SlideShare une entreprise Scribd logo
1  sur  26
Télécharger pour lire hors ligne
PyAutoGUI等Pythonライブラリによる自動化支援
2016/7/24	テスト自動化研究会 事例報告
井芹 洋輝
【アウトライン】
Part.1		PyAutoGUI &	PyUnitによるGUIベースのテスト自動化
(おまけ)Part.2		PyAutoGUI &	PyUnit +色々なPythonライブラリ活用
(おまけ)Part.3		OpenCVによる現実空間のテスト自動化
宣伝
• U30テスト設計コンテスト(30歳以下のテスコン) 開催します!
• チュートリアル開催中。募集は来月予定
• 審査委員長を担当しています
• http://aster.or.jp/business/contest/rulebooku30.html
Part.1	
PyAutoGUI &	PyUnitによる
GUIベースのテスト自動化
PyAutoGUIとは
• マウス操作、キーボード操作、スクリーンショット操作を自動化するPython
向けライブラリ
• https://pyautogui.readthedocs.io/
• コンセプト
• 可能な限りシンプルかつ直感的に使える
• どんな環境(e.g.	win	or	mac	or	linux)でも同じように動く
• テスト自動化ツールというわけではないですが、お手軽に自動化ツールを
組めるため今回紹介
PyAutoGuiの例:APIの例
import	pyautogui
pyautogui.moveTo(100,	200)	#座標100、200にマウスを移動させる
pyautogui.click()	#マウスをクリックする
pyautogui.typewrite('Hello	world!')	#文字を打つ
pyautogui.keyDown('shift')	#シフトキーを押しっぱなしにする
position	=	pyautogui.locateCenterOnScreen('target.png')	#target.pngと一致
する場所の中心の座標を取得する
平易な1ステートメントでGUI操作を記述
PyAutoGuiの例:詳細なパラメータ指定の例
#画面上でhoge.pngとマッチする座標を取得
pyautogui.locateOnScreen(‘hoge.png’)
#グレースケールでマッチングして座標を取得
pyautogui.locateOnScreen(‘hoge.png’,	grayscale=True)
#指定の領域から座標を取得
pyautogui.locateOnScreen(‘hoge.png’,	region=(0,0,	300,	400))
#処理実行のインターバルを変更
pyautogui.PAUSE =	0.2
デフォルトはシンプルに、必要に応じて詳細に
PyUnit
• ライブラリ名unittest。Python向け標準xUnitフレームワーク
• シンプルで汎用性が高い
• ツールチェーンも自由に構築できる
• Jenkis向けXML生成、テスト結果集計などテスト用機能を手軽に利用できる
PyAutoGUI &	PyUnit
• PyUnitでテストフレームワーク構築
実行、結果評価をPyAutoGuiで実装
• PyUnitの機能を使いながら、GUIベースのテスト自動化を実現
• 用途を絞ればSikuli程度のツールは簡単に組める
PyAutoGUIデモ:タッチパッド操作テスト自動化
• 指定のタッチバッド操作でMac	OS情報画面を表示できることを自動テスト
PyAutoGUIデモ:タッチパッド操作テスト自動化
#macアイコンをクリック
position	=	pyautogui.locateCenterOnScreen('mac_icon.png')
pyautogui.click(position)
#情報表示メニューをクリック
position	=	pyautogui.locateCenterOnScreen('about.png')
pyautogui.click(position)
#表示を待つ
time.sleep(1)
#表示確認
position	=	pyautogui.locateOnScreen('os_info.png')
self.assertNotEqual(position,	None)
PyAutoGuiの問題点
• GUI&キャプチャ画像操作しばり
• 画像のマッチングで誤差の許容範囲を指定できない
• 透過効果や強調処理(影、フェード処理など)に弱い
• 処理が遅い
Part.2	
PyAutoGUI &	PyUnit
+色々なPythonライブラリ活用
色々なPythonライブラリの活用
• Pythonはテスト自動化で活用できるライブラリが多数公開されてる
• GUI操作(pyautogui等)、ブラウザ操作(selenium.webdriver等)、Excel操作(openpyxl)、
画像処理(opencv等)、文字識別(tesseract等)、機械学習(TensorFlow、scikit-learn等)、
その他諸々・・
• Pythonベースでテスト自動化フレームワークを組むと、それらライブラリの
活用が可能になる
matplotlib
• MATLABを参考にしたライブラリ。
MATLABのような高機能グラフを簡単に出力できる。
• ※テスト自動化用途ではないが、MATLABでシミューレションや検証を行っ
ている人なら、自動化環境の補助チェックとしてスムーズに導入できる
matplotlibデモ
• プログレスバーのテスト自動化(PyAutoGUIで操作を自動化)
• 自動操作で得られたデータを目視確認できるようにグラフ化
プログレスバー画面
テスト対象ソフトウェア
PyUnit
PyAutoGUI
1.自動タッチパッド操作
2.	連続画面キャプチャ 3.	プログレスバーの時間
経過に対する推移
4.	時間×進捗のグラフ
matplotlib
statsmodels(+pandas,	numpy)
• 連続系のモデルやデータの分析ライブラリ
• statsmodels.formula
• Rを参考にしたAPIを使える
• モデルの式を文字列で記述できる
statsmodels.formula
• モデル式
• 「log(OutputData)	=	係数a×log(InputData)+係数b」
