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温泉入浴によるストレス改善効果の検証
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温泉入浴によるストレス改善効果の検証
1.
第15回日本予防医学会学術総会 C6 温泉入浴による ストレス改善効果の検証 ○柿沼 俊光1),
鈴木 直子1), 山下 慎一郎1), 髙良 毅2) 1)株式会社オルトメディコ, 2)医療法人社団盛心会 タカラクリニック
2.
0 10 20 30 40 50 60 70 平成9年 平成14年 平成19年
平成24年 ストレス等を感じる労働者の割合 第15回日本予防医学会学術総会2 研究背景と目的-1 0 10 20 30 40 50 事故や災害の経験 配置転換の問題 雇用の安定性の問題 昇進、昇給の問題 定年後の仕事、老後の問題 仕事への適性の問題 会社の将来性の問題 仕事の量の問題 仕事の質の問題 職場の人間関係の問題 ストレス等を感じる労働者の割合 図1-1. 職業生活でのストレス 等の状況 (「労働安全衛生特別調 査」より作成) 図1-2. 職業生活におけるストレス等の原因 (「労働安全衛生特別調査」より作成) 近年、経済・産業構造が変化する中で、職業生活に関する強い不 安、悩み、ストレスを感じている労働者の割合が増加している。
3.
4 14 36 70 100 108 130 127 205 268 269 234 308 3 11 19 31 43
40 45 42 66 81 66 63 65 0 50 100 150 200 250 300 350 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 精神障害者 内自殺 (未遂含む) 第15回日本予防医学会学術総会3 研究背景と目的-2 図1-3. 精神障害等による労災認定件数 (「脳・心臓疾患及び精神障害等に係る労災補償状況 (平成22年度) について」より作成) 業務による心理的負荷を原因とした精神障害の発症や自殺による 労災認定が行われる事案が近年増加している。
4.
第15回日本予防医学会学術総会4 研究背景と目的-3 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 90.0 100.0 (%) 図1-4. メンタルヘルス対策に取り組む企業の割合 (平成27年「労働安全衛生調査」 (実態調査)」より作成) 心の健康の保持増進を図ることが重要な課題であるが、メンタル ヘルス対策に取り組む企業の割合は多くない
5.
第15回日本予防医学会学術総会5 研究背景と目的-4 生活の質 (QOL) の改善
(鏡森定信ら, 2004) 免疫力賦活効果 (王秀霞ら, 1999) ストレスと免疫力の変化 (大塚吉則ら, 2002) ストレス軽減効果と休養効果 (渡部成江ら, 2003) 従業員に対して通常業務後に温泉入浴をさせる ことによるストレス反応および疲労度の変化を 検証した 温泉入浴に期待できる効果
6.
第15回日本予防医学会学術総会6 介入方法 泉質 ナトリウム-塩化物強塩温泉 (高張性・中性・温泉) (pH 7.5) 泉温
38.0℃ 温度 18~42℃ (水風呂を含む) 使用状況 加温あり、循環ろ過あり 次亜塩素酸消毒あり 表1. 温泉の泉質 【入浴後の測定】 ・アミラーゼ ・POMS ・VAS 【入浴前の測定】 ・アミラーゼ ・POMS ・VAS 入浴 (※) 30~45 分 図2. 試験スケジュール ※入浴は脱衣所に入ってから出るまでとした。 ※サウナの使用は個人の判断に任せ、サウナを使用した場合は報告させる。サウナの温度は、70~ 100℃である。
7.
第15回日本予防医学会学術総会7 主要評価項目 (唾液アミラーゼ) ストレスと唾液アミラーゼの関連性 (山口昌樹,
2007) 交感神経系の興奮 副腎髄質NE分泌 副腎髄質NE濃度上昇 唾液腺での酵素分泌 唾液アミラーゼ上昇 β受容体 ホルモン作用 神 経 作 用 ストレス 交 感 神 経 系 副腎髄質 NE分泌 神経 作用 ホルモン作用 唾液腺 唾液アミラーゼ 視床下部 図3. ストレスによる唾液アミラーゼ分泌の機序 (山口昌樹, 2007改変) freedesignfile.comより
8.
