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1  sur  5
2003
                                         2003年1月1日


           日本の人口動態とプライベートエクイティ


失われた10年
失われた10年
    10
 現在の日本経済はデフレを伴う景気後退の     ① 資本主義経済における経済動向を左右するのは設

                          備投資である。
厳しい時代であり、プライベートエクイティ
                         ② 設備投資の決定は、企業家の意思・予測によるも
投資もその影響を大きく受けている。巷では
                          ので、社会のセンチメントの与える影響も大きい
景気後退の犯人探しについての議論は活発だ
                          が、基本は技術の進歩、人口増加が影響する。す
が、誰もが真っ先に、90年前後のバブル経済
                          べての生産現場が技術の進歩を取り入れて、社会
の反動、銀行の不良債権処理の遅れをあげて      インフラの建設が人口増加に追いついてしまうと、
おり、銀行に対する風当たりは厳しい。最近      もはや投資のはけ口が飽和し、ブームは終わる。
のベンチャー企業に対する銀行の対応をみる     ③ こうした設備投資の未来について、技術の進歩、

と、銀行は新しい産業を興すことについて消      新産業の勃興、新資源の発見、人口の増加が見込

極的ではないかとさえ思えてくる。          まれなければ、経済の成長力は失われ、沈滞した

                          経済に陥る。特に人口が減少する経済では、資本
 不良債権問題に対し政府は様々な対応策を
                          設備を拡大しても需要はそれほど拡大せず、期待
打ち出している上、銀行側も経営統合やリス
                          を裏切られる結果に終わる。投資環境は悲観的に
トラの努力を行っているのにもかかわらず、
                          なり、悪循環に陥る。
バブル以降に発生した新たな不良債権の発生
                         ④人口減少と高齢化の進行にともない産業構造が変
はその処理額を上回る勢いで増加している。      わり製造業が減ってサービス業が増える。サービ
このような現状を考えると、現在の景気後退      ス業は資本をあまり利用しないので、資本需要を

には、もっと大きな経済潮流が影響している      減少させ、設備投資を抑制する。また、労働生産

ようである。その一つが早晩ピークを迎え減      性を上昇させる大量生産システムは人口増加に支

少傾向が見込まれる日本の人口動態である。      えられており、人口減少は反対に労働生産性を引
                          き下げ、企業の将来予測も暗くする。サービス経

                          済化が、もともと低迷しがちな設備投資需要をさ
人口減少の問題点
                          らに引き下げてしまうという心配があると、サー
 人口減少が引き起こす問題はすでに60年以
                          ビス経済化が行き過ぎる危険性がある。
上も前に経済学者たちから指摘されている。
                         ⑤ 経済学者は、人口増加の危険を説いたマルサスの
人口減少は資本主義経済の中では消費の減少      人口論の伝統の影響を受けているので、人口減少
につながり景気後退をもたらすということは、     を楽観的に解釈する傾向があり、人口減少が資本

1930年代後半にケインズなどから発表されて    蓄積に与える障害に気づきにくい。このために有

おり、同テーマで1938年に行われたケインズ    効な対策の検討が進まず、問題を深刻化させる可

                          能性がある。
派のハンセン博士の研究は、日本の現状分析
に大いに参考となる。
日本の人口動態と失われた10年
日本の人口動態と失われた10年
            10                    94年から96年に大蔵省の元銀行局長で住専
 現状の日本の人口ピラミッドは非常にいび             問題の処理にあたった早稲田大学西村教授に
つな形をしており若年層が少ない。30歳前後            よると、バブルの後始末を行う方策は不良債
の第二次ベビーブーマーをピークに若年層の             権処理であると考え、それを実行したが、後
人口は例年減少しており、逆ピラミッド型を             になって大きな見落としがあったことに気づ
形成している。                          いたそうである。実は、日本の生産年齢人口
                                 (15歳-64歳)は95年に8,716万人でピークを
図表1:2000年時点の人口構成(歳、千人)
図表1:2000年時点の人口構成(歳、千人)
    2000                         迎えており、その後減少に転じ、回復する見
                                 込みはない。今後人口の減少が続くと、土地
 2500
 2000                            に対する需要は減速し、地価下落は今後も続
 1500                        女
 1000                        男   く。結果的に、デフレの影響による不良債権
  500
    0                            の発生は続き、不良債権処理に終わりがなく
   10
   20
        30
        40
             50
             60
                  70
                  80
                        90
    0




