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分散コンセンサスは社会をどう変えるか
慶應義塾大学 SFC 研究所 上席所員 / 株式会社 Orb チーフサイエンティスト
斉藤 賢爾
Photo by Caelie_Frampton (CC BY 2.0)
JSSST FTD 2015
2分散コンセンサスは社会をどう変えるか ─ JSSST FTD 2015
ビザンチンの将軍がお怒りです
• 1031 年、ビザンチン軍はエデッサを占拠したが、アラブ勢に
よる反撃をくらった
3分散コンセンサスは社会をどう変えるか ─ JSSST FTD 2015
ところでお前は誰だっけ?
• 斉藤 賢爾 ( さいとう けんじ )
• 博士 ( 政策・メディア )
•「インターネットと社会」の
 研究者かつ開発者
• 2000 年からデジタル通貨研究
• こう見えて未踏スパクリ (2007-II)
 ( 詳しくは未踏 iPedia へ! )
4分散コンセンサスは社会をどう変えるか ─ JSSST FTD 2015
ビザンチン将軍問題 (1982) とは
• n 人の将軍がそれぞれの軍隊を率いている
• 攻めるか、撤退するか、合意しなければならない
• 地理的に隔離されていて、メッセンジャーを通してしか通信
できない ( メッセンジャー = 伝令者 )
• 高々 t 人の裏切り者がいる、  これらの前提で次を満たせ
1. 忠実な将軍は、全員、同じ計画に合意する
2. 合意された計画は、忠実な将軍の誰かの発案と等しい
 ( 裏切り者にだまされない )
5分散コンセンサスは社会をどう変えるか ─ JSSST FTD 2015
開かれた環境下のビザンチン将軍問題
•「不特定多数」の将軍が…増えたり減ったりしながら…
• 以下同文
(((;゜Д ゜)))
• ビットコインが解いたとか言われている
• 本当は解けていない ( まあ、ある程度は )
• 問題をどう定義するかがとっても重要
6分散コンセンサスは社会をどう変えるか ─ JSSST FTD 2015
解けたとするなら何が可能になるのか
• 群衆 ( 有象無象 ) が力を合わせて「新聞」を発行できる
• すなわち公告 ( 公に検証可能なメッセージ )
• 公告コストの大幅な縮小
• 公告の自動化 ( 放っておいても自律的に進行する )
• 何を公告するかという判断の拡大に伴う、各種政治・経済・
社会基盤のコスト削減および自動化
7分散コンセンサスは社会をどう変えるか ─ JSSST FTD 2015
kwsk
• 具体的には
• 通貨、遺言 ( 存在証明 )、金融資産、投票、鍵管理 ( 権利移転 )、
ネームサービス、分散ストレージ、企業経営の自動化…
• 群衆が維持・運用する「分散コンピュータ」
• My hunch is that The Blockchain will be to banking, law and
accountancy as The Internet was to media, commerce and
advertising.
─ Joichi Ito (at https://www.linkedin.com/pulse/why-bitcoin-isnt-like-internet-joichi-ito)
8分散コンセンサスは社会をどう変えるか ─ JSSST FTD 2015
地球規模 OS (2007)
• 分散コンセンサスは地球規模 OS のカーネルの機能
9分散コンセンサスは社会をどう変えるか ─ JSSST FTD 2015
地球規模 OS は
• 現在の金融・貨幣経済システムを時代遅れにする
• 決済システムを内包
• プログラミング言語を内包
• 人的資源を含む地球上の資源の会計システム
• 新たな「法」を定義できる ← レッシグ教授も大統領選に出る必要はないかも
• 人々が業を起こすための基盤
• 営利組織も、政府も、NPO/NGO も利用できる
10分散コンセンサスは社会をどう変えるか ─ JSSST FTD 2015
ビットコインにおけるイケてない解法
•「新聞」の代わりとなる「ブロックチェイン」
• "A timestamp server works by taking a hash of a block of items
to be timestamped and widely publishing the hash, such as in a
newspaper or Usenet post"
• "To implement a distributed timestamp server on a peer-to-
peer basis, we will need to use a proof-of-work system similar
to Adam Back's Hashcash, rather than newspaper or Usenet
posts"
─ Satoshi Nakamoto (2008)
11分散コンセンサスは社会をどう変えるか ─ JSSST FTD 2015
ビットコインのブロックチェイン
1. 各マイナーは、過去 10 分ほどの間に収集した取引データをブロックに格納し、マイニング ( くじ引き ) を行う
2. 成功したらネットワーク内にブロードキャストする ← ここがひとつ曲者
3. 各マイナーは、それをチェインの新しい末尾と認めるなら、その後ろにブロックを繋げるべく 1 に戻る
12分散コンセンサスは社会をどう変えるか ─ JSSST FTD 2015
マイニング
13分散コンセンサスは社会をどう変えるか ─ JSSST FTD 2015
Proof of Work ( 作業証明 ) の効用
14分散コンセンサスは社会をどう変えるか ─ JSSST FTD 2015
なぜイケてないのか
• トランザクションの増加に伴い、データ構造を維持するため
のコストが直線的に上昇する
•「世界がひとつ」でなければ動作しない
• 大規模災害や政変などによりネットワークが分断されると正
しく動作しない
• インターネット的なガバナンスを不可能にするデザイン
• その意味では全然インターネットと似ていない
15分散コンセンサスは社会をどう変えるか ─ JSSST FTD 2015
イケてる解き方とは?
