私は『LC-ECD-MSを用いた代謝物の高感度・網羅的分析法の開発』を行っています。LC-MSに用いられるエレクトロスプレーイオン化(ESI)法は、代謝物などの低分子からペプチド・タンパクなどの高分子に至る、中・高極性の幅広い範囲の物質に対して有効なイオン化法でありますが、脂質などの低極性物質に対しては、イオン化効率が低いため高感度検出は難しいという問題が存在します。一方、LC-ESI-MSにおいて私達は、低極性物質とその酸化体ではヒドロキシ基がケトン基に変わった酸化体の方が高感度に検出されることを確認しました。このことから低極性物質を酸化体に変化させることが出来れば、LC-ESI-MSにおいても高感度分析が可能になると考え、ESIではイオン化が難しい低極性物質を酸化還元することにより高感度かつ選択的に検出する電気化学検出器(ECD)に注目しました。私達はESIによる既存のLC-MSに、ECDを組み合わせた、LC-ECD-ESI-MSを用いることにより、様々な低極性物質の測定を行い、高感度検出を可能としました。今後、このシステムを用いた網羅的分析に応用していくつもりである。