SlideShare une entreprise Scribd logo
1  sur  32
Télécharger pour lire hors ligne
音響のための
鏡像法による距離減衰の再現
完全に理解した
自己紹介
吉高 弘俊( )
株式会社エクシヴィのオーディオプログラマ
距離減衰
距離感の表現
音量(とリバーブ)の相対的な変化で表現できる。
約 以内の距離感
を表現してくれる立体音響プラグインも!
( など)
https://developer.oculus.com/blog/near-field-3d-audio-explained/
距離減衰カーブ: デフォルト
なんとなく減衰しすぎ ?
演出意図を持って描く
距離減衰カーブ+演出意図
重要なサウンド
キャラクターボイスなど
重要でないサウンド
エアコンのノイズなど環境音
距離
音量
距離減衰カーブ+演出意図
重要なサウンド
キャラクターボイスなど
重要でないサウンド
エアコンのノイズなど環境音
距離
音量
センス頼り…?
リアリティのある
距離減衰とは?
なぜ逆2乗則どおりではない?
無響室での点音源の法則
点音源ではない
近距離では面音源とか
残響(リバーブ)がある
現実空間は無響室ではない
参考文献[1]
リバーブとは
直接音と初期反射、後期残響
エネルギー
時間
距離減衰とリバーブ
後期残響音に対して、直接音や初期反射音を
小さくする 遠く感じる
エネルギー
時間
参考文献[2]
距離減衰とリバーブ
直接音と初期反射がどう減衰するか?
シミュレーションでカーブを求めてみよう!
エネルギー
時間
室内音響シミュレーション
実装が簡単な「鏡像法」を使う
● 直方体の部屋
● 点音源
● 鏡面反射
● 一様な吸音率
参考文献[3]
鏡像法( )
壁から反射した音波は
「虚像」の位置から来る 音源
虚像
リスナー
鏡像法( )
壁から反射した音波は
「虚像」の位置から来る
虚像ごとの時間差と音量差
を求める
鏡像法( )
音源をインパルス音と仮定
インパルス応答が得られる
実装時のポイント:
● 固定端反射なので反射するごとに位相逆転
● 周波数領域で解くとより正確になる
参考文献[3]
インパルス応答から距離減衰を推定
直接音から までを
初期反射としてみる
値を測定
減衰がなかった場合の
値との比をとる
値に代入
実際に動かしてみる
6畳間
鏡像法 逆2乗則
6畳間
鏡像法 逆2乗則
大きめの部屋
6畳間 大きめの部屋
実験してみてわかったこと
● 至近距離では急激に減衰
面音源で計算すると違うかも?
● 少し離れると
ほとんど減衰しない
実験してみてわかったこと
部屋の大きさでの違い:
● 狭いとすぐ減衰が収束
● 広いと小さな音量に収束
そのまま使うときの課題
● 近傍での音量変化が急激なので
カーブに をかけて底上げ
● 環境に応じて部屋の大きさを変え
る
● 高速化が必要
● インパルス応答畳み込みする場合は
フラッターエコーがきついかも?
距離減衰カーブを描くときへの応用
● 最大減衰距離は部屋の大きさより
も意外と小さい
● なだらかなカーブは物理的に間
違っていない
● 周囲の広さに合わせて距離減衰
カーブを変えるとよさそう
今後の課題
● 音量だけでなく、リバーブも
変化させる
● 面音源でやってみる
● 可聴化してみる
● 正直にシミュレーションせず、統計
的にカーブを割り出す
で公開中!
https://github.com/TyounanMOTI/ImageMethodDistanceAttenuation
参考文献
Zahorik, Pavel & Brungart, Douglas & Bronkhorst, Adelbert. (2005). Auditory distance perception in humans: A summary of past and present
research. Acta Acustica united with Acustica. 91. 409-420.
https://www.researchgate.net/publication/229068125_Auditory_distance_perception_in_humans_A_summary_of_past_and_present_research
[2] Robert Albrecht and Tapio Lokki. Adjusting the perceived distance of virtual speech source by modifying binaural room impulse response. In
International Conference on Auditory Display, July 6-10 2013.
https://mediatech.aalto.fi/publications/acoustics/ar/AlbrechtLokki2013Distance.pdf
[3] Lehmann,Eric A. & Johansson,Anders M. (2008). Prediction of energy decay in room impulse responses simulated with an image-source model.
The Journal of the Acoustical Society of America, 124, 269-277.
https://doi.org/10.1121/1.2936367 http://www.eric-lehmann.com/Papers/LehJoh08Prediction.pdf
ご清聴ありがとうございました!
おまけ
エディタ拡張で毎フレーム描画更新するときは
このメソッドを して すべし!
でインスペクタに描くときはほぼ必須?
https://docs.unity3d.com/ScriptReference/PropertyDrawer.CanCacheInspectorGUI.html
が激重
インパルス応答が サンプルとかあって重い。
から
で への参照を取ってくるしかなさそう?
https://forum.unity.com/threads/get-a-general-object-value-from-serializedproperty.327098/#post-2309545
はそんなに重くなかったです。
は折り返し点で行き過ぎたりして正確じゃなかったので使いませんでした。

