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TeX原稿からEPUBを作りたい
1.
TEX原稿から EPUBを作りたい 鹿野 桂一郎 k16.shikano@gmail.com @golden_lucky 2015 年
11 月 7 日 TEX ユーザの集い 2015 1 / 33
2.
EPUBの なにがうれしいか
3.
EPUB とは 電子書籍の標準フォーマットの規格 2007 年
9 月に IDPF( International Digital Publishing Forum 国際電子出版フォーラム) が策定した 2011 年 10 月に現行のメジャーバージョンである EPUB3 が策定された 3 / 33
4.
EPUB には HTML
が必要 EPUB ⊂ HTML を ZIP で固めたもの 実際には、ZIP の中には HTML 以外にどんなメディアをい れてもいい 規格上、テキストとして再生してもらえることになっている のは、HTML と SVG のみ レイアウトは CSS のみで指定する。JavaScript は基本的に使えない EPUB3 では HTML5 をサポートしているので、 MathML が使えることになっている TEX ユーザにとっては朗報ですね 4 / 33
5.
EPUB といえばリフロー ユーザの手元で動的に作られる「ページ」 古き良き「ページ」というインターフェイスの 再発明 5 /
33
6.
EPUB といえばリフロー ユーザの手元で動的に作られる「ページ」 古き良き「ページ」というインターフェイスの 再発明 ページとその上の文字 の物理的な制約が(主 にユーザにとって)な くなる 小さい画面、巨大な画 面、丸い画面、どんな読 書端末で読んでもいい 6 /
33
7.
EPUB といえばリフロー ユーザの手元で動的に作られる「ページ」 古き良き「ページ」というインターフェイスの 再発明 ページとその上の文字 の物理的な制約が(主 にユーザにとって)な くなる 小さい画面、巨大な画 面、丸い画面、どんな読 書端末で読んでもいい 月世界上陸 月 世
界 の 探 険 に 於て、一番難所とい われるのは、無引力空 間の通過だった。その 空間は、丁度地球の引 力と月の引力とが同 じ 強 さ の と こ ろ であって、 海野十三『月世界探険記』より 7 / 33
8.
EPUB といえばリフロー ユーザの手元で動的に作られる「ページ」 古き良き「ページ」というインターフェイスの 再発明 ページとその上の文字 の物理的な制約が(主 にユーザにとって)な くなる 小さい画面、巨大な画 面、丸い画面、どんな読 書端末で読んでもいい も し そこでまごまご していたり、エンジ ンが とま 止ったりすると、 そこから先、月の方へ ゆくこともできず、さ りとて地球の方へ引 かえすことも出 来
ず 海野十三『月世界探険記』より 8 / 33
9.
EPUB といえばリフロー ユーザの手元で動的に作られる「ページ」 古き良き「ページ」というインターフェイスの 再発明 ページとその上の文字 の物理的な制約が(主 にユーザにとって)な くなる 小さい画面、巨大な画 面、丸い画面、どんな読 書端末で読んでもいい 宙ぶら りんになってし ま っ
て 、た だ も う 餓死を待つより外し かたがないという恐ろ しい空間帯だった。 はちやていちょう 蜂谷艇長の巧みな指 揮が、幸いにエ ンジン 海野十三『月世界探険記』より 9 / 33
10.
書籍に必要なのはコンテンツとメタ情報 大量のメタ情報が、リーダーで表示したり流通に乗 せたりするために必要 書名、書名の読み、書名の種類、同一書名で別バージョンの 本を区別する情報、シリーズ中の順番、原書名 著者名、著者名の別表記 発行日、改訂日、重刷日 出版社、製作所、コピーライト ISBN とか DOI
とか出版社独自の番号のような識別子 EPUB3 では、作り手がメタ情報を破綻なく拡張も できる仕組み(<meta>要素)がある 10 / 33
11.
文書の構造も一種のメタ情報 適切に意味付けされた構造は、アクセシビリティに とって重要 そもそも再生に支障をきたす 読み上げとページめくりの同期とか、付加価値のある機能を 提供するために必要 コンテンツの再利用性は高いほうがいい ナビゲーション(論理的な目次)がうまく機能する ためには構造が必要 11 / 33
12.
EPUB vs. PDF ≈
構造とメタ情報 vs. 見た目 EPUB は、多くの読者にとって、見た目と手軽さで は PDF に劣る 流通やアクセシビリティを考えると、書籍としての メリットが出始めている 12 / 33
13.
