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TOC思考プロセスを使った個人のパフォーマンス
改善事例のご紹介
2014年6月
宮間 明子
miyama_akiko_79@yahoo.co.jp
目次
はじめに
事例Ⅰ TOC思考プロセスとの衝撃的な出会い
事例Ⅱ 長年抱えてきた対立の解消
事例Ⅲ 職場でのTOC思考プロセス活用
事例Ⅳ 継続的改善
最後に
はじめに
4
はじめに
• 私は10年ほど前に「TOC思考プロセス」と出会い、人生の様々な場面で活用してまいりました。
• TOC思考プロセスの活用は私を有意義で充実した人生へと導いてくれています。
• このレポートは、私がどのような場面でTOC思考プロセスを活用し、どのような成果を上げてきたのか
を皆様に知っていただくことを目的に作成いたしました。
• このレポートを通じて多くの方がTOC思考プロセスに興味を持ってくださることを願っています。
• 人生をもっと有意義で充実したものにしたいと願う方、現在かかえている悩みやストレスから解放され
たいと願う方にぜひ読んでいただきたいと考えています。
• この資料は多くの方に読んでいただくために作成しておりますので、お知り合いの方にもご紹介して
いただければ幸いです。ただし、ご紹介いただく際にはご自身がよく資料に目を通していただき、「事
例Ⅲ(職場でのTOC思考プロセス活用)」の私の当初の失敗のように、不適切な場面での提案になら
ないよう十分注意した上で、適切だと判断された場合にのみご紹介いただければと考えております。
このレポートの目的
5
はじめに
• 「TOC思考プロセス」とは、TOC(Theory of Constraints: 制約理論)の創始者であり、『ザ・ゴール』の
著者としても有名なエリヤフ・ゴールドラット博士が中心となって開発した「論理思考ツール」です。
• 私はTOC思考プロセスについて下図のようなイメージをもっています。
• TOC思考プロセスは、いくつかの「ツール」から成り立っていますが、そのツールは数学で使う「方程
式」のようなものであると思います。
• 現状のありのままを、「思考プロセスのツール = 方程式」に当てはめると、「解 = ソリューション」を
得ることができます。そしてそのソリューションを実践すると、パフォーマンスを改善することができると
いうイメージです。
TOC思考プロセスのイメージ
TOC思考
プロセスの
ツール
現状 ソリューション パフォーマンス
改善
事例Ⅰ TOC思考プロセスとの衝撃的な出会い
7
事例Ⅰ TOC思考プロセスとの衝撃的な出会い
• 私にTOC思考プロセスのツールを教えてくださっているのは、株式会社ジュントスの白土竜馬氏です。
• 私が最初にTOC思考プロセスに出会ったのは、10年ほど前に白土氏にTOC思考プロセスの代表的
なツールである「クラウド」のことを教えていただいたときです。
• 当時私は大学を卒業して証券会社に入社したばかりのころでした。白土氏は私の当時の悩みを聞い
て、次頁のようなクラウドを作成してくれました。
• 新入社員である私は、下記のような悩みを抱えていました。
 仕事をする上で、分からないことはたくさんあります。分からないことは先輩に聞くと早く解決で
きるのですが、先輩は営業ノルマを抱えていつも忙しそうにしていて、時間を取らせてしまうの
は申し訳ないという気持ちがありなかなか聞くことができません。
 また、新入社員研修では、「分からないことは社内の『規定集』をみて調べること」と指導を受け
ていました。そこで、『規定集』を調べるのですが、そもそも『規定集』のどこを見ればよいのか
が分からず、『規定集』を読んでいるうちに時間ばかり経ってしまい作業が進まず、「私は仕事
ができない」と落ち込んでいく・・・といった状況でした。
• なお、このレポートでは、ツールを使った場面とその成果のみをご説明し、ツールの使い方のご説明
は割愛しておりますのでご承知おきいただいた上でご覧いただければと存じます。
クラウドとの出会い
8
事例Ⅰ TOC思考プロセスとの衝撃的な出会い
• 前頁のジレンマを「クラウド」として表現したのが下記の図です。
• 自分の仕事を前に進めるためには(B)、分からないことを先輩に尋ねる(D)必要があります。
• しかし、いつも忙しそうにしている先輩と良好な関係を保つために(C)、分からないことを尋ねることが
できない(D’)というジレンマです。
• 私が職場でパフォーマンスを高める(A)ためには、(B)、(C)の両方を満たすことが大切であるため、
(D)と(D’)の間でいつも迷っているという状況を表しています。
新入社員のクラウド
A:目的
現在の職場でパ
フォーマンスを高める
B:ニーズ
自分の仕事を前に進
める
D:行動
分からないことを先輩
に尋ねる
C:ニーズ
先輩との良好な関係
を保つ
D’:行動
分からないことがあっ
ても先輩に尋ねない
9
事例Ⅰ TOC思考プロセスとの衝撃的な出会い
• クラウドからソリューションを導き出すには、「方程式」を解く作業が必要ですが、ここではその結果だ
けをご説明したいと思います。「方程式」を解いた結果は下記のソリューションです。
• ソリューションは「私は、先輩が気持ちよく答えてくれるように質問することができている」です。もし、こ
のソリューションを実行することができれば、先輩との関係を良好に保ちながら自分の仕事を前に進
めることができるということをご理解いただけますでしょうか?
クラウドから導き出したソリューション
A:目的
現在の職場でパ
フォーマンスを高める
B:ニーズ
自分の仕事を前に進
める 【 ソリューション 】
私は、先輩が気持ちよく
答えてくれるように質問
することができている
C:ニーズ
先輩との良好な関係
を保つ
10
事例Ⅰ TOC思考プロセスとの衝撃的な出会い
• 前頁のソリューションを見られた方の中には、「そんなの当たり前ではないか?」と思われる方もい
らっしゃるかと思います。
• TOC思考プロセスで作成したソリューションは、当たり前のことが出てくることが多くあります。
• 重要なのは、それまでその「当たり前のこと」に気付いていなかった自分が、TOC思考プロセスを使っ
て分析を行う過程でその「当たり前」に気付くことができるということです。
• もし当時の私が、私の悩みを誰かに話して、「先輩が気持ちよく答えてくれるように上手に質問すると
いいよ。」とのアドバイスを受けたとしても、そのアドバイスをうまく受け入れることはできず聞き流して
しまっていただろうと思います。
• TOC思考プロセスのツールを使う過程で、自分自身の現状について自分自身に問いかけ、自分自身
の中に潜む「間違った考え方(マインドセット)」に自分自身で気づくことができるのです。そして正しい
マインドセットを受け入れることができて初めて、ソリューションを心の底から受け入れ、自分自身の
行動を変えることができるようになるのです。
ソリューションを導く過程での「気づき」
11
事例Ⅰ TOC思考プロセスとの衝撃的な出会い
• 今回の事例での私のマインドセットの変更は下記のようなものでした。
• この件に関してTOC思考プロセスを使う前の私は、自分が分からないことを先輩に聞かないのは、
「忙しくしている先輩に迷惑をかけないため」と思っていました。確かにそれも事実なのですが、ソ
リューションを導く過程で、自分自身の奥底に潜む本当の考え方が浮き彫りになってきました。
• 私は先輩に聞くのが、「恥ずかしく、悔しい」と思っていたのです。その思いが私が正しい行動をとるこ
とを阻害していたのです。
• そして、自分自身が先輩に質問をすることを好意的に捉えることができれば、先輩も余裕があれば後
輩の指導をしたいと思っているということにも気づくことができました。
マインドセットの変更
【TOC思考プロセスを使う前】
 先輩に聞くことは、自分が仕事ができないと言っているようで恥ずかしく、悔しい
 先輩はいつも忙しく、後輩に質問をしてほしくないと思っている
【TOC思考プロセスを使った後】
 分からないことを先輩に尋ねるのは恥ずべきことではない
 先輩は、いつも忙しくしているわけではなく、余裕があるときは後輩の指導をしたいと考えている
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事例Ⅰ TOC思考プロセスとの衝撃的な出会い
• ソリューションを導く過程でマインドセットの変更ができた私は、自然に自分自身の行動を変えること
ができました。それが下記の行動の変化です。
• 行動の変化をみると、「努力の方向性」が変わっていることにお気づきいただけるかと思います。以前
は、「先輩に聞かずにすむ努力」をしていたのを、「先輩に聞く努力」をするように変わったのです。
• 努力の方向性の変化は、先輩や上司とのコミュニケーションを必要とする多くの場面で私の行動を変
えてくれるようになりました。
行動の変更
【TOC思考プロセスを使う前】
 分からないことがあったら、社内の規定集を時間をかけて調べる
 長時間規定集を調べて、どうしても分からないときだけ先輩に聞く
【TOC思考プロセスを使った後】
 分からないことがあったら規定集に目を通し、規定集に書いてあることのどこが分からないのかを
明確にする
 先輩の様子を観察し、先輩が余裕がありそうなときに声をかけ、規定集のどこが分からないかを
質問する
13
事例Ⅰ TOC思考プロセスとの衝撃的な出会い
• 前頁の行動の変化を起こすことによって、私自身のパフォーマンスは下記のように変化しました。
• TOC思考プロセスによる分析を行う前は、仕事が分からずいつもイライラしていて職場に馴染めてい
ない状況でしたが、ソリューションを実行するうちに、状況が大きく変わってきました。
• 仕事で分からないことがあればすぐに先輩に教えてもらえるようになり、仕事がスムーズに進むように
なり、先輩からも可愛がられるようになりました。
• その後、徐々に重要な仕事を任されるようになり充実した社会人生活を送ることができました。
パフォーマンスの改善
【TOC思考プロセスを使う前】
 事務手続きが分からず作業が前に進まなくて、いつもイライラしていた
 職場に馴染めず、疎外感を感じていた
【TOC思考プロセスを使った後】
 自分の仕事がスムーズに進むようになった
 先輩から可愛がられるようになった
事例Ⅱ 長年抱えてきた対立の解消
15
事例Ⅱ 長年抱えてきた対立の解消
• 事例Ⅰのソリューションの実行により、充実した社会人生活を送っていましたが、29歳の時に人生の
転機が訪れました。
• ここからはかなりプライベートな話になります。決して私のプライベートを皆様に知っていただきたいわ
けではないのですが、TOC思考プロセスの活用事例をお示しするために、私の置かれていた状況に
ついてご説明いたします。
• 私は24歳のときから同じ会社の先輩である現在の夫とお付き合いをしていました。彼は、付き合いは
じめたころから「結婚したら仕事を辞めてほしい」と言っていました。一方私は「専業主婦になるなんて
考えられない」と思っており、度々そのことで対立していました。
• 29歳になった私は、結婚について真剣に考えるようになり、次頁のようなクラウドを作成しました。
経緯
16
