都市」といわれる商都アレッポ・・・・
• 東京外大などがダマスカス大と協定、アレッポに慶応大の研究所
6
近年のインドネシア
に匹敵
内戦前のシリア

7
ダマスカスの夜景, 内戦前？
[出所] Yahia Aboasali @ Panoramio

• 人口 2,139万人(‘10年)
→ 1,719万人(‘16年推定)
• 実質GDP 600億ドル(‘10年)
→ 246億ドル(‘14年推定)
• 輸入総額 176億ドル(‘10年)
→ 49億ドル(’15年)
• インフレ(物価上昇)率 4.4％(‘10年)
→ 38.1％(‘15年推定)
• 失業率 14.9％(‘11年)
→ 50.0％(‘15年推定)
• 貧困率 82.5％(‘14年推定)
[出所] CIA, IMF, 世界銀行, ITC
8
経済の規模
半分未満！
制裁などでモノが
入ってこない！
物価
１０倍！
２人に１人
が失業！

[出所] ロイター
パルミラの遺跡(ベル神殿), 2010年
9
前

[出所] ロイター
パルミラの遺跡(ベル神殿), 2015年
10
後

Copyright 2016 Daichi Hirakawa (Dec 3, 2016) [出所] ロイターパルミラの遺跡(ベル神殿), 2016年
11
後

Copyright 2016 Daichi Hirakawa (Dec 3, 2016) [出所] RT
アレッポの街, 内戦前
12
前

Copyright 2016 Daichi Hirakawa (Dec 3, 2016) [出所] RT
アレッポの街, 内戦中
13
後

ホムスの街, 内戦前
14
前

ホムスの街, 内戦後
15
後

2011年3月に始まった反政府デモをきっかけに、
一部の民間人や元政府関係者が、
デモを弾圧する政府と、武力で戦い始めた。
【反政府デモの引き金】
①“アラブの春”：「反政府ブーム」
2010年末～他のアラブ諸国のデモに刺激
② 政治＆経済の「格差」
(非民主的な政治、宗派、血縁、
経済自由化、物価上昇…)
【現在までの人的被害】
• 2011年3月～ 5年半以上
• 死者数：30万人以上
(うち民間人 8万6千人以上)
[～2016年8月13日]
• 国外避難民：約480万人
[～2016年10月23日]
• 国内避難民：約615万人
[～2016年10月]
[出所] 「シリア人権監視団」, 3RP, OCHA
16
シリア内戦の「直接の」きっかけ

 大統領率いる「バアス党」が内閣・国会をほぼ独占
 大統領＆側近が軍や警察の中枢を掌握
 「バアス党」と秘密警察が政界から市民生活まで監視
⇒ 監視・統治する側＝大統領と「コネ」のある人々
2000年代の「経済自由化」
先進国なみのルールないまま国営企業を「民営化」
⇒ 結局、大統領と「コネ」のある人物が経営者に
社会主義的な政策(補助金など)の縮小
⇒ 農業・製造業（地方都市・農村）が不利に
⇒ 食糧や必需品の値上がり
大統領やその周辺と「コネ」がある人／ない人
との格差・不平等
＝同じようなコミュニティ(宗派・血縁)出身かどうか
政
治
経
済
17
「反政府気運」の根底に、『政治＆経済の格差』
IMFなどの機関＝国際社会が指導

アサド家
とその親戚
「ムハーバラート」
(情報諸機関)
政治＆経済の「格差」
大統領
内閣
(首相・各省庁大臣)
人民議会(国会)
進歩国民戦線
バアス党(議会部門)
職業組合等
軍
バ
ア
ス
党
共和国護衛隊
司令官
総合情報局
ﾀﾞﾏｽｶｽ支部長実業家
スンナ派以外の少数宗派
or アサド家との血縁関係
[出所] 東京外国語大学青山弘之教授の図を参考に発表者作成
18

2. シリア国内の「登場人物」
勢力目標
①政府
(アサド政権)
アサド大統領をトップとした
今の政治体制の維持
(大統領・内閣・国会・軍・治安機関)
②反政府勢力
アサド大統領を含む
今の政治体制の打倒
世俗派完全な民主主義への移行
イスラム主義派
(大半)
イスラム色の強い
民主主義への移行～「イスラム国家」の樹立
「イスラム国」
(ＩＳ)
自分たち以外の全てを排除した
独自の「イスラム国家」の維持・拡大
③クルド人クルド人自治区の設置
穏健から超保守まで様々！
19