第15回日本予防医学会学術総会8 副次的評価項目 (自覚症状) 日本語版POMS短縮版 (横山和仁ら,
2005) Profile of Mood States-Brief Form Japanese Version 「緊張」・「抑うつ」・「怒り」・「活気」・「疲労」・「混乱」の6つの 因子を測定した。各因子の合計点をTMDとして評価した。 疲労感に関するVAS (岡村法宜, 2007) Visual Analogue Scale 疲れを全く感じない 最良の感覚 何もできないほど 疲れ切った最悪の感覚 図4. 本研究で用いたVASの模式図
9.
第15回日本予防医学会学術総会9 対象者と解析手法 対象者 株式会社オルトメディコの従業員延べ87名 (男性63名, 女性24名, 30.5±8.3歳) 統計解析 ①全対象者 入浴前後の比較
⇒ 対応のあるt検定 ②サウナの有無による層別解析 入浴前後の比較 ⇒ 対応のあるt検定 変化量の比較 ⇒ 対応のあるt検定 ③入浴前アミラーゼ値による層別解析 入浴前後の比較 ⇒ 対応のあるt検定 変化量の比較 ⇒ Dunnett検定
10.
検査項目 単位 P
value 唾液アミラーゼ KIU/L 46.3 ± 32.4 49.5 ± 39.1 0.422 疲労のVAS mm 52.3 ± 20.6 33.5 ± 18.6 <0.001 Total Mood Disturbannce (TMD) 点 22.8 ± 20.3 8.1 ± 14.0 <0.001 緊張-不安 (Tension-Anxiety) 点 7.9 ± 4.5 3.5 ± 3.8 <0.001 抑うつ-落込み (Depression-Dejection) 点 4.3 ± 4.5 2.1 ± 2.6 <0.001 怒り-敵意 (Anger-Hostility) 点 4.0 ± 4.5 1.6 ± 2.6 <0.001 活気 (Vigor) 点 8.0 ± 3.7 8.3 ± 4.7 0.520 疲労 (Fatigue) 点 7.3 ± 4.8 4.4 ± 3.7 <0.001 混乱 (Confusion) 点 7.4 ± 3.7 4.8 ± 2.6 <0.001 入浴前 入浴後 第15回日本予防医学会学術総会10 全参加者を対象とした解析 表2. 全参加者を対象とした解析 平均±標準偏差, 対応のあるt検定
11.
第15回日本予防医学会学術総会11 サウナ利用による層別解析-1 図5. サウナの有無による唾液アミラーゼ分泌の比較 平均±標準誤差, Studentのt検定 -10.0 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 入浴前
入浴後 変化量 唾液アミラーゼ サウナ有り群 (n = 32) サウナなし群 (n = 55) (KIU/L) P = 0.081 サウナの有無により唾液アミラーゼの分泌に差がある傾向
12.