• インターネット的なガバナンスを可能にするデザイン
• 分権できる
• 部分的に違うことを試して、よければ全体で採用できる
• その手前に、せっかく作ったブロックチェインの技術を適材
適所に応用する世界は描ける
• まだまだ使い倒せるし、未来を先取りできる
• すなわち…
16分散コンセンサスは社会をどう変えるか ─ JSSST FTD 2015
エンタープライズ ブロックチェイン
• n 人の将軍 → 不特定多数の将軍 → 特定多数の将軍
1.忠実な将軍は、全員、同じ計画に合意する
2.合意された計画は、忠実な将軍の誰かの発案と等しい ( 裏切り者にだまされない )
• 問題を再定義することにより設計上の条件が軽くなる
• どこで使える? → 企業とその顧客とか
• ちょっと未来への入口、だが過渡的
17分散コンセンサスは社会をどう変えるか ─ JSSST FTD 2015
Orb version 1
• まもなくリリースする新たなブロックチェイン技術
• エンタープライズ指向
• 高速・軽量化
•「スマートコイン」や「スマートチケット」といった応用分野
• マイニングにあたる機構も軽くなって、スマホでもできる
• くやしいけどあまり詳しく言えません
• 一部の大体のアイデアは著書でも書いてますので!
18分散コンセンサスは社会をどう変えるか ─ JSSST FTD 2015
結局、何が変わるのか
• 以下の弱体化・終焉・さま変わり
1. 貨幣経済
2. 政府・国家
3. 企業 , etc.
• 過去 400 年ほどの社会の変化を巻き戻し ( 早戻し ) 再構成する
• 個人の万能性 → 専門分化 → 個人の万能性
• Civic Tech ( シビックテック ) の文脈での位置づけ

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  • 3. 3分散コンセンサスは社会をどう変えるか ─ JSSST FTD 2015 ところでお前は誰だっけ? • 斉藤 賢爾 ( さいとう けんじ ) • 博士 ( 政策・メディア ) •「インターネットと社会」の  研究者かつ開発者 • 2000 年からデジタル通貨研究 • こう見えて未踏スパクリ (2007-II)  ( 詳しくは未踏 iPedia へ! )
  • 4. 4分散コンセンサスは社会をどう変えるか ─ JSSST FTD 2015 ビザンチン将軍問題 (1982) とは • n 人の将軍がそれぞれの軍隊を率いている • 攻めるか、撤退するか、合意しなければならない • 地理的に隔離されていて、メッセンジャーを通してしか通信 できない ( メッセンジャー = 伝令者 ) • 高々 t 人の裏切り者がいる、  これらの前提で次を満たせ 1. 忠実な将軍は、全員、同じ計画に合意する 2. 合意された計画は、忠実な将軍の誰かの発案と等しい  ( 裏切り者にだまされない )
  • 5. 5分散コンセンサスは社会をどう変えるか ─ JSSST FTD 2015 開かれた環境下のビザンチン将軍問題 •「不特定多数」の将軍が…増えたり減ったりしながら… • 以下同文 (((;゜Д ゜))) • ビットコインが解いたとか言われている • 本当は解けていない ( まあ、ある程度は ) • 問題をどう定義するかがとっても重要
  • 6. 6分散コンセンサスは社会をどう変えるか ─ JSSST FTD 2015 解けたとするなら何が可能になるのか • 群衆 ( 有象無象 ) が力を合わせて「新聞」を発行できる • すなわち公告 ( 公に検証可能なメッセージ ) • 公告コストの大幅な縮小 • 公告の自動化 ( 放っておいても自律的に進行する ) • 何を公告するかという判断の拡大に伴う、各種政治・経済・ 社会基盤のコスト削減および自動化
  • 7. 7分散コンセンサスは社会をどう変えるか ─ JSSST FTD 2015 kwsk • 具体的には • 通貨、遺言 ( 存在証明 )、金融資産、投票、鍵管理 ( 権利移転 )、 ネームサービス、分散ストレージ、企業経営の自動化… • 群衆が維持・運用する「分散コンピュータ」 • My hunch is that The Blockchain will be to banking, law and accountancy as The Internet was to media, commerce and advertising. ─ Joichi Ito (at https://www.linkedin.com/pulse/why-bitcoin-isnt-like-internet-joichi-ito)
