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自己紹介
1970年、名古屋市生まれ
子供のころ:半田付け尐年
高1:フラクタルにかぶれる
高2:数理の翼セミナー@富山に参加、衝撃を受ける
高3:化学を志す
大学:数理の翼セミナーの仲間を求めて東京へ
セミナースタッフ、同窓会運営などがサークル活動
「三つ子の魂・・・」の通り、電子工学科へ
1995年:数理の翼の縁で、2000年開学のデザイン・技術融合の新しい
大学の策定委員に
2000年:その大学へ(公立はこだて未来大学)
いろいろな分野に首をつっこむ(デザイン、福祉、都市工学、教育工学、
環境問題、ロボット、人間工学)
2004年:1期生とともに卒業して金沢へ
両者の境界・融合領域を専門に(根っからの工学部ではない)
3. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
今日のお話の概要
ここ数年、主にコンピュータ制御の工作機械やインター
ネット社会の進歩と普及を背景に、18世紀の産業革命以
来の産業構造の世界的な大きな変化が進行中しています。
これはMakers(メイカーズ)ムーブメントと呼ばれ、イン
ターネット上の人々のつながりと、広い範囲の科学技術
の成熟・融合がその裏付けとなり、真に人類の幸福をも
たらす可能性を秘めています。
そして現在は、まさにその数百年に一度の転換点がどう
進行する現場に出会える稀有なチャンスといえます。
この講義では、数理科学、工学、社会科学、経済学など
の幅広い観点からこのMakersムーブメントを理解し、特
に私の専門である半導体集積回路の役割やその進歩がも
たらすものについて、考察を深めたいと思います。
4. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
はじめるまえに・・・
今日のお話は、「知識」を伝える
ものではありません
これを理解したからといって、
すぐに何かができるものではありません
世の中、特にモノとヒトとの関わりにつ
いて、
みなさんが主体的に考えるきっかけに
なってくれることを期待しています
つまり「正解」はありません
ノートをとるなら、キーワードだけで十
分です
5. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
Contents
「半導体」のお話
半導体産業と製造業
製造業の転換と半導体産業
近未来のものづくり
6. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
科学と技術(科学技術)
歴史的には:
科学=アテネ市民の教養(思索)
→理学(Science)
技術=奴隷の作業(具現化のテクニック)
→工学(Technology) (経験則・ノウハウの集
合)
産業革命後、工学をScienceで裏付けることで
劇的な効率化→融合
日本では:
明治維新・殖産興業の時代に、同時に入ってき
た
「科学技術」として区別があいまいに
7. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
技術とデザインの接近
古くは、設計と技術(具現化手段)は同一
分野
(レオダルド・ダ・ビンチのころ)
技術の高度化に伴い、分業化が進む
設計(design)→「デザイン」へ
(本来は同じ言葉なのに)
技術は技術者しかわからない
2000年ころから、再度、両者の接近の試み
デザインできるエンジニア
エンジニアリングできるデザイナー
8. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
コンピュータの歴史
(1946)
真空管: 18,000本
消費電力: 140kW
サイズ: 30m×3m×1m
演算性能: 5,000加算/s
(ENIAC:世界最初のコンピュータ)
(2007)
最小加工寸法: 0.065μm(65nm)
素子数: ~50,000,000
消費電力: 100W~数mW
サイズ: 10mm×10mm程度
演算性能: 10,000,000,000演算
/s
10. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
集積回路の歴史
US Patent No. 2 981 877 (R. Noyce)
(1961)
US Patent No. 2 138 743 (J.
