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リーンカンファレンス 2014

「大野耐一の創り方」金田さん発言まとめ
2014/1/28

■コーディネータ・源明から、金田さんの紹介と大野耐一さんの確認
大野耐一という名前を初めて聞いた人・・・会場の 20~30%
■(源明)トヨタの強みは何か
トヨタ方式をやって 50 年。関東自動車工業に 33 年間勤め、コンサルで 22 年間、やって
きた。トヨタの強みってなんだろう?というテーマを投げかけられたときに、2通りある
ように思う。トヨタが感じている強みと、第三者が見たときに強みと感じるものは違うの
ではないかと思う。
『トヨタ式最強の経営』 20 年前に出して、 万部売れた。
を
20
出すのに、
だいぶ時間がかかった。スコラの柴田さんと意見が食い違う。最終的に、どちらかの主張
を通しながら、本にした。
「金田はそう言っている」
「柴田はそう思っている」となんとか
まとめた。そう書いてあるところは、片方はそう思っていない、ということになる。企業
というのは表と裏がある。
ドラッカーは経営には3つのテーマがあると言っている。今日の業績確保、明日生き続
けていく準備をする、体質強化。当たり前の論議だが。みなさんのところでも考えてもら
いたいのだが、今日の業績確保がどう成り立つかで組織人事が考えられていると思うが、
明日の準備を可能にする組織、人材育成ができているか、と考えて欲しい。20 何年コンサ
ルをやってきたが、準備されていた企業は 1 社もない。トヨタ生産方式を協力会社に教え
る活動をやった際に、事務局として 3 年間くらい指導の責任者として仕事をした。
「トヨタ
の購買はどういう考え方でモノを買っているか」「それに見合うような形でしかモノは買
、
えませんよ」と相手方に話す。
「トヨタの購買は、部品は買いません、企業を買います。
」
じゃあ、どういう企業を買うか。その評価というのは「変化し続ける企業から買います」
と言っている。
「変化し続ける企業こそが最強の企業である、
その最強の企業から買いたい」
。
他人にそういうことを言うからには、トヨタも自分たちでもそうありたいと思っている。
トヨタの強みは?と問われると、変化し続けるために、明日の準備に向けて仕事をしてい
る代表格がトヨタである。
■(源明)勝つための改善だけではなく、生き続けるための持続的改善もやっている。そ
れに加えて、50 年代には、大野さんがイノベーションの活動をやっていたことも含めて話
をしている。
そういうことであれば、改善について一言。
(世の中の改善の)中身を見てみると、大体
7 割は改善ではない、単なる不具合対策であることが多い。改善というのはよりよくしてい
くこと。
「私から言わせるとこれは改善ではない、
それは不具合対策と言う」
と言っていた。
大抵、生産技術部門が弱く、その尻拭いをしていることが多い。不具合対策を改善と呼ば
せてくれと頼まれたので、それならば「負けないための改善」と「勝つための改善」と区
別して呼べということにした。どこの工場に行っても発表の際に「負けないための改善」
と言う。どこの企業でも「負けないための改善」と言う。30 件に 1 件くらいに、勝てる改
善が入っている。
「これはモノになれば勝てるぞ」と言うと怪訝な顔で聞いている。
「どう
して勝てるのか」尋ねないから、こっちも言わない。1 年くらいやっていたら、
「勝つため
の改善」が増えてきた。20 件に 1 件くらい。俄然、工場が強い感じになってきた。
「アイデ
アが組み込まれているかどうか」
で勝てるかどうかを判断している。
アイデアというのは、
知恵である。知識・技能ではない。
大野耐一さんは年に数回、現場の視察をする。その際、大野さん本人に工程から工程に
移動しているときに、困っていることを聞いてみたことがある。たった一言、返答があっ
た。
「困り方が足らん」
。
■(源明)改善の種類について教えてもらえますか
勝つための改善と負けないための改善がある、ということをベースにしてほしい。明日
に向けて変化し続ける力を持っている企業が最も強い企業。今日の業績確保で手を打つ内
容というのは、どの企業も横並び。だが、
「生き続けるには、どういう変化が必要か」テー
マを設定することは可能。
トヨタ生産方式が生まれた 1950 年代、終戦直後。日本全土が焼け野原、お金も人も技術
も何もない。じゃあどうしたらいいか「いかにして儲かるのか」ではなく「いかにして生
き延びるか」という手段として生まれた。
キーになる話は組織。ドラッカー曰く、明日の準備というのは今日やらなくてはならな
い活動。しかし、ほとんどの企業では先送りされてしまっている、これが最悪の状況。
組織として、明日の準備として今日やれる体制にできているか。トヨタでは、今日の仕事
はA面活動、明日の活動をB面活動として今日、明日の準備をしている。
(源明)トヨタのTPSには、2つの種類がある、そこを説明してもらえますか?