                         0




                                 なったというのである。
                       10




             (データ:人口問題研究所)       「失われた10年」といわれた1990年代は、
 一方、海外を見ると、米国がずん胴型であ             人口データから見てもいかに日本経済が活力
り、日本と比べ若年層の人口が厚いのが特徴             を失った期間であったかということが分かる。
的である。米国の移民数は1970年以降増加し、
90年代は毎年100万人近くまで増加している。          再生のラストチャンス?
その結果、米国の総人口は現在2億7千万人強             近年人口動態論がクローズアップされてき
に対し、毎年240万人を超える人口増加を続け           ているが、筆者は消費の中核年齢層を詳細に
ており、不法移民、就労ビザ労働者まで加え             見てみることにより、2000年から2010年の10
ると300万人を越すと言われている。更に、細           年間に日本経済は再生する可能性があるので
かく見ると生産も消費も活発な20代から40代           はないかと考える。
の中核層が、移民により常に補強されている             図表2:年齢層別人口増加率(男性)
のが特徴的である。こうした人口動態により
                                  4.0%
米国では消費が飽和することなく、移民流入
                                  3.0%
が経済成長を後押ししてきた。一方、日本は              2.0%                             全体
                                  1.0%                             15-64
基本的に移民を受け入れておらず、「失われ
                                  0.0%                             31-50
た年齢層」の人口は決して増えることはない。            -1.0% 1960   1980   2000   2020

                                 -2.0%
人口を維持するために一人の女性が生涯に産
む子供の数は平均2.1人が必要と言われてい                                (データ:人口問題研究所)