Contenu connexe

Tendances

[DL輪読会]YOLO9000: Better, Faster, Stronger
[DL輪読会]YOLO9000: Better, Faster, Stronger[DL輪読会]YOLO9000: Better, Faster, Stronger
[DL輪読会]YOLO9000: Better, Faster, StrongerDeep Learning JP
 
VRM 標準シェーダ MToon の使い方
VRM 標準シェーダ MToon の使い方VRM 標準シェーダ MToon の使い方
VRM 標準シェーダ MToon の使い方VirtualCast, Inc.
 
JVS:フリーの日本語多数話者音声コーパス
JVS:フリーの日本語多数話者音声コーパス JVS:フリーの日本語多数話者音声コーパス
JVS:フリーの日本語多数話者音声コーパス Shinnosuke Takamichi
 
個人製作インディーゲーム”ジラフとアンニカ” のUE4 制作事例紹介 | UNREAL FEST EXTREME 2020 WINTER
個人製作インディーゲーム”ジラフとアンニカ” のUE4 制作事例紹介 | UNREAL FEST EXTREME 2020 WINTER個人製作インディーゲーム”ジラフとアンニカ” のUE4 制作事例紹介 | UNREAL FEST EXTREME 2020 WINTER
個人製作インディーゲーム”ジラフとアンニカ” のUE4 制作事例紹介 | UNREAL FEST EXTREME 2020 WINTERエピック・ゲームズ・ジャパン Epic Games Japan
 
コンピューテーショナルフォトグラフィ
コンピューテーショナルフォトグラフィコンピューテーショナルフォトグラフィ
コンピューテーショナルフォトグラフィNorishige Fukushima
 
音源分離 ~DNN音源分離の基礎から最新技術まで~ Tokyo bishbash #3
音源分離 ~DNN音源分離の基礎から最新技術まで~ Tokyo bishbash #3音源分離 ~DNN音源分離の基礎から最新技術まで~ Tokyo bishbash #3
音源分離 ~DNN音源分離の基礎から最新技術まで~ Tokyo bishbash #3Naoya Takahashi
 
Unityとアセットツールで学ぶ「絵づくり」の基礎 ライト、シェーダー、イメージエフェクト
Unityとアセットツールで学ぶ「絵づくり」の基礎 ライト、シェーダー、イメージエフェクトUnityとアセットツールで学ぶ「絵づくり」の基礎 ライト、シェーダー、イメージエフェクト
Unityとアセットツールで学ぶ「絵づくり」の基礎 ライト、シェーダー、イメージエフェクト小林 信行
 
SSII2019企画: 点群深層学習の研究動向
SSII2019企画: 点群深層学習の研究動向SSII2019企画: 点群深層学習の研究動向
SSII2019企画: 点群深層学習の研究動向SSII
 
SSII2020TS: 物理ベースビジョンの過去・現在・未来 〜 カメラ・物体・光のインタラクションを モデル化するには 〜
SSII2020TS: 物理ベースビジョンの過去・現在・未来 〜 カメラ・物体・光のインタラクションを モデル化するには 〜SSII2020TS: 物理ベースビジョンの過去・現在・未来 〜 カメラ・物体・光のインタラクションを モデル化するには 〜
SSII2020TS: 物理ベースビジョンの過去・現在・未来 〜 カメラ・物体・光のインタラクションを モデル化するには 〜SSII
 
