Contenu connexe
Plus de Takayuki Itoh (12)
国際会議運営記
- 4. 開催した国際会議の概要
• IEEE Pacific Visualization Symposium 2018
– 神戸大学先端融合研究環統合研究拠点コンベンションホール
– 2018年4月10~13日
– http://itolab.is.ocha.ac.jp/pvis2018/
• 主な内容
– 招待講演3件
– 国際ジャーナルと連動した1日ワークショップ (PacificVAST) 発表9件
– フルペーパー23件、ショートペーパー9件
ポスター30件、コンテスト作品9件
– スポンサー企業によるショートトークと出展
– ウェルカムパーティー、バンケット
• 筆者は2018年の実行委員長 (General Chair) を担当
3
Itoh Laboratory,
Ochanomizu University
- 6. 開催地の歴史 (since 2008)
5
Kyoto 2008
Beijing 2009
Taipei 2010
Hong-Kong 2011
Songdo 2012
Sydney 2013
Yokohama 2014
Hanzhou 2015
Taipei 2016
Seoul 2017
Itoh Laboratory,
Ochanomizu University
- 8. 実行委員長に指名されてまずやったこと
• 日程を絞る
– 過去の日程に近い週
– 当該研究分野の別の学会の投稿期限が重ならない週
– 近隣研究分野の大きな学会が重ならない週
– 現地の特殊な週(日本だと例えばGW)を避ける
• 場所を探す
– 過去の参加者数やイベント規模に合致した場所
– 所定の日程で確実に予約できる場所
– 交通の便・宿泊確保・懇親会場などの面で問題ない場所
– 願わくば会場使用料の安い場所
7
Itoh Laboratory,
Ochanomizu University
- 9. 実行委員長に指名されてまずやったこと
• 実行委員のチームを組む
– 現地編成: 各種会場予約/現地プロモータとの交渉/流通管理
– 財務: 収入支出管理/一部の物品購入選定
– 出版: デジタルライブラリの手続き/予稿集制作
– 広報: ウェブ更新/メーリングリスト投稿
– 参加登録: 参加者管理/招聘状発行
• プログラム委員会とは独立を保つ
– 論文募集・査読・最終原稿収集・セッション編成・座長選出
などはプログラム委員会が担当する
※当会議ではプログラム委員長は実行委員長ではなく
常任運営委委員(steering committee)が指名していた
8
Itoh Laboratory,
Ochanomizu University
- 12. 母体学会との合意
• 開催内容について母体学会と合意する
• IEEEの場合:
– 第1段階:会議の開催を承認してもらう
(承認を完了するまで2か月くらいかかる)
• 日程と場所は最低限決まっている必要がある
• 会場所有組織が共催や協賛する場合にはその情報も必要
– 第2段階: 財務体制を承認してもらう
• 大雑把な収支の見積もり
• 会議固有の銀行口座を有する場合にはその口座情報
11
Itoh Laboratory,
Ochanomizu University
- 13. 広報の第一歩
• 必要最低限の情報でウェブとCFP(投稿募集)を用意する
– 完全でなくてもいいから早くリリースしようぜ (ザッカーバーグ風に)
• 実行委員会が用意した発信内容
– 日時と場所
– 委員一覧
• プログラム委員会が用意した発信内容
– 重要な日程(投稿期限・査読結果通知日・最終原稿提出期限など)
– 提出方法・論文の書式
• 後回しにした発信内容
– スポンサー企業・団体一覧
– 参加登録方法
– ウェルカムパーティー・懇親会の詳細
– 現地の交通手段・ホテル手段
– ビザ申請のための招聘状発行依頼の手段
12
Itoh Laboratory,
Ochanomizu University
- 14. 収支の見積もり
• 見積もり表を作成する
– 母体学会から書式を指定されればそれを使う