るが、日本の現状は1.38人(2002年)に減少          ポイントは31-50歳の男性の増加率にある。
しており、今後ますます日本の人口が減少す             10年刻みで見ると、1950年以降プラスが続い
るのは明白である。そのため、中核層の人口             ていたが、90年代はマイナスに転じている
動態の動きが経済活動に大きく影響を及ぼし             (-0.7%)。また、65歳以上の老齢人口の比
ている。                             率は80年まで一ケタだったものが2000年は
15%近くに跳ね上がっている。つまり需要・                                   年からの 10 年は新しい経済潮流を迎えている
    供給を生み出す中核層が薄くなり、社会保障                                    のである。
    負担が急速に増えたわけである。しかしなが                                     しかしながら、その後はこの中核層の人口
    ら、2000年以降、31-50歳の男性人口はわず                                も再び下り坂となるのも事実である。従って、
    かながら増加に転じる。(0.4%増予想)                                    この 10 年間にいかに新しい企業を興し、新産
                                                            業を生み出し、需要を創出するかが 21 世紀の
    図表3:日本男性の人口推計
    図表3:日本男性の人口推計
        日本                                                  日本経済を大きく左右するともいえる。すな
           1970      1980      1990      2000      2010
                                                            わち、この 10 年間は日本再生の最後のチャン
            ~         ~         ~         ~         ~
           1980      1990      2000      2010      2020     スであり、プライベートエクイティ投資も日
          (実績)      (実績)      (実績)      (推計)      (推計)
全   体        1.3%      0.5%      0.2%      0.0%     -0.3%   本再生を支えることになろう。
15-64 歳     1.1%      1.1%      0.2%     -0.5%     -0.9%
31-50 歳     2.5%      0.3%     -0.7%      0.4%     -0.5%
                                                            米国年金のプライベートエクイティ投資モデル
                                                            米国年金のプライベートエクイティ投資モデル
                                                                 プライベートエクイティ投資
65 歳以上      7.8%      9.9%     14.9%     19.6%     24.4%
                                                             90年代の米国西海岸の成功の原点は、多く
                              (データ:人口問題研究所)
                                                            の移民を促すほどのダイナミックな投資を進
     つまり、1990-2000年にマイナスとなった31
                                                            めてきたカルパース(カリフォルニア州年金
    -50歳の人口が、2000年-2010年には一度プラ
                                                            基金)の投資戦略にある。世界最大の公的年
    スに転じるのだ。90年代は消費を最も活発に
                                                            金基金であるカルパースは、プライベートエ
    おこなう中核層が減少した10年間であり、
                                                            クイティに積極的に投資を行い、カルパース
    「失われた10年」と一致するが、2000年-2010
                                                            だけで総資産の6%おおよそ1兆円の残高を積
    年の10年は「再生の10年」となる可能性があ
                                                            み上げている。これは日本全体の投資残高に
    る。
                                                            匹敵する。筆者は、カルパースの投資戦略は
                                                            日本再生のヒントとなると見ている。
     人口全体は 2010 年以降、減り始める(ピー
                                                             カルパースは、90年代に、積極的にプライ
    クは 2004 年とも 2006 年とも言われている)
                                                            ベートエクイティファンドに投資してきた。