TPS、トヨタ生産方式には種類が 2 つある。そういうことをトヨタが言っている訳では
ない。この 2 種類という形が重要だと思う。TPS1 が今日の業績確保、TPS2 が明日の準備
という形になっていると思う。TPS1 を作ったのは鈴村喜久男さん、アイデアを出すのは天
才的で、稀な人だった。鈴村さんが展開した鈴村学校というのがあった。それが全世界に
ちらばって、
TPS が世界に広がったと言える。
大野さんがリーダーで展開した活動がある。
これは、大野ファミリーと言われていた。
「彼は鈴村学校の生徒だ」
「あの人は大野ファミ
リーだ」と言われている。現在、数名残っていると言われている、6~7 名か。トヨタ自工の
人が、大野ファミリー。私は関東自工にいたが、大野さんに指導を受けていたので、その
意味で大野ファミリーだと思っている。
鈴村さんがやってきた内容は、ムダを徹底的に排除して清々と流れる形をつくること。
ただ、大野さんに「ムダの徹底的排除をやっている」と言って叱られたことがある。
「ムダ
の排除がキーではない、徹底的がキーだ」
。勝たない限り儲からない。モウケルとモウカル
は違う。どういうことかというと、モウケルというのはムダを排除すること、徹底的にム
ダを排除するとモウカル形になる。モウケル活動は、業界どこでもやっている。経理担当
役員からこう言われたことがある。
「工数が減っても、人員が減らなければ、人件費は減ら
ない」
。しかし、徹底的にムダ排除をやり、業界のダントツ先頭を走る形になれば、モウカ
ル形になる。ムダを排除しているが、モウカラナイというのであれば、それは徹底的にや
れていないということ。
TPS1 は、ありたい姿が QCD。人類がモノづくりを始めてから、今に至るまで、モノづ
くりの評価特性値は QCD であり、変わっていない。TPS1 のテキストに「トヨタ方式」と
書いてあった。社外秘だったが、コピーされてあっという間に全国に広がった。ありたい
姿へのチャレンジ型とは言えない。ありたい姿は決まっている。働き率、直行率。徹底的
に頑張ってもアッパーがある。常にアッパーに向かって頑張っていく。TPS1 にありたい姿
を考える、という活動はない。
TPS2 というのは、
「こういう形にすれば、圧倒的に勝てるぞ」というありたい姿を設定
する。戦後すぐには 3 車種だけだったのが、1970 年代に入ると車種が増えてきた。トヨタ
の販売店は直営ではなく、希望車種を発注する形で売上と仕入が見合わないこともできて
きた。
「売れた分だけ発注するから、 日後に納品してくれ」
3
=確定生産という話になった。
1 日生産、1 日陸送となり、売れた分だけ生産になった。QCD の値がいい車を作ってもダ
メ。
ジャストインタイムの形でつくらないと、
販売店もトヨタグループもやっていけない。
QCD 値をやらなくてはならないという話はあるが、テーマとしては確定生産をどう可能に
するか。当時、生産に 2 日かかっていた。1 日生産はほぼ不可能。生産の途中に確定情報を
入れて、バッファ(在庫分)を持ち、使われた分だけ補充生産する。それをカンバンと言
った。後工程引取という形ならできるぞとつくったのが大野さん。新しいルール、新しい
システムをつくって、勝てる形をつくった(=システム再構築)のが大野さん。ムダを徹
底的に排除したのが鈴村さん。大野さんが新しいしくみを作ることで圧倒的に勝てるモノ
づくりにした。
今までにないモノをつくるのにデータを取ったライト兄弟の話を稲垣さんがされていた。
現在の常識を新しい常識に変えることをトヨタではイノベーションと呼んでいる。トヨタ
では、イノベーションという言葉は使わず、持続的改善と呼んでいる。管理のサークルを
回し続けることによって、業界常識を変える活動。1950 年代に「トヨタ倒産か」という状