勢力図（2016年10月現在）
アレッポ県
イドリブ県
ラタキア県
ﾀﾙﾄｩｰｽ県
ハマ県
ホムス県
ダマスカス県
ﾀﾞﾏｽｶｽ郊外県
ｽｳｪｲﾀﾞ県ダラア県
ｸﾈｲﾄﾗ県
デリゾール県
ラッカ県
ハサカ県
イラク
トルコ
ヨルダン
レバノン
②反政府勢力
③クルド人勢力
ＩＳ
トルコ軍支援部隊
①政府軍
その他
トルコ軍が侵攻して
「自由シリア軍」の一部を支援
濃い色：制圧地域
薄い色：移動可能地域
主要都市は西部に集中
[出所] ジュスール研究センター
20

シリア内戦に関わる勢力と、その主な組織
[出所] 発表者作成
21
アルカイダ

3. シリア「国外」の「登場人物」
①政府＆
政府支持勢力
②反政府勢力
④「イスラム国」
（ＩＳ）
世俗派
・IS撲滅！（ついでに②も・・・）
・長年支持してきたアサド政権
を見捨てない！
・欧米の影響力が及ぶと困る！
・「イスラム国家」を樹立・拡大！
・邪魔者はみな殺し！
全て
敵
22
・IS撲滅！
・アサド政権打倒！
・新政権＆国づくりに関
わりたい！
・ロシア、イランに対抗！

3. シリア「国外」の「登場人物」
①政府＆
政府支持勢力
②反政府勢力
④「イスラム国」
（ＩＳ）
世俗派
23
クルド人と協力してＩＳ
やっつけたいのに、
下の３カ国ときたら・・・
イスラム系組織
支援してるし、
ＩＳに入った国民
多いし、
かっこつけとか
ないと・・・
クルド人は敵！
ＩＳもろともやっつけろ！

「国際化」の流れ【①イランとトルコの介入】
・2011年8月,反政府派がイスタンブール
で「シリア国民評議会」結成
・2011年10月,「自由シリア軍」に
支援開始
（その後イスラム系の組織も支援）
・ISを含む反政府組織のメン
バーがトルコ経由でシリア入り
・内戦開始当初から, イラン
「革命防衛隊」やシーア派組織
「ヒズボラ」が政府側で戦闘
←ヒズボラ
（本拠地はレバノン）
24

・2012年にカタール、サウジが反
政府組織に武器供与開始
・旧「ヌスラ戦線」を含むイスラム
主義派が主な対象
・2012年11月, カタールで反政府
組織の連合体が結成
・2012～13年までに米・英・仏・ヨ
ルダンがトルコなどで反政府勢
力を訓練＆武器供与開始
・「自由シリア軍」などの世俗派
が対象
シリア国民連盟
トルコで結成された「シリア国民評
議会」が合流。
政治組織と武装組織を束ねるが、
「イスラム国」や旧「ヌスラ戦線」は
不参加。
【② 欧米とアラブ諸国が反政府派を支援】
25

・2013年3月, ISの幹部が結成した
「ヌスラ戦線」が、北東部の都市
ラッカを制圧
・ISがラッカを強奪し「首都」に
・アレッポ県など北部＆東部で制圧
地域を広げ、
「イスラム国家」の樹立を宣言
・シリアで人員・武器・資金を蓄えて、
隣国イラクで広い地域を制圧
・全ての国・組織と対立
【③「イスラム国」(IS)と「ヌスラ戦線」の台頭】
・ラッカ強奪でISと決別し「アルカイダ」の傘下に
・他の反政府組織と協調して、急速に勢力を拡大
・2016年7月,シリア国内でアサド政権打倒に専念す
るとして、「アルカイダ」との関係解消を発表
⇒「シャーム解放戦線」に改称
アルカイダ
ＩＳ
旧「ヌスラ戦線」
26

・2014年9月, 米国とアラブ5ヵ国
が「イスラム国」（IS）に対する
空爆を開始
（旧「ヌスラ戦線」も対象に）
・その後増え、空爆実施国だけで
16ヵ国に
米国、オーストラリア、バーレーン、オランダ、
デンマーク、ベルギー、フランス、ドイツ、ヨ
ルダン、モロッコ、カタール、サウジアラビア、
トルコ、UAE、英国、カナダ
（※イラクでのみ活動の国も）
・反政府組織の訓練や武器供与も
・日本を含めアジア諸国は参加して
いない
【④「有志連合軍」によるＩＳ空爆】
27
・・・