    が、31-50 歳の男性という、子供に教育費を
                                                            その多くは地元のカリフォルニア北部サンフ
    かけ、住宅を購入し(平均 40 歳)、家族で旅
                                                            ランシスコ湾を中心とするシリコンバレーに
    行をするなど、最も消費を行う年代の人口が
                                                            資金投下されることとなり、ITやバイオなど
    増えるわけである。そしてこの年代の消費動
                                                            ハイテク産業が生まれてきた。90年代は組立
    向が、GDP の 6 割を占める個人消費に影響し、
                                                            加工などローテクの分野では、安い労働力を
    企業活動を促進し、更に 31-50 歳の増加が新
                                                            求めて中国、台湾やアセアン諸国などに製造
    しいアントレプレナーを産むことで、 を上
                     GDP
                                                            拠点の移転が起こって行ったが、一方、CPU
    昇させる原動力となる可能性がある。そして、
                                                            の開発や通信技術、遺伝子工学など高い技術
    プライベートエクイティ投資も新しい時代を
                                                            を伴う開発型産業はシリコンバレーで栄えた
    迎えており、 代 40 代の企業家が減少し開業
          30
                                                            のである。年金基金からの潤沢な資金とビジ
    率も減少してしまった 90 年代と異なり 2000
                                                            ネスチャンスを求めて世界中から高い技術と
                                                            大いなる野心を持つ高学歴の中核層の人材が
移住してきた。その結果、居住者のうち白人      な対応策が必要で、以下のような種々のアイ
は50%を切り、3割を国外で生まれた人々で占    ディアが検討されるべきだとおもう。今後、
めるようになった。それに伴い、社会インフ      人口が減少しても経済力は残るような仕組み
ラへの投資も促進され、州職員の雇用も拡大。     を作り上げておくことが必要であり、英国の
ファンドもその結果高いリターンを生むこと      ビッグバンのように日本のウインブルドン化
が可能となり、年金基金が更に拡大成長する      を考える必要があるのではないだろうか。そ
ことで、プライベートエクイティファンドへ      のため、金融、通信、物流などで経済特区を
の投資も拡大して行く好循環を実現したので      作り、外資の参入を促し、アジアにおける一
ある。                       大拠点を作り上げることを考えてはどうだろ
 90年からプライベートエクイティ投資を開     うか。また「失われた年齢層」の移民による
始し拡大していった。これを支えたのが、積      補強も考えていくことも必要ではないだろう
極的に投資の指南を行ってきたプライベート      か。特にアジアから積極的に高度技術者を中
エクイティ投資のアドバイザーであり、日本      心に移民の受け入れを拡大するのである。
のプライベートエクイティ投資においても、        いずれにせよ、時間が経過するにつれ、人
今後、投資を指南するアドバイザーの役割が      口問題は多くの人々に真剣に受け止められ、
重要となるだろう。日本においてもカルパー      上記アイディアのいくつかは導入が議論され
スの戦略に倣い、ローテク部分は中国などア      るだろう。しかしながら残された時間は少な
ジアに生産移転してコストダウンを促し、頭      い。不良債権問題に苦しむ銀行からの積極的
脳集約型のハイテク部分について国内へ積極      な投資は当面期待できない。今こそ投資家は
的に資金を投下することで、日本の産業を拡      日本のプライベートエクイティファンドへの
大し、惹いては日本の雇用を拡大していくダ      投資を真剣に考える時である。
イナミックな循環を生み出す必要があると思
われる。                       エー・アイ・キャピタル               徳田 浩司
                                                      (執筆当時)
21世紀の人口対策とプライベートエクイティ
21 世紀の人口対策とプライベートエクイティ
   世紀の人口対策とプライベ
投資                        三菱商事証券ニューズレター
 2010 年までは盛り返す消費人口も、それ以   Alternative
                          Alternative Investment Outlook寄稿文
                                                 Outlook寄稿文
降は、再び厳しい状況に陥る。政策面で様々
徳田 浩司(トクダ コウジ)
Fusion Reactor LLC(在米国シリコンバレー)社長
三和銀行、三和総研、三菱商事証券などで、システムコンサルティング、ベンチ
ャー投融資などに従事。2004年に独立、米国シリコンバレーで、ベンチャーサポ
ート、IT・金融ビジネスのコンサルティング、ワイヤレス・ブロードバンド・ソリュー
ションの開発・ベンチャー経営、老舗スポーティング・グッズ・メーカの米国代表
などに従事。