• Pythonでの記述(線形回帰分析)
• 「sm.ols(formula=“np.log(OutputData)	~	np.log(InputData)”,	data=datalist)」
(1)	OutputDataとInputDataを指定する
statsmodels.formula
(2)線形回帰分析でモデルの各係数や、モデルとデータの差異を分析
(略)
R-squared: 0.779
(略)
coef std err t P>|t| [95.0% Conf. Int.]
---------------------------------------------------------------------------
Intercept 2.4606 0.325 7.578 0.000 1.794 3.127
np.log(Ouput Data) 0.9564 0.098 9.766 0.000 0.755 1.157
log(Output	Data)	=	係数a×log(Input	Data)+係数b
モデルとの合致性パラメータを複数出力
statsmodels.formulaデモ:プログレスバーの自動テスト
• PyAutoGUIで自動操作。プログレスバー進捗を連続キャプチャで取得
• プログレスバーの進捗推移を、線形回帰分析でモデル化。モデルの係数
で、プログレスバーの進捗が意図通りか自動テストする
プログレスバー機能
テスト対象ソフトウェア
PyUnitPyAutoGUI
1.自動タッチパッド操作
2.	連続画面キャプチャ
3.	プログレスバーの時間
経過に対する推移
statsmodels
4.	プログレスバー進捗の
近似モデルのパラメータ
5.	合否結果
statsmodels.formulaデモ:プログレスバーの自動テスト
#プログレスバーの進捗の回帰分析結果を取得
def analysis_trend(time,	data):
trend_data =	pd.DataFrame([time,	data]).T
trend_data.columns =	["time",	"progress"]
result	=	sm.ols(formula	=	"progress	~	np.log(time)",	data=trend_data).fit()
return	result.params
class	TestProgressBar(unittest.TestCase):
def test_progress_bar(self):
#処理高速化のため、GUI操作対象の領域を特定してそこだけ操作するようにする
target_area =	pyautogui.locateOnScreen('target_area.png')
target_region =	location_to_region(target_area)
#プログレスバーの開始と終了の座標および長さを取得(進捗の取得のため)
start_position =	pyautogui.locateOnScreen('progress_start.png',	grayscale=True,	region=target_region)
end_position =	pyautogui.locateOnScreen('progress_end.png',	region=target_region)
length	=	end_position[0]	- start_position[0]
#プログレスバー 開始操作
position	=	pyautogui.locateCenterOnScreen('start_button.png',	region=target_region)
pyautogui.click(transform_coord(position))
(続く)
statsmodels.formulaデモ:プログレスバーの自動テスト
(続き)
#プログレスバー進捗取得
progress_pos =	[]
progress_time =	[]
start_time =	time.time()
time.sleep(1)
while	True:
position	=	pyautogui.locateCenterOnScreen('progress_current.png',	region=target_region)
if	position	==	None:
break
progress_pos.append((position[0]	 - start_position[0])	*	100	/	length)
progress_time.append(time.time()	- start_time)
#モデルとの合致性確認
result	=	analysis_trend(progress_time,	progress_pos)
self.assertTrue(result[0]	<	20)
self.assertTrue(result[1]	>	50	and	result[1]	<	100)
今回のモデル:progress_pos=	result[1]×log(progress_time)+result[0]
Part.3
OpenCVによる
現実空間のテスト自動化
OpenCV
• オープンソースのコンピュータビジョンのライブラリ
• 基本的な画像処理全般に対応。その他、録画・キャプチャ・カメラ制御、
キーボード操作などを扱える
• ロボットの移動制御やLED表示等、現実空間のテストの自動化を単独でサ
ポートできる
OpenCVデモ:クレーンロボットのテスト自動化
• Macbook Proのカメラで動画撮影。OpenCVでクレーン位置を解析
• テスト自動化環境の配置チェックと、クレーン制御機能テスト(クレーン位
置が指示通りである事をテスト)を自動化
クレーンロボット
1.動作指示通信
2.動画撮影
PC
PyUnit
OpenCV
3.ロボット位置情報
(クレーンの遠さと
座標位置)
4.テスト結果
通信制御
※準備が間に合わなかった
ので今回は人間で代用
OpenCV余談
• 近年のPythonでは、コンピュータビジョンやデータ分析のライブラリが充実
• 誰でも手軽にコンピュータビジョンベースの自動テストを構築できるようになった
• テストオラクルやシミュレーションのモデル作成も敷居が下がった
高精度を求めなければ機械学習のアプローチでモデルを構築できるようになった
• Pythonは組み込みエンジニアにとって重要な基礎教養
おわり