事例Ⅱ 長年抱えてきた対立の解消
• その時作成したのが下記のクラウドです。(※詳細は後述しますが、実はこのクラウドは正しく書けて
いません。)
• 彼は結婚する際に仕事を辞めてほしいと強く希望して譲らなかったため、私が仕事を辞めると約束し
なければ彼と結婚することはできませんでした。
• 一方で、私は自分の人生の中でキャリアを形成することをとても重視していましたので、仕事を辞める
わけにはいかないというジレンマを抱えていました。
• その状況をクラウドに示したのが上の図です。
結婚に迷った時のクラウド
A:目的
充実した人生を送る
B:ニーズ
彼と結婚する
D:行動
仕事を辞めると
彼に伝える
C:ニーズ
キャリアのある人生を
送る
D’:行動
仕事を辞めないと
彼に伝える
17
事例Ⅱ 長年抱えてきた対立の解消
• そして、前頁のクラウドから私が導き出したソリューションは下記の通りです。 (※詳細は後述します
が、実はこのクラウドは正しく書けていません。)
• それまで、「一度仕事を辞めてしまったら社会復帰など無理」と考えていたのですが、上記のクラウド
からソリューションを出すことで、「一度、仕事を辞めても、資格取得など次のキャリア形成のための
勉強をしていれば、再びキャリア形成することができるだろう」と考えるようになったのです。
クラウドから導き出したソリューション
A:目的
充実した人生を送る
B:ニーズ
彼と結婚する
【 ソリューション 】
私は、一度仕事を辞め
て次のキャリア形成の
ための勉強をすること
ができているC:ニーズ
キャリアのある人生を
送る
18
事例Ⅱ 長年抱えてきた対立の解消
• 前頁のソリューションを実行し、私は仕事を辞めて彼と結婚をしました。
• そして結婚後すぐに税理士試験の勉強を始めました。夫は、「自分と同じ会社でなければ仕事をして
もいい。ただし、子供ができて子供が小さいうちは家にいてほしい。」という考え方で、税理士試験の
勉強に応援も反対もしませんでした。
• 私は税理士試験の勉強をしながら就職活動をしていましたが、苦労して就職を決めた途端に、夫が
転勤になって内定を辞退せざるを得なくなったり、税理士の資格をとっても就職できるとは限らないと
いう現実を知ったりで、自分自身のキャリア形成に全く期待が持てなくなりました。
• 当時、私は1人で勉強をしていましたので、他人との関わりもなく、自分自身の将来に希望がもてず辛
い日々を過ごしていました。
• 前頁で出したソリューションは私の問題を解決するのに十分なソリューションではなかったようです。
後に分かったことですが、使うべきツールを間違っていたために適切なソリューションを出すことがで
きていなかったのです。
• 次頁でお示しするように取り扱う問題の種類によって使うべきツールが異なるのですが、私は使うべ
きツールを間違えてソリューションを出していたのです。
結婚後の状況
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事例Ⅱ 長年抱えてきた対立の解消
問題の種類によって使うべきクラウドが異なる
 ジレンマ・クラウド : どの選択肢をとるべきか分からず悩んでいる状況を克服する
 コンフリクト・クラウド: 自分と他者との間で起きた意見/利害の衝突を解決する
 火消しのクラウド : 「火消し」をせざるを得なかった状況を分析し、再発を防止する
 UDEクラウド : 繰り返し発生する問題や特定の課題に対処する
 統合クラウド : 複数のUDEクラウドを統合し、システムの中核問題を解決する
葛藤/
意見の衝突
火消しの
状況分析
不特定だが
複数の問題
慢性的な問題/
特定の課題
発生頻度
抽
象
度
20
事例Ⅱ 長年抱えてきた対立の解消
• 前述したような状況の中、私は白土氏に問題解決のサポートを依頼しました。そのとき、白土さんが
私の現状をヒアリングしながら作成してくださったのが下記の「統合クラウド」です。
• 当時の私の状況を丁寧に思考プロセスのツールに当てはめていただき、私が抱えている問題を引き
起こす中核的なジレンマの構造を明らかにしていただきました。
• 日々の生活を楽しむためには、自分の現状を受け入れる必要があるのですが、現在の自分を受け入
れ満足してしまうと、再度キャリアを形成して自己実現することが難しいため、受け入れることができ
ないというジレンマを抱えていました。
私の中核問題を表すクラウド
A:目的
充実した人生を送る
B:ニーズ
日々の生活を楽しむ
D:行動
私の現状(専業主婦で
ある)を受け入れる
C:ニーズ
自己実現をする
D’:行動
私の現状を受け入れ
ない
21
事例Ⅱ 長年抱えてきた対立の解消
• そして、前頁のクラウドのソリューションは下記の通りです。
• その時に起こっていた様々な問題を解決するためには、まず「専業主婦」であるという現実を受け止
める必要があるということが分かりました。
• もし、私が「専業主婦」であるという現実を受け止めたうえで自己実現の方法が分かっていれば、日々
の生活を楽しむことができますし、自己実現をすることも可能になります。
• このソリューションを見たとき、「これが実現すれば本当に素晴らしい」と思う一方で、「そんなの無理
ではないか」という思いもありました。
クラウドから導き出したソリューション
A:目的
充実した人生を送る
B:ニーズ
日々の生活を楽しむ 【 ソリューション 】
私は、専業主婦であるという
現実を受け止めた上で、
自己実現の方法が分かって
おり、その状況を楽しむこと
ができる。C:ニーズ
自己実現をする
22
事例Ⅱ 長年抱えてきた対立の解消
No. 障害 Show-
Stopper
成果物/ IO 阻害
要因
1 達成したい将来像が不明確で
ある
IO 2– 私は家族と自分自身の両方を
満足させる将来像を描くことができる
2 家族とのバランスのとれた
自己実現の方法が分からない X
IO 3- 現状から将来像を実現するた
めにいつ、何を、どのようにすれば達
成可能か明文化することができる
将来像の
欠如
3 私は「専業主婦」という言葉に
抵抗感を感じている X
IO4 - 私は専業主婦になった上での
自己実現の方法を見つけることで、
価値観を変えることができている。
価値観
4 私は周りの人に自分がどう思
われているか気になる
IO 5- 私は自分がやっていることの
意義を家族や友人や元同僚・上司に
自信をもって説明することができる
• ソリューションの実行可能性に懸念を持っていた私が、次に作成したのが、もう一つの思考ツールで
ある「中間目標マップ – IOマップ」です。
• IOマップを作成するにあたり、以下のフォーマットに従って、実行に向けた「障害」を明らかにしました。
以下は作成した表の一部です。
ソリューション実行に向けた「障害」の表面化
23
事例Ⅱ 長年抱えてきた対立の解消
• 前頁の障害を明らかにする作業を通じて、私自身がどのようなマインドセットの変更を行わなければ
ならないのかが明らかになりました。それは下記の通りです。
• 通常、TOC思考プロセスを使って分析を行うと、ソリューションを出す過程で自分自身の捨てるべきマ
インドセットと新しく取り入れるべきマインドセットを認識することができます。そしてそれと同時にマイ
ンドセットの変更も自然にできることが多いです。
• しかしこの事例のケースでは私は容易にマインドセットの変更を行うことができませんでした。
マインドセットの変更
【捨てるべきマインドセット】
① 一度専業主婦になってしまったら、パート以外の仕事に二度と戻れない
② 自分の自己実現にとって夫の存在は邪魔にしかならない
③ 夫と私にとって両方プラスとなるような自己実現は存在しない
【新しく受け入れるべきマインドセット】
① キャリアをあきらめなければ専業主婦になっても、パート以外の仕事に戻れるかもしれない
② 夫の助けを借りることで私の自己実現は有意義なものになる
③ 私と夫にとって両方プラスとなるような自己実現は存在する
24
事例Ⅱ 長年抱えてきた対立の解消
• 前述のように、私はソリューションを得てもすぐにそのソリューション及びマインドセットの変更を受け
入れることができませんでした。
• そこで私は新しいマインドセットを受け入れる努力を始めました。
• 最初に受け入れることができたのは、前頁①の「キャリアをあきらめなければ専業主婦になっても、
パート以外の仕事に戻れるかもしれない」でした。それまでの私は、「専業主婦になる」ということを、
「キャリアをあきらめ、社会復帰のための努力をやめる」と同義であると考えていました。その2つを切
り離して捉えることで、「専業主婦としての現在の自分」を受け入れた上で「キャリア形成の努力をしよ
う」と思えるようになりました。
• マインドセットの変更が難しかったのは、前頁の②「夫の助けを借りることで私の自己実現は有意義
なものになる」及び③「私と夫にとって両方プラスとなるような自己実現は存在する」でした。私は長い
間、私の仕事について夫と対立しており、実際に夫の強い希望や転勤によりキャリアを諦めてきた経
験から夫が私のキャリアを邪魔する存在として強く認識されていたのです。
• そこで私は新しいマインドセット②③を受け入れるために、次のようなことを夫の前で口に出すように
しました。
ソリューションを得た後の実践 ①
25
事例Ⅱ 長年抱えてきた対立の解消
• 私たち夫婦は私の仕事に関して、付き合っていた時期を含め長年対立をしてきており、夫の希望を通
せば私が辛い思いをする、私の希望を通せば夫が辛い思いをするという考え方が夫婦の間に染み付
いてしまっていました。
• その考え方を捨て去り、夫婦がお互いの幸せがお互いの幸せに繋がるということを認識する必要が
ありました。
• そこで考えたのが上記の内容です。私の幸せを応援することが夫の幸せに繋がるということを、漠然
と夫に伝えると同時に、自分にも言い聞かせるようにしました。それを聞いた夫も、特に深く考えること
なく、ただなんとなく肯定しているという様子でした。
• そして4か月ほど経った頃ふと気づくと、私は専業主婦である自分を受け入れることができるようにな
り、私の自己実現を夫が応援してくれると思えるようになっていました。
ソリューションを得た後の実践 ②
【夫の前で口にするようにした内容】
 あなたにとって一番大切なことは、私が機嫌よくしていることだよね
 私たちは一心同体だよね
26
事例Ⅱ 長年抱えてきた対立の解消
• 前述したように数か月かけてマインドセットの変更を行った私は、下記のように自分自身の行動を変
化させるこができていました。
• 社会復帰に向けて勉強をするという行動は変わりませんでしたが、「専業主婦」であるということを自
然に口に出せるようになりました。
• そして、現状の自分に満足することができるようになったため、以前のように夫を責めてしまうことは
なくなりました。
行動の変更
【TOC思考プロセスを使う前】
 自分のことを「専業主婦ではない」と言う
 現状の不本意さについて夫を責めることがある
【TOC思考プロセスを使った後】
 自分のことを「専業主婦である」と言う
 現状に不本意さを感じず、夫を責めることをしない
27
事例Ⅱ 長年抱えてきた対立の解消
• 前述したマインドセットの変更及び行動の変化により、下記のようなパフォーマンスの改善を果たすこ