第15回日本予防医学会学術総会12 サウナ利用による層別解析-2 表3. サウナの有無による自覚症状の比較 検査項目 単位 サウナ有り群
(n = 32) 50.5 ± 20.3 34.1 ± 22.3 0.003 -16.3 ± 29.0 サウナなし群 (n = 55) 53.4 ± 20.9 33.2 ± 16.3 <0.001 -20.2 ± 21.9 サウナ有り群 (n = 32) 24.0 ± 20.8 10.6 ± 16.3 0.001 -13.4 ± 19.6 サウナなし群 (n = 55) 22.1 ± 20.1 6.7 ± 12.4 <0.001 -15.4 ± 19.1 サウナ有り群 (n = 32) 8.0 ± 4.9 4.2 ± 4.6 <0.001 -3.8 ± 4.1 サウナなし群 (n = 55) 7.8 ± 4.3 3.1 ± 3.1 <0.001 -4.7 ± 4.2 サウナ有り群 (n = 32) 4.7 ± 4.7 2.8 ± 3.3 0.015 -1.8 ± 4.1 サウナなし群 (n = 55) 4.0 ± 4.4 1.7 ± 2.1 <0.001 -2.3 ± 3.8 サウナ有り群 (n = 32) 4.0 ± 4.5 1.8 ± 2.5 0.004 -2.2 ± 3.9 サウナなし群 (n = 55) 3.9 ± 4.6 1.5 ± 2.6 <0.001 -2.4 ± 3.6 サウナ有り群 (n = 32) 8.0 ± 4.2 8.6 ± 5.1 0.559 0.6 ± 5.7 サウナなし群 (n = 55) 8.0 ± 3.4 8.1 ± 4.4 0.754 0.2 ± 4.3 サウナ有り群 (n = 32) 7.3 ± 4.9 5.0 ± 4.1 0.018 -2.3 ± 5.1 サウナなし群 (n = 55) 7.3 ± 4.8 4.0 ± 3.5 <0.001 -3.3 ± 4.7 サウナ有り群 (n = 32) 8.0 ± 3.3 5.3 ± 2.9 <0.001 -2.7 ± 2.9 サウナなし群 (n = 55) 7.1 ± 3.9 4.5 ± 2.4 <0.001 -2.6 ± 3.3 疲労 (Fatigue) 点 0.346 混乱 (Confusion) 点 0.827 怒り-敵意 (Anger-Hostility) 点 0.738 活気 (Vigor) 点 0.703 緊張-不安 (Tension-Anxiety) 点 0.358 抑うつ-落込み (Depression-Dejection) 点 0.592 疲労のVAS mm 0.487 Total Mood Disturbannce (TMD) 点 0.632 入浴前 入浴後 変化量 平均±標準偏差, 対応のあるt検定 サウナの有無に関わらず自覚症状は良好な状態となった。
13.
測定値 ストレスの 度合い 0-30 KU/L ない 31-45
KU/L ややある 46-60 KU/L ある 61- KU/L かなりある 第15回日本予防医学会学術総会13 アミラーゼ基準値による層別解析-1 機器本体 唾液採取 チップ 図6. 唾液アミラーゼモニターと基準値 用いた測定機器に定められている基準値を元に4つのグループを 構築し、層別解析を行った。
14.
第15回日本予防医学会学術総会14 アミラーゼ基準値による層別解析-2 -60.0 -40.0 -20.0 0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 120.0 入浴前 入浴後 変化量 唾液アミラーゼ アミラーゼ0-30
KU/L群 (n = 18) アミラーゼ31-45 KU/L群 (n = 11) アミラーゼ46-60 KU/L群 (n = 16) アミラーゼ61- KU/L群 (n = 10) (KIU/L) P = 0.003 P = 0.039 図7. アミラーゼの基準値に基づく層別解析による唾液アミラーゼ分泌の比較 平均±標準誤差, 対応のあるt検定, Studentのt検定 アミラーゼが高値であるほど、温泉入浴により分泌量が低下した
15.