Contenu connexe

Tendances

アジャイル×テスト開発を考える
アジャイル×テスト開発を考えるアジャイル×テスト開発を考える
アジャイル×テスト開発を考える
yasuohosotani
 
ChatGPTをシステムに組み込むためのプロンプト技法 #chatgptjp
ChatGPTをシステムに組み込むためのプロンプト技法 #chatgptjpChatGPTをシステムに組み込むためのプロンプト技法 #chatgptjp
ChatGPTをシステムに組み込むためのプロンプト技法 #chatgptjp
K Kinzal
 

Tendances (20)

ソフトウェアテストの歴史と近年の動向
ソフトウェアテストの歴史と近年の動向ソフトウェアテストの歴史と近年の動向
ソフトウェアテストの歴史と近年の動向
 
アジャイル×テスト開発を考える
アジャイル×テスト開発を考えるアジャイル×テスト開発を考える
アジャイル×テスト開発を考える
 
サイボウズの CI/CD 事情 〜Jenkins おじさんは CircleCI おじさんにしんかした!〜
サイボウズの CI/CD 事情 〜Jenkins おじさんは CircleCI おじさんにしんかした!〜サイボウズの CI/CD 事情 〜Jenkins おじさんは CircleCI おじさんにしんかした!〜
サイボウズの CI/CD 事情 〜Jenkins おじさんは CircleCI おじさんにしんかした!〜
 
シリコンバレーの「何が」凄いのか
シリコンバレーの「何が」凄いのかシリコンバレーの「何が」凄いのか
シリコンバレーの「何が」凄いのか
 
OpenID Connect 入門 〜コンシューマーにおけるID連携のトレンド〜
OpenID Connect 入門 〜コンシューマーにおけるID連携のトレンド〜OpenID Connect 入門 〜コンシューマーにおけるID連携のトレンド〜
OpenID Connect 入門 〜コンシューマーにおけるID連携のトレンド〜
 
実装して理解するLINE LoginとOpenID Connect入門
実装して理解するLINE LoginとOpenID Connect入門実装して理解するLINE LoginとOpenID Connect入門
実装して理解するLINE LoginとOpenID Connect入門
 
ストリーム処理を支えるキューイングシステムの選び方
ストリーム処理を支えるキューイングシステムの選び方ストリーム処理を支えるキューイングシステムの選び方
ストリーム処理を支えるキューイングシステムの選び方
 