とができました。
• 結婚前から6年にわたって抱えてきた夫との対立を解消することができ、私は自分の人生に希望を持
てるようになってきました。
• ちょうどそのころ私は古い知人から就職先の紹介を受けました。私は「夫との対立は必ず解消できる」
との強い信念を持つことができていましたので、夫の反対意見を積極的に聞く姿勢で夫に就職につい
ての話をすることができました。夫は私の就職に反対することなく、私は無事に社会復帰を果たすこと
ができました。
パフォーマンスの改善
【TOC思考プロセスを使う前】
 日常の中で辛いと感じることが多かった
 現状の自分に不満を抱き、自分の将来に希望が持てなかった
【TOC思考プロセスを使った後】
 日々の生活が楽しくなった
 現状の自分に不満をいだかなくなり、自分の将来に希望が持てるようになった
事例Ⅲ 職場でのTOC思考プロセス活用
29
事例Ⅲ 職場でのTOC思考プロセス活用
• 事例Ⅱの経験を経て就職した会社は従業員30名ほどの経営コンサルティング会社でした。私は事例
Ⅱの経験でTOCの威力を実感し、TOCのコンサルタントになりたいと思うようになっていました。就職
したとき私は、「就職して2年程度かけて社内で実績を上げ、信頼されるようになったらTOCのコンサ
ルティングを実践できるような体制を作っていこう」と考えていました。
• しかし、就職をして実際にコンサルティングプロジェクトに入ったとき、早くTOCの実践をしたいとの思
いが強くなりました。プロジェクトマネジャーが考えるコンサルティング案件のソリューション仮説はクラ
イアントの状況を悪化させるようなものに思え、TOC思考プロセスを使ってソリューションを出せばクラ
イアントのためになるソリューションを出せるように思えたのです。
• そこで私はクライアントの状況をTOC思考プロセスに当てはめ、自分なりにソリューションを考えてみ
ました。そしてそのソリューションをプロジェクトマネジャーに伝えようと試みました。私は入社したばか
りの新人で正面からソリューションを提案することはできないため、プロジェクトマネジャーに質問を投
げかけたり、私の考えたソリューションの一部を軽いノリで話してみたりしながらプロジェクトマネ
ジャーに働きかけてみました。
• しかし、プロジェクトマネジャーがご自身のソリューション仮説を変える様子はみられませんでした。
経緯
30
事例Ⅲ 職場でのTOC思考プロセス活用
• そして私は上記のようなクラウドを書きました。
• プロジェクトのパフォーマンスを高めるためにはプロジェクトマネジャーにTOC思考プロセスを使ってソ
リューションを出しなおすように提案する必要があります。
• しかし、新人の私が経験豊富なプロジェクトマネジャーのやり方を否定して新しいやり方を提案したり
すると、プロジェクトマネジャーの機嫌を損ねてしまうと思われます。
• その状況を表したのが上記のクラウドです。
TOCの提案に関するクラウド
A:目的
現在の職場で成功す
る
B:ニーズ
プロジェクトのパ
フォーマンスを高める
D:行動
プロジェクトマネジャー
にTOC思考プロセス
を使おうと提案する
C:ニーズ
プロジェクトマネジャー
との良好な関係を維
持する
D’:行動
プロジェクトマネジャー
にTOC思考プロセス
を使おうと提案しない
31
事例Ⅲ 職場でのTOC思考プロセス活用
• そして、前頁のクラウドのソリューションは下記の通りです。
• 最初にこのソリューションを出したとき、そのソリューションに納得できずに何度か同様のクラウドを書
いたのですが、結果は同じでした。
• 「TOCを提案したい」という強い気持ちがあったのですが、「TOCを提案してはならない」とのソリュー
ションが出たのです。
• 後に分かったことですが、私が直面したこの問題はTOC思考プロセスを学ぶ多くの人が直面する問
題で、上記のソリューションはTOCを学ぶ方々が知っておくべき重要なソリューションであるようです。
クラウドから導き出したソリューション
A:目的
現在の職場で成功す
る
B:ニーズ
プロジェクトのパ
フォーマンスを高める
【 ソリューション 】
私は、TOCの提案をしようと
することをやめ、プロジェクト
マネジャーから指示された仕
事を、指示されたやり方で、
速く正確に遂行することがで
きている
C:ニーズ
プロジェクトマネジャー
との良好な関係を維
持する
32
事例Ⅲ 職場でのTOC思考プロセス活用
• 今回の事例での私のマインドセットの変更は下記のようなものでした。
• 私は事例Ⅱの経験から、「TOC思考プロセスを使えばどんな問題も解決することができる」と考えてい
ました。しかし、この時の私には「他人や組織が抱える問題を解くことを支援する能力はまだ備わって
いない」という現実を直視する必要がありました。
• 私のすべきことは、プロジェクトマネジャーの指示に的確に従い、プロジェクトマネジャーの求めるやり
方でプロジェクトに貢献することであるという認識ができました。
マインドセットの変更
【TOC思考プロセスを使う前】
 TOC思考プロセスを使えばどんな問題でも解決することができる
 私はプロジェクトのパフォーマンスを改善する方法を自ら考え提案しなければならない
【TOC思考プロセスを使った後】
 解こうとする問題が自らの責任範囲外ならば、TOC思考プロセスをむやみに使ってはいけない
(もし本当に解決するのであれば、それ相応の高度な知識とスキルが求められる)
 私はプロジェクトマネジャーの求めるやり方でプロジェクトに貢献しなければならない
33
事例Ⅲ 職場でのTOC思考プロセス活用
• 前述のソリューションを得て私は下記のように行動を変化させました。
• 私は職場でTOCについて提案しようと試みることをやめ、プロジェクトマネジャーのやり方に従うように
行動を変えました。
• プロジェクトマネジャーが考えるソリューション案に疑問があってもプロジェクトマネジャーから意見を
求められない限りは疑問を投げかけることはしませんでした。
• プロジェクトマネジャーが私に指示する仕事は、データを入力したり、プロジェクトマネジャーの立てた
仮説に沿う情報を収集したり、それを資料として纏めたりすることでしたので、その作業を速く正確に
遂行するように努めました。
行動の変更
【TOC思考プロセスを使う前】
 TOC思考プロセスを使って自分なりにプロジェクトのソリューションを出す作業をする
 プロジェクトマネジャーに自分のソリューションを提案しようと試みる
【TOC思考プロセスを使った後】
 仕事中にTOC思考プロセスを使うことを止める
 プロジェクトマネジャーに指示された仕事を指示された通りに遂行する
34
事例Ⅲ 職場でのTOC思考プロセス活用
• 前頁の行動の変化によって、下記のようなパフォーマンスの改善を果たすことができました。
• ソリューションを得たことで、私はそれまでの自分自身のパフォーマンスが低かったことに気付きまし
た。私はプロジェクトマネジャーの考えに疑問を抱き、別の案を提案しようと思案していたため、プロ
ジェクトマネジャーから指示された作業の進捗が遅くなっていたのです。
• 仕事中にTOC思考プロセスを使うことを止め、与えられた作業に集中できるようになったため、指示さ
れた作業のアウトプットを早く提出できるようになりました。
パフォーマンスの改善
【TOC思考プロセスを使う前】
 プロジェクトマネジャーに作業の進捗を確認されることが多くあった
【TOC思考プロセスを使った後】
 プロジェクトマネジャーに確認される前に指示された仕事を提出できるようになった
35
事例Ⅲ 職場でのTOC思考プロセス活用
• 前述のソリューションを得てからは、仕事をする上で「責任範囲」というものを強く意識するようになり
ました。会社内で仕事をする上での「責任範囲」とは「上司から期待されている範囲」です。
• 最初のプロジェクトでは「与えられた作業を遂行すること」だけを期待されていましたが、次のプロジェ
クトでは「クライアント担当者のサポート」も私の責任範囲となりました。
• 前述のソリューションを得てから仕事中にTOC思考プロセスを使うことを止めていましたが、次のプロ
ジェクトでは自分の責任範囲の仕事を遂行する上で様々な課題に直面するようになったため、その際
にはTOC思考プロセスをつかって解決するようにしました。(※ただしTOCという言葉は決して人前で
出さないようにしました。)
• その結果、クライアントとのコミュニケーションや、会議でのファシリテーションが効果的に行えるように
なり、社内外のプロジェクトメンバーからの評価を高めることができました。
• このように自分の責任範囲内でTOC思考プロセスの活用を続けることで、「上司からの期待」は徐々
に高まり、プロジェクト全体のソリューションに関する意見を求められたり、難しい会議への同席を依
頼されたりするようになってきました。
• 職場においてTOC思考プロセスを自分の責任範囲内で確実に使うことで、自らのパフォーマンスを高
めることができました。
その後の、職場でのTOCの活用
事例Ⅳ 継続的改善
37
事例Ⅳ 継続的改善
• 事例Ⅲを経て、職場で正しい行動をとれるようになった私は、社内外での信頼を得て充実した仕事を
することができました。そして、コンサルティング会社で1年半ほど働いたころに第1子を出産し、産休
をいただきました。
• TOCのエキスパートを目指している私は産休中にTOC思考プロセスの習得に励みました。
• まずは取り扱う問題を探したのですが、日常生活の中で特に問題と認識できるものがなかったため、
自分自身の責任範囲内で「解くべき問題」を探す必要がありました。
• そこで、普段の生活で「しょうがない」ですませてしまって「問題」と認識していなかった事象を、リスト
アップしその中からTOC思考プロセスで取り扱える「問題」を探していきました。
• 夫婦間の関係は良好で日常生活は概ねうまくいっていましたが、子育てで疲れて家事が行き届かな
かったり、ふとした瞬間に夫に嫌な思いをさせてしまったり、逆に夫の言動にイライラしてしまったりと
いった事象に着目して、TOC思考プロセスを用いた分析を行うことにしました。
経緯
38
事例Ⅳ 継続的改善
• そして分析の結果作成したのが上記の統合クラウドです。このクラウドは、私が抱えていた様々な問
題を引き起こす中核的なジレンマを表しています。
• 私の機嫌を保つためには、自分の希望を通す必要があります。しかし、その希望が家族の生活スタ
イルに合わないものであれば、家族の立場や意見を尊重することができないため自分の希望を押し
殺す必要があります。
私の中核問題を表すクラウド
A:目的
家族と共に快適に
生活する
B:ニーズ
私の機嫌を保つ
D:行動
家族の生活スタイル
に合わない自分の希
望を押し通す
C:ニーズ
家族の立場・意見を
尊重する
D’:行動
家族の生活スタイル
に合わせて自分の希
望を押し殺す
39
事例Ⅳ 継続的改善
• そして、前頁のクラウドのソリューションは下記の通りです。
• ソリューションを出す過程で着目したのが、「WANT」と「NEED」の違いです。私は、夫の行動を変えて
ほしい時に、「どのように行動してほしいのか」という希望を伝えていましたが、それは「WANT」であり、