        本件に関するご意見・お問い合わせ


                Fusion Reactor LLC
                 代表;
                 代表; 徳田 浩司
   電話 日本 050-5534-5314 (国内電話で通じます)
         050-5534-      国内電話で通じます)
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日本の人口動態とプライベートエクイティ

  • 1. 2003 2003年1月1日 日本の人口動態とプライベートエクイティ 失われた10年 失われた10年 10 現在の日本経済はデフレを伴う景気後退の ① 資本主義経済における経済動向を左右するのは設 備投資である。 厳しい時代であり、プライベートエクイティ ② 設備投資の決定は、企業家の意思・予測によるも 投資もその影響を大きく受けている。巷では ので、社会のセンチメントの与える影響も大きい 景気後退の犯人探しについての議論は活発だ が、基本は技術の進歩、人口増加が影響する。す が、誰もが真っ先に、90年前後のバブル経済 べての生産現場が技術の進歩を取り入れて、社会 の反動、銀行の不良債権処理の遅れをあげて インフラの建設が人口増加に追いついてしまうと、 おり、銀行に対する風当たりは厳しい。最近 もはや投資のはけ口が飽和し、ブームは終わる。 のベンチャー企業に対する銀行の対応をみる ③ こうした設備投資の未来について、技術の進歩、 と、銀行は新しい産業を興すことについて消 新産業の勃興、新資源の発見、人口の増加が見込 極的ではないかとさえ思えてくる。 まれなければ、経済の成長力は失われ、沈滞した 経済に陥る。特に人口が減少する経済では、資本 不良債権問題に対し政府は様々な対応策を 設備を拡大しても需要はそれほど拡大せず、期待 打ち出している上、銀行側も経営統合やリス を裏切られる結果に終わる。投資環境は悲観的に トラの努力を行っているのにもかかわらず、 なり、悪循環に陥る。 バブル以降に発生した新たな不良債権の発生 ④人口減少と高齢化の進行にともない産業構造が変 はその処理額を上回る勢いで増加している。 わり製造業が減ってサービス業が増える。サービ このような現状を考えると、現在の景気後退 ス業は資本をあまり利用しないので、資本需要を には、もっと大きな経済潮流が影響している 減少させ、設備投資を抑制する。また、労働生産 ようである。その一つが早晩ピークを迎え減 性を上昇させる大量生産システムは人口増加に支 少傾向が見込まれる日本の人口動態である。 えられており、人口減少は反対に労働生産性を引 き下げ、企業の将来予測も暗くする。サービス経 済化が、もともと低迷しがちな設備投資需要をさ 人口減少の問題点 らに引き下げてしまうという心配があると、サー 人口減少が引き起こす問題はすでに60年以 ビス経済化が行き過ぎる危険性がある。 上も前に経済学者たちから指摘されている。 ⑤ 経済学者は、人口増加の危険を説いたマルサスの 人口減少は資本主義経済の中では消費の減少 人口論の伝統の影響を受けているので、人口減少 につながり景気後退をもたらすということは、 を楽観的に解釈する傾向があり、人口減少が資本 1930年代後半にケインズなどから発表されて 蓄積に与える障害に気づきにくい。このために有 おり、同テーマで1938年に行われたケインズ 効な対策の検討が進まず、問題を深刻化させる可 能性がある。 派のハンセン博士の研究は、日本の現状分析 に大いに参考となる。
  • 2. 日本の人口動態と失われた10年 日本の人口動態と失われた10年 10 94年から96年に大蔵省の元銀行局長で住専 現状の日本の人口ピラミッドは非常にいび 問題の処理にあたった早稲田大学西村教授に つな形をしており若年層が少ない。30歳前後 よると、バブルの後始末を行う方策は不良債 の第二次ベビーブーマーをピークに若年層の 権処理であると考え、それを実行したが、後 人口は例年減少しており、逆ピラミッド型を になって大きな見落としがあったことに気づ 形成している。 いたそうである。実は、日本の生産年齢人口 (15歳-64歳)は95年に8,716万人でピークを 図表1:2000年時点の人口構成(歳、千人) 図表1:2000年時点の人口構成(歳、千人) 2000 迎えており、その後減少に転じ、回復する見 込みはない。今後人口の減少が続くと、土地 2500 2000 に対する需要は減速し、地価下落は今後も続 1500 女 1000 男 く。