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UX白書には本当は何が書かれているか
- 2. Copyright © Masaya Ando
安 藤 昌 也
千葉工業大学先進工学部知能メディア工学科 教授
早 稲 田 大 学 政 治 経 済 学 部 経 済 学 科 卒 業 。
NTTデータ通信(現、NTTデータ)、経営コンサ
ルティング会社取締役、早稲田大学、国立情報学
研究所、産業技術大学院大学など経て、2011年千
葉工業大学工学部准教授、2015年教授。2016年
より現職。博士(学術) .
専門は、人間中心デザイン。UX(ユーザ体験)
の研究者。人間工学ISOの国内対策委員等を務める。
認定人間中心設計専門家 / 認定専門社会調査士
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UX白書(Roto et al., 2011)
UXの定義に混乱があることか
ら、2010年に世界のUX研究者
30名が集まり、基本コンセプ
トを整理した議論の成果。
12ページとコンパクト。
“定義”そのものではないが、
UXとはどういう観点から捉え
るべきかをわかりやすく解説。
Vilpi Roto
hcdvalue
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はじめに
UX白書では、世界の英知を集めてすら、“UXを一つで定義
できない”という告白から始まっている。定義しない代わり
に、UXの概念とUXを捉える様々な観点を明確にしている。
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はじめに
この当時、UXはかなり自由な使われ方をしていた。そのた
め、同じUXという用語を用いていても、相互に異なる視点
であることもあり混乱が生じていた。
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1. 序論
その上で、UXを3つの視点で整理している。
‒ 現象としてのUX ・・・UXとは何か
‒ 研究分野としてのUX・・・研究領域としてのUX
‒ 実践としてのUX ・・・どうUXをデザインするか
UX白書は、5章構成であるが、そのうち3章を「現象としてのUX」
及びその整理に関する内容に当てている
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2. 現象としてのUX
UXは「システムの利用を通じて人々が持つ経験」について
であり、一般概念の経験の下位集合である。
UX UX
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2. 現象としてのUX
UXは、様々な概念を包括したものだが、単に一人のユー
ザーの経験を漠然と捉えているわけでない。その例として3
つの視点をあげている。
‒ 経験する(Experiencing)
• 経験は個人的で、かつ動的な変化
‒ ある経験(A user experience)
• 始まりと終わりのある出会い
‒ 共経験(Co-experience)
• 一緒に経験する人々の状況、集団経験
UX
...
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3. ユーザエクスペリエンスの期間
UXは単なるシステムの利用経
験に留まらない。利用前に経
験や口コミ情報など期待から
生じる間接的な経験もある。
更に言えば、使っていない時
に、いろんな情報を仕入れる
こともある。
要するに実際の経験は、極めて動的
であり、決まったパターンはない。
また、経験のどこの範囲に焦点を当
てるかによって、かなり経験の中身
が違っている。
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3. ユーザエクスペリエンスの期間
多様なUXのどこに焦点を当てるか、そのパターンを整理す
ると、UXの期間で表現できる。期間が違うと内的プロセス
が違うため、UXそのもが異なる。
UXについて議論したり話したりする時には
対象とする期間を明確にすることが重要
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4. ユーザエクスペリエンスに影響する要素
UXに影響する要素は幅広いが、大きく3つに分類される。
‒ 文脈:
• 文脈が変われば、システムが変わらなくてもUXは変化する
‒ 社会的文脈、物理的文脈、仕事の文脈、技術や情報の文脈な
ど、またこれらの組み合わせ
‒ ユーザー:
• システムを使う人が様々な要因に影響されるので、
UXは動的である
‒ 製品を使おうとするモチベーション、雰囲気、その時の心理
状態・身体的状態、期待などに影響される
‒ システム:
• システム特性に対するユーザーの知覚・認識がUXに影響
‒ ブランドイメージ、メーカーのイメージ、システムデザイン、
ユーザーの使用の結果など
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5. 実践としてのUX
UXデザインは人間中心設計(HCD)由来であるとした上で、
HCDとの重要な視点の違いとして以下を上げている。
‒ UXの要素
• 従来のHCDよりも広範囲で、感情や解釈、意味、社会的側面等まで関連
‒ 手法・ツール・基準
• デザインプロセス全体を通して利用可能な、手法・ツール・基準を明確
にする必要がある
‒ コンセプトとデザインの表現方法
• デザインよりも前に、その経験を伝えることが大事
‒ 組織におけるUXの位置付け
• UX活動は組織のビジネス戦略における重要なパートとして認識され確立
しつつある
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「UX白書」の期間モデル
UXは、焦点を当てる期間が異なると、ユーザーの感じる体
験やその評価のメカニズムが異なることを意味している。
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UX白書の基本的な考え方を理解する手がかり
以下の文章は4章の最後に記述されているが、このUX白書の
基本的な考え方を説明している。UX白書は結果的に、UXの
多様性・複雑性を、実用的に整理したものと言える。
UX
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安藤の長期間の製品評価のプロセスモデル(2007)
ユーザが長く使う製品
は、当初から関心があ
り、問題があっても、
何とか使おうと努力す
る。
製品評価は、“満足感”
として感じられる。
そして、長期利用の結
果として“愛着”を感じ
るようになる。
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基本的な理論ー Kahnemanの幸福の研究
自身が経験したこと(経験の自己)と、過去の経験を回顧す
る時(記憶の自己)は全く異なることがある。しかも記憶は、
経験のピークと終わりの感情で判断する傾向がある。
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A B
UX
UX
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詳しくは『UXデザインの教科書』を読んでください
UXデザインを学びたい人が、一通りの知識を習得するため
に独習できる教科書。
1章 概要
なぜUXデザインが必要なのか?
UXデザインの背景と歴史を学ぶ
2章 基礎知識
UXデザインの知識を新たに体系化
7つの要素で重要な知識を学ぶ
3章 プロセス
実践する際の包括的なプロセスを整理
各段階での知識とコツ・留意点を学ぶ
4章 手法
プロセスを実践する手法を整理
22の手法とコツを学ぶ
知
識
か
ら
実
践
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