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ベクトルセミナー 震災復興期の従業員メンタルヘルスケア 2011 年 5 月 12 日 15 : 30 ~ 17 : 00 株式会社ベクトル
[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],[object Object]
被災地域における心理的過程 ,[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],1.急性期(発生直後から数日) 2.反応期(1週間から6週間) 3.修復紀(1ヶ月から半年) 4.復興期(約半年以降) 1.茫然自失期(震災直後) 2.ハネムーン期 3.幻滅期 4.再建期 日本赤十字社「被災時のこころのケア」より 東京都精神保健福祉局 「災害時のこころのケアの手引き」より
時間経過と被災者の反応 日本赤十字社「被災時の こころのケア」より抜粋
「ストレス」、「トラウマティックストレス」とは   ,[object Object],ストレス反応 ストレス状態 ②  トラウマティックストレスとは、通常の日常生活では体験し得ない凄まじい経験   (命を脅かされるほどの苦痛な体験、「トラウマ」「心的外傷」という)で、   ほとんど誰にでも大きな苦悩を引き起こすようなストレスのこと。 戦争 交通事故 災害 健康な心の状態
ストレッサーを知ろう ,[object Object],● 物理的なもの 温度の変化 騒音 外傷など ● 科学的なもの 薬物 アルコール 喫煙 などによる刺激 ● 生物学的なもの 睡眠不足 過労など ● 心理社会的なもの 人間関係 不満 失望 挫折など
主な心理・社会的ストレッサー 夏目誠ほか(大阪府立心の健康総合センター)より 44 定年退職 40 55 労働条件の大きな変化 20 44 仕事のペース、活動の減少 39 58 人事異動 19 44 顧客との人間関係 38 58 収入の減少 18 44 妊娠 37 59 会社が合併される 17 46 子供の受験勉強 36 59 友人の死 16 47 住宅ローン 35 59 会社の建て直し 15 47 引越し 34 59 家族の健康や行動の大きな変化 14 47 同僚とのトラブル 33 60 左遷 13 47 睡眠習慣の大きな変化 32 60 単身赴任 12 47 新しい家族が増える 31 61 転職 11 48 夫婦げんか 30 61 仕事上のミス 10 49 性的問題・障害 29 61 300万円以上の借金 9 50 結婚 28 62 多忙による心身の過労 8 50 子が家を離れる 27 62 自分の病気や怪我 7 51 抜擢による配置転換 26 64 会社を変わる 6 51 上司とのトラブル 25 67 夫婦の別居 5 51 300 万円以下の借金 24 72 離婚 4 52 法律的トラブル 23 73 親族の死 3 53 同僚との人間関係 22 74 会社の倒産 2 54 配置転換 21 88 配偶者の死 1 点数 ストレッサー 順位 点数 ストレッサー 順位
ストレス反応 ,[object Object],からだの反応 ■ 睡眠障害  ■抵抗力の低下 ■頭痛・胃痛 ■ 疲労感・倦怠感 ■肩こり ■ 動悸・心拍の異常 ■めまい・・・ こころの反応 ■ 不安 ■イライラ ■不満 ■ 抑うつ ■無気力 ■緊張 ■集中力の低下 ■ 自己評価の低下・・・ 行動の反応 ■ 遅刻が多くなる ■月曜日に休む ■人と話すのがおっくうになる ■ ミスが多くなる ■能率が落ちる ■ 人の視線が気になる ■周囲から孤立(衝突)する ■ 食欲の変化 ■アルコールやタバコの量が増える・・・ -> これらの症状のうちいくつかが一定期間続く場合、「うつ病」などの診断がなされます。
トラウマ(心的外傷)経験後の心身の反応 ① ,[object Object],[object Object],[object Object],いらいらして怒りっぽい 物音がするとどきっとしたりびくっとする 非常に警戒して用心深くなる 仕事や勉強、遊びに集中できない 興奮したり、気分が高まっている よく眠れない(夜中に目を覚ます) 悪夢、うなされて起きて叫ぶ 連想されることで、不安定になる ショックなことを繰り返し話す 震災ごっこ(子供、遊び) 意味と対応 ・身体を緊張させて、危険に対処しようと  している。出来事を乗り越えようとしている。 ・安全な場所で、十分なリラックスを。 ・緊張する場面では落着くことを意識。 意味と対応 ・被災の体験に関する不快で苦痛な記憶が、  フラッシュバックや夢の形で繰り返し  よみがえる症状。 ・遊びも含め、危険でなければすぐにとめず、  見守るか話を聴いてあげる、あるいは  なだめて(慰めて)あげる対応。