EPUB vs. PDF ≈
構造とメタ情報 vs. 見た目 EPUB は、多くの読者にとって、見た目と手軽さで は PDF に劣る 流通やアクセシビリティを考えると、書籍としての メリットが出始めている ただし PDF/UA(もしくはタグ付き PDF)のよう な規格もあるので「PDF はアクセシビリティだめ」 というわけではない 13 / 33
14.
TEXをHTMLに 変換したい
15.
TEX →HTML 変換の要件 EPUB
の仕様にかなった HTML になること XML 版の HTML5 であること 要素の id 属性や図に重複がないこと 本の構造にかなった HTML になること 本の中の位置に見合った連番 相互参照 手作業で HTML を編集しないで済むこと TEX 原稿から完全に機械的に変換したい 15 / 33
16.
数式について EPUB3 では MathML(Presentational)が サポートされているので、MathML
に変換すれば よい Kindle でも出したかったら、SVG の画像にして おくのがベストプラクティス MathJax のことは忘れましょう JavaScript が動く EPUB3 リーダーはいまのところ一般 的ではない 動いても、ネットワークもしくは mathjax パッケージと 数式用フォントの埋め込みが必要で、専用リーダーには 非現実的 16 / 33
17.
数式について EPUB3 では MathML(Presentational)が サポートされているので、MathML
に変換すれば よい Kindle でも出したかったら、SVG の画像にして おくのがベストプラクティス MathJax のことは忘れましょう JavaScript が動く EPUB3 リーダーはいまのところ一般 的ではない 動いても、ネットワークもしくは mathjax パッケージと 数式用フォントの埋め込みが必要で、専用リーダーには 非現実的 いずれにせよ、ツールでなんとかなる時代になって います 17 / 33
18.
TEX からHTML を手に入れる方法まとめ 1.
テキストフィルタ型 TEX 原稿をテキストとしてパーズし、HTML として出力 Pandoc、LATEX2html など 気軽に使えるが、拡張性はほぼない 2. TeX エミュレート型 TEX の処理(トークンを読み込んで箱を並べる)を模倣 LATEXml、plasTEX、HeVeA など 良好な結果がえられるが、独自の TeX マクロなどは自力で 拡張が必要 3. DVI ウェア型 LATEX に DVI を作らせて、それを HTML にする TEX4ht など ほぼ無敵(pTEX を除く)だが、文書の構造が取れるわけで はない 18 / 33
19.
TEX からHTML を手に入れる方法まとめ 1.
テキストフィルタ型 TEX 原稿をテキストとしてパーズし、HTML として出力 Pandoc、LATEX2html など 気軽に使えるが、拡張性はほぼない 2. TeX エミュレート型 TEX の処理(トークンを読み込んで箱を並べる)を模倣 LATEXml、plasTEX、HeVeA など 良好な結果がえられるが、独自の TeX マクロなどは自力で 拡張が必要 3. DVI ウェア型 LATEX に DVI を作らせて、それを HTML にする TEX4ht など ほぼ無敵(pTEX を除く)だが、文書の構造が取れるわけで はない 19 / 33
20.
LATEXml TEX の消化の仕組みを Perl
で模倣し、出力ルーチ ンの代わりに DOM を組み立てて生の XML を吐き 出すイメージ 吐き出した XML を XSLT で後処理して使う 独自の TEX マクロや LATEX コマンド・環境に対する 処理を、Perl のモジュールを書いて追加できる DefMacro(’mybold{}’,’textbf{#1}’); 20 / 33
21.
LATEXml (つづき) 精力的に開発されているようで、昨年の時点で TikZ サポート率では
TEX4ht を抜いたらしい 2014 年 5 月には、直接 EPUB を作ることも可能 になっている $ latexml --inputencoding=utf8 --dest=test.xhtml test.tex $ latexmlpost --format=epub test.xhtml 21 / 33
22.
TEX4ht プロ向けにはよく使われているらしい 基本的な仕組みは、 1. HTML 構造用のヒントをspecial
で埋め込んだ特別な dvi を作るパッケージを読み込む documentclass{jsbook} ... usepackage[xhtml,mathml,charset=utf-8]{tex4ht} ... begin{document} 2. 生成された特殊な dvi を、tex4ht というコマンドで処理 すると、HTML ができる 3. さらに t4ht というコマンドで処理することで CSS を作る tex4ht コマンドは、platex で処理された dvi (に指定されている日本語用の jfm)を読めない! 22 / 33
23.