Kilby)
(1959)
11. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
Mooreの法則
ref: http://www.intel.com/jp/intel/museum/processor/index.htm
傾き:×約1.5/年
12. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
集積回路の最小構成要素:MOSトランジス
タ
MOS=Metal-Oxide-Semiconductor
基本的には電圧制御スイッチ
組み合わせて、いろいろな回路・システ
ムを
つくることができる
(http://cms.kyutech.ac.jp より)(Wikipediaより)
13. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
MOSトランジスタからコンピュー
タへ
MOSトランジスタ=スイッチ
→論理ゲート=ブール代数
論理積・論理和・否定
→論理回路
この組み合わせで、
コンピュータの機能を
構成できる
→コンピュータ
・プログラム
→ネットワークへ
14. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
例:「加算」をする回路
a b c s
0 0 0 0
0 1 0 1
1 0 0 1
1 1 1 0 {c, s} = a + b
ブール式表現
• c = a ・ b
• s = /a・b + a・/b
論理積 x = a・b
論理和 x = a+b
否定 x = /a
15. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
Mooreの法則のカラクリ:スケーリ
ング
MOSトランジスタを、より小さく作る
と・・・?
寸法: 1/α
不純物濃度: α
電源電圧: 1/α
p-Si
S DG
n-Sin-Si
p-Si
S DG
n-Sin-Si
L
16. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
MOSトランジスタのスケーリングの効
果
結論:いいことばかり
速度↑
消費電力↓
集積度(機能)↑
技術が進むべき方向性が極めて明確なま
れなケース
メーカは、がんばって微細化する
(MOSトランジスタを小さく作れるようにす
る)
17. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
MOSトランジスタの微細化の歴史
微細化するほど
メリットがある
=がんばって微細化
ref: 日経BP Tech-On! 2009/03/30の記事
18. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
どれぐらい小さいのか?
L=20nm(いま)
(IEEE Trans. ED, 50, n9, p1838)
L=5nm(2020年ごろ)
19. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
速度↑
パソコンや携帯・スマホがサクサク動く
消費電力↓
バッテリーが長持ち
集積度↑:2つの意味
機能↑
コスト↓
スケーリング(微細化)でうれし
いこと
同一面積チップで4倍のMOS数
=4倍の機能
同一MOS数が1/4の面積
=1/4のコスト
20. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
微細化によるコスト↓の別の側面
DEC VAX(1976)
1MIPS
Cray-1 (1978)
100MIPS
1000MIPS
300MIPS
10MIPS
100MIPS
20MIPS
※MIPS:Million Instruction Per Second (1秒間に実行できる命令数)
(世界最初のスーパーコンピュータ)
21. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
微細化によるコスト↓の意義
コンピュータの低価格化=普及
昔は国で1台 → 会社に1台 → 一人1台
もう1つの意義:
「コンピュータ」が特殊なものではなくなっ
た
コンピュータ=パソコン、にとどまらない
携帯、ゲーム機、家電、おもちゃ、・・・
→身の回りのあらゆるものに(ユビキタス
化)
22. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
「LEDを点滅させる回路」(1)
Ra
Rb
C
NE555
84
3
5
7
2
6
普通の設計方法:発振回路
23. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
「LEDを点滅させる回路」(2)
PCを使ってもできる・・・?
可能だが、非現実的・・・か?
while(1){
a = 1;
sleep(1);
a = 0;
sleep(1);
}
24. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
マイクロコントローラ(MCU:マ
イコン)
マイクロコントローラ (MCU)
CPU+RAM+ROM+周辺回路を1つのチップに
CPU: 1~100MIPS
RAM: 1K~10KB
ROM: 1K~100KB
Cost: ~100円程度
製造技術は、「非常に」枯れた技術
Microchip PIC12F629
25. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
MCUの中身
小さいながらも立派なコンピュータ
性能は数MIPS=初期のスーパーコンピュータ
並
Microchip PIC10F222
26. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
「LEDを点滅させる回路」(3)
発振回路
IC(8p)+C×1+R×2=$2
MCU
IC(8p)=$1.5
多機能
点滅速度、点滅パターン
などの変更が容易
(プログラム動作)
27. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
「マイコン」のパラダイムシフト
「コンピュータ」が小さく安くなった
「だけ」
システム構成の概念を変える可能性
(「破壊的イノベーション」)
ここまでの質的な変化が
実質になるためには?
設計者が意図できるか?