・「革命防衛隊」や「ヒズボラ」などと協力
・2016年8月にイラン国内の空軍基地を使
用開始したが、イランとの関係悪化で中断
・2015年9月, シリア政府の要請を受
けて空爆開始
・標的は主にISと旧「ヌスラ戦線」
だが、政府軍を支援しつつ
他の反政府組織も度々攻撃
・シリア西部の基地を半永久的に使用
【⑤ ロシアの軍事介入、政府軍を支援】
28

・ISと戦わせるため、米国がクルド人
中心の組織「シリア民主軍」を支
援＆訓練
・2016年11月,「シリア民主軍」が米軍
の支援でISの拠点ラッカを攻撃開始
したが、トルコは協力せず
・2016年9月, シリア北部に侵攻、
「自由シリア軍」の一部を直
接支援
・ISだけでなく、クルド人組織も標的
・米国が支援する「シリア民主
軍」と戦わせる
【⑥ トルコの軍事介入と米国のクルド支援】
29

【今後、米・トルコがロシア・イランに歩み寄り・・・？？】
 ＩＳと旧「ヌスラ戦線」だけ掃討 …> 他の反政府組織も？
 アサド政権の即時退陣は不要 …> 退陣自体不要？
 クルド人は北東部で自治
政府支持派に追い風（当面は・・・）
政府＆
政府支持勢力
クルド人勢力
（ＩＳ）
反政府勢力
世俗派
アサド政権
すぐに退陣を！
アサド政権退陣
ありえない！
「ヌスラ戦線」徹底抗戦！
欧米型の民主化に不満
北東部だけ？？
徹底抗戦！
この際、反政府勢力
全部やっつける？
ロシアに任せちゃう？
（トランプ次期政権）
米と仲悪くなったか
ら、ロシアに接近！
でも、クルド人の自治
は困る！
イランの影響力が残
ると困る！
30

【今後、米・トルコがロシア・イランに歩み寄り・・・？？】
 ＩＳと旧「ヌスラ戦線」だけ掃討 …> 他の反政府組織も？
 アサド政権の即時退陣は不要 …> 退陣自体不要？
 クルド人は北東部で自治
関係国がさらに増えて複雑に・・・・
政府＆
政府支持勢力
クルド人勢力
（ＩＳ）
反政府勢力
世俗派
アサド政権
すぐに退陣を！
アサド政権退陣
ありえない！
「ヌスラ戦線」徹底抗戦！
欧米型の民主化に不満
北東部だけ？？
徹底抗戦！
この際、反政府勢力
全部やっつける？
ロシアに任せちゃう？
（トランプ次期政権）
米と仲悪くなったから、
ロシアに接近！
でも、クルド人の自治
は困る！
イランの影響力が残
ると困る！
31
【イスラエル】⇒ＩＳ＆アサド政権対策
2016年11月末：ゴラン高原からＩＳを攻撃、
ダマスカス郊外の政府支持組織を空爆
【中国】⇒ＩＳ＆ウイグル系過激派対策
・2016年8月：軍の国際協力室長がダマスカス
訪問、シリア国防相に軍事支援を約束
・中国の軍事訓練官がシリア入りの情報も

イラク・クルド自治区へ避難する民間人（2013年8月）
[出所] UNHCR
32

スロベニアを移動するシリア避難民（2015年10月）
[出所] Wikicommons
33

280,045
2,733,655
0
500,000
1,000,000
1,500,000
2,000,000
2,500,000
3,000,000
2012年3月
2012年6月
2012年9月
2012年12月
2013年3月
2013年6月
2013年9月
2013年12月
2014年3月
2014年6月
2014年9月
2014年12月
2015年3月
2015年6月
2015年9月
2015年12月
2016年3月
2016年6月
2016年9月
欧州（※）
トルコ
レバノン
ヨルダン
イラク
エジプト
国・地域別のシリア避難民数の傾向
[出所] 3RP, Eurostat
当初は周辺５カ国に流入
→トルコ＆ヨーロッパにシフト
・・・周辺国の受入能力に限界？
(※) EU28カ国で申請された
亡命の件数。
• 周辺５か国登録避難民：
４８１万０，２１６人
(2016年11月7日時点, UNHCR)
• ヨーロッパでの亡命申請件数：
１１７万７，９１４件
(2016年9月時点, UNHCR)
その他：アラブ諸国、北米、
シンガポール、南米、ロシア、
マレーシア、オーストラリア
34