夫は行動を変えたくないという「WANT」を持っていますので、どちらかが我慢しなければならなくなり
ます。
• 「WANT」を引き起こす「NEED」を明らかにし共有することで、夫婦の「WANT」を揃えることができ、お
互いの我慢やストレスがなくなっていくというものです。
クラウドから導き出したソリューション
A:目的
家族と共に快適に
生活する
B:ニーズ
私の機嫌を保つ
【 ソリューション 】
① 私は、夫のWANTに対して自分の
WANTをぶつけることをやめる
② 私は、私及び夫のWANTをNEEDに
変換することができている
③ 私は、夫との話し合いにより、共有す
るNEEDを明らかにすることができて
いる
④ 私は、夫と共有したNEEDに基づき、
夫の行動及び自分の行動を評価し、
言動を決定することができている
C:ニーズ
家族の立場・意見を
尊重する
40
事例Ⅳ 継続的改善
• 今回の事例での私のマインドセットの変更は下記のようなものでした。
• 今回のソリューションを出すまでは、夫との意見が対立した際には自分が我慢すればすむと考え、我
慢できない自分を責めてしまうことが多かったのですが、我慢することは解決策ではないということに
気付きました。
• 我慢をするのではなく、夫婦が対立している構造を丁寧に解き明かし、夫婦の「NEED」を共有するこ
とで「WANT」を揃えていくことが本当の解決策であるということに気付きました。
マインドセットの変更
【TOC思考プロセスを使う前】
 夫と衝突しそうなときは自分が我慢するのが正しい行動である
 我慢できない時は夫に強く主張するしかない
【TOC思考プロセスを使った後】
 自分の希望を我慢するのは正しい行動ではない
 自分の希望を満たすためには、夫とのNEEDの共有というプロセスを踏んだうえで行動を起こさな
ければならない
41
事例Ⅳ 継続的改善
• 前述のソリューションを得て私は下記のように行動を変化させました。
• TOC思考プロセスを使った後の行動をご覧いただくと、工程が多く労力を要するものであるということ
が分かるかと思います。
• 1つの不満を解消するのに相当の作業が必要ですが、正しくその工程を実行できれば同じ問題で対
立を起こすことがなくなるため、我慢のストレスから解放されることになります。
行動の変更
【TOC思考プロセスを使う前】
① 夫に対する不満があるときは、我慢する
② 我慢ができなくなったら、夫に対して強く主張する
【TOC思考プロセスを使った後】
① 夫に対する不満があるときは、対立の構造を文章にする
② 夫婦のそれぞれが抱えるジレンマの構造をクラウドに表す(NEEDを明らかにする)
③ それぞれのクラウドのソリューションをだし、私のソリューションを導入する
④ 夫婦で共有できるクラウドを作成し、夫に対して提案する
(※ただし夫の前でTOCという言葉は出さない)
42
事例Ⅳ 継続的改善
• 前述したソリューションを導入するにあたって、夫婦の役割をどのように捉えるべきかを明確にする必
要性が生じました。
• 夫婦の役割を定義するための作業のご説明は割愛いたしますが、現状について丁寧に観察しそれを
明文化するという方法をとりました。その結果が下記の通りです。
• 夫婦はまずビジョンを共有し、そのビジョンを達成するために自らが努力し、お互いに協力する責任
があるというのが夫婦それぞれの役割でした。
• このビジョン及び役割を夫に提案し、受け入れられました。(※ただし、夫に説明する際にはTOCとい
う言葉は一切出さないようにしています)
夫婦のビジョン及び役割
【夫婦のビジョン】
① 夫が自己実現している
② 子供を健全な大人に育てることができている
③ 妻(私)が自己実現している
※① ~ ③は優先順位を示す
【夫婦の役割】
夫及び妻(私)は、上記のビジョンを達成するために自ら努力し、お互いに協力する責任をもつ
43
事例Ⅳ 継続的改善
• 前述したソリューションの導入、ビジョン・役割の明確化を行うことで私のパフォーマンスは大幅に改
善したと思います。
• 夫への不満がある場合には、丁寧に分析をすることで不満を解消することができるようになったため、
夫の言動にイライラすることが格段に少なくなりました。
• また、夫とビジョンを共有することができたため、何か意思決定をする必要がある場合にはそのビジョ
ンに従ってスムーズに意思決定をすることができるようになりました。
• また自分の役割が明確になり、「夫が自己実現している」という夫婦の最優先事項を達成するために
自分自身が何をできるかということを意識して行動することができるようになりました。
パフォーマンスの改善
【TOC思考プロセスを使う前】
 夫の言動に対してイライラしたり、そのイライラをぶつけてしまうことがしばしばあった
【TOC思考プロセスを使った後】
 夫の言動に対してイライラすることが格段に少なくなった
 夫が私に対して本当に求めていることは何かを考えて行動できるようになった
最後に
45
最後に
• 私は10年間のTOC思考プロセスの実践の中で、下記のことの重要性を認識するようになりました。
「① 正しい場面で」
 TOC思考プロセスを学ぶと、その素晴らしさに感動し、いろいろな場面で使いたい、身近な人に
も使ってほしいと思ってしまうものです。私にも、事例Ⅲでご紹介したように「責任範囲」を超え
てTOC思考プロセスを使おうと試み、自らのパフォーマンスを下げてしまった経験があります。
 それ以来、TOC思考プロセスを用いる際には、自らの「責任範囲内」であるのかについて厳密
にチェックしてから使うようにしています。
 いろいろな場面でTOC思考プロセスを使いたいと考えるのであれば、まず自らの「責任範囲内」
でTOC思考プロセスを実践し、自らの「責任範囲」が広がるのを待つ必要があります。まず、自
らの「責任範囲内」でTOC思考プロセスを確実に使えば、自分のパフォーマンスは劇的に改善
するため、周囲からの期待は高まり「責任範囲」は徐々に広がっていくはずです。
TOC思考プロセスを使う上で重要なこと ①
TOC思考プロセスを使う際には、
① 正しい場面で、 ② 正しいツールを、 ③ 正しく使わなければならない。
46
最後に
「② 正しいツールを」
 TOC思考プロセスには様々なツールがあります。TOCの思考プロセスは、その問題に適した
「正しいツール」を使って初めて効果を発揮することができます。
 例えば、「クラウド」には「一度きりの問題を解決するクラウド(day-to-dayクラウド)」と「繰り返し
性のある問題を解決するクラウド(UDEクラウド)」があり、作成方法が異なります。
 私は、TOC思考プロセスを使い始めた当初、「day-to-dayクラウド」のワークショップだけを受講
し、「UDEクラウド」のワークショップは受講していませんでした。
 そして「繰り返し性のある問題」までも、「day-to-dayクラウド」で解こうとしていました。その例が
事例Ⅱの「結婚に迷った時のクラウド」です。
 そのため、十分なソリューションを得ることができず、白土氏に正しいツールを使った問題解決
のサポートをしていただくまで辛い思いをすることになりました。
 有効な解決策を得るためには、その問題に適した「正しいツール」を使う必要があります。
TOC思考プロセスを使う上で重要なこと ②
TOC思考プロセスを使う際には、
① 正しい場面で、 ② 正しいツールを、 ③ 正しく使わなければならない。
47
最後に
「③ 正しく使わなければならない」
 TCO思考プロセスのツールを使っても、正しい使い方をしなければ、「ピンボケしたような」解決
策しか得ることができず、本当にパフォーマンスを改善することはできません。
 私自身、現在もツールの正しい使い方を習得するために学んでいる途中です。
 TOC思考プロセスのツールを使いこなせるようになるためには、エキスパートに適切に指導を
受け、自ら努力をしてツールの正しい使い方を体得しなければならないと感じています。
TOC思考プロセスを使う上で重要なこと ③
TOC思考プロセスを使う際には、
① 正しい場面で、 ② 正しいツールを、 ③ 正しく使わなければならない。
48
最後に
• 私は、4つの事例でお示ししたように、人生の節目節目でTOC思考プロセスを使い、自分自身の誤っ
た考え方を変えることでパフォーマンスを劇的に改善するという経験をしてきました。
• ご紹介した事例以外にも、ほぼ毎日のようにTOC思考プロセスを使って日常の小さな問題を解決しな
がら生活しています。
• そして、毎回自分でも驚くほど効果のあるソリューションを得ることができています。
• TOCにはPOOGI(継続的改善)という言葉があり、改善には終わりがありません。
• 私は、事例Ⅳのソリューションを得てからストレスが格段に減り、楽しく充実した生活を送っています
が、これからも永久に改善の余地があると考えています。
• TOC思考プロセスを使い続けることで自分自身、そして家族のパフォーマンスを高め続けることがで
きると考えています。
今後の取り組みについて
49
最後に
私の師匠のご紹介
• ゴールラット博士は、TOCを開発した偉大な人物で、TOCを学び実践する全て
の方々にとっての「師匠」であると思います。私はゴールドラット博士の著作を繰
り返し読み、いつも感銘を受けています。
• オーデット・コーエン氏は、ゴールドラット博士と共にTOCのツールを開発された
方です。世界各国でコンサルティングを行う他、TOCの教育・普及にも力を入れ
ておられます。同氏は何度か来日されており、TOC思考プロセス(MT)のワーク
ショップの講師をされた際に、私も直接指導を受けました。
• 白土竜馬氏は、ゴールドラット博士、オーデット・コーエン氏から直接TOCの指導
を受けられ、株式会社ジュントスのコンサルタントとして日本の数々の企業に目
覚ましい改善成果をもたらしていらっしゃいます。講師としての定評もあり、分か
りやすくTOCの基本から実践までを導いてくださいます。
ゴールラット博士
オーデット・コーエン氏
白土竜馬氏
50
最後に
• TOC思考プロセスには、使う人の用途に応じて、いくつかのバリエーション/プログラムがありますが、
私が学び実践しているのは「マネジメント・ツール(以下、MT)」と呼ばれる手法です。
• MTは、「日常の問題解決」にTOC思考プロセスを“普段使い”することができるように開発された手法
で、主に「クラウド」、「ネガティブブランチ」、「中間目標マップ」の3つのツールを使います。
• MTは、様々ある思考ツールの中でも、「使いやすさと実用性」を重視している点が特徴です。簡単な
問題であれば数十分で解決することができますし、繰り返し性のある厄介な問題でも、自分の責任領
域にある問題であれば、半日から1日程度の時間をかけて解決策を見つけ出すことができます。
• 私の経験では、MTの正しい使い方をしたときは、自分自身が直面した問題や悩みについて、例外な
く解決できており、その有効性を実感することができています。
• TOCやMTについて詳しく知りたい方は、右記のWebサイト http://www.juntos.co.jp/consulting をご覧
になると、詳しい情報を得ることができます。
私の学んでいるツールについて ~マネジメントツール~
■ MTの3ツール(株式会社ジュントスWebサイトより)