第15回日本予防医学会学術総会15 アミラーゼ基準値による層別解析-3 表4-1. アミラーゼの基準値に基づく層別解析 検査項目 単位
群 アミラーゼ0-30 KU/L群 (n = 18) 54.2 ± 18.7 35.8 ± 16.8 ** -18.3 ± 23.6 アミラーゼ31-45 KU/L群 (n = 11) 41.5 ± 26.8 17.8 ± 13.1 ** -23.6 ± 28.8 アミラーゼ46-60 KU/L群 (n = 16) 54.8 ± 17.4 38.6 ± 14.3 ** -16.3 ± 17.1 アミラーゼ61- KU/L群 (n = 10) 62.7 ± 19.5 36.7 ± 12.7 ** -26.0 ± 18.1 アミラーゼ0-30 KU/L群 (n = 18) 22.6 ± 18.7 10.4 ± 13.5 ** -12.1 ± 16.2 アミラーゼ31-45 KU/L群 (n = 11) 17.5 ± 27.0 0.5 ± 10.6 * -17.0 ± 28.5 アミラーゼ46-60 KU/L群 (n = 16) 23.2 ± 17.7 8.4 ± 11.0 ** -14.8 ± 14.1 アミラーゼ61- KU/L群 (n = 10) 24.8 ± 20.1 4.1 ± 12.9 ** -20.7 ± 20.1 アミラーゼ0-30 KU/L群 (n = 18) 7.9 ± 4.3 3.8 ± 3.5 ** -4.2 ± 4.6 アミラーゼ31-45 KU/L群 (n = 11) 7.4 ± 5.1 1.5 ± 2.3 ** -5.8 ± 5.1 アミラーゼ46-60 KU/L群 (n = 16) 7.5 ± 3.9 3.7 ± 3.0 ** -3.8 ± 3.5 アミラーゼ61- KU/L群 (n = 10) 8.5 ± 4.7 2.8 ± 3.2 ** -5.7 ± 3.9 アミラーゼ0-30 KU/L群 (n = 18) 4.4 ± 4.6 2.3 ± 2.1 ** -2.1 ± 3.3 アミラーゼ31-45 KU/L群 (n = 11) 4.2 ± 5.7 1.3 ± 1.8 -2.9 ± 5.9 アミラーゼ46-60 KU/L群 (n = 16) 3.9 ± 4.2 1.9 ± 2.2 ** -1.9 ± 3.1 アミラーゼ61- KU/L群 (n = 10) 3.5 ± 3.4 0.9 ± 1.9 ** -2.6 ± 3.2 Total Mood Disturbannce (TMD) 点 緊張-不安 (Tension- Anxiety) 点 抑うつ-落込 み (Depression- Dejection) 点 入浴前 入浴後 変化量 疲労のVAS mm 平均±標準偏差, 対応のあるt検定
16.
第15回日本予防医学会学術総会16 アミラーゼ基準値による層別解析-4 表4-2. アミラーゼの基準値に基づく層別解析 検査項目 単位
群 アミラーゼ0-30 KU/L群 (n = 18) 3.1 ± 4.6 2.1 ± 3.6 ** -0.9 ± 1.4 アミラーゼ31-45 KU/L群 (n = 11) 4.1 ± 5.7 0.9 ± 1.9 -3.2 ± 6.1 アミラーゼ46-60 KU/L群 (n = 16) 4.2 ± 3.7 1.5 ± 2.3 ** -2.7 ± 2.8 アミラーゼ61- KU/L群 (n = 10) 5.0 ± 4.7 1.1 ± 1.7 ** -3.9 ± 3.7 アミラーゼ0-30 KU/L群 (n = 18) 7.2 ± 3.1 6.4 ± 3.9 -0.8 ± 4.5 アミラーゼ31-45 KU/L群 (n = 11) 10.3 ± 3.8 9.7 ± 4.8 -0.5 ± 3.8 アミラーゼ46-60 KU/L群 (n = 16) 7.6 ± 3.7 8.4 ± 3.6 0.8 ± 3.0 アミラーゼ61- KU/L群 (n = 10) 7.4 ± 2.2 9.1 ± 5.7 1.7 ± 5.9 アミラーゼ0-30 KU/L群 (n = 18) 7.1 ± 4.5 4.2 ± 3.4 ** -2.9 ± 4.0 アミラーゼ31-45 KU/L群 (n = 11) 5.5 ± 5.5 2.7 ± 3.3 -2.8 ± 6.2 アミラーゼ46-60 KU/L群 (n = 16) 8.0 ± 4.2 4.3 ± 3.8 ** -3.7 ± 4.0 アミラーゼ61- KU/L群 (n = 10) 8.3 ± 5.6 4.5 ± 3.5 * -3.8 ± 5.6 アミラーゼ0-30 KU/L群 (n = 18) 7.3 ± 3.9 4.6 ± 2.7 ** -2.8 ± 3.5 アミラーゼ31-45 KU/L群 (n = 11) 6.5 ± 5.1 3.7 ± 1.3 * -2.8 ± 4.8 アミラーゼ46-60 KU/L群 (n = 16) 7.2 ± 3.8 5.3 ± 2.5 ** -1.9 ± 2.7 アミラーゼ61- KU/L群 (n = 10) 6.9 ± 2.9 3.9 ± 2.4 ** -3.0 ± 1.8 混乱 (Confusion) 点 怒り-敵意 (Anger- Hostility) 点 活気 (Vigor) 点 疲労 (Fatigue) 点 入浴前 入浴後 変化量 平均±標準偏差, 対応のあるt検定
17.