トラウマ(心的外傷)経験後の心身の反応 ② ,[object Object],[object Object],[object Object],ぼーっとする そのことを話したり聞いたりすることを避ける そのことを思い出させる場所を避ける それまで楽しかったことが楽しめない 無口になり話すことを避ける 「私はぜんぜん怖くない」と言う 甘えたり小さい頃にもどったふるまい 小さい頃していた癖がはじまった おびえている 家の中でも親から離れられない トイレやお風呂にひとりで行けない 意味と対応 ・災害の体験に関して話して考えたり、感情  がわき起こるのを極力避けようとする症状。 ・趣味や日常の活動に以前ほど興味や関心  が向かなくなる、感情がマヒしたようで  愛情や幸福などの感情を感じ難くなる。 ・長期になると生活の幅を狭めるため、  家族で健康的な活動や遊びをしながら対応。  意味と対応 ・心と身体の「安心」を取り戻そうとしている。 ・甘えることでエネルギーを蓄えている。 ・安心が戻るまで、抱きしめたり添い寝をする。  年齢に応じた癒し(マッサージなど)も有効。
トラウマ(心的外傷)経験後の心身の反応 ③ ,[object Object],[object Object],[object Object],腹痛、頭痛 嘔吐 持病の悪化(ぜんそくなど) 疲労感 食欲不振 睡眠障害 無気力 一人ぼっちになってしまった 自分を責める、悪かったという思い 人が信じられない 意味と対応 ・出来事を受入れることを身体が拒否してい  るとも考えられるが、出来事とすぐに結び  つけず、医師等に診てもらうことを優先する。 ・身体ケアがこころのケアになる。 意味と対応 ・マイナスの思いが続くと、うつ病や  身体反応を引き起こしやすい。 ・こころの中でつぶやかず、口に出してみる、  つぶやきをマイナスからプラスに変えていく  ような対応(状態・状況による)。
トラウマ(心的外傷)経験後の心身の反応 ④ ,[object Object],[object Object],[object Object],本当のことだと思えない 死について考えたり、尋ねたりする 涙が止まらない / 涙がでない いなくなった人が見える 社会から引きこもる 危険な行動をする 行動がスムーズに出来なくなる 薬やアルコールへの依存 意味と対応 ・愛する者をなくした時に生じる、一連の  反応を「喪失(悲哀)反応」。 ・反応の過程は「喪の作業」をたどる。  喪失の悲しみから始まり、それを乗り越え  て回復するまでの一連の心理過程。 意味と対応 ・普段と違う行動の変化は、心のサイン  であることが多い。 ・強がって平気だと頑張ることが長期化  することは望ましくないため、  話を聴きながら客観的・冷静な意見を  伝えることも大切(状態・状況による)。
トラウマ(心的外傷)経験がもたらす障害とは ,[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],① 再体験・・フラッシュバック。トラウマの原因となった出来事が繰り返し思い返されたり、悪夢を見る。 ② 回避・・トラウマに関する出来事や、関連する事柄を避けようとする傾向。 ③ 過覚醒・・神経が高ぶった状態が続き、不眠や不安などが強く現れる。
喪の作業 ,[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],死を現実の出来事としてまったく受け入れることが出来ない。 茫然自失の状態。夢の出来事のよう。 事実を受け入れ始め、悲観が始まる。その一方で、 喪失の現実を完全には受け入れることが出来ず、否認や怒りが現れる。 対症喪失の現実を受け入れ、愛着は断念される。 深い絶望、失意、抑うつ。 失った対症喪失から離脱して、思い出が穏やかで肯定的なものとなる。 新たな一歩を踏み出しはじめる。
うつ病 ◆ 心身の疲労が続く状況や、環境の変化は うつ病の引き金 になることがあります。 ◆ 悲観的、自責の念が強まり、生きていても仕方がないと思うようになります。 ◆ 医師等の専門家による診断及び対応が必要となります。