TEX4ht を日本語で使う方法、その1 pTEX を使わなければいい TeX4ebook
というパッケージの機能を利用して fontspec を使う documentclass{book} % jbook/jsbook は NG usepackage{alternative4ht} altusepackage{fontspec} altusepackage{xeCJK} altusepackage{xunicode} setCJKmainfont{IPAMincho} ... begin{document} 実行には LuaLATEX が必要(-l オプション) $ make4ht -l book.tex 23 / 33
24.
TEX4ht を日本語で使う方法、その2 1 つめの方法だと
pTEX のプリミティブが封じら れる platex でコンパイルした dvi を tex4ht に読ま せる手段はないか? tex4ht が読めない pTEX 由来の dvi 命令 set2 #N を、set_char_#n 命令に変換できないか? 実は jTEX は set_char_#n 命令だけで日本語の 文字を印字している! 24 / 33
25.
pTEX のdvi をjTEX
のdvi に変換 必要なもの: dvi2dvi dvi2dvi が使う仮想フォント(Debian なら dvi2ps-fontdata-a2n) jtex 用の (dgj|dmj)*.tfm(Debian なら jtex-base) tex4ht が使う、(dgj|dmj)*.tfm から HTML 用の文字 への対応表(このチートを開発した行木孝夫先生がむかし作ったものが W32TEX に 同梱されている) 実行手順: $ platex book.dvi $ dvi2dvi -F a2n -S book.dvi > book-ntt.dvi $ tex4ht -i~/texmf/tex4ht/ht-fonts/ja/dnp -cunihtf -utf8 book-ntt.dvi (ひょっとして W32TEX ではこれを自動でやって くれる?) 25 / 33
26.
HTMLをEPUBにする
27.
Calibre かPandoc でHTML
→EPUB 電子書籍管理アプリケーションの Calibre には、 各種フォーマットの変換コマンド ebook-convert が用意されている $ ebook-convert --extra-css=book.css book.html book.epub ただし、Calibre は EPUB2 しか生成できないの で、いまは Pandoc を使うのがよさそう $ pandoc -t epub3 -o book.epub --epub-stylesheet=book.css book.html 実際にはこんなオプションでは済まない! 27 / 33
28.
自力でやるのも現実的 HTML をかき集めてメタ情報を用意すればいいの で、難しくはない 実際に自作して使っている qnda (https://github.com/k16shikano/qnda) LATEX
が自動生成する情報(ref とか連番)を生成するの が面倒 それでも、Calibre や Pandoc のオプションを調べるより 楽だと思う(個人差があります) いずれにせよ epubcheck を忘れずに $ java -jar epubcheck.jar book.epub 28 / 33
29.
TEXユーザが EPUBを気にする必要 はあるのか?
30.
TEX はいかにもリフローと相性が悪そう EPUB は、デバイスに非依存で表示を保証すること を考えていないメディア DVI
は、デバイスに非依存で表示を保証することを 目指していたメディア 30 / 33
31.
LATEX で書かないという選択 (まとめのようなもの) EPUB が必要なら、LATEX
をソースにすることをあ きらめる PDF を作るつもりで書いた原稿を EPUB にしたい、という のは倒錯では? EPUB にしやすい LATEX のサブセットを作る? TEX っぽいシンタックスで EPUB を作りたい、というのは、 やっぱり倒錯なような タグ付き PDF や固定レイアウトでいいのかもしれ ない 31 / 33
32.
参考資料 EPUB について IDPF http://idpf.org/epub Garrish
& Gylling “EPUB 3 Best Practices”, O’Reilly, 2013 epubcheck https://github.com/idpf/epubcheck PDF/UA について “PDA/UA in a Nutshell” http://www.pdfa.org/wp-content/uploads/ 2013/08/PDFUA-in-a-Nutshell-PDFUA.pdf 32 / 33
33.
参考資料(つづき) 変換ツール Pandoc http://pandoc.org/ LATEXml http://dlmf.nist.gov/LaTeXML/ (
https://github.com/brucemiller/LaTeXML) plasTEX http://tiarno.github.io/plastex/ HeVeA http://hevea.inria.fr/ TEX4ht https://www.tug.org/tex4ht/ TEX4ebook https://www.ctan.org/pkg/tex4ebook ( https://github.com/michal-h21/tex4ebook) ebook-convert(Calibre) http://manual. calibre-ebook.com/cli/ebook-convert.html 33 / 33
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