ユーザが理解できるか? (C.クリステンセン「イノベーションのジレンマ
—技術革新が巨大企業を滅ぼすとき」(翔泳社
(2001))
28. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
「マイコン」における料理人
「マイコン」の「調理例」を示す「料理
人」
雑誌記事、電子工作キット、・・・
29. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
新しいパラダイムでの「料理人」の重
要性
2000年頃から店頭に→食べ方???
料理番組・雑誌等での調理例→定番キノコ
に
30. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
「マイコン」の別の可能性
電子回路→コンピュータの継続性
本来はつながっている知識学問体系
・・・全体を通して理解している人がいる
か?
31. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
似た現象?:化学〜生物学・医学
化学〜生物学・医学の学問体系
脳・知能
生物(多細胞生物)
細胞
タンパク質・DNA
分子・原子
化学と生物学をつなごうとする試み:
分子生物学、生物物理学、・・・
まだ成功はしていない
超えられない壁?
32. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
学問体系が断絶した世界で発生する問
題
例:ガン細胞
分子レベルからの発生メカニズムは
完全には未解明
対処療法:外科手術、化学療法など
33. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
学問体系が断絶した世界で発生する問
題
例:ガン化したトランジスタ・・・?
コンピュータ=決定論的システム
=構成要素の完全動作が前提
微細化の進展→量子効果等による動作の不確実性↑
現状では、製造技術や設計技術で、なんとか抑え込
む
・・・いつまでも可能なのか?
「ハード屋」の言い分:ソフトウエアでなんとかしてくれ
「ソフト屋」の言い分:ハードウエアがしっかりしてくれ
例:組込みシステム
トレイ開閉ボタンを押してから45秒後にトレイが開
く
Blu-rayレコーダ(実話)
「ソフト屋」の言い分:「CPUがもっと速くなってくれ」
34. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
マイコン:これらをつなぐ媒体?
ぎりぎり、命令実行ステップ〜高級言語
が
つながる規模
入出力のための電子回路と
親和性・関連性が高い
35. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
Mooreの法則の負の側面
あまりにも明確な技術進歩の方向性
その結果、「なぜ」「何を」作るか、を
考えなくなってしまった
36. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
実例:4MbDRAMの立ち上がり
1Mb→4Mbの交代は
ビット単価では説明できない
不景気説は×
DRAM大口ユーザのPCのOS
(Win3.1→Win95)の世代交代? (直野「転換期の半導体・液晶産業」(日経BP,1996))
37. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
実例:テレビ
市場動向をどうとらえるか?
公共事業で「市場を作る」ことは長期的に得策
か?
(オリンピック、エコポイント、・・・)
学生にテレビを持っているか聞くと10%程度
PC(動画)と競合すべき?(時間の使い方とし
て)
http://www.garbagenews.net/archives/1935926.html http://www.nissay.co.jp/enjoy/keizai/32.html
38. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
ものづくり・製造業のあるべき姿
ものづくり = Why x What x How
Why : なぜそれを作るのか?
What : 何を作るのか?
How : どうやって作るのか?
39. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
産業としての製造業の形態の分類
製造業の形態の分類
(P.F.ドラッカー「現代の経営[上]」(ダイヤモンド社,2006))
個別生産: 船舶のような一点物の生産
旧型の大量生産: 均一な製品の大量生産
「黒である限り何色の自動車でも手に入る」(H.