– それとは別にオンライン(Google spreadsheetなど) でも作るとよい
• 収入項目の例
– 参加費(一般/学生, 母体学会会員/非会員, 早期/遅期/当日)
– スポンサー企業代, 助成金など
– 場合によっては母体学会や前回会議からの繰越金
• 支出項目の例
– 会場使用料
– 招待講演者等の旅費
– 業者委託(査読システム, 出版システム, 参加登録システム)
– 配付物(予稿集、バッグ、名札、冊子、おみやげ等)
– 懇親会場代、そのほか飲食代
– 学生アルバイト等
– その他の雑費(消耗品、郵送料、運搬費、金融機関手数料…)
13
Itoh Laboratory,
Ochanomizu University
- 15. 論文投稿・出版システムの利用申請
• 論文投稿・査読システムの利用申請
– 会議名・日程・予想掲載論文数などを提出
– 査読のための各種設定
• 出版システム(デジタルライブラリ)の利用申請
– 今回はIEEE CPS (Conference Publishing Services)
– 会議名・日程・予想掲載論文数・予想採択率などを提出
– 審査を終えると最終原稿提出のリンクが送られる
(IEEEの場合にはAuthors Kit といって著作権譲渡や
PDFチェッカーなどの各種ツールを使えるようになる)
– 学会によっては例えば
「会議運営経験のある人が委員にいたほうが審査が通りやすい」
などのノウハウがある
14
Itoh Laboratory,
Ochanomizu University
- 17. 参加登録システムの用意
• 参加者情報登録+クレジットカード決済による参加費入金
• 多様な運用方法
– 母体学会が持っている決済システムを使う
– 旅行代理店・学術支援企業・大学生協などに発注する
※別の学会で発注した学術支援企業(ARG社, セクレタリアット社)が
個人的にはオススメ
– 決済システムのレンタルサーバを契約し自分で運用する
※10年以上前に一度やったことがあるが苦労が多すぎて推奨できない
• 実行委員が今回自力でやったこと
– 全ての登壇論文の著者が参加登録していることのチェック
– 参加登録に失敗(入力不十分、決済不成立など)した参加者への連絡
– 名札・領収書の印刷
– 当日現地の受付
※もう少し予算規模の大きい会議であればこれらも委託できる
16
Itoh Laboratory,
Ochanomizu University
- 18. 学会指定ホテルの確保
• 2通りの考え方
– いくつかのホテルをウェブで紹介 ⇒ 予約は各自で
– 特定のホテルの部屋を多数確保 ⇒ 学会側で一括予約
• 今回は以下の方法で
– ホテルA: 招待講演者&その他重要な方々への宿泊斡旋
ウェブ上には掲載せず個別対応
– ホテルB: 事前に40室を確保
予約申込をGoogle formで作成し、状況をホテルと共有
25日前を予約期限 ⇒ 約35室予約成立・あまりを返却
• ホテル情報の開示は重要
– ビザのための招聘状(後述)を発行する際に
宿泊予定ホテルの情報を記載する必要がある
17
Itoh Laboratory,
Ochanomizu University
- 19. ビザ発行のための招聘状発行
• 日本入国前に滞在国の日本大使館に申請が必要な人のため
• 原則として以下の4つの書類を用意する
– 招待状、招へい理由書、旅程表、身元保証書
– 招待状以外は所定の書式があるのでそれを埋める個人情報が必要
• 実行委員長の署名押印が必要
– 書類データ作成を委員に依頼
– 印刷+署名押印+郵送のみを実行委員長が担当
• 確実な郵送手段を用いる必要
– 今回はEMS (Express Mail Service) を使用
※気がつくと20回くらい自分で郵便局に行ってた
• 不正入国目的の発行依頼が後を絶たない
– 確実に会議に参加する人以外には発行しないための注意が必要
18
Itoh Laboratory,
Ochanomizu University
- 20. オンライン出版と予稿集制作
• オンライン出版(デジタルライブラリ)
– 掲載論文著者にAuthors Kit(前述)情報を伝達
– 掲載論文の最終原稿を全て収集し、書式を確認