  • 8. 8分散コンセンサスは社会をどう変えるか ─ JSSST FTD 2015 地球規模 OS (2007) • 分散コンセンサスは地球規模 OS のカーネルの機能
  • 9. 9分散コンセンサスは社会をどう変えるか ─ JSSST FTD 2015 地球規模 OS は • 現在の金融・貨幣経済システムを時代遅れにする • 決済システムを内包 • プログラミング言語を内包 • 人的資源を含む地球上の資源の会計システム • 新たな「法」を定義できる ← レッシグ教授も大統領選に出る必要はないかも • 人々が業を起こすための基盤 • 営利組織も、政府も、NPO/NGO も利用できる
  • 10. 10分散コンセンサスは社会をどう変えるか ─ JSSST FTD 2015 ビットコインにおけるイケてない解法 •「新聞」の代わりとなる「ブロックチェイン」 • "A timestamp server works by taking a hash of a block of items to be timestamped and widely publishing the hash, such as in a newspaper or Usenet post" • "To implement a distributed timestamp server on a peer-to- peer basis, we will need to use a proof-of-work system similar to Adam Back's Hashcash, rather than newspaper or Usenet posts" ─ Satoshi Nakamoto (2008)
  • 11. 11分散コンセンサスは社会をどう変えるか ─ JSSST FTD 2015 ビットコインのブロックチェイン 1. 各マイナーは、過去 10 分ほどの間に収集した取引データをブロックに格納し、マイニング ( くじ引き ) を行う 2. 成功したらネットワーク内にブロードキャストする ← ここがひとつ曲者 3. 各マイナーは、それをチェインの新しい末尾と認めるなら、その後ろにブロックを繋げるべく 1 に戻る
  • 13. 13分散コンセンサスは社会をどう変えるか ─ JSSST FTD 2015 Proof of Work ( 作業証明 ) の効用
  • 14. 14分散コンセンサスは社会をどう変えるか ─ JSSST FTD 2015 なぜイケてないのか • トランザクションの増加に伴い、データ構造を維持するため のコストが直線的に上昇する •「世界がひとつ」でなければ動作しない • 大規模災害や政変などによりネットワークが分断されると正 しく動作しない • インターネット的なガバナンスを不可能にするデザイン • その意味では全然インターネットと似ていない
  • 15. 15分散コンセンサスは社会をどう変えるか ─ JSSST FTD 2015 イケてる解き方とは? • インターネット的なガバナンスを可能にするデザイン • 分権できる • 部分的に違うことを試して、よければ全体で採用できる • その手前に、せっかく作ったブロックチェインの技術を適材 適所に応用する世界は描ける • まだまだ使い倒せるし、未来を先取りできる • すなわち…
  • 16. 16分散コンセンサスは社会をどう変えるか ─ JSSST FTD 2015 エンタープライズ ブロックチェイン • n 人の将軍 → 不特定多数の将軍 → 特定多数の将軍 1.忠実な将軍は、全員、同じ計画に合意する 2.合意された計画は、忠実な将軍の誰かの発案と等しい ( 裏切り者にだまされない ) • 問題を再定義することにより設計上の条件が軽くなる • どこで使える? → 企業とその顧客とか • ちょっと未来への入口、だが過渡的
  • 17. 17分散コンセンサスは社会をどう変えるか ─ JSSST FTD 2015 Orb version 1 • まもなくリリースする新たなブロックチェイン技術 • エンタープライズ指向 • 高速・軽量化 •「スマートコイン」や「スマートチケット」といった応用分野 • マイニングにあたる機構も軽くなって、スマホでもできる • くやしいけどあまり詳しく言えません • 一部の大体のアイデアは著書でも書いてますので!
  • 18. 18分散コンセンサスは社会をどう変えるか ─ JSSST FTD 2015 結局、何が変わるのか • 以下の弱体化・終焉・さま変わり 1. 貨幣経済 2. 政府・国家 3. 企業 , etc. • 過去 400 年ほどの社会の変化を巻き戻し ( 早戻し ) 再構成する • 個人の万能性 → 専門分化 → 個人の万能性 • Civic Tech ( シビックテック ) の文脈での位置づけ