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  • 4. 4 はじめに • 私は10年ほど前に「TOC思考プロセス」と出会い、人生の様々な場面で活用してまいりました。 • TOC思考プロセスの活用は私を有意義で充実した人生へと導いてくれています。 • このレポートは、私がどのような場面でTOC思考プロセスを活用し、どのような成果を上げてきたのか を皆様に知っていただくことを目的に作成いたしました。 • このレポートを通じて多くの方がTOC思考プロセスに興味を持ってくださることを願っています。 • 人生をもっと有意義で充実したものにしたいと願う方、現在かかえている悩みやストレスから解放され たいと願う方にぜひ読んでいただきたいと考えています。 • この資料は多くの方に読んでいただくために作成しておりますので、お知り合いの方にもご紹介して いただければ幸いです。ただし、ご紹介いただく際にはご自身がよく資料に目を通していただき、「事 例Ⅲ(職場でのTOC思考プロセス活用)」の私の当初の失敗のように、不適切な場面での提案になら ないよう十分注意した上で、適切だと判断された場合にのみご紹介いただければと考えております。 このレポートの目的
  • 5. 5 はじめに • 「TOC思考プロセス」とは、TOC(Theory of Constraints: 制約理論)の創始者であり、『ザ・ゴール』の 著者としても有名なエリヤフ・ゴールドラット博士が中心となって開発した「論理思考ツール」です。 • 私はTOC思考プロセスについて下図のようなイメージをもっています。 • TOC思考プロセスは、いくつかの「ツール」から成り立っていますが、そのツールは数学で使う「方程 式」のようなものであると思います。 • 現状のありのままを、「思考プロセスのツール = 方程式」に当てはめると、「解 = ソリューション」を 得ることができます。そしてそのソリューションを実践すると、パフォーマンスを改善することができると いうイメージです。 TOC思考プロセスのイメージ TOC思考 プロセスの ツール 現状 ソリューション パフォーマンス 改善
  • 7. 7 事例Ⅰ TOC思考プロセスとの衝撃的な出会い • 私にTOC思考プロセスのツールを教えてくださっているのは、株式会社ジュントスの白土竜馬氏です。 • 私が最初にTOC思考プロセスに出会ったのは、10年ほど前に白土氏にTOC思考プロセスの代表的 なツールである「クラウド」のことを教えていただいたときです。 • 当時私は大学を卒業して証券会社に入社したばかりのころでした。白土氏は私の当時の悩みを聞い て、次頁のようなクラウドを作成してくれました。 • 新入社員である私は、下記のような悩みを抱えていました。  仕事をする上で、分からないことはたくさんあります。分からないことは先輩に聞くと早く解決で きるのですが、先輩は営業ノルマを抱えていつも忙しそうにしていて、時間を取らせてしまうの は申し訳ないという気持ちがありなかなか聞くことができません。  また、新入社員研修では、「分からないことは社内の『規定集』をみて調べること」と指導を受け ていました。そこで、『規定集』を調べるのですが、そもそも『規定集』のどこを見ればよいのか が分からず、『規定集』を読んでいるうちに時間ばかり経ってしまい作業が進まず、「私は仕事 ができない」と落ち込んでいく・・・といった状況でした。 • なお、このレポートでは、ツールを使った場面とその成果のみをご説明し、ツールの使い方のご説明 は割愛しておりますのでご承知おきいただいた上でご覧いただければと存じます。 クラウドとの出会い
  • 8. 8 事例Ⅰ TOC思考プロセスとの衝撃的な出会い • 前頁のジレンマを「クラウド」として表現したのが下記の図です。 • 自分の仕事を前に進めるためには(B)、分からないことを先輩に尋ねる(D)必要があります。 • しかし、いつも忙しそうにしている先輩と良好な関係を保つために(C)、分からないことを尋ねることが できない(D’)というジレンマです。 • 私が職場でパフォーマンスを高める(A)ためには、(B)、(C)の両方を満たすことが大切であるため、 (D)と(D’)の間でいつも迷っているという状況を表しています。 新入社員のクラウド A:目的 現在の職場でパ フォーマンスを高める B:ニーズ 自分の仕事を前に進 める D:行動 分からないことを先輩 に尋ねる C:ニーズ 先輩との良好な関係 を保つ D’:行動 分からないことがあっ ても先輩に尋ねない
  • 9. 9 事例Ⅰ TOC思考プロセスとの衝撃的な出会い • クラウドからソリューションを導き出すには、「方程式」を解く作業が必要ですが、ここではその結果だ けをご説明したいと思います。「方程式」を解いた結果は下記のソリューションです。 • ソリューションは「私は、先輩が気持ちよく答えてくれるように質問することができている」です。もし、こ のソリューションを実行することができれば、先輩との関係を良好に保ちながら自分の仕事を前に進 めることができるということをご理解いただけますでしょうか? クラウドから導き出したソリューション A:目的 現在の職場でパ フォーマンスを高める B:ニーズ 自分の仕事を前に進 める 【 ソリューション 】 私は、先輩が気持ちよく 答えてくれるように質問 することができている C:ニーズ 先輩との良好な関係 を保つ
  • 10. 10 事例Ⅰ TOC思考プロセスとの衝撃的な出会い • 前頁のソリューションを見られた方の中には、「そんなの当たり前ではないか?」と思われる方もい らっしゃるかと思います。 • TOC思考プロセスで作成したソリューションは、当たり前のことが出てくることが多くあります。 • 重要なのは、それまでその「当たり前のこと」に気付いていなかった自分が、TOC思考プロセスを使っ て分析を行う過程でその「当たり前」に気付くことができるということです。 • もし当時の私が、私の悩みを誰かに話して、「先輩が気持ちよく答えてくれるように上手に質問すると いいよ。」とのアドバイスを受けたとしても、そのアドバイスをうまく受け入れることはできず聞き流して しまっていただろうと思います。 • TOC思考プロセスのツールを使う過程で、自分自身の現状について自分自身に問いかけ、自分自身 の中に潜む「間違った考え方(マインドセット)」に自分自身で気づくことができるのです。そして正しい マインドセットを受け入れることができて初めて、ソリューションを心の底から受け入れ、自分自身の 行動を変えることができるようになるのです。 ソリューションを導く過程での「気づき」
  • 11. 11 事例Ⅰ TOC思考プロセスとの衝撃的な出会い • 今回の事例での私のマインドセットの変更は下記のようなものでした。 • この件に関してTOC思考プロセスを使う前の私は、自分が分からないことを先輩に聞かないのは、 「忙しくしている先輩に迷惑をかけないため」と思っていました。確かにそれも事実なのですが、ソ リューションを導く過程で、自分自身の奥底に潜む本当の考え方が浮き彫りになってきました。 • 私は先輩に聞くのが、「恥ずかしく、悔しい」と思っていたのです。その思いが私が正しい行動をとるこ とを阻害していたのです。 • そして、自分自身が先輩に質問をすることを好意的に捉えることができれば、先輩も余裕があれば後 輩の指導をしたいと思っているということにも気づくことができました。 マインドセットの変更 【TOC思考プロセスを使う前】  先輩に聞くことは、自分が仕事ができないと言っているようで恥ずかしく、悔しい  先輩はいつも忙しく、後輩に質問をしてほしくないと思っている 【TOC思考プロセスを使った後】  分からないことを先輩に尋ねるのは恥ずべきことではない  先輩は、いつも忙しくしているわけではなく、余裕があるときは後輩の指導をしたいと考えている
  • 12. 12 事例Ⅰ TOC思考プロセスとの衝撃的な出会い • ソリューションを導く過程でマインドセットの変更ができた私は、自然に自分自身の行動を変えること ができました。それが下記の行動の変化です。 • 行動の変化をみると、「努力の方向性」が変わっていることにお気づきいただけるかと思います。以前 は、「先輩に聞かずにすむ努力」をしていたのを、「先輩に聞く努力」をするように変わったのです。 • 努力の方向性の変化は、先輩や上司とのコミュニケーションを必要とする多くの場面で私の行動を変 えてくれるようになりました。 行動の変更 【TOC思考プロセスを使う前】  分からないことがあったら、社内の規定集を時間をかけて調べる  長時間規定集を調べて、どうしても分からないときだけ先輩に聞く 【TOC思考プロセスを使った後】  分からないことがあったら規定集に目を通し、規定集に書いてあることのどこが分からないのかを 明確にする  先輩の様子を観察し、先輩が余裕がありそうなときに声をかけ、規定集のどこが分からないかを 質問する
  • 13. 13 事例Ⅰ TOC思考プロセスとの衝撃的な出会い • 前頁の行動の変化を起こすことによって、私自身のパフォーマンスは下記のように変化しました。 • TOC思考プロセスによる分析を行う前は、仕事が分からずいつもイライラしていて職場に馴染めてい ない状況でしたが、ソリューションを実行するうちに、状況が大きく変わってきました。 • 仕事で分からないことがあればすぐに先輩に教えてもらえるようになり、仕事がスムーズに進むように なり、先輩からも可愛がられるようになりました。 • その後、徐々に重要な仕事を任されるようになり充実した社会人生活を送ることができました。 パフォーマンスの改善 【TOC思考プロセスを使う前】  事務手続きが分からず作業が前に進まなくて、いつもイライラしていた  職場に馴染めず、疎外感を感じていた 【TOC思考プロセスを使った後】  自分の仕事がスムーズに進むようになった  先輩から可愛がられるようになった
  • 15. 15 事例Ⅱ 長年抱えてきた対立の解消 • 事例Ⅰのソリューションの実行により、充実した社会人生活を送っていましたが、29歳の時に人生の 転機が訪れました。 • ここからはかなりプライベートな話になります。決して私のプライベートを皆様に知っていただきたいわ けではないのですが、TOC思考プロセスの活用事例をお示しするために、私の置かれていた状況に ついてご説明いたします。 • 私は24歳のときから同じ会社の先輩である現在の夫とお付き合いをしていました。彼は、付き合いは じめたころから「結婚したら仕事を辞めてほしい」と言っていました。一方私は「専業主婦になるなんて 考えられない」と思っており、度々そのことで対立していました。 • 29歳になった私は、結婚について真剣に考えるようになり、次頁のようなクラウドを作成しました。 経緯
  • 16. 16 事例Ⅱ 長年抱えてきた対立の解消 • その時作成したのが下記のクラウドです。(※詳細は後述しますが、実はこのクラウドは正しく書けて いません。) • 彼は結婚する際に仕事を辞めてほしいと強く希望して譲らなかったため、私が仕事を辞めると約束し なければ彼と結婚することはできませんでした。 • 一方で、私は自分の人生の中でキャリアを形成することをとても重視していましたので、仕事を辞める わけにはいかないというジレンマを抱えていました。 • その状況をクラウドに示したのが上の図です。 結婚に迷った時のクラウド A:目的 充実した人生を送る B:ニーズ 彼と結婚する D:行動 仕事を辞めると 彼に伝える C:ニーズ キャリアのある人生を 送る D’:行動 仕事を辞めないと 彼に伝える