[出所] IDMC
600,000
3,000,000
6,500,000
7,600,000
6,600,000
6,100,000
2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年8月
忘れてはならない「国内避難民」
• 国内避難民（IDP）：
国内で移住を余儀なくされた人々；
６１０万人 (2016年8月時点, OCHA推定)
• シリア国民の生活環境：
-人道援助が必要；１，３５０万人
-医療；1,150万人
-水道・衛生；1,210万人
-教育；570万人
-住居・必需品；150万人
-「孤立住民」；60万人
(2016年, OCHA)
35

避難民を取り巻く環境【レバノン・ヨルダン】
【避難民の状況】
• 大半が都市部の不法住宅地で、公共サービスを受けられないまま生活。
• 国際機関の支援体制が整ったキャンプで暮らす避難民はわずか。
• １０人に７人が貧困状態。８８％が現在もしくは近い将来に貧困状態。
(2015年, 世界銀行・UNHCR)
【受入国民の反応】
• ７１％のレバノン国民が「シリア避難民は国家の安全の脅威」と回答。
• ８２％のレバノン国民が「シリア避難民が職を奪っている」と回答。
(2013年5月, FAFO)
• ９０％以上のヨルダン国民が「シリア避難民の増加は不動産価格や雇用の
機会にマイナスの影響を与えている」と回答。(2015年6月, IRI/MEMRC)
• ８３％のヨルダン国民が「シリア避難民の受入コストを国際社会が分担
すべきだ」と回答。また、避難民へのマイナスイメージが極めて高い。
(2016年8月, ヤルムーク大学難民・避難民・強制移住研究センター)
36

避難民を取り巻く環境【トルコ】
【避難民の状況】
• 2014年4月より、シリア人の亡命申請者は90日～1年間の滞在が可能に。
• キャンプで暮らす避難民は９％のみ。残りは都市部で求職しながら生活。
• 避難民は失業率が高い地域（シリア国境地帯）に集中している。
(2016年, AlSharq Forum)
• ８５％のトルコ国民が「シリア避難民は国にマイナスの影響を与えている」
「移民が就職をより難しくしている」と回答。
後者は年々増加。
(2015年8月, Buzzfeed/Ipsos)
• ８２％のトルコ国民が「シリア避難民の
帰化に反対」と回答。
(2016年3月, MetroPOLL)
37

避難民を取り巻く環境【ヨーロッパ】
• EU10カ国の国民の・・・
- ５９％が「移民は国内でテロの可能性を高める」と回答。
- ５０％が「移民は職や公的扶助を奪うため国の負担だ」と回答。
(2016年7月, Pew Research Center)
38
「イスラム国」による欧州
でのテロも大きく影響？
⇒米国の世論調査では2015年
末のパリ同時多発テロ後、
シリア避難民の受入れ・支援
に反対する回答が急増
(2016年3月, Brookings)

避難民を取り巻く環境【ヨーロッパ】
• シリア避難民などの初期受入国になりやすい東・南欧諸国ほど、
「イスラム教徒にマイナスイメージをもっている」との回答率が高い。
(2016年7月, Pew Research Center)
39

【シリア情勢に対する日本政府の立場】
～反政府から停戦・人道支援重視へ～
⇒しかし、アサド政権への経済制裁に参加しているなど、
シリア政府側にとっては明らかに「非友好国」！
40
2011年
8月
「アサド大統領は…もはや正統に国を統治することはでき
ず、道を譲るべき」（外務大臣談話）
2013年
6月
「シリアの将来は、シリア人自身が決めていくべき…
一刻も早く暴力が停止し、安定が実現する中で、…
反体制派の支援ユニットやNGOなど…とも調整・協力しな
がら…支援を通じて…人道ニーズに…貢献する」（同上）
2016
年10月
「軍事的手段によって解決できる問題ではなく、…
シリア内外のすべてのシリア人を支援…
日本は…いかなる軍事作戦にも参加していない。…テロと
の戦いにおいては、…根本的原因に…中長期的な解決策を
創出する必要がある」（外務大臣がアラビア語紙に対して）

【日本政府の対シリア支援】 2012～2016年度
～国連(OCHA)への人道支援出資額、（英国に次ぎ）第４位～
⇒2012、2013、2016年度の合計６３０万ドル出資（2016年11月末時点）
41
0
5,000,000
10,000,000
15,000,000
20,000,000
25,000,000
30,000,000
35,000,000