① 疲労の定量マーカーである唾液アミラーゼはサウナの有無や 入浴前の測定値に左右された。 ② 温泉への入浴はVASやPOMSといった疲労感や現在の気分を 主観的に評価する項目を改善させた。 ③
ストレスをより感じている者に対して温泉への入浴は有効な介 入であった。 17 第15回日本予防医学会学術総会 まとめ 温泉入浴は企業のメンタルヘルス対策の取り組 みとして啓蒙できる
18.
第15回日本予防医学会学術総会18 参考文献 • 厚生労働省. 労働安全衛生特別調査. •
厚生労働省. 脳・心臓疾患及び精神障害等に係る労災補償状況 (平成22年度) について. • 厚生労働省. 平成27年「労働安全衛生調査」 (実態調査). • 鏡森定信, 中谷芳美, 梶田悦子, 金山ひとみ, 堀井雅恵, 松原勇. 温泉利用とWHO生活の質― 温泉利用の健康影響に対する交絡要因としての検討―. 日温気物医誌. 2004; 67 (2): 71-78. • 王秀霞, 北田仁彦, 松井健一郎, 大川尚子, 杉山徹, 甲野裕之, 清水昌寿, 頼精二, 松野栄雄, 山口昌夫, 山口宣夫. 短期温泉浴と末梢血液中免疫担当細胞への影響― 量的変動―. 日温気 物医誌. 1999; 62 (3): 129-134. • 大塚吉則, 中谷純. 単純泉における温泉療法による脱ストレス作用と免疫機能の変化. 日温気 物医誌. 2002; 65 (3): 121-127. • 渡部成江, 森谷絜, 阿岸祐幸, 橋本恵子.天然温泉浴のストレス軽減効果と休養効果に関する実 証研究. 日本健康開発財団研究年報. 2003; 24: 1-7. • 山口昌樹. 唾液マーカーでストレスを測る. 日本薬理学雑誌. 2007; 129 (2): 80-84. • 横山和仁, 荒記俊一, 川上憲人, 竹下達也. POMS (感情プロフィール検査) 日本語版の作成と 信頼性および妥当性の検討. 日本公衛誌. 1990; 37: 913-917. • 岡村法宜. 長時間の計算作業による精神疲労が事象関連電位P300に及ぼす影響.産業衛生学 雑誌. 2007; 49 (5): 203-208.
19.