フォード)
新型の大量生産: 均一な部品の組み合わせによる
多様な製品の大量生産
プロセス生産: 製品が製造工程に強く依存する生
産(石油精製など)
40. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
製造業における半導体
「旧型の大量生産」
同じ製品を大量につくる
汎用Tr・汎用ロジック・汎用アナログ・メモ
リ・・・
「新型の大量生産」
「均一な部品=汎用半導体」の
組み合わせ
半導体の位置づけ
それ自体が「旧型の大量生産」の対象
「新型の大量生産」による
「電子情報機器」生産のための部品・素材
41. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
「新型の大量生産」における部品
部品の規格化による高い効率化
黎明期の半導体における「セカンドソー
ス」
「真の汎用品」
741、555、74シリーズ、・・・
主に供給安定化が目的
電子情報機器の設計・製造に
与えたメリットは、はかりしれない
(Wikipediaより)
42. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
「真の汎用半導体」の転換
半導体性能↑と電子情報機器の性能↑
部品である半導体製品への性能要求↑
「真の汎用品」の意義の薄れ
汎用品=性能もそれなり
特定用途では性能が不足
半導体製品が用途ごとに多様化
=半導体産業の本質の転換
大量尐品種→尐量多品種(→SoC)
43. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
ムーアの法則のもたらすもの
半導体性能↑&電子情報機器の性能↑
→半導体製品の尐量多品種化→SoC
半導体固有の事情:イニシャルコスト↑↑↑
一企業の身の丈にあった投資額を超えている
イニシャルコスト↓技術(EB直描、設計自動化
等)
大量生産しないと回収できない
=ヒット製品への強い依存
例:iPhoneに搭載されると業績回復
産業構造として健全か?
44. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
半導体のあるべき姿(1)
「集積回路向き」の応用分野の開拓
社会的要請
実現のため必要微細加工されたSoCが必要
十分な出荷数を期待できる
スマート家電、スマートグリッド、ロボットビ
ジョン・・・
ユーザの機能飢餓を無視した「余計なお世話」?「市場創出」?
(TV?3D?4K?LTE?)
補助金・公共投資に依存する自立できない産業に未来はない(cf. 歌舞伎vs
(経済産業省 低炭素電力供給システム報告書より)
45. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
半導体のあるべき姿(2)
「枯れた技術の集積」マイコンのような実例
は?
十分枯れた製造技術
回路構成やアーキテクチャも学術的興味は薄い
ムーアの法則がもつ「低価格化」が産業構造、
世の中そのものを変える可能性
「持続的Innovation」を駆逐する「破壊的
Innovation」
十分に減価償却が済んだ製造装置だから可能な
コストも含めて実現可能なアプリケーション
「人類の幸福に貢献する」という産業の
46. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
MAKERSムーブメントと半導体
製造業をとりまく近年の動向
FabLab
フィジカル・コンピューティング
ロングテール
メイカー企業
47. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
「モノは買うもの」という時代?
ほしいものを、「買う」以外の方法は?
「作る」?
夏休みの工作レベルのおもちゃ:○
PCのソフトウエア:多くは×、場合よっては○
PCやスマホ:たぶん×(無理)
これらを「作ることができるようようなっ
た」ら?
古来、「必要なものは自分で作る」もの
産業革命後、生産者と消費者が分離
製品が複雑化・専門化し、ますます分離
48. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
MAKERSの背景:FabLab
「(ほぼ)なんでも作る方法」
(MITでの演習)
上流から下流まで一通りを
すべて体験する
「作りたいもの」を
「具現化する」プロセス
http://fab.cba.mit.edu/classes/MIT/863.08/
49. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
MAKERSの背景:FabLab
加工機をコアにしたものづくりコミュニ
ティ
レーザーカッター、3Dプリンタ等
DIYからDo It With Others (DIWO)へ
現在、日本では鎌倉とつくば他
「製造技術の民主化」
→市民が「製品は買うものではなく作るも
の」へ
カフェ併設などの派生型も
50. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
MAKERSの背景:フィジカルコンピューティ
ング
PC内にとどまらず、
物理現象を扱うコンピューティング
使いやすくまとめたマイコンボード+開発環境
センサ・アクチュエータの接続・情報処理が容
易
「たいしたことないもの」に見える
ただのマイコンボード?
マイコンボードの民主化
ArduinoUno
51. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
フィジカルコンピューティングを支えるコミュニ
ティ
ハードウエアのOpen Source化
(OSHW: Open Source Hardware)
改良・派生を促す
共通ベースを使って、ユーザごとの付加価値
(「作りたいもの」を素早く具現化する道
具)
Arduino用シールド(拡張ボード)の例
52. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
OSHWコミュニティで大事なこと
は・・?