況下に陥った。
■(源明)開発部門の人も多いので、開発に向けてのありたい姿の話を。
大野さんの TPS2 でキーになるのは、しくみ。この絵は、大野さんがよく黒板に書いた。
「会社というのは、こう考えるんだ」と。システム構造をどう捉えるか。どういうしくみ
を組み込むことで、圧倒的に勝つか。企業のシステム構造を、生き続けることを可能にす
る形にしていく。生産という機能が、本社部門をバックアップする形にすることで、生き
続けることが可能になる。販売店に対して、後工程引取というしくみを組み込むことによ
って、3 日後納品を保証することで、生き延びた。新しいしくみを組み込むことで、現状の
システムを生き続けるシステムに変える。
モノづくりを強くすると、どういう機能が強化されて生き延びるという形を可能にする
かというと ・ 1 番目は開発。 競馬で馬券を 100%当てる方法があるがお前ら分かるか?」
・・
「
誰も返事はしない。そんなのはあるはずがないから。大野さんは、めったに教えてくれな
い人、結構不親切な人だった。
「お前らはきっと分からないから、教えてやろう。ゴールに
入る直前に買えばいいんだ、スタートのところで買うから勝てないんだ。
」これは実は結構
いいアイデア。仮に A 社という名前にしましょう。当時、新車の開発期間は 6~7 年。サタ
ーンには 8 年かかった。A 社では 2 年で可能にした。相手は 6 年かかるので、4 年経ったと
ころで A 社は始めればいい。6 年の内 4 年で、ほとんどのことが決まっている。それを見
てから A 社は考えればいい。
当時ラジオで
「プラス 100 の余裕」
という CM が流れていた。
モータリゼーションで、家族 5 人乗っても十分走る車が欲しいという状況になってきた。
いつ出るかと言ったら、2 年後。
「隣の車が大きく見えます」確かに 2 センチ大きい。後出
しジャンケンが可能になる。負ける話にはならない。モノづくりを強くすることで開発を
強くする。チャレンジテーマの「生産準備を圧倒的に短くする」ことで開発を勝たせる。
本社部門である開発はいじっていない。開発部門が 6 年のところを 2 年で開発する、とい
う話ではなくて、
モノづくりがそれを可能にする。
そこで製造戦略という言葉が生まれた。
これは効果的だと言える話で言えば、購買。ある程度進んでくると、これ以上値下げの
しようがないという話になってくる。そこからどうしたかというと、これ以上下がらない
という企業に行って改善指導をした。
「下がらないなら帰って来るな」と大野さんに言われ
ていた。そういうしくみを大野さんがつくった。これで、一種の値下げ競争に対応するし
くみをつくった。1970~80 年代に導入。トヨタも強くなったが、協力会社も強くなった。
トヨタという企業本体を強くした製造戦略がそれを可能にした。
(源明)ありたい姿の描き方で言えば、稲垣さんが「トヨタの型」でお話しされていた部
分と重ねつつ、こういった思考方法を大野方式としてトヨタが持っていると整理していた
だければと思います。
以上

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Kaneda giji leanconfe2014