結果的に、デフレの影響による不良債権 500 0 の発生は続き、不良債権処理に終わりがなく 10 20 30 40 50 60 70 80 90 0 0 なったというのである。 10 (データ:人口問題研究所) 「失われた10年」といわれた1990年代は、 一方、海外を見ると、米国がずん胴型であ 人口データから見てもいかに日本経済が活力 り、日本と比べ若年層の人口が厚いのが特徴 を失った期間であったかということが分かる。 的である。米国の移民数は1970年以降増加し、 90年代は毎年100万人近くまで増加している。 再生のラストチャンス? その結果、米国の総人口は現在2億7千万人強 近年人口動態論がクローズアップされてき に対し、毎年240万人を超える人口増加を続け ているが、筆者は消費の中核年齢層を詳細に ており、不法移民、就労ビザ労働者まで加え 見てみることにより、2000年から2010年の10 ると300万人を越すと言われている。更に、細 年間に日本経済は再生する可能性があるので かく見ると生産も消費も活発な20代から40代 はないかと考える。 の中核層が、移民により常に補強されている 図表2:年齢層別人口増加率(男性) のが特徴的である。こうした人口動態により 4.0% 米国では消費が飽和することなく、移民流入 3.0% が経済成長を後押ししてきた。一方、日本は 2.0% 全体 1.0% 15-64 基本的に移民を受け入れておらず、「失われ 0.0% 31-50 た年齢層」の人口は決して増えることはない。 -1.0% 1960 1980 2000 2020 -2.0% 人口を維持するために一人の女性が生涯に産 む子供の数は平均2.1人が必要と言われてい (データ:人口問題研究所) るが、日本の現状は1.38人(2002年)に減少 ポイントは31-50歳の男性の増加率にある。 しており、今後ますます日本の人口が減少す 10年刻みで見ると、1950年以降プラスが続い るのは明白である。そのため、中核層の人口 ていたが、90年代はマイナスに転じている 動態の動きが経済活動に大きく影響を及ぼし (-0.7%)。また、65歳以上の老齢人口の比 ている。 率は80年まで一ケタだったものが2000年は
  • 3. 15%近くに跳ね上がっている。つまり需要・ 年からの 10 年は新しい経済潮流を迎えている 供給を生み出す中核層が薄くなり、社会保障 のである。 負担が急速に増えたわけである。しかしなが しかしながら、その後はこの中核層の人口 ら、2000年以降、31-50歳の男性人口はわず も再び下り坂となるのも事実である。従って、 かながら増加に転じる。(0.4%増予想) この 10 年間にいかに新しい企業を興し、新産 業を生み出し、需要を創出するかが 21 世紀の 図表3:日本男性の人口推計 図表3:日本男性の人口推計 日本 日本経済を大きく左右するともいえる。すな 1970 1980 1990 2000 2010 わち、この 10 年間は日本再生の最後のチャン ~ ~ ~ ~ ~ 1980 1990 2000 2010 2020 スであり、プライベートエクイティ投資も日 (実績) (実績) (実績) (推計) (推計) 全 体 1.3% 0.5% 0.2% 0.0% -0.3% 本再生を支えることになろう。 15-64 歳 1.1% 1.1% 0.2% -0.5% -0.9% 31-50 歳 2.5% 0.3% -0.7% 0.4% -0.5% 米国年金のプライベートエクイティ投資モデル 米国年金のプライベートエクイティ投資モデル プライベートエクイティ投資 65 歳以上 7.8% 9.9% 14.9% 19.6% 24.4% 90年代の米国西海岸の成功の原点は、多く (データ:人口問題研究所) の移民を促すほどのダイナミックな投資を進 つまり、1990-2000年にマイナスとなった31 めてきたカルパース(カリフォルニア州年金 -50歳の人口が、2000年-2010年には一度プラ 基金)の投資戦略にある。世界最大の公的年 スに転じるのだ。90年代は消費を最も活発に 金基金であるカルパースは、プライベートエ おこなう中核層が減少した10年間であり、 クイティに積極的に投資を行い、カルパース 「失われた10年」と一致するが、2000年-2010 だけで総資産の6%おおよそ1兆円の残高を積 年の10年は「再生の10年」となる可能性があ み上げている。これは日本全体の投資残高に る。 匹敵する。筆者は、カルパースの投資戦略は 日本再生のヒントとなると見ている。 人口全体は 2010 年以降、減り始める(ピー カルパースは、90年代に、積極的にプライ クは 2004 年とも 2006 年とも言われている) ベートエクイティファンドに投資してきた。 