– 目次・前書き・招待講演情報などを追加情報として提出
– 出版団体ごとの個別の手続き
• デジタル予稿集の制作
– 今回は出版団体に依頼せず自前でUSB予稿集を制作
• USBメモリのデザインの自由度
• スケジュールの融通性
• デジタルライブラリに載せずに予稿集にのみ載せる原稿などの融通性
– 配付物(USBメモリ等)とせずにダウンロード形式にすることも可能
• 総合的に考えて今回はダウンロード形式を採用せず
19
Itoh Laboratory,
Ochanomizu University
- 23. ウェルカムパーティーと懇親会の企画
• Reception(ウェルカムパーティー)
– 日程の序盤に開催する
– 各自フラっと参加しフラっと帰る形式が多い
– フリードリンクと軽食があれば十分
– 参加しない人も多いので大雑把に企画してよい
– 乾杯や余興なども用意する必要はない
• Banquet(懇親会・食事会)
– 日程の後半に開催する正式なパーティー
– 人数をしっかり把握し適切な食事を用意する
(会議参加者でない同伴者には別売りチケットを用意する)
– 乾杯の音頭、ちょっとした余興、などを用意することが多い
– 表彰式や次回告知をBanquetの中で企画することもある
22
Itoh Laboratory,
Ochanomizu University
- 24. そのほかの飲食物の手配
• 休み時間のコーヒーやスナック・スイーツ類
• 国ごとに習慣が異なる
– アメリカでは朝7時から軽食(朝食)が出る会議も
– 地中海では昼からワインが出る会議も
• 開催場所によっては昼食も出す
– 日本の弁当は概して海外の人に好評
• 適切な量を見積もるのが極めて難しい
– 午前中のスナック類の消費量
※特に朝食があるホテルとないホテルに滞在する人が混在する場合
– 弁当の消費個数
※必ずしも全ての参加者が全日参加するわけではない
23
Itoh Laboratory,
Ochanomizu University
- 25. 配付物の手配
• バッグと手土産(文房具などが多い)
• USBメモリ等での予稿集
• 冊子
– 基本的には現地で開催期間中に必要な情報を載せる
(時間割・演題リスト・フロアマップ・懇親会場への道順など)
– 業者に製本を依頼する場合には、1か月くらい前までに
掲載情報をまとめて提出する
– 業者提出に間に合わなかった情報は別途紙で配布することも
• 現地関係資料
– 観光クーポン・ランチマップなど
• パンフレット類
– スポンサー企業の広告・近隣分野の学会開催告知など
24
Itoh Laboratory,
Ochanomizu University
- 27. 学生ボランティア
• 2種類のインセンティブ
– 有償(アルバイト代を支払う)
– 無償(参加費無料 and/or 母体学会等による旅費や宿泊費の支援)
• 主な用務
– 前日準備(会場レイアウト整備、配付物整理など)
– 受付業務(特に初日朝に人数が欲しい)
– 登壇発表サポート(タイムキープ・ワイヤレスマイク持ちなど)
– 展示発表サポート(パネル移動・電源サポートなど)
– 当日手配する物品の買い出し
– 懇親会等のサポート(案内・撮影など)
• 電子的な体制管理
– シフト表を作成して必要な人数を確保
– グループチャット(例えばSlack)で迅速に情報共有
26
Itoh Laboratory,
Ochanomizu University
- 38. 何のために会議運営を引き受けるのか (1)
• 自国への誘致
– 自国の関係者が参加しやすい企画をつくる
• 自分の活動拠点は自分で作る
– 自分だけのためでなく学生の発表場所という意味でも
• 恩返し
– 他の年に開催してくれる他国の方々へ
– 自分が研究者になるまでの場を与えてくれた先輩諸氏へ
(後輩の発表の場を作るという形で返す)
– お世話になった研究者仲間からのお誘いへ
37
Itoh Laboratory,
Ochanomizu University
- 39. 何のために会議運営を引き受けるのか (2)
• 研究者人生へのフィードバック
– 自分の名前を売る