  • 1. リーンカンファレンス 2014 「大野耐一の創り方」金田さん発言まとめ 2014/1/28 ■コーディネータ・源明から、金田さんの紹介と大野耐一さんの確認 大野耐一という名前を初めて聞いた人・・・会場の 20~30% ■(源明)トヨタの強みは何か トヨタ方式をやって 50 年。関東自動車工業に 33 年間勤め、コンサルで 22 年間、やって きた。トヨタの強みってなんだろう?というテーマを投げかけられたときに、2通りある ように思う。トヨタが感じている強みと、第三者が見たときに強みと感じるものは違うの ではないかと思う。 『トヨタ式最強の経営』 20 年前に出して、 万部売れた。 を 20 出すのに、 だいぶ時間がかかった。スコラの柴田さんと意見が食い違う。最終的に、どちらかの主張 を通しながら、本にした。 「金田はそう言っている」 「柴田はそう思っている」となんとか まとめた。そう書いてあるところは、片方はそう思っていない、ということになる。企業 というのは表と裏がある。 ドラッカーは経営には3つのテーマがあると言っている。今日の業績確保、明日生き続 けていく準備をする、体質強化。当たり前の論議だが。みなさんのところでも考えてもら いたいのだが、今日の業績確保がどう成り立つかで組織人事が考えられていると思うが、 明日の準備を可能にする組織、人材育成ができているか、と考えて欲しい。20 何年コンサ ルをやってきたが、準備されていた企業は 1 社もない。トヨタ生産方式を協力会社に教え る活動をやった際に、事務局として 3 年間くらい指導の責任者として仕事をした。 「トヨタ の購買はどういう考え方でモノを買っているか」「それに見合うような形でしかモノは買 、 えませんよ」と相手方に話す。 「トヨタの購買は、部品は買いません、企業を買います。 」 じゃあ、どういう企業を買うか。その評価というのは「変化し続ける企業から買います」 と言っている。 「変化し続ける企業こそが最強の企業である、 その最強の企業から買いたい」 。 他人にそういうことを言うからには、トヨタも自分たちでもそうありたいと思っている。 トヨタの強みは?と問われると、変化し続けるために、明日の準備に向けて仕事をしてい る代表格がトヨタである。 ■(源明)勝つための改善だけではなく、生き続けるための持続的改善もやっている。そ れに加えて、50 年代には、大野さんがイノベーションの活動をやっていたことも含めて話 をしている。 そういうことであれば、改善について一言。 (世の中の改善の)中身を見てみると、大体 7 割は改善ではない、単なる不具合対策であることが多い。改善というのはよりよくしてい くこと。 「私から言わせるとこれは改善ではない、 それは不具合対策と言う」 と言っていた。 大抵、生産技術部門が弱く、その尻拭いをしていることが多い。不具合対策を改善と呼ば せてくれと頼まれたので、それならば「負けないための改善」と「勝つための改善」と区
  • 2. 別して呼べということにした。どこの工場に行っても発表の際に「負けないための改善」 と言う。どこの企業でも「負けないための改善」と言う。30 件に 1 件くらいに、勝てる改 善が入っている。 「これはモノになれば勝てるぞ」と言うと怪訝な顔で聞いている。 「どう して勝てるのか」尋ねないから、こっちも言わない。1 年くらいやっていたら、 「勝つため の改善」が増えてきた。20 件に 1 件くらい。俄然、工場が強い感じになってきた。 「アイデ アが組み込まれているかどうか」 で勝てるかどうかを判断している。 アイデアというのは、 知恵である。知識・技能ではない。 大野耐一さんは年に数回、現場の視察をする。その際、大野さん本人に工程から工程に 移動しているときに、困っていることを聞いてみたことがある。たった一言、返答があっ た。 「困り方が足らん」 。 ■(源明)改善の種類について教えてもらえますか 勝つための改善と負けないための改善がある、ということをベースにしてほしい。明日 に向けて変化し続ける力を持っている企業が最も強い企業。今日の業績確保で手を打つ内 容というのは、どの企業も横並び。だが、 「生き続けるには、どういう変化が必要か」テー マを設定することは可能。 トヨタ生産方式が生まれた 1950 年代、終戦直後。