【避難民受入れに対する立場】～移民そのものに消極的～
◆政府：「援助」という形での協力にとどまる
• この総会でシリア・イラクの難民支援に8億ドルの拠出を表明
• 2016年5月、JICA技術協力制度を利用してシリア難民150人を
「留学生」として受け入れる方針発表
⇒2015年度に難民認定or在留許可したシリア人は９人
（法務省)
42
「我々は移民を受け入れる前に、女性の活躍であり、
高齢者の活躍であり、出生率を上げていく…
難民の問題においては…難民を生み出す土壌そのものを変え
ていくために…貢献していきたい」
（2015年9月, 安倍首相, 国連総会後の会見でシリア難民受入れについて）
中国と韓国も「第三国定住」を受け入れていない。
認定したシリア難民数もごく少ない。

◆世論：パリ同時多発テロ以前から消極的
43
2015年
9月
43.3%「難民受入れ人数を減らした方がいい」
36.8%「このままでいい」
Yah
oo!
ﾆｭｰｽ
2015年
12月
44%「(欧州に多く流入している)難民を日本が受
け入れる必要はない」
毎日
新聞
2016年
1月
58%「難民を積極的に受け入れた方がよいと思わ
ない」
65%「難民や外国人労働者の受入れ制限は今の
ままでよい」
朝日
新聞
2016年
2月
68.9%「日本が移民や難民を大規模に受け入
れることに反対」
産経
新聞

◆世論：なぜ消極的？…やはり経済・雇用＋文化
44
「移民は自分の国の
経済に良い」
と答えた人の割合
２０％＝２２カ国中１５位
（2016年7月, Ipsos MORI）

45
「高い学歴や資格を持つ
移民は優遇されるべきだ」
２６％＝２２カ国中２２位

46
「移民は自分の国での
生活を面白くする」
１４％＝２２カ国中２０位

◆おわりに：そもそも「よくわからない」から怖い？
47
●「多文化共生と外国人受け入れ」に関する自治体アンケート2015
Ｑ．シリア難民問題に関する日本としての対応？
「わからない」（５５．６％＝最多）
Ｑ．移民政策の必要性は？
「わからない」（４４．４％＝最多）
Ｑ．現在の多文化共生社会の課題は？
「外国人に対する情報提供」（８８．９％）、
「実態把握が難しい」（５９．３％）
「国が判断すべき問題」
との回答も
「国が判断すべき問題」
との回答も
「シリア避難民が日本語・文化に慣れず、職を得られないとの報道も。
「背景知識」、「コミュニケーション」、「当事者意識」が課題か
(2015年11月,日本国際交流センター)

最後に…リア内戦と日本
 シリア内戦は一種の「政治」であり、「権力闘争」。
政治がからんだ暴力沙汰は初めてじゃない
(例) 63年ｸｰﾃﾞﾀｰ、66年ｸｰﾃﾞﾀｰ、73年ハマ事件、99年ラタキア事件
「政治対立」や「権力闘争」に客観的な『善』『悪』はない！！
• 誰がよくて誰が悪いか／誰が敵か味方か＝個々人により違う
• 非人道的なことをやってるのはアサド政権だけ？反政府派だけ？
 国際政治・紛争を『善VS悪』の構図にはめこんでしまうと…
⇒政治家の運動やプロパガンダに誘導されやすくなる。
 諸外国がいろんな「言い訳」をして、国益のためシリアに介入。
国際機関やNGO経由or個々人で「世界市民としての」支援を！
48
トンキン湾事件
（ベトナム戦争）
ナイラ少女証言
（湾岸戦争）
大量破壊兵器
（イラク戦争）
ウソウソウソ

① 反政府抗議行動(デモ)から武力紛争へ
11年1月28日小規模なデモ(政治改革を要求)
11年3月15日ダマスカス、アレッポなどで大規模デモ開始。
全土に拡大
(政治体制の打倒＝大統領の退陣を要求)
11年3月20日南部のダラア県で政府部隊が武力弾圧。
その後、同様のケースが増加
11年7月4日北西部のイドリブ県で政府部隊への武力攻撃
11年7月29日離反兵などが「自由シリア軍」(FSA)を結成。
10月にはトルコによる支援を認める
11年8月23日トルコで反政府組織「シリア国民評議会」
(SNC)結成
11年10月～各地で戦闘が日常化
イギリスで「女王打倒」、日本で「天皇打倒」を唱えるようなもの。
ましてや途上国ではタブー中のタブー。
49