被災地以外でのストレスと反応 ,[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],・余震でパニックになる ・常に揺れているような気がする ・携帯の着信音などが「地震速報」 のように聞こえる ・常に不安、イライラしている ・買い占め ・チェーンメール、ツイッター ・他人批判 (政治家、芸能人、関東から逃れた人など) ・ TV や PC から離れられない
声のかけ方、相談の受け方のコツ ,[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],[object Object]
傾聴方法の基礎 ,[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],● 自由に話してもらう 本人が語りたいことを中心に 話してもらう。 ● 必要なことは聴き 逃さない 必要なことが出てきたら、 焦点づけて聴いていく。 ● 必要なことは質問する 自由な語りにまかせると 語られない内容がある。 それについては質問する。
傾聴方法の基礎~スキル ,[object Object],[object Object],[object Object],頷き、あいづち 「うんうん」「なるほど」 「そうですかー」   ->聴いていますよ、というメッセージ 開かれた質問と 閉ざされた質問 「どのようなことでいらっしゃいましたか」 「~についてお話を聴かせてください」 「寒くないですか」「お昼は食べましたか」 沈黙と明確化 黙って待つ。 寄り添い、温かく見守る。 「~ということですか」  繰り返しと要約 「~ですね」 「要するに~で・・・なのですね」   ->話した内容を○○というふうに、聴いていますよというメッセージ 共感と励まし 「それはお困りですね」「それは残念ですね」 「それはよかったですね」  ->気持ちを酌む、受け止めましたよというメッセージ
傾聴方法の基礎~スキル2 ,[object Object],[object Object],[object Object],-> 失敗すると 「そんなの分かっているけど、できないから困っているのに」 「ちっとも話を聴いてもらえずに“ああしろ!こうしろ!”ばかり言われた」  探索 「それはなぜでしょうか?」 「どういう理由でそうなったのですか?」 「もう少し詳しく教えてください」 矛盾提示 「先ほどのお話と繋がっていませんね」 「~と思っているのに、違う行動をしていますね」 解釈 「きっと○○なのですね」 「~~が○○なのだと思います」 情報提供 「例えば~はいかがでしょう」 「私は~をしてよかったですよ」  ->専門機関の情報提供など
支援者自身のこころのケア ,[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],・ストレスの兆候を見逃さず、また素直に認めること。 ・事実関係の報告、仲間との話し合い。 ・自分だけで何とかしようと背負わない。 ・時々仕事から離れ、家族や友人と過ごす時間を作る。休めるときは休む。 ・役割分担と業務ローテーションの明確化。 ・ストレスについての教育、ストレスチェックと相談体制。 ・被災者の心理的な反応についての教育。 ・対応のシュミレーション。 ・ストレス処理のお手本になる。 ・活動計画や役割分担について明確な指示を出す。 ・スタッフを気にかけていることを行動で示す。定期的な休憩の確保に努める。 ・ミーティングを開く。
[object Object],[object Object],[object Object],[object Object],[object Object]
震災被害の特徴 ,[object Object],[object Object],【例】 <仕事に関して> <自身の問題> <家庭、家族や知人等に関して> ・思うように支援できない、被災者の力になれない自分へのジレンマ、無力感、   ひいては「自分は仕事をしていていいのか」「休んでいていいのか」という焦りや罪悪感 ・GW期間など震災から一定期間後にボランティア・旅行などで訪れ、改めてショックを受けた ・家庭で、小さな子供の不安症状・幼児がえりが続き、ストレスが増加 ・【今後】節電の影響等による、職場の安全衛生環境の悪化~暑い・暗い等 ・経済の停滞による、仕事・雇用そのものへの不安 ・知人親類などに対する支援その他、間接的な影響による経済的負担 ・出張などにより、家族と離れることに対する不安 ・家族や身近な人が、支援や復興に深く関与する仕事をしており、心配や負担がある   (例;自衛隊・警察・消防、医療関係、電力関係、行政関係者 など) ・計画停電や交通混乱などにより、非効率・スケジュール管理が難しいなど、イライラ ・震災対応の過重労働 (燃え尽き等)  ※その他の様々なストレスとこれらが重なり、メンタル不調に陥る可能性が高まる。