  • 17. 17 事例Ⅱ 長年抱えてきた対立の解消 • そして、前頁のクラウドから私が導き出したソリューションは下記の通りです。 (※詳細は後述します が、実はこのクラウドは正しく書けていません。) • それまで、「一度仕事を辞めてしまったら社会復帰など無理」と考えていたのですが、上記のクラウド からソリューションを出すことで、「一度、仕事を辞めても、資格取得など次のキャリア形成のための 勉強をしていれば、再びキャリア形成することができるだろう」と考えるようになったのです。 クラウドから導き出したソリューション A:目的 充実した人生を送る B:ニーズ 彼と結婚する 【 ソリューション 】 私は、一度仕事を辞め て次のキャリア形成の ための勉強をすること ができているC:ニーズ キャリアのある人生を 送る
  • 18. 18 事例Ⅱ 長年抱えてきた対立の解消 • 前頁のソリューションを実行し、私は仕事を辞めて彼と結婚をしました。 • そして結婚後すぐに税理士試験の勉強を始めました。夫は、「自分と同じ会社でなければ仕事をして もいい。ただし、子供ができて子供が小さいうちは家にいてほしい。」という考え方で、税理士試験の 勉強に応援も反対もしませんでした。 • 私は税理士試験の勉強をしながら就職活動をしていましたが、苦労して就職を決めた途端に、夫が 転勤になって内定を辞退せざるを得なくなったり、税理士の資格をとっても就職できるとは限らないと いう現実を知ったりで、自分自身のキャリア形成に全く期待が持てなくなりました。 • 当時、私は1人で勉強をしていましたので、他人との関わりもなく、自分自身の将来に希望がもてず辛 い日々を過ごしていました。 • 前頁で出したソリューションは私の問題を解決するのに十分なソリューションではなかったようです。 後に分かったことですが、使うべきツールを間違っていたために適切なソリューションを出すことがで きていなかったのです。 • 次頁でお示しするように取り扱う問題の種類によって使うべきツールが異なるのですが、私は使うべ きツールを間違えてソリューションを出していたのです。 結婚後の状況
  • 19. 19 事例Ⅱ 長年抱えてきた対立の解消 問題の種類によって使うべきクラウドが異なる  ジレンマ・クラウド : どの選択肢をとるべきか分からず悩んでいる状況を克服する  コンフリクト・クラウド: 自分と他者との間で起きた意見/利害の衝突を解決する  火消しのクラウド : 「火消し」をせざるを得なかった状況を分析し、再発を防止する  UDEクラウド : 繰り返し発生する問題や特定の課題に対処する  統合クラウド : 複数のUDEクラウドを統合し、システムの中核問題を解決する 葛藤/ 意見の衝突 火消しの 状況分析 不特定だが 複数の問題 慢性的な問題/ 特定の課題 発生頻度 抽 象 度
  • 20. 20 事例Ⅱ 長年抱えてきた対立の解消 • 前述したような状況の中、私は白土氏に問題解決のサポートを依頼しました。そのとき、白土さんが 私の現状をヒアリングしながら作成してくださったのが下記の「統合クラウド」です。 • 当時の私の状況を丁寧に思考プロセスのツールに当てはめていただき、私が抱えている問題を引き 起こす中核的なジレンマの構造を明らかにしていただきました。 • 日々の生活を楽しむためには、自分の現状を受け入れる必要があるのですが、現在の自分を受け入 れ満足してしまうと、再度キャリアを形成して自己実現することが難しいため、受け入れることができ ないというジレンマを抱えていました。 私の中核問題を表すクラウド A:目的 充実した人生を送る B:ニーズ 日々の生活を楽しむ D:行動 私の現状(専業主婦で ある)を受け入れる C:ニーズ 自己実現をする D’:行動 私の現状を受け入れ ない
  • 21. 21 事例Ⅱ 長年抱えてきた対立の解消 • そして、前頁のクラウドのソリューションは下記の通りです。 • その時に起こっていた様々な問題を解決するためには、まず「専業主婦」であるという現実を受け止 める必要があるということが分かりました。 • もし、私が「専業主婦」であるという現実を受け止めたうえで自己実現の方法が分かっていれば、日々 の生活を楽しむことができますし、自己実現をすることも可能になります。 • このソリューションを見たとき、「これが実現すれば本当に素晴らしい」と思う一方で、「そんなの無理 ではないか」という思いもありました。 クラウドから導き出したソリューション A:目的 充実した人生を送る B:ニーズ 日々の生活を楽しむ 【 ソリューション 】 私は、専業主婦であるという 現実を受け止めた上で、 自己実現の方法が分かって おり、その状況を楽しむこと ができる。C:ニーズ 自己実現をする
  • 22. 22 事例Ⅱ 長年抱えてきた対立の解消 No. 障害 Show- Stopper 成果物/ IO 阻害 要因 1 達成したい将来像が不明確で ある IO 2– 私は家族と自分自身の両方を 満足させる将来像を描くことができる 2 家族とのバランスのとれた 自己実現の方法が分からない X IO 3- 現状から将来像を実現するた めにいつ、何を、どのようにすれば達 成可能か明文化することができる 将来像の 欠如 3 私は「専業主婦」という言葉に 抵抗感を感じている X IO4 - 私は専業主婦になった上での 自己実現の方法を見つけることで、 価値観を変えることができている。 価値観 4 私は周りの人に自分がどう思 われているか気になる IO 5- 私は自分がやっていることの 意義を家族や友人や元同僚・上司に 自信をもって説明することができる • ソリューションの実行可能性に懸念を持っていた私が、次に作成したのが、もう一つの思考ツールで ある「中間目標マップ – IOマップ」です。 • IOマップを作成するにあたり、以下のフォーマットに従って、実行に向けた「障害」を明らかにしました。 以下は作成した表の一部です。 ソリューション実行に向けた「障害」の表面化
  • 23. 23 事例Ⅱ 長年抱えてきた対立の解消 • 前頁の障害を明らかにする作業を通じて、私自身がどのようなマインドセットの変更を行わなければ ならないのかが明らかになりました。それは下記の通りです。 • 通常、TOC思考プロセスを使って分析を行うと、ソリューションを出す過程で自分自身の捨てるべきマ インドセットと新しく取り入れるべきマインドセットを認識することができます。そしてそれと同時にマイ ンドセットの変更も自然にできることが多いです。 • しかしこの事例のケースでは私は容易にマインドセットの変更を行うことができませんでした。 マインドセットの変更 【捨てるべきマインドセット】 ① 一度専業主婦になってしまったら、パート以外の仕事に二度と戻れない ② 自分の自己実現にとって夫の存在は邪魔にしかならない ③ 夫と私にとって両方プラスとなるような自己実現は存在しない 【新しく受け入れるべきマインドセット】 ① キャリアをあきらめなければ専業主婦になっても、パート以外の仕事に戻れるかもしれない ② 夫の助けを借りることで私の自己実現は有意義なものになる ③ 私と夫にとって両方プラスとなるような自己実現は存在する
  • 24. 24 事例Ⅱ 長年抱えてきた対立の解消 • 前述のように、私はソリューションを得てもすぐにそのソリューション及びマインドセットの変更を受け 入れることができませんでした。 • そこで私は新しいマインドセットを受け入れる努力を始めました。 • 最初に受け入れることができたのは、前頁①の「キャリアをあきらめなければ専業主婦になっても、 パート以外の仕事に戻れるかもしれない」でした。それまでの私は、「専業主婦になる」ということを、 「キャリアをあきらめ、社会復帰のための努力をやめる」と同義であると考えていました。その2つを切 り離して捉えることで、「専業主婦としての現在の自分」を受け入れた上で「キャリア形成の努力をしよ う」と思えるようになりました。 • マインドセットの変更が難しかったのは、前頁の②「夫の助けを借りることで私の自己実現は有意義 なものになる」及び③「私と夫にとって両方プラスとなるような自己実現は存在する」でした。私は長い 間、私の仕事について夫と対立しており、実際に夫の強い希望や転勤によりキャリアを諦めてきた経 験から夫が私のキャリアを邪魔する存在として強く認識されていたのです。 • そこで私は新しいマインドセット②③を受け入れるために、次のようなことを夫の前で口に出すように しました。 ソリューションを得た後の実践 ①
  • 25. 25 事例Ⅱ 長年抱えてきた対立の解消 • 私たち夫婦は私の仕事に関して、付き合っていた時期を含め長年対立をしてきており、夫の希望を通 せば私が辛い思いをする、私の希望を通せば夫が辛い思いをするという考え方が夫婦の間に染み付 いてしまっていました。 • その考え方を捨て去り、夫婦がお互いの幸せがお互いの幸せに繋がるということを認識する必要が ありました。 • そこで考えたのが上記の内容です。私の幸せを応援することが夫の幸せに繋がるということを、漠然 と夫に伝えると同時に、自分にも言い聞かせるようにしました。それを聞いた夫も、特に深く考えること なく、ただなんとなく肯定しているという様子でした。 • そして4か月ほど経った頃ふと気づくと、私は専業主婦である自分を受け入れることができるようにな り、私の自己実現を夫が応援してくれると思えるようになっていました。 ソリューションを得た後の実践 ② 【夫の前で口にするようにした内容】  あなたにとって一番大切なことは、私が機嫌よくしていることだよね  私たちは一心同体だよね
  • 26. 26 事例Ⅱ 長年抱えてきた対立の解消 • 前述したように数か月かけてマインドセットの変更を行った私は、下記のように自分自身の行動を変 化させるこができていました。 • 社会復帰に向けて勉強をするという行動は変わりませんでしたが、「専業主婦」であるということを自 然に口に出せるようになりました。 • そして、現状の自分に満足することができるようになったため、以前のように夫を責めてしまうことは なくなりました。 行動の変更 【TOC思考プロセスを使う前】  自分のことを「専業主婦ではない」と言う  現状の不本意さについて夫を責めることがある 【TOC思考プロセスを使った後】  自分のことを「専業主婦である」と言う  現状に不本意さを感じず、夫を責めることをしない