が、31-50 歳の男性という、子供に教育費を その多くは地元のカリフォルニア北部サンフ かけ、住宅を購入し(平均 40 歳)、家族で旅 ランシスコ湾を中心とするシリコンバレーに 行をするなど、最も消費を行う年代の人口が 資金投下されることとなり、ITやバイオなど 増えるわけである。そしてこの年代の消費動 ハイテク産業が生まれてきた。90年代は組立 向が、GDP の 6 割を占める個人消費に影響し、 加工などローテクの分野では、安い労働力を 企業活動を促進し、更に 31-50 歳の増加が新 求めて中国、台湾やアセアン諸国などに製造 しいアントレプレナーを産むことで、 を上 GDP 拠点の移転が起こって行ったが、一方、CPU 昇させる原動力となる可能性がある。そして、 の開発や通信技術、遺伝子工学など高い技術 プライベートエクイティ投資も新しい時代を を伴う開発型産業はシリコンバレーで栄えた 迎えており、 代 40 代の企業家が減少し開業 30 のである。年金基金からの潤沢な資金とビジ 率も減少してしまった 90 年代と異なり 2000 ネスチャンスを求めて世界中から高い技術と 大いなる野心を持つ高学歴の中核層の人材が
  • 4. 移住してきた。その結果、居住者のうち白人 な対応策が必要で、以下のような種々のアイ は50%を切り、3割を国外で生まれた人々で占 ディアが検討されるべきだとおもう。今後、 めるようになった。それに伴い、社会インフ 人口が減少しても経済力は残るような仕組み ラへの投資も促進され、州職員の雇用も拡大。 を作り上げておくことが必要であり、英国の ファンドもその結果高いリターンを生むこと ビッグバンのように日本のウインブルドン化 が可能となり、年金基金が更に拡大成長する を考える必要があるのではないだろうか。そ ことで、プライベートエクイティファンドへ のため、金融、通信、物流などで経済特区を の投資も拡大して行く好循環を実現したので 作り、外資の参入を促し、アジアにおける一 ある。 大拠点を作り上げることを考えてはどうだろ 90年からプライベートエクイティ投資を開 うか。また「失われた年齢層」の移民による 始し拡大していった。これを支えたのが、積 補強も考えていくことも必要ではないだろう 極的に投資の指南を行ってきたプライベート か。特にアジアから積極的に高度技術者を中 エクイティ投資のアドバイザーであり、日本 心に移民の受け入れを拡大するのである。 のプライベートエクイティ投資においても、 いずれにせよ、時間が経過するにつれ、人 今後、投資を指南するアドバイザーの役割が 口問題は多くの人々に真剣に受け止められ、 重要となるだろう。日本においてもカルパー 上記アイディアのいくつかは導入が議論され スの戦略に倣い、ローテク部分は中国などア るだろう。しかしながら残された時間は少な ジアに生産移転してコストダウンを促し、頭 い。不良債権問題に苦しむ銀行からの積極的 脳集約型のハイテク部分について国内へ積極 な投資は当面期待できない。今こそ投資家は 的に資金を投下することで、日本の産業を拡 日本のプライベートエクイティファンドへの 大し、惹いては日本の雇用を拡大していくダ 投資を真剣に考える時である。 イナミックな循環を生み出す必要があると思 われる。 エー・アイ・キャピタル 徳田 浩司 (執筆当時) 21世紀の人口対策とプライベートエクイティ 21 世紀の人口対策とプライベートエクイティ 世紀の人口対策とプライベ 投資 三菱商事証券ニューズレター 2010 年までは盛り返す消費人口も、それ以 Alternative Alternative Investment Outlook寄稿文 Outlook寄稿文 降は、再び厳しい状況に陥る。政策面で様々
  • 5. 徳田 浩司(トクダ コウジ) Fusion Reactor LLC(在米国シリコンバレー)社長 三和銀行、三和総研、三菱商事証券などで、システムコンサルティング、ベンチ ャー投融資などに従事。2004年に独立、米国シリコンバレーで、ベンチャーサポ ート、IT・金融ビジネスのコンサルティング、ワイヤレス・ブロードバンド・ソリュー ションの開発・ベンチャー経営、老舗スポーティング・グッズ・メーカの米国代表 などに従事。 本件に関するご意見・お問い合わせ Fusion Reactor LLC 代表; 代表; 徳田 浩司 電話 日本 050-5534-5314 (国内電話で通じます) 050-5534- 国内電話で通じます) E-mail: info@fusion-reactor.biz info@fusion- http://www.fusion- ホームページ http://www.fusion-reactor.biz/japanese