日本全土が焼け野原、お金も人も技術 も何もない。じゃあどうしたらいいか「いかにして儲かるのか」ではなく「いかにして生 き延びるか」という手段として生まれた。 キーになる話は組織。ドラッカー曰く、明日の準備というのは今日やらなくてはならな い活動。しかし、ほとんどの企業では先送りされてしまっている、これが最悪の状況。 組織として、明日の準備として今日やれる体制にできているか。トヨタでは、今日の仕事 はA面活動、明日の活動をB面活動として今日、明日の準備をしている。 (源明)トヨタのTPSには、2つの種類がある、そこを説明してもらえますか? TPS、トヨタ生産方式には種類が 2 つある。そういうことをトヨタが言っている訳では ない。この 2 種類という形が重要だと思う。TPS1 が今日の業績確保、TPS2 が明日の準備 という形になっていると思う。TPS1 を作ったのは鈴村喜久男さん、アイデアを出すのは天 才的で、稀な人だった。鈴村さんが展開した鈴村学校というのがあった。それが全世界に ちらばって、 TPS が世界に広がったと言える。 大野さんがリーダーで展開した活動がある。 これは、大野ファミリーと言われていた。 「彼は鈴村学校の生徒だ」 「あの人は大野ファミ リーだ」と言われている。現在、数名残っていると言われている、6~7 名か。トヨタ自工の 人が、大野ファミリー。私は関東自工にいたが、大野さんに指導を受けていたので、その 意味で大野ファミリーだと思っている。 鈴村さんがやってきた内容は、ムダを徹底的に排除して清々と流れる形をつくること。 ただ、大野さんに「ムダの徹底的排除をやっている」と言って叱られたことがある。 「ムダ
  • 3. の排除がキーではない、徹底的がキーだ」 。勝たない限り儲からない。モウケルとモウカル は違う。どういうことかというと、モウケルというのはムダを排除すること、徹底的にム ダを排除するとモウカル形になる。モウケル活動は、業界どこでもやっている。経理担当 役員からこう言われたことがある。 「工数が減っても、人員が減らなければ、人件費は減ら ない」 。しかし、徹底的にムダ排除をやり、業界のダントツ先頭を走る形になれば、モウカ ル形になる。ムダを排除しているが、モウカラナイというのであれば、それは徹底的にや れていないということ。 TPS1 は、ありたい姿が QCD。人類がモノづくりを始めてから、今に至るまで、モノづ くりの評価特性値は QCD であり、変わっていない。TPS1 のテキストに「トヨタ方式」と 書いてあった。社外秘だったが、コピーされてあっという間に全国に広がった。ありたい 姿へのチャレンジ型とは言えない。ありたい姿は決まっている。働き率、直行率。徹底的 に頑張ってもアッパーがある。常にアッパーに向かって頑張っていく。TPS1 にありたい姿 を考える、という活動はない。 TPS2 というのは、 「こういう形にすれば、圧倒的に勝てるぞ」というありたい姿を設定 する。戦後すぐには 3 車種だけだったのが、1970 年代に入ると車種が増えてきた。トヨタ の販売店は直営ではなく、希望車種を発注する形で売上と仕入が見合わないこともできて きた。 「売れた分だけ発注するから、 日後に納品してくれ」 3 =確定生産という話になった。 1 日生産、1 日陸送となり、売れた分だけ生産になった。QCD の値がいい車を作ってもダ メ。 ジャストインタイムの形でつくらないと、 販売店もトヨタグループもやっていけない。 QCD 値をやらなくてはならないという話はあるが、テーマとしては確定生産をどう可能に するか。当時、生産に 2 日かかっていた。1 日生産はほぼ不可能。生産の途中に確定情報を 入れて、バッファ(在庫分)を持ち、使われた分だけ補充生産する。それをカンバンと言 った。