  • 27. 27 事例Ⅱ 長年抱えてきた対立の解消 • 前述したマインドセットの変更及び行動の変化により、下記のようなパフォーマンスの改善を果たすこ とができました。 • 結婚前から6年にわたって抱えてきた夫との対立を解消することができ、私は自分の人生に希望を持 てるようになってきました。 • ちょうどそのころ私は古い知人から就職先の紹介を受けました。私は「夫との対立は必ず解消できる」 との強い信念を持つことができていましたので、夫の反対意見を積極的に聞く姿勢で夫に就職につい ての話をすることができました。夫は私の就職に反対することなく、私は無事に社会復帰を果たすこと ができました。 パフォーマンスの改善 【TOC思考プロセスを使う前】  日常の中で辛いと感じることが多かった  現状の自分に不満を抱き、自分の将来に希望が持てなかった 【TOC思考プロセスを使った後】  日々の生活が楽しくなった  現状の自分に不満をいだかなくなり、自分の将来に希望が持てるようになった
  • 29. 29 事例Ⅲ 職場でのTOC思考プロセス活用 • 事例Ⅱの経験を経て就職した会社は従業員30名ほどの経営コンサルティング会社でした。私は事例 Ⅱの経験でTOCの威力を実感し、TOCのコンサルタントになりたいと思うようになっていました。就職 したとき私は、「就職して2年程度かけて社内で実績を上げ、信頼されるようになったらTOCのコンサ ルティングを実践できるような体制を作っていこう」と考えていました。 • しかし、就職をして実際にコンサルティングプロジェクトに入ったとき、早くTOCの実践をしたいとの思 いが強くなりました。プロジェクトマネジャーが考えるコンサルティング案件のソリューション仮説はクラ イアントの状況を悪化させるようなものに思え、TOC思考プロセスを使ってソリューションを出せばクラ イアントのためになるソリューションを出せるように思えたのです。 • そこで私はクライアントの状況をTOC思考プロセスに当てはめ、自分なりにソリューションを考えてみ ました。そしてそのソリューションをプロジェクトマネジャーに伝えようと試みました。私は入社したばか りの新人で正面からソリューションを提案することはできないため、プロジェクトマネジャーに質問を投 げかけたり、私の考えたソリューションの一部を軽いノリで話してみたりしながらプロジェクトマネ ジャーに働きかけてみました。 • しかし、プロジェクトマネジャーがご自身のソリューション仮説を変える様子はみられませんでした。 経緯
  • 30. 30 事例Ⅲ 職場でのTOC思考プロセス活用 • そして私は上記のようなクラウドを書きました。 • プロジェクトのパフォーマンスを高めるためにはプロジェクトマネジャーにTOC思考プロセスを使ってソ リューションを出しなおすように提案する必要があります。 • しかし、新人の私が経験豊富なプロジェクトマネジャーのやり方を否定して新しいやり方を提案したり すると、プロジェクトマネジャーの機嫌を損ねてしまうと思われます。 • その状況を表したのが上記のクラウドです。 TOCの提案に関するクラウド A:目的 現在の職場で成功す る B:ニーズ プロジェクトのパ フォーマンスを高める D:行動 プロジェクトマネジャー にTOC思考プロセス を使おうと提案する C:ニーズ プロジェクトマネジャー との良好な関係を維 持する D’:行動 プロジェクトマネジャー にTOC思考プロセス を使おうと提案しない
  • 31. 31 事例Ⅲ 職場でのTOC思考プロセス活用 • そして、前頁のクラウドのソリューションは下記の通りです。 • 最初にこのソリューションを出したとき、そのソリューションに納得できずに何度か同様のクラウドを書 いたのですが、結果は同じでした。 • 「TOCを提案したい」という強い気持ちがあったのですが、「TOCを提案してはならない」とのソリュー ションが出たのです。 • 後に分かったことですが、私が直面したこの問題はTOC思考プロセスを学ぶ多くの人が直面する問 題で、上記のソリューションはTOCを学ぶ方々が知っておくべき重要なソリューションであるようです。 クラウドから導き出したソリューション A:目的 現在の職場で成功す る B:ニーズ プロジェクトのパ フォーマンスを高める 【 ソリューション 】 私は、TOCの提案をしようと することをやめ、プロジェクト マネジャーから指示された仕 事を、指示されたやり方で、 速く正確に遂行することがで きている C:ニーズ プロジェクトマネジャー との良好な関係を維 持する
  • 32. 32 事例Ⅲ 職場でのTOC思考プロセス活用 • 今回の事例での私のマインドセットの変更は下記のようなものでした。 • 私は事例Ⅱの経験から、「TOC思考プロセスを使えばどんな問題も解決することができる」と考えてい ました。しかし、この時の私には「他人や組織が抱える問題を解くことを支援する能力はまだ備わって いない」という現実を直視する必要がありました。 • 私のすべきことは、プロジェクトマネジャーの指示に的確に従い、プロジェクトマネジャーの求めるやり 方でプロジェクトに貢献することであるという認識ができました。 マインドセットの変更 【TOC思考プロセスを使う前】  TOC思考プロセスを使えばどんな問題でも解決することができる  私はプロジェクトのパフォーマンスを改善する方法を自ら考え提案しなければならない 【TOC思考プロセスを使った後】  解こうとする問題が自らの責任範囲外ならば、TOC思考プロセスをむやみに使ってはいけない (もし本当に解決するのであれば、それ相応の高度な知識とスキルが求められる)  私はプロジェクトマネジャーの求めるやり方でプロジェクトに貢献しなければならない
  • 33. 33 事例Ⅲ 職場でのTOC思考プロセス活用 • 前述のソリューションを得て私は下記のように行動を変化させました。 • 私は職場でTOCについて提案しようと試みることをやめ、プロジェクトマネジャーのやり方に従うように 行動を変えました。 • プロジェクトマネジャーが考えるソリューション案に疑問があってもプロジェクトマネジャーから意見を 求められない限りは疑問を投げかけることはしませんでした。 • プロジェクトマネジャーが私に指示する仕事は、データを入力したり、プロジェクトマネジャーの立てた 仮説に沿う情報を収集したり、それを資料として纏めたりすることでしたので、その作業を速く正確に 遂行するように努めました。 行動の変更 【TOC思考プロセスを使う前】  TOC思考プロセスを使って自分なりにプロジェクトのソリューションを出す作業をする  プロジェクトマネジャーに自分のソリューションを提案しようと試みる 【TOC思考プロセスを使った後】  仕事中にTOC思考プロセスを使うことを止める  プロジェクトマネジャーに指示された仕事を指示された通りに遂行する
  • 34. 34 事例Ⅲ 職場でのTOC思考プロセス活用 • 前頁の行動の変化によって、下記のようなパフォーマンスの改善を果たすことができました。 • ソリューションを得たことで、私はそれまでの自分自身のパフォーマンスが低かったことに気付きまし た。私はプロジェクトマネジャーの考えに疑問を抱き、別の案を提案しようと思案していたため、プロ ジェクトマネジャーから指示された作業の進捗が遅くなっていたのです。 • 仕事中にTOC思考プロセスを使うことを止め、与えられた作業に集中できるようになったため、指示さ れた作業のアウトプットを早く提出できるようになりました。 パフォーマンスの改善 【TOC思考プロセスを使う前】  プロジェクトマネジャーに作業の進捗を確認されることが多くあった 【TOC思考プロセスを使った後】  プロジェクトマネジャーに確認される前に指示された仕事を提出できるようになった
  • 35. 35 事例Ⅲ 職場でのTOC思考プロセス活用 • 前述のソリューションを得てからは、仕事をする上で「責任範囲」というものを強く意識するようになり ました。会社内で仕事をする上での「責任範囲」とは「上司から期待されている範囲」です。 • 最初のプロジェクトでは「与えられた作業を遂行すること」だけを期待されていましたが、次のプロジェ クトでは「クライアント担当者のサポート」も私の責任範囲となりました。 • 前述のソリューションを得てから仕事中にTOC思考プロセスを使うことを止めていましたが、次のプロ ジェクトでは自分の責任範囲の仕事を遂行する上で様々な課題に直面するようになったため、その際 にはTOC思考プロセスをつかって解決するようにしました。(※ただしTOCという言葉は決して人前で 出さないようにしました。) • その結果、クライアントとのコミュニケーションや、会議でのファシリテーションが効果的に行えるように なり、社内外のプロジェクトメンバーからの評価を高めることができました。 • このように自分の責任範囲内でTOC思考プロセスの活用を続けることで、「上司からの期待」は徐々 に高まり、プロジェクト全体のソリューションに関する意見を求められたり、難しい会議への同席を依 頼されたりするようになってきました。 • 職場においてTOC思考プロセスを自分の責任範囲内で確実に使うことで、自らのパフォーマンスを高 めることができました。 その後の、職場でのTOCの活用
  • 37. 37 事例Ⅳ 継続的改善 • 事例Ⅲを経て、職場で正しい行動をとれるようになった私は、社内外での信頼を得て充実した仕事を することができました。そして、コンサルティング会社で1年半ほど働いたころに第1子を出産し、産休 をいただきました。 • TOCのエキスパートを目指している私は産休中にTOC思考プロセスの習得に励みました。 • まずは取り扱う問題を探したのですが、日常生活の中で特に問題と認識できるものがなかったため、 自分自身の責任範囲内で「解くべき問題」を探す必要がありました。 • そこで、普段の生活で「しょうがない」ですませてしまって「問題」と認識していなかった事象を、リスト アップしその中からTOC思考プロセスで取り扱える「問題」を探していきました。 • 夫婦間の関係は良好で日常生活は概ねうまくいっていましたが、子育てで疲れて家事が行き届かな かったり、ふとした瞬間に夫に嫌な思いをさせてしまったり、逆に夫の言動にイライラしてしまったりと いった事象に着目して、TOC思考プロセスを用いた分析を行うことにしました。 経緯
  • 38. 38 事例Ⅳ 継続的改善 • そして分析の結果作成したのが上記の統合クラウドです。このクラウドは、私が抱えていた様々な問 題を引き起こす中核的なジレンマを表しています。 • 私の機嫌を保つためには、自分の希望を通す必要があります。しかし、その希望が家族の生活スタ イルに合わないものであれば、家族の立場や意見を尊重することができないため自分の希望を押し 殺す必要があります。 私の中核問題を表すクラウド A:目的 家族と共に快適に 生活する B:ニーズ 私の機嫌を保つ D:行動 家族の生活スタイル に合わない自分の希 望を押し通す C:ニーズ 家族の立場・意見を 尊重する D’:行動 家族の生活スタイル に合わせて自分の希 望を押し殺す