企業・人事における対応のポイント(予防、早期発見) ,[object Object],[object Object],・経済的支援    ;特別融資制度・融資返済猶予特例などの経済的支援、              福利厚生のファシリティ・サービス ・内部外部資源確保、周知 ;相談窓口、産業スタッフ、医療機関、公的機関 等 ・臨機応変な勤務対応;フレックス、短時間勤務、在宅勤務、休暇・休職、出張や異動の配慮 等 ◆ ラインケア ・コミュニケーション環境の整備 ・基礎知識のインプット ~ ツール化、研修 等 ※ 人事として、可能な範囲で、従業員の生活環境を整理しておく     (家族構成・同居の構成・特別な経済環境等) ・情報整理   ;指示承認系統の整備、流言飛語早期対応、情報インフラ整備 ( 余震にも )
企業・人事における対応のポイント(発生対応) ,[object Object],※ ただし、素人で判断したり、必要以上に対応を引きずることは禁物    ->可及的速やかに、専門家へつなぐ ・速やかに上司面談、人事面談 + 負荷軽減、休める状況をつくる ・休職等に入り療養に専念できる環境を整える。また、復職までのルールや支援体制を見直す  ※管理職自身、そして人事の皆様自身も要注意

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  • 1. ベクトルセミナー 震災復興期の従業員メンタルヘルスケア 2011 年 5 月 12 日 15 : 30 ~ 17 : 00 株式会社ベクトル
  • 2.
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  • 6.
  • 7. 主な心理・社会的ストレッサー 夏目誠ほか(大阪府立心の健康総合センター)より 44 定年退職 40 55 労働条件の大きな変化 20 44 仕事のペース、活動の減少 39 58 人事異動 19 44 顧客との人間関係 38 58 収入の減少 18 44 妊娠 37 59 会社が合併される 17 46 子供の受験勉強 36 59 友人の死 16 47 住宅ローン 35 59 会社の建て直し 15 47 引越し 34 59 家族の健康や行動の大きな変化 14 47 同僚とのトラブル 33 60 左遷 13 47 睡眠習慣の大きな変化 32 60 単身赴任 12 47 新しい家族が増える 31 61 転職 11 48 夫婦げんか 30 61 仕事上のミス 10 49 性的問題・障害 29 61 300万円以上の借金 9 50 結婚 28 62 多忙による心身の過労 8 50 子が家を離れる 27 62 自分の病気や怪我 7 51 抜擢による配置転換 26 64 会社を変わる 6 51 上司とのトラブル 25 67 夫婦の別居 5 51 300 万円以下の借金 24 72 離婚 4 52 法律的トラブル 23 73 親族の死 3 53 同僚との人間関係 22 74 会社の倒産 2 54 配置転換 21 88 配偶者の死 1 点数 ストレッサー 順位 点数 ストレッサー 順位
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  • 15. うつ病 ◆ 心身の疲労が続く状況や、環境の変化は うつ病の引き金 になることがあります。 ◆ 悲観的、自責の念が強まり、生きていても仕方がないと思うようになります。 ◆ 医師等の専門家による診断及び対応が必要となります。
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Notes de l'éditeur

  1. 被災地以外の「大地震による恐 怖・ショックおよび、余震への不安などでメンタル不調を訴える方々」 誰かのために必死に何かをしているときは、 恐怖や不安を感じずにいられますが、しばらくすると、あとから何倍にもな って恐怖や不安が心に襲ってきたのを覚えています。