画像処理ライブラリ OpenCV で 出来ること・出来ないこと
画像処理ライブラリ OpenCV で 出来ること・出来ないこと画像処理ライブラリ OpenCV で 出来ること・出来ないこと
画像処理ライブラリ OpenCV で 出来ること・出来ないことNorishige Fukushima
 
畳み込みニューラルネットワークの高精度化と高速化
畳み込みニューラルネットワークの高精度化と高速化畳み込みニューラルネットワークの高精度化と高速化
畳み込みニューラルネットワークの高精度化と高速化Yusuke Uchida
 
攻略リニアカラー改訂版
攻略リニアカラー改訂版攻略リニアカラー改訂版
攻略リニアカラー改訂版小林 信行
 
Self-Critical Sequence Training for Image Captioning (関東CV勉強会 CVPR 2017 読み会)
Self-Critical Sequence Training for Image Captioning (関東CV勉強会 CVPR 2017 読み会)Self-Critical Sequence Training for Image Captioning (関東CV勉強会 CVPR 2017 読み会)
Self-Critical Sequence Training for Image Captioning (関東CV勉強会 CVPR 2017 読み会)Yoshitaka Ushiku
 
AlphaGo Zero 解説
AlphaGo Zero 解説AlphaGo Zero 解説
AlphaGo Zero 解説suckgeun lee
 
2014 3 13(テンソル分解の基礎)
2014 3 13(テンソル分解の基礎)2014 3 13(テンソル分解の基礎)
2014 3 13(テンソル分解の基礎)Tatsuya Yokota
 
【Unity】より良い表現のためのライティング戦略
【Unity】より良い表現のためのライティング戦略【Unity】より良い表現のためのライティング戦略
【Unity】より良い表現のためのライティング戦略Takayasu Beharu
 
20160417dlibによる顔器官検出
20160417dlibによる顔器官検出20160417dlibによる顔器官検出
20160417dlibによる顔器官検出Takuya Minagawa
 
大学3年生の僕に伝えたいことをつらつらと
大学3年生の僕に伝えたいことをつらつらと大学3年生の僕に伝えたいことをつらつらと
大学3年生の僕に伝えたいことをつらつらとToshinori Sato
 
実環境音響信号処理における収音技術
実環境音響信号処理における収音技術実環境音響信号処理における収音技術
実環境音響信号処理における収音技術Yuma Koizumi
 
見やすいプレゼン資料の作り方 - リニューアル増量版
見やすいプレゼン資料の作り方 - リニューアル増量版見やすいプレゼン資料の作り方 - リニューアル増量版
見やすいプレゼン資料の作り方 - リニューアル増量版MOCKS | Yuta Morishige
 

Tendances (20)

[DL輪読会]YOLO9000: Better, Faster, Stronger
[DL輪読会]YOLO9000: Better, Faster, Stronger[DL輪読会]YOLO9000: Better, Faster, Stronger
[DL輪読会]YOLO9000: Better, Faster, Stronger
 
VRM 標準シェーダ MToon の使い方
VRM 標準シェーダ MToon の使い方VRM 標準シェーダ MToon の使い方
VRM 標準シェーダ MToon の使い方
 
JVS:フリーの日本語多数話者音声コーパス
JVS:フリーの日本語多数話者音声コーパス JVS:フリーの日本語多数話者音声コーパス
JVS:フリーの日本語多数話者音声コーパス
 
個人製作インディーゲーム”ジラフとアンニカ” のUE4 制作事例紹介 | UNREAL FEST EXTREME 2020 WINTER
個人製作インディーゲーム”ジラフとアンニカ” のUE4 制作事例紹介 | UNREAL FEST EXTREME 2020 WINTER個人製作インディーゲーム”ジラフとアンニカ” のUE4 制作事例紹介 | UNREAL FEST EXTREME 2020 WINTER
個人製作インディーゲーム”ジラフとアンニカ” のUE4 制作事例紹介 | UNREAL FEST EXTREME 2020 WINTER
 