情報共有コミュニティ
リアル/ネット経由のアクセス
「生き字引」の活用
「言語」となる共通ハードウエア
ユーザの「居場所」
たぶん個々には「アツい気持ち」がある
学校などでは周りに「理解者」がいない?
・・・萎える
「発表」の機会
自慢したい、よね。
53. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
金沢大・秋田研の実践例
マイコンブ
(研究室内サークル)
マイコンペ(コンペ)
→各種イベントで展示
ノウハウ共有
いずれも学生の発案
http://combu.ifdl.jp/
54. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
MAKERSの背景:ロングテール
(昔)尐数のヒット商品
→(今)多数のニッチ商品
ニッチも多数なので
総和は大きい
例:音楽販売では、
25,000位以下で売上の40%
「一部のヒット商品」がなくなる
音楽業界:△25%(’01〜’07)
ヒットアルバム:△60%(’01〜’07)
(C.アンダーソン「ロングテール」,早川書房
(2009))
55. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
「ロングテール」の背景と意義
嗜好の多様化←メディアの多様化
昔はテレビ(地上波だけ)しかない
「8時だよ全員集合!」はピーク時平均視聴率50%
「他に見るものがないから」という要因も大きい
今:テレビ持ってますか?(学生だと10%程度)
リコメンデーション等の「出会いの手段」の進歩
(マイナーなものを知る機会)
在庫コスト:大幅↓(オンライン・ストア)
=多様な商品が、消費者の選択の対象に
限られた製品数=生産者・流通業の都合
(CDストアの棚の制限)
ユーザの嗜好を満たす=産業の使命の実現
へ
56. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
MAKERSムーブメント
「21世紀の産業革命」とも呼ばれる
産業全体:130兆ドル
IT産業(bit産業):20兆ドル(15%)
残り(85%):atom産業(モノが関わる)
「IT産業革命」は限定的→本命はatom産業
ものづくりの「ロングテール」を支える技術革新
3Dプリンタ等によるプロトタイピング
クラウド・ファンディング(市場調査・資金調達)
サプライチェーン活用による
量産手段の民主化
「モノへの愛着」の重要性
(熱心なファン)
C.アンダーソン
「MAKERS」
(NHK出版,2012)
三木・宇都宮
「マイクロモノづく
り
を始めよう」
(テンブックス,2013)
57. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
SFの中のMAKERS?
例:野尻抱介「南極点のピアピア動画」
日本の次期月探査計画に関わっていた大学院
生・蓮見省一の夢は、彗星が月面に衝突した瞬
間に潰え、恋人の奈美までが彼のもとを去った。
省一はただ、奈美への愛をボーカロイドの小隅
レイに歌わせ、ピアピア動画にアップロードす
るしかなかった。
しかし、月からの放出物が地球に双極ジェット
を形成することが判明、ピアピア技術部による
“宇宙男プロジェクト”が開始され
る・・・・・・
ネットと宇宙開発の未来を描く4篇収録の連作
集
・・・・??? 野尻「南極点のピアピア動
画」
(早川書房 , 2012)
58. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
要約(ネタバレ)と「示唆」
ニコニコ技術部でロケットつくって宇宙
に行ったり、潜水艦でクジラと会話する、
というお話
この小説の示唆・・・?(私の解釈)
個々人の才能は尖っている(レベルが高い)
=潜在的な生産者・技術の存在
皆で力をあわせると、すごいことができる
=潜在的な共同起業の可能性
現在は、皆が「趣味」の範囲でやっている
もしかしたら産業になる・・・?
59. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
メイカー企業
小規模製造業
数万個ロット
高い技術力
熱心なユーザ・ファン
価格勝負でないユニークな製品
「製造業におけるロングテールの具現化」
均一・大量生産製品:
平均満足度は高いが、満足度maxではない
http://www.bsize.com/
60. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
Makersムーブメントが示唆するこ
と
「技術の民主化」がもたらすもの
昔は、技術はエンジニアの特権だった
それが民主化されて、趣味で使う人が出てき
た
しょうもないものも、たくさんある
すごいものも、たくさんある
モノ・ヒトの多様性(とそれをつなぐコミュ
ニティ)
61. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
「多様性」の実践例:NT金沢2013
もともとは、ニコ動のニコニコ技術部のオフ
会
「技術の民主化が生んだ多様性」を集めてみ
る
それらがどう相互作用するか?・・・実験中
62. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
「集積回路」の民主化?
「集積回路」が民主化するとどうなる
か?
「集積回路」を民主化するには、
どうしたらいいか?
63. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
集積回路が民主化されるために
は?
原料(Siウエハ)価格はあまり上昇していない
$1.14/inch2→$1.17/inch2(2004, SEMI統計)
初期コスト
マスク価格:45nmは180nmの10倍
電子線(EB)直描:低スループットだが多品種向け
設計コスト
高機能は高価な専用CAD(米国メーカー独占)
汎用品レベルは汎用(含フリー)CADでも
設計ツール(CAD)の民主化は・・・?
64. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
「汎用/専用部品」になる集積回路
(1)
System on Chip (SoC/システムLSI)
システム一式をワンチップ化
必然的に特定用途=尐量多品種
(大量生産品はiPhoneのCPUなどごく尐数)
「製造初期コスト(マスク)が高価」という矛盾
設計の複雑度が極めて高い
設計方法が異常に複雑化・高度化
System in Package (SiP)
システム一式(CPU・メモリ等)を
ワンパッケージ化(ただし若干低速度)
必然的に特定用途=尐量多品種
各チップは汎用品:量産効果
「ロングテール」向き?
65. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
「汎用/専用部品」になる集積回路
(2)
Configurableなデバイス
FPGA, MCU, PSoC, スマートアナログ, …
デバイスそのものは「汎用部品」
(機能をカスタムに設定できる)
微細化によって「それなりの性能」になってきた
(昔は性能がイマイチだったが)
設計ツールの民主化により、かなり有望か?
LSI試作サービス
小ロット製品向けも
例:仏CMP(€1,200/mm2@0.18um, €650/mm2@0.35um,
€12,000/mm2@28nm)
「そこそこの性能」ならかなり安くなってきた
設計ツールの民主化が普及のキーか?
66. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
集積回路の民主化のためのキー技術
(1)
「カスタムLSIが作れるとうれしい用途」
高度・高速信号処理、高機能センサ、などなど
「それまでは考えてもいなかった分野」は、けっこう
ある
例:(高価な)3次元計測デバイスは昔からあったがイマイチ普及し
なかった
→Kinectで一気に普及し、基盤技術になった
「やろうと思えばできること」を見据えた考え方
例:実装技術(「やろうと思えばできること」)を知らなければ
Kinectやそれを使ったアプリは考えられない
例:高速カメラ+画像処理を知らなければ、高速ビジョンは考えられ
ない
プロトタイプでもいいので「動くものを見せられる」のも重要
67. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
集積回路の民主化のためのキー技術
(2)
実装インフラの整備
これはFPGAやLSI試作サービスが整ってきている
設計ツールの民主化
現状では民主化されているとは言い難い
↑のようなケースが出てこれば改善が進む・・・??
またはArduinoやRaspberryPiのような
ブレイクスルーをおこすものを作る人が現れ
る・・・?
68. 2013/8/20 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
まとめ:みなさんへのメッセージ
無条件の「科学技術の進歩=人類の幸福」は昔の
話
科学コミュニケーションが大切です
同様に、技術コミュニケーションも大切
「誰かがやってくれる」「誰かが作ってくれる」
という
考えでは、もったいない&危ない
「放射能が危険」は本当ですか?
テレビで言ってるだけ、という姿勢ではありません
か?
持っているケータイに満足ですか?
「欲しいもの・必要なものは自分でも作れる」と
いう