暗号技術の実装と数学
暗号技術の実装と数学暗号技術の実装と数学
暗号技術の実装と数学
 
ソフトウェアテストの最新動向の学び方
ソフトウェアテストの最新動向の学び方ソフトウェアテストの最新動向の学び方
ソフトウェアテストの最新動向の学び方
 
分散トレーシング技術について(Open tracingやjaeger)
分散トレーシング技術について(Open tracingやjaeger)分散トレーシング技術について(Open tracingやjaeger)
分散トレーシング技術について(Open tracingやjaeger)
 
ChatGPTをシステムに組み込むためのプロンプト技法 #chatgptjp
ChatGPTをシステムに組み込むためのプロンプト技法 #chatgptjpChatGPTをシステムに組み込むためのプロンプト技法 #chatgptjp
ChatGPTをシステムに組み込むためのプロンプト技法 #chatgptjp
 
Pcapngを読んでみる
Pcapngを読んでみるPcapngを読んでみる
Pcapngを読んでみる
 
Mavenの真実とウソ
Mavenの真実とウソMavenの真実とウソ
Mavenの真実とウソ
 
エンジニアのためのOSSライセンス管理~OSS管理ツールの池の水全部抜く~
エンジニアのためのOSSライセンス管理~OSS管理ツールの池の水全部抜く~エンジニアのためのOSSライセンス管理~OSS管理ツールの池の水全部抜く~
エンジニアのためのOSSライセンス管理~OSS管理ツールの池の水全部抜く~
 
GraphQLのsubscriptionで出来ること
GraphQLのsubscriptionで出来ることGraphQLのsubscriptionで出来ること
GraphQLのsubscriptionで出来ること
 
基礎からのOAuth 2.0とSpring Security 5.1による実装
基礎からのOAuth 2.0とSpring Security 5.1による実装基礎からのOAuth 2.0とSpring Security 5.1による実装
基礎からのOAuth 2.0とSpring Security 5.1による実装
 
世界一わかりやすいClean Architecture
世界一わかりやすいClean Architecture世界一わかりやすいClean Architecture
世界一わかりやすいClean Architecture
 
まじめに!できる!LT
まじめに!できる!LT まじめに!できる!LT
まじめに!できる!LT
 
Micrometer/Prometheusによる大規模システムモニタリング #jsug #sf_26
Micrometer/Prometheusによる大規模システムモニタリング #jsug #sf_26Micrometer/Prometheusによる大規模システムモニタリング #jsug #sf_26
Micrometer/Prometheusによる大規模システムモニタリング #jsug #sf_26
 
コールバックと戦う話
コールバックと戦う話コールバックと戦う話
コールバックと戦う話
 

Plus de H Iseri

Plus de H Iseri (6)

フィーチャモデルの描き方
フィーチャモデルの描き方フィーチャモデルの描き方
フィーチャモデルの描き方
 
クラシフィケーション・ツリー法入門
クラシフィケーション・ツリー法入門クラシフィケーション・ツリー法入門
クラシフィケーション・ツリー法入門
 
レガシーコードとの付き合い方とテストでの話
レガシーコードとの付き合い方とテストでの話レガシーコードとの付き合い方とテストでの話
レガシーコードとの付き合い方とテストでの話
 
探索的テスト入門
探索的テスト入門探索的テスト入門
探索的テスト入門
 
組み込み開発でのシステムテスト自動化の一つの考え方(STAC)
組み込み開発でのシステムテスト自動化の一つの考え方(STAC)組み込み開発でのシステムテスト自動化の一つの考え方(STAC)
組み込み開発でのシステムテスト自動化の一つの考え方(STAC)
 
ユニットテストの保守性を作りこむ, xpjugkansai2011
ユニットテストの保守性を作りこむ, xpjugkansai2011ユニットテストの保守性を作りこむ, xpjugkansai2011
ユニットテストの保守性を作りこむ, xpjugkansai2011
 

PyAutoGUI等Pythonライブラリによる自動化支援