コンピューテーショナルフォトグラフィ
コンピューテーショナルフォトグラフィコンピューテーショナルフォトグラフィ
コンピューテーショナルフォトグラフィ
 
音源分離 ~DNN音源分離の基礎から最新技術まで~ Tokyo bishbash #3
音源分離 ~DNN音源分離の基礎から最新技術まで~ Tokyo bishbash #3音源分離 ~DNN音源分離の基礎から最新技術まで~ Tokyo bishbash #3
音源分離 ~DNN音源分離の基礎から最新技術まで~ Tokyo bishbash #3
 
Unityとアセットツールで学ぶ「絵づくり」の基礎 ライト、シェーダー、イメージエフェクト
Unityとアセットツールで学ぶ「絵づくり」の基礎 ライト、シェーダー、イメージエフェクトUnityとアセットツールで学ぶ「絵づくり」の基礎 ライト、シェーダー、イメージエフェクト
Unityとアセットツールで学ぶ「絵づくり」の基礎 ライト、シェーダー、イメージエフェクト
 
SSII2019企画: 点群深層学習の研究動向
SSII2019企画: 点群深層学習の研究動向SSII2019企画: 点群深層学習の研究動向
SSII2019企画: 点群深層学習の研究動向
 
SSII2020TS: 物理ベースビジョンの過去・現在・未来 〜 カメラ・物体・光のインタラクションを モデル化するには 〜
SSII2020TS: 物理ベースビジョンの過去・現在・未来 〜 カメラ・物体・光のインタラクションを モデル化するには 〜SSII2020TS: 物理ベースビジョンの過去・現在・未来 〜 カメラ・物体・光のインタラクションを モデル化するには 〜
SSII2020TS: 物理ベースビジョンの過去・現在・未来 〜 カメラ・物体・光のインタラクションを モデル化するには 〜
 
画像処理ライブラリ OpenCV で 出来ること・出来ないこと
画像処理ライブラリ OpenCV で 出来ること・出来ないこと画像処理ライブラリ OpenCV で 出来ること・出来ないこと
画像処理ライブラリ OpenCV で 出来ること・出来ないこと
 
畳み込みニューラルネットワークの高精度化と高速化
畳み込みニューラルネットワークの高精度化と高速化畳み込みニューラルネットワークの高精度化と高速化
畳み込みニューラルネットワークの高精度化と高速化
 
攻略リニアカラー改訂版
攻略リニアカラー改訂版攻略リニアカラー改訂版
攻略リニアカラー改訂版
 
Self-Critical Sequence Training for Image Captioning (関東CV勉強会 CVPR 2017 読み会)
Self-Critical Sequence Training for Image Captioning (関東CV勉強会 CVPR 2017 読み会)Self-Critical Sequence Training for Image Captioning (関東CV勉強会 CVPR 2017 読み会)
Self-Critical Sequence Training for Image Captioning (関東CV勉強会 CVPR 2017 読み会)
 
AlphaGo Zero 解説
AlphaGo Zero 解説AlphaGo Zero 解説
AlphaGo Zero 解説
 
2014 3 13(テンソル分解の基礎)
2014 3 13(テンソル分解の基礎)2014 3 13(テンソル分解の基礎)
2014 3 13(テンソル分解の基礎)
 
【Unity】より良い表現のためのライティング戦略
【Unity】より良い表現のためのライティング戦略【Unity】より良い表現のためのライティング戦略
【Unity】より良い表現のためのライティング戦略
 
20160417dlibによる顔器官検出
20160417dlibによる顔器官検出20160417dlibによる顔器官検出
20160417dlibによる顔器官検出
 
大学3年生の僕に伝えたいことをつらつらと
大学3年生の僕に伝えたいことをつらつらと大学3年生の僕に伝えたいことをつらつらと
大学3年生の僕に伝えたいことをつらつらと
 
実環境音響信号処理における収音技術
実環境音響信号処理における収音技術実環境音響信号処理における収音技術
実環境音響信号処理における収音技術
 
見やすいプレゼン資料の作り方 - リニューアル増量版
見やすいプレゼン資料の作り方 - リニューアル増量版見やすいプレゼン資料の作り方 - リニューアル増量版
見やすいプレゼン資料の作り方 - リニューアル増量版
 

VR音響のための鏡像法による距離減衰の再現