② 戦闘の激化と「ヌスラ戦線」の登場
12年1月23日「ヌスラ戦線」結成
(’11年5月に「イスラム国」(IS)の幹部がイラクからシリアに
派遣される)
12年4～5月アナン前国連事務総長による停戦工作(失敗)
12年6月22日政府軍が領空の境界付近でトルコ軍機を撃墜
12年7月18日 FSAが軍情報局本部で爆弾テロ
(大統領の親族含む高官4人死亡)
12年12月10日米国が「ヌスラ戦線」をテロ組織に指定
13年2月21日バアス党本部近くで爆弾テロ
(83人死亡, 主に民間人)
13年3月6日「ヌスラ戦線」率いる反政府部隊が北東部の
ラッカ(現ISの「首都」)を制圧
50

③ 政府軍・政府支持部隊の反撃と、各勢力の台頭
13年3月 ISが「ヌスラ戦線」などからラッカを奪う
13年4～6月レバノンのシーア派組織「ヒズボラ」(イラン支援)な
どの政府支持部隊＋政府軍が、西部のレバノン国境
地帯やヨルダンに近い南部で進撃
13年7～10月北部でクルド人部隊と「ヌスラ戦線」などが戦闘、
前者がアレッポ県の一部とハサカ県を制圧
13年9～10月 ISがアレッポ県北部の町を反政府部隊から奪い、
反政府部隊と戦闘
13年10～12月,
14年3月
「ヒズボラ」などの政府支持部隊＋政府軍が
アレッポ県とレバノン国境地帯で進撃
14年1～3月反政府部隊がアレッポ県、イドリブ県、デリ
ゾール県などで戦闘の末にIS追放
51

④ ISの進撃と米国の介入
14年7～
15年1月
ISがラッカ県、ハサカ県、アレッポ県、ホムス県、
デリゾール県などで進撃し、制圧地域を確立。
⇒政府軍、反政府部隊、クルド人部隊と戦闘
14年7月米軍とヨルダン軍がラッカ近くで
欧米人のIS人質解放作戦(失敗)
14年8～9月 ISが米国人と英国人の人質を殺害
14年9月23日米国主導の「有志連合軍」がシリアのIS拠点に
空爆開始 (当初の参加国: バーレーン、サウジ、
UAE、カタール、ヨルダン)
14年10月～
15年7月
「ヌスラ戦線」などがイドリブ県
の大部分を制圧
15年5～9月 ISがパルミラ制圧、レバノン国境地帯で進撃
52

⑤ ロシアの介入と急速な「国際紛争化」
15年9月30日ロシア軍が陸海空から大規模な攻撃開始、
ISと反政府部隊が標的に (ラタキア県の基地などから)
⇒同時に政府軍、政府支持部隊が進撃開始
15年10月30日ウィーン和平協議
(米・露・トルコ・サウジ・イランが参加：
アサド政権の扱いめぐり決裂)
15年10～11月ロシア民間機爆破テロ、パリ同時多発テロ
⇒フランス軍が空爆に参加
15年11月24日トルコ軍機がシリア付近でロシア軍機を撃墜
15年12月3日英国軍が空爆に参加
16年2～7月国連安保理決議による「部分停戦」
⇒政府軍がロシア軍の支援でパルミラ奪還
53

⑥ シリア北部に世界が注目…米国VSロシアVSトルコ
16年7～10月アレッポ市で反政府部隊の地区が包囲
16年9月米露合意に基づき、「有志連合軍」、ロシア軍、政
府軍が停戦(ISとヌスラ戦線は対象外)
⇒米英軍の政府軍誤爆で崩壊、米露さらに対立
16年8月12日米軍が支援するクルド人主体の「シリア民主軍」
(SDF)、県北部のIS拠点マンビジュを奪還
16年8月24日
～
トルコ軍が県内の国境地帯に陸上侵攻
⇒ FSAを支援してISに加え、SDFとも戦わせる
16年10月～ • アレッポ市で反政府部隊が包囲を破り、政府軍
の地区に進攻
• 米国がISからラッカ奪還を目指すなか、トルコ
とSDFが奪還作戦から一方を外すよう迫る
54

⑥ シリア北部に世界が注目…米国VSロシアVSトルコ
16年12月～アレッポ市で政府軍が反政府派の地区をほぼ制圧
⇒ロシア・イラン・シリア政府が反政府武装組織の
撤退を迫る。トルコが反政府組織とロシアを仲介。
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