後工程引取という形ならできるぞとつくったのが大野さん。新しいルール、新しい システムをつくって、勝てる形をつくった(=システム再構築)のが大野さん。ムダを徹 底的に排除したのが鈴村さん。大野さんが新しいしくみを作ることで圧倒的に勝てるモノ づくりにした。 今までにないモノをつくるのにデータを取ったライト兄弟の話を稲垣さんがされていた。 現在の常識を新しい常識に変えることをトヨタではイノベーションと呼んでいる。トヨタ では、イノベーションという言葉は使わず、持続的改善と呼んでいる。管理のサークルを 回し続けることによって、業界常識を変える活動。1950 年代に「トヨタ倒産か」という状 況下に陥った。 ■(源明)開発部門の人も多いので、開発に向けてのありたい姿の話を。 大野さんの TPS2 でキーになるのは、しくみ。この絵は、大野さんがよく黒板に書いた。 「会社というのは、こう考えるんだ」と。システム構造をどう捉えるか。どういうしくみ
  • 4. を組み込むことで、圧倒的に勝つか。企業のシステム構造を、生き続けることを可能にす る形にしていく。生産という機能が、本社部門をバックアップする形にすることで、生き 続けることが可能になる。販売店に対して、後工程引取というしくみを組み込むことによ って、3 日後納品を保証することで、生き延びた。新しいしくみを組み込むことで、現状の システムを生き続けるシステムに変える。 モノづくりを強くすると、どういう機能が強化されて生き延びるという形を可能にする かというと ・ 1 番目は開発。 競馬で馬券を 100%当てる方法があるがお前ら分かるか?」 ・・ 「 誰も返事はしない。そんなのはあるはずがないから。大野さんは、めったに教えてくれな い人、結構不親切な人だった。 「お前らはきっと分からないから、教えてやろう。ゴールに 入る直前に買えばいいんだ、スタートのところで買うから勝てないんだ。 」これは実は結構 いいアイデア。仮に A 社という名前にしましょう。当時、新車の開発期間は 6~7 年。サタ ーンには 8 年かかった。A 社では 2 年で可能にした。相手は 6 年かかるので、4 年経ったと ころで A 社は始めればいい。6 年の内 4 年で、ほとんどのことが決まっている。それを見 てから A 社は考えればいい。 当時ラジオで 「プラス 100 の余裕」 という CM が流れていた。 モータリゼーションで、家族 5 人乗っても十分走る車が欲しいという状況になってきた。 いつ出るかと言ったら、2 年後。 「隣の車が大きく見えます」確かに 2 センチ大きい。後出 しジャンケンが可能になる。負ける話にはならない。モノづくりを強くすることで開発を 強くする。チャレンジテーマの「生産準備を圧倒的に短くする」ことで開発を勝たせる。 本社部門である開発はいじっていない。開発部門が 6 年のところを 2 年で開発する、とい う話ではなくて、 モノづくりがそれを可能にする。 そこで製造戦略という言葉が生まれた。 これは効果的だと言える話で言えば、購買。ある程度進んでくると、これ以上値下げの しようがないという話になってくる。そこからどうしたかというと、これ以上下がらない という企業に行って改善指導をした。 「下がらないなら帰って来るな」と大野さんに言われ ていた。そういうしくみを大野さんがつくった。これで、一種の値下げ競争に対応するし くみをつくった。1970~80 年代に導入。トヨタも強くなったが、協力会社も強くなった。 トヨタという企業本体を強くした製造戦略がそれを可能にした。 (源明)ありたい姿の描き方で言えば、稲垣さんが「トヨタの型」でお話しされていた部 分と重ねつつ、こういった思考方法を大野方式としてトヨタが持っていると整理していた だければと思います。 以上