– 学会運営の方法論を蓄積する
– 学会の裏の仕組みを知って今後の論文投稿の参考にする
– 海外参加者との面識を深めて共同研究・共同獲得資金に活かす
– 転職や昇進のためのハクをつける
(論文の本数で他者と差がないので学会運営の経験を重視する、
という人事評価もあるかもしれない)
• 自分が楽しむ
– 単なる参加者に終わるより盛り上がれる
– 大きな会議をデザインする喜び
38
Itoh Laboratory,
Ochanomizu University
- 40. Special Thanks To
• 母体学会、会場、懇親会場、会議指定ホテル
• 招待講演者、スポンサー企業、協力団体
• 前日イベント(日中合同ワークショップ)関係者
• 実行委員、プログラム委員、常任運営委員
• 学生ボランティア・臨時スタッフ
• 全ての会議参加者
39
Itoh Laboratory,
Ochanomizu University
- 42. 余談:他にも仕事してました
41
Itoh Laboratory,
Ochanomizu University
主な仕事
80日前 添削ラッシュ。修論6人、学生国内発表21件など。
70日前 別の国際会議(ACM IUI)の学生ボランティア委員長の仕事が
本格化(ボランティア応募者の合否判定など)。
60日前 卒論・修論発表会で4日間。単著書籍の最終校正。
50日前 国内学会の役員(企画委員長)と研究会主査の仕事に数日間
忙殺される。
40日前 ACM IUI(前述)のボランティアの役割分担とマニュアル作成
を終えてIUI本番に突入。IUI前後に国内学会にも5か所参加。
10日前 国際会議6件投稿。
年度が明けて学科長の仕事が降ってくる。
- 43. 余談:非英語圏らしい小さなミス
• 参加者の中に見られた混乱の例
– Reception という単語を「受付デスク」と「ウェルカムパーティー」の
両方の意味に使う人が混在する
– Accompany を「家族等の同伴者」という意味で使ったつもりが
「一緒に会議に参加する同僚」という意味にとられてしまう
– Additional banquet ticket が同伴者専用のチケットであることが
伝わらずに参加者が1枚余分にチケットを買ってしまう
– (他にもあったけど思い出せない…)
42
Itoh Laboratory,
Ochanomizu University
- 44. 余談:連絡手段の混在
• 気がつくと4種類の参加者のために4種類の連絡手段
– 登壇でのアナウンスなら聞く人(あるいはスライドを撮影する人)
– メールはちゃんと読んでいる人
– 現場で配布された紙から情報を探そうとする人
– ウェブやデジタル予稿集から情報を検索する人
• 連絡手段を減らしたほうがラクになるとも限らない
– 例えば「紙を配るのをやめればみんなデジタル媒体を見るようになる」
という考えは経験的に失敗確率が高い
– 「シニアは紙が好き」「○○人は紙が好き」と一概に言えるものではない
– 連絡手段を減らしたことで問い合わせが増えるほうがストレスが高い
43
Itoh Laboratory,
Ochanomizu University
※ただし「同じ主催者が同じ方針で定期的に何度も開催する会議」
であれば連絡手段はどんどん一元化すればよい(それとこれは別の話)
- 45. 余談:招聘手続きのデッドロック
• 海外のある大学の例
– 招聘書類が揃わないと大学の出張承認が下りない
– 出張承認が下りないとホテルと航空券を発注できない
– しかしホテルとフライトの情報がないと招聘書類は完成しない
• そこで手続きはこうなる
– 招聘書類のうち招待状だけを先に作成
→実行委員長が署名押印してスキャンしてメールで送付
– そのメールをもって大学に承認させ、ホテルと航空券を発注
– ホテルとフライトの情報を聞きつけて残りの書類を作成
– 書類一式に実行委員長が押印してEMSで郵送
• 書類がなかなか参加者に届かないことも…
– EMSの通し番号を学会参加者にメールで通知
→滞在国での郵便の状況を参加者自身に問い合わせさせる
44
Itoh Laboratory,
Ochanomizu University