ご清聴ありがとうございました
Notes de l'éditeur
株式会社オルトメディコの柿沼と申します。 今回、「温泉入浴によるストレス改善効果の検証」といったテーマで発表させていただきます。 よろしくお願いいたします。
近年、経済や産業構造が変化する中で、ストレスに起因する不調を訴える者が増加しています。 こちらの図は厚生労働省による「労働安全衛生特別調査」で得られたデータですが、半数以上の労働者が労働によるストレスを感じていることが示されています。
また、業務による心理的負荷を原因として精神障害を発症し、自殺したとして労災認定が行われる事案が近年増加し、社会的にも関心を集めています。 このように、職場において、より積極的に心の健康の保持増進を図ることが重要な課題となっています。
こちらは、従業員に対するメンタルヘルス対策に取り組む企業を示したものですが全体では60%ほどであり、従業員数が50人未満の企業では50%を切っています。 これらの原因は多忙な業務や予算の問題のため導入していないほかにも、どのような対策を行ったら良いのかわからないといったものも考えられます。 そのため、我々は従業員のメンタルヘルス対策として温泉のストレス改善効果に着目しました。
温泉にはQOLの向上や免疫力賦活効果、ストレス改善効果があるとされています。 そこで通常業務後の温泉入浴によるストレス反応および疲労度の変化の確認を目的として、弊社の社員を対象として温泉のストレス改善効果を検証しました。
こちらに、本研究のスケジュールと温泉の泉質を示しました。 スケジュールは図2に示した通りで、入浴前後の2時点に評価項目を測定する前後比較デザインとなっております。 温泉の入浴は東京都内の温泉施設で行いました。 主要な評価項目を唾液アミラーゼ、副次的な評価項目としてPOMSとVASを設定しました。 入浴時間は30~45分の範囲内とし、サウナの利用には制限を設けませんでした。
主要な評価項目とした唾液アミラーゼは、ストレスマーカーの1つです。 こちらの図にストレスを起点とした唾液アミラーゼ分泌の機序を示しました。 唾液アミラーゼ分泌は直接神経作用による制御系統が存在します。この直接神経作用により唾液アミラーゼ分泌が亢進される場合には、応答時間が1分から数分と短く、ホルモン作用に比べて格段にレスポンスが早いため、コルチゾールなどの他のストレスマーカーよりも迅速に反応する優れた指標となり得ると考えられています。 本研究では唾液アミラーゼを唾液アミラーゼモニター (ニプロ株式会社, 大阪府大阪市) を用いて測定しました。
副次的な評価項目は疲労に関連する自覚症状を設定しました。 POMSは、対象者のおかれた条件下で変化する一時的な気分・感情を測定できるアンケートです。 緊張・抑うつ・怒り・活気・疲労・混乱の6つの因子を算出し、その合計点をTMDとします。 VASは図のような長さ10cmの線に現在の疲労がどの程度かを対象者自身が記入することで、疲労の主観的な評価を行う方法です。 自覚症状はこちらの2つを用いて評価しました。
全試験参加者の解析結果をこちらの表に示します。 唾液アミラーゼとPOMSの構成因子である「活気」は有意な変化はありませんでしたが、その他の自覚症状は有意に改善しました。 この結果から温泉の入浴は疲労や緊張などの気分を改善させることが考えられます。 また、温泉に入る際のサウナ利用は参加者の自由と定めましたが、サウナ利用も原因の一因となるではないかと考え、サウナの有無についての層別解析を行いました。
こちらがサウナ利用による層別解析の結果です。 縦軸は唾液アミラーゼ濃度を示します。 赤色で示したサウナに入ったグループを入浴前後でアミラーゼが上昇したのに対して、青色で示したサウナに入っていないグループはアミラーゼが低下しました。 この変化量はサウナの有無で差がある傾向がありました。
次に自覚症状の結果がこちらです。 自覚症状はサウナの有無に関わらず入浴前後で改善し、2つのグループ間に差はないことが示されました。 これらの結果から疲労や緊張感などの気分の改善にはサウナに入ったか入っていないかでは左右されることはないといえます。
こちらが本研究で使用したアミラーゼ測定機器の基準値です。 この基準値をもとに4つのグループを構築し層別解析を行いました。
こちらに唾液アミラーゼの解析結果を示します。 入浴前後の唾液アミラーゼに差があったグループは赤色で示した入浴前にアミラーゼが61以上であったグループのみでした。 また、このグループの変化量は緑で示したアミラーゼ31未満のグループと差がありました。 これらの結果から入浴前のアミラーゼ値が高い者ほどアミラーゼ値が低下していることがわかりました。
また、こちらにVASとPOMSの層別解析結果を示します。 気分・感情および疲労感はアミラーゼの基準値に関係なく、活気を除くいずれのグループでも改善が認められました。
よって、アミラーゼ値は入浴前に高いものほど低下したが疲労や緊張はアミラーゼ値に関係なく改善することが示された。 これらを総合すると温泉への入浴は疲労感や緊張感、怒りなどの気分を改善させることが示されました。
以上、ご清聴ありがとうございました。
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