  • 39. 39 事例Ⅳ 継続的改善 • そして、前頁のクラウドのソリューションは下記の通りです。 • ソリューションを出す過程で着目したのが、「WANT」と「NEED」の違いです。私は、夫の行動を変えて ほしい時に、「どのように行動してほしいのか」という希望を伝えていましたが、それは「WANT」であり、 夫は行動を変えたくないという「WANT」を持っていますので、どちらかが我慢しなければならなくなり ます。 • 「WANT」を引き起こす「NEED」を明らかにし共有することで、夫婦の「WANT」を揃えることができ、お 互いの我慢やストレスがなくなっていくというものです。 クラウドから導き出したソリューション A:目的 家族と共に快適に 生活する B:ニーズ 私の機嫌を保つ 【 ソリューション 】 ① 私は、夫のWANTに対して自分の WANTをぶつけることをやめる ② 私は、私及び夫のWANTをNEEDに 変換することができている ③ 私は、夫との話し合いにより、共有す るNEEDを明らかにすることができて いる ④ 私は、夫と共有したNEEDに基づき、 夫の行動及び自分の行動を評価し、 言動を決定することができている C:ニーズ 家族の立場・意見を 尊重する
  • 40. 40 事例Ⅳ 継続的改善 • 今回の事例での私のマインドセットの変更は下記のようなものでした。 • 今回のソリューションを出すまでは、夫との意見が対立した際には自分が我慢すればすむと考え、我 慢できない自分を責めてしまうことが多かったのですが、我慢することは解決策ではないということに 気付きました。 • 我慢をするのではなく、夫婦が対立している構造を丁寧に解き明かし、夫婦の「NEED」を共有するこ とで「WANT」を揃えていくことが本当の解決策であるということに気付きました。 マインドセットの変更 【TOC思考プロセスを使う前】  夫と衝突しそうなときは自分が我慢するのが正しい行動である  我慢できない時は夫に強く主張するしかない 【TOC思考プロセスを使った後】  自分の希望を我慢するのは正しい行動ではない  自分の希望を満たすためには、夫とのNEEDの共有というプロセスを踏んだうえで行動を起こさな ければならない
  • 41. 41 事例Ⅳ 継続的改善 • 前述のソリューションを得て私は下記のように行動を変化させました。 • TOC思考プロセスを使った後の行動をご覧いただくと、工程が多く労力を要するものであるということ が分かるかと思います。 • 1つの不満を解消するのに相当の作業が必要ですが、正しくその工程を実行できれば同じ問題で対 立を起こすことがなくなるため、我慢のストレスから解放されることになります。 行動の変更 【TOC思考プロセスを使う前】 ① 夫に対する不満があるときは、我慢する ② 我慢ができなくなったら、夫に対して強く主張する 【TOC思考プロセスを使った後】 ① 夫に対する不満があるときは、対立の構造を文章にする ② 夫婦のそれぞれが抱えるジレンマの構造をクラウドに表す(NEEDを明らかにする) ③ それぞれのクラウドのソリューションをだし、私のソリューションを導入する ④ 夫婦で共有できるクラウドを作成し、夫に対して提案する (※ただし夫の前でTOCという言葉は出さない)
  • 42. 42 事例Ⅳ 継続的改善 • 前述したソリューションを導入するにあたって、夫婦の役割をどのように捉えるべきかを明確にする必 要性が生じました。 • 夫婦の役割を定義するための作業のご説明は割愛いたしますが、現状について丁寧に観察しそれを 明文化するという方法をとりました。その結果が下記の通りです。 • 夫婦はまずビジョンを共有し、そのビジョンを達成するために自らが努力し、お互いに協力する責任 があるというのが夫婦それぞれの役割でした。 • このビジョン及び役割を夫に提案し、受け入れられました。(※ただし、夫に説明する際にはTOCとい う言葉は一切出さないようにしています) 夫婦のビジョン及び役割 【夫婦のビジョン】 ① 夫が自己実現している ② 子供を健全な大人に育てることができている ③ 妻(私)が自己実現している ※① ~ ③は優先順位を示す 【夫婦の役割】 夫及び妻(私)は、上記のビジョンを達成するために自ら努力し、お互いに協力する責任をもつ
  • 43. 43 事例Ⅳ 継続的改善 • 前述したソリューションの導入、ビジョン・役割の明確化を行うことで私のパフォーマンスは大幅に改 善したと思います。 • 夫への不満がある場合には、丁寧に分析をすることで不満を解消することができるようになったため、 夫の言動にイライラすることが格段に少なくなりました。 • また、夫とビジョンを共有することができたため、何か意思決定をする必要がある場合にはそのビジョ ンに従ってスムーズに意思決定をすることができるようになりました。 • また自分の役割が明確になり、「夫が自己実現している」という夫婦の最優先事項を達成するために 自分自身が何をできるかということを意識して行動することができるようになりました。 パフォーマンスの改善 【TOC思考プロセスを使う前】  夫の言動に対してイライラしたり、そのイライラをぶつけてしまうことがしばしばあった 【TOC思考プロセスを使った後】  夫の言動に対してイライラすることが格段に少なくなった  夫が私に対して本当に求めていることは何かを考えて行動できるようになった
  • 45. 45 最後に • 私は10年間のTOC思考プロセスの実践の中で、下記のことの重要性を認識するようになりました。 「① 正しい場面で」  TOC思考プロセスを学ぶと、その素晴らしさに感動し、いろいろな場面で使いたい、身近な人に も使ってほしいと思ってしまうものです。私にも、事例Ⅲでご紹介したように「責任範囲」を超え てTOC思考プロセスを使おうと試み、自らのパフォーマンスを下げてしまった経験があります。  それ以来、TOC思考プロセスを用いる際には、自らの「責任範囲内」であるのかについて厳密 にチェックしてから使うようにしています。  いろいろな場面でTOC思考プロセスを使いたいと考えるのであれば、まず自らの「責任範囲内」 でTOC思考プロセスを実践し、自らの「責任範囲」が広がるのを待つ必要があります。まず、自 らの「責任範囲内」でTOC思考プロセスを確実に使えば、自分のパフォーマンスは劇的に改善 するため、周囲からの期待は高まり「責任範囲」は徐々に広がっていくはずです。 TOC思考プロセスを使う上で重要なこと ① TOC思考プロセスを使う際には、 ① 正しい場面で、 ② 正しいツールを、 ③ 正しく使わなければならない。
  • 46. 46 最後に 「② 正しいツールを」  TOC思考プロセスには様々なツールがあります。TOCの思考プロセスは、その問題に適した 「正しいツール」を使って初めて効果を発揮することができます。  例えば、「クラウド」には「一度きりの問題を解決するクラウド(day-to-dayクラウド)」と「繰り返し 性のある問題を解決するクラウド(UDEクラウド)」があり、作成方法が異なります。  私は、TOC思考プロセスを使い始めた当初、「day-to-dayクラウド」のワークショップだけを受講 し、「UDEクラウド」のワークショップは受講していませんでした。  そして「繰り返し性のある問題」までも、「day-to-dayクラウド」で解こうとしていました。その例が 事例Ⅱの「結婚に迷った時のクラウド」です。  そのため、十分なソリューションを得ることができず、白土氏に正しいツールを使った問題解決 のサポートをしていただくまで辛い思いをすることになりました。  有効な解決策を得るためには、その問題に適した「正しいツール」を使う必要があります。 TOC思考プロセスを使う上で重要なこと ② TOC思考プロセスを使う際には、 ① 正しい場面で、 ② 正しいツールを、 ③ 正しく使わなければならない。
  • 47. 47 最後に 「③ 正しく使わなければならない」  TCO思考プロセスのツールを使っても、正しい使い方をしなければ、「ピンボケしたような」解決 策しか得ることができず、本当にパフォーマンスを改善することはできません。  私自身、現在もツールの正しい使い方を習得するために学んでいる途中です。  TOC思考プロセスのツールを使いこなせるようになるためには、エキスパートに適切に指導を 受け、自ら努力をしてツールの正しい使い方を体得しなければならないと感じています。 TOC思考プロセスを使う上で重要なこと ③ TOC思考プロセスを使う際には、 ① 正しい場面で、 ② 正しいツールを、 ③ 正しく使わなければならない。
  • 48. 48 最後に • 私は、4つの事例でお示ししたように、人生の節目節目でTOC思考プロセスを使い、自分自身の誤っ た考え方を変えることでパフォーマンスを劇的に改善するという経験をしてきました。 • ご紹介した事例以外にも、ほぼ毎日のようにTOC思考プロセスを使って日常の小さな問題を解決しな がら生活しています。 • そして、毎回自分でも驚くほど効果のあるソリューションを得ることができています。 • TOCにはPOOGI(継続的改善)という言葉があり、改善には終わりがありません。 • 私は、事例Ⅳのソリューションを得てからストレスが格段に減り、楽しく充実した生活を送っています が、これからも永久に改善の余地があると考えています。 • TOC思考プロセスを使い続けることで自分自身、そして家族のパフォーマンスを高め続けることがで きると考えています。 今後の取り組みについて
  • 49. 49 最後に 私の師匠のご紹介 • ゴールラット博士は、TOCを開発した偉大な人物で、TOCを学び実践する全て の方々にとっての「師匠」であると思います。私はゴールドラット博士の著作を繰 り返し読み、いつも感銘を受けています。 • オーデット・コーエン氏は、ゴールドラット博士と共にTOCのツールを開発された 方です。世界各国でコンサルティングを行う他、TOCの教育・普及にも力を入れ ておられます。同氏は何度か来日されており、TOC思考プロセス(MT)のワーク ショップの講師をされた際に、私も直接指導を受けました。 • 白土竜馬氏は、ゴールドラット博士、オーデット・コーエン氏から直接TOCの指導 を受けられ、株式会社ジュントスのコンサルタントとして日本の数々の企業に目 覚ましい改善成果をもたらしていらっしゃいます。講師としての定評もあり、分か りやすくTOCの基本から実践までを導いてくださいます。 ゴールラット博士 オーデット・コーエン氏 白土竜馬氏
  • 50. 50 最後に • TOC思考プロセスには、使う人の用途に応じて、いくつかのバリエーション/プログラムがありますが、 私が学び実践しているのは「マネジメント・ツール(以下、MT)」と呼ばれる手法です。 • MTは、「日常の問題解決」にTOC思考プロセスを“普段使い”することができるように開発された手法 で、主に「クラウド」、「ネガティブブランチ」、「中間目標マップ」の3つのツールを使います。 • MTは、様々ある思考ツールの中でも、「使いやすさと実用性」を重視している点が特徴です。簡単な 問題であれば数十分で解決することができますし、繰り返し性のある厄介な問題でも、自分の責任領 域にある問題であれば、半日から1日程度の時間をかけて解決策を見つけ出すことができます。 • 私の経験では、MTの正しい使い方をしたときは、自分自身が直面した問題や悩みについて、例外な く解決できており、その有効性を実感することができています。 • TOCやMTについて詳しく知りたい方は、右記のWebサイト http://www.juntos.co.jp/consulting をご覧 になると、詳しい情報を得ることができます。 私の学んでいるツールについて ~マネジメントツール~ ■ MTの3ツール(株式会社ジュントスWebサイトより)